特許第5744835号(P5744835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744835
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ヘテロレプティックイリジウム錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20150618BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150618BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
   H05B33/14 B
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
【請求項の数】33
【全頁数】84
(21)【出願番号】特願2012-502143(P2012-502143)
(86)(22)【出願日】2010年3月22日
(65)【公表番号】特表2012-521436(P2012-521436A)
(43)【公表日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】US2010028134
(87)【国際公開番号】WO2010111175
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/162,476
(32)【優先日】2009年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/727,615
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】スマン・レイェク
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/045466(WO,A1)
【文献】 特開2002−332291(JP,A)
【文献】 特開2005−029782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】
(式中、Xは、O及びSからなる群から選択され;
は、アルキルであり;
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を含む化合物。
【請求項2】
が、水素及び4つ以下の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、水素及びメチルからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
及びRが独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環内に6つの原子をもつアリール又は6つ若しくは5つの原子をもつヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
及びRが独立に、水素、メチル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
及びRが水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
、R、及びRが独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環内に6つの原子をもつアリール又は6つ若しくは5つの原子をもつヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
、R、及びRが独立に、水素、メチル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
、R、及びRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
下記式:
【化2】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
下記式:
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
下記式:
【化4】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化5】
【化6】
【請求項14】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化7】
【化8】
【請求項15】
XがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
以下のものからなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【化9】
【請求項17】
以下のものからなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【化10】
【請求項18】
以下のものからなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【化11】
【化12】
【請求項19】
XがSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
以下のものからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【化13】
【請求項21】
以下のものからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【化14】
【請求項22】
以下のものからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【化15】
【化16】
【請求項23】
アノード;
カソード;及び
前記アノードとカソードの間に配置された有機層を含み、さらに前記有機層が下記式:
【化17】
(式中、Xは、O及びSからなる群から選択され;
は、アルキルであり;
、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を含む化合物を含む有機発光デバイスを含む第一のデバイス。
【請求項24】
前記第一のデバイスが消費者製品である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
及びRが独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環に6つの原子をもつアリール又は6つ若しくは5つの原子をもつヘテロアリールからなる群から選択される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項23に記載のデバイス。
【化18】
【化19】
【請求項27】
前記化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項23に記載のデバイス。
【化20】
【化21】
【請求項28】
前記有機層が発光層であり、下記式:
【化22】
を有する化合物が発光ドーパントである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項29】
さらに前記有機層がホストを含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項30】
前記ホストがトリフェニレン部分及びジベンゾチオフェン部分を含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記ホストが下記式:
【化23】
(式中、R’、R’、R、及びR’は、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
R’及びR’は、モノ、ジ、又はトリ置換を表すことができ;
R’、R’、R’、R’、R’、及びR’は独立に、水素、アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
を有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
