特許第5744788号(P5744788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5744788成形型、基板吸着型、樹脂封止装置および樹脂封止電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744788
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】成形型、基板吸着型、樹脂封止装置および樹脂封止電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20150618BHJP
   B29C 33/18 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   B29C33/18
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-100497(P2012-100497)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-229452(P2013-229452A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】田村 孝司
【審査官】 金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−098855(JP,A)
【文献】 特開平11−317412(JP,A)
【文献】 特開2004−050738(JP,A)
【文献】 特開2003−152004(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0115098(US,A1)
【文献】 米国特許第05108955(US,A)
【文献】 特開2006−103207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 39/26−39/36
B29C 41/38−41/44
B29C 43/36−43/42
B29C 43/50
B29C 45/26−45/44
B29C 45/64−45/68
B29C 45/73
B29C 49/48−49/56
B29C 49/70
B29C 51/30−51/40
B29C 51/44
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の樹脂封止用の成形型であって、
前記成形型は、上型および下型から形成され、
前記上型および前記下型の一方は、基板に電子部品が搭載された電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型であり、
前記基板吸着型は、前記電子部品搭載済基板を吸着するための吸着穴を有し、かつ、
前記基板吸着型は、その内部に、さらにピンを有し、
前記ピンは、前記吸着穴への挿入により、前記吸着穴を閉じることが可能であり、かつ、
前記ピンは、前記吸着穴に対し相対的に、前記基板吸着型内部方向へ移動することで、前記吸着穴から引き出されて前記吸着穴を開くことが可能であることを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記基板吸着型が、さらにストッパーを有し、
前記ストッパーは、前記吸着穴が前記ピンにより閉じられた状態で前記ピンを固定可能である請求項1記載の成形型。
【請求項3】
前記基板吸着型が、上型である請求項1または2記載の成形型。
【請求項4】
前記基板吸着型が、さらにスプリングを有し、
前記スプリングの伸縮により、前記ピンが、前記吸着穴へ出し入れ可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項5】
前記成形型の型締め圧力により、前記スプリングが縮み、前記ピンが前記吸着穴に挿入されて前記吸着穴が閉じられる請求項4記載の成形型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の成形型用の前記基板吸着型。
【請求項7】
電子部品の樹脂封止装置であって、
成形型を有し、
前記成形型が、請求項1から5のいずれか一項に記載の成形型であることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項8】
樹脂封止電子部品の製造方法であって、
電子部品搭載済基板を、請求項1から5のいずれか一項に記載の成形型の前記基板吸着型に吸着させる吸着工程と、
前記電子部品搭載済基板を前記基板吸着型に吸着させた状態で、前記成形型を用いて前記電子部品を樹脂封止する樹脂封止工程とを含み、
前記樹脂封止工程において、前記ピンが前記吸着穴に挿入されて前記吸着穴が閉じられた状態で前記電子部品を樹脂封止することを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記成形型が、請求項5記載の成形型であり、
