【実施例】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【0019】
図1(a)および(b)の工程断面図に、本実施例の成形型およびそれを用いた樹脂封止電子部品の製造工程を模式的に示す。前記各図において、
図2と同様の構成要素は、同一の符号で示している。
図1(a)に示すとおり、この成形型は、上型と、下型とから形成されている。上型は、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型である。図示のとおり、この上型は、上型チェイス10と、上型チェイスホルダ12(ホルダベース)と、ピン本体13およびピンプレート14から形成されたピンとを主要構成要素とする。上型チェイス10は、上型チェイスホルダ12の下端に固定されている。上型チェイス10には、吸着穴(吸引穴または吸引口ともいう)11が設けられ、吸着穴11内部を、真空ポンプ(図示せず)等により吸引して減圧にすることで、図示のように、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を吸着可能である。ピン本体13は、その上端が、ピンプレート14に固定されている。図示の上型チェイス10においては、吸着穴11の数は2個であり、ピン本体13の本数は、吸着穴11と同数の2本である。ただし、本発明では、吸着穴11の数(ピン本体13の本数)は、図示の数に限定されず、任意である。各ピン本体13は、1つのピンプレート14に固定され、一体のピンを形成している。
【0020】
なお、ピンプレート14は、さらに、その上端で、エジェクタプレート17に固定されている。この上型において、ピンプレート14と上型チェイスホルダ12の上側(上型チェイス10の基板吸着面と反対側)との間には、スプリング14Sが設けられて構成されている。従って、上型チェイスホルダ12自体はスプリング14Sの伸縮にて弾性上下動することができるように構成されている。
【0021】
上型チェイスホルダ12には、上型チェイス10の吸着穴の真上の位置に貫通穴が設けられている。ピン本体13は、上型チェイスホルダ12の前記貫通穴内を貫通しており、スプリング14Sの伸縮により、吸着穴11へ出し入れ可能である。上型チェイスホルダ12の前記貫通穴内には、ピン本体13を取り囲むように、弾力性を有するOリング12aが設けられ、前記貫通穴内の気密性が確保されている。上型チェイスホルダ12の上部において、ピンプレート14と対向する面上にも、1つのOリング12aが、全てのピン本体12aおよび全てのスプリング14Sを取り囲むように配置されている。また、この上型は、さらに、上型チェイスホルダ12の周囲を取り囲む保持具15を有している。保持具15の下端は、内側に向かって突出しており、その突出部に上型チェイスホルダ12を引っかけることで、上型全体が、下に落ちないように保持されている。さらに、
図1(a)には図示していないが、この上型は、後述の
図1(b)に示す通り、さらに、ストッパー(ロッド)16を有する。このストッパー16は、着脱可能である。
【0022】
一方、下型20は、図示のとおり、下型チェイスホルダ22と、その内側(上側)に固定された下型チェイス21と、下型外周先押え23とを含む。下型外周先押え23は、下型チェイス21の外周を取り囲むように配置されるとともに、スプリング23Sにより下型チェイスホルダ22に取り付けられている。下型チェイス21上面は、下型外周先押え23上面よりも低く配置されて段差を形成し、下型チェイス21上面と下型外周先押え21内周とに囲まれた空間が、下型キャビティ20Cを形成する。下型キャビティ20C内には、図示のとおり、樹脂103を収容可能である。
【0023】
図1(a)の成形型を用いた樹脂封止電子部品の製造方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、
図1(a)に示すとおり、基板101に電子部品102が搭載された電子部品搭載済基板を、基板101側で、上型チェイス10の下面(基板吸着面)に吸着させる(吸着工程)。一方、同図に示すとおり、下型キャビティ20C内に、樹脂103を充填する。
【0024】
さらに、
図1(b)に示すとおり、下型20を加熱して樹脂103を溶融させる。そして、基板101および電子部品102(電子部品搭載済基板)を上型チェイス10に吸着させた状態で、下型を上昇させるか、または上型を下降させる。例えば、上型は固定したままで、下型20を上昇させても良い。これにより、電子部品102を、下型キャビティ20C内に存在する溶融樹脂103に浸漬させて樹脂封止する(樹脂封止工程)。このとき、図示のとおり、基板101の外周が、下型外周先押え23の上面と、上型チェイス10の下面との間に挟まれる。そして、図示のとおり、成形型(クランプ)の型締め圧力により、スプリング14Sが縮み、ピンの本体部分13が吸着穴11に挿入されて、吸着穴11が閉じられる。これにより、例えば、上型チェイス10が樹脂103による成形面からの内圧を受けたり、ミスショットにより樹脂103が漏れたりしても、吸着穴11から上型内に樹脂が入り込むことを防止できる。また、
図1(b)の状態では、吸着穴11が閉じられたことにより、基板101および電子部品102(電子部品搭載済基板)を上型に吸着できない。しかし、この状態では、前述のとおり、基板101の外周が、下型外周先押え23の上面と、上型チェイス10の下面との間に挟まれており、吸着穴11の吸着力に代えて、成形型(クランプ)の型締め圧力で電子部品搭載済基板が固定される。
【0025】
そして、
図1(b)の状態で、樹脂103を硬化または固化させる。さらに、基板101、樹脂封止された電子部品102および樹脂103から形成された樹脂封止電子部品を成形型から外して冷却する。このようにして、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法を実施することができる。
【0026】
また、