が4つ以下の炭素原子を有するアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項33】
がメチルである、請求項1記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2009年3月23日に出願した米国仮出願No.61/162,470号、及び2010年3月19日に出願した米国出願No.12/727,615号に対する優先権を主張し、それらの開示を、その全体を参照により本明細書に明示して援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
[発明の分野]
本発明は、有機発光デバイスに有利に用いることができる新規な有機錯体に関する。より詳細には、本発明は、ピリジルベンゾ置換配位子を含む新規なヘテロレプティックイリジウム錯体、及びそれらの化合物を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの材料はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対して、コスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機材料固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの材料と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本願に援用する。
【0006】
リン光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式を有する。
【化1】
【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特定に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性に寄与しない場合には「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の性質を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占軌道」(HOMO)又は「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合は、第二のHOMO又はLUMOのエネルギー準位よりも大きいか又は高い。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIP(より少ない負のIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)(より少ない負のEA)に相当する。従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、上端(トップ)を真空準位とし、物質のLUMOエネルギー準位は、同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも上である。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのようなダイヤグラムの上端(トップ)近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「仕事関数」は、その仕事関数がより大きな絶対値を有する場合には第二の仕事関数「より大きい」あるいは「より高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より大きな」仕事関数は、より負である(よりマイナスである)ことを意味する。上端(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下の方向へ、より離れたものとして図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣習に従う。
【0015】
OLEDについてのさらに詳細、及び上に記載した定義は米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を本明細書に参照して援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」, Nature, vol.395, 151〜154頁, 1998
【非特許文献2】Baldoら, 「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」, Appl. Phys. Lett., vol.75, No.3, 4〜6頁(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[本発明のまとめ]
新規な燐光発光化合物を提供する。この化合物は下記式:
【化2】
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を含む。
【0019】
この化合物は、下記構造:
【化3】
を有する配位子を含む。
Xは、NR、O、S、BR、及びSeからなる群から選択される。Rは水素及びアルキルから選択される。Rは4又はそれより少ない炭素原子を有することが好ましい。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。式IのR、R、R、及び/又はRの位置のアルキル基は、4又はそれより少ない炭素原子(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びイソブチル)を有することが好ましい。好ましくはR及びRは独立に、水素又は4以下の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくはR及びRは独立に、水素又はメチルである。好ましくは、R及びRは独立に、水素又は4以下の炭素原子を有するアルキルであり、より好ましくはR及びRは独立に、水素又はメチルであり、最も好ましくはR及びRは水素である。
【0020】
好ましくは、R及びRは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、又はその環内に6以下の原子をもつアリールであり、より好ましくは、R及びRは独立に、水素、メチル、又はフェニルである。好ましくは、R及びRは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、又はその環内に6以下の原子をもつアリールであり、より好ましくは、R及びRは独立に、水素、メチル、又はフェニルであり、最も好ましくは、R及びRは水素である。
【0021】
一つの側面では、R、R、R、及びRが独立に、水素及び4以下の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される化合物を提供する。別の側面では、R、R、R、及びRが独立して、水素及びメチルからなる群から選択される化合物を提供する。なお別の側面では、R、R、R、及びRが水素である化合物を提供する。
【0022】
別の側面では、R、R、R、及びRが独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、その環内に6以下の原子を有するアリールからなる群から選択される化合物を提供する。別の側面では、R、R、R、及びRが独立に、水素、メチル、及びフェニルからなる群から選択される化合物を提供する。なお別の側面では、R、R、R、及びRが水素である化合物を提供する。
【0023】
具体的なヘテロレプティックイリジウム錯体も提供する。一つの側面では、下記式:
【化4】
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【0024】
別の側面では、下記式:
【化5】
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【0025】
なお別の側面では、下記式:
【化6】
を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【0026】
