(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電池モジュールの長さ方向に沿って見た断面における貫通穴の大きさLが、前記一方の側における電池モジュールと仕切り板との間隔hに対し、0.85≦L/h≦2.0 とされたことを特徴とする請求項1に記載の電池冷却構造。
最上流列の電池モジュールと、2列目の電池モジュールとの間の間隔h2が、電池モジュールの直径Dに対し、0.05≦h2/D≦0.19 とされたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池冷却構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の電池冷却構造の実施形態について、ハイブリッド自動車用の組電池を収容する電池ケースを例にして説明する。
図1は本発明の電池冷却構造の実施形態の冷却風の流れ方向に沿った断面図である。また、
図2は本実施形態の電池冷却構造の流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
【0017】
箱状の電池ケース1の内部空間には、棒状の電池モジュール2,2が所定の間隔で平行に配置されている。電池モジュール2,2は直列あるいは並列に電気的に接続されて組電池を構成する。本実施形態においては、電池モジュールを構成する電池はニッケル水素バッテリーであり、電池を直列に接続した電池モジュール2は円柱状の棒状の形状となっている。本発明においては特に円柱状の電池モジュールが好ましく使用される。なお、電池モジュールは1つの電池で構成されるものであっても良い。
【0018】
図1では、図の紙面奥行き方向に電池モジュール2、2が延在するように配置されており、21本の電池モジュール(もしくはダミーモジュール)が3列×7本の格子状に配置されている。各電池モジュール2,2は、電池ケース1の内面や隣接する電池モジュールとの間に所定の間隔(隙間)を有し、その隙間に冷却風が流れるように、スペーサや支持部材によって、箱状の電池ケース内部に収容、支持されている。本実施形態においては、電池モジュール付近で全体として図の上側から下側に向かって冷却風が流れるようにされており、その意味で、格子状に配列された3列の電池モジュールを、以下、上流側(あるいは上段)電池モジュール、中流(あるいは中段もしくは2段目)電池モジュール、下流側(あるいは下段)電池モジュールと呼ぶことがある。
【0019】
電池ケース1は金属や合成樹脂により成形された中空の箱状の部材であり、電池ケース1には冷却風導入口11と冷却風導出口12が設けられて、電池ケース1の内部空間が冷却風通路となる。そして電池ケース1は、冷却風導入口11や冷却風導出口12がダクトや送風ファンなどの周辺部材と接続されて一連の冷却風通路となって、組電池の冷却に使用される。
【0020】
本実施形態では、冷却風導出口12の下流側に送風ファン(図示せず)が設けられて、図の左上の冷却風導入口11の上流側に接続される冷却風ダクト(図示せず)から、冷却風が電池ケース1の内部に流れ込み、電池モジュール2,2と電池ケース1との間の隙間を通りながら電池を冷却して、冷却風導出口12から図の右下側へと暖められた冷却風が流れ出ていく。
【0021】
本発明においては、電池ケース1の内部に、電池ケースの内部空間を冷却風導入口側と冷却風導出口側とに仕切り、冷却風の流れをさえぎるように、流れ制御板13が設けられている。そして、流れ制御板13は、最上流側(上段)の電池モジュール2よりも上流側となる位置に、即ち全ての電池モジュール(組電池)よりも上流側となる位置に、電池ケース1に対して一体に取り付けられている。
【0022】
流れ制御板13は、
図2にその詳細な断面形状を示すように、略平板状の制御板本体131に、複数の貫通穴(開口穴)132、132が、電池モジュールの長さ方向に沿って(
図2では紙面奥行き方向に)設けられるとともに、電池モジュールの長さ方向に沿う複数の仕切板133が制御板本体131から立設されて構成されている。
流れ制御板13によって上流側と下流側に分け隔てられた電池ケース1の内部空間は、これら貫通穴132,132を介して上流側と下流側が連通するようにされており、下流側に設けられた組電池(電池モジュール2、2)は、これら貫通穴から吹き出る冷却風により冷却される。
【0023】
