(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のグラファイト層は、面方向から見て前記第1のグラファイト層の一部の領域から複数の方向に伸びる形状を有する請求項1または請求項2に記載の多層グラファイトフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
図1〜
図4を参照して、本発明のある実施形態である多層グラファイトフィルム10は、面方向において互いに異なる熱伝導度を有する異なる第1のグラファイト層11および第2のグラファイト層12を含む。かかる多層グラファイトフィルムは、第1のグラファイト層および第2のグラファイト層のそれぞれの欠陥を補うことにより、高い熱拡散性能および放熱性能を有する。
【0030】
本実施形態の多層グラファイトフィルム10において、第1のグラファイト層11の面方向(フィルムの主面内の任意の方向)における熱伝導度は600W・m
-1・K
-1以上1800W・m
-1・K
-1未満であることが好ましく、第2のグラファイト層の面方向における熱伝導度は100W・m
-1・K
-1以上600W・m
-1・K
-1未満であることが好ましい。かかる多層グラファイトフィルムは、特に高い熱拡散性能および放熱性能を有する。
【0031】
また、
図1および
図3を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11(厚さTk
11)と第2のグラファイト層12(厚さTk
12)とが直接接合されていることが好ましい。かかる多層グラファイトフィルムは、熱拡散性能または放熱性能に悪影響を与える熱伝導性の低い接着層を有さないため、高い熱拡散性能および放熱性能を有する。ここで、第1のグラファイト層11と第2のグラファイト層12とが直接接合されているとは、両層の間に他の層を介在させずに、両層が互いに接触して接合されていることをいう。
【0032】
また、
図2および
図4を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11(厚さTk
11)と第2のグラファイト層12(厚さTk
12)とが、第1のグラファイト層11の厚さTk
11以下の厚さTk
13の接着層13を介在して、接合されていることが好ましい。かかる多層グラファイトフィルムは、かかる薄い接着層13が設けられていることにより、熱伝導性の低減が最小限に抑えられているとともにグラファイト層間の接着性が高められている。
【0033】
また、
図1および
図2を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11の面積S
11(
図1および
図2において、幅W
11a×幅W
11bの四角形の面積)と第2のグラファイト層12の面積S
12(
図1および
図2において、幅W
12a×幅W
12bの四角形の面積)とが異なっていることが好ましい。局所的に高熱が発生するような機器を多層グラファイトフィルムを用いて放熱する場合、面積の異なる第1のグラファイト層11と第2のグラファイト層12とを最適に組み合わせることにより、放熱効果を高め機器全体の温度分布を小さくすることができる。
【0034】
さらに、
図1および
図2を参照して、第1のグラファイト層11の面積S
11を、第2のグラファイト層12の面積S
12より小さくすることが好ましい。高熱の発熱源の周りに高い熱伝導性を有する第1のグラファイト層11を配置し、他の部分に第2のグラファイト層12(熱伝導性が第1のグラファイト層に比べて低い)を配置することにより、第1のグラファイト層11または第2のグラファイト層12を単独で用いる場合に比べて、機器の温度分布を均一にすることができる。
【0035】
また、
図5および
図6を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10において、第1のグラファイト層11は、面方向から見て第1のグラファイト層11の一部領域R
pから複数の方向に伸びる形状を有することが好ましい。第1のグラファイト層がかかる形状を有することにより、その一部の領域R
pで発生する熱を他の領域(一部の領域R
p以外の領域)に効率よく拡散させることができる。このため、かかる形状を有する第1のグラファイト層の一部の領域R
pを機器の発熱体またはヒートスポット(その機器において、周囲に比べて高温になっている部分をいう。以下同じ)に接触させることにより、機器の温度分布をより均一化することができる。ここで、
図5に示す多層グラファイトフィルム10においては、第1のグラファイト層11は、その一部の領域R
pから4方向に伸びる十字型の形状を有する。また、
図6に示す多層グラファイトフィルム10においては、第1のグラファイト層11は、その一部の領域R
pから3方向に伸びるT字型の形状を有する。
【0036】
また、
図7〜
図9を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11を複数含み、面方向から見て、複数の第1のグラファイト層11が、それらの少なくとも一部の領域R
qが重なるように配置されていることが好ましい。複数の第1のグラファイト層がかかる配置をしていることにより、その領域R
qで発生する熱を他の領域(領域R
q以外の領域)に効率よく拡散させることができる。このため、かかる配置をしている複数の第1のグラファイト層が重なる領域R
qを機器の発熱体またはヒートスポットに接触させることにより、機器の温度分布をより均一化することができる。
【0037】
また、
図8および
図9を参照して、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11を複数含み、面方向から見て、複数の第1のグラファイト層が、それらの長手方向が互いに異なる方向に配置されていることが好ましい。複数の第1のグラファイト層がかかる配置をしていることにより、第1のグラファイト層が配置されている領域で発生する熱を他の領域に効率よく拡散させることができる。このため、かかる配置をしている複数の第1のグラファイト層を機器の発熱体またはヒートスポットに接触させることにより、機器の温度分布をより均一化することができる。特に、
図8および
図9に示す多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11を複数含み、面方向から見て、複数の第1のグラファイト層11が、それらの少なくとも一部の領域R
qが重なるようにかつそれらの長手方向が互いに異なる方向に配置されている。このため、かかる配置をしている複数の第1のグラファイト層が重なる領域R
qを機器の発熱体またはヒートスポットに接触させることにより、機器の温度分布をさらに均一化することができる。
【0038】
また、
図1〜
図4を参照して、面方向における熱伝導度が600W・m
-1・K
-1以上1800W・m
-1・K
-1未満の第1のグラファイト層が容易に得られる観点から、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第1のグラファイト層11が高分子フィルムを熱処理して得られる高分子グラファイトフィルムであることが好ましい。
【0039】
ここで、高分子グラファイトフィルムとは、高分子フィルムが、熱処理されることにより、炭素化し次いでグラファイト化して形成されるグラファイトフィルムをいう。高分子グラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムは、特に制限はないが、良好な高分子グラファイトフィルムを得る観点から、高分子フィルムの材料は熱硬化性高分子であることが好ましい。高分子フィルムの材料としては、たとえば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリオキサゾ−ルなどが好ましく挙げられる。特に、2400℃以上の高温で熱処理することにより良質な高分子グラファイトフィルムが得られる観点から、高分子フィルムはポリイミドフィルム、特に分子配向性の高いポリイミドフィルムであることが好ましい。かかるポリイミドフィルムの分子配向性を表す物性値として、100℃〜200℃の範囲における平均線膨張係数は、2.5×10
-5K
-1以下が好ましく、2.0×10
-5K
-1以下がより好ましく、1.5×10
-5K
-1以下がさらに好ましい。また、かかるポリイミドフィルムの面内配向性を示す複屈折Δnは、0.13以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.16以上がさらに好ましい。
【0040】
また、
図1〜
図4を参照して、面方向における熱伝導度が100W・m
-1・K
-1以上600W・m
-1・K
-1未満の第2のグラファイト層12が容易に得られる観点から、本実施形態の多層グラファイトフィルム10は、第2のグラファイト層12がグラファイト粉末を酸処理、熱処理および圧延処理して得られる膨張グラファイトフィルムであることが好ましい。
【0041】