ヘテロレプティックイリジウム錯体の具体例を提供し、それには化合物1〜36が含まれる。特に、XがOである(すなわち、ピリジルジベンゾフラン)ヘテロレプティック化合物、例えば、化合物1〜12を提供する。さらに、XがSである(すなわち、ピリジルジベンゾチオフェン)ヘテロレプティック化合物、例えば、化合物13〜24を提供する。さらに、XがNRである(すなわち、ピリジルカルバゾール)ヘテロレプティック化合物、例えば、化合物25〜36を提供する。
【0027】
ヘテロレプティック錯体のさらなる具体例も提供し、それには化合物37〜108が含まれる。特に、XがOであるヘテロレプティック化合物、例えば、化合物37〜60を提供する。さらに、XがSであるヘテロレプティック化合物、例えば、化合物61〜84を提供する。さらに、XがNRであるヘテロレプティック化合物、例えば、化合物85〜108を提供する。
【0028】
さらに、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機層を有し、その有機層が式Iを有する化合物を含む。特に、このデバイスの有機層は、化合物1〜36から選択される化合物を含んでいてよい。この有機層はさらにホストを含んでいてもよい。好ましくは、このホストはトリフェニレン部分とジベンゾチオフェン部分を含む。さらに好ましくは、このホストは下記式を有する。
【化7】
式中、R’、R’、R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R’、R’、R’、R’、R’、及びR’は独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0029】
このデバイスの有機層は、化合物1〜108からなる群から選択される化合物を含んでいることもできる。特にまた、このデバイスの有機層は化合物37〜108から選択される化合物を含んでいてもよい。
【0030】
デバイスを含む消費者製品も提供する。このデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードの間に配置された有機層を含み、その有機層がさらに式Iを有する化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、有機発光デバイスを示す。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3は、ヘテロレプティックイリジウム錯体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[詳細な説明]
一般にOLEDは、アノードとカソードの間に配置され且つこれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、その有機層(単数又は複数)中にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔が局在した場合、励起エネルギー状態を有する、局在化した電子-正孔対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構によって緩和する時に光が発せられる。ある場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在することもできる。非放射機構、例えば熱緩和も起こることがあるが、通常は好ましくないと考えられている。
【0033】
初期のOLEDでは、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(その全体を参照により援用する)に開示されているように、一重項状態から発光する(「蛍光」)発光分子を用いた。蛍光発光は一般に、10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0034】
より最近、三重項状態から光を発する(「リン光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。リン光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5〜6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0035】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0036】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材及びアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0037】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0038】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0039】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0040】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0041】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0042】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0043】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0044】
新規な化合物を提供し、この化合物はヘテロレプティックイリジウム錯体(図3に示している)を含む。特に、この錯体は、2つのフェニルピリジン配位子と1つの下記式:
【化8】
を有する配位子とを有する。構造式IIを有する配位子は、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾボロール、又はジベンゾセレノフェンに結合したピリジンからなる(本明細書では「ピリジルジベンゾ置換」ともいう)。これらの化合物は、有機発光デバイスにおいて、発光層中の発光ドーパントとして有利に用いることができる。
【0045】
2つ又は3つのピリジルジベンゾフラン、ピリジルジベンゾチオフェン、ピリジルカルバゾール、及びピリジルフルオレン配位子を含むイリジウム錯体はこれまでに報告されている。トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムのフェニル基を、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、及びフルオレン基で置き換えることにより、得られる錯体のHOMO−LUMOエネルギー準位、光物性、及び電気特性は、顕著な影響を受けうる。緑から赤までの範囲の様々な発光色が、ピリジルジベンゾ置換配位子の様々な組み合わせをもつ錯体(すなわち、ビス及びトリス錯体)を用いることによって達成されている。しかし、これまでの錯体には、実用上の制限がありえた。例えば、これらのタイプの配位子(例えば、ピリジルジベンゾフラン、ピリジルジベンゾチオフェン、又はピリジルカルバゾール)を2又は3つ有するイリジウム錯体は大きな分子量をもち、このことがしばしば高い昇華温度をもたらす。いくつかの例では、これらの錯体は、その高い分子量によって非昇華性になりうる。例えば、トリス(2−ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン)イリジウム(III)は昇華させようとしている間に分解した。さらに、ピリジルフルオレン配位子を含む公知の化合物は、低下した安定性をもちうる。フルオレン基(例えばC=O及びCRR’)は、配位子構造内の共役を乱して、電子を安定化させる低い能力をもたらす。したがって、ピリジルジベンゾ置換配位子(例えば、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾボロール、及びジベンゾセレノフェン)の有利な特性と比較的低い昇華温度をもつ化合物が望まれる。
【0046】
さらに、式IIを有する配位子を2つ又は3つ有するイリジウム錯体は大きな分子量と強い分子間相互作用を有し、これがしばしば高い昇華温度をもたらす。いくつかの例では、これらの錯体は、大きな分子量と強い分子間相互作用のため非昇華性になりうる。
