特許第5744761号(P5744761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アセンブロン インコーポレイテッドの特許一覧

特許5744761脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収
<>
  • 特許5744761-脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収 図000004
  • 特許5744761-脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収 図000005
  • 特許5744761-脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収 図000006
  • 特許5744761-脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744761
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】脂肪族1級アミン又はジアミンからの水素の放出及び回収
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/00 20060101AFI20150618BHJP
   C07C 255/03 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C07C253/00
   C07C255/03
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-551200(P2011-551200)
(86)(22)【出願日】2010年2月17日
(65)【公表番号】特表2012-519658(P2012-519658A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010024504
(87)【国際公開番号】WO2010096509
(87)【国際公開日】20100826
【審査請求日】2011年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/153,147
(32)【優先日】2009年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506179262
【氏名又は名称】アセンブロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ナエミ エスマエル
(72)【発明者】
【氏名】オコナー ディヴィッド ジー
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−154629(JP,A)
【文献】 特開平03−217227(JP,A)
【文献】 特開2002−320846(JP,A)
【文献】 米国特許第02849478(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 253/00
C07C 255/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムであって、
(a)外部チャンバの内部に位置し且つ外部チャンバの外側に延びる内部反応器を有するフロースルー反応器と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ外部チャンバ内に位置した部位に水素分別膜から構成される第1壁と、外部チャンバの外側に位置した部位に不透過性材料の第2壁とを有する内部反応器であって、更に、該入口が、該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える内部反応器と、
(c)出口、内壁及び外壁を有し且つ前記内部反応器の触媒床部を取り囲んでいる外部チャンバであって、該内壁が、前記内部反応器の第1壁であり、更に、該出口が、前記内部反応器内で生成された精製水素を引き通す真空を備える外部チャンバと、
を備え、前記内部反応器内の脱水素化触媒が、コバルト、酸化コバルト又はRhとPtとの組み合わせである、反応器システム。
【請求項2】
脱水素化触媒が、アミンが1級脂肪族モノアミンの場合はCo又は酸化コバルトであり、アミンが1級脂肪族ジアミンの場合はRhとPtとの組み合わせである、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
前記外部チャンバ又は前記内部反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項4】
1級脂肪族モノアミン又はジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項5】
1級脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムであって、
(a)内部チャンバを取り囲んで位置した外周反応器を有するフロースルー反応器と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ前記内部チャンバを取り囲んで位置した部位に水素分別膜から構成される内壁と、前記内部チャンバの外側に位置した内部反応器の部位に不透過性材料の外壁とを有する外周反応器であって、更に、該入口が該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える外周反応器と、
(c)出口及び外壁を有する内部チャンバであって、該外壁が前記外周反応器の内壁であり、更に、該出口が、前記外周反応器内で生成された精製水素を引き通す真空を備える内部チャンバと、
を備え、前記外周反応器内の脱水素化触媒が、コバルト、酸化コバルト又はRhとPtとの組み合わせである、反応器システム。
【請求項6】
外周反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する、請求項5に記載の反応器システム。
【請求項7】
1級脂肪族モノアミン又はジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の反応器システム。
【請求項8】
脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル及びジニトリルに脱水素化するための方法であって、
