特許第5744841号(P5744841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744841
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】コポリエーテルグリコールの製法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   C08G65/26
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-505865(P2012-505865)
(86)(22)【出願日】2009年4月15日
(65)【公表番号】特表2012-524148(P2012-524148A)
(43)【公表日】2012年10月11日
(86)【国際出願番号】US2009040647
(87)【国際公開番号】WO2010120291
(87)【国際公開日】20101021
【審査請求日】2012年3月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512299325
【氏名又は名称】インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100156915
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 奈月
(72)【発明者】
【氏名】サン,クン
(72)【発明者】
【氏名】オーランデイ,ロバート・デイ
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−152526(JP,A)
【文献】 特開平03−168212(JP,A)
【文献】 特開平09−291144(JP,A)
【文献】 特開昭61−123628(JP,A)
【文献】 特表2005−532419(JP,A)
【文献】 特表平08−510279(JP,A)
【文献】 特開昭54−145797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00 − 67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.1〜5重量%の反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、0超〜40重量%の希釈剤または溶媒、および酸触媒、の存在下で、30℃〜80℃の温度で、10〜90重量%のテトラヒドロフランと10〜90重量%の少なくとも一種の酸化アルキレンとを含んでなり、出発原料100重量部に対して15〜90重量部の供給原料を重合して、少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを含んでなる重合生成物を生成し、ここで、前記希釈剤または溶媒は1,4−ジオキサンであり、そして
b)重合生成物から、コポリエーテルグリコールを回収する:
工程を含んでなる、少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを製造する連続的方法。
【請求項2】
酸化アルキレンが酸化エチレン、酸化1,2−プロピレン、酸化1,3−プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化2,3−ブチレン、酸化1,3−ブチレンおよびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
反応性水素原子を含む化合物が、水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつコポリエーテルグリコール、およびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
酸触媒が、場合により酸処理により活性化されたゼオライト、硫酸塩ドープ二酸化ジルコニウム、少なくとも一種の、触媒として活性な酸素含有モリブデンもしくはタングステン化合物または酸化物キャリヤーに適用されたこのような化合物の混合物、を含んでなる担持触媒、スルホン酸基を含む重合体の触媒、並びにそれらの組み合わせ物、よりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項5】
重合体の触媒がペルフルオロスルホン酸樹脂を含んでなる、請求項4の方法。
【請求項6】
前記テトラヒドロフランの代わりに、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、3−エチルテトラヒドロフランおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも一種のアルキルテトラヒドロフランおよびテトラヒドロフランの混合物を用いる、請求項1の方法。
【請求項7】
重合工程a)が連続的撹拌槽反応器中で実施される、請求項1の方法。
【請求項8】
酸触媒が、スルホン酸基を含む重合体の触媒を含んでなる、請求項7の方法。
【請求項9】
a)水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつコポリエーテルグリコールおよびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択される、0.1〜5重量%の、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物;0超〜40重量%の1,4−ジオキサン;並びに酸触媒、の存在下で、30℃〜80℃の温度で、30〜70重量%のテトラヒドロフランと20〜50重量%の酸化エチレンとを含んでなり、出発原料100重量部に対して15〜90重量部の供給原料を重合して、少なくとも50モル%の酸化エチレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含んでなる重合生成物を生成し、そして
b)重合生成物から、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを回収する:
工程を含んでなる、少なくとも50モル%の酸化エチレンの高いモル濃度、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを製造する連続的方法。
【請求項10】
重合工程a)が連続的撹拌槽反応器内で実施される、請求項9の方法。
【請求項11】
酸触媒が、スルホン酸基を含む重合体の触媒である、請求項9の方法。
【請求項12】
重合体の触媒がペルフルオロスルホン酸の樹脂を含んでなる、請求項11の方法。
【請求項13】
a')0.1〜5重量%の、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、0超〜40
重量%の希釈剤または溶媒、および酸触媒、の存在下で、30℃〜80℃の温度において、10〜90重量%のテトラヒドロフランと、10〜90重量%の少なくとも一種の酸化アルキンとを含んでなり、出発原料100重量部に対して15〜90重量部の供給原料を重合して、オリゴマーの環式エーテル(OCE)、少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコール、酸化アルキレンの少なくとも一種の二量体、分子量130〜400ドルトンのコポリエーテルグリコールおよびテトラヒドロフランを含んでなる重合生成物の混合物を生成し、ここで、前記希釈剤または溶媒は1,4−ジオキサンであり、
b')工程a')の重合生成物の混合物から少なくとも95重量%のテトラヒドロフランと酸化アルキレンの二量体を分離して、OCE、少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコール、並びに分子量130〜400ドルトンのコポリエーテルグリコールを含んでなる粗生成物の混合物を生成し、
c')工程b')の粗生成物の混合物から、OCEと分子量130〜400ドルトンのコポリエーテルグリコールの少なくとも一部を分離して、OCEと分子量130〜400ドルトンのコポリエーテルグリコールとを含んでなるOCEの流れと、並びに少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを含んでなる生成物の流れと、を生成し、そして
d')場合により、工程c')のOCEの流れの少なくとも一部を重合工程a')に再循環
させる:
工程を含んでなる、少なくとも50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、650ドルトン〜4000ドルトンの平均分子量および80cP〜4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを製造するための連続的方法。