【0047】
本明細書では新規なヘテロレプティック錯体を提供する。この錯体は、構造式IIを有するピリジルジベンゾ置換配位子を含む。特に、この新規なヘテロレプティック錯体は、一つのピリジルジベンゾ置換配位子(この配位子はO、S、N、Se、又はBを含み、すなわち、この配位子はピリジルジベンゾフラン、ピリジルジベンゾチオフェン、ピリジルカルバゾール、ピリジルジベンゾセレノフェン、又はピリジルジベンゾボロールである)と2つのフェニルピリジン配位子を含む。本明細書で開示したヘテロレプティック化合物における配位子の特定の組み合わせの結果として、これらの化合物は向上した光化学及び電気的特性並びに向上したデバイス生産性をもたらす。特に、式IIを有するジベンゾ置換ピリジン配位子を1つだけ含むことによって、本明細書において提供する錯体は、低い昇華温度(これは低い分子量及び/又は弱い分子間相互作用と関連する)を有しうる。さらに、これらの化合物は、ピリジルジベンゾ置換配位子に伴う利点の全て、例えば、向上した安定性、効率、及び狭い線幅を維持している。したがって、これらの化合物は、改善された有機発光デバイスと、そのようなデバイスを含む改善された市販製品をもたらすために用いることができる。特に、これらの化合物は、赤及び緑色燐光有機発光デバイス(PHOLED)に特に有用でありうる。
【0048】
前に述べたとおり、式IIを有する配位子を含むビス又はトリスイリジウム錯体は、その錯体の高い昇華温度のため、実用に限りがありうる。しかし、本発明の化合物は、より低い昇華温度を有し、これがデバイス生産性を向上させうる。表1は、本明細書で提供したいくつかの化合物とそれに対応するビス又はトリス錯体について昇華温度を示している。例えば、化合物1は243℃の昇華温度を有する一方で、対応するトリス錯体は昇華できなかった。さらに、3つのピリジルジベンゾ置換配位子を含むその他のトリス錯体(すなわち、ピリジルジベンゾチオフェンを含むトリス錯体)は昇華できない。したがって、本明細書で提供した化合物は、これまでに報告されたビス及びトリス錯体と比較して、向上したデバイス生産性を可能にしうる。
【0049】
【表1】
【表2】
【0050】
一般に、ジベンゾ置換ピリジン配位子は、フェニルピリジン配位子よりも低い三重項エネルギーを有することが予期され、その結果、ジベンゾ置換ピリジン配位子はその化合物の発光特性を制御することが予期される。したがって、その化合物の発光特性を調節するために、ジベンゾ置換ピリジン配位子の修飾を用いることができる。本明細書に開示した化合物は、ヘテロ原子(例えば、O、S、又はNR)を含み、任意選択でR及びRの位置で化学基によってさらに置換されているジベンゾ置換ピリジン配位子を含む。したがって、この化合物の発光特性は、具体的なヘテロ原子の選択及び/又はジベンゾ置換ピリジン配位子上に存在する置換基を変えることによって調節しうる。
【0051】
本明細書に記載した化合物には、以下の式を有するヘテロレプティック錯体が含まれる。
【化9】
【0052】
式Iを有する化合物の特徴には、下記式:
【化10】
の構造を有する1つの配位子と、2つのフェニルピリジン配位子(これはさらに置換基を有していてもよい)とを含み、全ての配位子がIrに配位していることが含まれる。
【0053】
Xは、NR、O、S、BR、及びSeからなる群から選択される。Rは水素及びアルキルから選択される。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0054】
別の側面では、R、R、R、及びRは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、その環内に6以下の原子をもつアリールからなる群から選択される。
【0055】
本明細書で用いる「アリール」の用語は、炭素原子又はヘテロ原子のいずれかを含み、フェニルピリジン配位子のフェニル環に縮合していないアリールをいう(すなわち、アリールは非縮合アリールである)。本明細書で用いる「アリール」の用語は、単環基及び多環系を意図している。多環式環は、2つの炭素原子が2つの隣接する環(これらの環は「縮合」している)に共通であり、その環の少なくとも1つが芳香族である(例えばそれとは別の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができる)2つ以上の環を有していてもよい。さらに、アリール基は、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で任意選択により置換されていてもよい。「アリール」はヘテロアリールをも含み、それは例えば、1〜3のヘテロ原子を含んでいてもよい単環式ヘテロ芳香族基、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、及びピリミジンなども含む。これには、2つの原子が2つの隣接する環に共通し(これらの環は「縮合」している)、環のうちの少なくとも1つがヘテロアリールである(例えば、他方の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができる)2つ以上の環を有する多環式ヘテロ芳香族システムが含まれる。さらに、そのヘテロアリール基は、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。例えば、R、R、R、及び/又はRは、フェニルピリジンのフェニル環に用いられていないアリール(ヘテロアリールを含む)であってよい。
【0056】
本明細書で用いる「アルキル」の用語は、直鎖と分岐鎖のアルキル基の両方を意図している。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが含まれる。さらに、アルキル基は、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で任意選択により置換されていてもよく、各Rは独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。化合物が昇華できるようにするために及び/又は昇華温度を下げるために、式IのR、R、R、及び/又はRの位置にあるアルキル基は、4つ以下の炭素原子を有することが好ましい(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びイソブチル)。
【0057】
通常、本明細書に示した化合物は、これまでに報告された化合物と比較して、比較的低い昇華温度を有する。したがって、これらの新規化合物は、その他の有利な特性のなかでも、改良されたデバイス生産性をもたらす。さらに、R、R、R、及びRが小さな置換基から選択されている式Iのヘテロレプティック化合物は特に有利でありうると考えられる。小さな置換基には、例えば、ハロゲン又はアルキルが含まれる。特に、置換基R、R、R、及び/又はRが小さな置換基から選択されている化合物は、低い昇華温度を有し、それによって生産性をさらに向上させる一方、構造式IIを有する配位子によってもたらされる望ましい特性(例えば、向上した安定性及び寿命)を維持しうると考えられる。
【0058】
一般に、式Iを有する提供された化合物は、R、R、R、及びRが独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択されるように置換基を有する。どのアルキルも4以下の炭素原子を有することが好ましい。分子量を最小化し、それによって昇華温度を低くするために、構造式IIを有する配位子上に小さな置換基を有する化合物が好ましい。好ましくは、R及びRは独立に、水素及び4以下の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、更に好ましくは、R及びRは独立に、水素及びメチルからなる群から選択される。
【0059】
同様の理由により、化合物はそのフェニルピリジン配位子上に存在する小さな置換基を有することが好ましい。さらに、フェニルピリジン配位子は、その錯体の発光にはあまり寄与しないと考えられる。さらに、この錯体は、2つのフェニルピリジン配位子を含み、したがって、フェニルピリジン配位子上に存在する置換基は、錯体全体の分子量に対し、より大きな寄与をする。少なくともこれらの理由によって、好ましくはR及びRは独立に、水素及び4以下の炭素原子を有するアルキル基から選択され、より好ましくはR及びRは独立に水素及びメチルから選択され、最も好ましくはR及びRは水素である。