(a)モノアミン及びジアミン又はその混合物を、蒸気の形態で、脱水素化触媒、入口及び出口を有する反応器に供給する工程であって、前記モノアミン又はジアミン又はその混合物が前記入口から供給され、前記脱水素化触媒がRhとPtとの組み合わせ、コバルト及び酸化コバルトからなる群から選択される工程、
(b)前記モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル又はジニトリル及び水素ガスに脱水素化するのに十分な熱を供給する工程、
(c)水素分別膜を通して又は不活性スイープガスを利用して水素ガスを物理的に除去する工程、及び
(d)前記出口における蒸気の凝縮及び凝縮液の回収によって、生成されたモノニトリル又はジニトリル及びその混合物を回収する工程
を含む、方法。
【請求項9】
脂肪族モノアミン又はジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スイープガスが、He、Ar及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脱水素化反応中に発生する全ての水素を除去するための水素分別(fractionation)膜(又はスイープガス)を備えた反応器システムにおいて低分子量脂肪族アミン及びジアミンを脱水素化してその対応するニトリルを産生することによる水素放出及び化学的貯蔵のための方法を開示する。更に、指定の反応条件下での対応するニトリル又はジニトリルを産生する1級アミン又はジアミンを使用した水素回収及び高密度水素放出のための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
自動車燃料電池の普及を阻む1つの大きな要因は、水素を貯蔵するための実用的な搭載手段がないことである。多くの方法が提案されてきたが(圧縮水素、金属水素化物、極低温水素、可逆的に水素化された液体、反応化学水素化物等)、各方法にはそれぞれ決定的な欠点がある(Ni,Energ.Explor.Exploit.24:197−209,2006、Ross,Vacuum 80:1084−1089,2006、Gray,Adv.Appl.Ceram.106:25−28,2007)。水素吸蔵液体の分野において、最適な特性には、(1)容易でクリーン、そして可逆的な脱水素化が可能であり、(2)脱水素化が可能な限り低い温度(少なくとも180℃未満)で熱力学的に促進されるに十分な低さの脱水素化エンタルピーを有し、(3)−40℃〜脱水素化温度まで液状且つ不揮発性であり、(4)少なくとも6質量%より高い、液体1リットルあたり45gH2の水素吸蔵能を有し(Satyapal et al.,Catal.Today 120:246−256,2007)、(5)操作温度で熱分解又は触媒分解に対して安定であることが含まれてきた。
【0003】
脱水素化エンタルピーは、一部の初期の有機水素吸蔵液体(ベンゼン/シクロヘキサン等)の採用を阻む課題であった(Cacciola et al.,Int.J.Hydrogen Energy 9:411−419,1984、Touzani et al.,Int.J.Hydrogen Energy 9:929−936,1984、Klvana et al.,Int.J.Hydrogen Energy 16:55−60,1991)。しかしながら、シクロヘキサンの脱水素化のエンタルピーは非常に高いことから、極めて高い温度が必要となる。
【0004】
窒素複素環の可逆的な脱水素化を調べるための、DOE(米国エネルギー省)がAir Products社に資金提供して行われた研究では、別の解決策が提案された(米国特許第7101530号)。ガウス計算は、少なくとも1つの窒素原子の環への取り込みによって、脱水素化エンタルピーを低下させることができることを示した。理論上、エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギー及び最適な脱水素化温度から、窒素原子の単環又は複素環構造への取り込み及び電子供与基の追加によって、水素が放出される温度が低下することが予測された(Clot et al.,Chem Commun.2231−2233,2007)。
【0005】
これに関して、炭素上のPd又はRh触媒を使用した場合、インドリンは、わずか30分の還流後に脱水素化によって転化した(商業利用には向いていない実験室環境)(Moores et al.New J.Chem.30:1675−1678,2006)。しかしながら、インドリンの水素含有量は低すぎるため(1.7質量%)、商業利用ができない。
【0006】
アミンの脱水素化
アミンは、様々な触媒を使用してニトリルに転化することができるが、その収率は、脱アミン化及びシアン化水素の生成をもたらす様々な副反応の影響を受ける。このため、アミンの選択的な酸化によるニトリルの連続フロー合成は、比較的非効率的な方法である。しかしながら、これらの副反応の速度は、触媒部位での水素及びニトリルの濃度と直接的な相関関係にあるため、アミンを酸化しながら生成された水素を迅速に除去することによって水素がアミン又はニトリルと反応する機会を減らすための様々な方法が研究されてきた。これらの反応における関心の対象となる生成物はニトリルであって水素ガスではなかったことから、除去すべきは水素ガスであって、多くの場合、水素ガスと反応する何らかの不飽和化合物を使用して除去された。これによってニトリルの収率が上昇することが判明した。
【0007】
一般反応は、以下の反応式:
RCH2NH2⇔RCN+2H2
アミン ニトリル
(式中、Rは脂肪族又は脂環式部分である)によって表わされる。好ましくは、反応の「生成物」がアセトニトリル及び水素になるように、Rはメチル基である。最初に遭遇した問題は、ニトリルが水素と共に生成されたが、欲しい生成物はニトリルだけであったことである。より具体的には、生成されたニトリルは多くの場合速やかに分解され、脂肪族アミンに再水素化された。初期の解決策(1920、1930年代)は、特定の脂肪族アミン又は生成されるニトリルに応じて反応温度を変化させることであった。しかしながら、温度が低すぎると平衡が確立され、ニトリルからアミンへの再水素化が多すぎることから、アミンのニトリルへの転化は不十分であった。反対に、温度が高すぎると、アミン及びニトリルの両方が分解された。突破口は、1943年に出願の米国特許第2388218号(その開示は参照により本願に導入される)でもたらされ、水素受容体が水素化のために添加された(特にはオレフィン二重結合の水素化)。このようにして、生成された水素を使用して、新たに生成されたニトリル部分ではなくその他の分子を水素化する。これによってニトリルの収率が改善された。