【請求項14】
酸化アルキレンが酸化エチレン、酸化1,2−プロピレン、酸化1,3−プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化2,3−ブチレン、酸化1,3−ブチレンおよびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
反応性水素原子を含む化合物が、水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、130ドルトン〜400ドルトンの分子量をもつコポリエーテルグリコール、およびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
酸触媒が、場合により酸処理により活性化されたゼオライト、硫酸塩ドープ二酸化ジルコニウム、少なくとも一種の、触媒として活性な酸素含有モリブデンもしくはタングステン化合物または酸化物キャリヤーに適用されたこのような化合物の混合物を含んでなる担持触媒、スルホン酸基を含む重合体の触媒、並びにそれらの組み合わせ物、よりなる群から選択される、請求項13の方法。
【請求項17】
前記テトラヒドロフランの代わりに、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランおよび3−エチルテトラヒドロフランおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも一種のアルキルテトラヒドロフランおよびテトラヒドロフランの混合物を用いる、請求項13の方法。
【請求項18】
重合工程a')が連続的撹拌槽反応器中で実施される、請求項13の方法。
【請求項19】
酸触媒がスルホン酸基を含む重合体の触媒を含んでなる、請求項18の方法。
【請求項20】
重合体の触媒がペルフルオロスルホン酸の樹脂を含んでなる、請求項19の方法。
【請求項21】
更に、工程b')の前に工程a')の重合生成物の混合物を濾過し、そして工程c')の前
に工程b')の粗生成物の混合物を濾過する工程を含んでなる、請求項13の方法。
【請求項22】
酸化アルキレンが酸化エチレンを含んでなり、そして酸化アルキレンの二量体が1,4−ジオキサンを含んでなる、請求項13の方法。
【請求項23】
更に、工程b')で得られたテトラヒドロフランから工程b')で得られた酸化アルキレンの二量体の少なくとも一部を分離し、そして場合により、そのようにして得られたテトラヒドロフランの少なくとも一部を重合工程a')に再循環させる工程を含んでなる、請求
項13の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸触媒、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、および特定の希釈剤または溶媒の存在下で、テトラヒドロフランと高濃度の少なくとも一種の酸化アルキレンとを含んでなる反応混合物の重合により、コポリエーテルグリコールを製造する連続的方法に関する。より具体的には、本発明は、酸化アルキレンの高いモルの取り込みを伴うコポリエーテルグリコールを製造するための、希釈剤または溶媒に補助される連続的重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)としても知られるテトラヒドロフラン(THF)の単独重合体は、ポリウレタンとその他のエラストマーにおけるソフトセグメントとしての使用に対して周知である。これらの単独重合体はポリウレタンのエラストマーおよび繊維に優れた動力学的特性を与える。THFと少なくとも一種の環式エーテルとの共重合体は、コポリエーテルグリコールとしても知られ、特に環式エーテルにより付与される減少された結晶性が、ソフトセグメントのような共重合体を含むポリウレタンの特定の動力学的特性を改善することができる同様な適用における使用に対して知られている。この目的に使用される環式エーテルの中には、酸化エチレンと酸化プロピレンがある。酸化アルキレンの高いモル、例えば少なくとも約50モル%、の取り込みを有するコポリエーテルグリコールは、ソフトセグメントのような共重合体を含むポリウレタンの、より高い極性および親水性並びに改善された動力学的特性、例えば更に低い結晶性による低温の柔軟性のために、望ましい。
【0003】
THFと、酸化アルキレンの通常のモル、例えば約28〜約49モル%、例えば約30〜約45モル%、の取り込みをもつ環式エーテルとの共重合体は当該技術分野で周知である。それらの調製法は例えば、特許文献1および2中にPruckmayrにより開示されている(特許文献1、2参照)。このような共重合体は例えば非特許文献1に記載された環式エーテル重合のいずれかの既知の方法により調製することができる(非特許文献1参照)。このような重合法は、強プロトンまたはルイス酸による、ヘテロ多酸による、並びにペルフルオロスルホン酸または酸の樹脂による触媒反応を含む。場合により、特許文献3に開示されたような、重合促進剤、例えば無水カルボン酸を使用することが有益であるかも知れない(特許文献3参照)。これらの場合には、主要な重合体生成物はジエステルであり、それらは所望のポリエーテルグリコールを得るためにその後の工程で加水分解される必要がある。
【0004】
例えば、特許文献4、5、6および7並びに発行特許出願物8および9中に示されたような、酸化アルキレンの通常のモルの取り込みを有するコポリエーテルグリコールの製造のその他の方法は当該技術分野で知られている(特許文献4、5、6、7、8、9参照)。例えば、特許文献6は、反応性水素を含む化合物と、その中で30重量%未満の、THF、酸化1,2−アルキレンおよび反応性水素を含む化合物の混合物が反応混合物に添加され、次にそれが反応器に再循環される固定床粘土触媒と、の存在下における、THFの酸化1,2−アルキレンとの共重合法を開示している(特許文献6参照)。特許文献10は、漂白土またはゼオライト触媒上の反応性水素を含む化合物の存在下で、重合期間中、反応混合物中の酸化1,2−アルキレンの濃度が2重量%未満に維持されるような方法で、反応混合物に供給される酸化1,2−アルキレンを使用するバッチ式の重合を開示している(特許文献10参照)。特許文献11は、その文献中に開示された方法により再生されたモンモリロナイト触媒が使用される時の、THFの酸化エチレンとの重合を開示している(特許文献11参照)。特許文献4は、THFと酸化アルキレンに基くコポリエーテ
ルグリコールが生成法によりばらつくことを開示している(特許文献4参照)。特許文献12は、供給原料の成分として通常濃度の酸化アルキレンを使用する重合法で製造された、酸化アルキレンの通常のモルの取り込みを有するコポリエーテルグリコールの精製のための、希釈剤または溶媒の使用を開示している(特許文献12参照)。
【0005】
前記の刊行物のどれも、酸触媒、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、および特定の希釈剤または溶媒の存在下で、テトラヒドロフランと非常に高濃度の少なくとも一種の酸化アルキレンとを含んでなる反応混合物の重合によるコポリエーテルグリコールの連続的製法を教示していない。前記の刊行物のどれも、酸化アルキレンの、例えば少なくとも約50モル%のような高い取り込みを有するコポリエーテルグリコールの連続的製法を教示していない。酸触媒と、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物との存在下で、テトラヒドロフランと高濃度の少なくとも一種の酸化アルキレンとを含んでなる反応混合物の重合によりコポリエーテルグリコールを製造するように前記の刊行物の方法を調整する方法は、製造工程に対して複雑性、加工の限界および/または経費を追加する。酸化アルキレンの高いモルの取り込みを有するコポリエーテルグリコールを製造するための、酸触媒と、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物との存在下での、テトラヒドロフランと高濃度の少なくとも一種の酸化アルキレンとを含んでなる反応混合物の共重合の、簡単で経済的な方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,139,567号明細書
【特許文献2】米国特許第4,153,786号明細書
【特許文献3】米国特許第4,163,115号明細書
【特許文献4】米国特許第4,192,943号明細書
【特許文献5】米国特許第4,228,272号明細書
【特許文献6】米国特許第4,564,671号明細書
【特許文献7】米国特許第4,585,592号明細書
【特許文献8】国際公開出願第03/076453号パンフレット