ここで、膨張グラファイトフィルムとは、天然グラファイトなどの結晶化が進んだグラファイト粉末を、酸あるいは酸および酸化剤により酸処理し次いで熱処理することにより膨張させて膨張グラファイトを形成させ、この膨張グラファイトを圧延することにより形成されるグラファイトフィルムをいう。
【0042】
ここで、高分子グラファイトフィルムは、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などにより観察すると、複数のグラファイト面が互いに平行に配列している。これに対して、膨張グラファイトフィルムは、その断面を観察すると、複数のグラファイト面が平行に配列しているものの、グラファイト面自体の大きさは高分子グラファイトフィルムに比べて小さい。
【0043】
上述のように、高分子グラファイトフィルムは、厚くすることが困難であるが、高熱伝導性であるため薄くても熱輸送能力が高い。また、膨張グラファイトフィルムは、高分子グラファイトフィルムに比べて熱伝導性が低いが厚くすることにより熱輸送能力を高くできる。したがって、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)とが接合されている本実施形態の多層グラファイトフィルムは、所定の厚さにおいて高い熱伝導性が得られるように設計することができるため、熱拡散フィルムとして好適に用いられる。また、膨張グラファイトフィルムは大面積化が容易であるために、膨張グラファイトフィルムの必要部分に熱伝導性が高い高分子グラファイトフィルムを接合することで、多層グラファイトフィルム全体の熱分布を均一化できる。かかる観点から、多層グラファイトシートにおいては、高分子グラファイト層の厚さに比べて膨張グラファイト層の厚さを大きくすること、高分子グラファイト層の面積に比べて膨張グラファイト層の面積を大きくすることが好ましい。
【0044】
(実施形態2)
図1〜
図4を参照して、本発明の他の実施形態である多層グラファイトフィルムの製造方法は、第1のグラファイト層11として、高分子フィルムを熱処理して得られる比重が0.2以上2.0以下の高分子グラファイトフィルムを準備する工程と、第1のグラファイト層11に比べて面方向において異なる熱伝導度を有する第2のグラファイト層12として、グラファイト粉末を酸処理、熱処理および圧延処理して得られる膨張グラファイトフィルムとを準備する工程と、第1のグラファイト層11と第2のグラファイト層12とを加圧して接合する工程とを、備える。高分子グラファイトフィルムと膨張グラファイトフィルムとは、圧力を加えることにより接着剤を用いることなく、直接接合することができ、高い熱拡散性能および放熱性能を有する多層グラファイトフィルムが得られる。
【0045】
ここで、第1のグラファイト層11として、高分子フィルムを熱処理して得られる比重が0.2以上2.0以下の高分子グラファイトフィルムを準備する工程は、特に制限はなく、たとえば以下のように行なわれる。
【0046】
高分子グラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムは、熱処理において、高分子フィルム中の炭素原子がフィルム状の形態を保ったまま残存し、その残存する炭素原子が再結合して、高分子構造と炭素の六員環構造との中間の構造を有する炭素前駆体が形成される必要がある。かかる観点から、高分子フィルムは熱硬化性高分子フィルムであることが好ましい。高分子フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリベンゾイミダゾールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサゾ−ルフィルムなどが好ましく挙げられる。さらに、2400℃以上の高温で熱処理することにより良質なグラファイトフィルムが得られる観点から、ポリイミドフィルムがより好ましく、分子配向性が高いポリイミドフィルムであることがさらに好ましい。かかるポリイミドフィルムの分子配向性を表す物性値である100℃〜200℃の範囲における平均線膨張係数は、2.5×10
-5K
-1以下が好ましく、2.0×10
-5K
-1以下がより好ましく、1.5×10
-5K
-1以下がさらに好ましい。また、かかるポリイミドフィルムの面内配向性を示す複屈折Δnは、0.13以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.16以上がさらに好ましい。
【0047】
上記のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。ポリアミド酸の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種とを、実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができる。
【0048】
これらポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については、公知の方法を用いることができる。かかる方法として、熱イミド化法と化学イミド化法とが挙げられる。熱イミド法は、ポリアミド酸溶液を熱処理することによりポリイミドフィルムを製造する方法である。化学イミド法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの第三級アミン類などに代表されるイミド化触媒とを作用させて化学的にポリイミドフィルムを製造する方法である。化学イミド化法に熱イミド化法を併用してもよい。
【0049】
次に、高分子グラファイトフィルムの製造方法について述べる。高分子グラファイトフィルムは、高分子フィルムが加熱処理により、炭素化およびグラファイト化されて得られる。以下、具体的な製造例を説明する。
【0050】
まず、原料である高分子フィルムを、たとえば、真空中、あるいはアルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス中で、好ましくは窒素ガス中で、熱処理することにより、炭素化させて、炭素化フィルムを調製する(炭素化工程)。炭素化工程における熱処理は通常1000℃程度の温度で行なう。炭素化工程における加熱処理は、原料である高分子フィルムの分子配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度に、フィルム面に垂直な方向に圧力を加えることが有効である。
【0051】
次に、上記の方法で得られた炭素化フィルムを、たとえば、グラファイトヒーターを用いた横型超高温炉内にセットし、熱処理することにより、グラファイト化させてグラファイトフィルムを調製する(グラファイト化工程)。かかるグラファイト化は、好ましくはアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で行なう。ここで、不活性ガスとしては、アルゴンガスが最も適当であり、アルゴンガスに少量のヘリウムガスを加えることはさらに好ましい。純粋なグラファイトフィルムが得られる観点から、グラファイト化工程における熱処理温度は、2400℃以上が好ましく、2700℃以上がより好ましい。ここで、2400℃以上の超高温を作り出すためには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。
【0052】
ここで、グラファイト化は、炭素化工程により調製された炭素化フィルム中の炭素原子の配列をグラファイト構造に転化することによって起こる。かかる、グラファイト化をスムーズに起こすためには、炭素−炭素結合の開裂・再結合が最小のエネルギーで起こるような条件を設定することが好ましい。原料である高分子フィルムの分子配向は炭素化フィルムの炭素原子の配列に影響を与え、その炭素原子の配列がグラファイト化の際の炭素−炭素結合の開裂・再結合のエネルギーを少なくする効果を持つ。したがって、原料である高分子フィルムの分子が高度に配向するように分子設計を行なうことにより、低温でのグラファイト化と良質のグラファイトフィルムの作製が可能になる。
【0053】
また、上記の高分子グラファイトフィルムは、原料である高分子フィルムの厚さに対して、100%以上の厚さを有する発泡状態の高分子グラファイトフィルム(発泡グラファイトフィルムという、以下同じ。)であることが好ましく、150%以上の厚さであることがより好ましく、200%以上の厚さであることがさらに好ましい。この様な発泡グラファイトフィルムは、実施例において後述するように高分子フィルムの炭素化のプロセスおよびグラファイト化のプロセスを制御することにより得られる。
【0054】
原料の高分子フィルムの種類によって多少異なるものの、無発泡の状態で作製された高分子グラファイトフィルム(無発泡グラファイトフィルムという、以下同じ。)の厚さは、通常、原料の高分子フィルムの厚さの40〜50%程度である。たとえば、無発泡グラファイトフィルムの厚さが原料の高分子フィルムの厚さの50%である場合、発泡グラファイトフィルムの厚さが高分子フィルムの厚さの100%であるということは、この高分子グラファイトフィルムが2倍に発泡したことを意味する。グラファイトの真比重は2.26であるから、このときの発泡グラファイトフィルムの比重は1.13となる。また、発泡グラファイトフィルムの厚さが高分子フィルムの厚さの150%である場合には、グラファイトフィルムが3倍に発泡したことを意味し、発泡グラファイトフィルムの比重は0.75となる。さらに、発泡グラファイトフィルムの厚さが高分子フィルムの厚さの200%である場合には、発泡グラファイトフィルムの比重は0.57となる。本願における比重とは、基準物質としての4℃の水(0.999973g/cm