【0008】
続く開発によって基本的な脱水素化反応は改善され、今では反応に加えられた酸素供給物でもって発生した水素を取り込む副生成物としての水が生成され、この方法は、ニトリル、特にはアセトニトリルの工業生産のスタンダードになっている。アミンを、K228とNiSO4を使用して(Yamazaki and Yamazaki,Bull.Chem.Soc.Jpn.63:301−303,1990)又はガス流反応においてハライドクラスター触媒を使用して反応させると([(Mo6Br8)(OH)4(H2O)2]、[(Ta6Cl12)Cl2(H2O)442O等)(Yamazaki and Yamazaki,Bull.Chem.Soc.Jpn.63:301−303,1990)、酸化してニトリルになることが判明している。このような反応が発見され、またニトリルの生成に使用されているが、このような反応は、水を副生成物として生成する酸化反応として行われている。このため、アミンを酸化してニトリルを生成するこのような方法を、水素ガスの放出及び回収に使用することはできない。
【0009】
2官能性アミン
逆反応(脂肪族ニトリルの水素化による脂肪族アミンの生成)が好ましいものの、1官能性脂肪族アミンの脱水素化は、ニトリルを生成するための好ましい反応である。有機化合物の触媒を使用しない熱脱水素化が知られているが、このような方法の使用には限度がある。望ましくない副作用が広範囲に亘って起こるからである。このため、副反応活性を最小限に押さえ、また望ましい生成物への転化率及び選択性を改善するために、触媒を使用した方法が開発されてきた。しかしながら、このような反応は、最終生成物と望ましくない生成物の発生を最小限に抑えることに焦点を絞っているため、脱水素化反応中に発生した水素は廃棄物と見なされた。
【0010】
脱水素化反応用の一般的な触媒には、VIII族金属(及び合金、組合せ)が含まれる。特には、様々な貴金属が好ましい。しかしながら、一部の触媒は、有効な触媒として長い寿命を有していない。例えば、プラチナ/スズ/アルミン酸亜鉛触媒の活性は高く、また脱水素化反応に対して選択的であるが(特に、パラフィン)、このような触媒はその活性を急速に失うことから、定期的に再生する必要がある。
【0011】
1級脂肪族アミン(エチルアミン等)及びジアミン(1,3−ジアミノプロパン等)は一般に、大きな分子の合成中、中間体として使用される。例えば、ヘキサメチレンジアミンは、初期反応が脱水素化反応であるナイロンの製造における中間体として有用である(米国特許第3414622号)。1,3−ジアミノプロパンは、プロピレン尿素の形態で使用した場合に織物樹脂に望ましい質を付与する化合物であり、金属イオン封鎖剤、除草剤及び織物繊維で使用するためのポリアミドの調製における中間体として有用である。多くの場合、1,3−ジアミノプロパンは、アルキレンビス−オキシジプロピルニトリル(bisoxdiproplnitrile)を水素化触媒を使用して水素及びアンモニア下で加熱して1,3−ジアミノプロパンに転化することによって生成される。しかしながら、2級アミンの副生成物が生成されることが多い。
【0012】
水素選択性膜
膜は、望ましい化学種を化学種混合物から分離する薄い選択透過性材料である。特に、水素選択性膜は、発生した水素を、燃料電池において触媒(PEMタイプの水素燃料電池で一般に使用されるPt触媒等)を汚染する可能性のあるその他のガス状混合物から分離するための反応器又は装置で使用される。
【0013】
具体的には、孔径約5nm〜数百ナノメートルの多孔性アルミナ膜を通過するガス分子は、分子Aと分子Bとの間での2成分選択性(SAB)を用いたクヌーセンの拡散メカニズムに従い、SABは分子量の逆比の平方根に比例する
【数1】
(式中、MA及びMBは、それぞれガス分子A、Bの分子量である)(Burggraaf and Cot,“Fundamentals of inorganic membrane science and technology,”Elsevier,1996;p.331)。この式から、H2/CH4=2.8、H2/N2=3.7及びH2/CO2=4.7の選択性が得られる。クヌーセン拡散の選択性は純粋な水素を産生させるには低すぎるため、ゾルゲル、化学気相成長、スパッタリング及び無電解めっき等の様々な表面改質技法を応用することによって、メソ多孔質及びマクロ多孔質支持体の性質を改善して、これらの低選択性を克服してきた。
【0014】
水素選択性膜は、精製水素用に工業加工や石油精製において、昨今では(効率的なDC電力を提供するための)水素燃料電池で使用されてきた。パラジウム膜は、パラジウム(Pd)の水素に対する選択性がその他のガス分子より高いことから使用されてきた。有機金属化学気相成長(metal−organic chemical vapor deposition:MOCVD)(Yan et al.,Ind.Eng.Chem.Res.33:616,1994)、スパッタ堆積(Jayaraman et al.,J.Membr.Sci.99:89,1995)、無電解めっき(Roa et al.,Chem.Eng.J.93:11,2003)及び無電解めっきと電気めっきとの組合せ(Tong et al.,Ind.Eng.Chem.Res.45:648,2006)等の様々な方法を利用してパラジウム膜は調製されてきた。
【0015】
パラジウムの無電解めっきは、反応式1で示される。このプロセスは、還元剤としてのヒドラジン(N24)を使用した自触媒反応である。
2Pd(NH342++N24+4OH-→2Pd+8NH3+N2+4H2O (1)
【0016】
高い水素透過性及び選択性の両方を備えたパラジウム膜を得ることが望ましい。パラジウム膜を通っての水素輸送のメカニズムは、式(2)で表わされるように圧力差への水素フラックスの依存性に基づく。
J=D(Phn−Pln)/l (2)
この式において、Jは水素フラックス、Dは水素拡散係数、lはフィルム厚さ、Phは供給物における水素の分圧、Plは、透過物における水素の分圧である。パラジウム膜を通っての水素輸送は、nの値に応じて3種類に分類することができる。n=0.5の場合、式はシーベルトの法則として知られ、輸送はパラジウム層を通ってのバルク拡散によって限定される。n=1の場合、輸送は、表面への質量輸送又は表面それ自身でのプロセスによって限定される。0.5<n<1の場合、輸送は、バルク拡散と表面プロセスとの組合せによって限定される(Wu et al.,Ind.Eng.Chem.Res.39:342,2000)。
【0017】