【0060】
分子間相互作用を少なくすることができるアルキル及びアリール置換基を有する化合物も好ましい。
【0061】
別の側面では、好ましくはR及びRは独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環内に6つ以下の原子をもつアリールから選択され、さらに好ましくはR及びRは独立に、水素、メチル、及びフェニルから選択され、最も好ましくはR及びRは水素である。
【0062】
昇華温度を低下させ、デバイス生産性を向上させるために、錯体全体の分子量が低い化合物が好ましい。このためには、全ての置換基が比較的小さい化合物が好ましい。一つの側面では、好ましくは、R、R、R、及びRは独立に、水素及び4つ以下の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、さらに好ましくは、R、R、R、及びRは独立に、水素及びメチルからなる群から選択され、最も好ましくは、R、R、R、及びRは水素である。
【0063】
別の側面では、好ましくは、R、R、R、及びRは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環内に6以下の原子をもつアリールからなる群から選択され、より好ましくは、R、R、R、及びRは独立に、水素、メチル、及びフェニルからなる群から選択され、最も好ましくは、R、R、R、及びRは水素である。
【0064】
上で論じたように、XはBRであることもできる。好ましくは、Rは4以下の炭素原子を有する。先に論じたのと同様の理由から、置換基を有する配位子のカルバゾール部分上のより小さなアルキル基(すなわち、4つ以下の炭素原子を有するアルキル)は、その錯体の昇華温度を下げ、それによってデバイス生産性を向上させることができよう。
【0065】
具体的なヘテロレプティック錯体も提供する。一つの側面では、下記式を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【0066】
【化11】
【0067】
別の側面では、下記式を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【化12】
【0068】
さらに別の側面では、下記式を有するヘテロレプティックイリジウム錯体を提供する。
【化13】
【0069】
ヘテロレプティックイリジウム錯体の具体例を提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化14】
【0070】
【化15】
【0071】
【化16】
【0072】
ヘテロレプティックイリジウム錯体の追加の具体例を提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0073】
【化17】
【0074】
【化18】
【0075】
【化19】
【0076】
【化20】
【0077】
【化21】
【0078】
【化22】
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
ヘテロレプティックイリジウム化合物は、化合物1〜化合物108からなる群から選択することができる。
【0083】
式Iを有し、式中、XがO、S、及びNRから選択される化合物は、特に有利でありうる。理論に束縛されないが、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、又はカルバゾール部分(すなわち、XがO、S、又はNRである)を含む配位子の芳香族性は、電子の非局在化をもたらし、これが向上した化合物の安定性と改善されたデバイスをもたらしうると考えられる。さらに、XがOである化合物は、XがS又はNRである化合物よりもさらに好ましいと考えられる。多くの場合に、ジベンゾフランを含む化合物及びそのような化合物を含むデバイスは、特に望ましい特性を実証している。
【0084】
一つの側面では、XがOである化合物を提供する。XがOである例示化合物には化合物1〜12が含まれるがこれらに限定されない。XがOである化合物は、少なくともこれらの化合物が所望の特性を有するデバイスを生み出しうるので特に好ましい。例えば、これらの化合物は、向上した効率と長い寿命を有するデバイスをもたらしうる。さらに、これらの化合物の低い昇華温度が、そのような望ましいデバイスの向上された生産性をもたらすこともできる。
【0085】
XがOである追加の例示化合物を提供し、それには化合物37〜60が含まれるがそれらに限定されない。化合物1〜12及び37〜60は、向上した効率、寿命、及び生産性をもたらしうる。
【0086】
別の側面では、XがSである化合物を提供する。XがSである例示化合物には化合物13〜24が含まれるがこれらに限定されない。
ピリジルジベンゾチオフェン配位子を含むこれらの化合物は、良好な特性を示すデバイスに用いることもできる。例えば、XがSである化合物は、向上した安定性及び生産性を有するデバイスをもたらしうる。
【0087】
XがOである追加の例示化合物を提供し、それには化合物61〜84が含まれるがこれらに限定されない。化合物13〜24及び61〜84は向上した安定性と生産性を有するデバイスをもたらしうる。
【0088】
なお別の側面では、XがNRである化合物を提供する。XがNRである例示化合物には化合物25〜36が含まれるがこれらに限定されない。ピリジルカルバゾール配位子を含むこれらの化合物も良好な特性、例えば向上した効率を有するデバイスをもたらすために用いることもできる。
【0089】
XがNRである追加の例示化合物を提供し、それには化合物85〜108が含まれるがこれらに限定されない。化合物26〜36及び85〜108は向上した効率を有するデバイスをもたらしうる。
【0090】
さらに、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含み、その有機層は式Iを有する化合物を含む。Xは、NR、O、S、BR、及びSeからなる群から選択される。Rは、水素及びアルキルから選択される。好ましくは、Rは4以下の炭素原子を有する。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、4以下の炭素原子を有するアルキル、及びアリールからなる群から選択される。好ましくはR及びRは独立に、水素及び4つ以下の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される。式Iの化合物について好ましいとして記載したヘテロ原子及び置換基の選択は、式Iを有する化合物を含むデバイスに用いるためにも好ましい。これらの選択には、X、R、R、R及びR、及びRについて記載した選択が含まれる。
【0091】
別の側面では、R、R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、その環内に6つ以下の原子をもつアリールからなる群から選択される。好ましくはR及びRは独立に、水素、4つ以下の炭素原子を有するアルキル、及びその環内に6つ以下の原子をもつアリールからなる群から選択される。
【0092】
特に、その化合物が化合物1〜36からなる群から選択されるデバイスを提供する。
【0093】
加えて、化合物37〜108からなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。さらに、化合物1〜108からなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。
【0094】
一つの側面では、有機層は発光層であり、式Iを有する化合物は発光ドーパントである。有機層はさらにホストを含んでいてもよい。ホストは、トリフェニレン部分及びジベンゾチオフェン部分を含むことが好ましい。ホストは以下の式を有することがさらに好ましい。
【化26】
R’、R’、R’、R’、R’、及びR’はモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R’、R’、R’、R’、R’、及びR’のそれぞれは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0095】
