特許第5744879号(P5744879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5744879改善された耐熱性を持つホイルトラップ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744879
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】改善された耐熱性を持つホイルトラップ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150618BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150618BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01L21/30 531S
   G03F7/20 521
   H05G2/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-529385(P2012-529385)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-505573(P2013-505573A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】IB2010054129
(87)【国際公開番号】WO2011033447
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】09170710.9
(32)【優先日】2009年9月18日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】メッツマッヒャー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,ペーター クラウス
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/035328(WO,A1)
【文献】 特表2011−530184(JP,A)
【文献】 特開平05−267125(JP,A)
【文献】 特開2006−332654(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0108473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027,21/30
H05G 1/00 − 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デブリ抑制のためのホイルトラップ装置であり、前記装置は:
前記ホイルトラップ装置の入口側から出口側へ伸びる複数の空間的に離れたホイルを含み、前記ホイルが、前記入口側及び前記出口側の間に放射の直線通路を可能とするように構成され、
前記ホイルは、少なくとも入口側端部が、カーボンナノチューブの層でコーティングされている、ホイルトラップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり、前記ホイルが、Mo、鋼、Cu、W、Ta、Ti及びZrの1つのベース材料から作られる、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であり、前記ホイルが、前記カーボンナノチューブの層で完全にコーティングされる、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であり、前記層が1及び10μmの間の厚さを持つ、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であり、前記ホイルが、20及び200μmの間の厚さを持つ、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デブリ抑制のためのホイルトラップ装置に関し、前記ホイルトラップ装置は、複数の、空間的に分離された、前記ホイルトラップ装置の入口から出口に伸びるホイルを含み、前記ホイルが、前記ホイル装置の前記入口及び前記出口間の直線放射が可能となるように構成される。
【背景技術】
【0002】
極端紫外光(EUV)及び/又は軟X線放射を用いるシステムでは、ミラーやフィルターなどの光学部品がハイパワー光源の近くに設けられて使用される。光学部品及び光源は共に真空中又は最小限の非常に低圧レベル(通常1から100Pa)中に置かれ、利用されるべきターゲット放射の吸収を最小にする。本発明は特にEUVリソグラフシステムに関する。
【0003】
一般的に、光源、例えばパルスプラズマ光源は単に発光するだけでなく、望ましくない物質、いわゆるデブリをも発生する。これは前記光源自体の性質に依存して例えばSn、Li、Sb又はXeなどである。この意味での前記デブリは光学部品上に凝集し、その結果その性能を低下させ、前記光学部品が比較的短時間の後、効果無しとされ得る。高プラズマ温度により、このデブリの一部はkeV範囲のエネルギーを持つ非常に高速のイオン及び原子からなる。ここでは考慮しない非常に高速のデブリ物質とは別に、非常に大量のより遅い原子、イオン及び物質粒子がまた粒子同様に前記光線路に沿って予想され得る。