従って、改善された水素吸蔵分子及び処方並びに迅速な除去を行うために化学反応を最適に利用する反応装置を開発することが当該分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
コバルト及びその様々な酸化物、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロムを含む幾つかの触媒が、幾つかのタイプのアルキルアミンをそのそれぞれのニトリルに脱水素化できることをここで開示する。加えて、指定の条件下で、開示の方法によって水素ガスが除去されることを開示する。水素ガスはセパレータにおいて除去され、濾過され、直接、燃料電池又はエンジンに供給される。1回の反応での転化率は比較的低いことからアミンは再循環させられ、ニトリルは、後の再水素化のために回収され貯蔵される。
【0019】
脱水素化の脱水素化反応生成物が再水素化される前に、1級脂肪族アミン又はジアミンの脱水素化由来の純粋なガスとして水素を捕捉するための反応器システムをここで開示する。より具体的には、1級脂肪族又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムを開示し、この反応器システムは、
(a)外部チャンバの内部に位置し且つ外部チャンバの外側に延びる内部反応器を有するフロースルー反応器(flow−through reactor)と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ外部チャンバ内に位置した部位に水素膜から構成される第1壁と、外部チャンバの外側に位置した部位に不透過性材料の第2壁とを有する内部反応器であって、更に、該入口が、該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える内部反応器と、
(c)出口、内壁及び外壁を有し且つ前記内部反応器の触媒床部を取り囲んでいる外部チャンバであって、該内壁が、前記内部反応器の第1壁であり、更に、該出口が、前記内部反応器内で生成された精製水素を引き通す(pull through)真空を備える外部チャンバと、
を備える。
【0020】
好ましくは、内部反応器内の脱水素化触媒は、不均一又は均一VIII族金属、Rh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及び組合せから成る群から選択される。好ましくは、脱水素化触媒は、アミンが1級アミンの場合はCo又は酸化コバルトであり、アミンがアルキルジアミンの場合はRh又はPtである。好ましくは、外部チャンバ又は内部反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する。好ましくは、アルキルジアミンは、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0021】
更に、1級脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムを開示し、この反応器システムは、
(a)内部チャンバを取り囲んで位置した外周反応器(circumferential outer reactor)を有するフロースルー反応器と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ前記内部チャンバを取り囲んで位置した部位に水素膜から構成される内壁と、前記内部チャンバの外側に位置した内部反応器の部位に不透過性材料の外壁とを有する外周反応器(outer circumferential reactor)であって、更に、該入口が該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える外周反応器と、
(c)出口及び外壁を有する内部チャンバであって、該外壁が前記外周反応器の内壁であり、更に、該出口が、前記外周反応器内で生成された精製水素を引き通す真空を備える内部チャンバと、
を備える。
【0022】
好ましくは、外周反応器内の脱水素化触媒は、不均一又は均一VIII族金属、Rh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及び組合せから成る群から選択される。好ましくは、外周反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する。
【0023】
更に、脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル及びジニトリルに脱水素化するための方法をここで開示し、この方法は、
(a)モノアミン及びジアミン又はその混合物を、蒸気の形態で、脱水素化触媒、入口及び出口を有する反応器に供給する工程であって、前記モノアミン又はジアミン又はその混合物が前記入口から供給され、前記脱水素化触媒がRh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及びこれらの組合せからなる群から選択される工程、
(b)前記モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル又はジニトリル及び水素ガスに脱水素化するのに十分な熱を供給する工程、
(c)分別水素膜を通して又は不活性スイープガスを利用して水素ガスを物理的に除去する工程、及び
(d)前記出口における蒸気の凝縮及び凝縮液の回収によって、生成されたモノニトリル又はジニトリル及びその混合物を回収する工程
を含む。
【0024】
好ましくは、脂肪族ジアミン又はモノアミンは、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せから成る群から選択される。好ましくは、スイープガスは、He、Ar及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】プロトタイプの反応器の外観側面図である。
図2】反応器がどのようにして組み立てられているかを示す、プロトタイプの反応器の切り欠き図である。
図3】上段のグラフは1,3−ジアミノプロパンの反応の生成物の液体クロマトグラフィースペクトルであり、下段のグラフは純粋な1,3−ジアミノプロパンの質量スペクトルを示す。
図4】転化率(プロピオニトリルの収率)対温度の曲線を示す。プロピオニトリルの収率は、(生成物流中のプロピオニトリル)/(入口流中のプロピルアミン)として計算された。これらの結果から計算された見掛けの活性化エネルギーは、市販のコバルト粒子及びニッケル粒子に関してそれぞれ129kJ/mol及び215kJ/molであった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
