特許第5744968号(P5744968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5744968整形外科用インプラント及び骨ねじアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5744968
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】整形外科用インプラント及び骨ねじアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   A61B17/58 315
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-122604(P2013-122604)
(22)【出願日】2013年6月11日
(62)【分割の表示】特願2010-237596(P2010-237596)の分割
【原出願日】2004年9月8日
(65)【公開番号】特開2013-208485(P2013-208485A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2013年6月11日
(31)【優先権主張番号】10/658,351
(32)【優先日】2003年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397071355
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・フェランティ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・マインズ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・サンダース
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エイ・ラッセル
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−129808(JP,A)
【文献】 特開平08−322848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.骨の髄管内に挿入するように為された細長い遠位区間と、
b.前記遠位区間と近位区間との間に形状付けされた結合部を形成する移行区間と、
c.前記近位区間が、
1.骨に係合するように為された構造を受けるように為された横断開口と、
2.外側側面と、
3.内側側面と、
4.デバイスの長さ方向に対してほぼ直角に向いた少なくとも一つの断面と、
を備え、前記断面は形状が非円形であるとともに内側−外側軸を含み、前記断面が前記内側−外側軸に関して対称であり、前記内側−外側軸に沿った断面の長さ寸法が、前記内側−外側軸と垂直な軸に沿った断面のいかなる長さ寸法よりも大きいことを特徴とする、骨折部を治療するためのデバイス
【請求項2】
前記デバイスの長手軸とほぼ平行に延びる長手開口を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス
【請求項3】
前記デバイスが、骨折部が修復される骨内部に完全に嵌るように為されたことを特徴とする請求項1に記載のデバイス
【請求項4】
前記外側側面の表面の少なくとも一部分が実質的に平坦であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス
【請求項5】
前記デバイスが、少なくとも部分的に第1の骨部分に埋め込まれるように為されまた、
d.係合部材及び圧迫部材を備える締結アセンブリであって、前記締結アセンブリが、前記横断開口内で摺動するように為される、締結アセンブリと、
1.前記係合部材が、第2の骨部分に係合するように為され、また、前記係合部材及び前記圧迫部材は、前記圧迫部材が前記デバイスの一部分及び前記係合部材の一部分と相互作用して前記第1の骨部分と前記第2の骨部分との間の動きを制御することが可能になるように構成されることと、
2.設置されるときに前記圧迫部材が前記第2の骨部分に接触することと、
を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス
【請求項6】
前記第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが、それらの部分同士の相対的な回転を妨げることを特徴とする請求項5に記載のデバイス
【請求項7】
前記第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが、それらの骨部分が互いに圧迫力を加え合うことを更に含むことを特徴とする請求項5に記載のデバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年9月8日出願の「Orthopaedic Implant and Screw Assembly」という名称の米国特許出願第10/658,531号に関連し、その特典を主張する。この出願の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、一般に、骨折部間の骨の部分を結合するためのシステムに関し、より詳細には、大腿骨、上腕骨、及び脛骨など長骨の骨折部、ならびに、これら及びその他の骨の関節周囲の様々な骨折部を治療するために使用される、髄内釘(intramedullary nail)及びスクリューアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
大腿骨、上腕骨、脛骨、及びその他の長骨の骨折部を治療するために使用される様々な装置がある。たとえば、大腿骨頚部(femoral neck)、大腿骨骨頭(femoral head)、及び大腿骨転子間領域(intertrochanteric region)の骨折が、バレル部材と、ラグスクリューと、コンプレッションスクリューとを有する圧迫プレートを一般に備える様々なコンプレッションスクリューアセンブリを用いてうまく治療されてきた。例として、スミスアンドネフュー社(Smith & Nephew, Inc.)により販売されているAMBI(登録商標)、及びCLASSIC(商標)コンプレッションヒップスクリューシステムが挙げられる。このようなシステムでは、圧迫プレートが大腿骨の外部に固定され、バレル部材が、予め穿孔された穴に大腿骨骨頭の方に方向付けて挿入される。ラグスクリューは、ねじ切り端部または骨を係合するための別の機構、及び平坦な部分を有する。ラグスクリューは、破損部を横切り大腿骨骨頭へと延びるように、バレル部材を通って挿入される。ねじ切り部は、大腿骨骨頭に係合する。 コンプレッションスクリューは、ラグスクリューをプレートに結合する。コンプレッションスクリューによる張力を調整することにより、骨折部の圧迫力(整復)を変えることができる。ラグスクリューの平坦な部分は、バレル部材を通り自由に摺動して、コンプレッションスクリューの調整を可能にする。従来技術のいくつかのアセンブリは、ラグスクリューが圧迫プレート及びバレル部材に対して回転しないように、また大腿骨骨頭がラグスクリュー上で回転しないようにするために、複数のスクリューを使用する。
【0004】
ラグスクリューまたはその他のスクリューアセンブリと組み合わせた髄内釘も同様に、大腿骨、上腕骨、脛骨、及びその他の長骨の骨折部を治療するためにうまく使用されてきた。このような装置の重要な応用例の1つは、大腿骨骨折の治療であった。このような釘システムの1つは、スミスアンドネフュー社により販売され、少なくとも部分的に特許文献1及び様々な関連国際特許に包含されている、IMHS(登録商標)システムである。この分野におけるその他の影響力の大きい特許として、すべてスミスアンドネフュー社に譲渡された、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5が挙げられる。これらの特許をすべて、参照により本明細書に組み込む。典型的な従来技術による髄内釘は、遠位の骨スクリューまたはピンをねじ込み、あるいはそうでなければ髄内釘の遠位端で大腿骨内に挿入することを可能にするための、その遠位端を貫通する1つまたは複数の横断開口を有することができる。これは「係止」と呼ばれ、髄内釘の遠位部を大腿骨に固定する。また、典型的な髄内釘は、ラグスクリューアセンブリをねじ込み、またはそうでなければ髄内釘の近位端を通って大腿骨へと挿入することを可能にするための、その近位端を貫通する1つまたは複数の開口を有することができる。ラグスクリューは大腿骨内の破損部を横断して位置決めされ、ラグスクリューの端部は大腿骨骨頭に係合する。髄内釘はまた、大腿骨またはその他の長骨の骨幹部骨折を治療するために使用することもできる。
【0005】
