特許第5744929号(P5744929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5744929高圧インバータ制御装置及び高圧インバータシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744929
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】高圧インバータ制御装置及び高圧インバータシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20150618BHJP
【FI】
   H02M7/48 L
   H02M7/48 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-15218(P2013-15218)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-158238(P2013-158238A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2013年1月30日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0009047
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】キム キュン ス
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−050529(JP,A)
【文献】 特開2001−169576(JP,A)
【文献】 特開昭55−157987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動する高圧インバータシステムにおいて、
前記高圧インバータから出力される出力電圧を前記モータにスイッチングする第1スイッチ、
常用電源を前記モータにスイッチングする第2スイッチ、
前記第1スイッチと前記高圧インバータとの間に配置されるリアクタ、及び
前記高圧インバータの出力電圧を常用電源と同期化して前記高圧インバータに提供する制御部を含み、
前記制御部は、
前記高圧インバータの入力電圧を受信して、入力電圧情報を決定する第1PLL部、
前記第1PLL部から受信した入力電圧と前記高圧インバータの出力指令とを比較して、その差を出力する比較部、及び
前記差を利用して、前記高圧インバータの出力指令を同期化する同期制御部を含み、
前記リアクタのリアクタンスは、
前記高圧インバータの出力電圧と常用電源との間の電圧差による循環電流の大きさを制限する程度によって決定され、
前記リアクタによって発生する前記高圧インバータの出力電圧の降下分を考慮して決定されることを特徴とする、高圧インバータシステム。
【請求項2】
前記高圧インバータの入力端に配置されて、前記高圧インバータの入力電圧を検出して、前記制御部の前記第1PLL部に伝達する第1検出部をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の高圧インバータシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
同期化された前記高圧インバータの出力指令を利用して、前記高圧インバータに出力電圧を出力する出力部をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の高圧インバータシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記出力部が出力する出力電圧を受信して、出力電圧情報を決定する第2PLL部をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の高圧インバータシステム。
【請求項5】
前記同期制御部は、
前記第2PLL部から出力電圧情報を受信して、前記高圧インバータの出力指令を同期化することを特徴とする、請求項に記載の高圧インバータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧インバータに用いられる制御装置と、これを利用した高圧インバータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータを利用して複数のモータを起動するマルチソフトスタータ(multi soft starter)制御を行うためには、モータに入力される電源をインバータ出力電源から常用電源に切り替える動作が必要となる。
【0003】
マルチソフトスタータとは、一台のモータにインバータ出力を連結して、常用電源のような周波数の運転速度でモータを加速した後、モータの入力電源を常用電源に変えて、インバータ出力を他のモータに連結して加速して常用電源に切り替えることによって、複数のモータを次々と可動させる方法をいう。
【0004】
高圧インバータシステムにおいて、インバータ出力電源と常用電源との間の切り替えは、主に真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker、VCB)、または真空スイッチ(Vacuum Switch、VCS)を用いて行われ、切り替え動作中には種々の原因による電気的衝撃がモータとインバータ及び常用電源に加えられることになる。
【0005】
図1は、高圧システムにおけるマルチソフトスタータの動作を説明するための例示図である。
【0006】
図面に示したように、従来の高圧インバータシステムでは、モータM1を起動するために、ラインAを連結して高圧インバータ100で起動する。即ち、モータM1の周波数を常用電源の周波数と合わせた後に、ラインAを遮断しラインBを連結して常用電源とモータM1を連結する。以後、次々とモータMnまで同様の方式で駆動する。
【0007】
このようなシステムは、主にウォーターポンプ設備に用いられ、通常最後のモータMnは、高圧インバータ100で速度を制御する。
【0008】
図2は、図1の電源切り替え動作を説明するための例示図である。
【0009】
図面に示したように、ラインAを介してモータMが高圧インバータ100に連結されている状態で、インバータスイッチ(SW)110をオフし、ラインBのグリッドスイッチ(SW)120を連結して、常用電源をモータMに連結する。
【0010】
