(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744916
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】センサガイドワイヤ装置およびセンサガイドワイヤ装置を含むシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0215 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
A61B5/02 331E
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-550386(P2012-550386)
(86)(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公表番号】特表2013-517863(P2013-517863A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】EP2011050519
(87)【国際公開番号】WO2011092069
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2013年11月22日
(31)【優先権主張番号】1050086-6
(32)【優先日】2010年1月27日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/298,655
(32)【優先日】2010年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510078366
【氏名又は名称】セント ジュード メディカル システムズ アクチェボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】フビネット,ウルリック
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/100208(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0319290(US,A1)
【文献】
特表2010−518900(JP,A)
【文献】
特表2011−523368(JP,A)
【文献】
特表2010−538745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の生理的変数を血管内で測定するためのセンサガイドワイヤ(200)を備えたセンサガイドワイヤ装置であって、前記センサガイドワイヤ(200)は、生体内の少なくとも1つの生理的変数を感知するよう構成された少なくとも1つのセンサ素子(213)を備え、前記センサガイドワイヤ装置は、前記センサガイドワイヤの近位端に直接的または間接的に接続されるように構成されたコネクタユニット(220)をさらに備えるセンサガイドワイヤ装置において、
前記コネクタユニット(220)は、信号変換装置(310)に前記センサ素子(213)により感知された生理的変数を示す信号を提供するための電気的接点を介して、前記信号変換装置(310)に物理的に取り付け可能であり、
前記コネクタユニットは、前記センサガイドワイヤが前記コネクタユニットを介して前記信号変換装置に取り付けられるように配置されており、
前記信号変換装置は前記信号を確立された規格に準じて処理された信号に変換するように配置され、前記処理された信号は生理機能モニタ(320)によって受信されるように適応され、
前記コネクタユニット(220)は、前記コネクタユニット(220)内に配置された一体型のバッテリ(222)を備え、前記バッテリ(222)は、前記コネクタユニット(220)が前記信号変換装置(310)に取り付けられた時に前記電気的接点を介して、離隔した前記信号変換装置(310)に電力を供給するように構成され、前記センサガイドワイヤ装置は熱滅菌された使い捨ての装置であることを特徴とするセンサガイドワイヤ装置。
【請求項2】
前記センサ素子(213)は、前記センサガイドワイヤ装置が前記信号変換装置(310)に取り付けられた時に、前記信号変換装置(310)によって電圧を印加される、請求項1に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項3】
前記コネクタユニットは、前記センサ素子(213)に関する較正データを含むEEPROM等の較正メモリを備える、請求項1または2に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項4】
前記コネクタユニット(220)は、前記センサガイドワイヤ(200)の近位部に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項5】