このタイプのデブリは、光学部品の性質例えばEUV反射性に対して、主に前記光学部品の表面上に物質が堆積することにより有害となる。前記光学部品の寿命は保護を行わないと、物質堆積によって10パルス未満のパルス光源となると見積もられている。寿命の最後は、それぞれの使用されるミラー部品の10%EUV反射性損失により定められる。
【0004】
光学部品を前記の意味で汚染デブリから保護するために、細心のEUVリソグラフシステム、特に光源を含む装置では、通常いわゆるホイルトラップが設けられている。前記ホイルトラップはデブリ抑制装置であって、前記EUV光源と前記光学部品の間に設けられる。前記ホイルは複数の薄いホイルからなり、ブレード又はラメラと呼ばれ、厚さは例えば0.25mm程度である。これらのホイルは通常は、平衡に又は半径方向に設けられ、さらに例えば1mm程度でお互いから空間的に離されており、半径方向に設けられる場合には外側周辺でより大きくなっている。回転軸に関して半径方向に設けられるホイルを持つホイルトラップは、高速粒子をトラップするために高回転周波数で操作され得る。かかるホイルトラップは例えばWO2006/134512A2に開示されている。さらに、前記装置は一般に不活性バッファガスと共に適用される。これにより、粒子及び物質が減速され、例えば前記回転軸回りのホイルの回転運動と協同して汚染物は前記トラップの壁に集められ、従って前記光学部品には到達されないこととなる。13.5nm波長のEUV放射システムにおいては、アルゴンがバッファガスとして使用される。というのは、これは粒子の効果的減速とEUV放射の吸収損失との、最適な妥協点の1つであるからである。他のガス、例えばHe、Ne又はKrなども使用可能である。前記記載の考え方に基づく多くの他のホイルトラップの変形デザインが存在する。これらは全てEUV放射の高いスループットのために設計されている。
【0005】
現在のホイルトラップの1つの欠点は、次世代のEUV光源、特にEUV光源リソグラフのための大量生産装置で予想される光熱負荷の将来予想に関するものである。
汚染物トラップ装置は装置内に配置された領域で数kW程度の熱に対応しなければならないことが予想される。これは、将来のシステムにおいて数十kWの入力パワー増加によるものであり、従って対応して強くなる放熱への要求によるものである。粒子及び放射により貯蔵されかつ輸送される熱の割合は合計で前記入力エネルギーの50%までとなり得る。従って、ホイルトラップ同様に光学部品はこのエネルギー入力に耐えることができるように適切に設計されなければならない。前記ホイルトラップへの熱負荷は、前記熱を輸送するEUV光源への方位及び半径方向距離に基づくデザインに幾何学的依存性を持つ。さらに、前記ホイルトラップの熱伝導性は、前記ホイルの数及び厚さに依存するがまた、例えば800K以上の高温で前記ホイルの物質の熱伝導性及び熱拡散性にも依存する。現在の最新の物質を適用する現在及び将来の設計が、これらの高温度を取り扱うことができ、かつ安定した連続操作及び長寿命を保証するために、専用の放熱方法を満たすことができるかについては、簡単なことではない。ほとんどの現在のホイルトラップの他の欠点は、使用されている物質の熱化学反応性に関する。全ての最新のシステムにおいては選択される物質は好ましくは銅、タンタル、モリブデン、タングステン又は鋼などの金属である。問題は、高温度では、酸化物を含まない全ての金属又は合金は、Sn系プラズマ光源から前記ホイルトラップへ運ばれるいまだ熱いSnと容易に反応するであろうということである。この化学反応は、またSnによる腐食の形として考えられるが、金属系ホイルトラップの性質を損なう恐れがある。この反応が飽和しない限り前記ホイル物質は完全に溶解され、その結果デブリ抑制の完全な失敗となり得る。セラミックス物質がこの問題の1つの解決手段である得る。しかし、これらセラミック物質は、前記高温度に伴う前記問題を持つ。というのは、通常これらは非常に低い熱伝導性を示すからである。さらなる可能性はカーボンファイバ複合体物資からなるホイルトラップの使用であり、WO2009/035328A1に記載されている。カーボンファイバ複合物質はSnに対してより高い耐性を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/134512A2号
【特許文献2】国際公開第2009/035328A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ホイルトラップを提供することであり、特にEUV及び/又は軟X線放射を生成するシステムにおいデブリを抑制するためのものであり、全ての高温度で、高い熱伝導性、Sn熱化学に対する高い耐性及び高い機械的剛性を持つものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は請求項1に記載のホイルトラップにより達成される。このホイルトラップの有利な実施態様は従属請求項の主題であり以下明細書中で開示される。
【0009】