本実施形態における流れ制御板13の構造をより詳細に説明する。制御板本体131に設けられる貫通穴132,132は、それぞれの貫通穴が、電池モジュールの長さ方向に延在するような長穴もしくはスリット状となるように形成されている。これら貫通穴は、それぞれの電池モジュールの全長にわたって設けられる。そして、本実施形態においては、上段の電池モジュールのそれぞれに対して、貫通穴132が電池モジュールの中心よりも下流側(図の右側)にオフセットした位置に設けられる。即ち、貫通穴は、全体として、電池モジュールに対して上流側あるいは下流側のいずれか一方の側に偏在して設けられている(本実施形態では、下流側に偏在している)。なお、本実施形態においては、流れ制御板13の上流側領域では冷却風は図の左側から右側へと流れるため、流れ制御板に設けられる貫通穴の位置については、左側を上流側、右側を下流側と表現している。
【0024】
さらに、本実施形態においては、全ての上段電池モジュールに対して、貫通穴132,132がそれぞれの電池モジュールに対し下流側(
図2で右側)に偏在するように設けられている。特に、本実施形態においては、貫通穴132、132は、電池モジュールに対し下流側のみに、仕切り板133に隣接した位置に設けられている。
【0025】
制御板本体131に立設される仕切板133,133について詳細に説明する。仕切り板133,133は上段電池モジュールの間を仕切るように設けられている。仕切板133,133は、制御板本体131から、上段の電池モジュール2,2の間の空間に向かって、電池モジュールの長さ方向に沿うようなリブ状に立設されている。仕切板133,133は、上段の電池モジュールの間の空間のそれぞれに対して、上段の電池モジュールの間の空間Cに達する程度の長さに設けられる。ここで、空間Cとは、上段の互いに隣接する電池モジュールの間の空間のことであり、
図2にその領域を点線で囲って示す。本実施形態においては、仕切板133,133は、上段の電池モジュールの間の領域の全てに対して設けられると共に、仕切板133,133は、上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mに達するような長さに設けられている。
【0026】
そして、仕切板133と電池モジュール2との間隔は、貫通穴132が偏在して設けられた側における仕切り板133と電池モジュール2の間隔hが、電池モジュールの直径をDとして、0.04≦h/D≦0.12、より好ましくは、0.05≦h/D≦0.11となるように設けられる。本実施形態においては、h/D=0.072とされている。
【0027】
仕切板133の先端部と上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mとの関係は、先端が中心線mに達しない場合には、仕切板133先端と線mとの間の距離d3が、電池モジュールの半径をrとして、d3<r、より好ましくは、d3<0.5*r、さらに好ましくは、d3<0.2*rとなるようにすると良い。ここで、本実施形態のように仕切板133の先端部が上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mと一致するようにしたり、仕切板133の先端部が上段の電池モジュールの中心を結ぶ線mよりも長く(即ち下流側(図下側)に延在して)設けられることもまた好ましい実施の形態であり、この場合の突き出し量も、前記d3と同様の数値範囲とすることが好ましい。
【0028】
また、貫通穴132の大きさ(電池モジュールの長さ方向に沿って見た断面における貫通穴の寸法)Lは、仕切り板133と電池モジュール2の間の前記隙間hに対し、0.80≦L/h≦2.5、より好ましくは、0.85≦L/h≦2.0となるように設けられる。本実施形態においては、L/h=1.09とされている。
【0029】
また、最上流列の電池モジュールと2列目の電池モジュールとの間の間隔h2は、電池モジュールの直径をDとして、0.03≦h2/D≦0.21、より好ましくは、0.05≦h2/D≦0.19となるように設けられる。本実施形態においては、h2/D=0.085とされている。
【0030】
本実施形態における電池モジュールの配列や流れ制御板13の主要な具体的寸法は以下のとおりである。電池モジュール2,2は3列x7本の格子状に配列され、電池モジュール2の直径は32mmであり、電池モジュールの中心間の左右の間隔は39mmとなるように配置されている。
【0031】
流れ制御板13は、最上流(上段)の電池モジュール表面から上流側に3mm隔てた位置に制御板本体131が位置するように設けられている。流れ制御板の制御板本体131に設けられる貫通穴132、132の大きさL(