前記コネクタユニット(220)は、前記信号変換装置(310)の雌コネクタ(311)に接続されるよう構成された雄コネクタ(221)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項6】
前記コネクタユニット(220)は、前記信号変換装置(310)の雄コネクタに接続されるように構成された雌コネクタを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項7】
前記確立された規格はBP−22規格である、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項8】
前記信号変換装置(310)は、潜在的に異なる信号要求を有する複数の異なる生理機能モニタのいずれかに規格化された信号が生理機能モニタ(320)に送られるように、前記信号を処理するよう構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置。
【請求項9】
生体内の生理的変数の血管内測定用のシステム(300)であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサガイドワイヤ装置と、
前記センサガイドワイヤ装置の前記コネクタユニット(220)を介して前記センサガイドワイヤ装置に取り付け可能な信号変換装置(310)と
を備えるシステム(300)。
【請求項10】
前記信号変換装置(310)は、前記信号変換装置(310)が前記コネクタ(220)に取り付けられた時に前記バッテリ(222)の出力レベルをモニタするよう、かつ前記電源供給部の前記出力レベルが予め設定された閾値を下回った場合に出力レベル警報信号を生成するように構成された電源供給モニタ装置(312)を備える、請求項9に記載のシステム(300)。
【請求項11】
前記コネクタユニット(220)に取り付け可能であって、前記コネクタユニット(220)に取り付けられた時に前記バッテリ(222)の出力レベルをモニタするよう、かつ前記バッテリの前記出力レベルが予め設定された閾値を下回った場合に出力レベル警報信号を生成するようにさらに構成された電源供給モニタ装置(312)をさらに備える、請求項9または10に記載のシステム(300)。
【請求項12】
前記信号変換装置(310)は、前記信号変換装置(310)の信号処理部と前記信号変換装置(310)に接続可能な生理機能モニタ(320)との間の電気的接続を持たない通信リンクを実現するために用いられる光通信リンク(313)を備える、請求項9から11のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項13】
前記信号変換装置(310)に通信接続可能な生理機能モニタ(320)をさらに備える、請求項9から12のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項14】
前記生理機能モニタ(320)は、有線接続を介して前記信号変換装置(310)に接続可能である、請求項13に記載のシステム(300)。
【請求項15】
前記生理機能モニタ(320)は、無線接続を介して前記信号変換装置(310)に接続可能である、請求項13に記載のシステム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して医療機器の分野に関する。特に本発明は、独立請求項の前文に基づいて、人または動物の生体内の圧力や温度といった生理的変数の血管内測定用のセンサガイドワイヤ装置、および生体における生理的変数の血管内測定用のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療的な処置を行う多くの場合において、医療関係者にとっては、患者の体腔内に生じている種々の生理的状態をモニタすることが望まれる。これらの生理的状態とは、圧力、温度、流体の流速等であり、性質上概して物理的なものであって、医師や医療技術者に患者の健康状態に関する重要な情報を提供するものである。これらの種類のパラメータが測定されモニタされるやり方は、当然ながら、できるだけ安全、正確、かつ信頼できるものであることが求められる。
【0003】
したがって、患者の生理的状態を診断する際に、医師や医療技術者等の医療関係者を支援するための器具およびプロセスが開発されている。例えば、ガイドワイヤの遠位端にセンサが取り付けられているセンサガイドワイヤが開発されている。センサは、例えば、生体の血管内における血流の狭窄等の阻害因子の位置の特定と重症度の判定を容易にするために、脈管構造内の様々な点における血圧を測定するように構成された血管内の圧力センサであってよい。
【0004】