提案されるデブリ抑制のためのホイルトラップ装置は、複数の空間的に離されたホイルを含み、前記ホイルトラップ装置の入口から出口に向かって伸び、前記ホイルが前記入口及び出口間の直線放射路を可能とするように構成される。前記ホイルは、好ましくは金属からなり、少なくとも入口端部が、少なくとも60%のsp混成炭素原子、好ましくはsp/sp結合比が>60%である炭素材料で、又はカーボンナノチューブでコーティングされている。又は、前記ホイルはまた完全に、前記組成物のバルクカーボン材料で製造され得る。前記値は、sp−C、sp−C及びHの三元状態図に関する。
【0010】
前記ホイルトラップのホイル数及び配置はこのホイルトラップの全構成と同様に、当技術分野に知られている。これは、前記ホイルトラップが例えば複数の平行なホイル又は複数の中心回転軸から半径方向に伸びるホイルを含むことができることを意味する。前記ホイルトラップはまた、いくつかのグループ化されたホイルを含み、これらは前記ホイルトラップの前記入口及び前記出口の間にお互いに背中合わせに配置されることができ、一方で前記1つのグループは中心軸の回りを回転可能とされるか又は静止されるか、又はこれらの組み合わせであり得る。本発明は、前記ホイルトラップのホイルの具体的な構成及び配置に限定されるものではない。
【0011】
前記ホイルトラップは、好ましくは、EUV光源、特にEUV光源コレクターモジュール又はEUVリソグラフシステム一般に適用するシステムに設けられる。 本発明の考え方は、カーボン材料の優れた熱機能、例えば熱ストレス、熱膨張係数(CTE)、熱伝導性、熱拡散性、熱容量及び熱衝撃抵抗性などの利用に基づくものである。さらに、これらの材料の優れた化学反応及び腐食に対する耐性に基づくものである。少なくとも60%のsp−混成炭素原子を含むカーボン材料の使用により、ホイルトラップが晒される高温度での前記課題は達成される。同様に、前記ホイルの少なくとも入口端部でカーボンナノチューブにより前記提案するコーティングが適用される。これらの提案される手段は、高い熱伝導性及びSnに対する高い熱化学反応抵抗性を与え、同様に機械的剛性をも与える。前記ホイルの前記入口端部のみをコーティングする代わりにまた、前記ホイルのより大きい領域又は全表面を前記材料でコーティングすることもできる。前記ホイルはまた、前記課題を達成するために、少なくとも60%sp混成炭素原子含有量を持つバルクカーボン材料から完全に製造することも可能である。
【0012】
炭素固体内の結合においてはsp、sp及びsp結合が通常は混在する。熱力学的には、sp結合(例えばグラファイト)が、sp−混成(例えばダイヤモンド)と比べると室温ではより安定であり、またsp結合はこの性質にはほとんど寄与していない。結合の性質から、よりsp結合が存在するほど、純粋な固体の性質はダイヤモンドの性質に近づくということは、容易に分かる。従って、sp/sp結合の比率が、一般にカーボン系材料の性質に強い影響を持ち、このことはグラファイト及びダイヤモンドの性質の大きな相違により最もよく示される。炭素固体におけるsp/sp比率を分析する1つの方法はラマンスペクトルである。
【0013】
文献では、用語ダイヤモンド、超ナノ結晶性ダイヤモンド、ナノダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、四面体配位アモルファスカーボン(taC)及びダイヤモンドライクアモルファスカーボン(DAC)は、本発明で使用される前記カーボン材料に対応数する多結晶、混合相材料又はアモルファスカーボン相の完全なクラスを記載するために使用される。DLCは場合により、超ナノ結晶性薄膜ダイヤモンドと考えられ、場合によりダイヤモンドライクカーボンフィルムと考えられる。対応するミクロ構造は、水素の存在で又は存在なしで成長工程により制御され得る。ここでより正確には、名前taCとは、高い、例えば>60%のsp/sp比率を持ち、その結果spの多い関連する相となり、sp、sp及びHの三元状態図の水素欠乏の頂点の材料のクラスを意味する。これは、真のナノ結晶性ダイヤモンド相を含むことができるがまた、アモルファス(非結晶性)の、水素を含まないがそれでも80%を超えるsp結合を持つカーボン相を含むことができる。本発明の1つの基本的考えは、ダイヤモンド相の割合がより多い材料は、他のカーボン相、他のすべての一般的な材料及び現在従来技術で使用されている材料に比べて、熱状態により要求をより満たすことができるものである。EUV適用に関しては相中の限定的な量の水素は悪影響を与えないであろう。
【0014】
かかる相を含むカーボンの組成及び性質はその調製方法に強く依存する。前記材料の堆積は標準の技術、例えば物理的蒸着方法により、特にダイヤモンドの多い相については化学的蒸着方法により実施され得る(それぞれ、PVD、CVD)。特にCVDガス相成分が重要である。O又はNがCVDガス内に存在することは非ダイヤモンド材料の形成を促し、熱拡散性を6x10−4/秒に制限する。同位体を多くした12C−ダイヤモンド相は熱伝導性が20から50%、天然相純粋ダイヤモンドに比べて高く、従って有利である。固体中の13Cは30%熱拡散を低下させる。
【0015】
カーボン材料は液体Snに対する腐食抵抗性である点で有利である。特に方法で求められる高温度で、ダイヤモンド含有カーボン化合物はアモルファスカーボンフィルム同様に、従来の銅、鋼又はモリブデンなどの材料に比べてより高い化学反応安定性を与える。