-3)に対する比重を意味する。
【0055】
本実施形態において、面方向において互いに異なる熱伝導度を有する2種類のグラファイト層を直接接合する際に、高分子グラファイトフィルムとして発泡グラファイトフィルムを用いることが好ましい。かかる観点から、本実施形態で用いられる高分子グラファイトシートの比重は、0.2以上2.0以下が好ましく、0.2以上1.5以下がより好ましく、0.2以上1.0以下がさらに好ましい。
【0056】
また、第1のグラファイト層11に比べて面方向において異なる熱伝導度を有する第2のグラファイト層12として、グラファイト粉末を酸処理、熱処理および圧延処理して得られる膨張グラファイトフィルムとを準備する工程は、特に制限はなく、たとえば以下のように行なわれる。
【0057】
膨張グラファイトフィルムの原料には、天然燐状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイトなどの結晶化が進んだグラファイトの粉末が用いられる。これらの原料グラファイト粉末を、濃硫酸、硝酸などの強酸に浸漬し、あるいは、濃硫酸、硝酸などの強酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩などの強酸化剤との混酸に浸漬する。次に、強酸あるいは混酸から原料グラファイト粉末を取り出して水洗し乾燥する。このようなグラファイトは酸処理グラファイトと呼ばれる。かかる酸処理グラファイトは1000℃近い温度で急速に加熱すると、グラファイト面に対して垂直方向(c軸方向)に膨張して膨張グラファイトとなる。膨張グラファイトは黒い綿状の形状をしており、これらをプレスによる圧縮成型またはロールによる圧延成型により、膨張グラファイト粒子が絡みあった膨張グラファイトフィルムとすることができる。商品化されている通常の膨張グラファイトフィルムの比重は1.0程度であるが、圧縮または圧延の際の圧力の大きさ、圧縮または圧延時間などの条件を制御することにより、低比重から高比重の膨張グラファイトフィルムを作製できる。たとえば、このような方法により、0.1以上1.6以下の比重を有する膨張グラファイトシートを作製できる。本実施形態においては、0.1以上1.2以下の比重を有する膨張グラファイトシートが好ましく用いられる。
【0058】
次に、
図1〜
図4を参照して、第1のグラファイト層11と第2のグラファイト層12とを加圧して接合する工程について説明する。
【0059】
高い熱輸送能力をできるだけ薄いフィルムで実現するためには、上記の方法で得られた熱伝導特性に優れる複数のグラファイトフィルムを加圧して直接接合する方法が考えられる。しかし、後述するように、高分子グラファイトフィルム同士は、加圧によって直接接合することができなかった。したがって、高分子グラファイトフィルム同士は、接着層を介在して接合することはできるが、高分子グラファイトフィルムとして薄いものしかできない(厚さ100μm以上のフィルムは作製できない)ため、低熱伝導性である接着層を介在して接合したグラファイフィルムは熱輸送能力を高くする方法としては好ましい方法であるとは言えない。たとえば、厚さ40μm、面方向における熱伝導度が800W・m
-1・K
-1の高分子グラファイトシートを厚さ40μmの接着層を介して接合した場合、熱輸送能力はおよそ2倍となるが厚さは3倍(120μm)となる。このため、この複合フィルムの面方向における熱伝導度は計算上533W・m
-1・K
-1となってしまい、著しい特性の低下が発生する。さらに、この方法では単位面積当たりの価格が2倍以上になることを考えると良い方法であるとはいえず、また大面積の放熱シートの作製も困難である。
【0060】
我々は、種々検討の結果、高分子グラファイトフィルム同士の直接接合は不可能であるが、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)は加圧によって直接接合できることを見出して、本発明を完成させた。ここで、高分子グラファイトフィルムを発泡フィルムとすることや、膨張グラファイトフィルムの比重を小さくすることにより、接合強度をさらに大きくできる。
【0061】
図1および
図3を参照して、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)を加圧して直接接合する方法としては、特に制限はないが、接合が簡便で容易である観点から、プレスにより圧縮して成型する方法、ロールにより圧延して成型する方法などが好ましく挙げられる。このとき、たとえば厚さ40μmの高分子グラファイトフィルムと厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム各1枚を積層しプレスにより圧縮して成型する。プレス圧力は、2MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。プレス圧力の上限は特に限定されないが、膨張グラファイトの破壊を防止する観点から、50MPa未満が好ましく、30MPa未満がより好ましい。また、プレスによる圧縮の際に、膨張グラファイトから発生する内部ガスによりフィルム間に気泡が咬むことがあるが、複数回プレスを重ねることによりこの気泡を完全に抜くことができる。
【0062】
ここで、図示はしないが、多層グラファイトフィルムを、2枚の膨張グラファイトフィルムの間に高分子グラファイトフィルムを挟んだ3層構造とすること、2枚の高分子グラファイトフィルムの間に膨張グラファイトフィルムを挟んだ3層構造とすること、また、さらなる多層とすることが、本実施形態と同様の手法によって可能である。
【0063】
また、上記のようなプレス処理においては、合紙や他の基板を挟むことにより、一度に複数枚の多層グラファイトを作製できる。合紙としては、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属のフィルム、ポリエステルなどの高分子のフィルム、押し出し炭素や等方性炭素などの炭素製品を使用できる。また、同様の処理は、圧延ロールを用いて行なっても良く、この場合には連続的に製造ができる。
【0064】
高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)とを直接接合する際には、接合強度を高める観点から、発泡状態にある低比重の高分子グラファイトフィルム(発泡グラファイトフィルム)を用いることが好ましく、たとえば0.2以上2.0以下の比重を有する高分子グラファイトフィルム(グラファイトの真比重は2.26)とすることが好ましい。また、高分子グラファイトフィルムの比重が小さいほど、接合強度が高くなる。かかる観点から、高分子グラファイトフィルムの比重は、0.2以上1.5以下が好ましく、0.2以上1.0以下がさらに好ましい。また、膨張グラファイトフィルムの比重は、特に制限はないが、接合強度を高める観点から、低いことが好ましく、たとえば0.1以上1.2以下が好ましい。このように、低比重の高分子グラファイトフィルムを用いることにより、好ましくは低比重の高分子グラファイトフィルムおよび膨張グラファイトフィルムを用いることにより接合強度が高くなるのは、2種類のグラファイトフィルム間の接合面において両グラファイトフィルムが咬み合うことにより生じるアンカー効果が大きくなるためと考えられる。
【0065】
また、
図2および
図4を参照して、本実施形態の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)とを加圧して接合する工程において、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)との間に、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)の厚さTk
11以下の厚さTk
13の接着層13を介在させることが好ましい。
【0066】
グラファイトフィルムの面方向における熱伝導度に比べて、接着層の熱伝導度は、通常0.1W・m
-1・K
-1〜1W・m
-1・K
-1と非常に小さい。このため、第1のグラファイト層と同じ厚さの接着層を介在して第1のグラファイト層を第2のグラファイト層に接合した場合には、接合された部分の見かけ上の熱伝導度は、接合された第1のグラファイト層の熱伝導度の値の半分にまで低下する。たとえば、熱伝導度が800W・m
-1・K
-1で厚さが40μmのグラファイトフィルム(第1のグラファイト層)を厚さが40μmの接着層を介在して第2のグラファイト層に接合した場合、熱伝導度400W・m
-1・K
-1で厚さが80μmのグラファイト層を直接第2のグラファイト層に接合したのと同じ効果しか得られない。