図1を参照して、一般的な血管内圧力センサ―生理機能モニタインターフェースシステム100を説明する。その構成には、センサガイドワイヤ110、信号変換装置120、および生理機能モニタ130を含んでいる。センサガイドワイヤ110は、センサガイドワイヤ110の遠位端に配置されたセンサ素子111を備えていてよい。センサ素子111は、人や動物の体等の生体内の生理的変数を感知するように構成されていてよい。センサガイドワイヤ110は、一般的に信号変換装置120との接続のためのコネクタ112を備えた、使い捨ての装置である。信号変換装置120は、ガイドワイヤに取り付けられたセンサ素子111を(血圧などの)生理機能モニタ130とインターフェースで接続するように構成されている。信号変換装置120は、センサ素子111が感知した生理的変数を示す信号を、ガイドワイヤに取り付けられたセンサ素子111から受信するように構成されていてよい。さらに信号変換装置120は、電位的に異なる信号要件を持つ複数の異なる生理機能モニタのいずれに対しても、規格化された信号が生理機能モニタ130に転送されるように、受信信号を処理するように構成されている。このように、信号変換装置120は、センサ素子によって感知された生理的変数を示す信号を、米国規格協会(ANSI)/AAMI BP22−1994(以下ではBP22規格と呼ぶ)の設定した規格のような確立された規格に従い、生理機能モニタ130によって受信可能な信号に変換するように構成されている。
【0005】
図1に示すように、先に述べた血管内圧力センサ―生理機能モニタインターフェースシステム100では、信号変換装置120はシステムに電力を供給するための電池(図示せず)を一般的に含んでいる。このような電池は、一旦放電してしまうと、通常交換しなければならない。そうしなければ、そうした放電電池が直接の原因になって、読み出しが中断されることになり得るからである。時々、放電した電池を新しい電池に交換する方法は、この方法を行わねばならない医療関係者にとって、どちらかといえば煩雑であり、かつ/または時間がかかることがある。
【0006】
特許文献1は、遠位端に生理的状態センサが設けられたセンサワイヤを備える計測システムに関する。このシステムは、特に、センサワイヤに接続されている送受信部が生理機能モニタから電気的に完全に絶縁されているシステムに関する。これは、センサから生理機能モニタに信号を転送するための光通信リンクを配置することにより達成される。これにより、特許文献1の装置は、外部除細動の間に使用することができ、このため外部装置(例えば、モニタ)は除細動ショックから保護されることとなり、患者は導電性回路の一部にならずにすむ。
【0007】
特許文献2は、ガイドワイヤに取り付けられた圧力センサ等の血管内センサを、生理機能モニタにインターフェースで接続するための信号調整装置に関する。同文献では、信号調整装置のプロセッサは、生理機能モニタから受信した励起信号によって電力供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/100208号
【特許文献2】米国特許第6,585,660号明細書
【特許文献3】米国特許第6,615,067号明細書
【特許文献4】米国特許第6,167,763号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、煩雑で時間がかかる電池交換の必要性をなくし、より複雑ではなく、それにより容易に製造できる、改良型のセンサガイドワイヤ装置を実現することである。
【0010】
前述した考察および目的に関して、本発明はなされたものである。本発明は、前述した欠点および不便な点のそれぞれまたは組み合わせの1つ以上を、軽減あるいは除去することを図るものである。特に、本発明は、改良型センサ―生理機能モニタシステムを実現することが望ましいことを認識し、信号変換装置の放電電池を新しい電池と交換する必要をなくすものである。
【0011】
また、上記の信号変換装置の放電電池を新しい電池と交換する必要をなくするのに貢献する新型センサガイドワイヤを実現することは、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの1つまたは複数の課題によりよく対処するため、独立請求項に規定されている特徴を有するセンサガイドワイヤ装置およびシステムが提供される。さらに、本発明の有利な実施形態が、従属請求項で規定される。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、生体内の生理的変数の血管内測定用のセンサガイドワイヤ装置が提供され、このセンサガイドワイヤ装置は、生体内の生理的変数を感知するように構成されたセンサ素子と、信号変換装置にセンサ素子によって感知される生理的変数を示す信号を提供するための信号変換装置に取り付け可能なコネクタユニットとを備え、コネクタユニットは、コネクタユニットが信号変換装置に取り付けられた時に信号変換装置に電力を供給するように構成された電源供給部を備える。
【0014】
電源供給部は、少なくとも1つの電池を備えるのが好ましい。
【0015】
コネクタユニットは、センサガイドワイヤ装置の近位部に位置し、センサ素子は、センサガイドワイヤ装置の遠位部に位置するのが好ましい。
【0016】