コンプレッションヒップスクリューシステムと同様、髄内釘システムは、コンプレッションスクリュー及び/若しくはラグスクリューが釘を通って摺動することを可能にし、従って2つまたはそれ以上の骨片間の接触が可能になるように設計されることがある。摺動式の圧迫により生じる接触は、いくつかの状況において治癒をより速く促進する。いくつかのシステムでは、とりわけ、大腿骨骨頭が大腿骨のその他の部分に対して回転することを防ぎ、単一のスクリューが大腿骨骨頭の向こう側に貫通することを防ぎ、単一のスクリューが大腿骨頚部及び大腿骨骨頭を引き裂くことを防ぐために、2つの別々のスクリュー(または1つのスクリューと別のピン)が使用される。しかし、更なるスクリューまたはピンが使用される場合、別々のスクリューまたはピンに不均等な力が加えられることにより、別々のスクリューまたはピンが、それを通って摺動するはずの穴の側部に押し付けられる可能性がある。これは、釘を貫通するスクリューまたはピンの摺動を低減させる拘束力となる可能性がある。逆に、大腿骨骨頭を骨折部位に向かってまたは骨折部位内へと過度に圧迫することにより、問題が生じる可能性がある。極端な場合、過度の摺動圧迫力により、大腿骨骨頭が大腿骨転子部領域内にまで圧迫される恐れがある。
【0006】
更に、過度に剛性の釘は、骨折部から離れた領域で人工的な周辺骨折部(periprosthetic fractures)を発生させることがある。従って、髄内釘が、それが埋め込まれる骨に比べて適度に可撓性であることが重要である。
【0007】
典型的な骨の、より固く一般に外側の部分は、骨皮質と呼ばれる。骨皮質は一般に、インプラントを支持するには構造的に丈夫で荷重に耐える物質である。骨皮質の典型的な解剖学的形状を示す長骨の断面には、髄管を取り囲む非円形の骨皮質が一般に見られる。従って髄管は一般に、非円形断面を特徴とする。しかし、従来技術による髄内釘は、断面が通常円形または方形であり、従って、骨皮質または髄管と解剖学的に一致しない。この問題は一部では、骨皮質に釘を嵌合せるために骨の髄管を円形のリーマで孔ぐりすることによって対処されてきた。しかしこの手法では、健康な骨皮質のかなりの部分が除去される可能性がある。
【0008】
近位大腿骨内のインプラントと骨皮質との間に、効果的で荷重に耐える物理的な関係を提供することに関する問題は、股関節置換装置(hip replacement devices)の分野で対処されてきた。近位大腿骨の骨皮質の解剖学的形状により合うようにし、こうしてステムと骨との間で荷重をより均等かつ効果的に分配するための、その長さに沿った全体的に非円形の断面を特徴とする、様々な股関節ステム(hip stem)が開発されてきた。しかし、これらの股関節ステムはいずれも釘に組み込まれてこず、治療される骨のほぼすべての部分を修復するのに有用な1つまたは複数のスクリューを受け入れるように構成されてこなかった。その代わりに、股関節ステムは一般に、長骨の部分を置換するための装置とみなされ、その目的のために設計され使用されてきた。たとえば股関節ステムの典型的な応用例には、大腿骨骨頭及び頚部を完全に除去し、股関節ステムを埋め込み、人工大腿骨骨頭を支持するために股関節ステムを使用することが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,032,125号明細書
【特許文献2】米国特許第4,827,917号明細書
【特許文献3】米国特許第5,167,663号明細書
【特許文献4】米国特許第5,312,406号明細書
【特許文献5】米国特許第5,562,666号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非限定的に要約すると、上記は当分野の最先端技術の欠点をいくつか表している。とりわけ、骨折部の両端間に圧迫力を加えるためのより優れた摺動スクリューまたはその他の機構を備える、整形外科用インプラントシステムが必要とされている。いくつかの実施形態はまた、切断、回転による不安定性、過度な摺動の発生を低減させながら適切な骨へのひっかかりが得られる、摺動スクリューまたはその他の機構を提供する。骨皮質との接触の改善を達成するための、解剖学的に適切な形状のインプラントもまた、有利となり得る。インプラントが髄内釘の場合は、釘によって、穴ぐり(reaming)及び健康な骨の除去が低減され得る。改良された釘はまた、釘に典型的な曲げ荷重がかかるときより大きい引張荷重下に置かれる釘側部上の材料の面積がより大きくなった断面を有することができる。更に、改良されたインプラントシステムは、様々な設計の髄内釘と組み合わされ、またはプレートと組み合わされた摺動スクリューを備えることができる。これらのうちいずれかを互いに組み合わせたもの、あるいは、互いに及び/若しくは他の装置と組み合わせたもの、あるいはそれらを組み合わせたものもまた、本発明のいくつかの態様によると、最先端技術に勝る改善の可能性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの態様による方法、装置、及びシステムにより、第1の骨片に埋め込まれまたはそれを固定するように構成される構造及び締結アセンブリのうち一方または両方を使用して、骨折部を治療することが可能になる。この構成は、少なくとも部分的に骨内部に埋め込むためのインプラントの形とすることができる。このようなインプラントは、横断開口を有する近位区間、及び実質的にその長さに沿った開口を備えることができる。好ましくは、インプラントは、張力に対する更なる強度及び耐性を与える形状を特徴とする、少なくとも1つの断面をその近位部分に有する。そのような形状はたとえば、(1)断面の外側部分に更なる質量を加える、及び(2)フランジがIビーム及び溝に構造的な利点を与えるやり方と同様のフランジ効果を利用するために、断面に質量を戦略的に加えたり減らしたりする。 少なくとも1つの軸に対して非対称とすることができるがそうでなくてもよいこのような断面を特徴付ける一方法は、それらが一般的に、断面の外側接線から内側接線までの線の中点である点から外側方向に延びる慣性モーメントを特徴とすることである。いくつかの構造では、その線は、横断開口の軸と同一平面上にあり、その断面と同一平面上にあり、従って、これらの平面の交線によって規定される。その線の端点は、その線と、断面の内側側部及び外側側部の接線との交点として、それぞれ規定することができる。このようなインプラントはまた一般に、遠位区間、及び近位区間と遠位区間を結合する移行区間を備える。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態による方法、装置、及びシステムによる締結アセンブリは、好ましくは、係合部材及び圧迫装置を備える。締結アセンブリは、インプラントの横断開口内に摺動関係で受けられるように為され、それによって、骨折部に圧迫力を加えるようにまたはその他何らかの所望の目的のために、横断開口に対して摺動するように為される。係合部材は、第2の骨片内にひっかかりを得る(gain purchase)ように為される。係合部材及び圧迫装置は、圧迫装置の調整により係合部材のインプラントに対する摺動を制御し、それによって第1及び第2の骨片間の動きを制御することが可能になるよう、圧迫装置をインプラントの一部及び係合部材の一部と相互作用させるように構成される。いくつかの実施形態では、圧迫装置は、埋め込まれるときに、少なくとも部分的に第2の骨片に直接接触する。
【0013】
従って、本発明の実施形態は、第1の骨部分に結合されるように為され横断開口を有する骨インプラントと、横断開口内で摺動するように為された締結アセンブリとを備える骨折部分を治療するための装置を提供する。この装置は、締結アセンブリが係合部材及び圧迫部材を備え、係合部材が第2の骨部分に係合するように為され、係合部材と圧迫部材が、圧迫部材をインプラントの一部分及び係合部材の一部分に接触及び相互作用させて第1の骨部分と第2の骨部分との間の移動を制御することを可能にするように構成されることを特徴とし、更に、圧迫部材が設置されるとき第2の骨部分と接触することを特徴とする。
【0014】
より好ましくは、本発明の実施形態は、第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが、それらの部分が互いに相対的に回転するのを妨げることを含むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0015】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが更に、骨部分が互いに圧迫力を加え合うことを含むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0016】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が、調整されると係合部材に張力を加え、それによって第1の骨部分と第2の骨部分との間に圧迫力を加えるように為されることを更に特徴とする装置を提供する。