上で論じたように、本明細書に示したヘテロレプティック化合物は、所望する特性、例えば、向上した寿命、安定性、及び生産性を有するデバイスをもたらすために、有機発光デバイスに有利に用いることができる。
【0096】
デバイスを含む消費者製品も提供する。さらにこのデバイスは、アノード、カソード、及び有機層を含む。さらに、有機層は、式Iを有するヘテロレプティックイリジウム錯体を含む。
【0097】
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記載した材料は、デバイス中に存在する広範囲のその他の材料と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在しうる広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載し又は言及する材料は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる材料の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の材料を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0098】
本明細書に記載した物質に加えて及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子/正孔阻止層材料、電子輸送及び電子注入材料をOLEDに用いることができる。本明細書に開示した材料と組み合わせてOLEDにおいて用いることができる材料の非限定的な例を下の表2に列挙している。表2には、非限定的な物質群、各群に対する非限定的な化合物例、及びその物質を開示している文献を挙げてある。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
【表9】
【0106】
【表10】
【0107】
【表11】
【0108】
【表12】
【0109】
【表13】
【0110】
【表14】
【0111】
【表15】
【0112】
【表16】
【0113】
【表17】
【0114】
【表18】
【0115】
【表19】
【0116】
【表20】
【0117】
【表21】
【0118】
【表22】
【0119】
【表23】
【0120】
【表24】
【0121】
【表25】
【実施例】
【0122】
[化合物例]
【0123】
例1.化合物1の合成
【化27】
【0124】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジンの合成
4-ジベンゾフランボロン酸(5.0 g, 23.6 mmol)、2-クロロピリジン(2.2 g, 20 mmol)、ジシクロへキシル(2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル)ホスフィン(S-Phos)(0.36 g, 0.8 mmol)、及びリン酸カリウム(11.4 g, 50 mmol)を、100 mLのトルエンと10 mLの水の中で混ぜた。窒素をその混合物中へ30分間直接バブリングさせた。次に、Pd2(dba)3(0.18 g, 0.2 mmol)を添加し、混合物を窒素下で8時間加熱し還流させた。その混合物を冷却し、有機層を分離した。有機層を食塩水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒留去して残留物を得た。この残留物を、ジクロロメタンで溶出させるカラムクロマトグラフィーによって精製した。4.5 gの所望の生成物が精製後に得られた。
【化28】
【0125】
化合物1の合成
イリジウムトリフラート前駆体(0.97 g, 1.4 mmol)と2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン(1.0 g, 4.08 mmol)を50 mLのエタノール中で混ぜた。この混合物を24時間、窒素下で加熱還流させた。還流中に沈殿物が生じた。反応混合物をセライト床を通した濾過した。生成物をメタノール及びヘキサンで洗った。その固体をジクロロメタンに溶かし、1:1のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。0.9 gの純粋な生成物がカラム精製後に得られた(HPLC純度: 99.9%)。
【0126】
例2.化合物2の合成
【化29】
【0127】
3-ニトロジベンゾフランの合成
250 mLの丸底フラスコ中の80 mLのトリフルオロ酢酸にジベンゾフラン(7.06 g, 42 mmol)を添加し、激しく撹拌してその内容物を室温で溶かした。この溶液をつぎに氷上で冷やし、20 mLのトリフルオロ酢酸中の1.2当量の70% HNO3(4.54 g, 50.40 mmol)を、撹拌している溶液中にゆっくり注ぎ入れた。30分間撹拌した後、フラスコから内容物を150 mLの氷水に注ぎ入れ、さらに15分間撹拌した。灰白色の沈殿物を次に濾過し、最後に2M NaOH及び水で洗った。湿った物質を次に1.5 Lの沸騰メタノールから、淡黄色結晶の形態に再結晶した。7.2 gの生成物を単離した。
【0128】
【化30】
3-アミノジベンゾフランの合成
3-ニトロジベンゾフラン(6.2 g, 29.08 mmol)を360 mLの酢酸エチルに溶かし、その溶液に窒素ガスを通すことによって5分間脱気した。500 mgのPd/Cをその溶液に添加し、内容物を60 psiの圧力で水素化した。反応は、水素化容器内の圧力が15分間60psiで安定するまで行った。反応物を次に小さなセライトパッドを通して濾過し、灰白色の生成物を得た(5.3 g, 28.9 mmol)。
【0129】
【化31】
3-ブロモジベンゾフランの合成
0℃に保ったコニカルフラスコ中の20 mLのconc. H2SO4に、NaNO2(2.21 g, 32.05 mmol)を溶かした。次に、最少量の氷酢酸中の2-アミノジベンゾフラン(5.3 g, 28.9 mmol)の溶液を、温度が決して5〜8℃より高くならないように、そのフラスコにゆっくり添加し、混合物を0℃でさらに1.5時間撹拌した。その撹拌した混合物に100 mLのエーテルを添加し、相当するジアゾ塩の沈殿が直ちに沈んだ。茶色のジアゾ塩を直ぐに濾過し、150 mLの48%HBr中にCuBr(6.25 g, 43.5 mmol)を含むフラスコに移した。このフラスコを次に64℃に保った水浴に入れ、2時間撹拌した。室温まで冷やした後、濃い色の反応内容物を濾過し、沈殿物を水で2回洗った。単離した固体を次に5〜10%DCM/ヘキサンを用いてシリカゲルカラム上でフラッシュクロマトして4.79 gの最終化合物を得た。
【0130】
【化32】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランの合成
3-ブロモジベンゾフラン(4.79 g, 19.39 mmol)、ビスピナコラートジボロン(6.4 g, 25.2 mmol)、KOAc(7.61 g, 77.54 mmol)を丸底フラスコ中、100 mLのジオキサンに添加した。内容物を30分間、窒素ガスのバブリング下で脱ガスし、Pd(dppf)2Cl2(158 mg, 0.019 mmol)をその反応混合物に添加した。さらに10分間脱ガスした後、反応混合物を80℃に加熱し、夜通し撹拌した。次に反応フラスコを室温まで冷やし、セライトパッドを通して濾過した。つぎに、濃茶色の溶液を食塩水と酢酸エチルとの間で分配させた。有機層を集め、無水Na2SO4上で乾燥させ、過剰な溶媒を減圧下で蒸発させた。次に、茶色の固体をシリカゲルカラムにドライチャージし、5%酢酸エチル/ヘキサン/0.005%トリエチルアミンを用いて速やかにフラッシュクロマトにかけ、5.08 gの最終生成物を得た。
【0131】
【化33】
2-(ジベンゾフラン-3-イル)ピリジンの合成