コネクタユニットは、信号変換装置の雌コネクタまたは雄コネクタにそれぞれ接続されるように構成された雄コネクタまたは雌コネクタのいずれかのコネクタを備える。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、生体内の生理的変数の血管内測定用のシステムが提供され、このシステムは、本発明の第1の態様によるセンサガイドワイヤ装置と、センサガイドワイヤ装置にセンサガイドワイヤ装置のコネクタユニットを介して取り付け可能な信号変換装置とを備える。
【0018】
信号変換装置は、信号変換装置がコネクタに取り付けられた時に電源供給部の出力レベルをモニタするように構成された電源供給モニタ装置を備えていてよい。
【0019】
システムは、代わりに、または追加で、電源供給モニタ装置を備えていてもよい。電源供給モニタ装置は、コネクタに取り付け可能であって、コネクタユニットに取り付けられた時に電源供給部の出力レベルをモニタするようにさらに構成されている。
【0020】
信号変換装置は、生理的変数を示す信号を確立された規格に準じた信号に変換するように配置されている。この確立された規格は、好ましくは、必須ではないが、米国規格協会(ANSI)/AAMI BP22−1994、すなわちBP22規格によって設定された規格であってよい。
【0021】
システムは、信号変換装置に通信接続可能な生理機能モニタをさらに備えていてもよい。
【0022】
生理機能モニタは、有線または無線接続を介して信号変換装置に接続可能であってよい。
【0023】
本発明は、例えば電池の形態をした電源供給部がセンサガイドワイヤ装置の一体部品であるコネクタユニットに設置するのが有利であるという発明者の洞察に基づいている。換言すれば、電池は、センサ―生理機能モニタインターフェースシステムの、使い捨て用のものとして意図された部分に設置するのが有利である。つまり、電池はシステムの使い捨ての部分、すなわちセンサガイドワイヤに設置される。これは、電池が信号変換装置内に設置されている特許文献1等で用いられている従来の血管内圧力センサ―生理機能モニタインターフェースシステムとは、対照的である。
【0024】
電源供給部がシステムの使い捨てのセンサガイドワイヤ部分に、例えばセンサガイドワイヤ装置のコネクタユニットに配置されることにより、一度、新しいセンサガイドワイヤが信号変換装置に取り付けられると、その電源供給部は新しいものとなる。このように、電池が放電した際の煩雑な電池交換は不要となる。センサガイドワイヤの電源供給部は、信号変換装置に取り付けまたは接続される時、ほぼ間違いなく常に新しいものになり、またこのことにより、放電電池が原因となって起こる読み出し中断のリスクが最小限に抑えられ、または少なくとも低減される。
【0025】
さらに本発明によれば、信号変換装置は、使い捨てのコネクタユニットから切り離して配置され、そのため使い捨てではない。このことは、システムの使い捨ての部分、すなわち、センサガイドワイヤ装置、コネクタユニット、さらにワイヤコネクタおよびケーブルなどが、製造する場合において、より複雑ではなく、より製造費が安くなるという点で有利である。
【0026】
一般的に、本発明の種々の態様は、同一または同様の利点を示すことがある。また、本発明の種々の実施形態が同一または同様の利点を示してもよいことは自明である。
【0027】
これらの利点および/または本発明の他の態様は、以下に説明する実例となる実施形態から明らかになり、かつこれらを参照しながら説明する。
【0028】
一般的に、本明細書に用いられている全ての用語は、本明細書で他に明確に規定されない限り、当該技術領域における通常の意味の通りに理解されるべきである。
【0029】
これより、本発明の実施形態について、以下に示す内容の添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、従来の圧力感知ガイドワイヤおよび生理機能モニタの間の接続方法を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の種々の実施形態に適用可能なセンサガイドワイヤに取り付けられた例示的なセンサ素子を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかるセンサ―生理機能モニタシステムを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態にかかるセンサ―生理機能モニタシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照して、以下に本発明をより詳しく説明し、その中で本発明の例示的な実施形態を示す。しかしながら、本発明は、多くの様々な形態で具体化されてよく、また本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり発明の範囲が当業者に十分に伝わるように、例として提示するものである。さらに、全体を通して同一の参照符号は同一の構成要素を示す。
【0032】