図2で左右方向)は2.5mmで設けられている。そして、仕切板133は、厚さ2mmで立設されて、最上段電池モジュールの中心を結ぶ線mに達する位置まで延在している。また、貫通穴が設けられた側(電池モジュールの右側)における電池モジュールと仕切板の間隔hは2.3mmとされている。また、最上流列の電池モジュールと2列目の電池モジュールの間の隙間h2は、2.7mmとされている。
【0032】
上記電池冷却構造を構成する電池ケースの製造方法は、公知の製造方法により行うことができ、例えば、電池ケース1は開口状の箱と蓋に分けたケース部材を合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができる。流れ制御板13も合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができ、可能であれば、電池ケース1のケース部材と一体成形してもよい。もちろん、流れ制御板13を金属板や合成樹脂の射出成形などによりケースとは別体に作成して、電池ケース組み立て時に所定位置に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
電池ケース1内の所定位置に電池モジュールを並べて、電池モジュール間の配線を確立し、流れ制御板を組み込んだ状態で電池ケースの蓋を閉じて、上記実施形態の組電池が収蔵された電池ケースおよび電池冷却構造が完成される。
【0034】
本発明の電池冷却構造による作用と効果を説明する。
本発明の電池冷却構造においては、電池モジュールに対し偏在するように流れ制御板13に設けられた貫通穴132,132と、立設された仕切板133,133と、円柱状の電池モジュール2,2との相互作用によって、流れ制御板13よりも下流の流れが、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような流れとなるようにできる。
【0035】
上記実施形態に基づいて説明すると、
図3において、図の左上から右側に向かって流れ込んでくる冷却風は、貫通穴132,132を通過して、電池モジュール2,2が収容された空間に流れ込む。ここで、流れ制御板13には、仕切板133,133が上段の電池モジュール間の空間に達するように設けられているため、貫通穴132,132を通過した冷却風は、電池モジュール2と仕切板133,133との間の隙間から下流側へと流れていくことになる。
【0036】
そして、本実施形態においては、上述したように、上段電池モジュールの中心に対して貫通穴が全体として下流側(
図2や
図3の右側)に偏在するように設けられているため、電池モジュール2と仕切板133,133との間の隙間から下流側へと流れていく冷却風の流れは、貫通穴が偏在する側(電池モジュールに対し図の右側)が主たる流れとなり、反対側(貫通穴が少ない(もしくはない)側:電池モジュールに対し図の左側)にはあまり冷却風が流れなくなる。
【0037】
そして、本発明ではさらに、貫通穴が偏在して設けられる側で、電池モジュール2と仕切り板133との間の間隔hが、0.04≦h/D≦0.12とされているので、電池モジュール2と仕切り板133との間から吹き出す冷却風が、最上段電池モジュールに巻きつくように流れて、電池モジュール周りを蛇行する冷却風流れが実現され、上段電池と2段目電池の温度差が低減される。
【0038】
冷却風流れが蛇行するメカニズムは、以下に説明するように、コアンダ効果の影響が支配的であろうと推察される。即ち、気流を物体表面に沿って流すと、気流が物体の表面形状に沿って曲がろうとする、いわゆるコアンダ効果が生ずる。この効果は上段電池モジュールの側部を通過する気流においても生ずる効果である。ここで、上段の電池モジュール2uの両側部を流れる冷却風の主たる流れは、貫通穴が偏在した側の流れであり、その側の電池モジュール2と仕切り板133との間の間隔hが所定の幅にされているので、その側でコアンダ効果が顕著に現れる。その結果、それぞれの電池モジュールの側部を通過した冷却風流れは、主たる流れの側の冷却風(図中の白抜き矢印で示される流れ)が、上段電池モジュール2u周りに巻きつくように流れるようになる。
【0039】
そして、上段電池モジュール2u周りに巻きつくように流れた冷却風は、中段の電池モジュール2mの上側表面に沿って吹付けられるようになり、今度は、中段の電池モジュール2m周りに巻きつくように流れるようになる。
