(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745068
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】塩化マグネシウムアルコール付加物とそれから得られる触媒成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20150618BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-530726(P2013-530726)
(86)(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公表番号】特表2013-542278(P2013-542278A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2011066956
(87)【国際公開番号】WO2012041944
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年9月5日
(31)【優先権主張番号】61/404,518
(32)【優先日】2010年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10183309.3
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ,ジアンニ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンゲリスティ,ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ガッディ,ベネデッタ
(72)【発明者】
【氏名】ファイト,アンナ
【審査官】
上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−194662(JP,A)
【文献】
特開昭61−062505(JP,A)
【文献】
特開昭61−195102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/02
C08F 4/60−4/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−MgCl2と、
−アルコールROH(式中、RはC2−C10炭化水素基であり、MgCl2とのモル比が0.5〜5の範囲で存在する)と;
−8〜22個の炭素原子をもつ脂肪族カルボン酸またはその金属塩(付加物の総重量に対して15質量%未満の量で存在する)とを含む固体付加物。
【請求項2】
RがC1−C8の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基から選ばれる請求項1に記載の固体付加物。
【請求項3】
1モルのMgCl2に対するアルコールのモル数が0.8〜4の範囲である請求項1または2に記載の固体付加物。
【請求項4】
上記脂肪族カルボン酸またはその金属塩を0.1から10%未満の量で含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体付加物。
【請求項5】
上記脂肪族カルボン酸とその金属塩が、C12−C20個の炭素原子をもつカルボン酸から選ばれる請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体付加物。
【請求項6】
上記塩の金属がNaとLi、K、Mg、Ca、Zn、Alから選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体付加物。
【請求項7】
上記金属がNaとK、Mg、Alから選ばれる請求項6に記載固体付加物。
【請求項8】
上記脂肪族カルボン酸が線状分子鎖カルボン酸から選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項9】
上記脂肪族カルボン酸の金属塩が、ステアリン酸Mgとオレイン酸Mgとパルミチン酸Mgから選ばれる請求項1〜8のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項10】
球状または楕円体状である上記請求項のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項11】
MgCl2とアルコールROH(式中、RはC1−C10炭化水素基であり、MgCl2に対するモル比が0.5〜5の範囲で存在する)を含む固体付加物の製造方法であって、
−MgCl2と上記アルコールROHに、8〜22個の炭素原子をもつ脂肪族カルボン酸またはその金属塩を、MgCl2とROHと上記酸または塩の総重量に対して15%未満の量で接触させ;
−この系を、MgCl2とアルコールと上記酸または金属塩を含む液相が得られるまで加熱し;