【0017】
また好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が、少なくとも部分的に係合部材の一部分に入り込む(nested)ことを更に特徴とする装置を提供する。
【0018】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材がねじ切り部を備え、係合部材が、固定構造の横断開口内での係合部材の摺動を制御するために、圧迫部材のねじ切り部と協働するように為されたねじ切り部を備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0019】
更に好ましくは、本発明の実施形態は、前記インプラント内で受けられ、係合部材が横断開口内で摺動するのを妨げるように為された固定スクリューを更に備える装置を提供する。
【0020】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、横断開口が非対称断面を有し、係合部材部分の少なくとも一部分を受けるように為された第1の部分と、圧迫部材部分の少なくとも一部分を受けるように為された第2の部分とを備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0021】
また好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントが少なくとも1つの軸に関する断面が非対称である近位区間を備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0022】
従って、本発明の実施形態は、第1の骨部分と結合されるように為され横断開口を有する骨インプラントと、横断開口内で受けられるように為された締結アセンブリとを備える骨折部を治療するための装置を提供する。この装置は、締結アセンブリが、インプラントの横断開口内で摺動し第2の骨部分に係合するように為された係合部材を備え、係合部材が、圧迫部材と協働するように為された協働構造を備え、圧迫部材が、インプラントの横断開口内で受けられるように為され、かつ、係合部材の横断開口での回転を妨げ、係合部材の横断開口内での摺動を制御するように、係合部材と接触及び協働するように為されることを特徴とし、更に、圧迫部材が、設置されるときに、係合部材に対して第2の骨部分が回転するのを係合部材と共に妨げるために第2の骨部分に接触し、かつ、インプラントに対して係合部材が回転するのを妨げ従って第1の骨部分に対して第2の骨部分が回転するのを妨げるように係合部材と協働することを特徴とする。
【0023】
より好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が、調整されると係合部材に張力を加え、それによって第1の骨部分と第2の骨部分との間に圧迫力を加えるように為されることを更に特徴とする装置を提供する。
【0024】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が少なくとも部分的に係合部材の一部分に入り込むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0025】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材がねじ切り部を備え、係合部材が、固定構造の横断開口内での係合部材の摺動を制御するために、圧迫部材のねじ切り部と協働するように為されたねじ切り部を備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0026】
より好ましくは、本発明の実施形態は、前記インプラント内で受けられ、係合部材が横断開口内で摺動するのを妨げるように為された固定スクリューを更に備える装置を提供する。
【0027】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、横断開口が非対称断面を有し、係合部材部分の少なくとも一部分を受けるように為された第1の部分と、圧迫部材部分の少なくとも一部分を受けるように為された第2の部分とを備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0028】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントが、少なくとも1つの軸に関する断面が非対称である近位区間を備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0029】
従って、本発明の実施形態は、骨の髄管内に挿入するように為された細長い遠位区間と、遠位区間と近位区間との間に形状付けされた結合部を形成する移行区間とを備え、近位区間が骨に係合するように為された構造を受けるように為された横断開口を有する、骨折部を治療するための装置を提供する。この装置は、近位区間が、外側側面、内側側面、及び、装置の長さ方向に対してほぼ直角に向いた少なくとも1つの断面を有することを特徴とし、この断面は、外側側面の接線との交点から内側側面の接線との交点へと断面内で延びる線の中点から、外側側面に向かって延びる慣性モーメントを特徴とする。
【0030】
より好ましくは、本発明の実施形態は、装置の長手軸とほぼ平行に延びる横断開口を更に備える装置を提供する。
【0031】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、少なくとも1つの軸に関して断面が非対称であることを更に特徴とする装置を提供する。
【0032】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、骨折部が修復される骨の内部に、装置が完全に嵌るように為されたことを更に特徴とする装置を提供する。
【0033】
また好ましくは、本発明の実施形態は、外側側面の表面の少なくとも一部が実質的に平坦であることを更に特徴とする装置を提供する。
【0034】
より好ましくは、本発明の実施形態は、少なくとも一部分が第1の骨部分に埋め込まれるように為されることを更に特徴とし、横断開口内で摺動するように為された締結アセンブリを更に備え、締結アセンブリが係合部材及び圧迫部材を備え、係合部材は第2の骨部分に係合するように為され、係合部材及び圧迫部材は、圧迫部材がインプラントの一部及び係合部材の一部と相互作用して第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが可能になるように構成されることを更に特徴とし、圧迫部材が埋め込まれたときに第2の骨部分と接触することを更に特徴とする装置を提供する。
【0035】
従って、本発明の実施形態は、骨の髄管に挿入するように為された細長い遠位区間と、遠位区間と近位区間との間に形状付けされた結合部を形成する移行区間とを備え、近位区間が骨に係合するように為された構造を受けるように為された横断開口を有する、大腿骨骨折を治療するための釘を提供する。この釘は、近位区間が、外側側面、内側側面、及び、装置の長さ方向に対してほぼ直角に向いた少なくとも1つの断面を有し、断面形状が非円形であり、内側−外側軸を備え、内側−外側軸に関して断面が対称であり、内側−外側軸に沿った断面の長さ寸法が内側−外側軸と垂直な軸に沿った断面のいかなる長さ寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0036】
従って、本発明の実施形態は、細長い遠位区間と、遠位区間と近位区間との間に形状付けされた結合部を形成する移行区間とを備え、近位区間が第1の骨部分に結合されるように為され、長手軸を有する横断開口を有するインプラント、骨折部を治療するための装置を提供する。この装置は、近位区間が、外側側面、内側側面、及びインプラントの長さに対してほぼ直角に向けられた少なくとも1つの断面を有し、この断面が、横断開口軸と同一平面上にあり外側側面の接線との交点から内側側面の接線との交点へと延びる線の中点から外側側面へと延びる慣性モーメントにより特徴付けられることを特徴とする。この装置は、係合部材及び圧迫部材を有する締結アセンブリを更に備え、締結アセンブリが横断開口内で摺動するように為され、係合部材が第2の骨部分に係合するように為され、圧迫部材と係合部材は、圧迫部材がインプラントの一部分及び係合部材の一部分と相互作用して第1の骨部分と第2の骨部分との間での移動を制御することが可能になるように構成され、圧迫部材が設置されるときに第2の骨部分に接触することを更に特徴とする。
【0037】