前記樹脂封止工程において、前記成形型の型締め圧力により、前記スプリングが縮み、
前記ピンが前記吸着穴に挿入されて前記吸着穴が閉じられる請求項8記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、基板吸着型、樹脂封止装置および樹脂封止電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止電子部品の製造において、基板上に搭載された電子部品を、上型および下型から形成された成形型を用いて樹脂封止することが行われる。前記樹脂封止は、例えば、前記上型および前記下型の一方に、電子部品搭載済基板を吸着した状態で行う(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−014586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記成形型としては、例えば、図2の断面図に示すような成形型が用いられる。図示のとおり、この成形型は、上型(上型チェイス)10と、下型20とから形成されている。上型10には、吸着穴(吸引穴)11が設けられ、吸着穴11内部を、真空ポンプ(図示せず)等により吸引して減圧にすることで、図示のように、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を吸着可能である。一方、下型20は、図示のとおり、下型チェイスホルダ22と、その内側(上側)に固定された下型チェイス21と、下型外周先押え23とを含む。下型外周先押え23は、下型チェイス21の外周を取り囲むように配置されるとともに、スプリング23Sにより下型チェイスホルダ22に取り付けられている。下型チェイス21上面は、下型外周先押え23上面よりも低く配置されて段差を形成し、下型チェイス21上面と下型外周先押え21内周とに囲まれた空間が、下型キャビティ20Cを形成する。下型キャビティ20C内には、図示のとおり、樹脂103を収容可能である。上型10を下降させるか、または下型20を上昇させることにより、電子部品102を樹脂103に浸漬させ、樹脂封止することができる。なお、樹脂103は、加熱、冷却等により、適宜溶融、固化または硬化等させることができる。
【0005】
図2の成形型において、上型10のクリーニング時は、上型10を、これに接続された他の部材(図示せず)から取り外して解体後、クリーニングする。クリーニング後に、必要に応じて上型10の表面の再加工等をしても良い。
【0006】
しかし、図2の上型10のように、吸着穴を有する部材は、クリーニングが非常に困難である。なぜならば、成形型用のクリーニングシート(クリーニング用タブレット)でクリーニングしようとすると、前記吸着穴に、前記クリーニングシートまたはクリーニング用タブレットの樹脂が入り込んでしまうためである。また、図2のように成形型が吸着穴を有する場合、電子部品の樹脂封止中にミスショット(例えば、型キャビティ内からの樹脂漏れ)が発生すると、前記吸着穴に樹脂が入り込んでしまうおそれがある。特に、樹脂封止領域(モールド成形範囲)内に吸着穴があると、樹脂が入り込むおそれが大きいため、樹脂封止領域(モールド成形範囲)内には吸着穴を設けにくい。前記吸着穴に入り込んだ樹脂は、取り除くことが非常に困難である。このため、前記クリーニング時および前記電子部品の樹脂封止時に、前記吸着穴に樹脂が入り込むことを防止する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、クリーニング時および電子部品の樹脂封止時に、吸着穴に樹脂等が入り込むことを防止した成形型、基板吸着型、樹脂封止装置および樹脂封止電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の成形型は、
電子部品の樹脂封止用の成形型であって、
前記成形型は、上型および下型から形成され、
前記上型および前記下型の一方は、基板に電子部品が搭載された電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型であり、
前記基板吸着型は、前記電子部品搭載済基板を吸着するための吸着穴を有し、かつ、
前記基板吸着型は、さらにピンを有し、
前記ピンは、前記吸着穴への出し入れにより、前記吸着穴を開閉可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の基板吸着型は、前記本発明の成形型用の前記基板吸着型である。
【0010】
本発明の樹脂封止装置は、
電子部品の樹脂封止装置であって、
成形型を有し、
前記成形型が、前記本発明の成形型であることを特徴とする。
【0011】
本発明の樹脂封止電子部品の製造方法は、
樹脂封止電子部品の製造方法であって、
電子部品搭載済基板を、前記本発明の成形型の前記基板吸着型に吸着させる吸着工程と、