−上記液相を、これに非混和の液状媒体に乳化させ;
−このように得られたエマルションを、不活性の冷却液体と接触させて、乳化相を球状粒子状に固化させることを含む方法。
【請求項12】
上記脂肪族カルボン酸または金属塩が、付加物の総重量に対して0.1から10%未満の範囲の量で使用され、それがC12−C20個の炭素原子をもつカルボン酸から選ばれる請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項の付加物を元素の周期律表のIV〜VI族の所定の遷移金属化合物に反応させて得られるオレフィン重合用触媒成分。
【請求項14】
請求項13の触媒成分をAlアルキル化合物と、必要なら外部電子供与体化合物の存在下で反応させて得られる、α−オレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)の重合用触媒。
【請求項15】
請求項14の触媒の存在下で行われるオレフィンの重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定量の長鎖脂肪族カルボン酸またはこれらの金属塩を含む塩化マグネシウムアルコール付加物に関する。本発明の付加物は、低粒度及び/又は狭い粒度分散であるオレフィン重合用触媒成分の製造をするための前駆体として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
特定の重合技術において、特にスラリー重合において、低粒度重合触媒の使用がますます求められるようになってきた。事実、液体流中で固体粒子を例えば垂直上向きに輸送する場合、その輸送効率は液体の性質と固体粒子の性質に依存する。上向きに移動する液体流中での球状粒子の輸送を考えると、この際の液体と固体粒子の間の速度差(「スリップ速度」)は、その粒子のいわゆる「末端速度」に等しい。この末端速度Vtは下記式のように定義される:
【0003】
【数1】
【0004】
式中、
d=球体の直径
g=重力加速度、
ρ=流体の密度、
ρ
s=球体の密度、
A=πd2/4=球の投影面積、
C
d=抵抗係数
【0005】
特定の液体と粒子密度では、粒子径が減少すると末端速度が低下することは明らかである。即ち、粒子径の低下は、粒子と輸送性液体の間の速度差を低下させ、輸送をより効率的とする。
【0006】
一方、レプリカ現象を考えると、ポリマー粒子の大きさは元となる触媒粒度の関数である。したがって、このため触媒成分が低粒度であることが望ましい。
【0007】
この種の触媒を製造する一つの方法は、低粒度の触媒前駆体から出発することである。
【0008】
MgCl
2アルコール付加物とこれのオレフィン重合用触媒成分用の触媒前駆体としての利用は、当業界ではよく知られていることである。
【0009】
WO98/44009には、改善された特性をもち特定のエックス線回折スペクトルを示す、即ち、2θ回折角が5°〜15°の範囲に、3つの主な回折ラインが、回折角2θが8.8±0.2°と9.4±0.2°と9.8±0.2°に存在し、その最も強い回折ラインが2θ=8.8±0.2°であり、他の二つの回折ラインの強度が、少なくともこの最も強い回折ラインの0.2倍であるエックス線回折スペクトルを示すMgCl
2アルコール付加物が開示されている。このような付加物は式MgCl
2・mEtOH・nH
2Oで表わすことができる。なお式中、mは2.2〜3.8であり、nは0.01〜0.6である。これらの付加物は、特異な条件下で、例えば長い反応時間、不活性希釈剤の不存在、あるいは気体状アルコールの使用などでの条件下でのMgCl
2とアルコールとの間の反応などの特定の製造方法で得られる。
【0010】
次いでこの溶融付加物を、それと非混和の油と混合してエマルションを形成し、次いで冷たい液状炭化水素で急冷する。
【0011】
この付加物(前駆体)の粒度は、エマルション系に加わるエネルギーの関数であり、他の全ての特徴(タンクや攪拌器の形状、油の種類)を一定に保つことは、攪拌強度に逆比例的に関係している。したがって、低粒度前駆体を製造するには、多量のエネルギーが必要で、特に高速攪拌が必要となる。あるいは、WO05/039745に記載のように、適当な小粒径分散相粒子をもつエマルションを製造する特別な装置を使用することもできる。いずれの場合もプロセスが複雑となるため、低粒度触媒前駆体を得る簡単な方法を見つけることが望ましいであろう。EP−A−086288のような、いろいろな塩化マグネシウムとアルコールからなる触媒前駆体の製造において、ソルビタンステアレート型の非イオン性界面活性剤が、塩化マグネシウムの溶解助剤として使用されている。しかしながら塩化マグネシウムアルコール固体触媒前駆体の製造において、これらの使用は得られる粒度に影響を与えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO98/44009
【特許文献2】WO05/039745