より好ましくは、本発明の実施形態は、第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが、それらの部分同士の相対的な回転を妨げることを含むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0038】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが更に、それらの骨部分が互いに圧迫力を加え合うことを更に含むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0039】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が、調整されると係合部材に張力を加え、それにより第1の骨部分と第2の骨部分との間に圧迫力が加えるように為されたことを更に特徴とする装置を提供する。
【0040】
また好ましくは、本発明の実施形態は、圧迫部材が少なくとも部分的に係合部材の一部分に入り込むことを更に特徴とする装置を提供する。
【0041】
より好ましくは、本発明の実施形態は圧迫部材がねじ切り部を備え、係合部材が、インプラント横断開口内での係合部材の摺動を制御するために、圧迫部材のねじ切り部と協働するように為されたねじ切り部を備えることを更に特徴とする装置を提供する。
【0042】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、前記インプラント内で受けられ、係合部材が横断開口内で摺動するのを妨げるように為された固定スクリューを更に備える装置を提供する。
【0043】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントの長手軸と平行に延びる横断開口を更に備える装置を提供する。
【0044】
また好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントの断面が、その断面の少なくとも1つの軸に関して非対称であることを更に特徴とする装置を提供する。
【0045】
より好ましくは、本発明の実施形態は、骨折部が修復される骨内部に、装置が完全に嵌るように為されることを更に特徴とする装置を提供する。
【0046】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、外側側面の表面の少なくとも一部分が実質的に平坦であることを更に特徴とする装置を提供する。
【0047】
従って、本発明の実施形態は、断面の少なくとも1つの軸に関して非対称な断面を有する近位区間を備え、装置を導入するために骨を下準備するように為された道具を提供する。この道具は、形状が対応し、装置の断面形状に少なくとも部分的に対応する形状に骨を形状付けするように為されたほぞ穴チゼル(mortise chisel)と、ほぞ穴チゼル内で回転し、ほぞ穴チゼルにより形状付けされた骨部分の遠位に位置する骨の髄管の部分を下準備するように為されたビットとを備えることを特徴とする。
【0048】
従って、本発明の実施形態は、骨を修復するためのシステムを提供する。このシステムは、外側側面と、内側側面と、インプラントの長さに対してほぼ直角に向けられた断面とを含み、この断面が、外側側面の接線との交点から内側側面の接線との交点へと断面内で延びる線の中点から外側側面に向かって延びる慣性モーメントを特徴とするインプラント、ならびに、形状が対応しインプラントの断面形状に少なくとも部分的に対応する形状に骨を形状付けるように為されたほぞ穴チゼルと、ほぞ穴チゼル内で回転し、ほぞ穴チゼルによって形状付けされた骨部分の遠位に位置する骨の髄管部分を下準備するように為されたビットとを有する、インプラントを導入するために骨を下準備するように為された道具を備えることを特徴とする。
【0049】
従って、本発明の実施形態は、骨を修復するためのプロセスを提供する。このプロセスは、骨折部を治療するための装置を提供することであって、この装置が、第1の骨部分に接続されるように為され横断開口を備えるインプラントと、横断開口内で摺動するように為された締結アセンブリとを備え、締結アセンブリが、係合部材及び圧迫部材を備え、係合部材と圧迫部材は、圧迫部材が装置の一部分及び係合部材の一部分と接触及び相互作用して第1の骨部分と第2の骨部分との間の動きを制御することが可能になるように構成されることを特徴とする、装置を提供することと、装置を第1の骨部分に結合することと、第1の骨部分に、位置及び向きが係合部材及び圧迫部材に対応する少なくとも1つの開口を形成することと、第2の骨部分を係合部材に係合することと、圧迫部材を第2の骨部分に接触するように挿入することと、圧迫部材を係合部材の一部分と相互作用させ、それによって第1の骨部分に対する第2の骨部分に圧迫力を加えることとを含む。
【0050】
より好ましくは、本発明の実施形態は、装置を第1の骨部分に結合することが、装置を第1の骨部分に挿入することを含むことを更に特徴とするプロセスを提供する。
【0051】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、第2の骨部分が大腿骨骨頭であることを更に特徴とするプロセスを提供する。
【0052】
更により好ましくは、本発明の実施形態は、第1の骨部分に、位置及び向きが係合部材及び圧迫部材に対応する少なくとも1つの開口を形成することが、互いに対して同軸でない開口を骨部分に形成することを含むことを更に特徴とするプロセスを提供する。
【0053】
より好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントが、断面の少なくとも1つの軸に関して非対称な断面を有する近位部分を備え、インプラントを第1の骨部分に結合することが、インプラントの近位部分の断面形状に少なくとも部分的に対応する形状に骨を形状付けるように為されたほぞ穴チゼルを備える道具を使用して、骨の内側部分を下準備することと、インプラントを道具によって形状付けられたとおりに骨に挿入することとを含むことを更に特徴とするプロセスを提供する。
【0054】
従って、本発明の実施形態は、骨を固定するためのプロセスを提供する。このプロセスは、遠位部分、及び断面の少なくとも1つの軸に関して非対称な断面を備える近位部分を備えるインプラントを提供することと、少なくとも部分的にインプラントの近位部分の断面形状に対応する形状に骨を形状付けるように為されたほぞ穴チゼル、及び骨の少なくとも一部分をインプラントの遠位部分を受けるように下準備するためのほぞ穴チゼルに対して回転するように為されたビットを備える道具を使用して内側部分を下準備することとを含み、下準備することが、ほぞ穴チゼルで骨の部分を形状付けすることを含み、更に、ビットをほぞ穴チゼルに対して回転させ、従って骨の少なくとも一部分をインプラントの遠位部分を受けるように下準備することと、インプラントを骨に挿入することとを含む、ことを特徴とする。
【0055】
より好ましくは、本発明の実施形態は、インプラントが、横断開口と、係合部材及び圧迫部材を有する締結アセンブリとを備え、締結アセンブリが、横断開口内で摺動するように為され、係合部材が大腿骨に係合するように為され、係合部材と圧迫部材は、圧迫部材がインプラントの一部及び係合部材の一部と係合及び相互作用して骨と大腿骨骨頭との間の動きが可能になるように構成されることを更に特徴とするプロセスを提供する。このプロセスは更に、係合部材及び圧迫部材に位置及び方向が対応する骨内に少なくとも1つの開口を形成することと、大腿骨骨頭を係合部材と係合させることと、圧迫部材を大腿骨骨頭に接触するように挿入することと、圧迫部材を係合部材の一部と相互作用させ、それによって骨に対応する大腿骨骨頭に圧迫力を加えることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の一実施形態による、大腿骨内に設置された髄内釘の斜視図である。
図1A】本発明の一実施形態による髄内釘のより詳細な斜視図である。
図1B】本発明の別の一実施形態による髄内釘の斜視図である。
図1C図1Bの釘の部分断面図である。
図1D】本発明の別の一実施形態による髄内釘の斜視図である。
図2図1の髄内釘の立面図である。
図3図2の髄内釘の線3−3に沿った断面図である。
図4図2の髄内釘の側面図である。
図5図4の髄内釘の線5−5に沿った断面図である。
図6図4の髄内釘の線6−6に沿った断面図である。
図7】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図8】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図9】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図10】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図11】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図12】本発明の一代替実施形態による髄内釘の斜視図である。
