(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744687
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】脱気器
(51)【国際特許分類】
F22D 1/28 20060101AFI20150618BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
F22D1/28 A
B01D19/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-204149(P2011-204149)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2013-64568(P2013-64568A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 広行
(72)【発明者】
【氏名】今津 秀一
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−232001(JP,A)
【文献】
特開平07−190306(JP,A)
【文献】
特開昭51−150170(JP,A)
【文献】
実開平02−095502(JP,U)
【文献】
特公昭39−027147(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/28
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水をスプレイバルブによって脱気器胴体内に噴霧粒として導入し、前記噴霧粒を前記脱気器胴体に導入されたタービン抽気蒸気との直接接触により加熱して脱気する脱気器であって、
前記スプレイバルブ出口付近における噴霧粒を微細化する機構を設け、
前記スプレイバルブ出口付近における噴霧粒を微細化する機構として、前記スプレイバルブの出口付近に高速蒸気を吹き付ける高速蒸気噴出部を前記脱気器胴体内に設けたことを特徴とする脱気器。
【請求項2】
請求項1において、前記スプレイバルブ出口付近における噴霧粒を微細化する機構として、さらに、前記スプレイバルブの出口形状を波状としたことを特徴とする脱気器。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記スプレイバルブ出口付近に、脱気器下部に向けて開口部を有する覆い板を設けたことを特徴とする脱気器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱気器に係り、特に発電プラント用の脱気器に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント用の脱気器は、タービン抽気蒸気による復水の脱気と熱交換を行う。発電プラント用の脱気器として、スプレイトレイ式脱気器が用いられている。スプレイトレイ式脱気器は、復水(給水)を脱気室上部のスプレイバルブから噴射し、復水の噴霧粒と蒸気との直接接触で熱交換を行い、復水の噴霧粒を運転圧力に相当する飽和温度まで上昇させて溶存酸素を脱気させる。さらに、飽和温度まで上昇された復水の噴霧粒を、スプレイバルブの下方に設けた脱気トレイで蛇行流下させ、脱気器トレイ内を上昇する蒸気との接触でさらに脱気させる。このような脱気器としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-262809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプレイトレイ式脱気器では、試運転時など特殊な運転環境において脱気器内の圧力が降下したとき、脱気器下部の給水出口管内部のフラッシュにより貯水が一気に噴き上げられ、貯水部の上部に設置された脱気トレイを損傷する可能性がある。特許文献1では、脱気トレイ損傷に対しては、保護部材等を設置することで対策している。しかしながら、保護部材を設けた場合、そのメンテナンスや交換等が必要となる。脱気トレイそのものを削除することが出来れば、フラッシュによる損傷のポテンシャルをなくし、かつ、メンテナンスフリーを実現出来る。
【0005】
本発明の目的は、脱気トイレがなくても十分な脱気性能を発揮することが可能な脱気器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スプレイバルブからの噴霧粒をスプレイバルブ出口付近において微細化する機構を設けたことを特徴とする。
【0007】
スプレイバルブ出口付近の噴霧粒を微細化する機構としては、例えば、スプレイバルブ出口後方より高速蒸気を吹きつけ、スプレイバルブからの噴霧粒をより微細化し、脱気器胴体内に散布させる構成が用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、噴霧粒をスプレイバルブ出口付近でより細かくして比表面積を大きくしているので、抽気蒸気による脱気を効率良く行うことができ、脱気トイレがなくても十分な脱気性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例である脱気器の構造を示す図。
【
図2】本発明による効果を示す噴霧粒径と温度の関係を示す図。
【
図3A】スプレイバルブ出口付近の噴霧状況を示す図。
【
図3B】本発明の一実施例であるスプレイバルブ出口形状を波形状にした場合のスプレイバルブ出口付近の噴霧状況を示す図。
【
図4A】スプレイバルブ周りの覆い板が設けられていない場合の脱気器胴体内の状況を示す図。
【