様々なアルキルアミンがそのそれぞれのニトリルに水素を回収しながら転化されることをここで開示する。この方法を、コバルト、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化クロム及び酸化ニッケルを触媒候補として使用してアミノアルカンについて試験した。市販のコバルト金属触媒をFluka社から購入し、その他の触媒をAldrich社から購入した。使用したガスは、H2(Airgas社、グレード5、99.99%)、He(Airgas社、グレード5、99.99%)、O2(Airgas社、UHPグレード、99.99%)及びN2(Airgas社、グレード5、99.99%)であった。
【0027】
マイクロ波酸化コバルトは、米国特許第7309479号明細書に従って生成され、その開示は参照により本願に導入される。簡単に説明すると、コバルト金属粉末(5グラム)をセラミック製のるつぼに入れ、るつぼを電子レンジに3分間入れた。マイクロ波の出力は、950Wに設定された。マイクロ波を発生させると、コバルト金属粉末が1分もしないうちに赤熱に輝き始めた。マイクロ波によるサンプルの加熱を3分間に亘って継続した。完了後、サンプルを粉砕し、更に処理することなく使用した。サンプルをGC/MS(Hewlett−Packard社、内径0.25mmx30mの石英シリカ製のキャピラリーカラムを備えた5890−5972A)で分析した。
【0028】
プロピルアミンが、触媒を試験するために使用したアルキルアミンであった。プロピルアミンは、室温で液体である。脱水素化反応では、プロピルアミンのプロピオニトリルへの酸化によって2モルの水素ガスが産生される。望ましい生成物であるこの2モルの水素ガスはプロピオニトリルが生成される時に生成されるため、プロピオニトリルは、脱水素化反応の指標として使用された。これはプロピオニトリルが、GC/MSにおいてプロピルアミンに対して容易に定量化できるからであった。有望と思われる触媒を、より大型の充填床で試験した。この充填床には出口流に定性水素ガス検出器が組み込まれており、水素ガスの生成を直接観察し、またプロピオニトリルの産生によって水素ガスの生成を間接的に観察することの両方ができた。最終的な反応器構成においては、質量流量計を定性水素ガス検出器と直列で使用することによって、産生された水素ガスを定量的に測定した。
【0029】
触媒はまず定性スクリーニングに供され、〜0.5gの各触媒を内径0.93mmのガラス管に充填して小さな充填床反応器を作製し、この反応器を、10psigの一定流量のヘリウム(スイープガス)下、制御自在な加熱ハウジング内に置いた。加熱ハウジングは200〜300℃の様々な温度に調節され、各温度で0.1μlのプロピルアミンをガラス管の入口に注入した。プロピルアミンはヘリウムスイープガスによって運ばれ、充填された各触媒に応じてガラス管内を1〜2ml/分で流れた。反応器の出口流はGC/MSに繋がっており、GC/MSで出発原料、プロピオニトリル(望ましい副生成物)及びその他の副生成物についての分析が行われた。
【0030】
結果を、例えばプロピオニトリルのピークの面積対その他の化合物の総面積によって分析した。この分析によっておおよその転化率が得られ、またプロピルアミン及びプロピオニトリル以外のピークの数を利用して、各回を高、中、低選択性に分類した。高選択性との分類は、プロピオニトリル及びプロピルアミンだけが観察されたことを示した。中選択性は、最高で2種類の別の副生成物の存在を示した。低選択性は、3種類以上の別の副生成物の存在を示した。試験した全ての触媒のごく一部だけをより大規模な試験のために選択した。選択した触媒を以下の表に挙げる。
【0031】
【表1】
【0032】
スクリーニングプロセス後、表1に挙げた触媒を、より大型の充填床反応器構成で試験した。0.5グラムの触媒を、内径6.35mm(1/4インチ)の管に充填し、触媒の両端にガラスウールを詰めた。各触媒を指定の反応温度にまで加熱した。触媒表面の温度を熱電対で測定し、また温度制御装置で制御した。プロピルアミンは、複式ピストンポンプによって反応器に送られ、このポンプが、入口体積流量を制御した。プロピルアミンは、反応器への進入に先立って気化され、蒸気温度は制御され、また触媒温度に設定された。反応器から出た生成物流は、氷水を使用して室温に凝縮された。入口流及び生成物流を、GC/MSによってプロピオニトリルについて分析して転化率を計算した。定性水素ガス検出器を使用して、反応における水素ガスの産生を確認した。各触媒の反応性を、様々な温度で測定した。反応温度は250〜350℃であった。入口流量は、0.125ml/分であり、触媒の空間速度4181ml/時間/gに対応した。空間速度は、入口ガス体積流量を触媒の質量で割ったものと定義される。
【0033】
研究の結果を図4に示す。プロピオニトリルの収率を、(生成物流中のプロピオニトリル)/(入口流中のプロピルアミン)として計算した。図4は、転化率(プロピオニトリルの収率)対温度の曲線を示す。これらの結果から計算された見掛けの活性化エネルギーは、市販のコバルト粒子及びニッケル粒子に関してそれぞれ129kJ/mol及び215kJ/molであった。
【0034】
酸化コバルトは充填床反応器において十分な働きを見せたことから、大型のモノリス反応器における触媒として使用された。この反応器は、長さ45.7cm(18インチ)、内径11.4cm(4.5インチ)のステンレススチール製の管状ハウジングから成り、2つの900cpsi(1平方インチあたりのセル数)及び2つの1000cpsiモノリスが収容されている。反応器は、反応器ハウジングの外側に巻かれた一連のバンドヒータによって加熱され、温度は、反応器の内部に設置された一連の熱電対に基づいて制御された。ポンプを使用して液体燃料(アルキルアミン、具体的にはプロピルアミン)をタンクから一連のベーパライザを経由させて反応器内に押し出した。第1ベーパライザを使用して液体燃料を気化し、第2ベーパライザを使用して燃料蒸気を触媒の温度と同じ温度に加熱した。反応器から出てくる蒸気を熱交換機に通して蒸気流の全体温度を約30℃にまで低下させた。この時点で、蒸気と液体との混合物をセパレータに通し(すなわち、下部の6.35mm(1/4インチ)の液体出口(液体をタンクに戻す)及びガスのための上部の6.35mm(1/4インチ)のガス出口を有する2リットルの閉鎖容器)、液体はタンクに再進入し、蒸気は一連のスクラバを通過し、全ての微量の有機化合物が生成された水素ガスから除去された。次に、最終的な水素ガス精製流は、定性水素検出器(〜100%純度を示す)及び質量流量計(〜4.3L/分ガス流を示す)を通過した。この水素は次に直接、水素ガスで動くように改良された排気量25ccの4ストロークHONDAエンジンに供給された。