ジベンゾフランボロネートエステル(5.85 g, 20 mmol)、2-ブロモピリジン(2.93 mL, 30 mmol)、30 mLの2 M Na2CO3(60 mmol)を500 mLの三ツ口丸底フラスコ中で200 mLのトルエン/エタノール(1:1)中でスラリーにし、窒素ガスのバブリング下で30分間脱ガスした。Pd(dppf)2Cl2(160 mg, 0.2 mmol)をそのスラリーに添加し、脱ガスをさらに10分間続けた。次に反応内容物を夜通し還流させた。反応内容物を室温に冷やし、小さなセライトパッドを通して濾過した。次に、茶色の二相溶液を食塩水と酢酸エチルの間で分配させた。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、過剰な溶媒を減圧下で蒸発させた。前の工程からの残留物をシリカゲルカラムにドライチャージし、5〜8%酢酸エチル/ヘキサンで溶出させて、4.3 gの最終生成物を得た。
【0132】
【化34】
化合物2の合成
イリジウムトリフラート前駆体(2.8 g, 3.9 mmol)、2-(ジベンゾフラン-3-イル)ピリジン(4 g, 16.3 mmol)を100 mLのエタノール中で夜通し還流させた。明るい黄色の沈殿物を濾過し、乾燥させ、シリカゲルカラムにドライチャージした。210 mgの最終化合物を、3:2 DCM/ヘキサンを用いての溶出後に単離した。
【0133】
例3.化合物4の合成
【化35】
化合物4の合成
イリジウムトリフラート前駆体(1.6 g, 2.2 mmol)及び2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン(1.6 g, 6.5 mmol)を50 mLのエタノールに混ぜた。この混合物を24時間、窒素下で加熱還流させた。還流中に沈殿物が生じた。反応混合物をセライト床を通して濾過した。生成物をメタノール及びヘキサンで洗った。その固体をジクロロメタンに溶かし、1:1のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。1.4 gの純粋な生成物が、カラム精製後に得られた。
【0134】
例4.化合物10の合成
【0135】
【化36】
4-メチル-2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジンの合成
4-ジベンゾフランボロン酸(5.0 g, 23. 6 mmol)、2-クロロ-4-メチルピリジン(2.6 g, 20 mmol)、ジシクロへキシル(2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル)ホスフィン(S-Phos)(0.36 g, 0.8 mmol)、及びリン酸カリウム(11.4 g, 50 mmol)を100 mLのトルエン及び10 mLの水に混ぜた。窒素を30分間その混合物中へ直接バブリングさせた。次に、Pd2(dba)3を添加し(0.18 g, 0.2 mmol)、その混合物を8時間窒素下で加熱還流させた。その混合物を冷やし、有機層を分離した。その有機層を食塩水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、残留物になるまで溶媒留去した。その残留物を、ジクロロメタンで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製した。4.7 gの所望の生成物が精製後に得られた。
【0136】
【化37】
化合物10の合成
イリジウムトリフラート前駆体(2.0 g, 2.7 mmol)及び4-メチル-2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン(2.1 g, 8.1 mmol)を60 mLのエタノールに混ぜた。この混合物を24時間窒素下で加熱還流させた。還流中に沈殿物が生じた。反応混合物をセライト床を通して濾過した。生成物をメタノール及びヘキサンで洗った。その固体をジクロロメタンに溶かし、1:1のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。1.6 gの純粋な生成物がカラム精製後に得られた。
【0137】
例5.化合物29の合成
【0138】
【化38】
4’-ブロモ-2-ニトロビフェニルの合成
o-ヨードニトロベンゼン(9.42 g, 37.84 mmol)、4-ブロモベンゼンボロン酸(7.6 g, 37.84 mmol)、炭酸カリウム(21 g, 151.36 mmol)を190 mLのDME/水(3:2)溶液に添加し、30分間脱ガスした。Pd(PPh3)4(437 mg, 0.38 mmol)を窒素下でそのスラリーに添加し、そのスラリーをさらに5分間脱ガスした。反応物を窒素下で6時間還流させた。フラスコの内容物をセライトのパッドを通して濾過し、酢酸エチルと食塩水に分配させた。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒蒸発させた。粗生成物黄色オイルを5%酢酸エチル/ヘキサンを用いるシリカゲルの上でフラッシュクロマトした。最終化合物は無色オイルとして単離された(9.8 g, 35.4 mmol)。
【0139】
【化39】
2-ブロモ-9H-カルバゾールの合成
4’-ブロモ-2-ニトロビフェニル(9.8 g, 35.4 mmol)を30 mLのトリエチルホスファイトとともに夜通し還流させた。その溶液を室温まで冷やした後、40 mLの6(N) HClをそこへゆっくり添加し、80℃に3時間加熱した。酸性溶液をconc. NaOHで途中まで中和し、その酸性溶液の残りを固体のNa2CO3で中和した。曇った溶液を酢酸エチル(500 mL)で3回抽出した。一緒にした有機層を減圧下で溶媒蒸発させ、粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトした(15%〜30%酢酸エチル/ヘキサン)。4.1 gの最終化合物を灰白色固体として単離した。
【0140】
【化40】
2-ブロモ-9-イソブチル-9H-カルバゾールの合成
2-ブロモ-9H-カルバゾール(4.1 g, 16.74 mmol)をDMFに溶かした。撹拌した溶液にNaH(1.8 g, 75.5 mmol)を3回に分けて添加した。撹拌したスラリーにイソブチルブロマイド(4.8 mL, 43.2 mmol)を添加し、20分間待った後、60℃に4時間温めた。反応混合物を室温まで冷やし、飽和NH4Cl溶液の滴下による添加によって注意深く反応を停止させた。内容物を次に食塩水及び酢酸エチルに分配した。有機層を無水Na2SO4の上で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させた。粗生成物を、10%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトにかけた。最終生成物(4.45 g, 14.8 mmol)を白色固体として単離した。
【0141】
【化41】
9-イソブチル-2-ピナコールボロン-9H-カルバゾールの合成
2-ブロモ-9-イソブチル-9H-カルバゾール(4.45 g, 14.78 mmol)、ビスボロンピナコラート(4.7 g, 18.5 mmol)、酢酸カリウム(5.8 g, 59.1 mmol)を75 mLの無水トルエンに入れ、30分間脱ガスした。そのスラリーに窒素下でPd2dba3(362 mg, 0.443 mmol)を添加し、スラリーをさらに5分間脱ガスした。夜通し撹拌した後、反応の内容物を冷やし、セライトパッドを通して濾過した。トルエン溶液を水と酢酸エチルで分配させた。有機層を無水Na2SO4の上で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。固体粗生成物を10%酢酸エチル/ヘキサンを用いるシリカゲルでフラッシュクロマトした。単離した固体を133℃でクーゲルロール蒸留にかけて残留ビスボロンピナコラートを除去した。最終生成物(4.77 g, 13.7 mmol)を灰白色固体として単離した。
【0142】
【化42】
9-イソブチル-2-(ピリジン-2-イル)-9H-カルバゾールの合成