【0040】
このようにして、本発明によれば、円柱状の電池モジュールの周りに生ずるコアンダ効果を利用して、上段電池モジュールや中段電池モジュールの周辺に、冷却風が蛇行して流れる流れ場が実現されることになる。
【0041】
この流れ場の様子を、数値流体シミュレーションにより求めた流速分布図として、
図4に示す。
図4は、
図1に示した第1実施形態の電池冷却構造で行った数値シミュレーションの結果の、
図1に破線で囲って示した領域の速度分布である。図中、色の濃い部分が流速の高い領域を、色の薄い部分が流速の低い領域を示している。
【0042】
シミュレーション結果に示すように、上段の電池モジュールと仕切り板の間から吹き出す冷却風は、貫通穴が偏在する側(上段電池モジュールの右側)が主たる流れとなるように流れている。そして、その側の冷却風流れが、上段電池モジュールに巻きつくように流れて、上段電池モジュールと中段電池モジュールの間を流れ、さらに、中段電池モジュールに巻きつくように流れて、下段電池モジュールに向かい、全体として、冷却風流れが、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような流れとなった様子が観察される。
【0043】
一方、電池モジュールに対し貫通穴が対称に配置されるとともに仕切板も存在しない従来の冷却風制御板を用いた比較例の数値シミュレーションを行うと、
図7に示すような流れの解が得られた。
図7の比較例の解析結果においては、上段の電池モジュールの間を流れた冷却風流れは、大部分がそのまま中段の電池モジュールの間に流れ込みながらその勢いを失ってしまい、上段電池モジュールと中段電池モジュールの間や、中段電池モジュールと下段電池モジュールの間に、流速が低いよどみ領域が存在しやすいことがわかる。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、上段電池モジュールや、それに後続する電池モジュールの周りに、格子状に配置された電池モジュールの間を蛇行するような冷却風流れを生じさせることができる。すると、
図7の比較例の解析結果に見られたような、電池モジュール間のよどみ領域にも冷却風が効果的に導かれるようになって、特に中段の電池モジュールの周りに冷却風流れを導いて、これら電池モジュールを効率的に冷却できるようになる。
【0045】
従って、本発明によれば、中段以下の電池モジュール周りの冷却風流れを効果的に改善して、組電池を構成する電池モジュール間の温度差を少なくして、電池温度を効果的に均一化することができる。
【0046】
また、貫通穴132の大きさ(電池モジュールの長さ方向に沿って見た断面における貫通穴の寸法)Lが、仕切り板と電池モジュールの間の前記隙間hに対し、0.85≦L/h≦2.0 となるように設けられていると、電池モジュール間の流れが、効果的に蛇行するようになって、電池温度の均一化に寄与する。
L/hが大きくなりすぎると、貫通穴を偏在して設けた側を流れる主たる冷却風流れと反対側の冷却風流れの差が小さくなって、冷却風の蛇行が起こりにくくなる傾向がある。
逆に、L/hが小さくなりすぎると、冷却風の送風抵抗が大きくなって、電池冷却システム全体の冷却効率が低下しやすくなる。
【0047】
そして、L/hを0.85≦L/h≦2.0という所定範囲に設定すると、上段電池モジュール表面の電池温度の温度ムラを少なくできるという効果も得られる。これは、L/hが適度な範囲にあれば、主たる流れの側の空気流が上段電池の右下側を巻き込むように流れる一方で、上段電池モジュールの左上側にも一定量の冷却風流れを実現し、上段電池モジュールの上側部分も冷却できるからである。即ち、Lがhに比べ小さい場合には、貫通穴を通過した冷却風のかなりの部分が、そのまま、電池モジュールの片側に流れていくのに対し、Lがhに比べ大きくなるに従って、貫通穴を通過した冷却風が電池モジュールの反対側にも流れ込みやすくなる。そして、上段電池モジュールにおける電池の最高温度を下げることができ、温度ムラが少なくなる。
【0048】
また、最上流列の電池モジュールと2列目の電池モジュールとの間の間隔h2が、電池モジュールの直径をDとして、0.05≦h2/D≦0.19 となるように設けられていると、冷却風流れが、第2列目の電池モジュールにより効果的に巻きつくようにすることができ、第2列目の電池や第3列目の電池を効果的に冷却して、電池温度の均一化に寄与する。