【0016】
前記ホイルを提案するカーボン材料又はカーボンナノチューブでコーティングする場合、前記ホイルのベース材料は好ましくは従来知られている金属性材料である。好ましい実施態様では、W、Ta、Ti又はZrなどの金属が前記ホイルのベース材料として使用される。これらの材料は、専用の真空アニーリング工程により前記カーボン材料と金属間の境界で金属炭化物が生成されるという利点を有する。これにより、前記カーボン材料とホイルとの非常に良好な接着が達成され、従来のシステムよりも他の性質、例えばより軽量のホイルなどを持つ適切なホイルのベース材料の選択を可能とする。
【0017】
提案されるホイルトラップは、地下添付の図面とともに例示の方法で説明される。しかし特許請求の範囲により定められる保護の範囲がこれらにより制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ホイルトラップの1例を示し、模式的側面及び全面図である。
図2図2は、ホイルトラップのコーティングされたホイルの2つの構成の模式図である。
図3図3は、ホイルトラップのコーティングされたホイルの2つのさらなる構成の模式図である。
図4図4はカーボンナノチューブの相でコーティングされたホイルの構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明によるホイルトラップの例示的構成を示し、左側に模式的側面図を右側には全面図が示される。前記ホイルトラップは回転の設計を持ち、ホイル4は回転軸6から設置部材として作用する外側リング3へ伸びている。前記ホイルトラップはEUVプラズマ光源1とEUVシステムの光学部品5と間に配置される。前記光学部品5は、例えば当技術分野で知られるコレクターミラーであり得る。ホイルトラップの回転軸6はEUVシステムの光学軸2上に設けられる。ヒートシールド7は軸6を保護する。EUVプラズマ光源1からの放射発光は前記ホイルトラップを直進路に沿って、前記ホイルトラップの一口と出口の間に伸びる1つのホイル4の間を通過する。回転軸6に沿ってこのホイルトラップを回転させることで、デブリ粒子はホイル4でトラップされ、光学部品5へは到達できないこととなる。
【0020】
提案されるホイルトラップの1つの実施態様では、実質的にsp混成炭素原子を含み比較的少量の水素を含むカーボン材料が、前記ホイルトラップのホイル4上のトップフィルム材料として使用される。この分類のカーボン材料は、関連する温度において例えばモリブデンやタングステンと比べて驚くべき高い熱電導性(λ)を与える。CDVダイヤモンドの最良の材料は、800Kで約700W(mK)を有することができ、これはCu又はAgに比較して約2倍であり、Mo又はWと比較して5倍を超える値である。かかるカーボン材料の厚さは、高い値の熱導電性及び熱拡散性を達成するためには1から10μmである。
【0021】
薄膜(フィルム)堆積の重要な問題は、前記フィルム及び基板の線膨張率の違いであり、これにより高すぎる応力が発生しフィルム接着性を破壊する恐れがある。カーボン材料及びMoの熱膨張係数は類似しており、カーボン材料をMo上に堆積することは有利である。
【0022】
図2は、かかるカーボン材料、特にDLC層8の層を持つホイルトラップのホイル4のコーティングの2つの例を示す。左側の例ではカーボン材料の堆積がホイル4の表面全体に維持されており、これによりさらに力緩和状態を可能とする。この実施態様の他の利点は、カーボン材料の堆積によるホイル4の表面粗さであり、これにより、材料のフィルター機能の効率が改善されより多くのデブリ粒子がトラップされ得ることとなる。
図2の右側の例では、DLC層8がホイル4の前端部にのみ、即ちEVU光源に方向づけられるホイルの領域上に堆積されている(前記ホイルトラップの入口側)。ここは最も効果的な領域である。というのはここはEUVへ直接挟まれており、EUV光9の通常の入射及び従って熱により最も影響を受ける可能性があるからである。
【0023】
提案されたホイルトラップの他の実施態様では、前記実施態様として定められたカーボン材料は、ホイルの異なるベース材料、カーボン材料が堆積される際に基板として作用する材料と組み合わせて使用される。前記の通り、カーボン材料は、液体Snに抵抗性であることが、我々の知見で見いだされた。しかし留意すべきは、カーボン材料は、W、Ta、Ti又はZrなどの金属により化学的に攻撃され、高温度でそれぞれの炭化物を生成することができるということである。この実施態様では、これは意図的に専用真空アニーリング工程により達成され、ここで金属炭化物がカーボン材料及び金属の(以前の)境界で生成される。これにより次の利点が得られる。第1は、カーボン層の非常に良好な接着性が達成されるということ、第2は、現在のシステムにおいてよりもより優れた性質を持つ適切なホイルのベース材料が選択される、ということである。1例としては、軽量材料であるチタンの選択であり、これによりホイルトラップ全体の重量を大きく減少することができる。他の例は、Moよりも熱膨張のより小さい係数を持つタングステンにより与えられ、これによりアモルファスカーボンフィルムの潜在的な高圧縮固有応力を相殺するという点で有利となる。
【0024】