図13図7の髄内釘の線13−13に沿った断面図である。
図14図8の髄内釘の線14−14に沿った断面図である。
図15図9の髄内釘の線15−15に沿った断面図である。
図16図10の髄内釘の線16−16に沿った断面図である。
図17図11の髄内釘の線17−17に沿った断面図である。
図18図12の髄内釘の線18−18に沿った断面図である。
図19】本発明のいくつかの実施形態によるいくつかの装置を受けるように骨を下準備するための、本発明の一実施形態による道具の斜視図である。
図20】本発明の一実施形態による締結アセンブリの一種を備える装置の斜視図である。
図21図20に示す髄内装置及び締結アセンブリの分解図である。
図22図20に示す締結アセンブリの斜視図である。
図23図20の締結アセンブリを示す分解図である。
図24図23の締結アセンブリの係合部材を示す立面図である。
図25図24の係合部材の側面図である。
図26図24の係合部材の線26−26に沿った断面図である。
図27図24の係合部材の一端部を示す端面図である。
図28図24の係合部材の他端部を示す端面図である。
図29図22の締結アセンブリの圧迫装置を示す立面図である。
図30図29の圧迫装置の線30−30に沿った断面図である。
図31図29の圧迫装置の一端部を示す端面図である。
図32図29の圧迫装置の他端部を示す端面図である。
図33】本発明の別の一実施形態による髄内釘及びスクリューアセンブリの断面図である。
図34】本発明の別の一実施形態による締結アセンブリの斜視図である。
図35図34の締結アセンブリのラグスクリューを示す斜視図である。
図36】本発明の別の一実施形態による締結アセンブリの斜視図である。
図37図36の締結アセンブリのラグスクリューを示す斜視図である。
図38】本発明の別の一実施形態による締結アセンブリの斜視図である。
図39図38の締結アセンブリの分解図である。
図40】本発明の別の一実施形態による締結アセンブリの斜視図である。
図41図40の締結アセンブリの分解図である。
図42】本発明の一実施形態による締結アセンブリを備える、本発明の一実施形態による圧迫プレートの斜視図である。
図43】本発明の一実施形態による締結アセンブリを備える、本発明の一実施形態による関節周囲プレートの斜視図である。
図44】肩関節における上腕骨修復に関連して使用される、本発明の一実施形態による装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の実施形態による方法、装置、及びシステムは、大腿骨骨折治療の改善を追求するものである。図1図6は、本発明による髄内釘100の一実施形態の様々な説明図である。髄内釘100は、骨内部への挿入を助けるための貫通した長手ボア130を有する。髄内釘100は、近位区間102、移行区間104、及び遠位区間106を有する。
【0058】
図1図6に示す特定の構造における近位区間102は、好ましくは、典型的な骨皮質により精密に対応する解剖学的にもたらされた形状を特徴とする。このような形状の一種類を、近位区間102の断面図として図6に示す。図6に示す近位区間102の特定の断面図はその長さの少なくともいくつかの部分に沿って全体的に非円形であり、内側面または側面109よりも大きい外側面または側面108を有する。外側面108及び内側面109は、第1の面110及び第2の面116によって結合されている。第1の面110と外側面108の交差部は、第1の丸まったコーナー112であり、第2の面116と外側面108の交差部は、第2の丸まったコーナー114である。第1の面110、第2の面116、及び外側面108は、ほぼ長さが等しい。 第1の面110及び第2の面116は、内側面109が外側面108よりも短くなるように、外側面108に対して鋭角に向けられる。外側面108を内側面109より長くすることで髄内釘100の回転に対する安定性が増し、曲げ及びひねりに対する耐性も向上する。
【0059】
図6に示す内側面109には、丸みを付けることができる。図4から分かるように、丸まった内側面109は移行区間104から突出し、髄内釘100の近位端へと続く。内側面109の突出部は大腿骨の距領域に対応しており、骨と髄内釘100との間での荷重分配の均等性を向上させる。更に、近位区間の全体的な断面形状により、近位区間内のピーク応力が低減される。より具体的には、髄内釘及びスクリューアセンブリの組合せにおける典型的な破損の形は、釘がその外側面にかかる張力により破損することである。この張力は、スクリューアセンブリにかかる体重荷重による曲げモーメントによって発生する。従って、釘の張力がかかる側面である外側面上により多くの材料を含み、外側領域または両方の強度及び剛度を高めるように断面をより効果的に形状付けることが、釘の近位区間内の応力を低減させるのに有利となり得る。図6に示した設計は、この目的を達成する。外側面108は、内側面109より幅が広く、従って、少なくとも部分的にフランジのような効果を与える。外側面108上の材料に発生する単位面積あたりの応力は、外側面が内側面109のようなより小さい断面領域を特徴とする場合よりも小さい。
【0060】
同じ原理による利益を受ける本発明の別の一実施形態による構造を、図1B及び図1Cに示す。図1B及び図1Cは断面がほぼ円形の髄内釘1100を示し、そのほぼ円形の開口1128が断面の円周の中心から外して配置されている。これら2つの図に示す特定の構造では、偏心開口1128は、外側面1108側で、材料のより大きい部分が荷重を受け応力を低減させることができるように、内側面1109に向かってずれている。同様に、断面の外側面側により多くの材料を提供するいかなる断面も、釘内部のその面側の単位面積あたりの応力を低減させる。
【0061】
近位部分102の断面における外側部分のいくつかの部分に材料または質量を付け足すことができる特定の方法とは関係なく、外側部分または両側の強度及び剛度を増大させるために、断面のいくつかの部分に材料を加えたり除去したりすることができ、この作用は、外側面または側面108の方向に少なくとも部分的に向けられた断面に慣性モーメントを与えることを特徴とすることができる。好ましい実施形態では、慣性モーメント(図6の文字Mで示される)は外側方向に延び、あるいは、外側面108の接線T1との交点l1から、内側面109の接線T2との交点l2へと延びる線Lの中点である点Pから、少なくとも部分的に外側面または面108に向かって延びることを特徴とすることができる。言い換えると、少なくともいくつかの場合における作用は、慣性モーメントが断面の中心から少なくとも部分的に外側方向に延びることを特徴とする断面を形成することである。好ましくは、その中心は、断面の外側縁部と内側縁部の中点とすることができる。あるいは、その中心は、断面の質量の中心とすることができる。中心からの増分質量の距離の平方の関数である慣性モーメントにより生じる回転半径は、近位部分102の外側部分における、断面内のより多くの質量またはより戦略的に配置された質量により生じる更なる強度を反映している。いくつかの構造で線Lは、横断開口の軸と同一平面上にあり、かつ断面と同一平面上にあり、従ってこれらの平面の交線によって規定される。一方で図1Aが、他方で図1B及び図1Cが示すように、これらは、このように外側に更なる強度及び剛度を付与することができる数多くの構造のうちのわずか2つであり、断面はその軸の少なくとも1つに対して非対称とすることができるがそうする必要はないことに留意されたい。更に、長手開口130は、その中心軸をその断面と共有するように配置することができ、あるいは、外側に強度を与えるのを助けるため、またはその他の目的のためにずらすことができる。
【0062】
図1図6に示す特定の装置では、第1の面110、第2の面116、及び外側面108は平坦である。あるいは、これらの面に丸みを付けたり、それ以外の形で非平坦にすることができる。図1図6示す実施形態では内側面109に丸みが付けられているが、当業者であれば理解できるように、内側面を平坦にすることもできる。
【0063】
近位区間102は、髄内釘100を貫通する締結またはスクリューアセンブリ200(その様々な種類を図19図41に示す)を受ける、横断開口118を有する。図1図4に示す近位横断開口118の一実施形態は、2つの重なり合う円形開口120、122で形成されており、近位円形開口120の直径は遠位円形開口122よりも小さい。図示した近位円形開口120は、以下でより詳細に説明するように、スクリューアセンブリを挿入する深さを制約するための肩132を有する。当分野の技術者には知られているように、様々なスクリューアセンブリの挿入を可能にするその他様々な開口を使用することができる。たとえば、図33は円形開口を有する髄内釘を示す。 図33の実施形態は、以下でより詳細に説明する。