本発明の種々の実施形態は、例えば電池の形態をした電源供給部がセンサガイドワイヤ装置の一体型部品であるコネクタユニット内に有利に設置することができるという発明者の認識に基づいている。つまり、電池は、センサ―生理機能モニタインターフェースシステムの、使用前に個別に較正される部分に有利に設置することができる。
【0033】
上述したように、システムの(使い捨ての)センサガイドワイヤ部分に電源供給部を配置することによって、信号変換装置に電池が備え付けられた以前のセンサ―生理機能モニタインターフェースシステム(
図1)では必要であった、電池が放電した際の煩雑な電池交換をする必要がなくなる。
【0034】
センサガイドワイヤ装置の電源供給部は、信号変換装置に接続される時、ほぼ確実に常に新しいものとなるため、放電電池が原因となって起こる読み出し中断のリスクが最小限に抑えられ、または少なくとも低減される。以下でさらに述べるように、本発明の有利な実施形態において、電源供給部が充電されているか放電しているかを検知するために用いることができる電源供給モニタ装置が提供される。そのような電源供給警報/検知機構は、センサ―生理機能モニタインターフェースシステムを操作する前に、有利に用いることができる。
【0035】
圧力や温度等の生理的変数やパラメータを検知するために、センサをガイドワイヤに取り付けること、およびガイドワイヤを介して人体のような生体の血管内にセンサを配置することは、当業者にとっては周知のことである。センサは、パラメータに対して直接的または間接的に感度のよい素子を含むことができる。生理的パラメータを測定するための様々な種類のセンサを記載した数多くの特許を、本特許出願の出願人が所有している。例えば、特許文献3に示すように、温度感受性抵抗を持つ電導体の抵抗を観察することにより、温度を測定することができる。別の例示的センサを、特許文献4で見ることができ、特許文献4では血流がセンサに圧力を及ぼし、そのセンサが、及ぼされた圧力を示す信号を伝えている。
【0036】
センサに電力を供給するため、また体外に配置された外部装置に測定された生理的変数を示す信号を通信するために、信号を送信するための1つまたは複数のケーブルがセンサに接続されており、ガイドワイヤに沿って延ばされ、血管から出て、同じく体外に配置された信号変換装置を介して外部装置へと送られている。加えて、ガイドワイヤは典型的には、センサを支持するものとして機能し、ガイドワイヤの優れた操作性を可能にする中心金属線(コアワイヤ)を備えている。
【0037】
図2は、本発明の種々の実施形態に適用可能な構成による例示的なセンサガイドワイヤ200を示す。例示的なセンサ素子が、ガイドワイヤすなわちセンサガイドワイヤ200に取り付けられる。
図2では、センサガイドワイヤ200は、説明のために201〜205の5つの部分に分割されている。部分201は最遠位部、すなわち血管内に最も遠くまで挿入されることになる部分であり、部分205は最近位部、すなわち図示されていないコネクタユニット(
図3の参照符号220)に最も近くに位置する部分である。部分201は、円弧状の先端部206が設けられた、例えば、白金製で放射線不透過性のコイル207を含む。また、この白金製のコイルと先端部には、ステンレス製で中実の金属製のワイヤ208が取り付けられ、このワイヤ208は、部分201で細長い円錐状の先端部のように形成され、白金製のコイル207用の保護線状部材として機能する。部分201で金属製のワイヤ208を円弧状の先端部206に向かって連続的に先細りにすることにより、センサガイド構造の前部が連続的により柔らかになる。
【0038】
部分201と202の間の移行部で、コイル207の最下端がワイヤ208に接着剤で、またははんだで取り付けられ、これにより接合部が形成されている。この接合部209にて、細い外側のチューブ210が始まり、部分205まで下方に延びている。チューブ210は、センサガイドワイヤ200に低摩擦性を有する滑らかな外面を持たせるように処理されたものである。金属ワイヤ208は、部分202において大きく広げられていてよく、この広げた部分に、圧力計等のセンサ素子213が配置されるスロット211を設けることができる。センサ素子213は、典型的には動作用の電気エネルギーを必要とする。センサ素子213が取り付けられる金属ワイヤ208の広がりにより、血管の、急な湾曲部でセンサ素子213に加えられる応力を低減することができる。
【0039】
センサ素子213から、通常1本または複数の電気ケーブルを有する信号送信用のケーブル215が配置されている。信号送信用のケーブル215は、センサ素子213から、部分205の下で体外に位置する(図示されていない)コネクタユニット(
図3を参照)まで延びている。供給電圧は、送信用のケーブル215(1本または複数本)を介してセンサに供給してよい。また、測定された生理的変数を示す信号は、送信用のケーブル215に沿って転送される。金属製のワイヤ208は、センサガイドワイヤ200の前部の優れた柔軟性を得るために、部分203の開始点においてかなり細くしてよい。部分203の終点において、および部分204の全体において、金属製のワイヤ208は、血管内でセンサガイド構造200を前方に押しやすくするために、太くすることができる。部分205において、金属製のワイヤ208は、取り扱いしやすくするためにできるだけざらついた質感になっており、ここにケーブル215を接着剤等で取り付けることができるスロット206が設けられる。