【特許文献9】国際公開出願第03/076494号パンフレット
【特許文献10】米国特許第4,728,722号明細書
【特許文献11】米国特許第5,268,345号明細書
【特許文献12】米国特許第4,677,231号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】P.Dreyfussによる“Polytetrahydrofuran”(Gordon & Breach,N.Y.1982)
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本発明は、酸化アルキレンの高いモルの取り込みを有するコポリエーテルグリコールを製造するための、THFと高濃度の酸化アルキレンとの重合の簡単で経済的な連続的方法であって、このような方法に伴う高温と粘度の問題を最少にする、または回避する方法を提供する。その方法は、
a)約0.1〜約5重量%、例えば約0.1〜約2重量%、の反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、以後により具体的に説明される、0超〜約40重量%、例えば約10〜約30重量%、の特定の希釈剤または溶媒、および以後により具体的に説明される酸触媒の存在下で、約30℃〜約80℃の温度において、約10〜約90重量%、例えば約30〜約70重量%、のテトラヒドロフランと、約10〜約90重量%、例えば約20〜約50重量%、の少なくとも一種の酸化アルキンとを含んでなる、約15〜約90部、例えば約15〜約75部、の供給原料を重合して、少なくとも約50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを含んでなる重合生成物を生成し、そして
b)重合生成物から、酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを回収する:
工程を含んでなる。
【0009】
従って、本発明は、
a)約0.1〜約5重量%、例えば約0.1〜約2重量%、の反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、以後により具体的に説明される、0超〜約40重量%、例えば約10〜約30重量%、の特定の希釈剤または溶媒、および以後により具体的に説明される酸触媒の存在下で、約30℃〜約80℃の温度において、約10〜約90重量%、例えば約30〜約70重量%、のテトラヒドロフランと、約10〜約90重量%、例えば約20〜約50重量%、の酸化エチレンとを含んでなる、約15〜約90部、例えば約15〜約75部、の供給原料を重合して、少なくとも約50モル%の酸化エチレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene−co−ethyleneether)glycol)を含んでなる重合生成物を生成し、そして
b)重合生成物から、酸化エチレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを回収する:
工程を含んでなる、酸化エチレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを製造する連続的方法を提供する。
【0010】
本発明の一つの実施形態は、
a’)約0.1〜約5重量%、例えば約0.1〜約2重量%、の反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、以後により具体的に説明される、0超〜約40重量%、例えば約10〜約30重量%、の特定の希釈剤または溶媒、および以後により具体的に説明される酸触媒の存在下で、約30℃〜約80℃の温度において、約10〜約90重量%、例えば約30〜約70重量%、のテトラヒドロフランと、約10〜約90重量%、例えば約20〜約50重量%、の少なくとも一種の酸化アルキンとを含んでなる、約15〜約90部、例えば約15〜約75部、の供給原料を重合して、少なくとも約50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコール、オリゴマー環式エーテル(OCE)、酸化アルキレンの少なくとも一つの二量体、例えば1,4−ジオキサン、線状短鎖コポリエーテルグリコールおよびテトラヒドロフランを含んでなる重合生成物の混合物を生成し、
b’)工程a’)の重合生成物の混合物から、大部分のテトラヒドロフランと酸化アルキレンの二量体を分離して、OCE、少なくとも約50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコール、並びに線状短鎖コポリエーテルグリコールを含んでなる粗生成物の混合物を生成し、
c’)工程b’)の粗生成物の混合物から、OCEと線状短鎖コポリエーテルグリコールの少なくとも一部を分離して、OCEと線状短鎖コポリエーテルグリコールを含んでなるOCEの流れと、少なくとも約50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘
度を有するコポリエーテルグリコールを含んでなる生成物の流れとを生成し、
d’)工程c’)の生成物の流れから、酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを回収し、
e’)場合により、工程c’)のOCEの流れの少なくとも一部を重合工程a’)に再循環させ、そして
f’)場合により、工程b’)で得られたテトラヒドロフランから、工程b’)で得られた酸化アルキレンの二量体の少なくとも一部を分離し、そして場合により、そのようにして得られたテトラヒドロフランの少なくとも一部を重合工程a’)に再循環させる:
工程を含んでなる、このような方法に伴う高温と粘度の問題を最少にする、または回避する、酸化アルキレンの高いモルの取り込みを有するコポリエーテルグリコールを製造するための、THFと高濃度の酸化アルキレンとの共重合のための、簡単で経済的な連続的方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
以上を考慮した集中的研究の結果として、我々は、少なくとも約50モル%、例えば約50〜約85モル%、の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールを製造することができる連続的方法であって、このような方法に伴う高温と粘度の問題を最少にする、または回避する方法を発見した。本発明の方法は、酸触媒、反応性水素原子を含む少なくとも一種の化合物、および特定の希釈剤または溶媒の存在下で、THFと高濃度の少なくとも一種の酸化アルキレンとの重合工程を含んでなる。重合工程後に、少なくとも約50モル%の酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコールが回収される。本方法においては、重合工程に対する供給原料中の、非常に高率、例えば約95〜約100重量%の酸化アルキレンが反応に消費される。本発明の一つの実施形態において、未反応THF、未反応酸化アルキレン、酸化アルキレンの二量体および存在するあらゆる低沸点成分は除去され、そしてコポリエーテルグリコール画分は例えば蒸留されて、OCEの少なくとも一部は除去される。次に、除去されたOCEの部分は重合工程に再循環され、そこでコポリエーテルグリコール生成物中に取り入れられることができる。
【0012】
本明細書で使用される用語「重合」は別記されない限り、その意味に用語「共重合」を含む。
【0013】
本明細書で使用される用語「PTMEG」は別記されない限り、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)を意味する。PTMEGはまた、ポリオキシブチレングリコールとしても知られる。
【0014】
単数形で本明細書に使用される用語「コポリエーテルグリコール」は別記されない限り、テトラヒドロフランと、少なくとも一種の酸化アルキレンとの共重合体であって、ポリオキシブチレン・ポリオキシアルキレン・グリコールとしても知られる共重合体を意味する。コポリエーテルグリコールの一例はテトラヒドロフランと酸化エチレンとの共重合体である。このコポリエーテルグリコールはまた、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールとしても知られる。
【0015】
単数形で、本明細書に使用される用語「線状短鎖コポリエーテルグリコール」は、別記されない限り、約130〜約400ドルトンの分子量をもつコポリエーテルグリコールを意味する。線状短鎖コポリエーテルグリコールの一例はHOCHCHOCHCH
CHCHOHである。
【0016】