h2/Dが大きすぎると、冷却風流れが第2列目の電池モジュールに巻きつく効果が弱まる傾向がある。逆に、h2/Dが小さすぎると、最上段の電池モジュールに巻きつくように流れてきた冷却風流れをブロックしてしまうことになり、冷却風の蛇行流れが邪魔されやすくなる。
【0049】
電池温度の均一化の効果の確認を行うために、以下に示す実施例、参考例および従来例に対し、数値流体シミュレーションを行うと共に、各電池モジュールに所定の発熱量を設定した、各電池モジュールの冷却温度シミュレーションを実施した。
【0050】
表1ないし表3には、実施例などの諸元を示す。実施例1は、上述した第1実施形態に対応する実施例であり、実施例2,3及び参考例1,2は、実施例1に対し、電池と仕切り板との間の寸法hを変化させた例である(表1)。参考例1、実施例2、実施例1、実施例3、参考例2の順にh(h/D)が大きくなるようにされている。また、従来例は、
図7に示したような、仕切り板がなく、貫通穴の偏在もしていない構造における例である。
【0052】
実施例4,5,6,7及び参考例3,4は、実施例1に対し、流れ制御板の貫通穴133の幅寸法Lを変化させた例である(表2)。参考例3、実施例4、実施例1、実施例5、実施例6、実施例7、参考例4の順にLが大きくなる(すなわちL/hが大きくなる)ようにされている。
【0054】
実施例8,9及び参考例5,6は、実施例1に対し、上段電池モジュールと2段目の電池モジュールとの間の寸法h2を変化させた例である(表3)。参考例5、実施例8、実施例1、実施例9、参考例6の順にh2(h2/D)が大きくなるようにされている。
【0056】
電池間を流れる冷却風流れの様子(流れシミュレーションの結果)は、
図4に実施例1の結果を、
図5に実施例6の結果を、
図6に実施例9の結果を、
図7に従来例の結果を示している。各実施例においては、冷却風が上段電池モジュールと2段目の電池モジュールの間を縫うように蛇行して流れている様子がわかる。一方で、従来例においては冷却風の蛇行流れがなく、よどんだ領域が2段目の電池周りに広がっている。
【0057】
それぞれの仕様に対する冷却温度シミュレーションにおいては、上段電池モジュールと2段目電池モジュールの温度差を評価し、同じ冷却風風量・諸元(流れ制御板を除くケース形状、電池直径・配置、発熱量など)で、各仕様間の比較を行った。その結果を表4に示す。表4には、それぞれの仕様における、上段電池モジュールの電池平均温度と2段目電池モジュールの電池平均温度の温度差を示している。また、それぞれの仕様において、所定の冷却風流量を流すために要した圧力損失も示している。
【0058】
電池の平均表面温度の評価は、
図1に示す上段の電池モジュールや中段の電池モジュールに対し、それぞれ、電池モジュールの電池表面温度を電池周方向に平均して、各電池モジュール表面の平均温度を計算し、更に上段電池や中段電池(2段目の電池)でその平均を求めて、上段電池平均温度と2段目電池平均温度を求めた。そして、上段と2段目の電池平均温度の差でもって、上段電池と2段目電池の温度差を評価した。
【0060】
表4の解析結果によれば、以下のことがわかる。
実施例、参考例の全てにおいて、従来例と比べ、上段と2段目の間の電池の平均温度差が半減している。即ち、これら実施例参考例の全てに共通するように、0.04≦h/D≦0.12とすることにより、従来例と比べ顕著な電池温度均一化効果が得られることがわかる。
【0061】
より具体的には、
図8のグラフに示すように、実施例1,2,3及び参考例1,2を、従来例と対比すると、h/Dを、0.04≦h/D≦0.12とすることで、上段電池と2段目の電池の温度差を従来例と比べ半減できることがわかる。更に、h/Dを、0.05≦h/D≦0.11とすれば、上段電池と2段目の電池の温度差を従来例と比べ1/3以下に低減でき、電池温度均一化効果が特に高まることがわかる。
なお、h/Dが小さくなりすぎると、圧力損失が増加しやすくなるが、参考例1のようにh/Dが0.04よりも大きい範囲にあれば、圧力損失の増加はそれほど大きくない。
【0062】
表2および表4によって、実施例1,4,5,6,7及び参考例3,4を対比すると、L/hを変化させた際の傾向がわかる。L/hが2.0以下であれば(実施例1,4,5,6,7及び参考例3)、上段と2段目の電池の温度差は小さく(従来例の1/3以下に)保たれる。L/hが2.0を超えると(参考例4)電池温度差が大きくなる傾向がある。
また、L/hが小さくなると通気抵抗が増加する傾向があるが、L/hが0.85を下回ると(参考例3)通気抵抗の増加が顕著となりやすい。
