(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の発光領域の前記第一の機能層及び前記第二の発光領域の前記第一の機能層は、同じ工程で形成される層であり、前記第一の発光領域の前記第二の機能層及び前記第二の発光領域の前記第二の機能層は、同じ工程で形成される層である
請求項1に記載の発光パネル。
前記第一の発光領域における前記第一の機能層と前記第二の機能層とが積層された光学膜厚と、前記第二の発光領域における前記第一の機能層と前記第二の機能層とが積層された光学膜厚とが同じである
請求項1または2に記載の発光パネル。
前記第一の発光領域の前記第一の機能層及び前記第二の発光領域の前記第一の機能層は、前記第一工程において共通に形成される層であり、前記第一の発光領域の前記第二の機能層及び前記第二の発光領域の前記第二の機能層は、前記第二工程において共通に形成される層である
請求項12に記載の発光パネルの製造方法。
前記第一の発光領域における前記第一の機能層と前記第二の機能層とが積層された光学膜厚と、前記第二の発光領域における前記第一の機能層と前記第二の機能層とが積層された光学膜厚とが同じである
請求項12または13に記載の発光パネルの製造方法。
前記第一のマグネトロンスパッタ装置は、第一のターゲット部材と、主面に配された前記第一のターゲット部材を保持する第一のターゲット部材ホルダと、前記第一のターゲット部材ホルダにおける、前記第一のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第一のマグネトロンを備え、
前記第二のマグネトロンスパッタ装置は、第二のターゲット部材と、主面に配された前記第二のターゲット部材を保持する第二のターゲット部材ホルダと、前記第二のターゲット部材ホルダにおける、前記第二のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第二のマグネトロンを備え、
前記基板は、前記第一のマグネトロンスパッタ装置内に前記第一のターゲット部材に対向するように配された後、前記第二のマグネトロンスパッタ装置内に前記第二のターゲット部材に対向するように配され、
前記基板に対する前記複数の第一のマグネトロンそれぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第二のマグネトロンそれぞれの位置と異なる
請求項15に記載の発光パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の態様>
本発明の一態様である発光パネルは、基板と、当該基板上に形成された発光機能層とを備えた発光パネルであって、前記発光機能層は、複数の機能層が積層されてなり、複数の機能層には、第一および第二の機能層が含まれており、積層方向の一方から前記発光機能層を見たときに、積層方向に対して交差する方向に隣接または離間した二つの領域の一方を第一の発光領域、他方を第二の発光領域と称した場合、前記第一の発光領域における第一の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第一の機能層の膜厚より薄く、かつ、前記第一の発光領域における第二の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第二の機能層の膜厚より厚いことを特徴とするとした。
【0019】
本発明の一態様に係る発光パネルでは、前記第一の発光領域における第一の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第一の機能層の膜厚より薄く、かつ、前記第一の発光領域における第二の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第二の機能層の膜厚より厚い。つまり、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布が異なっている。
【0020】
このため、本発明の一態様に係る発光パネルでは、第一および第二の機能層のそれぞれに膜厚の厚い部分と薄い部分が存在しているにも拘らず、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布が共通の場合に比べて、第一の発光領域と第二の発光領域の膜厚の差は低減される。
【0021】
発光パネルにおける膜厚ムラが低減されるので、当該発光パネルにおける輝度ムラを低減することができる。
【0022】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の機能層と前記第二の機能層は、真空成膜法により成膜された層であるとしてもよい。
【0023】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の機能層と前記第二の機能層は、積層方向に隣接しているとしてもよい。
【0024】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の機能層には、陽極と、前記第一および第二の機能層を挟んで前記陽極と対向する陰極とがさらに含まれており、前記第一の機能層は、前記陽極上に積層された透明導電層であり、前記第二の機能層は、前記透明導電層上に積層された電荷注入層であるとしてもよい。
【0025】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の機能層は、ITO又はIZOからなり、前記第二の機能層は、酸化金属からなるとしてもよい。
【0026】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の機能層にはさらに、第三の機能層が含まれており、前記第一の発光領域における第三の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第三の機能層の膜厚より厚いとしてもよい。