【0067】
しかし、接着層の厚さをできる限り薄くすることにより、接着層の存在による熱伝導度の低下をできるだけ小さくできる。そのためには、接着層の厚さは、40μm(グラファイト層と同じ厚さ)以下が好ましく、20μm(グラファイト層の半分の厚さ)以下がより好ましく、10μm(グラファイト層の1/4の厚さ)以下がさらに好ましい。接着層が薄くなるほど接着強度が小さくなることが知られているが、本発明の場合には、その接合強度は原理的にグラファイト層内の破断強度以上であればよく、たとえば、代表的なアクリル系接着剤の場合10μmの厚さを有する接着層で目的の接合強度を実現できる。
【0068】
このような接着剤による接合は、たとえば、以下の様にして行なわれる。まず、剥離用フィルム上に一定の厚さで形成された接着層と高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層)を積層してプレスする。次に、剥離用フィルムを取り除き、接着層面上に膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)を積層し再度プレス型成型を行なう。プレス圧力は1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましく、5MPa以上がさらに好ましい。圧力の上限は特に限定されないが、一般に50MPa以上の圧力は必要としない。プレス処理においては空気層の混入を防ぐため真空中での処理や加熱プレスを行なってもよい。また、同様の処理は圧延ロールを用いて行なってもよい。
【0069】
上記の接着層として用いられる接着剤は、特に制限はないが、汎用性および接着強度が高い観点から、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコン系接着剤などが好ましく挙げられる。また、剥離用フィルムは、特に制限はないが、汎用性が高い観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、不織剥離紙などが好ましく挙げられる。
【0070】
(実施形態3)
図10を参照して、本発明のさらに他の実施形態である電子機器は、実施形態1の多層グラファイトフィルム10と、発熱体21とを含む。かかる電子機器は、実施形態1の多層グラファイトフィルムを10含むことにより、その温度分布が均一化される。
【0071】
本実施形態の電子機器は、具体的には、
図10(a)および(b)を参照して、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)とが直接接合されている多層グラファイトフィルム10と、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)上に配置されている熱伝導性ゲル23と、熱伝導性ゲル23上に配置されている発熱体21とを含む。ここで、熱伝導性ゲル23は、特に制限はないが、熱伝導性が高い観点から、シリコーンゲルが好ましく用いられる。
【0072】
本実施形態の電子機器は、点状の発熱体21を有し、多層グラファイトフィルム10において、発熱体21の近傍領域(幅W
11a×幅W
11bの領域)が高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)の多層(2層)構造を有し、その他の領域(幅W
12a×幅W
12bの領域から幅W
11a×W
11bの領域を除いた領域)が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)の単層構造を有する。このため、多層グラファイトフィルム10において、発熱体の近傍領域の面方向における熱伝導度はその他の領域の面方向における熱伝導度に比べて大きいため、電機機器の温度分布が極めて均一化される。
【0073】
(実施形態4)
図12および
図14〜
図17を参照して、本発明のさらに他の実施形態であるディスプレイは、実施形態1の多層グラファイトフィルム10と、発光層41とを含む。かかるディスプレイは、実施形態1の多層グラファイトフィルム10を含むことにより、その温度分布が均一化される。
【0074】
本実施形態のディスプレイは、
図12および
図14〜
図17を参照して、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)とが直接接合されている多層グラファイトフィルム10と、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)および膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)上に配置されている接着層33と、接着層33上に配置されている第1の基板43aと、第1の基板43a上に配置されている発光層41と、発光層41上に配置されている第2の基板43bとを含むパネルを含む。この発光層41は、特に制限はなく、たとえば、エレクトロルミネッセンス(EL)層、プラズマ発光層などである。また、少なくとも第2の基板43bは、透明性の基板、たとえばガラス基板などである。かかるパネルは、一辺を底辺として、垂直に立てられている。また、本実施形態における接着層33は、多層グラファイトフィルム10と第1の基板43aとを接着させるためのものである。かかる接着層33として用いられる接着剤は、特に制限はないが、汎用性および接着強度が高い観点から、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコン系接着剤などが好ましく挙げられる。
【0075】
本実施形態のディスプレイにおいては、パネルの中心領域がパネルの周辺領域に比べて高温になり、さらにパネルが垂直に立てられているため、熱が対流により上昇するため、パネルの中央から上部の領域がパネルの中央から下部の領域に比べて高温になる。また、パネルにおいて周囲に比べても高温になっている部分はヒートスポットと呼ばれる。かかるヒートスポットは、パネルの中央から上部の領域の中央部に現れる。
【0076】
本実施形態のディスプレイにおいては、パネル面全体に広がる面状の発熱体である発光層41を有し、多層グラファイトフィルム10においては、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)の形状および配置には、特に制限はないが、ヒートスポットの熱を効率的に拡散して、ディスプレイの温度分布を均一化する観点から、好ましくは、以下の例が挙げられる。
【0077】
図12を参照して、本実施形態のディスプレイの一例(ディスプレイA)では、パネルの面方向から見て、多層グラファイトフィルム10において、パネルの中央から上部の領域(幅W
a×幅W
11bの領域)に幅W
a×幅W
11bの四角形状の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が配置されている。すなわち、ディスプレイAのパネルの中央から上部の領域(幅W
a×幅W
11bの領域)が高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の多層(2層)構造を有し、パネルの中央から下部の領域(幅W
a×幅W
bの領域から幅W
a×W
11bの領域を除いた領域)が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の単層構造を有する。このため、ディスプレイAの熱はパネルの中央から上部の領域からパネルの中央から下部の領域に効率的に拡散して、ディスプレイの温度分布が極めて均一化される。
【0078】
また、
図14を参照して、本実施形態のディスプレイの他の例(ディスプレイB)では、パネルの面方向から見て、多層グラファイトフィルムにおいて、パネルの全面領域(幅W
a×幅W
bの領域)からパネルの下部の2つの角からそれぞれ幅W
ae×幅W
beの領域を除去したT字型領域に同形状の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が配置されている。すなわち、ディスプレイBは、上記T字型領域が高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の多層(2層)構造を有し、パネルの下部の2つの角からそれぞれ幅W
ae×幅W
beの領域が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の単層構造を有する。ここで、上記T字型の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)は、その一部の領域R
pから複数の方向(3方向)に伸びる形状を有する。また、この一部の領域R
pは、パネルの中央から上部の領域の中央部(ヒートスポットが現れる部分)に位置する。このため、ディスプレイBは、ヒートスポットの熱をより効率的に他の領域(一部の領域R
p以外の領域)に拡散させることができるため、
図12に示されるディスプレイAに比べて、温度分布がさらに均一化される。
【0079】