9-イソブチル-2-ピナコールボロン-9H-カルバゾール(1.45 g, 4 mmol)、2-ブロモピリジン(760 mg, 4.8 mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(67 mg, 0.16 mmol)、K3PO4・H2O(3.68 g, 16 mmol)を9:1のトルエン及び水の混合物40 mLに添加した。内容物を30分間脱ガスし、次にPd2dba3(37 mg, 0.04 mmol)を添加し、さらに5分間脱ガスした。夜通し還流した後、反応内容物を室温まで冷やし、セライトパッドを通して濾過した。濾液を水及び酢酸エチルに分配した。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒留去した。粗生成物を次に10%〜30%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトして脱ボラン化前の生成物を除去した。最終化合物(620 mg, 2.1 mmol)を白色固体として単離した。
【0143】
【化43】
化合物29の合成
前の段階からのカルバゾール配位子(620 mg, 2.1 mmol)をエタノールに溶かし、そこに中間体-1を窒素下で添加した。次に溶液を夜通し還流させた。濃橙色の沈殿物を濾過し、50%DCM/ヘキサンを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトした。単離した生成物を次に昇華させて310 mgの99.7%純度の生成物を得た。
【0144】
例6.化合物7の合成
【0145】
【化44】
化合物7の合成
イリジウムトリフラート前駆体(2.0 g, 2.7 mmol)及び4-メチル-2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン(2.1 g, 8.1 mmol)を60 mLのエタノールに混ぜた。混合物を24時間窒素下で加熱還流させた。沈殿物が還流中に生じた。反応混合物をセライト床を通して濾過した。生成物をメタノール及びヘキサンで洗った。その固体をジクロロメタンに溶かし、1:1のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。1.0gの純粋な生成物がカラム精製後に得られた。
【0146】
例7.化合物37の合成
【0147】
【化45】
化合物37の合成
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)ピリジン(5.0 g, 20.39 mmol)及びイリジウムトリフラート(5.0 g, 5.59 mmol)を100 mLのエタノール及びメタノールの1:1溶液とともに250 mLの丸底フラスコに入れた。この反応混合物を24時間還流させた。明るい黄色の沈殿物が得られた。反応物を室温まで冷やし、エタノールで希釈した。セライトを添加し、反応混合物をシリカゲル栓を通して濾過した。その栓をエタノール(2×50 mL)、次いでヘキサン(2×50 mL)で洗った。シリカゲル栓上に残った生成物を、きれいな受け用フラスコ中にジクロロメタンで溶出させた。ジクロロメタンを減圧下で除去し、生成物をジクロロメタンとイソプロパノールの混合物から再結晶させた。その黄色固体を濾過し、メタノール次いでヘキサンで洗って、明るい黄色結晶生成物を得た。この生成物をトルエンからの再結晶、次にアセトニトリルからの再結晶によってさらに精製して、HPLCによる純度が99.5%の生成物1.94 g(37.5%収率)を得た。
【0148】
〔デバイス例〕
全てのデバイスは、高真空下(<10-7 Torr)での熱蒸着によって作製した。アノード電極は800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFと次に1000ÅのAlからなる。全てのデバイスは作製後直ぐに窒素グローブボックス(<1 ppmのH2O及びO2)中でエポキシ樹脂を用いて封止したガラス蓋で密封し、水分吸収剤をそのパッケージに組み込んだ。
【0149】
本発明の化合物である化合物1、2、4、7、10、及び29が発光ドーパントでありH1がホストである具体的デバイスを準備した。デバイスサンプル1〜11の有機積層体は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのE1、正孔輸送層(HTL)として300Åの4,4’-ビス-[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)として300Åの、7%又は10%の本発明の化合物であるIr燐光化合物でドーピングしたH1、阻止層(BL)として50ÅのH1、及びETL1として400ÅのAlq3(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム)、からなる。
【0150】
比較例1及び2は、E1及びE2をそれぞれ発光ドーパントとして用いたこと以外は上記デバイス例と同様に作製した。
【0151】
本明細書で用いるように、以下の化合物は以下の構造を有する。
【0152】
【化46】
【0153】
デバイス構造及びデバイスデータを下に、表3及び表4にまとめている。表3はデバイス構造を示し、表4はそのデバイスについての対応する測定結果を示している。
【0154】
【表26】
【0155】
【表27】
【0156】
デバイス例1〜11より、緑色燐光発光デバイスにおいて発光ドーパントとしての本発明の化合物は、高いデバイス効率と長い寿命をもたらすことがわかる。特に、化合物1、2、7、及び29を含むデバイスの寿命RT80%(初期輝度L0が、40 mA/cm2の一定電流密度で室温にてその値の80%まで低下する時間として定義される)は、工業的基準の発光ドーパントIr(ppy)3を用いる比較例2について測定したものよりも顕著に高い。さらに、デバイス例1における化合物1は、高いデバイス効率を達成し(すなわち、1000 cd/m2にて60 cd/AのLE)、単一の置換ピリジル配位子(例えば、ピリジルジベンゾフラン)を含む本発明の化合物が、効率的な緑色電界燐光(エレクトロフォスフォレッセンス)のために充分高い三重項エネルギーを有することを示している。
【0157】
追加のデバイス構造及びデバイスデータを以下にまとめる。デバイス構造及びデバイスデータは以下に表5及び表6にまとめている。表5はデバイス構造を示し、表6はそれらのデバイスについての対応する測定結果を示している。
【0158】
本明細書で用いるように、以下の化合物は以下の構造を有する。
【0159】
【化47】
【0160】
H2は日本国東京の新日鐵化学社(NSCC)からNS60として入手可能な化合物である。
【0161】
【表28】
【0162】
【表29】
【0163】
デバイス例12〜21より、緑色燐光発光デバイス中の発光ドーパントとしての本発明の化合物は、高い効率と長い寿命をもつデバイスをもたらすことがわかる。特に、化合物29及び37を含むデバイスの寿命であるRT80%(初期輝度L0が、40 mA/cm2の一定電流密度で室温にてその値の80%まで低下する時間として定義される)は、比較例について測定したものよりも顕著に高い。特に、デバイス例18の化合物29及びデバイス例21の化合物37はそれぞれ、740時間及び315時間と測定された。H2中に化合物1を備えたデバイスは、例12にみられるように、特に高い効率78.6 cd/Aと長い寿命を有する。化合物1がH2中で特にうまく機能することは予期できなかった。さらに、デバイス例12、15、17、19、及び20における化合物1、4、7、29、及び37はそれぞれが高いデバイス効率を達成しており(すなわち、1000 cd/m2にて60 cd/Aより大きなLE)、これは単一の置換ピリジル配位子(例えば、ピリジルジベンゾフラン)を含む本発明の化合物が、効率的な緑色電界燐光(エレクトロフォスフォレッセンス)のために充分高い三重項エネルギーを有していることを示している。
【0164】
上記データは、本明細書で提示したヘテロレプティック錯体が燐光OLEDのための優れた発光ドーパントであり、向上した効率とより長い寿命を有するデバイス(これはまた向上した生産性をも有しうる)をもたらすことを示唆している。
【0165】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の思想から離れることなく別の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、これは当業者に明らかなとおりである。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3