前記電子部品搭載済基板を前記基板吸着型に吸着させた状態で、前記成形型を用いて前記電子部品を樹脂封止する樹脂封止工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形型、基板吸着型、樹脂封止装置および樹脂封止電子部品の製造方法によれば、クリーニング時および電子部品の樹脂封止時に、吸着穴に樹脂等が入り込むことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例における成形型およびそれを用いた樹脂封止電子部品の製造工程を模式的に示す工程断面図である。
図2図2は、吸着穴を有する吸着型の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0015】
本発明において、前記基板吸着型が、さらにストッパーを有し、前記ストッパーは、前記吸着穴が前記ピンにより閉じられた状態で前記ピンを固定可能であることが好ましい。
【0016】
本発明において、前記基板吸着型は、上型でも下型でも良いが、上型であることが好ましい。この場合、例えば、下型が型キャビティを有していても良い。このように、上型が前記基板吸着型で下型が型キャビティを有する構造を、キャビティダウン構造ということがある。また、前記下型の型キャビティ内の樹脂に前記電子部品搭載済基板の電子部品が浸漬された状態で、圧縮成形またはトランスファ成形により、前記電子部品を樹脂封止しても良い。前記電子部品を樹脂封止するときに、前記電子部品搭載済基板を上型に吸着させる場合は、下型に吸着させる場合と比較して、例えば、下記(a)および(b)の利点がある。ただし、下記(a)および(b)の説明は例示であり、本発明を何ら限定しない。

(a)電子部品搭載済基板が、加熱された樹脂に接触する時間が短いことにより、基板および電子部品(半導体チップ)へのダメージを軽減できる。
(b)下型の型キャビティ内に樹脂を充填するときに、電子部品搭載済基板上に前記樹脂を載せる必要がない。このため、電子部品および基板の凹凸によって前記樹脂内に空気が入ることを防止できる。
【0017】
また、本発明の成形型において、前記基板吸着型が、さらにスプリングを有し、前記スプリングの伸縮により、前記ピンが、前記吸着穴へ出し入れ可能であることが好ましい。この場合、例えば、前記基板吸着型の基板吸着面と反対側にピンプレートが設けられ、前記ピンプレートと基板吸着型(チェイス)との間に前記スプリングが設けられて構成されていても良い。本発明の樹脂封止電子部品の製造方法においても、このような成形型を用いることが好ましい。また、本発明の、このような成形型および樹脂封止電子部品の製造方法において、前記成形型の型締め圧力により、前記スプリングが縮み、前記ピンが前記吸着穴に挿入されて前記吸着穴が閉じられることがより好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【0019】
図1(a)および(b)の工程断面図に、本実施例の成形型およびそれを用いた樹脂封止電子部品の製造工程を模式的に示す。前記各図において、図2と同様の構成要素は、同一の符号で示している。図1(a)に示すとおり、この成形型は、上型と、下型とから形成されている。上型は、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型である。図示のとおり、この上型は、上型チェイス10と、上型チェイスホルダ12(ホルダベース)と、ピン本体13およびピンプレート14から形成されたピンとを主要構成要素とする。上型チェイス10は、上型チェイスホルダ12の下端に固定されている。上型チェイス10には、吸着穴(吸引穴または吸引口ともいう)11が設けられ、吸着穴11内部を、真空ポンプ(図示せず)等により吸引して減圧にすることで、図示のように、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を吸着可能である。ピン本体13は、その上端が、ピンプレート14に固定されている。図示の上型チェイス10においては、吸着穴11の数は2個であり、ピン本体13の本数は、吸着穴11と同数の2本である。ただし、本発明では、吸着穴11の数(ピン本体13の本数)は、図示の数に限定されず、任意である。各ピン本体13は、1つのピンプレート14に固定され、一体のピンを形成している。
【0020】
なお、ピンプレート14は、さらに、その上端で、エジェクタプレート17に固定されている。この上型において、ピンプレート14と上型チェイスホルダ12の上側(上型チェイス10の基板吸着面と反対側)との間には、スプリング14Sが設けられて構成されている。従って、上型チェイスホルダ12自体はスプリング14Sの伸縮にて弾性上下動することができるように構成されている。
【0021】