【0027】
ここで、本発明の別の態様として、前記第三の機能層は、陽極であり、前記複数の機能層には、前記第一および第二の機能層を挟んで前記陽極と対向する陰極がさらに含まれており、前記第一の機能層は、前記陽極上に積層された透明導電層であり、前記第二の機能層は、前記透明導電層上に積層された電荷注入層であるとしてもよい。
【0028】
ここで、本発明の別の態様として、前記第三の機能層は、アルミ、銀、またはアルミおよび銀の何れかの合金からなるとしてもよい。
【0029】
ここで、本発明の別の態様として、前記第三の機能層は、陰極であり、前記複数の機能層には、前記第一および第二の機能層を挟んで前記陰極と対向する陽極がさらに含まれており、前記第一の機能層は、前記陽極上に積層された透明導電層であり、前記第二の機能層は、前記透明導電層上に積層された電荷注入層であるとしてもよい。
【0030】
ここで、本発明の一態様である発光パネルの製造方法は、基板と、前記基板上に複数の機能層を積層してなる発光機能層とを備え、前記複数の機能層が第一および第二の機能層を含む発光パネルの製造方法であって、第一の成膜装置で前記第一の機能層を形成する第一工程と、第二の成膜装置で前記第二の機能層を形成する第二工程を含み、積層方向の一方から前記発光機能層を見たときに、積層方向に対して交差する方向に隣接または離間した二つの領域の一方を第一の発光領域、他方を第二の発光領域と称した場合、前記第一の発光領域における第一の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第一の機能層の膜厚より薄く、かつ、前記第一の発光領域における第二の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第二の機能層の膜厚より厚いとしてもよい。
【0031】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の成膜装置は、第一のマグネトロンスパッタ装置であり、前記第二の成膜装置は、第二のマグネトロンスパッタ装置であるとしてもよい。
【0032】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一のマグネトロンスパッタ装置は、第一のターゲット部材と、主面に配された前記第一のターゲット部材を保持する第一のターゲット部材ホルダと、前記第一のターゲット部材ホルダにおける、前記第一のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第一のマグネトロンを備え、前記第二のマグネトロンスパッタ装置は、第二のターゲット部材と、主面に配された前記第二のターゲット部材を保持する第二のターゲット部材ホルダと、前記第二のターゲット部材ホルダにおける、前記第二のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第二のマグネトロンを備え、前記基板は、前記第一のマグネトロンスパッタ装置内に前記第一のターゲット部材に対向するように配された後、前記第二のマグネトロンスパッタ装置内に前記第二のターゲット部材に対向するように配され、前記基板に対する前記複数の第一のマグネトロンそれぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第二のマグネトロンそれぞれの位置と異なるとしてもよい。
【0033】
本態様の発光パネルの製造方法では、第一のマグネトロンスパッタ装置と第二のマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が異なるため、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布は異なることになる。したがって、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布が共通している場合と比べて、これらの積層膜の膜厚差を低減することができる。
【0034】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の第一のマグネトロンは、第一の間隔で等間隔に配されており、前記複数の第二のマグネトロンは、第二の間隔で等間隔に配されており、前記第一の間隔と前記第二の間隔は等しいとしてもよい。
【0035】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の機能層と前記第二の機能層は、積層方向に隣接しているとしてもよい。
【0036】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の機能層にはさらに、第三の機能層が含まれており、第三のマグネトロンスパッタ装置で第三の機能層を形成する第三工程を含み、前記第一の発光領域における第三の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第三の機能層の膜厚より厚いとしてもよい。
【0037】
ここで、本発明の別の態様として、前記第三のマグネトロンスパッタ装置は、第三のターゲット部材と、主面に配された前記第三のターゲット部材を保持する第三のターゲット部材ホルダと、前記第三のターゲット部材ホルダにおける、前記第三のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第三のマグネトロンを備え、前記基板に対する前記複数の第三のマグネトロンそれぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第一のマグネトロンそれぞれの位置、および前記基板に対する前記複数の第二のマグネトロンそれぞれの位置と異なるとしてもよい。
【0038】
