(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記公報に記載されたスピンドル装置では、第2の支持部材の平行弾性ばね自体がある程度の剛性を有しているため、熱膨張によるハウジングの変位の全てが取付面から第2の支持部材の方向に生じることはない。つまり、熱膨張による変位の一部は第1の支持部材から取付面の方向にも生じる。これにより、取付面の軸線方向の位置が変化する。
【0007】
また、平行弾性ばねが軸線方向に変形することによって、平行弾性ばねの高さ方向(軸線方向に交差する方向)の位置が変化する。これにより、取付面の高さ方向の位置が変化する。
【0008】
また、第2の支持部材は平行弾性ばねによって高さ方向の位置が変位するように変形するが、第1の支持部材はほとんど変形しないため、熱膨張によってハウジングは床面に対して平行移動しない。つまり、ハウジングが床面に対して傾くため取付面も床面に対して傾いてしまう。
【0009】
上述のように取付面の位置が変化すると、加工物の位置が変化するため高精度な加工を行うことが困難である。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、取付面の位置の変化を抑制することができる静圧気体軸受スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の静圧気体軸受スピンドルは、設置面に固定される静圧気体軸受スピンドルであって、端面に取付面を有する回転軸と、回転軸を回転可能に支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間をはさんで、回転軸の外周面を取り囲むハウジングと、ハウジングの軸線方向に互いに離れて配置され、ハウジングを設置面に固定するための第1および第2の固定台とを備えている。取付面に対して第1の固定台より離れた位置に配置された第2の固定台が軸線方向に直線的に案内可能な直線案内機構を含んでいる。
【0012】
本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、取付面に対して第1の固定台より離れた位置に配置された第2の固定台が軸線方向に直線的に案内可能な直線案内機構を含んでいるため、熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0013】
このため、熱膨張で生じた軸線方向のハウジングの変位のほぼ全てを直線案内機構が第2の固定台側に移動することにより吸収することができる。これにより、軸線方向の取付面の位置の変化を抑制することができる。
【0014】
また、熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができるため、第2の固定台が高さ方向に変形することを抑制することができる。これにより、取付面の高さ方向の位置の変化を抑制することができる。
【0015】
また、第2の固定台が高さ方向に変形することを抑制することができるため、第1の固定台と第2の固定台とによってハウジングを設置面に対して略平行に保つことができる。そのため、ハウジングは設置面に対して平行移動することができる。これにより、取付面が設置面に対して傾くことを抑制することができる。
【0016】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、第2の固定台は、設置面に固定される固定部材と、ハウジングに取り付けられ、かつ直線案内機構により固定部材に対して相対的に移動可能な支持部材とを有する。これにより、熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0017】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、直線案内機構がリニアガイドで構成されている。このため、リニアガイドで熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0018】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、直線案内機構が滑り軸受で構成されている。このため、滑り軸受で熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0019】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、直線案内機構が静圧気体軸受スライドで構成されている。このため、静圧気体軸受スライドで熱膨張によるハウジングの変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0020】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、第2の固定台が熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質で構成されている。このため、第2の固定台の熱膨張に起因する取付面の位置の変化を抑制することができる。