図4B】本発明の一実施例であるスプレイバルブ周りに覆い板を設けた場合の脱気器胴体内の状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を用いて本発明の一実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の一実施例である脱気器の構造を
図1に示す。復水器で凝縮された復水は復水入口1を通り脱気器に導かれる(必要に応じて復水は低圧給水加熱器で加熱されてから脱気器に導かれる。)。復水入口1からの復水は、スプレイバルブ2によって脱気器胴体3内に噴霧粒4となり導入される。
【0012】
従来の脱気器では、噴霧粒4は蒸気入口管台5から脱気器胴体3に導入されたタービン抽気蒸気6により、直接接触により加熱され、非凝縮ガス(溶存酸素)が脱気される。噴霧粒4はさらに脱気トレイを蛇行流下することで、第2の脱気が促進されている。
【0013】
脱気器では、脱気の大半は抽気蒸気中での加熱で行われるとされ、噴霧粒をスプレイバルブ出口付近でより細かく出来れば比表面積は大きくなりトレイが無くても十分な脱気が可能になると考えられる。現在のスプレイバルブは、バルブ内部の復水の圧力で、スプリングで閉じられている弁体を押すことにより出来る隙間から、
図3Aに示すように円周方向に復水が噴出する構造となっている。このような構造のスプレイバルブからの噴霧では噴霧粒が大きく、脱気器性能を確保するためには、脱気トレイが必要となる。
【0014】
本実施例では、スプレイバルブ出口付近の噴霧粒を微細化する機構として、スプレイバルブ2の後方に設置した高速蒸気9をつくり出す高速蒸気噴出部10を用いている。スプレイバルブ2からの噴霧粒4に高速蒸気9を吹き付けることで、噴霧粒4をより微細化し、脱気器胴体内に散布させるようにしている。
【0015】
図2に噴霧粒径と温度の関係を示す。噴霧粒4の径が小さいほど外表面から加熱されやすく脱気効率が増す。噴霧粒4とタービン抽気蒸気6との直接接触により加熱脱気されることから、噴霧粒4をさらに微細化し比表面積を大きくすることで脱気効率が増し、脱気トレイが無くても十分な脱気性能を持つ脱気器が可能となる。
【0016】
また、本実施例では、
図1に示すように、スプレイバルブ2からの噴霧粒4に高速蒸気8を吹き付けることで、脱気器胴体内の噴霧粒4とタービン抽気蒸気6の攪拌11により脱気と熱交換がさらに促進される。
【0017】
本実施例によれば、従来のスプレイトイレ型脱気器に比べ、噴霧粒が微細化されることで、抽気蒸気との接触面積が大きくなり脱気性能を向上することができる。その結果、脱気トレイを取り除いても十分な脱気ができることから、試運転等の特殊運転環境における脱気器損傷のポテンシャル(脱気器下部の給水出口管8内部のフラッシュにより貯水が一気に噴き上げられ、貯水部の上部に設置された脱気トレイを損傷するなどのポテンシャル)が低減される。
【実施例2】
【0018】
本実施例は、スプレイバルブ出口付近の噴霧粒を微細化する機構として、スプレイバルブの出口構造を工夫することにより、スプレイバルブ出口付近の噴霧粒をより微細化するものを用いている。
【0019】
従来のスプレイバルブ2の出口形状は、
図3Aに示すように、直線形状であるため、同図の下方に示すように出口付近では復水がシート状となっている。シート状復水12は拡散後に粒化している。
【0020】
本実施例では、
図3Bに示すように、スプレイバルブ2の出口形状を波状の出口形状13にすることで、噴出口を長く薄くしスプレイバルブからの噴霧粒径を小さくするようにしている。この波状の復水出口構造により、噴出水を薄くでき、スプレイバルブ出口付近における噴霧粒の微細化が可能とり、抽気蒸気との熱交換が促進される。
【0021】
さらに、上述の実施例1(スプレイバルブ2後方から高速蒸気8を吹き付け)と組み合わせることで、噴霧粒4のさらなる微細化と、脱気器胴体内の噴霧粒4とタービン抽気蒸気6の攪拌が促進され、脱気と熱交換がさらに促進される。
【0022】
本実施例によれば実施例1と同様に脱気性能を向上することができ、試運転等の特殊運転環境における脱気器損傷のポテンシャルが低減される。
【実施例3】
【0023】
本実施例はスプレイバルブ出口付近に覆い板を設けることで脱気効率を向上させるものである。
【0024】
図4Aに示すように、覆い板が設けられていない場合、スプレイバルブ2から噴出され、高速蒸気噴出部10からの高速蒸気によりさらに微細化された噴霧粒4はタービン抽気蒸気と熱交換される。しかし、脱気器胴体3に付着し液滴15になると抽気蒸気との熱交換が十分行われず、脱気されずにそのまま胴体内面に沿って貯水部に滴る。
【0025】
本実施例では、
図4Bに示すように、スプレイバルブ2の復水出口部周囲に覆い板14を設けている。本来なら胴体内面を滴る未脱気水を、覆い板14の内面に捕捉し、スプレイバルブ2の後方に位置する高速蒸気噴出部10から覆い板内に高速蒸気を吹きつけ攪拌することで、再度微細化に導くことが可能となり、再度加熱脱気させることが可能となる。
【0026】
尚、本実施例の覆い板14は脱気器下部の給水出口管の上部に位置しないように開口部が設けられているので、給水出口管内部のフラッシュによる損傷の可能性は低い。
【0027】
本実施例によれば実施例1と同様の効果を奏することができ、特に、脱気性能をより向上することができる。また、本実施例は上述の実施例2との組み合わせることも可能であり、この場合さらに脱気性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・復水入口、2・・・スプレイバルブ、3・・・脱気器胴体、4・・・噴霧粒、5・・・蒸気入口管台、6・・・タービン抽気蒸気、8・・・給水出口管、9・・・高速蒸気、10・・・高速蒸気噴出部、11・・・噴霧粒と蒸気の攪拌の様子、12・・・シート状復水、13・・・波状の出口形状、14・・・覆い板、15・・・液滴。