【0040】
図3は、本発明の例示的な実施形態の適用を説明するセンサ―生理機能モニタシステム300の模式図を示す。センサ―生理機能モニタシステム300は、センサガイドワイヤ200、信号変換装置310、および生理機能モニタ320を備える。例えば、センサ―生理機能モニタシステム300は、患者の体内の圧力等の生理的状態を感知または測定するため、および生理機能モニタ320等の外部装置に測定データを提供するための、
図2に示すセンサガイドワイヤ200等のセンサガイドワイヤを備える。
【0041】
センサガイドワイヤ200は、通常、外部のモニタ320に直接接続することができない。したがって、信号変換装置310がインターフェースとして、センサガイドワイヤ200と生理機能モニタ320を接続する。典型的には、信号変換装置310は、センサガイドワイヤ200のセンサ素子213で感知された生理的変数を示す信号を、生理機能モニタ320で受信できるBP22規格のような確立された規格に準じた信号に変換するよう構成されている。
【0042】
図3に関して、センサガイドワイヤ200は、患者側に設けられる。センサガイドワイヤ200は、センサガイドワイヤの近位端が挿入されて取り付けられるワイヤコネクタ218と、ワイヤコネクタ218をコネクタユニット220に電気的に接続するケーブル219とを介して、信号変換装置310に取り付けられる。
【0043】
コネクタユニット220は、センサガイドワイヤ200の使用時に、センサ素子213により感知した生理的変数を示す信号を信号変換装置310に提供できるように、信号変換装置310に取り付けられる。
【0044】
信号変換装置310は、センサから生理機能モニタに信号を転送するための光通信リンク313を備えるのが好ましい。光通信リンク313は、図中で2本の縦線で示されている。センサガイドワイヤおよびコネクタユニットが信号変換装置に接続されている時、システムのこれらの部品は、生理機能モニタから完全に電気的に絶縁される。その結果、装置は外部除細動の間に用いてもよく、これにより、外部装置(例えば、モニタ)が除細動のショックから保護され、また患者を含む閉回路が生じない。光通信リンクは、特許文献1で詳しく説明されている種類のものであってよい。
【0045】
通常、センサガイドワイヤ200は、当業者に周知されている任意の従来の方法で、センサ素子213によって感知された生理的変数を示す信号を、信号変換装置310に提供することができる。したがって、本明細書ではより詳細には説明しない。またこの点に関して、自明であるが、信号変換装置310がコネクタユニット220を介して取り付けられるセンサガイドワイヤ200、およびセンサ素子213と信号変換装置310の間のケーブルの構成は、設計留意点および機能要件によって変わるため、具体的な場合毎にテストし評価する必要がある。
【0046】
コネクタユニット220は、信号変換装置310の雌コネクタ311との接続用の雄コネクタ221を備えていてよい。その代わりに、図に示されていない別の実施形態において、コネクタユニット220は、信号変換装置310の雄コネクタとの接続用の雌コネクタを備えていてもよい。雄コネクタおよび雌コネクタは、それぞれ、雄コネクタが信頼性の高い物理的および電気的接続を確実にするために受け口(すなわち、雌コネクタ)にぴったりと挿入することができるように構成されている。
【0047】
コネクタユニット220は、電池であることが好ましい電源供給部222を備える。電源供給部222は、コネクタユニット220が信号変換装置310に取り付けられた時に、信号変換装置310に電力を供給するよう構成されている。電池222は、コネクタユニット220の中に設置されている。換言すると、電池220はコネクタユニット220の一体部品である。センサガイドワイヤ装置が使い捨て可能、すなわち使い捨てを目的としたものであるため、自明であるが、電池222は、使用前には常に新しいもの、つまり完全にまたは少なくとも十分に充電されたものとなる。このため、システムのセンサガイドワイヤ装置内に電池222を設置することにより、一旦新しいセンサガイドワイヤ装置が雄コネクタ221/雌コネクタ311を介して信号変換装置310に取り付けられた時は、電池222は新しいものとなる。
【0048】
好ましい実施形態によると、センサガイドワイヤ装置が信号変換装置に取り付けられると、センサ素子は、信号変換装置を介して電池によって電圧を印加される。これは、コネクタユニットを通じて、好ましくはケーブルとワイヤコネクタ、およびセンサガイドワイヤに沿って延びているケーブルを介した電気的接続を介して達成される。
【0049】
引き続き