【0035】
コバルト及び酸化コバルトの両方が、本明細書で開示の様々な反応器における脱水素化反応用の触媒として有望な結果を示した。酸化コバルトは2種類の形態で試験された。一方は市販の酸化コバルト(Fluka社)、もう一方は本明細書に記載のマイクロ波酸化コバルトである。これらのコバルトは共に予備スクリーニング、また大型充填床反応器において効果的であった。大型モノリス反応器(Hypercat)が、モノリス上に堆積された(負荷3〜5質量%のウォッシュコーティングで堆積)酸化コバルトの一形態を試験した。
【0036】
ニッケルは、スクリーニングプロセス中、高い転化率及び選択性を比較的穏やかな温度(約250℃等)で示したが、大規模になると働きは悪く、選択性は大幅に低下した。これは、多くの要因があると考えられ理論によって束縛するものではないが、ニッケルが水素に対して高い親和性を有し、産生された水素ガスを吸着することによって多くの別の副反応を触媒したからである。少量のニッケル触媒を、触媒のスクリーニングに使用したガラス管装置内に置いた。この装置は最初に、触媒を連続的に流して注入したプロピルアミン及び全ての反応生成物を反応器全体に運ぶためのヘリウムスイープガスを必要とした。しかしながら、ヘリウムガスがここで水素スイープガスに取って代わられたことから、触媒が常に水素を利用できるようになってしまい、反応が阻害された。ヘリウム流下、ニッケルは、プロピオニトリル産生において高い選択性でもって機能していた。しかしながら、水素流下、プロピルアミン又はプロピオニトリルは検出されず、多くのその他の副生成物が検出された。すなわち、理論によって束縛するものではないが、ニッケルは水素化触媒として使用されることが多いことから、水素の存在がニッケルの触媒活性を変化させたのである。従って、本開示では、生成されたらすぐに水素を除去するための機能する手段を必要とし、水素を反応器から除去しないと、併発及び副反応が引き起こされる。
【0037】
初期スクリーニング段階に合格しなかった、銅、クロム、鉄及びその酸化物を含む触媒については、結果は、全体的な活性が低いか、或いは銅の場合のように活性は高いが選択性が極端に低いかのいずれかを示した。
【0038】
モノアミンの一種であるプロピルアミンを試験したという事実は、アルキルアミン全般がこの酸化プロセスを経て水素ガスを放出するという潜在性を裏付けた。しかしながら、提案された残りのアルキルアミンは、各触媒で試験した場合に異なる率で機能し得ることから、それぞれ同様のやり方で試験されることになる。しかしながら、1つの重要な疑問点は、アルキルアミン及びアルキルニトリルが熱だけで反応して観察された副生成物を生成したのか否かということであり、そこで幾つかの試験を行い、プロピルアミンとプロピオニトリルとの既知の混合物を共に反応器温度にまで加熱し、その組成をGC/MSで監視した。また、これらを粉末ガラスが入った充填床に通すことによって、触媒のない反応器をシミュレートした。両方のケースにおいて、混合物の組成は変化せず、触媒の不在下では反応が起こらなかったことを示した。従って、コバルト及び酸化コバルト触媒上を250〜300℃で通過させることによって、プロピルアミンがプロピオニトリルを、水素ガス(この水素ガスはこの後、燃焼によってモータの動力源として使用し得る)を放出することによって主要生成物として生成したと結論づけることができる。また、プロピルアミン及びプロピオニトリルは様々な反応を経て、これらの触媒の存在下、微量の副生成物を生成した。微量生成物(アルキルアミンの酸化によるアルキルニトリルの調製に関してこれまでの文献において言及されたもの等)も観察され、シアン化物、アンモニアを含む。しかしながら、プロピオニトリルは所望の化合物ではなかったため、反応収率を低下させて選択性を上昇させ、これらの副生成物の量を削減した。また未反応のプロピルアミンを、タンクに再進入する残りの液体と共に再循環させた。プロセスを更に改善するために、選択性膜を使用することによって反応流からの水素ガスの除去を支援して、水素ガスが副反応に関与しないようにすることができる。
【0039】
反応器
図1に関し(参考として図2)、電力は、膜セパレータ管211の外面を加熱する複数のヒータに電流を供給するために、電源入力コネクタ101を通して反応器に送られる。気化燃料(1級アミン)は、燃料を蒸気の形態で膜セパレータ管211の内部容積に運ぶための気化燃料入口管102を通って開示の反応器内に流れ込む。入口キャップフランジ103は、気化燃料入口管102を入口管キャップ104に固定し、この入口キャップフランジは、気化燃料入口管102を、例えばOリングを使用してシールする。入口管キャップ104は、膜セパレータ管211、外部反応器管106、電源入力コネクタ101及び管ヒータ210を、入口側の所定の位置に保持する。入口管キャップ104は、膜セパレータ管211と外部反応器管106との間のシール面にもなる。キャップフランジクランプ105は、外部反応器管106を入口キャップフランジ103に固定する。外部反応器管106は、水素を捕捉するためのチャンバになることに加えて、反応器の長さを決定する。出口管キャップ107は、膜セパレータ管211、外部反応器管106、電源入力コネクタ101及び管ヒータ210を、反応器の出口側の所定の位置に保持する。出口管キャップ107は、膜セパレータ管211と外部反応器管106との間のシール面にもなる。
【0040】
正の熱電対フィードスルー108は、熱電対220の正のリード線に電気的に接続し、熱電対は膜セパレータ管211と接触している。負の熱電対フィードスルー109は、熱電対220の負のリード線に電気的に接続し、熱電対は膜セパレータ管211と接触している。再循環出口フランジ110は、再循環出口管111を出口管キャップ107に固定する。再循環出口フランジ110は、例えばOリングを使用してシールにもなる。再循環出口管111は、未反応燃料を反応器から除去する。水素出口管112は、水素が産生される場所である。
【0041】