また、
図15を参照して、本実施形態のディスプレイのさらに他の例(ディスプレイC)では、多層グラファイトフィルム10は、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)を複数含み、パネルの面方向から見て、パネルの全面領域(幅W
a×幅W
bの領域)からパネルの下部の2つの角からそれぞれ幅W
ae×幅W
beの領域を除去したT字型領域に同形状の第1の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と、幅W
11a×幅W
11bの四角形状の第2の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)とが、それらの少なくとも一部の領域R
qが重なるように配置されている。すなわち、ディスプレイCは、パネルの上記領域R
qが第1の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)と第2の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)との多層(3層)構造、パネルの上記T字型領域から上記領域Rqを除いた領域が第1の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の多層(2層)構造を有し、パネルの下部の2つの角からそれぞれ幅W
ae×幅W
beの領域が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の単層構造を有する。ここで、上記T字型の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)は、その一部の領域R
qから複数の方向(3方向)に伸びる形状を有する。また、この領域R
qは、複数の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が重なっている。また、この領域R
qは、パネルの中央から上部の領域の中央部(ヒートスポットが現れる部分)に位置する。このため、ディスプレイCは、ヒートスポットの熱をより効率的に他の領域(領域R
q以外の領域)に拡散させることができるため、
図12に示されるディスプレイAに比べて、温度分布がさらに均一化される。
【0080】
また、
図16および
図17を参照して、本実施形態のディスプレイのさらに他の例(ディスプレイDおよびE)では、多層グラファイトフィルム10は、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)を複数含み、パネルの面方向から見て、幅W
a×幅W
11bの第1の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と幅W
11a×幅W
bの第2の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)とが、それらの長手方向が互いに異なる方向に配置されている。また、それらの高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)は、それらの少なくとも一部の領域R
qが重なるように配置されている。すなわち、ディスプレイDおよびEは、パネルの上記領域R
qが第1の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)と第2の高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)との多層(3層)構造を有し、パネルの上記幅W
a×幅W
11bおよび幅W
11a×幅W
bの領域から上記領域R
qを除いた領域が高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の多層(2層)構造を有し、パネルの全面領域(幅W
a×幅W
bの領域)から上記幅W
a×幅W
11bおよび幅W
11a×幅W
bの領域を除いた領域が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の単層構造を有する。ここで、上記領域Rqは、パネルの中央から上部の領域の中央部(ヒートスポットが現れる部分)に位置する。このため、ディスプレイDおよびEは、ヒートスポットの熱をより効率的に他の領域(領域R
q以外の領域)に拡散させることができるため、
図12に示されるディスプレイAに比べて、温度分布がさらに均一化される。
【0081】
ここで、
図16に示されるディスプレイDがパネルの上記領域Rqにおいて2つの高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が膨張ブラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)を介在させて配置されているのに対して、
図17に示されるディスプレイEがパネルの上記領域Rqにおいて2つの高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が接触して配置されている点が異なる。しかし、いずれのディスプレイにおいても、ヒートスポットの熱をより効率的に他の領域(領域R
q以外の領域)に拡散させることができる。
【0082】
(実施形態5)
図18を参照して、本発明のさらに他の実施形態であるバックライトは、実施形態1の多層グラファイトフィルム10と、発光体51とを含む。かかるバックライトは、実施形態1の多層グラファイトフィルムを10含むことにより、その温度分布が均一化される。
【0083】
本実施形態のバックライトは、具体的には、
図18(a)および(b)を参照して、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)とが直接接合されている多層グラファイトフィルム10と、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)および膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)上に配置されている接着層33と、接着層33の上に配置されているカバー53と、カバー53内に配置されている発光体51および導光板57と、発光体51および導光板57上に配置されている出光板55とを含む。
【0084】
本実施形態のバックライトは、点状の発熱体である発光体51を複数有し、多層グラファイトフィルム10において、発光体51の近傍領域(幅W
11a×幅W
bの領域)が高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の多層(2層)構造を有し、その他の領域(幅W
a×幅W
bの領域から幅W
11a×幅W
bの領域を除いた領域)が膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)の単層構造を有する。このため、多層グラファイトフィルム10において、発光体51の近傍領域の面方向における熱伝導度はその他の領域の面方向における熱伝導度に比べて大きいため、バックライトの温度分布が極めて均一化される。
【0085】
上記の実施形態3〜実施形態5から明らかなように、多層グラファイトフィルムにおいて、高分子グラファイトフィルム(第1のグラファイト層)の面積と膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層)の面積とが異なっていることは、それらの電子機器の温度分布の均一化に極めて有効である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。実施例および比較例において、多層グラファイトフィルムおよび単層グラファイトの熱伝導度の測定は、アルバック理工(株)社製 LaserPITを用い、光交流法で行った。また、電子機器、ディスプレイおよびバックライトの温度分布の測定は、熱電対を用いて行なった。電子機器、ディスプレイおよびバックライトへの熱電対の固定には銀ペーストを用いた。また、熱伝導度および温度分布の測定は大気圧下23℃で行った。
【0087】
また、多層グラファイトフィルムにおけるグラファイト層間の接合強度は以下のようにして測定した。まず、作製した多層グラファイトフィルムを幅5mm×長さ10cmの小片に切断し、この小片の一方の主面に厚さ100μmのアクリル系接着層を有するポリエステルフィルム(幅5mm×長さ12cm)を、ハンドローラーを用いて手張りで貼り付け、一方の側にポリエステルシートがはみ出すようにした。次に、アクリル基板上に厚さ100μmのアクリル接着剤(アクリル基板面に対して90°の方向におけるピール強度が148gf/5mm)層を設け、その上に作製した多層グラファイトフィルムの小片の他方の主面を置き、ハンドローラーで手張りした。こうして得られた試料を引っ張り試験機(Imada Inc.社製IMADA DIGITAL FORCE)にセットし、はみ出したポリエステルフィルムの端を利用して引き剥がし試験を行なった。測定条件は、引っ張りスピード:100mm/分、引っ張り方向:アクリル基板面に対して90°、試料幅:5mm、測定環境:大気圧下23℃であった。