【特許文献3】EP−A−086288
【発明の概要】
【0013】
本出願人は、特定量の特定カルボン酸またはこれらの金属塩を含む塩化マグネシウム・アルコール系の付加物が、このようなカルボン酸またはその塩を使用せずに前駆体の製造に用いられるのとまったく同一の条件を用いて得ることができることを見出した。また、上記の酸またはその金属塩が上記付加物の粒度分散を狭めるのにも効果的であることが判明した。
【0014】
本発明は、したがって8〜22個の炭素原子をもつ脂肪族カルボン酸またはその金属塩を含む、MgCl
2とアルコール(式中、RはC
1−C
10炭化水素基であり、MgCl
2に対して0.5〜5で、付加物の総重量に対して15質量%未満のモル比で存在する)を含むROH固体付加物に関する。
【0015】
好ましくはRはC
1−C
2の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基から選ばれ、より好ましくはC
1−C
4線状炭化水素基から選ばれる。エタノールが特に好ましい。好ましくは、MgCl
2のモル当りのアルコールのモル数は0.8〜4の範囲であり、より好ましくは1〜3.5の範囲である。アルコール/Mgモル比は1.5〜3であることが特に好ましい。
【0016】
この脂肪族カルボン酸またはその金属塩は、付加物の総重量に対して好ましくは0.1から10%未満の範囲の量で存在し、より好ましくは0.1〜7%未満、特に0.3〜5質量%の範囲の量で存在する。
【0017】
金属塩を使用する場合、その金属が元素の周期律表(新版)の1〜13族に属す金属から選ばれることが好ましい。中でも、NaとLi、K、Mg、Ca、Zn、Alが好ましく、NaとK、Mg、Al塩が最も好ましい。
【0018】
この脂肪族カルボン酸とその金属塩は、C
12−C
20個の炭素原子、より好ましくはC
14−C
20個の炭素原子をもつカルボン酸から選ばれることが好ましい。中でも、線状分子鎖カルボン酸が好ましい。これらの酸は飽和酸であっても不飽和酸であってもよい。非制限的な例としては、オレイン酸やステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、アラキドン酸があげられる。金属塩の具体的例は、ステアリン酸Mgやオレイン酸Mg、パルミチン酸Mg、相当するカルシウムやカリウム、ナトリウム、アルミニウム、亜鉛塩である。特に好ましいのは、市販のステアリン酸Mgである。これらの酸は、純粋な状態で、より多くはいろいろな比率の混合物としても市販されている。特に好ましいのは、市販のパルミチン酸とステラリン酸とオレイン酸の混合物である。相当する塩も市販されているが、上記の酸を鹸化して得ることもできる。
【0019】
本発明の付加物または前駆体はいろいろな方法で製造可能である。ある方法では、上記付加物が、MgCl
2とアルコールに、付加物の総重量に対して15質量%未満の上記酸または塩を加えて得ることができる。上記の方法は、適当量の塩化マグネシウムとカルボン酸(またはその金属塩)とアルコールを接触させ、この系を過熱して熱溶融した付加物とし、次いで系を迅速に冷却して、好ましくは球状の粒子に固化させることからなる。
【0020】
塩化マグネシウムとカルボン酸(金属塩)とアルコールの接触は、溶融した付加物に非混和で化学的に不活性な不活性液体の存在下で行ってもよく、不存在下で行ってもよい。不活性液体が存在する場合、所望量のアルコールが蒸気状で加えられることが好ましい。これにより、生成する付加物の均一性を高めることができる。この付加物を分散させる液体は、この溶融付加物に非混和で化学的に不活性であるいずれの液体であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素または脂環式炭化水素やシリコーン油が使用可能である。ワセリン油などの脂肪族炭化水素が特に好ましい。MgCl
2粒子とアルコールとカルボン酸金属塩を混合して液相とし、この混合物を、付加物が溶融状態に到達する温度で加熱する。この温度は付加物の組成に依存するが、一般的には100〜150℃の範囲である。上述のように、温度は、付加物が完全に溶融する温度に維持する。好ましくは、この付加物を攪拌条件下で、溶融状態に5時間以上、好ましくは10〜150時間、より好ましくは20〜100時間維持する。
【0021】
いろいろ異なる方法で、この付加物の適当な形状の離散固体状粒子を得ることができる。好ましい方法の一つは、非混和性で化学的に不活性な液状媒体中に付加物を乳化させ、このエマルションを不活性の冷却液体に接触させて急冷し(油相)し、このようにして付加物の球状粒子を固化させることである。
【0022】
もう一つの方法では、前もって作製したMgCl
2−nROH付加物(式中、nは0.5〜5である)を、この付加物に非混和性の油相の存在下でカルボン酸(金属塩)に接触させる。この付加物が溶融し二つの非混和性の液相が生成するまで温度を上げる。この時点で、上述の冷却液体でもって同じ急冷工程を実施できる。