【0064】
図3に示す近位区間102は、近位端開口128を有する。近位端開口128は、スクリューアセンブリの回転及び摺動位置を固定するために使用することができる固定スクリューの挿入が可能になるように、ねじ切りされている。固定スクリューはまた、ラグスクリュー202の回転または摺動を独立に制限するために、コンプレッションスクリュー204(図19)をまたぎ、ラグスクリュー202(図19)とぶつかり合うための機構を備える。
【0065】
図1図6に示すように、移行区画104は、近位区間102から遠位区間106へとテーパ形状になっている。移行区画104はテーパ形状とされて髄管内に圧入され、これより沈降が制御される。テーパ形状の移行区間104は、釘100が意図されている以上に大腿骨の髄管内へと押し下げられないようにすることを助ける。
【0066】
図1図6に示す髄内釘100の実施形態では、移行区間104の断面は円形であるが、当分野の技術者に知られているように、断面を変えることができる。断面は、近位区間102の断面と同様に、解剖学的に由来し、楕円形または非円形とすることができる。図1図6に示す実施形態では、移行区間104は遠位横断開口124を有する。遠位開口124は、髄内釘100を係止するための遠位係止スクリューを、髄内釘100を貫通して挿入することを可能にする。
【0067】
髄内釘100の遠位区間106は、全体的に円筒状であり、曲げ剛度が低減されるように構成されている。図1図5に示す実施形態は、遠位区間106の中心を貫通し、2つの側部134、136を形成する長手スロット126を有する。スロットは、髄内釘100の遠位端での曲げ剛度を低減させ、人工的な周辺骨折の可能性を低減させる。
【0068】
図1Dは、本発明の別の一実施形態による髄内釘100を示す。この釘は、その近位部分での、外側−内側軸について対称な非円形断面(この例では楕円形断面が好ましいが必須ではない)を特徴とし、中心合わせされた長手ボア(この例では円形断面が好ましいが必須ではない)を特徴とする。この釘は、髄管内でのねじりに対抗できる程度の追加の安定性を達成する。この釘はまた、近位断面の外側縁部または側面へとより多くの質量を配置する目的を達成する。この釘は更に、内側縁部または側部へと更なる質量を配置し、従って、荷重がかけられると外側縁部または側面に引張応力を与える構成要素である締結アセンブリのメカニカルアドバンテージを低減させるための支点として働く、更なる構造を提供する。
【0069】
図7図18は、本発明のその他の実施形態による髄内釘100を示す。図7及び図13は、長手ボアを全くもたない髄内釘100を示す。
【0070】
図8及び図14は、移行区間104及び遠位区間106に剛度低減スロット140を有する、髄内釘100を示す。剛度低減スロット140は、髄内釘100の遠位端の曲げ剛度を低減させ、いくつかの実施形態では、係止スクリューを受けるために使用することができる。
【0071】
図9及び図15は、遠位区間106及び移行区間104の一部にクローバ形のパターンを形成する3つの長手スロット138を有する、髄内釘100を示す。このパターンは髄内釘100付近の血液の流れをより容易にし、また釘100の遠位端の曲げ剛度を低減させる。
【0072】
図10及び図16は、遠位区間106及び移行区間104の一部が一連の長手溝146を有する髄内釘100を示す。長手溝146は、遠位端の曲げ剛度を低減させ、回転に対する抵抗をもたらし、髄内釘100付近の血流を促進する。
【0073】
図11及び図17は、移行区間104及び遠位区間106がフィン144を有する髄内釘100を示す。フィン144は、回転に対する抵抗を髄内釘100にもたらす。
【0074】
図12及び図18は、遠位区間106及び移行区間104の一部に配置された逆とげ(barb)142を有する髄内釘100を示す。逆とげ142は、回転に対する抵抗を髄内釘100にもたらす。
【0075】
本発明による髄内釘は、いかなる適当な知られた技術によって患者に挿入してもよい。一般に、骨の髄管は、釘を挿入するための空洞を形成するための適切な道具で下準備されている。空洞のいくつかの部分は、釘を挿入した後に血流のための十分な空間が可能になるように、釘の外周よりも約1mm大きく形成される。案内ピンまたはワイヤは、下準備された髄管内に選択的に挿入される。次いで、釘が所望の位置へと案内される。釘が管状になっている場合は、案内ワイヤ上で釘を案内することができる。釘の位置は、イメージ増倍(intensification)によって確かめることができる。
【0076】
図19は、髄管を下準備するための道具300の一実施形態を示す。この道具は、穴ぐり用のドリルビット302、及びほぞ穴チゼル304を有する。動作時は、ドリルビット302は大腿骨の髄管を穴ぐりし、ほぞ穴チゼル304は骨のより近位の端部でより大きい断面を切削する。 図19に示すように、ほぞ穴チゼル304は、髄内釘の近位区間とほぼ同形状の、解剖学的に由来する断面を有する。このようなタイプの形状のほぞ穴チゼルを適用することにより、最小限しか変更されていない骨皮質に釘の近位端を載せることがより容易になる。ほぞ穴チゼル304は、複雑で非対称な形状であっても、多種多様の形状とすることができる。これによって、円形の空洞を更に孔ぐりせずに、多種多様な形状の髄内釘を受け入れることができる空洞を形成するための装置及び方法が可能になるので有利である。正確に共形な空洞を形成することは、健康な骨を不必要に除去することを防ぎ、釘を安定して載せることを保証する上で有益である。
【0077】
動作時は、図示した実施形態の道具300は、ドリルビット302が孔ぐりし、ほぞ穴チゼル304が同時に切削を行う、1つのユニットとして前進させられる。ドリルビット302は、電力駆動または手動で回転させることができる。同様に、道具300全体も、手動で髄管内へと前進させ、あるいはメカニカルアドバンテージまたは電動機器の助けにより前進させることができる。その他の構成では、道具300全体が、髄管内に挿入された案内ワイヤ上で動作可能となりそれによって案内されるように、ドリルビット302を管状にすることができる(図示せず)。
【0078】
他の実施形態では、孔ぐりのためのビットは、ほぞ穴チゼル304などの切削道具とは別になっているより従来的なリーマである。このような例で空洞を形成するための方法は、まず、従来的なリーマで開口を孔ぐりすることを含む。次いで、空洞を形成するために、埋め込まれる髄内釘と同様の形状のチゼルまたはブローチなどの装置を使用する。チゼルまたはブローチは、手動で、ハンマまたはマレットの助けにより、または他の電動機器を使用して、押し込むことができる。次に、形成された空洞と一致する釘が埋め込まれる。
【0079】
総形ブローチ、または特注のルータビット及びテンプレートなど、他の特注器具も同様に使用することができる。 ブローチは大腿骨ステムに開口を形成するために長く使用されており、ブローチの使用は当分野の技術者によく知られている。ルータビット及びテンプレートは、骨に所望の形状を削り出すために効果的に使用することができる。所望の空洞を形成するために、このような方法を孔ぐりまたはブローチ削りと組み合わせて使用することもできる。
【0080】
本発明の髄内釘は、数ある長骨の骨折の中でも、近位大腿骨骨折及び大腿骨骨幹骨折を治療するために使用することができる。大腿骨骨幹骨折の治療に使用される場合、髄内釘は、1つまたは複数の締結装置で大腿骨内に固定される。近位大腿骨骨折の治療に使用される場合、髄内釘は、好ましくは近位スクリューアセンブリと共に使用される。
【0081】
図20及び図21は、本発明の一実施形態による締結アセンブリ200と共に使用される、本発明の一実施形態による髄内釘100を示す。このタイプの締結アセンブリは、その他様々な骨で、他の様々な兆候を治療するために使用することができるが、例示目的で、ここでは近位大腿骨での使用を説明する。一般に、スクリューアセンブリは、1つの骨片が制御されたやり方で別の骨片から引き戻されるまたは押し離される、いかなる状況でも有用である。締結アセンブリは、骨片の移動が達成された後にアセンブリを所望の方向に摺動させることができるように構成可能であるという、更なる利点を提供する。
【0082】