上型チェイスホルダ12には、上型チェイス10の吸着穴の真上の位置に貫通穴が設けられている。ピン本体13は、上型チェイスホルダ12の前記貫通穴内を貫通しており、スプリング14Sの伸縮により、吸着穴11へ出し入れ可能である。上型チェイスホルダ12の前記貫通穴内には、ピン本体13を取り囲むように、弾力性を有するOリング12aが設けられ、前記貫通穴内の気密性が確保されている。上型チェイスホルダ12の上部において、ピンプレート14と対向する面上にも、1つのOリング12aが、全てのピン本体12aおよび全てのスプリング14Sを取り囲むように配置されている。また、この上型は、さらに、上型チェイスホルダ12の周囲を取り囲む保持具15を有している。保持具15の下端は、内側に向かって突出しており、その突出部に上型チェイスホルダ12を引っかけることで、上型全体が、下に落ちないように保持されている。さらに、図1(a)には図示していないが、この上型は、後述の図1(b)に示す通り、さらに、ストッパー(ロッド)16を有する。このストッパー16は、着脱可能である。
【0022】
一方、下型20は、図示のとおり、下型チェイスホルダ22と、その内側(上側)に固定された下型チェイス21と、下型外周先押え23とを含む。下型外周先押え23は、下型チェイス21の外周を取り囲むように配置されるとともに、スプリング23Sにより下型チェイスホルダ22に取り付けられている。下型チェイス21上面は、下型外周先押え23上面よりも低く配置されて段差を形成し、下型チェイス21上面と下型外周先押え21内周とに囲まれた空間が、下型キャビティ20Cを形成する。下型キャビティ20C内には、図示のとおり、樹脂103を収容可能である。
【0023】
図1(a)の成形型を用いた樹脂封止電子部品の製造方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、図1(a)に示すとおり、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を、基板101側で、上型チェイス10の下面(基板吸着面)に吸着させる(吸着工程)。一方、同図に示すとおり、下型キャビティ20C内に、樹脂103を充填する。
【0024】
さらに、図1(b)に示すとおり、下型20を加熱して樹脂103を溶融させる。そして、基板101および電子部品102(電子部品搭載済基板)を上型チェイス10に吸着させた状態で、下型を上昇させるか、または上型を下降させる。例えば、上型は固定したままで、下型20を上昇させても良い。これにより、電子部品102を、下型キャビティ20C内に存在する溶融樹脂103に浸漬させて樹脂封止する(樹脂封止工程)。このとき、図示のとおり、基板101の外周が、下型外周先押え23の上面と、上型チェイス10の下面との間に挟まれる。そして、図示のとおり、成形型(クランプ)の型締め圧力により、スプリング14Sが縮み、ピンの本体部分13が吸着穴11に挿入されて、吸着穴11が閉じられる。これにより、例えば、上型チェイス10が樹脂103による成形面からの内圧を受けたり、ミスショットにより樹脂103が漏れたりしても、吸着穴11から上型内に樹脂が入り込むことを防止できる。また、図1(b)の状態では、吸着穴11が閉じられたことにより、基板101および電子部品102(電子部品搭載済基板)を上型に吸着できない。しかし、この状態では、前述のとおり、基板101の外周が、下型外周先押え23の上面と、上型チェイス10の下面との間に挟まれており、吸着穴11の吸着力に代えて、成形型(クランプ)の型締め圧力で電子部品搭載済基板が固定される。
【0025】
そして、図1(b)の状態で、樹脂103を硬化または固化させる。さらに、基板101、樹脂封止された電子部品102および樹脂103から形成された樹脂封止電子部品を成形型から外して冷却する。このようにして、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法を実施することができる。
【0026】
また、図1(b)の成形型における上型は、図示のとおり、ストッパー16を有する。このストッパー16は、図示のとおり、吸着穴11が、ピン本体13およびピンプレート14から形成されたピンの本体部分13により閉じられた状態で、前記ピンを固定可能である。なお、本発明において、前記ストッパーの形状、構造等は、特に限定されず任意である。図1(b)のストッパー16は、図示のとおり、ピンプレート14外周とエジェクタプレート17外周との間の溝、および上型チェイスホルダ12内周の溝にストッパー16をかませることができる。これにより、ピンプレート14と上型チェイスホルダ12との相対位置がずれないように固定することで、図示のとおり、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で前記ピンを固定可能である。
【0027】
なお、図1(b)では、説明の便宜上、ストッパー16を図示しているが、ストッパー16は、樹脂封止電子部品の製造工程においては用いなくても良い。前述のとおり、図1(b)の状態では、成形型の型締め圧力により、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定可能なためである。また、上型のクリーニング時には、図1(b)に示すように、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定すると、吸着穴11に樹脂等が入り込むことを防止できる。これにより、例えば、成形型用のクリーニングシート(クリーニング用タブレット)等によるクリーニングがしやすい。図1の成形型において、上型のクリーニング時は、例えば、上型を解体後、クリーニングしても良いし、クリーニング後に、必要に応じて上型チェイス10の表面の再加工等をしても良い。また、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定するためには、ストッパー16を用いないこともできるが、図1(b)のようにストッパー16を用いることが好ましい。