本態様の発光パネルの製造方法では、第一のマグネトロンスパッタ装置、第二のマグネトロンスパッタ装置、および第三のマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が異なるため、第一の機能層、第二の機能層、および第三の機能層の膜厚分布はそれぞれ異なることになる。したがって、第一の機能層、第二の機能層、および第三の機能層の膜厚分布が共通している場合と比べて、これらの積層膜の膜厚差を低減することができる。
【0039】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の成膜装置は、第一の蒸着装置であり、前記第二の成膜装置は、第二の蒸着装置であるとしてもよい。
【0040】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の蒸着装置は、複数の第一の蒸着源を備え、前記第二の蒸着装置は、複数の第二の蒸着源を備え、前記基板は、前記第一の蒸着装置内に前記複数の第一の蒸着源に対向するように配された後、前記第二の蒸着装置内に前記複数の第二の蒸着源に対向するように配され、前記基板に対する前記複数の第一の蒸着源それぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第二の蒸着源それぞれの位置と異なるとしてもよい。
【0041】
本態様の発光パネルの製造方法では、第一の蒸着装置と第二の蒸着装置で蒸着源の配置が異なるため、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布は異なることになる。したがって、第一の機能層と第二の機能層の膜厚分布が共通している場合と比べて、これらの積層膜の膜厚差を低減することができる。
【0042】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の第一の蒸着源は、第一の間隔で等間隔に配されており、前記複数の第二の蒸着源は、第二の間隔で等間隔に配されており、前記第一の間隔と前記第二の間隔は等しいとしてもよい。
【0043】
ここで、本発明の別の態様として、前記第一の機能層と前記第二の機能層は、積層方向に隣接しているとしてもよい。
【0044】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の機能層にはさらに、第三の機能層が含まれており、第三の蒸着装置で第三の機能層を形成する第三工程を含み、前記第一の発光領域における第三の機能層の膜厚は、前記第二の発光領域における第三の機能層の膜厚より厚いとしてもよい。
【0045】
ここで、本発明の別の態様として、前記第三の蒸着装置は、複数の第三の蒸着源を備え、前記基板に対する前記複数の第三の蒸着源それぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第一の蒸着源それぞれの位置、および前記複数の第二の蒸着源それぞれの位置と異なるとしてもよい。
【0046】
本態様の発光パネルの製造方法では、第一の蒸着装置、第二の蒸着装置、および第三の蒸着装置で蒸着源の配置が異なるため、第一の機能層、第二の機能層、および第三の機能層の膜厚分布はそれぞれ異なることになる。したがって、第一の機能層、第二の機能層、および第三の機能層の膜厚分布が共通している場合と比べて、これらの積層膜の膜厚差を低減することができる。
【0047】
ここで、本発明の一態様である発光パネルの製造に用いられる成膜システムは、基板と、前記基板上に複数の機能層を積層してなる発光機能層とを備え、前記複数の機能層が第一および第二の機能層を含む発光パネルの製造に用いられる成膜システムであって、前記第一の機能層を形成する第一のマグネトロンスパッタ装置、および前記第二の機能層を形成する第二のマグネトロンスパッタ装置を含み、前記第一のマグネトロンスパッタ装置は、第一のターゲット部材と、主面に配された前記第一のターゲット部材を保持する第一のターゲット部材ホルダと、前記第一のターゲット部材ホルダにおける、前記第一のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第一のマグネトロンを備え、前記第二のマグネトロンスパッタ装置は、第二のターゲット部材と、主面に配された前記第二のターゲット部材を保持する第二のターゲット部材ホルダと、前記第二のターゲット部材ホルダにおける、前記第二のターゲット部材が配された主面の反対側の面に配された複数の第二のマグネトロンを備え、前記基板は、前記第一のマグネトロンスパッタ装置内に前記第一のターゲット部材に対向するように配された後、前記第二のマグネトロンスパッタ装置内に前記第二のターゲット部材に対向するように配され、前記基板に対する前記複数の第一のマグネトロンそれぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第二のマグネトロンそれぞれの位置と異なるとしてもよい。
【0048】
ここで、本発明の一態様である発光パネルの製造に用いられる成膜システムは、基板と、前記基板上に複数の機能層を積層してなる発光機能層とを備え、前記複数の機能層が第一および第二の機能層を含む発光パネルの製造に用いられる成膜システムであって、前記第一の機能層を形成する第一の蒸着装置、および前記第二の機能層を形成する第二の蒸着装置を含み、前記第一の蒸着装置は、複数の第一の蒸着源を備え、前記第二の蒸着装置は、複数の第二の蒸着源を備え、前記基板は、前記第一の蒸着装置内に前記複数の第一の蒸着源に対向するように配された後、前記第二の蒸着装置内に前記複数の第二の蒸着源に対向するように配され、前記基板に対する前記複数の第一の蒸着源それぞれの位置は、前記基板に対する前記複数の第二の蒸着源それぞれの位置と異なるとしてもよい。
<実施の形態1>
ここでは、発光パネルとして表示パネルを例に挙げて説明する。
【0049】
−表示装置100の概略−