更に図1の実施形態について説明するが、電力は、膜セパレータ管211の外面を加熱するヒータに電流を供給するために、電源入力コネクタ101を通して反応器に送られる。気化燃料入口管102を通って気化燃料は反応器に流れ込み、燃料は膜セパレータ管211の内部容積に運ばれる。入口キャップフランジ103は、気化燃料入口管102を入口管キャップ104に固定し、また気化燃料入口管102はOリング等を使用して入口キャップフランジ103にシールされる。キャップフランジキャップ105は、外部反応器管106を入口キャップフランジ103に固定する。外部反応器管106は反応器の長さを決定し、また脱水素化反応で発生した水素を捕捉する。出口管キャップ107は、膜セパレータ管211、外部反応器管106、電源入力コネクタ101及び管ヒータ210を、出口側の所定の位置に保持する。出口管キャップ107は、膜セパレータ管211と外部反応器管106との間のシール面にもなる。正の熱電対フィードスルー108及び負の熱電対フィードスルー109は、膜セパレータ管と接触している熱電対の正又は負のリード線に電気的に接続している。再循環出口フランジ110は、再循環出口管111を出口管キャップ107に固定する。再循環出口フランジ110はまた、例えばOリングを使用して再循環出口管111を出口管キャップ107にシールする。再循環出口管111はまた、未反応燃料を反応器から除去する。水素出口管112は、水素が産生される場所である。
【0042】
図2に関し、入口管201は、入口キャップフランジ204に溶接される。出口管233は、出口キャップフランジ222に溶接される。反応器外部管フランジ225は、反応器外部管214に溶接されて反応器外部管214の端部から数ミリの気密シールを形成する。溶接ビードは、管の端部に最も近いフランジの外面上だけにある。クランプ213を使用して反応器外部管フランジ225に対して型締し、またOリング212を使用して一方の端部上の入口フランジ206及び反対側の端部上の出口フランジ215にシールする。膜反応器管211は反応器外部管214の中心に位置決めされるため、膜反応器管211の端部は、入口フランジ206及び出口フランジ215の両方の端部からほぼ等距離にある。
【0043】
膜反応器管211は所定の位置に保持され、またOリング212を使用して反応器にシールされる。Oリング212及び膜反応器管211は、反応器の入口フランジ206端部で入口キャップフランジ204によって型締及びシールされる。Oリング212及び膜反応器管211は、反応器の出口フランジ215端部で出口キャップフランジ222によって型締及びシールされる。電源コネクタ101の外径203は、入口フランジ104、206に溶接されて気密シールを形成する。電源コネクタ101、203の中央電極は絶縁体207を通って入力電力電極に結合していて、所定の位置に溶接されてしっかりとした電気的接続を形成する。
【0044】
正の熱電対フィードスルー108は、出口管キャップ107に溶接される。負の熱電対フィードスルー109も出口管キャップ107、215に溶接される。両方の溶接部は気密シールを形成する。水素出口管112、220は出口管キャップ107、215に溶接されて気密シールを形成する。ヒータ電極209は、膜反応器管211の端部から等距離に位置決めされる。4本のグラファイトカーボンロッド210が、膜反応器管211の外周と互いに接触するように互いに約90°で外周に沿って置かれる。ヒータ電極209は、グラファイトカーボンロッド210を所定の位置に固定し、またロッドに電気的接触をもたらす。グラファイトカーボンロッド210はその両端でヒータ電極209に止めネジで固定される。ヒータ電極209への電気的な接続は、入口フランジ206端部のもう一方の端部は、ネジによって入力電力電極208に接続される。
【0045】
ヒータ温度は、熱電対220を通じて監視される。熱電対220の正のリード線は、正の熱電対フィードスルー108に接続される。熱電対220の負のリード線は、負の熱電対フィードスルー109に接続される。熱電対220は、膜反応器管211の外周にその長さの中間でグラファイトカーボンロッド210の間に固定される。気化燃料は反応器内に管201を通って進入し、入口キャップフランジ204を通過し、次に活性反応器容積221内に進入する。そこで、蒸気は反応器膜管211の内面と接触し、燃料は水素ガスと使用済み燃料とに分離し、管壁内の水素膜を通過し、外部膜管211と外部反応器管214の内壁との間の空間226に進入する。次に、水素及び反応副生成物(様々なニトリルの形態の使用済み燃料等)は、管219を通って反応器から出る。未反応燃料は全て、管223を通って膜反応器管211の内部容積221を出て、凝縮後、供給原料へと再循環させられる。
【0046】
脂肪族アミンの脱水素化
高温で触媒作用によって脱水素化されてその対応するニトリル又はイミンを生成し且つ水素ガスを産生する一連の1級アミン及びジアミンをここで開示する。最も好ましい触媒は、高表面積担体上に混合又は単体で固着させたRh、Pt、Ru、Au又はPdである。脱水素化生成物は、様々な濃度のPd/C触媒を使用した水素化によって元々の開始アミンに再水素化することができる。
【実施例】
【0047】
実施例1
この実施例では、γ−アルミニウム上のRh−Pt触媒を使用した1,3−ジアミノプロパンの脱水素化反応によるアセトニトリルの生成について説明する。
【0048】
アルミナ上のPt−Rh二元金属触媒(触媒A)を、Kariyaら(Applied Catalysis A:General 247:247−259,2003)に従って、724mgのクロロ白金酸(H2PtCl6)を900mlの水に溶解させて触媒溶液を生成することによって合成した。371mgの塩化ロジウム(RhCl3)をこの触媒溶液に添加し、5分間に亘って攪拌した。次に、6000mgのγ−アルミナを触媒溶液に添加し、24時間に亘って攪拌した。触媒溶液を濾過し、γ−アルミナ粉末をDI水で洗浄した。γ−アルミナ粉末を、24時間に亘って真空乾燥させた。次に、触媒粉末を、水素ガス(50ml/分)を25〜200℃のランプ温度(ramp temperature)(0.73℃/分)で2時間流すことによって還元した。ICP/MSの結果は、0.49質量/質量%のRh及び0.50質量/質量%のPtの負荷を示す。
【0049】
エチルアミン及び1,3−ジアミノプロパンは、市販のものを購入した(Sigma−Aldrich社)。
【0050】
脱水素化反応を行い、HP5971質量検出器を備えたHP GC5890シリーズIIで監視した。サンプルを同じ手順で処理した。すなわち、初期温度40℃で3分間に亘って保持し、次に、温度を120℃に達するまで10℃/分の率で上昇させた。次に、温度を260℃に達するまで25℃/分の率で上昇させ、そこで8分間に亘って保持した。GCで分析した全てのサンプルについて1マイクロリットルの注入があった。
【0051】