本明細書で使用される用語「THF」は、別記されない限り、テトラヒドロフランを意味し、その意味に、THFと共重合することができるアルキル置換テトラヒドロフラン、例えば2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランおよび3−エチルテトラヒドロフランを含む。
【0017】
本明細書で使用される用語「酸化アルキレン」は、別記されない限り、その酸化アルキレン環中に2、3または4個の炭素原子を含む化合物を意味する。酸化アルキレンは未置換でも、あるいは、例えば1〜6個の炭素原子の線状または分枝アルキル、あるいは未置換の、または1個もしくは2個の炭素原子のアルキルおよび/またはアルコキシにより置換されたアリール、または塩素もしくはフッ素のようなハロゲン原子で置換されていることができる。このような化合物の例は、酸化エチレン(「EO」)、酸化1,2−プロピレン、酸化1,3−プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化1,3−ブチレン、酸化2,3−ブチレン、酸化スチレン、酸化2,2−ビス−クロロメチル−1,3−プロピレン、エピクロロヒドリン、ペルフルオロアルキルオキシラン、例えば(1H,1H−ペルフルオロペンチル)オキシランおよびそれらの組み合わせ物を含む。
【0018】
単数形で本明細書に使用される用語「オリゴマーの環式エーテル(OCE)」は、別記されない限り、少なくとも一種の酸化アルキレンおよび/またはTHFから誘導され、環式化合物内にランダムな方法で配列された成分のエーテルフラグメントよりなる一種または複数の環式化合物の系列を意味する。本明細書では単数形の用語として使用されるが、OCEは、THFと少なくとも一種の酸化アルキレンとの重合中に形成される環式エーテルの分布を表し、従って一連の個別の化合物を表す。そのような二量体は環式エーテルの一例ではあるが、本明細書で使用される用語OCEは重合に使用される酸化アルキレンの共単量体の二量体を除く。例えば、酸化アルキレンが酸化エチレンである場合は、酸化アルキレンの二量体は1,4−ジオキサンである。用語OCEから酸化アルキレンの二量体を除くことにより、OCEのこの定義は先行技術に開示されたOCEのものと異なるかも知れない。
【0019】
例えば、酸化エチレンとTHFとの共重合の場合は、OCEは開環酸化エチレンと、式[(CHCHO)(CHCHCHCHO)により表されるような開環THF反復単位よりなる環式オリゴマーエーテルの系列を含んでなる。このようなOCE成分の例は以下の表Aに示される。分子量232に対しては二種の異性体が認められた。表中に記載されないその他の高分子のOCE成分も同様に形成されるようである。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明の一つの実施形態は、THFと高濃度の酸化アルキレンとを含んでなる供給原料の共重合の連続的方法であって、このような方法に伴う高温と粘度の問題を最少にする、または回避する方法である。本発明の他の実施形態は、THFと高濃度の酸化エチレンとを含んでなる供給原料の共重合の連続的方法であって、このような方法に伴う高温と粘度の問題を最少にする、または回避する方法である。本発明の更なる実施形態は、高いモル、例えば少なくとも約50モル%、の酸化アルキレンの取り込みを有するコポリエーテルグリコール生成物である。
【0022】
本発明の方法中に反応物として使用されるTHFは市販されているあらゆるものであることができる。典型的には、THFは約0.03重量%未満の水および約0.005重量%未満の過酸化物を含む。THFが不飽和化合物を含む場合は、それらの濃度は、本発明の重合法またはその重合生成物に有害な効果をもたないものでなければならない。例えば、幾つかの適用に対しては、高いモルの濃度の酸化アルキレンを有する本発明のコポリエーテルグリコール生成物は低いAPHAカラー、例えば約100APHA単位未満をもつことが好ましい。場合により、THFは望ましくない副産物とカラーの形成を妨げるために酸化阻害剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むことができる。所望される場合は、約0.1〜約70重量%の量のTHF中に、THFと共重合可能な、一種または複数のアルキル置換THFを共反応物として使用することができる。このようなアルキル置換THFの例は、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランおよび3−エチルテトラヒドロフランを含む。
【0023】
前記のように、本方法における反応物として使用される酸化アルキレンはその酸化アルキレン環中に2、3または4個の炭素原子を含む化合物であることができる。それは例えば、酸化エチレン、酸化1,2−プロピレン、酸化1,3−プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化2,3−ブチレン、酸化1,3−ブチレンおよびそれらの組み合わせ物よりなる群から選択することができる。酸化アルキレンは好ましくは、約0.03重量%未満の水含量、約0.01重量%未満の総アルデヒド含量および約0.002重量%未満の酸度(酢酸として)を有する。酸化アルキレンはカラーおよび不揮発性残留物が低くなければならない。
【0024】
例えば、酸化アルキレン反応物がEOである場合は、それはどんな市販物であってもよい。EOは好ましくは、約0.03重量%未満の水含量、約0.01重量%未満の総アル
デヒド含量および約0.002重量%未満の酸度(酢酸として)を有する。EOはカラーと不揮発性残留物が低くなければならない。
【0025】
本発明の方法における使用に適した反応性水素原子を含む化合物の例は、水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、約162〜約400ドルトンの分子量をもつPTMEG、約134〜約400ドルトンの分子量をもつコポリエーテルグリコールおよびそれらの組み合わせ物を含む。反応性水素原子を含む化合物としての使用に適したコポリエーテルグリコールの一例は、約134〜約400ドルトンの分子量をもつポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールである。これらの化合物はまた、最終生成物の分子量を調整するために組み合わせて使用することができると考えられる。
【0026】
本発明に有用な酸触媒は、当該技術分野で全般的に知られた、環式エーテルの開環重合の可能な、あらゆる強酸および超酸触媒を広範に含む。触媒は均一系でも、または不均一系でもよい。不均一系触媒は押し出し物形態でまたは懸濁物中で使用することができる。不均一系触媒の使用は、特に触媒が押し出し物形態で使用される時に、触媒からの生成物の分離を容易にすることができる。
【0027】
本発明における使用に適した均一系酸触媒は、例により、しかし限定はされないが、例えば米国特許第4,658,065号明細書に開示されたヘテロ多酸を含む。
【0028】
本発明における使用に適した不均一系酸触媒は、例により、しかし限定はされないが、場合により酸処理により活性化されたゼオライト、硫酸塩ドープ二酸化ジルコニウム、少なくとも一種の、触媒として活性な酸素含有モリブデンおよび/もしくはタングステン化合物または酸化物キャリヤーに適用されたこのような化合物の混合物を含んでなる担持触媒、スルホン酸基を含む重合体の触媒(場合によりカルボン酸基を含む、または含まない)、並びにそれらの組み合わせ物を含む。
【0029】
本発明の方法における不均一系酸触媒としては、結晶中に一定の孔とチャンネルをもつ、三次元の網目の開放構造をもつ、天然または合成ゼオライト、アルミニウムヒドロシリケートの一群(結晶質アルミノシリケートとしても知られる)を使用することができる。本発明における使用に適したゼオライトは、約4:1〜約100:1、例えば約6:1〜約90:、または約10:1〜約80:1、の範囲のSiO/Alモル比をもつ。ゼオライトの粒度は約0.5ミクロン未満、例えば約0.1ミクロン未満、または約0.05ミクロン未満であることができる。ゼオライトは水素(酸)形態で使用され、そして場合により酸処理により活性化されることができる。本発明における使用のための酸性化ゼオライトはフォージャサイト(欧州特許第492807号明細書に記載)、ゼオライトY、ゼオライトベータ(米国特許第3,308,069号明細書に記載)、ZSM−5(米国特許第3,702,886号明細書に記載)、MCM−22(米国特許第4,954,325号明細書に記載)、MCM−36(米国特許第5,250,277号明細書に記載)、MCM−49(米国特許第5,236,575号明細書に記載)、MCM−56(米国特許第5,362,697号明細書に記載)、PSH−3(米国特許第4,439,409号明細書に記載)、SSZ−25(米国特許第4,826,667号明細書に記載)等により例示される。