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係る表示パネル105を含む表示装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図1(a)に示されるように、表示装置100は、制御回路101と、メモリ102と、走査線駆動回路103と、データ線駆動回路104と、画素回路が行列状に配置された表示パネル105を備える。表示パネル105は、例えばエレクトロルミネッセント(以下、「EL」と記す。)表示パネルであり、有機EL表示パネルとしてもよい。
【0050】
図1(b)は、表示パネル105が有する一画素回路の回路構成及びその周辺回路との接続を示す図である。
図1(b)に示されるように、画素回路208は、ゲート線200と、データ線201と、電源線202と、スイッチングトランジスタ203と、駆動トランジスタ204と、陽極205と、保持容量206と、陰極207を含んで構成される。スイッチングトランジスタ203及び駆動トランジスタ204は、薄膜トランジスタ素子である。
【0051】
周辺回路は、走査線駆動回路103とデータ線駆動回路104を備える。また、スイッチングトランジスタ203、駆動トランジスタ204、及び保持容量206により駆動部209が構成されている。
【0052】
データ線駆動回路104から供給された信号電圧は、スイッチングトランジスタ203を介して駆動トランジスタ204のゲート端子へと印加される。駆動トランジスタ204は、そのデータ電圧に応じた電流をソース−ドレイン端子間に流す。この電流が陽極205へと流れることにより、その電流に応じた発光輝度が得られる。
【0053】
−表示パネル105の概略構成−
図2は、表示パネル105の要部を模式的に示す部分断面図である。
図2に示されるように、TFT基板1上に層間絶縁膜2が形成されており(本明細書では、TFT基板1上に層間絶縁膜2が形成されたものを「基板120」と定義する。)、この層間絶縁膜2上に、陽極3がサブピクセル単位で行列状に形成されている。X軸方向に隣り合う3つのサブピクセルの組み合わせにより1画素(ピクセル)が構成される。
【0054】
各陽極3上には透明導電層4が形成され、それぞれの透明導電層4を覆うように層間絶縁膜2上には正孔注入層5が形成されている。
【0055】
正孔注入層5上であって、隣り合う陽極3の間に相当する領域のそれぞれには、バンク6が形成されている。バンク6で規定された各領域内において正孔注入層5上には、正孔輸送層7が形成され、正孔輸送層7上には所定の色の発光層8が積層されている。
【0056】
さらに、発光層8上には、電子輸送層9、陰極11、及び封止層12が、それぞれバンク6で規定された領域を超えて隣接するサブピクセルのものと連続するように形成されている。
【0057】
−透明導電層と正孔注入層が共通の膜厚分布を有する場合−
表示パネル105の特徴部分を説明する前に、当該表示パネル105の比較対象として、二つの機能層が共通の膜厚分布を有する表示パネルについて説明する。ここでは、二つの機能層として透明導電層および正孔注入層を例に挙げて説明する。
【0058】
図3は、表示パネル1050の微小領域Aおよび微小領域Bのそれぞれにおける、透明導電層と正孔注入層の膜厚を模式的に示す図である。微小領域AおよびBは、積層方向の一方から発光機能層を見たときに、積層方向に対して交差する方向に離間した領域であり、例えば、複数の画素からなる領域である。
【0059】
透明導電層および正孔注入層が共通の膜厚分布を有しているため、
図3に示されるように、微小領域Aにおける透明導電層4Aの膜厚は、微小領域Bにおける透明導電層4Bの膜厚よりも厚く、同様に、微小領域Aにおける正孔注入層5Aの膜厚も、微小領域Bにおける正孔注入層5Bの膜厚よりも厚くなっている。
【0060】
共通の膜厚分布を有する透明導電層と正孔注入層が積層されることで、機能層単体の場合に比べ、微小領域Aと微小領域Bには、より大きな膜厚差が生じている。
【0061】
次に、共通の膜厚分布を有する透明導電層と正孔注入層が積層されることにより、輝度にどのような影響を与えるかを実験により検証した。ただし、ここでは、ガラス基板上に透明導電層および正孔注入層の二層のみを積層し実験を行った。透明導電層として酸化インジウム亜鉛(IZO)を、正孔注入層として酸化タングステン(WOx)を用いた。
【0062】
図4は、透明導電層および正孔注入層のそれぞれの膜厚分布、並びにこれらを積層した積層膜の輝度分布を示す図である。
図4(a)は、透明導電層の膜厚分布を示し、
図4(b)は、正孔注入層の膜厚分布を示す。
図4(a)、(b)に示されるように、透明導電層および正孔注入層のそれぞれの膜厚は一定ではなく、ムラが生じているのがわかる。
図4(a)、(b)では、色の濃い部分が膜厚の厚い部分を示している。
【0063】
また、
図4(a)と
図4(b)を比較すると、透明導電層および正孔注入層のそれぞれの膜厚分布が共通していることがわかる。
【0064】
図4(c)は、透明導電層および正孔注入層の積層膜の輝度分布を示す。
図4(c)に示されるように、透明導電層および正孔注入層の積層膜には、膜厚ムラに対応した輝度ムラが発生していることがわかる。この原因として、微小領域Aと微小領域Bとで光学距離や抵抗値が異なっていることが考えられる。したがって、積層膜の膜厚差が大きくなるほど、輝度ムラも大きくなると考えられる。
【0065】
このように、共通の膜厚分布を有する透明導電層と正孔注入層が積層されること、つまり、透明導電層と正孔注入層の積層膜の表面に膜厚差が生じることで、輝度ムラが発生するという問題が生じる。
【0066】
−透明導電層と正孔注入層が異なる膜厚分布を有する場合−
続いて、表示パネル105の特徴部分を説明する。表示パネル105では、透明導電層と正孔注入層が異なる膜厚分布を有している。
【0067】