ガスクロマトグラフのインレットライナ(78mmx0.93mm内径)に、触媒Aを充填した(8.2mm3、0.1〜5g)。ライナを機器のインレットポート内に置き、280℃にまで加熱した。試験対象である望ましい開始分子を、セプタムを備えたバイアルに入れた。セプタムのヘッドスペースを真空にした。気密シリンジを使用して、0.1〜5μlのヘッドスペースガスを抽出し、抽出したガスをGC/MSに注入した。ヘリウムガス(8psi)がサンプルを、触媒を抜けてGCカラム内に押し込んだ。反応はライナで起き、質量検出器によって直接監視された。
【0052】
純粋な1,3−ジアミノプロパンの質量スペクトルは(FW=74)、m/z=74で親ピークを示さなかった。その代わりに、m/z=57で主要なフラグメント、m/z=30で基準ピークを示した。このm/z=57ピークは、イオン源で起きたアンモニア(NH3=17)の喪失によるものであった(図3、上段グラフ)。Rh−Pt触媒Aの場合の1,3−ジアミノプロパンの質量スペクトルは、幾つかの脱水素化化合物への完全な転化を示した(図3、下段グラフ。具体的には、2.6分での流出液はm/z=54を有していた。これはプロピオニトリル、アミン部分の1つのモノ脱水素化に対応する)。もう一方の流出液及びその対応するスペクトルの綿密な分析によって、ニトリル又はアルキンが示された。脱水又は脱ハロゲン化水素化の可能性がない発明者の実験条件下で脱水素化生成物が観察されるということは、副生成物の1つとしての水素ガスの産生を示唆している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1級脂肪族又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムであって、
(a)外部チャンバの内部に位置し且つ外部チャンバの外側に延びる内部反応器を有するフロースルー反応器と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ外部チャンバ内に位置した部位に水素膜から構成される第1壁と、外部チャンバの外側に位置した部位に不透過性材料の第2壁とを有する内部反応器であって、更に、該入口が、該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える内部反応器と、
(c)出口、内壁及び外壁を有し且つ前記内部反応器の触媒床部を取り囲んでいる外部チャンバであって、該内壁が、前記内部反応器の第1壁であり、更に、該出口が、前記内部反応器内で生成された精製水素を引き通す真空を備える外部チャンバと、
を備える、反応器システム。
〔2〕前記内部反応器内の脱水素化触媒が、不均一又は均一VIII族金属、Rh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及び組合せからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の反応器システム。
〔3〕脱水素化触媒が、アミンが1級アミンの場合はCo又は酸化コバルトであり、アミンがアルキルジアミンの場合はRh又はPtである、前記〔1〕に記載の反応器システム。
〔4〕前記外部チャンバ又は前記内部反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する、前記〔1〕に記載の反応器システム。
〔5〕アルキルジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の反応器システム。
〔6〕1級脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するニトリルに脱水素化するための反応器システムであって、
(a)内部チャンバを取り囲んで位置した外周反応器を有するフロースルー反応器と、
(b)触媒床、入口及び出口を備え且つ前記内部チャンバを取り囲んで位置した部位に水素膜から構成される内壁と、前記内部チャンバの外側に位置した内部反応器の部位に不透過性材料の外壁とを有する外周反応器であって、更に、該入口が該触媒床への進入に先立って液体をガス状に気化させるための手段を備える外周反応器と、
(c)出口及び外壁を有する内部チャンバであって、該外壁が前記外周反応器の内壁であり、更に、該出口が、前記外周反応器内で生成された精製水素を引き通す真空を備える内部チャンバと、
を備える、反応器システム。
〔7〕外周反応器内の脱水素化触媒が、不均一又は均一VIII族金属、Rh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及び組合せからなる群から選択される、前記〔6〕に記載の反応器システム。
〔8〕外周反応器を抵抗加熱要素で取り囲むことによって、脱水素化反応を触媒するのに十分な温度を提供する、前記〔6〕に記載の反応器システム。
〔9〕アルキルジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔6〕に記載の反応器システム。
〔10〕脂肪族モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル及びジニトリルに脱水素化するための方法であって、
(a)モノアミン及びジアミン又はその混合物を、蒸気の形態で、脱水素化触媒、入口及び出口を有する反応器に供給する工程であって、前記モノアミン又はジアミン又はその混合物が前記入口から供給され、前記脱水素化触媒がRh、Pt、Ru、Au、Pd、コバルト、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、これらの合金及びこれらの組合せからなる群から選択される工程、
(b)前記モノアミン又はジアミンをその対応するモノニトリル又はジニトリル及び水素ガスに脱水素化するのに十分な熱を供給する工程、
(c)分別水素膜を通して又は不活性スイープガスを利用して水素ガスを物理的に除去する工程、及び
(d)前記出口における蒸気の凝縮及び凝縮液の回収によって、生成されたモノニトリル又はジニトリル及びその混合物を回収する工程
を含む、方法。
〔11〕脂肪族ジアミンが、2−(アミノメチル)プロパン−1,3−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、プロパン−1,3−ジアミン、エタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ペンタン−1,3−ジアミン、イソプロピル−1,3−ジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕スイープガスが、He、Ar及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔10〕に記載の方法。
図1
図2
図3
図4