図21に示すように、髄内釘100内の近位横断開口118の軸は、近位区間102に対してある角度をなしており、使用時は、大腿骨骨頭に向かって方向付けられる。この実施形態の締結アセンブリ200では、ラグスクリュー202などの係合部材が、コンプレッションスクリュー204または圧迫ペグなどの圧迫装置と共に使用される。スクリューは、コンプレッションスクリュー204が部分的にラグスクリュー202の周縁内に入り込むよう、使用時にラグスクリュー202の周縁がコンプレッションスクリュー204の周縁と部分的に交わるように構成される。ラグスクリュー202とコンプレッションスクリュー204のこの特定の組合せを更に、図22から図32に示す。簡潔に述べると、これらの図に示すラグスクリュー202は、大腿骨骨頭に係合し、髄内釘100の横断開口118内で摺動することが意図されている。ラグスクリュー202の釘100に対する摺動、従って骨折部位に対する大腿骨骨頭の圧迫力がコンプレッションスクリュー204の回転によって制御されるように、コンプレッションスクリュー204は、釘100の横断開口118内の肩またはその他の構造と係合し、またコンプレッションスクリュー204が入り込むラグスクリュー202の部分にねじ係合する。
【0083】
これらの図に示すラグスクリュー202は、細長い本体206及びねじ切り端部208を備える。図24及び図25に示すように、ねじ切り端部208は鋭利な端部を備えず、これは大腿骨骨頭を切断する可能性を低減させる。細長い本体206は、コンプレッションスクリュー204を部分的にラグスクリュー202の周縁内に配置することを可能にする溝212を備える。溝212は、コンプレッションスクリュー204のねじ切り区間214と補対し協働する、ねじ切り部210を備える。コンプレッションスクリュー204は、ねじ切り区間214及び頭部区間215を備える。コンプレッションスクリュー204のねじ切り区間214は、ねじ山が開口内で容易に摺動し、また切断の可能性を低減させることができるよう、ねじ山の外面が比較的平坦かつ滑らかになるように構成される。
【0084】
ラグスクリュー202は、破損部を横断し大腿骨骨頭内へと延びるように、近位横断開口118内及び大腿骨に予め穿孔された穴内部で受けられる。ラグスクリュー202を開口118内で回転させてそのねじ切り端部208を大腿骨骨頭に係合させるにつれて、ラグスクリュー202のねじ切り端部208は、大腿骨骨頭に係合する。ねじ切り端部208は、大腿骨内にひっかかりを得るためのいかなる装置とすることもでき、これらに限定されないが、螺旋、逆とげ、ブレード、フック、伸縮装置などを含めていかなる所望の構成のねじ山を備えることもできる。ラグスクリュー202を大腿骨骨頭内に配置する深さは骨折部の所望の圧迫力によって異なる。
【0085】
コンプレッションスクリュー204はまた、近位横断開口118を通して、大腿骨骨頭内の予め穿孔された穴内で受けることができる。コンプレッションスクリュー204のねじ切り区間214は、ラグスクリュー202の溝212のねじ切り部と係合する。近位横断開口118は、コンプレッションスクリュー204がほぼ内側方向に摺動する、従って開口118を通ってラグスクリュー202が摺動するのを制限するための、内部肩132(図21)を有する。コンプレッションスクリュー204が締められると、コンプレッションスクリューのねじ山214はラグスクリュー溝のねじ切り部210に係合し、コンプレッションスクリュー204はラグスクリュー202の下でほぼ内側方向に移動する。コンプレッションスクリュー204の頭部区間215は、近位横断開口118の肩132に係合し、コンプレッションスクリュー204がほぼ内側方向に更に移動するのを妨げる。コンプレッションスクリュー204が締められるにつれて、ラグスクリュー202は、髄内釘に向かってほぼ外側方向に引っ張られ、骨折部に圧迫力をもたらす。ラグスクリュー202の周縁と部分的に交わるコンプレッションスクリュー204は、より大きい表面抵抗をもたらし、大腿骨骨頭が回転することを妨げるのを助ける。従ってコンプレッションスクリュー204は、骨折した骨の骨片を互いに移動させる機構の一部として働くだけでなく、大腿骨骨頭の骨と直接接触して、大腿骨骨頭がラグスクリュー202の軸の周りで回転することを妨げるのを助ける。
【0086】
一実施形態では、コンプレッションスクリュー204を係合し、コンプレッションスクリュー204及びラグスクリュー202を定位置に固定するために、髄内釘の近位端開口128内に配置される固定スクリュー(図示せず)が使用される。締結アセンブリ200を定位置に固定するための固定スクリューが、骨折部のパターンに応じて使用される。締結アセンブリを係合するために固定スクリューが使用されない場合、締結アセンブリ200は、肩132で制限される近位開口内で摺動することができる。
【0087】
図20図32に示すラグスクリュー及びコンプレッションスクリューの実施形態では、コンプレッションスクリュー204の直径はラグスクリュー202の直径より小さい。ラグスクリューとコンプレッションスクリューの直径は同じにすることができ、あるいは、ラグスクリューの直径をコンプレッションスクリューの直径より小さくすることができる。ラグスクリュー及びコンプレッションスクリューのねじ山は、当分野の技術者に知られているように、様々な異なる形状とすることができる。一般に、ラグスクリューの目的は、骨内部にひっかかりを得ることであり、コンプレッションスクリューの目的は、ラグスクリューと係合し、それを引っ張るまたは移動させることである。こうした機能を可能にするいかなる構成も、本発明の範囲内にある。
【0088】
締結アセンブリは更に、人工大腿骨骨頭(prosthetic femoral head)及び頚部の付加が可能になるように構成することができる。そのような実施形態では、ラグスクリュー202が、人工頭骨及び頚部で置き換えられる。頚部は、釘100内の近位横断開口118内に嵌り込む。この設計は、修復された大腿骨骨折部及び股関節が変性または再び損傷し、後に人工股関節全置換術(THA:total hip arthroplasty)が必要となる場合に有利である。THAの遂行決定は、術中に、または少し期間をおいて行うことができる。THAに関して知られているように、股関節ステムを受け入れるために大腿骨を下準備しなければならない代わりに、締結アセンブリ200と共に、骨のほんのわずかな部分を取り出す必要があるだけである。次いで、人工頭骨及び頚部が近位横断開口118内に挿入され、寛骨臼(acetabulum)が準備され、残りのTHAが完了される。
【0089】
図33は、本発明の別の一実施形態による、代替締結アセンブリ400を備える髄内釘100の断面図である。図示した締結アセンブリは、参照により本明細書に組み込む特許文献1、及び様々な関連国際特許でより詳しく開示されているような、スミスアンドネフュー社のIMHS(登録商標)システムの圧迫締結アセンブリに非常に類似している。図示した装置の改善点は、この装置が、上記のような解剖学的に由来する形状及びその複数の利点を有する髄内釘100を備えることである。動作時は、スリーブ401は髄内釘100を貫通して嵌り、固定スクリューまたはその他の効果的な機構によって釘に固定することができる。摺動ラグスクリュー402は、スリーブ401内で軸方向に動くことができる。コンプレッションスクリュー404は、コンプレッションスクリュー404を締めると摺動ラグスクリュー402がスリーブ401内に引き戻されるように、摺動ラグスクリュー402内にねじ込まれる。この機構を用いると、骨片が所望の位置に置かれるが、位置決めされてからも摺動圧迫力をもたらすことができる。
【0090】
図34図35は、本発明の別の一実施形態による、ラグスクリュー202及び圧迫ペグ502を有する締結アセンブリ200を示す。図34に示すように、ラグスクリュー202及び圧迫ペグ502は、使用時にラグスクリュー202の周縁が部分的に圧迫ペグ502の周縁と交わるように構成されるが、いくつかの実施形態では、周縁が交わるのではなく隣接するように構成される。ラグスクリュー202は、細長い本体206及びねじ切り端部208を備える。ラグスクリュー202は、溝212上にキー504を有する。圧迫ペグ502は、ラグスクリュー202のキー504を受けるように構成されたスロット503を有する。キー504及びスロット503は、断面を考えたときに、三角形、D字形、鍵穴形、及び当分野の技術者に自明のその他の形状など、様々な相補的な形状とすることができる。動作時は、圧迫ペグ502とラグスクリュー202との間、またはアセンブリ全体と髄内釘100との間で異なる力を加える圧迫用の道具(図示せず)により、圧迫ペグ502を、ラグスクリュー202に対して相対的に移動させることができる。
【0091】
図34図35に示す締結アセンブリ200では、ラグスクリュー202は、破損部を横断し大腿骨骨頭内へと延びるよう、髄内釘の近位開口内で摺動するように受けられる。ラグスクリュー202のねじ切り端部208は、大腿骨骨頭に係合する。ラグスクリュー202が大腿骨骨頭に適切に係合された後、圧迫ペグ502のスロット503がラグスクリュー202のキー504を受けるときラグスクリュー202が更に回転するのを防ぐために、圧迫ペグ502が近位開口内で大腿骨骨頭内の予め穿孔された穴へと挿入される。より大きい抵抗面積を提供することにより、圧迫ペグ502は、大腿骨骨頭がラグスクリュー202上で回転することを妨げるのを助ける。圧迫力502は、釘の近位端開口内に配置される固定スクリューにより、髄内釘100内の定位置に固定される。ラグスクリュー202は、近位開口を通って圧迫ペグ502上で摺動することができる。別の実施形態では、圧迫ペグ502はその表面上に逆とげを有する。