図5は、表示パネル105の微小領域aおよび微小領域bのそれぞれにおける、透明導電層と正孔注入層の膜厚を模式的に示す図である。微小領域aおよびbは、積層方向の一方から発光機能層を見たときに、積層方向に対して交差する方向に離間した領域であり、例えば、複数の画素からなる領域である。
図5に示されるように、微小領域aにおける正孔注入層5aの膜厚が、微小領域bにおける正孔注入層5bの膜厚よりも厚くなっているのに対し、微小領域aにおける透明導電層4aの膜厚は、微小領域bにおける透明導電層4bの膜厚よりも薄くなっている。
【0068】
つまり、透明導電層4と正孔注入層5の膜厚分布が異なっており、透明導電層4における膜厚の薄い部分4aの上に、正孔注入層5における膜厚の厚い部分5aが積層され、透明導電層4における膜厚の厚い部分4bの上に、正孔注入層5における膜厚の薄い部分5bが積層されている。
【0069】
このため、表示パネル105では、透明導電層および正孔注入層のそれぞれに膜厚の厚い部分と薄い部分が存在しているにも拘らず、微小領域aと微小領域bにおける、透明導電層および正孔注入層の積層膜の膜厚の差は、透明導電層および正孔注入層のそれぞれが共通の膜厚分布を有する場合に比べて、低減される。したがって、表示パネル105における輝度ムラを低減することができる。
【0070】
−表示パネル105の各部構成−
TFT基板1は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料の基板本体上に、TFT、配線部材、および当該TFTを被覆するパッシベーション膜など(図示せず)を形成した構成である。基板本体は有機樹脂フィルムであってもかまわない。
【0071】
層間絶縁膜2は、TFT基板1の表面段差を平坦に調整するために設けられ、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料で構成されている。
【0072】
陽極3は、アルミニウム(Al)、あるいはアルミニウム合金で形成されている。なお、陽極3は、例えば、銀(Ag)、銀とパラジウムと銅との合金、銀とルビジウムと金との合金、モリブデンとクロムの合金(MoCr)、ニッケルとクロムの合金(NiCr)等で形成されていても良い。
【0073】
透明導電層4は、製造過程において陽極3が自然酸化するのを防止する保護層として機能する。透明導電層4の材料は、発光層8で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)やIZOなどが好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
【0074】
正孔注入層5は、正孔を発光層8に注入する機能を有する。例えば、WOx、酸化モリブデン(MoOx)、酸化モリブデンタングステン(MoxWyOz)などの遷移金属の酸化物を含む金属酸化物から形成される。
【0075】
バンク6は、樹脂等の有機材料で形成されており絶縁性を有する。有機材料の例として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。バンク6は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク6はエッチング処理、ベーク処理等がされることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。
【0076】
正孔輸送層7は、例えば、特開平5−163488号に記載のトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体である。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物で形成される。
【0077】
発光層8が有機発光層である場合には、例えば、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンエチレン、ポリ3−ヘキシルチオフェンやこれらの誘導体などの高分子材料や、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0078】
電子輸送層9は、例えば、特開平5−163488号公報のニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体で形成される。
【0079】
なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記電子輸送層を構成する材料に、Na,Ba,Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしてもよい。
【0080】
陰極11は、例えば、ITOやIZO等で形成される。
【0081】
封止層12は、発光層8等が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、酸化シリコン(SiO),窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、炭化ケイ素(SiC),炭素含有酸化シリコン(SiOC),窒化アルミニウム(AlN),酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の材料で形成される。
【0082】
−成膜システムの構成−
成膜システムは、例えば複数の真空成膜装置を含んで構成される。ここでは、真空成膜装置としてマグネトロンスパッタ装置を例に挙げて説明する。
【0083】
まず、マグネトロンスパッタ装置の構成について簡単に説明する。
図6(a)は、マグネトロンスパッタ装置内の構成を示す図である。マグネトロンスパッタ装置(不図示)内には、