【0030】
硫酸塩ドープ二酸化ジルコニウムの調製は、例えば米国特許第5,149,862号明細書に開示されている。
【0031】
更に、不均一系触媒として有用なものは、例えば米国特許第6,197,979号明細書に開示されたような、少なくとも一つの、触媒として活性な酸素含有モリブデンおよび/もしくはタングステン化合物または酸化物キャリヤーに適用されたそれらの化合物の混
合物を含んでなるものである。適した酸化物キャリヤーの例は、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化鉄(III)、酸化アルミニウム、酸化錫(IV)、二酸化ケイ素、酸化亜鉛またはこれらの酸化物の混合物を含む。担持された触媒は例えば、ドイツ特許第196 41481号明細書に記載のような、還元剤で前処理された、または、ドイツ特許196 49803号明細書に開示されたような、焼成され、そして元素の周期表のグループ2、3(ランタナイドを含む)、5、6、7、8および14の少なくとも一つの元素または元素の化合物を含んでなる促進剤を更に含んでなる、ドイツ特許出願第44 33606号明細書に開示されたように硫酸基もしくはリン酸基で更にドープすることができる。
【0032】
好ましい前記の不均一系触媒、例えば天然または合成ゼオライト、酸化物担持活性酸素含有モリブデンおよび/もしくはタングステン、並びに二酸化ジルコニウムは、それらがより摩滅抵抗性で、連続的撹拌槽反応器(CSTR)中の使用に適するように球形である。
【0033】
場合によりカルボン酸基を含む、または含まない、スルホン酸基を含む適切な重合体の触媒には、米国特許第4,163,115号および第5,118,869号明細書に開示され、そして商品名Nafion(登録商標)としてE.I.du Pont de Nemours and Companyにより市販されるような、それらの重合体連鎖が、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンと、スルホン酸基の前駆体を含むペルフルオロアルキルビニルエーテル(再度、カルボン酸基を含む、または含まない)との共重合体であるものがある。このような重合体の触媒はまた、アルファ−フルオロスルホン酸を含んでなる重合体とも呼ばれる。本発明における使用のためのこの種類の触媒の一例は、ペルフルオロスルホン酸の樹脂であり、すなわちそれはペルフルオロ炭素主鎖を含んでなり、側鎖は式-O−CFCF(CF)−O−CFCFSOHにより表される。この種類の重合体は米国特許第3,282,875号明細書に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、ペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)と、の共重合、次にスルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホン酸基への転化および、必要に応じてイオン交換して、それらの所望の酸性形態への転化、により製造することができる。更に本発明に有用なペルフルオロスルホン酸樹脂の触媒の説明に対しては米国特許第4,139,567号明細書も参照されたい。
【0034】
本発明に従って使用することができる重合体の不均一系触媒は、粉末の形態で、または成形体として、例えばビーズ、円筒形の押し出し物、球、環、螺旋物または顆粒の形態で使用することができる。重合体の不均一系触媒のペルフルオロスルホン酸樹脂タイプは、それを約1/4〜約1/10の樹脂/水の重量比で清浄なステンレス鋼のオートクレーブ中に脱イオン水と一緒に入れて、撹拌下で、例えば約170℃〜約210℃の温度に加熱し、そしてその温度に約12時間まで、例えば約1時間〜約8時間、維持することにより前処理(水処理)することができる。
【0035】
本発明の重合工程a)またはa’)は、適当な希釈剤または溶媒を使用して実施しなければならない。重合工程におけるこのような希釈剤または溶媒は例えば、不活性希釈剤または溶媒、例えば一種または複数の脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、を含む。更に、希釈剤または溶媒として、一種または複数の酸化アルキレンのコモノマーの、一種または複数の二量体、例えば酸化エチレンの場合には、1,4−ジオキサンを単独でまたは他の希釈剤または溶媒、例えば脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、と組み合わせて、使用することもできる。
【0036】
本発明の重合工程は全般的に、約30℃〜約80℃で、例えば約50℃〜約72℃、例えば約50℃〜約65℃で実施される。このような温度範囲は、本発明の希釈剤または溶媒に補助される方法において、コポリエーテルグリコール生成物中へのOCE取り込みに適する。使用される圧力は全般的に、使用される希釈剤または溶媒に応じて、約200〜約800mmHg、例えば約300〜約500mmHgである。
【0037】
過酸化物の形成を回避するために、本方法の重合工程は不活性ガス雰囲気下で実施することができる。本方法における使用に適する不活性ガスの限定しない例は、窒素、二酸化炭素または貴ガスを含む。
【0038】
本発明の重合工程はまた、約0.1〜約10バールの水素圧下で、水素の存在下で実施することができる。
【0039】
本発明の重合法の工程は連続的に実施されて製品のコンシステンシーを維持し、その方法の一つまたは複数のその他の工程は連続的にまたはバッチ様に実施され、すなわち、供給物が大量のバッチで調製され、そしてバッチが消費されるまで連続的に重合されることができる。同様に、重合反応器中でバッチが完全に処理された後に、生成物を保存し、処理することができると考えられる。
【0040】
重合反応は懸濁法または固定床法における連続法に適した従来の反応器または反応器アセンブリー中で、例えば、懸濁法の場合には、ループ反応器または撹拌反応器中で、あるいは固定床法の場合にはチューブ反応器または固定床反応器中で実施することができる。特に生成物が一回通過法で生成される時は、本方法における良好な混合の必要のために、連続的撹拌槽反応器(CSTR)が望ましい。
【0041】
このような連続的重合反応器装置において、所望される時は、触媒が一つまたは複数の反応器中に導入される前または後に、触媒を前処理することができる。触媒の前処理の例は、80〜200℃に加熱された気体、例えば空気もしくは窒素による乾燥、あるいは、触媒として活性な量の、少なくとも一種の酸素含有モリブデンおよび/またはタングステン化合物を含んでなる担持触媒の場合には、ドイツ特許第19641481号明細書に開示されたような、還元剤による前処理を含む。触媒はまた、前処理なしでも使用することができる。
【0042】
固定床法においては、重合反応器装置は逆流モードで操作することができ、すなわち反応混合物が底部から上方に運搬されるか、あるいは下方流モードで、すなわち反応混合物が頂上から反応器を通って下方に運搬される。
【0043】
重合反応器はCSTRにおけるような、生成物の内部再循環を使用せずに一回通過を使用して操作することができる。重合反応器はまた、循環モードで操作することができ、すなわち反応器を出る重合混合物が循環される。循環モードにおいては、供給物に対する再循環物の比率は100:1未満、例えば50:1未満、または例えば40:1未満である。
【0044】
供給原料は近年の工学的通例に一般的な送達システムを使用して、バッチ法でまたは連続的に重合反応器に導入することができる。供給物の送達の好ましい方法は、他の供給物の成分と一緒に連続的方法で、反応器、例えばCSTRに対する液体混合供給物として、例えばEOとTHFを合わせる。反応性水素を含む化合物と、あらゆる再循環されたOCEの流れは、独立にまたは比例の方法で反応器に計量される。重合反応器の下流で分離された、一部または全体のTHFの濃い流れを再循環して、生のTHF供給物の一部分の代わりに使用することができる。供給物中の酸化アルキレン、例えばEOの範囲は約10〜
約90重量%、例えば約20〜約50重量%である。供給物中のTHFの範囲は約10〜約90重量%、例えば約30〜約70重量%である。供給物中のOCEの範囲は、0(下流で分離されるOCEの流れのあらゆる再循環物の前)〜約20重量%、例えば約0〜約15重量%である。供給物中の線状短鎖コポリエーテルグリコールの範囲は、0(下流で分離されるOCEの流れのあらゆる再循環物の前)〜約10重量%、例えば0(下流で分離されるOCEの流れのあらゆる再循環物の前)〜約5重量%である。反応性水素を含む化合物の範囲は、水として約0.1〜約5重量、例えば約0.1〜約2重量%である。供給物中の適切な希釈剤または溶媒の範囲は約0超〜約40重量%、例えば約10〜約30重量%である。