【0021】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、第2の固定台は、内部に流路をさらに備え、第2の固定台が流路に気体が流されることで冷却されるように構成されている。このため、気体で冷却されることによって第2の固定台の熱膨張に起因する取付面の位置の変化を抑制することができる。
【0022】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、第2の固定台は、内部に流路をさらに備え、第2の固定台が流路に液体が流されることで冷却されるように構成されている。このため、液体で冷却されることによって第2の固定台の熱膨張に起因する取付面の位置の変化を抑制することができる。
【0023】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、第2の固定台は、冷却フィンをさらに備えている。このため、冷却フィンで冷却されることによって第2の固定台の熱膨張に起因する取付面の位置の変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、取付面の位置の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0027】
図1および
図2を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、設置面PSに固定される静圧気体軸受スピンドルである。静圧気体軸受スピンドルは回転軸1と、ハウジング2と、第1の固定台3と、第2の固定台4とを主に有している。
【0028】
回転軸1は端面にワークを取付可能な取付面1aを有している。ハウジング2は、回転軸1を回転可能に支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間(
図3参照)をはさんで、回転軸1の外周面を取り囲んでいる。
【0029】
第1の固定台3および第2の固定台4は、ハウジング2の軸線AX方向に互いに離れて配置されている。第1の固定台3および第2の固定台4はそれぞれ固定ボルト6aでハウジング2に固定されている。また第1の固定台3および第2の固定台4はそれぞれ設置ボルト6bで設置面PSにも固定されている。第1の固定台3および第2の固定台4は、ハウジング2を設置面PSに固定するためのものである。
【0030】
第2の固定台4は、取付面1aに対して第1の固定台3より離れた位置に配置されている。第2の固定台4は、ハウジング2の軸線AX方向に直線的に案内可能な直線案内機構5を有している。
【0031】
第2の固定台4は、固定部材41と、支持部材42とを有している。固定部材41は、設置面PSに固定される。支持部材42はハウジング2に取り付けられている。支持部材42は直線案内機構5により固定部材41に対して相対的に移動可能である。
【0032】
直線案内機構5は、ハウジング2の軸線AX方向に直線的に案内可能な機構であればよい。直線案内機構5は、リニアガイド51で構成されていてもよい。リニアガイド51は、スライダ51aと、軸受用ボール51bと、レール51cとを有している。なお、
図2では説明の便宜のため、軸受用ボール51bが図示されている。スライダ51aは軸受用ボール51bを介してレール51cと摺動可能に構成されている。軸受用ボール51bはスライダ51aの溝とレール51cの溝とで転動自在に保持されている。レール51cはハウジング2の軸線AX方向に伸びるように構成されている。
【0033】
スライダ51aが軸受用ボール51bを介してレール51cに沿って摺動することで、スライダ51aがレール51cに沿って軸線AX方向に直線的に移動することができる。スライダ51aが支持部材42に接続されており、レール51cが固定部材41に接続されているため、固定部材41と支持部材42とはリニアガイド51によって相対的に移動可能であり、かつ軸線AX方向に直線的に移動可能である。
【0034】
続いて、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成をさらに詳しく説明する。なお、
図3では見やすくするため、回転軸などの一部の構成部品は断面図で図示されておらず、平面図で図示されている。
【0035】
図3を参照して、回転軸1は、円筒形状を有している。回転軸1は、回転中心軸CRを中心として回転可能に構成されている。回転中心軸CRはハウジング2の軸線AXと一致するように配置されている。回転軸1は、テーブル11と、軸スペーサ12と、スラスト板13とを主に有している。テーブル11、軸スペーサ12およびスラスト板13のそれぞれの回転の中心軸は、回転軸1の回転中心軸CRと一致している。テーブル11は回転軸1の一方端に設けられている。テーブル11の端面が回転軸1の端面を構成している。テーブル11に対して軸スペーサ12を挟んで円板状のスラスト板13が設けられている。