【0088】
(実施例1)
まず、A4サイズ(210mm×297mm)に裁断したデュポン社製ポリイミドフィルム(商品名:カプトンHフィルム、厚さ50μm)を準備した。このポリイミドフィルムの100℃〜200℃における平均線膨張係数は3.0×10
-5K
-1であり、複屈折は0.10〜0.11の範囲であった。
【0089】
発泡状態の高分子グラファイトフィルム(発泡グラファイトフィルム)の作製を、西木直巳,「パイロリティック・グラファイトの合成と物性」,電気学会論文誌A,電気学会,2003年,第123巻,第11号,p.1115−1123(非特許文献3)の方法により、以下のように作製した。すなわち、ポリイミドフィルムを収納した炉の内部を真空引きした後にアルゴンガスで置換し、室温(23℃)〜1000℃までは1.5℃/分の昇温速度で昇温し、1000℃〜2900℃の間は20℃/分の速度で昇温した。2900℃で10分間保持した後、20℃/分の速度で降温させ、温度が1000℃に達した後にヒータをオフとして後は自然冷却した。こうして得られた高分子グラファイトフィルムは、発泡状態にある発泡グラファイトフィルム(A−1)であり、厚さが100μm、比重が0.8であった。また、この発泡グラファイトフィルムを10MPaの圧力でプレス処理した後のフィルムの厚さは40μm、比重は1.8、面方向における熱伝導度は1200W・m
-1・K
-1であった。
【0090】
次に、同じA4サイズに裁断した厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(B−1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)を準備した。この膨張グラファイトフィルムは、比重が1.0であり、フィルム面方向における熱伝導度が200W・m
-1・K
-1であった。
【0091】
上記、発泡グラファイトフィルム(厚さ100μm、比重0.8)と膨張グラファイトフィルム(厚さ200μm、比重1.0)を積層し10MPaの圧力でプレス処理した。なお、用いたプレス機器は神藤金属工業所社製プレス機(製品番号NSF−50型)である。圧力を徐々に増加させ、10MPaの圧力に到達した後10分間保持した。こうして、得られた多層グラファイトフィルムは、厚さ220μm、比重1.1、熱伝導率400W・m
-1・K
-1であった。また、この多層グラファイトフィルムの断面をSEMにより観察したところ、第1のグラファイト層(高分子グラファイトフィルム)の厚さは40μm、第2のグラファイト層(膨張グラファイトフィルム)の厚さは180μmであった。
【0092】
ここで、この多層グラファイトフィルムの熱輸送能力は、熱伝導度が200W・m
-1・K
-1の膨張グラファイトフィルムでは400μmの厚さに相当する。すなわち、発泡グラファイトフィルムと膨張グラファイトフィルムを直接接合した多層グラファイトフィルムにすることにより、単層の膨張グラファイトフィルムの厚さを55%に低減できることを意味する。
【0093】
本実施例の複合グラファイトフィルムにおけるグラファイト層間の接合強度は、上記の引き剥がし試験を10回行なったところ、6.2〜7.5gf/5mm(平均接合強度6.9gf/5mm)であり、破断面は、接合面である場合が1回、膨張グラファイト層内部である場合が9回であった。結果を表1にまとめた。このことから、完成した多層グラファイトフィルムにおいて、発泡グラファイトフィルムと膨張グラファイトフィルムとは十分な強度で接合していると判断した。
【0094】
(実施例2〜7)
第1のグラファイト層として、実施例1と同じ方法で作製した発泡グラファイト(A−1)、この発泡グラファイトを予め10MPaの圧力でプレスした高分子グラファイトフィルム(A−2:厚さ40μm、比重1.8)を用い、第2のグラファイト層として、作製時のロール圧力を変えて作製した比重の異なる3種類の膨張グラファイトフィルム(B−2:厚さ400μm、比重0.5、B−3:厚さ250μm、比重0.8、B−4:厚さ165μm、比重1.2)を用いて、実施例1と同様に第1のグラファイト層と第2のグラファイト層をプレス処理して、多層グラファイトを作製した。こうして得られた多層フィルムの接合強度、破断面の観察を行なった、これらの結果を表1にまとめた。これらの結果から、これらのグラファイトフィルムの組み合わせでは加圧のみによって十分な接合を実現できることが分かった。
【0095】
(比較例1〜3)
実施例1と同じ方法で作製した発泡グラファイトフィルム(A−1)と、および、前記発泡グラファイトを予め10MPaの圧力でプレスしたグラファイトフィルム(A−2:厚さ40μm、比重1.8)を用いて、実施例1と同様にプレス処理をして、多層グラファイトを作製した。得られた多層グラファイトフィルムについて、実施例1と同様にして接合強度を測定し破断面を観察した。結果を表1にまとめた。グラファイトフィルムがA−1同士の場合には、10回の接合強度の測定において、接合面での破断が6回、グラファイト層内部での破断が4回であったが、その他の組み合わせの場合には、10回の接合強度の測定のすべてにおいて接合面での破断であった。この結果から、高分子グラファイトフィルム同士では、加圧による接合によっては十分な接合強度を得ることができなかった。
【0096】
(実施例8)
全く発泡していない高分子グラファイトフィルムを、西木直巳,「パイロリティック・グラファイトの合成と物性」,電気学会論文誌A,電気学会,2003年,第123巻,第11号,p.1115−1123(非特許文献3)の方法により、以下のように作製した。すなわち、ポリイミドフィルムを収納した炉の内部を真空引きした後にアルゴンガスで置換し、室温(23℃)〜1000℃までは7℃/分の昇温速度で昇温し、1000℃〜2900℃の間は20℃/分の速度で昇温した。2900℃で10分間保持した後、20℃/分の速度で降温させ、温度が1000℃に達した後にヒータをオフとして後は自然冷却した。こうして得られた高分子グラファイトフィルム(A−3)は、全く発泡しておらず、厚さが35μm、比重が2.16、面方向における熱伝導度が1200W・m
-1・K
-1であった。この高分子グラファイトフィルム(A−3)と実施例1と同じ膨張グラファイトフィルム(B−1)を、実施例1と同様にプレス処理し、その接合強度を測定した。10回の測定において、平均接合強度は4.0gf/5mmであり、接合面での破断が7回、グラファイト層内部での破断が3回であった。このことから、第2のグラファイト層として膨張グラファイトを用いたとしても、第1のグラファイト層が、高分子グラファイトフィルムが発泡状態を経由して作製されたものでない場合には、十分な接合強度がえられなかった。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例9〜13)
5種類の剥離用フィルム付アクリル系接着剤、すなわち、(C−1)(株)寺岡製作所製剥離用PETフィルム付アクリル系接着剤:製品名707(接着層厚さ30μm)、(C−2)(株)寺岡製作所製剥離用PETフィルム付きアクリル系接着剤:製品名7053(接着層厚さ20μm)、(C−3)(株)日東電工製剥離用フィルム付きアクリル系接着剤:製品名5601(接着層厚さ10μm)、(C−4)(株)寺岡製作所製剥離PETフィルム付きアクリル系接着剤:製品名7641(接着層厚さ100μm)、および(C−5)(株)寺岡製作所製剥離PETフィルム付きアクリル系接着剤:製品名7646(接着層厚さ60μm)を準備した。
【0099】
実施例1と同様にして、A4サイズに裁断した発泡状態の高分子グラファイトフィルム(A−1)を10MPaの圧力でプレス処理した高分子グラファイトフィルム(A−2)(厚さが40μm、比重が1.8、面方向における熱伝導度が1200W・m
-1・K
-1)と、同じくA4サイズに裁断した厚さ200μmの膨張グラファイトシート(B−1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)とを、上記接着剤を用いて、10MPaの圧力でプレス処理により接合させた。ここで、実施例9〜13において、それぞれ接着剤C−1〜C−5を用いた。
【0100】
実施例9で得られた多層グラファイトフィルムの断面をSEMにより観察したところ、第1のグラファイト層(高分子グラファイトフィルム)の厚さは40μm、接着層の厚さは30μm、第2のグラファイト層(膨張グラファイトフィルム)の厚さは190μmであった。
【0101】
また、実施例9〜13で得られた多層グラファイトフィルムについて、実施例1と同様に、グラファイトフィルム間の接合強度の測定を行なったところ、実施例9〜11(接着剤がC−1〜C−3)の場合は、破断面は膨張グラファイト層内部であった。すなわち、10μmの厚さの接着層であっても、十分な接合強度が得られることが分かった。実施例9〜11においては、多層グラファイトフィルムにおける接着層の厚さがいずれも第1のグラファイト層である高分子グラファイト層(厚さ40μm)に比較して薄いために、接着層を用いた接合でも本発明の多層グラファイトシートの作製には有効であることが分かった。