【0045】
重合が懸濁法で実施された場合は、重合触媒の主要部分は、重合工程からの生産物の仕上げにおいて、すなわち、重合反応器中に保持された重合生成物の混合物からの、例えば濾過、デカントまたは遠心分離による分離を要する。言い換えると、生成された重合生成物の混合物を、重合生成物の混合物からのTHFと酸化アルキレン二量体との分離の工程に直接通過させるか、あるいはそれは、場合により、分離工程に通過させる前に、最初に処理して、あらゆる触媒の微粉または触媒の下流生成物を除去することができる。
【0046】
本発明の重合反応の工程からのコポリエーテルグリコールの生成物中の酸化アルキレン、例えば酸化エチレンのモルの取り込みは、少なくとも約50モル%、例えば約50〜約85モル%である。重合反応工程の生成物の流れ中のコポリエーテルグリコールの濃度は、約75重量%未満、例えば約40〜約75重量%未満、例えば約50〜約70重量%である。
【0047】
重合生成物の混合物から、大部分のTHFと酸化アルキレン二量体および酸化アルキレンを分離する工程、例えば前記の工程b’)を伴う本方法の実施形態において、それは、バッチ式または連続的に実施することができる。本工程における、大部分のTHFと二量体により、少なくとも約95重量%〜約100重量%、例えば少なくとも約98重量%を意味する。分離は、重合生成物の混合物から、大部分の、THF、酸化アルキレン、酸化アルキレン二量体およびあらゆる低沸点物質、例えばアセトアルデヒドまたは2−メチル−1,3−ジオキソラン、を分離する蒸留により実施される。本工程におけるTHFの分離は原則的に1回の蒸留工程で実施するか、あるいはそれは複数の蒸留工程、例えば2回または3回の蒸留工程と、その後のストリッピング工程で実施することができる。蒸留工程を異なる圧力下で実施することは有益である。
【0048】
分離操作の形態は、酸化アルキレン、重合工程中に使用される反応性水素原子を含む一種または複数の化合物、および使用される希釈剤に左右される。分離作業に応じて、可能な蒸留装置は、適当な塔または蒸発装置、例えば落下膜蒸発装置または薄膜蒸発装置、である。更に、トレイまたは充填塔を使用することは有益であることができる。
【0049】
以下に、重合工程中にTHF、酸化エチレン(EO)および水を使用する時の、重合生成物の混合物からの、THFと酸化アルキレン二量体の分離の、様々な、限定されない実施形態が更に詳細に開示される。
【0050】
ほぼ大気圧(例えば、450〜900mmHg)における大部分の未反応THFの除去は、連続的に操作される循環フラッシュ蒸発装置で実施することができる。あらゆる触媒の微粉または触媒の下流の生成物を除去するために、場合により濾過された重合生成物の混合物は、そこでフラッシュする蒸発装置の頂上近位の側面に、加熱循環流を介して、フラッシュ蒸発装置中に供給される。この実施形態、例えば前記の工程a’)からの重合生成物の混合物は通常、選択される操作温度と圧力に応じて約5重量%〜約40重量%のTHF含量を有する。1,4−ジオキサンは全般的に約0.1重量%〜約5重量%存在する
。水の含量は全般的に、約2500ppmを超えず、酸化アルキレン、例えばEOの含量は約200ppm〜約5000ppmであり、そして2−メチル−1,3−ジオキソラン濃度は約200ppm〜約2000ppmである。他の化合物、例えばエチレングリコール(典型的には約100ppm〜約1000ppm)および1,4−ブタンジオール(典型的には約30ppm〜約300ppm)も存在する。約100℃〜約160℃の頂上の循環温度および約100℃〜約200℃、例えば約100℃〜約120℃、の底部温度における、THFと1,4−ジオキサンと混合された、大部分の水、未反応酸化アルキレン、例えばEO、およびアセトアルデヒド、は頂上を経て留去される。蒸留物として得られるテトラヒドロフラン画分は濃縮され、そしてそのすべてまたは幾らか、例えば少なくとも約99%はその後、例えば蒸留による精製後に、重合工程に戻されることができる。蒸発装置の底部の蒸留残留物として得られる粗生成物の混合物は、酸化アルキレンの高いモルの取り込みと約650ドルトン〜約5000ドルトンの平均分子量を有するコポリエーテルグリコール、OCE、および非常に少量のTHF、酸化アルキレンの二量体、例えば1,4−ジオキサン、希釈剤、およびその他の低沸点物質を含んでなる。
【0051】
あるいはまた、大気圧における大部分の未反応THFの除去は、薄膜蒸発装置または蒸留塔、例えば約100℃〜約200℃、例えば約120℃〜約180℃で操作される、循環を伴う落下膜蒸発装置において実施することができる。蒸留物として得られるTHF画分、および蒸留残留物として得られる粗生成物の混合物の組成は前記のものに対応する。
【0052】
第一の蒸留工程から得られる蒸留残留物はその後、例えば、蒸発装置の温度より約2℃〜約5℃高い循環温度を伴って、約100℃〜約150℃(例えば約120℃)で、約80mmHg〜約160mmHg(例えば約130mmHg)で操作される第二の循環フラッシュ蒸発装置中で、減圧下で、大部分の残留THFを除去される。第二の回収工程から出る粗生成物は全般的に、約10ppm未満のEO、約50ppm未満の水、約200ppm未満の2−メチル−1,3−ジオキソラン、約3000ppm未満の1,4−ジオキサンおよび約1.5重量%未満のTHFを含む。主として、例えば少なくとも約99%のTHFを含んでなる、蒸留物として得られるTHF画分のすべてまたは幾らかは、蒸留塔中での精製後に重合工程に戻すことができる。精製された希釈剤もまた、THFと同様な方法で重合工程に戻すことができる。
【0053】
残留THFと二量体、例えば1,4−ジオキサン、を減少させるために、超低真空、例えば3トール未満、を使用する第三の工程、または、例えば窒素を使用する不活性ガスのストリッピングを使用することができる。第三の工程は薄膜蒸発装置、ワイプトフィルム蒸発装置、ディスクおよびドーナツコンタクターまたは充填塔を使用することができると考えられる。例えば、底部の約170℃の供給物における窒素、および頂上の約120℃の供給物における粗生成物、を含む充填塔中で窒素ストリッピングを使用すると、塔の底部を出る粗生成物は約1〜2℃だけ、例えば約118℃〜119℃に低下しただけであることができる。EOと水含量は全般的に、約1ppm未満であり、2−メチル−1,3−ジオキソランの濃度は約3ppm未満であり、THFの濃度は約40ppm未満であり、そして1,4−ジオキサンの濃度は約250ppm未満であると考えられる。残留希釈剤は化合物の沸点に左右されるであろう、例えば1,4−ジオキサンが希釈剤として使用される時は、それは250ppm未満であると考えられる。エチレングリコールと1,4−ブタンジオールのようなその他の高沸点化合物はわずかに減少されるであろうが、大部分は粗生成物中に留まるであろう。
【0054】
大部分のTHFと酸化アルキレン二量体が重合生成物の混合物から分離されて、OCE、酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約4000ドルトンの平均分子量および約80cP〜約4000cPの粘度を有するコポリエーテルグリコール、および線状短鎖コポリエーテルグリコール、を含んでなる粗生成物の混合物を生成した後に
、粗生成物の混合物からのOCEの少なくとも一部の分離工程に通過される前に、粗生成物の混合物を処理して、あらゆる触媒の微粉または触媒の下流生成物を除去することができる。
【0055】
重合生成物の混合物と粗生成物の混合物のいずれかまたは双方を処理して、前処理中または重合期間中に、例えば触媒の摩耗または侵出から起る可能性があるあらゆる触媒の微粉または触媒の下流生成物を除去することができる。これらの例は、未変化触媒、触媒キャリヤーおよび/または活性触媒成分を含んでなる、微細に粉砕された、懸濁されたまたは乳化された摩耗触媒を含む。酸素含有モリブデンまたはタングステン化合物あるいはこのような化合物の混合物が触媒として活性な化合物としてそれに適用された、酸化物のキャリヤー物質を含んでなる担持触媒の場合には、摩耗物質はそれに応じて、未変化触媒、担持物質および/または活性酸素含有モリブデンもしくはタングステン成分である。触媒の下流生成物は例えば、活性成分の溶解カチオンもしくはアニオン、例えばタングステンもしくはモリブデンのカチオンまたはモリブデートもしくはタングステートアニオンである。スルホン酸基を含むイオン交換装置、例えばNafion(登録商標)の場合には、下流も生成物はフッ化物イオンおよび/またはスルホン酸を含むことができ、硫酸塩ドープ金属酸化物の場合には、下流の生成物は硫酸および/または金属カチオンもしくはアニオンを含むことができる。
【0056】