【0036】
ハウジング2は、ハウジング部材21と、軸受スリーブ22と、冷却ジャケット23と、エンコーダカバー24とを主に有している。ハウジング部材21は、軸受スリーブ22の外周を取り囲んで、軸受スリーブ22を保持している。ハウジング部材21は、テーブル11側に配置された第1ハウジング部材21aと、第1ハウジング部材21aに対してリングハウジング部材21cを挟んで配置された第2ハウジング部材21bとを有している。
【0037】
軸受スリーブ22は、回転軸1を回転可能に支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間10をはさんで、回転軸1の外周面を取り囲んでいる。軸受スリーブ22はスラスト板13のテーブル11側の面(上面)およびテーブル11とは反対側の面(下面)の各々に対して軸受隙間10を隔てて対向するように形成されている。軸受スリーブ22は、第1ハウジング部材21aに保持された第1軸受スリーブ22aと、第2ハウジング部材21bに保持された第2軸受スリーブ22bとを有している。
【0038】
軸受スリーブ22には、軸受用気体を軸受隙間10に供給するノズル22cが形成されている。ノズル22cは、スラスト板13の上面および下面の各々と軸受スリーブ22との間の軸受隙間10に軸受用気体を供給できるように設けられている。
【0039】
ノズル22cは軸受用気体給気路31に接続されている。軸受用気体給気路31は、図示しない軸受用気体供給部に接続されている。軸受用気体給気路31を通して軸受用気体が供給される。軸受用気体供給部としては、たとえばポンプが適用され得る。また、ハウジング部材21および軸受スリーブ22には、軸受隙間10とハウジング2の外部とを接続する軸受用気体排出路32が形成されている。軸受用気体排出路32を通して軸受用気体が排出される。
【0040】
軸受用気体給気路31から供給された軸受用気体がノズル22cから軸受隙間10に供給されることで、軸受スリーブ22の内周面と回転軸1の外周面とは、回転軸1を径方向(ラジアル方向)に支持するジャーナル軸受(ジャーナル用の静圧気体軸受)101として機能する。
【0041】
また、軸受用気体給気路31から供給された軸受用気体がノズル22cから軸受隙間10に供給されることで、軸受スリーブ22の端面とスラスト板13の上面および下面のそれぞれとは、回転軸1を軸方向(アキシアル方向)に支持するスラスト軸受(スラスト用の静圧気体軸受)102として機能する。
【0042】
また、回転軸11のテーブル11とは反対側の部分には、回転軸1の外周面を取り囲むように接続されたロータ7aが配置されている。また、ロータ7aの外周面に対向するようにステータ7bが配置されている。ロータ7aおよびステータ7bは、回転軸1を回転中心軸CRまわりに回転駆動するモータ7を構成している。ロータ7aとステータ7bとの間の電磁力によって回転方向の駆動力が発生し、回転軸1が回転中心軸CRまわりに回転する。モータ7は、モータカバー8で覆われている。
【0043】
ハウジング部材21およびモータカバー8を取り囲むように冷却ジャケット23が設けられている。冷却ジャケット23は、冷媒供給口33と、冷媒流路34と、冷媒排出口35とを有している。冷媒供給口33より供給された冷媒としての冷却液または冷却気体が冷媒流路34を通って冷媒排出口35から排出される。この冷媒の流れにより静圧気体軸受スピンドル全体が冷却される。これにより静圧気体軸受スピンドルの温度の安定を図ることができる。また、静圧気体軸受スピンドルの熱膨張を抑制することができる。
【0044】
冷媒流路34は螺旋状に加工された溝または複数の環状溝からなっている。このため、1箇所の冷媒供給口33から冷媒を供給することにより冷却用の液体または気体(冷媒)が冷媒流路34の全体に行きわたる。冷媒流路34が環状溝の場合、隣接する環状溝同士が環状溝に対して直角方向に形成された溝により接続されていてもよい。そして、この溝は単数または複数の溝であってもよい。
【0045】
また、回転軸11のテーブル11とは反対側の先端にはエンコーダ9が取り付けられている。エンコーダ9を覆うようにエンコーダカバー24が設けられている。
【0046】
上記構成によって、軸受用気体給気路31から軸受用気体である圧縮空気が供給されると、軸受用気体はノズル22cからジャーナル軸受部101およびスラスト軸受部102に流入する。そして、圧縮空気の給気圧力によって回転軸1の自重や外部負荷に釣り合う軸受反力が生じる。このため、回転軸1は非接触状態でハウジング2に支持されつつ回転中心軸CRまわりに回転駆動する。