【0102】
これに対して、実施例12、13(接着剤がそれぞれC−4、C−5)の場合は、破断面いずれも膨張グラファイト層内部であった。したがって、これらの接着を用いても多層グラファイトシートの作製は可能であるが、得られる多層グラファイトシートの厚さが厚くなるという問題点のみでなく、接着層の厚さが厚くなることにより、グラファイト層間の熱の移動が妨げられる様になり2種類のグラファイト層を複合する効果が小さくなると言う問題点がある。後者の問題点は本発明のグラファイトを電子機器の熱均一化に使用する場合には大きな問題点となる。
【0103】
【表2】
【0104】
(実施例14)
図10を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
11a50mm×幅
11b50mm×厚さ100μmの発泡グラファイト(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、幅W
12a100mm×幅W
12b100mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。次いで、この多層グラファイトフィルム10の第1のグラファイト層11上の中央に幅W
21a10mm×幅W
21b10mm×厚さ0.5mmの熱伝導性ゲル23(GELTEC社製αゲルCOH−4000)を介在して、幅W
21a10mm×幅W
21b10mm×厚さ1.8mmの発熱体21を配置して、電子機器を得た。
【0105】
この電子機器の発熱体21に1Wの出力を与え定常状態になったときの第2のグラファイト層の表面の測定点P
1〜P
10における温度T
P1〜T
P10を測定した。なお、測定点P
1は第2のグラファイト層12上の中央の点であり、測定点P
1から膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)のW
12bの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
10をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:2.5mm、P
3:7.5mm、P
4:12.5mm、P
5:17.5mm、P
6:22.5mm、P
7:27.5mm、P
8:32.5mm、P
9:37.5mm、P
10:42.5mmとした。温度測定の結果を、表3および
図20にまとめた。
【0106】
(比較例4)
図11を参照して、幅W
12a100mm×幅W
12b100mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)の一方の主面の中央に幅W
21a10mm×幅W
21b10mm×厚さ0.5mmの熱伝導性ゲル23(GELTEC社製αゲルCOH−4000)を介在して、幅W
21a10mm×幅W
21b10mm×厚さ1.8mmの発熱体21を配置して、電子機器を得た。
【0107】
この電子機器の発熱体21に1Wの出力を与え定常状態になったときの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)の他方の主面の測定点P
1〜P
10における温度T
P1〜T
P10を測定した。なお、測定点P
1は第2のグラファイト層12上の中央の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
12bの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
10をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:2.5mm、P
3:7.5mm、P
4:12.5mm、P
5:17.5mm、P
6:22.5mm、P
7:27.5mm、P
8:32.5mm、P
9:37.5mm、P
10:42.5mmとした。温度測定の結果を、表3および
図20にまとめた。
【0108】
【表3】
【0109】
実施例14のように多層グラファイトフィルムを用いた場合は、比較例4のように膨張グラファイトフィルムのみを用いた場合に比べて、ヒートスポット(
図10および
図11におけるヒーターに最近傍の測定点P
1)における温度T
P1を低減でき、温度T
P1〜T
P10の温度分布を小さくすることができた。このように、多層グラファイトフィルムを用いることにより、電子機器の温度分布をより均一化できた。
【0110】
(実施例15)
図12を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
a280mm×幅W
11b80mm×厚さ100μmの発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイトフィルム)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
a280mm×幅W
b160mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が対向するように多層グラファイトフィルム10を配置して、ディスプレイを得た。
【0111】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図21〜
図24にまとめた。
【0112】
(比較例5)
図13を参照して、幅W
a280mm×幅W
b160mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)を配置して、ディスプレイを得た。
【0113】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図21〜
図24にまとめた。
【0114】
(実施例16)
図14を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ100μmの発泡グラファイトフィルム(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)から、互いに幅W
a方向に位置する2つの角からそれぞれ幅W
ae80mm×幅W
be80mm×厚さ100μmの領域を除去したT字型の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
a280mm×幅W
b160mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が対向するように多層グラファイトフィルム10を配置して、ディスプレイを得た。
【0115】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)の「T」字型の「−」部分が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図21にまとめた。
【0116】
(実施例17)
図15を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ100μmの発泡グラファイトフィルム(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)から、幅W
a方向に位置する2つの角からそれぞれ幅W
be80mm×幅W
ae80mm×厚さ100μmの領域を除去したT字型の第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)と、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)と、実施例1と同じ方法で作製した幅W
11a120mm×幅W
11b80mm×厚さ100μmの第2の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
a280mm×幅W
b160mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が対向するように多層グラファイトフィルム10を配置して、ディスプレイを得た。
【0117】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)の「T」字型の「−」部分が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図22にまとめた。
【0118】
(実施例18)
図16を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
a280mm×幅W
11b80mm×厚さ100μmの第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイトフィルム)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)と、実施例1と同じ方法で作製した幅W
11a120mm×幅W