図1(b)の成形型における上型は、図示のとおり、ストッパー16を有する。このストッパー16は、図示のとおり、吸着穴11が、ピン本体13およびピンプレート14から形成されたピンの本体部分13により閉じられた状態で、前記ピンを固定可能である。なお、本発明において、前記ストッパーの形状、構造等は、特に限定されず任意である。
図1(b)のストッパー16は、図示のとおり、ピンプレート14外周とエジェクタプレート17外周との間の溝、および上型チェイスホルダ12内周の溝にストッパー16をかませることができる。これにより、ピンプレート14と上型チェイスホルダ12との相対位置がずれないように固定することで、図示のとおり、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で前記ピンを固定可能である。
【0027】
なお、
図1(b)では、説明の便宜上、ストッパー16を図示しているが、ストッパー16は、樹脂封止電子部品の製造工程においては用いなくても良い。前述のとおり、
図1(b)の状態では、成形型の型締め圧力により、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定可能なためである。また、上型のクリーニング時には、
図1(b)に示すように、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定すると、吸着穴11に樹脂等が入り込むことを防止できる。これにより、例えば、成形型用のクリーニングシート(クリーニング用タブレット)等によるクリーニングがしやすい。
図1の成形型において、上型のクリーニング時は、例えば、上型を解体後、クリーニングしても良いし、クリーニング後に、必要に応じて上型チェイス10の表面の再加工等をしても良い。また、吸着穴11がピン本体13により閉じられた状態で固定するためには、ストッパー16を用いないこともできるが、
図1(b)のようにストッパー16を用いることが好ましい。
【0028】
なお、本発明は、
図1の形態に限定されない。例えば、
図1では、上型が、前記電子部品搭載済基板を吸着する基板吸着型であるが、本発明では、これに代えて、下型が前記基板吸着型であっても良い。下型が前記基板吸着型である場合は、上型は前記基板吸着型でなくて良い。また、本発明において、前記基板吸着型でない型の構造は特に限定されない。前記基板吸着型の構造も、
図1の構造のみには限定されない。
【0029】
本発明において、前記吸着穴の形状は、特に限定されず、円筒形、基板吸着面側が広がった半円錐形、または、逆に、基板吸着面側が狭まった半円錐形等、どのような形状でも良い。また、前記吸着穴の断面形状も、特に限定されず、円形、三角形、四角形、五角形、六角形、楕円形、正方形、長方形、長尺の帯形状等、どのような形状でも良い。
【0030】
前記吸着穴の位置も特に限定されず、例えば、樹脂封止領域内及び樹脂封止領域外のいずれか一方でも良いし、両方でも良い。なお、本発明の基板吸着型における前記「樹脂封止領域内」は、前記電子部品を樹脂封止したときに、前記基板を基準として前記電子部品または前記樹脂の真裏に位置する領域内をいうものとする。この領域内に前記吸着穴を有すれば、前記電子部品搭載済基板をさらに強力に吸着可能である。本発明の基板吸着型によれば、吸着穴から樹脂が入り込むことを防止できるので、樹脂封止領域内にも吸着穴を設けやすい。
【0031】
本発明の樹脂封止電子部品の製造方法において、前記基板および前記電子部品(電子部品搭載済基板)は、特に限定されず、例えば、一般的な樹脂封止電子部品に用いられる基板および電子部品と同様でも良い。前記基板の形成材料も、特に限定されないが、例えば、樹脂、セラミック、金属等である。前記電子部品も特に限定されないが、例えば、LED(発光ダイオード)、IC(集積回路)、BGA(ボールグリッドアレイ)等が挙げられる。前記電子部品の材質も特に限定されないが、例えば、シリコン等が挙げられる。また、前記電子部品搭載済基板における前記電子部品の数は、特に限定されず、基板1枚に対し、電子部品が1でも複数でも良い。
【0032】
また、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法における成形方法も特に限定されない。例えば、
図1(a)および(b)では、前記成形方法として、圧縮成形(コンプレッション)を用いる例を説明したが、これに限定されず、例えば、トランスファ成形、射出成形等でも良い。また、前記樹脂も特に限定されない。例えば、
図1(a)では、顆粒状樹脂を例示したが、これに限定されず、粉末状樹脂、液状樹脂、板状樹脂、シート状樹脂、フィルム状樹脂及びペースト状樹脂等であっても良い。例えば、粉末状樹脂は、加工の均一性に優れるため好ましく、液状樹脂は、加熱によるダメージを基板に与えにくいため好ましい。また、前記樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良いし、透明樹脂でも半透明樹脂でも不透明樹脂でも良い。さらに、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法は、前記吸着工程および前記樹脂封止工程以外の任意の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、本発明の樹脂封止電子部品の製造方法は、基板上に複数の電子部品が樹脂封止されたパッケージを、前記吸着工程および前記樹脂封止工程により製造しても良い。
【0033】
本発明の成形型の材質も特に限定されないが、例えば、金型、セラミック型等が挙げられる。また、本発明の樹脂封止装置は、本発明の成形型を有すること以外は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂封止装置は、成形型が本発明の成形型である以外は、一般的な樹脂封止装置と同様であっても良い。
【0034】
さらに、本発明は、上述の各実施例および変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。