【0047】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの動作について説明する。
図4を参照して、環境の温度変化または静圧気体軸受スピンドルの回転軸1の回転に伴う発熱によって静圧気体軸受スピンドルの構成部品に熱膨張が発生した場合、ハウジング2は全長が長くなるように変形する。その結果、ハウジング2は軸線AX方向に変位する。本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、熱膨張で生じたハウジングの変位にあわせて直線案内機構5が軸線AX方向であって図中矢印X1方向に移動する。そのため、熱膨張で生じた軸線AX方向のハウジングの変位のほぼ全てが直線案内機構5が図中矢印X1方向に移動することにより吸収される。そのため、取付面1aの位置の変化は抑制される。
【0048】
上記では直線案内機構5としてリニアガイドが用いられている場合について説明したが、直線案内機構5として滑り軸受が用いられていてもよい。
【0049】
図5から
図7を参照して、本実施の形態における静圧気体軸受スピンドルの変形例1では、直線案内機構5が滑り軸受52で構成されている。滑り軸受52は軸部材52aと、軸受部材52bと、潤滑材52cとを有している。軸部材52aは軸受部材52b側に向かって側面の面積が小さくなるようなテーパ形状を有している。軸受部材52bは、軸部材52aのテーパ形状を受け入れ可能に構成されている。軸受部材52bの軸受面はハウジング2の軸線AX方向に伸びるように構成されている。軸部材52aと軸受部材52bとの間に潤滑材52cが配置されている。
【0050】
軸部材52aと軸受部材52bとが潤滑材52cを介して相対的にすべり運動を行うことで、軸部材52aが軸線AX方向に軸受部材52bに沿って直線的に移動することができる。軸部材52aが支持部材42に接続されており、軸受部材52bが固定部材41に接続されているため、固定部材41と支持部材42とは滑り軸受52によって相対的に移動可能であり、かつ軸線AX方向に直線的に移動可能である。
【0051】
滑り軸受52の方式として、油潤滑、デフリックコート等の潤滑性を有する塗装、テフロン(登録商標)コート等の潤滑性を有する処理などが適用され得る。
【0052】
また、滑り軸受52の形状は変形例1の形状に限定されない。本実施の形態における静圧気体軸受スピンドルの変形例2では、滑り軸受52の形状が変形例1の形状と異なっている。
図8を参照して、変形例2では、滑り軸受52の軸部材52aと軸受部材52bとが矩形状に形成されている。軸部材52aの凸形状が軸受部材52bの凹形状に受け入れられる。軸部材52aの凸形状が軸受部材52bの凹形状に受入れられた状態で、軸部材52aと軸受部材52bとが潤滑材52cを介して相対的にすべり運動を行うことで、軸部材52aが軸受部材52bに沿って軸線AX方向に直線的に移動することができる。
【0053】
また、直線案内機構5として、静圧気体軸受スライドが用いられてもよい。
図9および
図10を参照して、本実施の形態における静圧気体軸受スピンドルの変形例3では、直線案内機構5が静圧気体軸受スライド53で構成されている。静圧気体軸受スライド53は、ステージ部53aと、ガイド部53bとを有している。ステージ部53aは、ガイド部53bが伸びる方向と交差する方向にガイド部53bの外周面を隙間を介して取り囲むように構成されている。ステージ部53aとガイド部53bとの間の隙間には図示しない軸受気体供給装置から軸受気体が供給されるように構成されている。軸受気体によってステージ部53aとガイド部53bとは非接触状態で支持される。ガイド部53bはハウジング2の軸線AX方向に伸びるように構成されている。
【0054】
ステージ部53aがガイド部53bに軸受気体によって非接触状態で支持されつつガイド部53bに沿って摺動することで、ステージ部53aがガイド部53bに沿って軸線AX方向に直線的に移動することができる。ステージ部53aが支持部材42に接続されており、ガイド部53bが固定部材41に接続されているため、固定部材41と支持部材42とは静圧気体軸受スライド53によって相対的に移動可能であり、かつ軸線AX方向に直線的に移動可能である。
【0055】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について比較例と比較して説明する。
【0056】
図11および
図12を参照して、本実施の形態の比較例の静圧気体軸受スピンドルは、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルに対して、直線案内機構を有していない点で主に異なっている。比較例では、ハウジング2は、設置ボルト6bで設置面PSに固定された第1の固定台3および第2の固定台4のそれぞれと固定ボルト6aで固定されている。
【0057】