【0063】
また、L/hを、0.85≦L/h≦2.0とした場合には、上段電池モジュールの温度ムラが小さくなるという追加の効果も得られる。上段電池モジュールの温度ムラは、それぞれの上段電池モジュールにおける周方向の表面温度分布の中での最高温度と最低温度の差を温度ムラとして、温度ムラを上段電池モジュール間で平均することにより評価した。
【0064】
上段電池の温度ムラについて、
図9のグラフに実施例1,4,5,6,7及び参考例3,4を対比した、上段電池温度ムラの評価結果を示す。全体として、L/hが大きいほど、温度ムラが小さくなる傾向がある。そして、0.85≦L/h≦2.0という範囲において、電池温度ムラが約3℃以下に小さくなる。また、1.25≦L/h≦1.75という範囲においては、電池温度ムラが約2.5℃以下となり特に小さくなる。
【0065】
L/hが大きい方が上段電池の温度ムラが小さくなる傾向となる理由は、
図4(実施例1)と
図5(実施例6)の流れの対比により理解される。L/hが小さいと(
図4に対応)、貫通穴を通過してきた流れは、ほとんどが直進し、上段電池モジュールの左上の側には、あまり冷却風が回っていかない。そのため、この部分の冷却が不足しやすくなり、上段電池の温度ムラが大きくなりやすい。一方で、L/hが大きくなると(
図5に対応)、貫通穴を通過してきた冷却風流れの一部が上段電池モジュールの左上の側にも流れやすくなり、上段電池モジュールの左上の部分も冷却されやすくなって、温度ムラが小さくなる。
図5には、そのような電池左上側を流れる流れが現れている。
【0066】
電池表面の温度ムラが大きいと、電池寿命が短くなりやすいので、電池寿命向上のためにも、温度ムラを小さくすることが好ましい。従って、Lは0.85≦L/h≦2.0となるようにするのが好ましく、1.25≦L/h≦1.75となるようにするのが特に好ましい。
【0067】
図10のグラフに示したように、実施例1,8,9及び参考例5,6を対比すると、h2/Dを、0.05≦h2/D≦0.19の範囲にすると、上段と2段目の電池の温度差を特に小さくできることがわかる。
h2/Dが0.05よりも小さくなると(参考例5)、上段電池と2段目電池の間を冷却風が流れにくくなるため、冷却風が蛇行しにくくなって、上段と2段目の電池の温度差が大きくなる傾向がある。
逆に、h2/Dが0.19よりも大きくなると(参考例6)、上段電池と2段目電池の間を流れた冷却風が2段目電池に巻きつく効果が弱くなって、2段目電池の冷却性が悪くなって、上段と2段目の電池の温度差が大きくなる傾向が現れやすくなる。
【0068】
図4(実施例1)と
図6(実施例9)の流れを対比すると、h2/Dが大きい
図6(実施例9)よりも、h2/Dが小さい
図4(実施例1)の方が、上段電池と2段目電池の間を流れた冷却風が2段目電池にしっかり巻きついて流れている。参考例6のようにh2/Dが0.19よりも大きくなると、2段目電池への冷却風の巻きつきがもっと弱くなってしまい、2段目電池の冷却が不十分となって、上段と2段目の電池温度差が大きくなるものと考えられる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略する。
【0070】
まず、流れ制御板に設けられる貫通穴の変更例を説明する。流れ制御板に設けられる貫通穴は、上段電池モジュールが並ぶ方向において電池モジュールの中心に対しいずれか一方に偏在するようなものであれば特に限定されない。貫通穴を偏在させる具体的手段は、貫通穴の大きさ、位置、数などの手段で調整して偏在させることができる。
【0071】
図11には、流れ制御板に設けられる貫通穴を偏在させる他の構成の例を示す。
図11には上段電池モジュールの周辺部のみ示している。貫通穴は、
図11(a)に示すように、電池モジュールの一方の側(図中右側)に多く、他方の側(図中左側)に少なくなるように設けてもよい。本実施形態では、流れ制御板63には電池モジュールの一方の側に2列の貫通穴632を、他方の側に1列の貫通穴632を設けている。このようにすれば、数の多い側に貫通穴632が偏在したことになり、上記第1実施形態に準ずる効果が得られる。なお、本実施形態のように、複数の貫通穴が設けられる場合には、それぞれの貫通穴の寸法の和を取って、その和を第1実施形態におけるLと対応させればよい。
【0072】
あるいは、
図11(b)に示すように、貫通穴732の大小により、貫通穴を偏在させるようにしても良い。即ち、