このような触媒および/または触媒の下流の生成物の量は小さく、全般的に、重合工程からの生成物の0.1重量%、例えば0.01重量%を超えないが、この物質は除去されなければならないか、さもないと、コポリエーテルグリコール中に留まり、規格データを変え、それによりコポリエーテルグリコール製品の特性を変えると考えられる。
【0057】
触媒および/または触媒の下流の生成物は、重合生成物の混合物および/または粗生成物の混合物から、濾過、例えば限外濾過、固形吸着剤、例えば活性炭、上への吸着により、そして/またはイオン交換装置、例えば3〜10オングストロームの孔径をもつ分子ふるい、により分離することができる。固形吸着剤上への吸着はまた、酸または塩基を使用する中和と組み合わせることができる。濾過はまた、供給物、すなわちEO中の高分子ポリエチレングリコール(PEG)から、あるいは工程または装置、すなわち錆びおよびその他の外来物質からの、生成物中のその他の不溶性不純物を除去する。
【0058】
粗生成物の混合物から、少なくとも一部、例えば約4〜約30重量%、例えば約4〜約20重量%、のOCEを分離する工程、および例えば工程b’)の粗生成物の混合物から、約1〜約10重量%、例えば約1〜約8重量%の線状短鎖コポリエーテルグリコールを分離して、OCEと線状短鎖コポリエーテルグリコールとを含んでなるOCEの流れと、例えば工程c’)における、約95.0〜約99.9重量%、例えば約98.0〜99.8重量%のコポリエーテルグリコールを含んでなる生成物の流れ、とを生成する工程は、実際的に、従来の減圧蒸留装置を使用する蒸留により実施することができる。例えば、蒸留は整流を伴わないバッチ蒸留装置からバッチ法で実施することができる。短路蒸留装置、例えば機械的表面分配または自動的分配による従来の膜蒸発装置が有用である。膜蒸発装置の場合には、全般的に連続法が好ましいが、大部分の場合、バッチ蒸留装置からの蒸留はバッチ法で実施される。フラッシュ蒸発装置もまた、OCEの分離に適する。これらの装置において、必要な蒸発エネルギーは顕熱の形態で生成物中に導入され、その後に、生成物は減圧下で適当な容器中に入れられる。この方法中、その中に存在するOCEは気化される。蒸留は不活性ガス、例えば窒素による更なるストリッピングまたは過熱蒸気により強化することができる。この目的のためには、使用可能な薄膜蒸発装置、落下膜蒸発装置および/または短路蒸留ユニットが有用である。
【0059】
この分離工程、例えば工程c’)において、OCEと、約200〜約500ドルトンの
平均分子量をもつ低分子量コポリエーテルグリコールとは、約0.1〜約130マイクロバール、例えば約1〜約90マイクロバール、または例えば約10〜約70マイクロバールの圧力下で、約180℃〜約250℃、例えば約190℃〜約230℃の温度で、少なくとも1回の蒸留工程で分離され、そして酸化アルキレンの高いモルの取り込み、約650ドルトン〜約5000ドルトンの平均分子量、および80cP〜約4000cPの粘度をもつコポリエーテルグリコールが単離される。
【0060】
工程d’)において、大部分、例えば約50重量%を超える、例えば約50重量%超〜約99重量%、の工程c’)のOCEの流れが回収され、そして所望される場合は、重合工程a’)に再循環される。
【0061】
希釈剤または溶媒
我々は、本方法のための重合反応混合物中に適当な希釈剤または溶媒を使用することが、CSTRにおけるような連続的重合法において、そして特に不均一系触媒が使用される時に、活性水素を含む化合物の存在下で、THFと高濃度の酸化アルキレンとを含んでなる供給原料の共重合に対する先行技術の欠陥を克服することを見いだした。特定の希釈剤または溶媒による重合反応器の内容物の希釈が、系の粘度を低下させ、反応器中の触媒の保留を容易にする。外部のコンデンサーを通して、未反応試薬と不活性希釈剤または溶媒を使用することによる蒸発冷却により、反応熱が有効に運び去られることができるように、本方法における使用のための希釈剤または溶媒は適当な沸点をもたなければならない。
【0062】
希釈剤または溶媒は共重合反応機序に参加せず、それに関しては不活性であると言うことができる。それは例えば、5〜8個の炭素原子の線状または分枝短鎖炭化水素、5〜8個の炭素原子の環式炭化水素、安定な酸素化物、例えば1,4−ジオキサン、および置換または未置換芳香族炭化水素、の一つまたはそれらの組み合わせ物であることができる。このような適切な希釈剤または溶媒の限定されない例は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、1,4−ジオキサン、トルエンおよびキシレンを含む。一つの重要な基準は、希釈剤または溶媒が約40℃〜約150℃、例えば約50℃〜約120℃、の沸点をもつべきであることである。これが、冷蔵システムの使用に比較して、重合反応器を冷却するための冷却水の使用に大きな利点、例えばより低い経費および工程の簡略性、を許す。重合反応器の蒸発冷却はこの種類の工業的工程に極めて好ましい。本発明は反応器の内容物の蒸発冷却、例えば温度と圧力の組み合わせ物である反応条件下での沸騰、を容易にする。
【0063】
以下の実施例は本発明と使用のその可能性を示す。本発明はその他の、異なる実施形態が可能であり、その幾つかの詳細は、本発明の範囲と精神から逸脱せずに、様々な明白な事項における修正が可能である。従って、実施例は本性において説明的であり、そして非限定的であると見なされるべきである。
【0064】
材料
THFはChemcentral Corporationから得られた。EOはARC Specialty Productsから購入され、更に精製せずに使用された。NR50 Nafion(登録商標)過フッ化スルホン酸樹脂の触媒はE.I.du Pont de Nemours,Wilmington,Delaware,USA,から入手し、前記のように水処理した。濾過助剤はAldrich Chemicalから購入し、そして脱イオン水を使用した。
【0065】
分析法
共重合体への転化は反応器の流出口から回収される粗生成物の混合物中の不揮発物の重量パーセントにより規定され、それは粗生成物の混合物中の揮発物の真空オーブン(13
0℃、約200mmHg)の除去により測定された。
【0066】
全体の転化率はまた、減圧下、100℃における、未反応THF、酸化アルキレンおよび比較的揮発性の副産物、例えば1,4−ジオキサン、の蒸留により決定され、出発反応混合物と比較された回転蒸発フラスコ中に残された残留物の割合が全体の転化率である。粗生成物の混合物は更に短路蒸留ユニットにより約200℃、<0.3mmHgで蒸留されて、線状および環式分子の組み合わせ物よりなる低分子量のオリゴマーを除去された。最終生成物は酸化アルキレンの取り込みのみならずまた、分子量についてNMRで特徴を調べた。
【0067】
酸化アルキレンの分子量と取り込み率の双方は、ASTM法D 4875に従うH NMRにより測定された。分子量はまた、ASTM法E 222に従うヒドロキシル末端基の滴定により決定することができる。
【0068】
短鎖グリコールとOCE含量はFID検出計を伴う5メーターの長さのDB1701カラムを使用するガスクロマトグラフィーにより決定された。温度の計画は、50℃で開始され、50℃で2分間維持され、次に20℃/分の速度で250℃まで上昇させ、250℃で22.5分間維持され、次に50℃に低下された。サンプルの希釈は、トルエンで1:4重量であり、サンプルの注入量は1ミクロリッターであった。
【0069】
ヒドロキシル数はASTM法のE222に従うヒドロキシル末端基の滴定により決定された。
【0070】
生成物のAPHAカラーはASTM法のD4890に従って決定された。
【0071】
多分散性はGPCにより決定され、それはWaters Ultrastyragel 500Åのカラムを伴うHP1090シリーズII液体クロマトグラフィーを使用して実施された。THFが溶離剤として使用された。ポリスチレンとPTMEG基準が校正に使用された。多分散性はMw/Mn間の比率として計算された。
【0072】
最終生成物の粘度は40℃でASTM法のD4878を使用して決定され、センチポアズ(cP)で表された。
【実施例】
【0073】
すべての部と百分率は別記されない限り重量に基づく。
【0074】
触媒の前調整
下記の重合実験における使用の前に、90グラム(乾燥物に基づく)の、ペルフルオロスルホン酸樹脂の触媒と14グラムの水を、被覆された1リッター入りステンレス鋼のCSTR反応器システム中に充填した。1.5時間の保持時間(hold time)を伴い、58℃で24時間、THF中に4.8重量%のEOと0.24重量%の水を供給することにより触媒を調整した。次に1.2時間の保持時間を伴い、60℃で18時間、触媒を同一供給物で処理した。次に供給物を中止し、反応器システムを約30℃に放置冷却した。触媒を取り出し、濾過し、THFですすぎ、次に家庭用掃除機の吸引下、外界条件下でブックナー漏斗上で乾燥した。130℃で触媒をオーブン乾燥することにより決定されたように、乾燥後、触媒は13.5重量%の揮発物を含んだ。