図13を参照して、環境の温度変化または静圧気体軸受スピンドルの回転軸1の回転に伴う発熱によって、ハウジング2の温度が上昇した場合、ハウジング2は熱膨張により全長が長くなるように変形する。つまり、ハウジング2は軸線AX方向であって図中X1方向およびX2方向に広がるように変形する。この結果、取付面1aの位置が軸線AX方向であって図中X2方向に距離D1だけ変位する。
【0058】
この際、設置面PSの温度は室温のままであり上昇していないため、設置面PSに接する第1の固定台3および第2の固定台4のそれぞれの下端では熱膨張が発生してない。そのため、設置面PSに接する第1の固定台3および第2の固定台4のそれぞれの下端の間の距離は変わらない。他方、ハウジング2の熱膨張によって、固定ボルト6aでハウジング2に固定された第1の固定台3および第2の固定台4のそれぞれの上端の間の距離は大きくなる。そのため、第1の固定台3および第2の固定台4はそれぞれハウジング2の熱膨張に伴って変形している。
【0059】
これに対して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、取付面に対して第1の固定台より離れた位置に配置された第2の固定台が軸線方向に直線的に案内可能な直線案内機構を含んでいるため、熱膨張によるハウジング2の変位を軸線方向に直線的に案内することができる。
【0060】
このため、熱膨張で生じた軸線AX方向のハウジング2の変位のほぼ全てを直線案内機構5が第2の固定台4側(図中矢印X1方向)に移動することにより吸収することができる。これにより、軸線AX方向の取付面1aの位置の変化を抑制することができる。
【0061】
また、熱膨張によるハウジングの変位を軸線AX方向に直線的に案内することができるため、第2の固定台4が高さ方向に変形することを抑制することができる。これにより、取付面1aの高さ方向の位置の変化を抑制することができる。
【0062】
また、第2の固定台4が高さ方向に変形することを抑制することができるため、第1の固定台3と第2の固定台4とによってハウジング2を設置面PSに対して略平行に保つことができる。そのため、ハウジング2は設置面PSに対して平行移動することができる。これにより、取付面1aが設置面PSに対して傾くことを抑制することができる。
【0063】
上述のように取付面1aの位置の変化を抑制することができるため、加工物の位置の変化を抑制することができる。これにより高精度な加工を行うことができる。
【0064】
また。本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、第2の固定台4は、設置面PSに固定される固定部材41と、ハウジング2に取り付けられ、かつ直線案内機構5により固定部材41に対して相対的に移動可能な支持部材42とを有する。これにより、熱膨張によるハウジング2の変位を軸線AX方向に直線的に案内することができる。
【0065】
また、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、直線案内機構5がリニアガイド51で構成されていてもよい。これにより、リニアガイド51で熱膨張によるハウジング2の変位を軸線AX方向に直線的に案内することができる。
【0066】
また、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、直線案内機構5が滑り軸受52で構成されていてもよい。これにより、滑り軸受52で熱膨張によるハウジング2の変位を軸線AX方向に直線的に案内することができる。
【0067】
また、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、直線案内機構5が静圧気体軸受スライド53で構成されていていてもよい。これにより、静圧気体軸受スライド53で熱膨張によるハウジング2の変位を軸線AX方向に直線的に案内することができる。
【0068】
なお、
図14を参照して、環境の温度変化または静圧気体軸受スピンドルの回転軸1の回転に伴う発熱によって、ハウジング2の温度が上昇した場合、ハウジング2は径方向(図中矢印Y1方向)に大きくなるように変形する。この場合、ハウジング2の軸線AXを中心に径方向にハウジング2は変形する。そのため、軸線AXの位置でハウジング2と第1の固定台3および第2の固定台4とが固定されると、ハウジング2の径方向の変形によって第1の固定台3および第2の固定台4は高さ方向に変位しない。そのため、第1の固定台3および第2の固定台4の固定ボルト6aの位置は、軸線AXと同じ高さにすることが望ましく、現実的には軸線AXと限りなく近い高さにすることが好ましい。
【0069】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、特に説明しない限り、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0070】