b160mm×厚さ100μmの第2の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
a280mm×幅W
b160mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が対向するように多層グラファイトフィルム10を配置して、ディスプレイを得た。
【0119】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図23にまとめた。
【0120】
(実施例19)
図17を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
a280mm×幅W
11b80mm×厚さ100μmの第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、実施例1と同じ方法で作製した幅W
11a120mm×幅W
b160mm×厚さ100μmの第2の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイトフィルム)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)とを積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
b160mm×幅W
a280mmの有機ELディスプレイ層(第1の基板43a、発光層41および第2の基板43bの積層)の第1の基板43a上に、幅W
a280mm×幅W
b160mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が対向するように多層グラファイトフィルム10を配置して、ディスプレイを得た。
【0121】
このディスプレイをW
aの長さを有する辺を底辺として、第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が積層されている領域が上部となるようにディスプレイを地面に対して垂直に立てて、有機ELディスプレイ層全面に10Wの出力を与え、定常状態になったときの有機ELディスプレイ層の表面(第2の基板43bの表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は第1の発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
aの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
aの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:15mm、P
3:30mm、P
4:45mm、P
5:60mm、P
6:75mm、P
7:90mm、P
8:105mm、P
9:120mm、P
10:135mm、P
11:150mmの距離である。温度測定の結果を表4および
図24にまとめた。
【0122】
【表4】
【0123】
実施例15〜19および比較例5のいずれのディスプレイにおいても、ヒートスポットはパネルの中央から上部の領域の中央部(具体的には、
図12〜17における測定点P
3)に発生した。実施例15〜19のように多層グラファイトフィルムを用いた場合は、比較例5のように膨張グラファイトフィルムのみを用いた場合に比べて、有機ELディスプレイ層のヒートスポット(測定点P
3)における温度T
P3を低減でき、温度T
P1〜T
P11の温度分布を小さくすることができた。このように、多層グラファイトフィルムを用いることにより、ディスプレイの温度分布をより均一化できた。実施例15のように上部半分の領域に発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)を含む多層グラファイトフィルムを用いることにより、ディスプレイの温度分布をより均一化できた。
【0124】
また、実施例16のように、ヒートスポットを含む一部の領域R
pから複数の方向(具体的には3方向)に伸びる形状を有する発泡グラファイトフィルムを含む多層グラファイトフィルムを用いることにより、実施例15の場合よりもさらにディスプレイの温度分布を均一化できた。また、実施例17のように、ヒートスポットを含む一部の領域R
qから複数の方向(具体的には3方向)に伸びる形状を有する発泡グラファイトフィルムと領域R
qに位置し領域R
qと同一の形状を有する発泡グラファイトフィルムとを含む多層グラファイトフィルムを用いることにより、実施例15の場合よりもさらにディスプレイの温度分布を均一化できた。また、実施例18および19のように、ヒートスポットを含む一部の領域R
qにおいて重なりそれらの長手方向が互いに異なる方向を有する2つの発泡グラファイトフィルムを含む多層クラファイトフィルムを用いることにより、実施例15の場合よりもさらにディスプレイの温度分布を均一化できた。
【0125】
(実施例20)
図18を参照して、実施例1と同じ方法で作製した幅W
11a20mm×幅W
b40mm×厚さ100μmの発泡グラファイト(第1のグラファイト層11)(比重0.8、面方向における熱伝導度1200W・m
-1・K
-1)と、幅W
a60mm×幅W
b40mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)を積層し、10MPaの圧力でプレス処理して多層グラファイトフィルム10を得た。幅W
a60mm×幅W
b40mmのバックライト層(カバー53、発光体51、導光板57および出光板55の積層)のカバー53上に、幅W
a60mm×幅W
b40mm×厚さ10μmの接着層33(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、上記の多層グラファイトフィルム10を配置して、バックライトが得られた。発光体51(たとえば、LED(発光ダイオード))に50mWの出力を与え、定常状態になったときのバックライト層の表面(出光板55の表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
bの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
bの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:5mm、P
3:10mm、P
4:15mm、P
5:20mm、P
6:25mm、P
7:30mm、P
8:35mm、P
9:40mm、P
10:45mm、P
11:50mmの距離である。温度測定の結果を表5および
図25にまとめた。
【0126】
(比較例6)
図19を参照して、幅W
a60mm×幅W
b40mmのバックライト層(カバー53、発光体51、導光板57および出光板55の積層)のカバー53上に、幅W
a60mm×幅W
b40mm×厚さ10μmの接着層(アクリル系接着剤(寺岡製作所製5601)で形成される)を介在して、幅W
a60mm×幅W
b40mm×厚さ200μmの膨張グラファイトフィルム(第2のグラファイト層12)(比重1.0、面方向における熱伝導度200W・m
-1・K
-1)(東洋炭素(株)社製:製品名PERMA−FOILPF−UHPL)を配置して、バックライトが得られた。
【0127】
発光体51(たとえば、LED(発光ダイオード))に50mWの出力を与え、定常状態になったときのバックライト層の表面(出光板55の表面)の測定点P
1〜P
11における温度T
P1〜T
P11を測定した。なお、測定点P
1は発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)におけるW
bの長さの辺の中央から垂直方向の内側に5mmの距離の点であり、測定点P
1から第2のグラファイト層のW
bの長さを有する辺に垂直な方向に測定点P
2〜P
11をとった。測定点P
1からの距離Dは、それぞれ、P
2:5mm、P
3:10mm、P
4:15mm、P
5:20mm、P
6:25mm、P
7:30mm、P
8:35mm、P
9:40mm、P
10:45mm、P
11:50mmの距離である。温度測定の結果を表5および
図25にまとめた。
【0128】
【表5】
【0129】
実施例20のように多層グラファイトフィルムを用いた場合は、比較例6のように膨張グラファイトを用いた場合に比べて、ヒートスポット(バックライト層の発光体51の最近傍の測定点P
1)における温度T
P1を低減でき、温度T
P1〜T
P11の温度分布を小さくすることができた。このように、多層グラファイトフィルムを用いることにより、バックライトの温度分布をより均一化できた。実施例20および比較例6のように、バックライト層において、ヒートスポットは、発光体51の近傍領域に発生するが、かかる近傍領域にのみ発泡グラファイトフィルム(第1のグラファイト層11)が積層された複合グラファイトフィルムを用いた場合にも、ディスプレイの温度分布をより均一化できた。
【0130】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。