【0028】
なお、本発明は、図1の形態に限定されない。例えば、図1では、上型が、前記電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型であるが、本発明では、これに代えて、下型が前記基板吸着型であっても良い。下型が前記基板吸着型である場合は、上型は前記基板吸着型でなくて良い。また、本発明において、前記基板吸着型でない型の構造は特に限定されない。前記基板吸着型の構造も、図1の構造のみには限定されない。
【0029】
本発明において、前記吸着穴の形状は、特に限定されず、円筒形、基板吸着面側が広がった半円錐形、または、逆に、基板吸着面側が狭まった半円錐形等、どのような形状でも良い。また、前記吸着穴の断面形状も、特に限定されず、円形、三角形、四角形、五角形、六角形、楕円形、正方形、長方形、長尺の帯形状等、どのような形状でも良い。
【0030】
前記吸着穴の位置も特に限定されず、例えば、樹脂封止領域内及び樹脂封止領域外のいずれか一方でも良いし、両方でも良い。なお、本発明の基板吸着型における前記「樹脂封止領域内」は、前記電子部品を樹脂封止したときに、前記基板を基準として前記電子部品または前記樹脂の真裏に位置する領域内をいうものとする。この領域内に前記吸着穴を有すれば、前記電子部品搭載済基板をさらに強力に吸着可能である。本発明の基板吸着型によれば、吸着穴から樹脂が入り込むことを防止できるので、樹脂封止領域内にも吸着穴を設けやすい。
【0031】
本発明の樹脂封止電子部品の製造方法において、前記基板および前記電子部品(電子部品搭載済基板)は、特に限定されず、例えば、一般的な樹脂封止電子部品に用いられる基板および電子部品と同様でも良い。前記基板の形成材料も、特に限定されないが、例えば、樹脂、セラミック、金属等である。前記電子部品も特に限定されないが、例えば、LED(発光ダイオード)、IC(集積回路)、BGA(ボールグリッドアレイ)等が挙げられる。前記電子部品の材質も特に限定されないが、例えば、シリコン等が挙げられる。また、前記電子部品搭載済基板における前記電子部品の数は、特に限定されず、基板1枚に対し、電子部品が1でも複数でも良い。
【0032】
また、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法における成形方法も特に限定されない。例えば、図1(a)および(b)では、前記成形方法として、圧縮成形(コンプレッション)を用いる例を説明したが、これに限定されず、例えば、トランスファ成形、射出成形等でも良い。また、前記樹脂も特に限定されない。例えば、図1(a)では、顆粒状樹脂を例示したが、これに限定されず、粉末状樹脂、液状樹脂、板状樹脂、シート状樹脂、フィルム状樹脂及びペースト状樹脂等であっても良い。例えば、粉末状樹脂は、加工の均一性に優れるため好ましく、液状樹脂は、加熱によるダメージを基板に与えにくいため好ましい。また、前記樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良いし、透明樹脂でも半透明樹脂でも不透明樹脂でも良い。さらに、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法は、前記吸着工程および前記樹脂封止工程以外の任意の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法は、基板上に複数の電子部品が樹脂封止されたパッケージを、前記吸着工程および前記樹脂封止工程により製造しても良い。
【0033】
本発明の成形型の材質も特に限定されないが、例えば、金型、セラミック型等が挙げられる。また、本発明の樹脂封止装置は、本発明の成形型を有すること以外は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂封止装置は、成形型が本発明の成形型である以外は、一般的な樹脂封止装置と同様であっても良い。
【0034】
さらに、本発明は、上述の各実施例および変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
10 基板吸着型(上型または上型チェイス)
11 吸着穴
12 上型チェイスホルダ(ホルダベース)
12a Oリング
13 ピン本体
14 ピンプレート
14S、23S スプリング
15 保持具
16 ストッパー(ロッド)
17 エジェクタプレート
20 下型
20C 下型キャビティ
21 下型チェイス
22 下型チェイスホルダ
23 下型外周先押え
101 基板
102 電子部品
103 樹脂
図1
図2