実施の形態1では熱膨張による変位を影響のない方向に逃がす構造を説明したが、あわせて熱膨張の変位量そのものを抑制する構造も適用することができる。
【0071】
再び
図1を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、構成部品の一部または全てが低い熱膨張係数を有する材料(低熱膨張材)で構成されている。より具体的には、第1の固定台3および第2の固定台4が熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質で構成されていることが好ましい。特に、第2の固定台4が熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質で構成されていることが好ましい。熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質として、たとえばインバー、セラミックなどが適用され得る。
【0072】
また、第1の固定台3および第2の固定台4が冷却機構を有していてもよい。特に、第2の固定台4が冷却機構を有していることが好ましい。
【0073】
図15を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの変形例1の第2の固定台4は、冷媒を内部に流すことで冷却することができる冷却機構を有している。第2の固定台4は、供給口4aと、流路4bと、排出口4cとを有している。第2の固定台4の内部に設けられた流路4bの両端に第2の固定台4の外部に開口する供給口4aおよび排出口4cが配置されている。
【0074】
供給口4aより供給された冷媒としての気体または液体が流路4bを通って排出口4cから排出される。流路4bに気体または液体が流されることで第2の固定台4が冷却される。
【0075】
また、冷却機構は冷却フィンであってもよい。
図16を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの変形例2の第2の固定台4は、外周面に冷却フィン4dを有している。
【0076】
次に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について、比較例と比較して説明する。
【0077】
図17を参照して、本実施の形態の比較例の静圧気体軸受スピンドルでは、環境の温度変化または静圧気体軸受スピンドルの回転軸1の回転に伴う発熱によって、第1の固定台3および第2の固定台4が熱膨張のために変形している。
【0078】
第1の固定台3および第2の固定台4が温度上昇によって熱膨張した場合、熱膨張によって設置面PSを基準に上方向(図中矢印Y2方向)にハウジング2が持ち上げられる。その結果、第1の固定台3および第2の固定台4がハウジング2の軸線AXの位置で固定されている場合でもハウジング2は上方に距離D2だけ変位する。これにより、取付面1aも上方に変位するため、取付面1aの位置が変化する。
【0079】
これに対して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、第2の固定台4が熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質で構成されているため、第2の固定台4の熱膨張を抑制することができる。これにより、第2の固定台4の熱膨張に起因する取付面1aの位置の変化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、第2の固定台4が流路4bに気体が流されることで冷却されるように構成されているため、気体で冷却されることによって第2の固定台の熱膨張に起因する取付面1aの位置の変化を抑制することができる。
【0081】
また、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、第2の固定台4が流路4bに液体が流されることで冷却されるように構成されているため、液体で冷却されることによって第2の固定台4の熱膨張に起因する取付面1aの位置の変化を抑制することができる。
【0082】
また。本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、第2の固定台4は、冷却フィン4dをさらに備えているため、冷却フィン4dで冷却されることによって第2の固定台4の熱膨張に起因する取付面1aの位置の変化を抑制することができる。
【0083】
なお、低熱膨張材と冷却機構とが併用されてもよい。つまり、熱膨張係数8×10
-6/K以下の材質で冷却機構が構成されてもよい。これにより、さらに安定した性能を発揮することができる。
【0084】
上記の各実施の形態は適宜組み合わせられ得る。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。