しかし、高圧モータを用いる場合、このようなマルチソフトスタータ動作時、常用電源切り替えによって電気的な衝撃が生じて、高圧モータにはこのようなマルチソフトスタータ方式を適用できない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、インバータ出力から常用電源にモータをスイッチングする場合、モータに加えられる電気的衝撃を最小化する高圧インバータ制御装置及び高圧インバータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施形態の高圧インバータ制御装置は、高圧インバータの入力電圧を受信して入力電圧情報を決定する第1位相同期ループ(PLL)部、前記高圧インバータの出力指令を比較して、その差を出力する比較部、及び前記差を利用して、前記高圧インバータの出力指令を同期化する同期制御部を含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記高圧インバータの入力端に配置されて、前記高圧インバータの入力電圧を検出して前記第1PLL部に伝達する第1検出部をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、同期化された前記高圧インバータの出力指令を利用して、前記高圧インバータで出力電圧を出力する出力部をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記出力部が出力する出力電圧を受信して出力電圧情報を決定する第2PLL部をさらに含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記同期制御部は、前記第2PLL部から出力電圧情報を受信して、前記高圧インバータの出力指令を同期化することができる。
【0017】
また、前記のような技術的課題を解決するために、本発明の高圧インバータシステムは、前記高圧インバータから出力される出力電圧を前記モータにスイッチングする第1スイッチ、常用電源を前記モータにスイッチングする第2スイッチ、前記第1スイッチと前記高圧インバータとの間に配置されるリアクタ、及び前記高圧インバータの出力電圧を常用電源と同期化して前記高圧インバータに提供する制御部を含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記制御部は、前記高圧インバータの入力電圧を受信して入力電圧情報を決定する第1PLL部、前記高圧インバータの出力指令を比較して、その差を出力する比較部、及び前記差を利用して、前記高圧インバータの出力指令を同期化する同期制御部を含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記高圧インバータの入力端に配置されて、前記高圧インバータの入力電圧を検出して前記制御部の前記第1PLL部に伝達する第1検出部をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記制御部は、同期化された前記高圧インバータの出力指令を利用して、前記高圧インバータに出力電圧を出力する出力部をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記制御部は、前記出力部が出力する出力電圧を受信して出力電圧情報を決定する第2PLL部をさらに含んでもよい。
本発明の一実施形態において、前記同期制御部は、前記第2PLL部から出力電圧情報を受信して、前記高圧インバータの出力指令を同期化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記リアクタのリアクタンスは、前記高圧インバータの出力電圧と常用電源との間の電圧差による循環電流の大きさを制限する程度によって決定してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記リアクタのリアクタンスは、前記リアクタによって発生する前記高圧インバータの出力電圧の降下分を考慮して決定してもよい。
【発明の効果】
【0024】
前記のような本発明は、常用電源とインバータ出力電圧を同期化して切り替えを行って、常用電源とインバータ出力電圧の電圧差によって発生する電気的衝撃を相当減らすことができ、常用電源とインバータ出力電圧との間にリアクタを設置して電流による電気的衝撃を減らすことができる。
【0025】
従って、本発明は、インバータがモータの速度を制御している状況下、インバータのメンテナンスが必要な場合、モータの運転を常用電源に渡してインバータを停止する場合にも適用されて、安定したモータ運転が可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高圧システムにおいてマルチソフトスタータ動作を説明するための例示図である。
図2図1の電源切り替え動作を説明するための例示図である。
図3】本発明に係る高圧インバータシステムの一実施形態構成図である。
図4】本発明に係る高圧インバータ制御装置の一実施形態構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、種々の実施形態を有することができ、特定実施形態を図面に例示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0028】
本発明は、インバータ出力と常用電源をスイッチングする際にモータに印加される電気的衝撃を減らすためのものであって、二つの電源の大きさと位相を同期化し、二つの電源が同時に所定時間モータに印加されるようにし、瞬間短続されないようにし、二つの電源の間にリアクタを設置して電流による電気的衝撃をなくそうとするものである。
【0029】
本発明は、インバータがモータの速度を制御している状況下、インバータのメンテナンスが必要な場合、モータを常用電源に連結してインバータを停止する場合にも適用できる。
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明に係る好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0031】
図3は、本発明に係る高圧インバータシステムの一実施形態構成図であり、図1に示すようなシステムの一部を拡大したものを示す。本発明のシステムは、複数のモータのマルチソフトスタータのための高圧インバータシステムであって、便宜のため複数のモータを省略して図示する。