【0092】
本発明の別の一実施形態による締結アセンブリ200を、図36図37に示す。この実施形態の締結アセンブリ200は、ラグスクリュー202のキー504及び圧迫ペグ502のスロット503が相補的なラチェット歯506を有すること以外は図34図35に示す実施形態と同様な、圧迫ペグ502及びラグスクリュー202を有する。圧迫ペグ502は、近位端開口内に配置される固定スクリューによって髄内釘内の定位置に固定される。ラグスクリューをほぼ外側方向に引っ張ることによって、骨折部の圧迫が達成される。ラチェット歯506は、ラグスクリュー202がほぼ外側方向に移動することを可能にするが、ラグスクリュー202がほぼ内側方向に移動することを妨げる。移動を実現するために、図34図35に関して説明した道具と類似の圧迫用道具を使用することができる。
【0093】
図38図39は、本発明の別の一実施形態による、ラグスクリュー602、十字線スクリュー610及びコンプレッションスクリュー604を有する締結アセンブリ200を示す。ラグスクリュー602は、細長の本体606及びねじ切り端部608を備える。細長の本体606は、断面が半円形である。スクリュー602、604、610は、ラグスクリュー602の周縁が、十字線スクリュー610及びコンプレッションスクリュー604の周縁と交わるように構成される。ラグスクリュー602の細長の本体606は、十字線スクリュー610のねじ切り区間602と補対及び協働するようにねじ切りされている。十字線スクリュー610は、ラグスクリュー602及びコンプレッションスクリュー604と係合するようにねじ切りされている。コンプレッションスクリュー604は、ねじ切り部614及び頭部612を備える。
【0094】
この実施形態では、ラグスクリュー602、十字線スクリュー610、及びコンプレッションスクリュー604は、髄内スクリューの近位開口内で摺動するように同時に受けられる。ラグスクリュー602は、骨折部を横断し大腿骨骨頭へと延びる。ラグスクリュー602のねじ切り端部608は、大腿骨骨頭に係合する。コンプレッションスクリュー604が締められるとき、コンプレッションスクリューのねじ山614が、十字線スクリュー610及びラグスクリュー602のねじ山に係合し、それによってラグスクリュー602をほぼ外側方向に髄内釘へと移動させ、大腿骨骨頭に圧迫力をもたらす。次いで、十字線スクリュー610が回転され、コンプレッションスクリュー604を遠位方向にラグスクリュー602から離して移動させる。代替として締結アセンブリ200を、コンプレッションスクリュー604がラグスクリュー602に対して近位に移動するように構成することができる。ラグスクリュー602から離れたコンプレッションスクリュー604は、より大きい抵抗面積を加えることにより、大腿骨骨頭がラグスクリュー602上で回転しないようにするのを助ける。
【0095】
図40図41は、本発明の別の一実施形態による、ラグスクリュー702及び圧迫ペグ704を有する締結アセンブリ200を示す。ラグスクリュー702は、細長い本体706及びねじ切り端部708を備える。細長い本体706は、大腿骨に挿入するためのラグスクリュー702の周縁内に圧迫ペグ704を部分的に位置決めすることを可能にするために半円形となっており、また細長い本体706の内面上に配置されたキー712を有する。細長い本体706はまた、本体を貫通する開口710を有する。圧迫ペグ704は全体的に円筒形であり、ラグスクリューの半円形本体706内に嵌るようにサイズ決めされている。ラグスクリューのキー712は、圧迫ペグ704内のスロット714によって受けられる。キー712及びスロット714は、相補的なラチェット歯を備える。
【0096】
この実施形態では、ラグスクリュー702及び圧迫ペグ704は、髄内スクリューの近位開口で、大腿骨内に予め穿孔された穴内へと摺動するように同時に受けられる。ラグスクリュー702は、破損部を横断し大腿骨骨頭内へと延びる。ラグスクリュー702のねじ切り端部は、大腿骨骨頭に係合する。圧迫ペグ704とラグスクリュー702との間、またはアセンブリ全体と髄内釘100との間での移動を実現するために、図34図35に関連して説明した道具と同様の圧迫用道具を使用することができる。締結アセンブリの位置を固定するために、固定スクリューを使用することができる。固定スクリューは、それが締められると固定スクリュー上の突出部がラグスクリュー702のスロット710で受けられ、コンプレッションスクリュー704をラグスクリュー702から離して移動させるように構成される。ラグスクリュー702から離れたコンプレッションスクリュー704は、より大きい抵抗面積を加えることにより、ラグスクリュー上で大腿骨骨頭が回転することを妨げるのを助ける。
【0097】
図42は、締結アセンブリ200が圧迫プレート150と協働して使用される、本発明の別の一実施形態を示す。図示のとおり、装置は大腿骨に適用されている。上記締結アセンブリ200の様々な実施形態を同様の圧迫プレートと共に使用することができ、様々な圧迫プレートは、解剖学的なその他の部位に適用可能となるように構成することができる。
【0098】
図43は、締結アセンブリ200が関節周囲プレート170と共に使用される、本発明の別の一実施形態を示す。図示したプレート及び締結アセンブリは、近位脛骨に適用されている。上記締結アセンブリ200の様々な実施形態は、同様の関節周囲プレートと共に使用することができ、様々な関節周囲プレートは、解剖学的なその他の部位に適用可能となるように構成することができる。
【0099】
図44は、締結アセンブリ200が上腕骨用の釘190と組み合わせて使用される本発明の別の一実施形態を示す。図示のとおり、コンプレッションスクリュー204の頭部区間212は上腕骨に支えられて、上腕骨に対する圧迫力を生じる。ラグスクリュー202に圧迫力が加わり、ラグスクリュー202がそのねじ切り端部208によって骨片に固定された状態で、骨片を適切な治療のための位置へと引っ張ることができる。場合によっては、頭部区間212と、それにより圧迫力が加えられる上腕骨との間に、座金または座面(図示せず)を置くことが有利なことがある。 更に別の変形形態では、頭部区間212が上腕骨に貫入し上腕骨用の釘190の一部で支えられることが可能になるように、上腕骨内の開口を広げることができる。そのような実施形態では、圧迫アセンブリ200は、ねじ切り端部208により骨の同じ領域内でひっかかりを得るために、図44に示すよりも短くなる。上記締結アセンブリ200の様々な実施形態は、同様の釘と共に使用することができ、様々な釘は、解剖学的な他の部位に適用可能となるように構成することができる。
【0100】
当分野の技術者には理解されるように、以上で説明及び図示した本発明の特定の実施形態は、本発明を説明するために提供されたものであり、説明した実施形態の構造及び材料には、以上で説明され添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0101】
100 髄内釘
102 近位区間
104 移行区間
106 遠位区間
108 外側面
109 内側面
118 横断開口
120 円形開口
122 円形開口
124 遠位開口
126 スロット
128 近位端開口
132 肩
142 逆とげ
144 フィン
146 長手溝
150 圧迫プレート
170 関節周囲プレート
200 締結アセンブリ
202 ラグスクリュー
204 コンプレッションスクリュー
206 本体
208 ねじ切り端部
210 ねじ切り部
212 溝
214 ねじ切り区間
215 頭部区間
300 道具
302 ドリルビット
304 ほぞ穴チゼル
400 代替締結アセンブリ
401 スリーブ
402 ラグスクリュー
404 コンプレッションスクリュー
502 圧迫ペグ
503 スロット
504 キー
506 ラチェット歯
602 ラグスクリュー
604 コンプレッションスクリュー
606 本体
608 ねじ切り端部
610 十字線スクリュー
612 頭部
614 ねじ切り部
702 ラグスクリュー
704 圧迫ペグ
706 本体
708 ねじ切り端部
710 開口
712 キー
714 スロット
図1
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図14
図15
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図33
図34
図35
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