図6(a)に示されるように、基板21とターゲット部材22が対向配置されている。基板21は基板ホルダ23により保持されている。ターゲット部材22は、ターゲット部材ホルダ24により保持され、当該ターゲット部材ホルダ24における、ターゲット部材22が保持された面と反対側の面には、複数のマグネトロン25が配置されている。
【0084】
図6(b)は、基板21、ターゲット部材22、および複数のマグネトロン25の配置関係を模式的に示す図である。
図6(b)に示されるように、基板21に対して、複数のマグネトロン25は、等間隔に配置されている。
【0085】
図6(c)は、基板21上に形成された機能層26を模式的に示す図である。ただし、この機能層26は、複数のマグネトロンが
図6(b)で示すように配置されたマグネトロンスパッタ装置で成膜されたものである。
【0086】
図6(b)と
図6(c)から、機能層26における、マグネトロン25が配置された部分に相当する部分26aの膜厚が、マグネトロン25が配置されていない部分に相当する部分26bの膜厚より厚くなっていることがわかる。つまり、機能層26には、複数のマグネトロンの配置に起因した膜厚ムラが生じている。
【0087】
このことを踏まえた上で、二つのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が共通している場合と、マグネトロンの配置が異なる場合とで、どのような差異が生じるのか説明する。
【0088】
−二つのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が共通している場合−
まず、二つのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が共通している場合について説明する。
【0089】
成膜システムとして、ここでは、インライン型の成膜システムを想定し、当該システムは、第一の成膜装置として透明導電層を成膜する第一のマグネトロンスパッタ装置、および第二の成膜装置として正孔注入層を成膜する第二のマグネトロンスパッタ装置を含むものとする。
【0090】
図7(a)は、第一のマグネトロンスパッタ装置における、基板31、ターゲット部材32、および複数のマグネトロン35の配置関係を模式的に示す図である。
図7(b)は、第一のマグネトロンスパッタ装置により基板31上に形成された透明導電層36を模式的に示す図である。
【0091】
図7(c)は、第二のマグネトロンスパッタ装置における、基板41、ターゲット部材42、および複数のマグネトロン45の配置関係を模式的に示す図である。
図7(d)は、第二のマグネトロンスパッタ装置により基板41上に形成された正孔注入層46を模式的に示す図である。
【0092】
図7(a)および
図7(c)は
図6(b)と、
図7(b)および
図7(d)は
図6(c)とそれぞれ同一である。つまり、第一のマグネトロンスパッタ装置と第二のマグネトロンスパッタ装置のマグネトロンの配置は同一あり、これらのマグネトロンスパッタ装置により形成された透明導電層36および正孔注入層46の膜厚分布は共通している。
【0093】
このため、
図7(b)、(d)、(e)に示されるように、透明導電層36上に正孔注入層46が積層されると、透明導電層および正孔注入層の積層膜56の最も厚い部分と最も薄い部分との差th3は、透明導電層36および正孔注入層46のそれぞれの最も厚い部分と最も薄い部分との差th1、th2より大きくなる。したがって、表示パネルにおける輝度ムラも大きくなる。
【0094】
−二つのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が異なる場合−
次に、二つのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が異なる場合について説明する。
【0095】
図8(a)は、第一のマグネトロンスパッタ装置における、基板61、ターゲット部材62、および複数のマグネトロン65の配置関係を模式的に示す図である。
図8(b)は、第一のマグネトロンスパッタ装置により基板61上に形成された透明導電層66を模式的に示す図である。
【0096】
図8(c)は、第二のマグネトロンスパッタ装置における、基板71、ターゲット部材72、および複数のマグネトロン75の配置関係を模式的に示す図である。
図8(d)は、第二のマグネトロンスパッタ装置により基板71上に形成された正孔注入層76を模式的に示す図である。
【0097】
図8(a)と
図8(c)を比較すると、ターゲット部材62に対する複数のマグネトロン65それぞれの位置は、ターゲット部材72に対する複数のマグネトロン75それぞれの位置と異なっていることがわかる。具体的には、
図8(a)と
図8(c)では、複数のマグネトロンが等間隔で配置されているという点で共通しているが、
図8(c)では、
図8(a)に示す隣り合うマグネトロンの間のそれぞれの領域に当たる部分にマグネトロンが配置されている。つまり、
図8(a)と
図8(c)では、マグネトロンの配置が半周期ずれている。このため、基板に対向したターゲット部材面付近における磁界の分布は、
図8(a)と
図8(c)で異なり、その結果、第一および第二のマグネトロンスパッタ装置のそれぞれにより成膜された透明導電層66および正孔注入層76の膜厚分布も異なることになる。具体的には、
図8(b)と
図8(d)を対比すると明らかなように、透明導電層66の膜厚の厚い部分66aに対応する正孔注入層76の部分76aの膜厚が薄く、透明導電層66の膜厚の薄い部分66bに対応する正孔注入層76の部分76bの膜厚が厚くなっている。
【0098】
したがって、これらを積層した場合には、
図8(e)に示される、積層膜86の最も厚い部分と最も薄い部分との差th4は、
図7(e)に示される、積層膜56の最も厚い部分と最も薄い部分との差th3より小さくなる。つまり、それぞれのマグネトロンスパッタ装置におけるマグネトロンの配置を一致させないことで、積層膜86の膜厚差が低減される。特にここでは、それぞれのマグネトロンスパッタ装置でマグネトロンの配置が半周期ずれているため、透明導電層66の最も厚い部分に、正孔注入層76の最も薄い部分が積層され、透明導電層66の最も薄い部分に、正孔注入層76の最も厚い部分が積層される。このため、積層膜86の膜厚差が最も小さくなる。