図3に関して、一実施形態によると、センサ―生理機能モニタシステム300は、電源供給部の出力レベルをモニタするための電源供給モニタ装置を備える。これには、電源供給部が充電されているか放電しているかの検知が可能になる利点がある。開示する実施形態では、信号変換装置310が、電源供給モニタ装置312を備えている。電源供給モニタ装置は、コネクタユニット220が信号変換装置310に取り付けられた時に、コネクタユニット220の電源供給部、つまり電池222の出力レベルをモニタするように構成されている。電源供給モニタ装置312は、コネクタ220へ取り付けられた後、直ちに、またはできるだけ早く、電池222の出力レベルを確認するよう機能することが好ましいが、これは必須のことではない。このようにして、患者の様々な生理的状態をモニタしようとする医療関係者は、後に放電電池が原因となって読み出しが中断するのを避けるために、システム300を操作する前に、電池自体の良否を確認することができる。電源供給モニタ装置312は、電源供給部の出力レベルが前もって設定された閾値を下回っている場合に出力レベル警報信号を生成するように構成され、また電源供給部の現在の状態を視覚的に表示するよう、すなわち出力レベル警報信号が生成されたかどうかを視覚的に示すよう構成されたインジケータ(図示せず)を備えることが好ましい。
【0050】
図4を参照し、電源供給モニタ装置の代替の実施形態を示す。ここでは、電源供給モニタ装置312は、信号変換装置310に含まれていない。その代わりに、電源供給モニタ装置312は外部装置であり、センサガイドワイヤ装置と信号変換装置310の両方から分離している。電源供給モニタ装置312は、コネクタユニット220の電池222の出力レベルをモニタまたは確認することのみを目的として、使用することができる。電源供給モニタ装置312を分離して設けることにより、センサガイドワイヤ装置をセンサ―生理機能モニタシステム300の信号変換装置310およびモニタ320と共に使用しようとする前に、またそれよりもかなり前でさえ、電池の確認をすることができる。したがって、センサガイドワイヤの製造業者(または納入業者)は、センサガイドワイヤが最終顧客(例えば、医療関係者)に出荷される前に、電池の良否を確認することができる。このことには、不具合があったり放電してしまったりした電池が、最終顧客に届く数を減少させることができるという利点がある。したがって、テスト済みのセンサガイドワイヤが市場に出回る時には、このセンサガイドワイヤ装置の電池は十分に充電されており、その結果として、センサ―生理機能モニタシステム300の信号変換装置310および生理機能モニタ320と共に使用される際に、放電電池が原因となって起こる読み出し中断のリスクが、全くもしくはほとんどなくなる。電源供給モニタ装置312は、本実施形態によると、好ましくは、電源供給部の出力レベルが前もって設定された閾値を下回る場合に出力レベル警報信号を生成するように構成され、また電源供給部の現在の状態を視覚的に表示するよう、すなわち出力レベル警報信号が生成されたかどうかを視覚的に示すように構成されたインジケータ(図示せず)を備える。
【0051】
引き続き
図3および4に関して、センサ―生理機能モニタシステム300は、医療関係者がセンサガイドワイヤ200のセンサ素子213によって感知された患者の種々の生理的状態をモニタすることのできる生理機能モニタ320をさらに備えていてよい。この場合も前と同様に、これらの生理的状態は、圧力、温度、流体の流速等の、性質上概して物理的なものであり、医師や医療技術者に患者の状態に関する重要な情報を提供するものである。この情報に基づき、必要または適切と見なされた場合、医療技術者は矯正する措置を取ることができる。生理機能モニタ320は、無線または有線のいずれかにて、当業者に周知の任意の従来の方法で、信号変換装置310に接続することができる。したがって、本明細書ではより詳細には説明しない。例示の目的だけのために、開示される実施形態において、信号変換装置310はコネクタケーブル330を介して生理機能モニタ320に接続されている。
【0052】
本発明について図面および前述の説明にて詳細に図示し、説明してきたが、そうした図解および説明は具体例または例示的なものであって、これに限定されないものと見なされるべきである。すなわち、本発明は開示された実施の形態に限定されてはならない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、公開内容、および添付された特許請求の範囲の検討結果から、請求項に示された発明を実施する際に、当業者が理解し、実施することができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に列挙されているということ自体は、これらの手段の組み合わせが有利となるように使用することができないことを示すものではない。むしろ本発明は、請求項に列挙された特徴の全ての可能な組み合わせに関すると理解されるべきである。請求項における如何なる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。