図11(b)の実施形態においては、電池モジュールの一方の側(図中右側)の貫通穴が大きく(幅が広く)、他方の側(図中左側)の貫通穴が小さく(幅が狭く)なるようにされている。
【0073】
これら実施形態においても、貫通穴が偏在する側(貫通穴が大きい側・数が多い側)において、電池モジュール側部と仕切板の間を流れる冷却風流れが主たる流れとなって、第1実施形態と同様に、冷却風流れが電池モジュールの間を蛇行して、電池温度の均一化が図れる。
【0074】
第1実施形態の説明においては、貫通穴が電池モジュールの長さ方向に沿ったスリット状に設けられた例を説明したが、貫通穴の形態は、連続したスリット状のものに限定されず、円形状や長円状、矩形状、楕円状、メッシュ状の穴が、電池モジュールの長手方向に沿って連設されるような形態であっても良い。
また、貫通穴の詳細な形態は、例えば、
図11(a)の実施形態に示したように、貫通穴の上流側端縁に面取りが施されたような形態であっても良い。あるいは、
図11(a)に示したようなC面取りのかわりに端縁部にRをかけたような形態であっても良い。
【0075】
上記第1実施形態においては、それぞれの電池モジュールにおいて同じ側(
図2の右側)に貫通穴が偏在するようにされている。しかしながら、必ずしもこのようにしなければならないわけではない。例えば、
図12には、貫通穴が偏在する方向を、隣接する電池モジュールごとに互い違いにした例と、その際の冷却風流れを模式的に示す。なお、第1実施形態のように、それぞれの電池モジュールにおける貫通穴の偏在配置の方向が揃えられていれば、格子状に配置される電池モジュールの周りで、流速の高い部分と流速の低い部分とが交互に規則的に並ぶようになって、上記した蛇行する流れが規則的かつより明確に現れやすくなる。
【0076】
また、本発明の第1実施形態においては、仕切板133が、上段電池モジュールの中心を結ぶ線mまで延在するようにされている。このようにされていると、あるいは線mを越えて延在するようにされていると、上段電池モジュールの間を流れる冷却風流れにおいて、それぞれの電池モジュール側部を通過する流れが仕切られたより個別の流れとなるため、電池モジュールの左右で流速の差が現れやすくなって、冷却風流れの蛇行化や電池温度の均一化により効果的である。
【0077】
3段目以降の電池モジュールの冷却効率を高めるための具体的手段として、公知の冷却風ガイドなどを設けることもでき、特に本発明を限定するものではない。
【0078】
また、上記実施形態の説明においては、中空箱状の電池ケース1に組電池が収蔵される形態について説明したが、電池ケースの実施形態は、ケース専用に成形された中空箱状のものに限定されるものではなく、電池ケースは、パネル部材やブロック部材などの複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。例えば、車体のフロアパネル上に組電池を配置して、組電池を取り囲むように、断熱パネルや電極パネルを設けて、フロアパネルや断熱パネル、電極パネルの間を冷却風通路とした電池ケースを構成するようにすることもできる。このように、本発明における電池ケースには、専用の構成部材で構成された電池ケースのほか、組電池の周辺に配置される部材を利用・兼用して構成される電池ケースを含む。
【0079】
組電池を構成する電池の種類には、一次電池、二次電池(リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など)、二重電気キャパシタなどが例示できる。電池モジュールは、上記実施形態においては、棒状で特に円柱状のものについて説明したが、完全な円柱状に限定さるものではなく、コアンダ効果により流れの偏向効果が生じうる形状であれば、楕円形状やおむすび形状のような円柱状であってもよい。
【0080】
また、組電池の電池モジュールが配列される形態は、上記実施形態においては電池モジュール周りの流れの上流から下流にかけて3段の格子状に電池モジュールが配置される例について説明したが、電池モジュールの配列は3段に限定されるものではなく、流れ方向に沿って2段もしくは4段以上の段数にわたるものであっても良い。本発明によれば、特に最上段と最下段の間の中間の段(特に2段目)の電池モジュールの冷却効率を効果的に高めることができる。
【0081】
組電池が使用される目的・用途も、自動車用に限定されるものではなく、例えば、風力発電装置や太陽電池発電装置などにおいて発電電力を平準化する目的で二次電池が使用される用途など、広い用途に使用される組電池の冷却に本発明は活用できる。