【0032】
図面に示したように、本発明に係る高圧インバータシステムは、高圧インバータ10、常用電源検出部20、インバータ出力電源検出部30、リアクタ(reactor)40、常用電源スイッチ50及びインバータスイッチ60を含む。
【0033】
常用電源検出部20は、入力される常用電源を測定する。インバータ出力電源検出部30は、モータMの入力側電源、即ち高圧インバータ10の出力電源を測定する。
【0034】
また、常用電源スイッチ50は、常用電源のモータMへのバイパスをスイッチングし、インバータスイッチ60は、高圧インバータ10の出力をモータMにスイッチングする。
【0035】
リアクタ40は、高圧インバータ10とインバータスイッチ60との間に配置されて、常用電源と高圧インバータ10の出力電源が同時に連結される場合、二つの電源が衝突するのを防止する。リアクタ40の大きさは、二つの電源の間の電圧差による循環電流の大きさを制限する程度と、リアクタ40により発生する高圧インバータ10の出力電圧の降下分を考慮して設計する。
【0036】
図4は、本発明に係る高圧インバータ制御装置の一実施形態構成図であり、図3の高圧インバータ10内部に構成される。本発明の制御装置以外に、高圧インバータ10を本機能を行う多数の構成要素を含むが、本発明と関係のない構成要素の説明は便宜のため省略することにする。
【0037】
図面に示したように、本発明の制御装置は、入力位相同期ループ(Phase Locked Loop、以下、「PLL」という)部11、出力PLL部12、比較部13、同期制御部14及びインバータ出力部15を含む。
【0038】
入力PLL部11は常用電源検出部20から高圧インバータ10への入力電圧、即ち常用電源を受信して、そこから高圧インバータ10の入力電源の大きさと位相等の情報を決定する。
【0039】
比較部13は、入力PLL部11から受信した入力電圧と高圧インバータ10の出力指令を比較して、エラーを出力する。
【0040】
同期制御部14は、インバータ出力電圧を急激に変化することなく安定的に制御できるように、同期化されたインバータ出力指令を出力する。
【0041】
インバータ出力部15は、同期制御部14から受信する同期化されたインバータ出力指令を利用して、出力電圧を出力する。カスケード(cascade)方式の高圧インバータ10の場合、インバータ出力電圧は、主にマスター制御器(図示しない)が電圧指令を決定し、各セルのパルス幅変調(PWM)制御部と電力用半導体を介して出力電圧が決定されることは、本発明が属する技術分野において明らかであるため、その詳細な説明は省略することにする。
【0042】
また、出力PLL部12は、インバータ出力電源検出部30が検出したインバータ出力電源から出力電圧を出力して、その大きさ及び位相等の出力電圧の情報を決定して、同期制御部14にフィードバックする。
【0043】
以下、図3及び図4を参照して、本発明の制御装置の動作を説明する。
【0044】
本発明は、高圧インバータ10の常用電源切り替えのためのものであって、切り替え時モータMに加えられる電気的な衝撃を最小化するためのものである。電気的な衝撃は、モータMに入力する電圧の大きさ及び位相の変化によって発生し、常用電源スイッチ50とインバータスイッチ60が全部オープン(open)状態の瞬間短続区間によって発生する。
【0045】
モータMに入力される電圧が、高圧インバータ10の出力電圧から常用電源に変わる間に発生する電気的衝撃を減少するためには、高圧インバータ出力と常用電源の大きさと位相とを同一にしなければならない。
【0046】
これのために、本発明の図4のような制御装置を構成して、入力電圧情報を利用してインバータ出力電圧を常用電源と同期化する。
【0047】
本発明の制御装置は、入力PLL部11が、三相入力電圧の各情報と電圧の大きさを決定し、比較部13が高圧インバータ10から入力されるインバータ出力指令と比較して、同期制御部14が同期化されたインバータ出力指令を決める。
【0048】
この時、リアクタ40を考慮して、インバータ出力電源検出部30は、リアクタ40の後段で出力電圧を測定して、リアクタ40により発生する電圧の位相遅延を同期制御部14が補償する。
【0049】
このように、本発明の制御装置によると、常用電源とインバータ出力電圧を同期化して切り替えを行うと、電圧差によって発生する電気的衝撃を相当減らすことができる。
【0050】
一方、瞬間短続区間によって発生する電気的衝撃を減らすためには、短続区間が無いようにすべきで、これは常用電源とインバータ出力が、モータMに同時に入力されなければならないことを意味する。
【0051】
理論的に、二つの電源が同時に供給される場合、数Vの電圧差によって無限大の循環電流が各電源に入力されることになるが、これを防止するために、本発明のリアクタ40を二つの電源の間に配置する。
【0052】
また、リアクタ40は、インバータ出力電圧の特徴であるPWM波形の形態を常用電圧のように正弦波形態と類似するようにするフィルターの機能を行うが、リアクタ40のリアクタンスが大きすぎると、高圧インバータ10の運転中インバータ出力の電圧降下の要因になるため、適切な設計によってリアクタンスを定めなければならない。
【0053】
本発明は、同期制御部14を介して高圧インバータ10の出力電圧を常用電源と同期化して、切り替え動作中瞬間短続区間をなくして、切り替え中発生する電気的な衝撃を相当減らすことができる。
【0054】
従って、高圧インバータ10で複数の高圧モータを瞬時起動するマルチソフトスタータを遂行することができる。
【0055】
以上、代表的な実施形態を通して本発明に対し詳細に説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は上で述べた実施形態に対し本発明の範疇から逸脱しない限度内で多様な変形が可能であることを理解するであろう。従って、本発明の権利範囲は、上述した実施形態に限定されて定まってはならず、後述する特許請求の範囲のみならず本特許請求の範囲と均等物等によって定まらなければならない。
【符号の説明】
【0056】
10、100 高圧インバータ
11 入力PLL部
12 出力PLL部
13 比較部
14 同期制御部
15 インバータ出力部
20 常用電源検出部
30 インバータ出力電源検出部
40 リアクタ
50 常用電源スイッチ
60、110 インバータスイッチ
120 グリッドスイッチ
図1
図2
図3
図4