【0099】
なお、正孔注入層の平均膜厚は、透明導電層における最も膜厚の厚い部分と最も膜厚の薄い部分との差と同程度が好ましい。積層膜の膜厚ムラをより低減することができるからである。また、正孔注入層が透明導電層に対してかなり薄い場合であっても、積層膜の膜厚ムラを低減することができる。正孔注入層の膜厚分布は、当該正孔注入膜の厚みによらず生じるためである。
【0100】
以上のように、積層膜86の膜厚差が低減されるため、表示パネルにおける輝度ムラも低減される。
【0101】
−製造方法−
続いて、表示パネル105の製造工程を例示する。
図9,10は、表示パネル105の製造工程の一例を示す図である。なお、
図9,10では、表示パネル105の一部を抜き出して模式的に示している。
【0102】
まず、TFT基板1上に形成された層間絶縁膜2上にAg薄膜を成膜する。Ag薄膜の成膜には、マグネトロンスパッタリング法や真空蒸着法などの真空成膜法を用いることができる。
【0103】
次に、Ag薄膜上にITO薄膜を成膜する。ITO薄膜の膜厚は、例えば10〜50nmであり、ITO薄膜の成膜には、マグネトロンスパッタリング法や真空蒸着法などの真空成膜法を用いることができる。例えば、
図8(a)に示した第一のマグネトロンスパッタ装置を用いてもよい。
【0104】
Ag薄膜及びITO薄膜を成膜後、例えばフォトリソグラフィでパターニングすることにより、行列状に陽極3及び透明導電層4を形成する(
図9(a)参照)。
【0105】
次に、WOx、又はMoxWyOzを含む組成物を用いて、行列状に陽極3及び透明導電層4が形成されたTFT基板1の表面に、WOx、MoOx、又はMoxWyOzの正孔注入層5を成膜する(
図9(b)参照)。正孔注入層5の膜厚は、例えば5〜40nmであり、正孔注入層5の成膜には、マグネトロンスパッタリング法や真空蒸着法などの真空成膜法を用いることができる。例えば、
図8(c)に示した第二のマグネトロンスパッタ装置を用いてもよい。
【0106】
次に、正孔注入層5上に絶縁性有機材料からなるバンク材料層を形成する。バンク材料層の形成は、例えば塗布等により行うことができる。その後、バンク材料層上に所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させた後、余分なバンク材料層を現像液で洗い出す。これによりバンク材料層のパターニングが完了する。以上で、バンク6が完成する(
図10(a)参照)。
【0107】
次に、バンク6で区画された各領域内に、例えばインクジェット法により、正孔輸送層の材料を含む組成物インクを滴下し、その組成物インクを乾燥させて正孔輸送層7を形成する。
【0108】
正孔輸送層7形成後、バンク6で区画された各領域内に、例えばインクジェット法により、発光材料を含む組成物インクを滴下し、その組成物インクを乾燥させて発光層8を形成する(
図10(b)参照)。
【0109】
なお、正孔輸送層7および発光層8は、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等により形成しても良い。
【0110】
発光層8形成後、電子輸送層9および陰極(例えばITO薄膜からなる)11を形成し、さらに陰極11上に封止層12を形成する(
図10(c)参照)。電子輸送層9および陰極11の成膜には、マグネトロンスパッタリング法や真空蒸着法などの真空成膜法を用いることができる。
【0111】
以上のように本実施の形態の表示パネル105によれば、透明導電層4と正孔注入層5の膜厚分布が一致していないので、透明導電層4の最も膜厚の厚い部分と、正孔注入層5の最も膜厚の厚い部分が一致せずにずれて積層されている。同様に、透明導電層4の最も膜厚の薄い部分と、正孔注入層5の最も膜厚の薄い部分がずれて積層されている。
【0112】
したがって、透明導電層4および正孔注入層5の積層膜における膜厚ムラを低減することができるので、結果として、表示パネルにおける輝度ムラを低減することができる。
<変形例>
以上、本発明に係る発光パネルについて、表示パネルを例に挙げて実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限られないことは勿論である。例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)微小領域aにおける正孔注入層の膜厚が、微小領域bにおける正孔注入層の膜厚より薄く、かつ、微小領域aにおける透明導電層の膜厚が、微小領域bにおける透明導電層の膜厚より厚くなっていてもよい。
(2)マグネトロンスパッタ装置により成膜される二つの機能層として透明導電層および正孔注入層を例に挙げて説明したが、他の機能層(例えば、陽極、電子輸送層、陰極等)であってもよい。また、これら二層の機能層は、必ずしも積層方向に隣接している必要はなく、離れていてもよい。ただし、その場合には、二つの機能層の間に、インクジェット等の塗布法により形成される機能層を介在させない必要がある。塗布法により形成される機能層の形状には、当該機能層の下層の形状が反映されないからである。
【0113】
ここでは、互いに離れた二つの機能層として陽極および正孔注入層を例に挙げて説明する。
図11は、表示パネル1051の微小領域aおよび微小領域bのそれぞれにおける、陽極および正孔注入層の膜厚を模式的に示す図である。
図11に示される表示パネル1051では、微小領域aにおける陽極3aの膜厚が、微小領域bにおける陽極3bの膜厚よりも薄くなっているのに対し、微小領域aにおける正孔注入層5aの膜厚は、微小領域bにおける正孔注入層5bの膜厚よりも厚くなっている。このように、二つの機能層が互いに離れていたとしても、マグネトロンの配置が異なる別々のマグネトロン装置を用いてこれらを成膜することで、積層膜の膜厚ムラを低減することができる。