【実施例1】
【0075】
1830グラムの1,4−ジオキサンと35.4グラムの脱イオン水との液体混合物を、撹拌装置と3個のバッフルセットの付いた、空気を含まない5ガロン(約20リッター
)の容器中の、2100グラムのTHFに充填して、THF溶液を調製した。撹拌装置は電圧をかけられ、冷却水を容器に適用されて、2135グラムのEOをTHF溶液に添加した。30分間の混合後、混合物を4ガロン(16リッター)の混合物運搬槽に移した。供給物混合物を供給物槽に供給し、自由空間の窒素で不活性にし、計量ポンプを使用して被覆0.5リッターのステンレス鋼のCSTR反応器システムに供給した。反応器中の撹拌装置は反応器の内容物の下方押し出しを提供するために45度にピッチされた1組の推進装置を備えていた。液体供給物は底部の推進装置と同じ高さに流入した。
【0076】
被覆0.5リッター反応器システムには45グラムの前処理されたペルフルオロスルホン酸樹脂の触媒を充填した。最初に反応器を2重量%の1,4−ブタンジオールと98重量%のTHFの溶液で満たした。反応物の混合物を500rpmの撹拌、40psigの窒素圧下で62℃に加熱し、他方、供給物の溶液を125ml/時間で添加して、4時間の保持時間を与えた。供給物の溶液は35.0重量%の酸化エチレン、30.0重量%の1,4−ジオキサン希釈剤または溶媒、0.58重量%の蒸留水およびバランスのTHFより成った。回転蒸発後のサンプル重量に基づく一定率の転化により、そしてコポリエーテルグリコール生成物の一定の分子量により証明されるように、4時間の保持時間/一工程で操作された反応器内の約8回の反復後に定常状態の条件に到達した。
【0077】
粗生成物中のEOとジオキサンの重量%は反応器流出口後に回収されたサンプル上のGCにより決定された。
【0078】
実験からの生成物(定常状態および非定常状態の双方の物質)を個々のサンプルとして保持し、回転蒸発させて揮発物を除去した。次に回転蒸発されたサンプルの特徴を調べて、転化レベルの%、OCE含量およびAPHAカラーを決定した。
【0079】
回転蒸発後、サンプルを濾過した。濾過助剤(Celpure(登録商標) 300)を濾紙とサンプルに添加した。次にサンプルを短路蒸留ユニット(Pope Scientificからの2もしくは4インチのユニット)に供給した。条件は190℃の壁温度、0.1トールの真空および約300〜500グラム/時間の供給速度であった。短路蒸留後、残留物のコポリエーテルグリコールのOCE含量、MWおよび取り込まれたEOのモル%を調べた。蒸留物のOCEの短鎖グリコール含量につき分析した。
【0080】
重合反応器流出口の混合物の分析により、全体的転化率は56.4重量%(1,4−ジオキサン希釈剤を使用しない転化率は約80.1重量%であると考えられる)であり、短路蒸留工程により除去された低分子量オリゴマーの量は5.0重量%であり、最終的コポリエーテルグリコール生成物の分子量は1968g/モル(1968ドルトン)であり、そしてEO取り込み率は67.8モル%であった。コポリエーテルグリコールの多分散性は1.94であり、カラーは14APHA単位であった。最終コポリエーテルグリコール生成物の粘度は517cPであった。
【実施例2】
【0081】
実施例1と同様な実験を、90グラムの前処理したペルフルオロスルホン酸樹脂の触媒を使用して、被覆1リッターのステンレス鋼のCSTR反応器システム中で実施した。6時間の保持時間と56℃の温度を使用した。供給物は36.0重量%のEO、30.0重量%の1,4−ジオキサン希釈剤または溶媒、1.0重量%の蒸留水、およびバランスのTHFを含んだ。新規の定常状態の条件下で、全体的転化率は54.8重量%であり、短路蒸留ユニットにより除去された低分子量オリゴマーは6.6重量%であり、最終生成物の分子量は、1209g/モル(1209ドルトン)であり、そして生成物中へのEO取り込みは71.3モル%に達した。コポリエーテルグリコールの多分散性は1.66であり、そしてカラーは22APHA単位であった。最終コポリエーテルグリコール生成物の
粘度は224cPであった。
【実施例3】
【0082】
36.0重量%のEO、30.0重量%の1,4−ジオキサン希釈剤または溶媒、0.7重量%の蒸留水、およびバランスのTHFを含む、新規の供給物を反応器に供給したことを除いて、実施例2を反復した。新規の定常状態の条件下で、全体的転化率は57.8重量%であり、短路蒸留ユニットにより除去された低分子量オリゴマーは4.9重量%であり、最終生成物の分子量は、1674g/モル(1674ドルトン)であり、そして生成物中へのEO取り込みは69.9モル%に達した。コポリエーテルグリコールの多分散性は1.91であり、そしてカラーは52APHA単位であった。最終コポリエーテルグリコール生成物の粘度は377cPであった。
【比較例1】
【0083】
3.9重量%のEO、0.51重量%の脱イオン水、およびバランスのTHFを含む新規の供給物を使用して、58℃および1.2時間の保持時間で反応を実施したことを除いて実施例2を再度反復した。新規の定常状態の条件下で、全体的転化率は17.6重量%であり、短路蒸留ユニットにより除去された低分子量オリゴマーは16.7重量%であり、最終生成物の分子量は、1009g/モル(1009ドルトン)であり、そして生成物中へのEO取り込みは31.9モル%であった。コポリエーテルグリコールの多分散性は1.90であり、そしてカラーは22APHA単位であった。最終コポリエーテルグリコール生成物の粘度は204cPであった。
【比較例2】
【0084】
13.8重量%のEO、0.31重量%の脱イオン水、およびバランスのTHFを含む新規の供給物を使用して、56℃および2.0時間の保持時間で反応を実施したことを除いて実施例2を再度反復した。新規の定常状態の条件下で、全体的転化率は49.7重量%であり、短路蒸留ユニットにより除去された低分子量オリゴマーは13.0重量%であり、最終生成物の分子量は、2970g/モル(2970ドルトン)であり、そして生成物中へのEO取り込みは38.6モル%であった。コポリエーテルグリコールの多分散性は2.60であり、そしてカラーは12APHA単位であった。最終コポリエーテルグリコール生成物の粘度は2891cPであった。
【0085】
前記の比較例の結果から、希釈剤が使用されない時は、同様な反応条件下で、例えば酸化エチレンのほぼ100%転化を伴って、全体的転化は、供給物中の酸化エチレンの含量増加とともに急速に増加することを認めた。データは明白に、重合反応器供給物中のEO含量の増加(例えば27重量%を超える)または最終生成物中のEO含量の増加(例えば50モル%を超える)は、極めて高い全体的転化を導くことを示す。これは、特に不均一系触媒が使用される時に、適当な希釈剤または溶媒を伴わない工業的CSTR法には、2つの実際的な問題を誘発すると考えられる。第1に、反応混合物が非常に粘性であり、そして、それが触媒を保持することを非常に困難にさせる、例えば濾過の問題である。第2に、比較的低い全体的転化の下では問題ではない、定常状態にある未反応THFが、蒸発的冷却システムにより反応熱を運び去るのに十分ではないと考えられる。両方の問題は、本発明におけるように適当な不活性希釈剤または溶媒を使用することにより、例えば反応混合物を希釈して、濾過を容易にさせ、そして定常状態の操作下で反応器を冷却するために、より蒸発性の媒質を提供することにより、適切に対処される。
【0086】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願物、試験法、優先文献、記事、刊行物、マニュアルおよびその他の文献は、これらの開示が本発明と矛盾しない程度に、そしてこのような取り込みが許されるすべての管轄区域に対して、引用することにより、本明細書に完全に取り込まれたこととされる。
【0087】
数値の下限と数値の上限が本明細書に記載される時は、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定される。
【0088】
本発明の説明的実施形態は具体性を伴って説明されてきたが、本発明の精神と範囲から逸脱せずに、当業者に対して様々なその他の修正が明白であり、彼らにより容易に変更することができることは理解されると考えられる。従って、この請求の範囲は、実施例と本明細書に示された説明に限定されることは意図されず、むしろ、請求の範囲は、本発明が関与する、当業者によりそれらの同等物として処理されると考えられるすべての特徴物を含む、本発明中に存在する特許獲得可能な新規物のすべての特徴物を包含するものと解釈されるべきことが意図される。