かかる実施態様の2つの可能な構成が図3に示される。この図の左側には、ホイル4はWで作られ、DLC8は前記ホイル4の前部端(入口側部)に堆積される。アニーリング工程が、前記DLC層8とホイルのWベース材料の間の境界で中間層10としてWC層を形成するために実施される。
【0025】
右側の例は、ベースホイル材料がTiである。この例ではまた、アニーリング工程により、堆積DLC層8及びベースホイル材料の間の中間層TiCが形成される。この中間層10はこの図で模式的にのみ示され、ホイル4の全表面がカーボン材料でコーティングされている。
【0026】
留意すべき重要な点は、Fe、Co、Mn、Ni、Cr及びPt族元素などの、又はこれらを含む材料はカーボンの溶媒であり、ダイヤモンドのグラファイト化を促進(触媒的)するものであり、従って例えばTiなどの適切なバリア層が前記金属及びカーボン層間で使用されない限りこの考え方の意味で使用されるべきではない、ということである。
【0027】
提案されるホイルトラップの他の実施態様では前記カーボン材料は、ホイルトラップのホイル4のバルク材料として使用されるものである。即ちホイル4自体がこのカーボン材料から完全に作られている。CVDダイヤモンドフィルムの熱拡散性及び熱伝導性は、厚さを2から200μmへ増加することで増加する。室温で約2200W/(mK)の飽和レベルは、厚さ約200μmを超える場合に到達する。かかる独立構造を厚さが50μmと2mm以上との間のCVDダイヤモンドウェハから製造することは従来技術の範囲である。高い熱性能を与える大きいダイヤモンド粒塊(>20μm)については、この考え方は、従来の非ダイヤモンド層と比較して、厚さ50から200μmの適切なホイル厚さで、室温での熱伝導性として約1800W(mK)に改良するという、さらなる利点を持つ。
【0028】
留意すべきは、現在は応力はアモルファスカーボンフィルムの主要な問題ではなく、これはsp/sp比率が>60%でかつ100nmを超えるフィルム厚さを持つフィルムを、同時に合成され得る、ということである。さらに、高い機械的応力から前記システムを保護するために、前記ホイル(金属又はカーボン材料系)は通常、前記内部及び/又は外部リング又は配置部材の溝内にスライド可能に接続される。従って機械的問題は一般的に大きな問題とはならない。
【0029】
この実施態様のさらなる利点は、全ての金属系ホイルに比べてカーボン材料の非常に軽量かつ高引張強さにより、ホイルトラップの全重量は低減され、かつ回転部品はより高速で駆動され、これによりフィルター機能が改善されることとなる。他の利点は、従来のシステムに比べてより薄いホイルを選択できるということであり、これは機械的強度を失うことなくより高い熱伝導性を達成することができる、ということである。これはより高い光学透過性及びそれによるEUV性能の改良を可能とする。
【0030】
提案されるホイルトラップの他の実施態様では、ホイルトラップのホイル4上にトップフィルム材料としてカーボンナノチューブ(CNT)が使用されている。CNT又はバッキーチューブはカーボンのファイバポリマーであり、そのチューブ軸に沿って非常に高い熱伝導性を有するものである。単一のカーボンナノチューブについて理論的研究からは室温で6600W(mK)とされ、実験的に>3000W(mK)が測定されている。化学反応抵抗性、前記ファイバの高剛性及び強靭性を持つことから、この材料はまた、ホイルトラップシステムのホイル上に堆積されるフィルム材料として適するものとして非常に有望である。このこと及び熱性能を最も効果的に発揮させるために、CNTは図4左側に1例として模式的に示されるように緊密に積層され配列される必要がある。この図の右側には、CNT層11がホイル4の前部端(入口側部)にコーティングされていることが示される。左側ではこの層11のナノチューブのコーティング及び配列の拡大図が模式的に示される。
【0031】
以上図面及び明細書記載に基づき、本発明詳細に説明された。しかしこれらの図面及び記載は説明的又は例示的であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は開示された実施態様に制限されるものではない。前記記載及び特許請求の範囲の異なる実施態様はまた組み合わせることができるものである。開示された実施態様の他の変更・変法が、図面、開示内容及び特許請求の範囲を検討することで、当業者には理解され、実行され得る。例えば、ホイルトラップの構成は、図1を参照して記載されるシングルステージのホイルトラップには限定されない。また前記ホイルの他の配置も可能である。さらに前記ホイルはまた異なる設計を持ち得る。
【0032】
特許請求の範囲では、用語「含む」は他の要素やステップを除外するものではなく、用語「ひとつの」は複数を除外するものではない。相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利には使用できない、ということを意味するものではない。特許請求の範囲の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0033】
1 EUVプラズマ光源
2 光軸
3 設置部材
4 ホイル
5 光学部品
6 回転軸
7 熱シールド
8 DLC層
9 EUV光源光
10 中間層
11 CNT層
図1
図2
図3
図4