【0114】
また、二層の機能層に限定する必要はなく、三層以上の機能層についても同様のことが言える。ここでは、三つの機能層として透明導電層、正孔注入層、および陽極を例に挙げて説明する。
【0115】
図12は、表示パネル1052の微小領域aおよび微小領域bのそれぞれにおける、透明導電層、正孔注入層、および陽極の膜厚を模式的に示す図である。
【0116】
図12に示される表示パネル1052では、微小領域aにおける正孔注入層5aの膜厚が、微小領域bにおける正孔注入層5bの膜厚よりも厚くなっているのに対し、微小領域aにおける透明導電層4aの膜厚は、微小領域bにおける透明導電層4bの膜厚よりも薄くなっている。加えて、微小領域aにおける陽極3aの膜厚は、微小領域bにおける陽極3bの膜厚よりも厚くなっている。
【0117】
続いて、
図13(a)は、第一のマグネトロンスパッタ装置における、基板61、ターゲット部材62、および複数のマグネトロン65の配置関係を模式的に示す図である。
図13(b)は、第二のマグネトロンスパッタ装置における、基板71、ターゲット部材72、および複数のマグネトロン75の配置関係を模式的に示す図である。
図13(c)は、陽極の成膜に用いられる第三のマグネトロンスパッタ装置における、基板91、ターゲット部材92、および複数のマグネトロン95の配置関係を模式的に示す図である。
【0118】
図13(a)は
図8(a)と同一であり、
図13(b)は
図8(c)と同一である。つまり、
図13(a)と
図13(b)では、マグネトロンの配置が半周期ずれており、
図13(b)では、
図13(a)に示す隣り合うマグネトロンの間のそれぞれの領域に当たる部分にマグネトロンが配置されている。
【0119】
また、
図13(a)と
図13(c)では、マグネトロンの配置が1/4周期ずれている。したがって、ターゲット部材92に対する複数のマグネトロン95それぞれの位置が、ターゲット部材62に対する複数のマグネトロン65それぞれの位置、およびターゲット部材72に対する複数のマグネトロン75それぞれの位置と異なっている。
【0120】
マグネトロンの配置が全てのマグネトロンスパッタ装置で異なるので、これらの装置で成膜された機能層の積層膜の膜厚差を低減することができる。
【0121】
なお、ここでは、三つの機能層として透明導電層、正孔注入層、および陽極を例に挙げて説明したが、他の機能層であってもよい。
(3)正孔輸送層および電子輸送層はそれぞれ一層として説明したが、それぞれ二層以上からなるとしてもよい。この場合、それぞれの正孔輸送層の膜厚分布が異なっていてもよいし、それぞれの電子輸送層の膜厚分布が異なっていてもよい。これにより、これらの積層膜の膜厚ムラを低減することができる。
(4)複数のマグネトロンは等間隔に配置されていたが、必ずしも等間隔である必要はない。複数の機能層のそれぞれにおける、膜厚の最も厚い部分同士、最も薄い部分同士が積層されないよう、各マグネトロンスパッタ装置において複数のマグネトロンが配置されていればよい。したがって、膜厚分布が複数の機能層で一致しなければ、どのような配置であってもよい。例えば、複数のマグネトロンを徐々に間隔が広くなるように配置してもよいし、また、複数のマグネトロンを斜めに配置してもよい。また、マグネトロンの形状は、四角形に限らず、円形でも多角形でもよい。
(5)真空成膜装置としてマグネトロンスパッタ装置を例に挙げて説明したが、蒸着装置、CVD装置、スパッタ装置、メッキ装置等を用いてもよい。ここでは、蒸着装置を用いた場合について簡単に説明する。蒸着装置内には、複数のマグネトロンの代わりに、基板に対向して複数の蒸着源が例えば等間隔に配置されている。この蒸着装置を用いて成膜された機能層における、蒸着源に相当する領域の膜厚は、隣り合う蒸着源の間に相当する領域の膜厚より厚くなる。つまり、成膜された機能層には、蒸着源の配置に起因した膜厚ムラが生じる。したがって、蒸着源の配置が異なる別々の蒸着装置を用いて各機能層を成膜することで、積層膜の膜厚ムラを低減することができる。
(6)微小領域aおよびbのそれぞれは、複数の画素からなる領域と説明したが、1画素からなる領域としてもよいし、一画素よりも小さい領域としてもよい。また、微小領域aおよびbのそれぞれは、画素を基準にした領域でなくてもよい。さらに、微小領域微小領域aおよびbは、機能層の積層方向に対して交差する方向に隣接した領域であってもよい。
(7)表示装置100の外観を示さなかったが、例えば、
図14に示すような外観を有する。
(8)発光パネルとして表示装置用の表示パネルを例に挙げて説明したが、照明装置用の発光パネルであってもよい。
(9)第一の成膜装置として第一のマグネトロンスパッタ装置、第二の成膜装置として第二のマグネトロンスパッタ装置を例に挙げ、二つの層を別々のマグネトロンスパッタ装置により成膜する場合について説明したが、二つの層を同一のマグネトロンスパッタ装置で成膜してもよい。
【0122】
この場合、同一のマグネトロンスパッタ装置内におけるマグネトロンの配置を層毎に変更すること等により、異なる膜厚分布を有する膜を成膜することができる。
(10)第一の成膜装置が第一のCVD装置であり、第二の成膜装置が第二のCVD装置であってもよいし、第一の成膜装置が第一の蒸着装置であり、第二の成膜装置が第二の蒸着装置であってもよい。
【0123】
また、マグネトロンスパッタ装置、蒸着装置、CVD装置、スパッタ装置、およびメッキ装置のうち2つ以上を組み合わせた成膜システムであってもよい。例えば、第一および第二の成膜装置の一方がマグネトロンスパッタ装置であり、他方が蒸着装置であってもよいし、一方がCVD装置であり、他方が蒸着装置であってもよいし、一方がマグネトロンスパッタ装置であり、他方がCVD装置であってもよい。