【0023】
固化後に粒子を回収し、炭化水素系溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させる。
【0024】
したがってこれは、本発明のもう一つの目的であるMgCl
2とアルコールROH(式中、RはC
1−C
10炭化水素基であり、MgCl
2に対するモル比が0.5〜5で存在する)を含む固体付加物の製造方法であって、
−MgCl
2と上記アルコールROHに、8〜22個の炭素原子をもつ脂肪族カルボン酸またはその金属塩を、MgCl
2とROHと上記酸または塩の総重量に対して15%未満の量で接触させ;
−この系を、MgCl
2とアルコールと上記酸または金属塩を含む液相が得られるまで加熱し;
−上記液相を、これに非混和の液状媒体中で乳化させ;
−このように得られたエマルションを、不活性の冷却液体と接触させて、乳化相を球状粒子状に固化させることを含む方法を構成する。
【0025】
これらの方法により、球状または楕円体状の付加物粒子を得ることができる。このような球状粒子の最大径と最小径の比は1.5より小さく、好ましくは1.3より小さい。
【0026】
本発明の付加物は、広い範囲の粒度で得ることができ、例えば、5〜150ミクロンの範囲、好ましくは10〜100ミクロン、より好ましくは12〜80ミクロンの範囲の粒度で得ることができる。この粒子径は、乳化工程(攪拌の程度)あるいは噴霧工程の間に加えられるエネルギーに厳密に依存するが、上記カルボン酸金属塩の使用により、同条件で製造されたカルボン酸金属塩を含まない付加物より低粒度の付加物粒子を得ることができることが明らかとなった。当業界で公知の非イオン性界面活性剤を用いると、このような粒度低下を得ることができない。
【0027】
本発明の付加物、特にカルボン酸の存在下で得られたものは、上記カルボン酸を含まない付加物と比較して、類似のP50値と狭い粒度分布(PSD)をもつことが判明した。PDSの幅は、次式から計算できる。
【0029】
式中、P90は全粒子の90%がこの値よりも小さな直径を持つ直径であり;P10は全粒子の10%がこの値よりも小さな直径を持つ直径であり;P50は全粒子の90%がこの値よりも小さな直径を持つ直径である。本発明の付加物は、さらに少量の水を、好ましくは3質量%未満の量の水を含んでいてもよい。水の量は、反応物の水分率に特に注意を払うことで制御できる。MgCl
2とEtOHはともに吸湿性が高く、その構造中に水を取り込みやすい。このため、反応物の水分率が比較的高い場合には、別途成分として水が添加されなくても、最終のMgCl
2−EtOH付加物が過剰に高い水分率を持つことがある。固体または流体中の水分率を制御または減少させる方法は公知である。MgCl
2中の水分率は、例えばオーブン中高温下での乾燥により、あるいは水反応性の化合物と反応させることにより低下させることができる。例えば、MgCl
2から水を除くのにHCl流を使うことができる。これらの流体から水を、いろいろな方法で除去でき、例えば蒸留で、あるいは流体をモレキュラーシーブなどの水除去可能な物質に接触させて除くことができる。この注意をさえ払えば、本発明の付加物を製造するための塩化マグネシウムとエタノールと無機化合物の反応を、上に報告された方法で実施できる。
【0030】
本発明の付加物は、元素周期律表のIV〜VI族の一つの遷移金属化合物と反応させてオレフィン重合用触媒成分に変換される。遷移金属化合物の中で、特に好ましいのは式Ti(OR)
nX
y−nのチタン化合物(式中、nは0〜yであり;yはチタンの電荷数;Xはハロゲン、Rは1〜8個の炭素原子を持つアルキル基またはCOR基である)である。中でも、特に好ましいのは、少なくとも一個のTi−ハロゲン結合を持つチタン化合物であり、例えば四塩化チタンまたはハロゲンアルコレートである。好ましい具体的チタン化合物は、TiCl
3、TiCl
4、Ti(OBu)
4、Ti(OBu)Cl
3、Ti(OBu)
2Cl
2、Ti(OBu)
3Clである。この反応は、この付加物を冷たいTiCl
4(一般的には0℃)に懸濁して行うことが好ましい。次いで、このようにして得られる混合物を80〜130℃まで加熱し、この温度で0.5〜2時間維持する。その後、過剰のTiCl
4を除いて固体成分を回収する。TiCl
4での処理は一回以上行うことができる。
【0031】
特に立体特異的なオレフィン重合触媒を製造する場合、遷移金属化合物と付加物との間の反応を、電子供与体化合物(内部供与体)の存在下で行うことができる。上記電子供与体化合物は、エステルとエーテル、アミン、シラン、ケトンから選ばれてもよい。特に、モノカルボン酸またはポリカルボン酸のアルキルエステルやアリールエステルが、例えば安息香酸やフタル酸系、マロン酸、コハク酸のエステルが好ましい。このようなエステルの具体例は、n−ブチルフタレートとジ−イソブチルフタレート、ジ−N−オクチルフタレート、ジエチル2,2−ジイソプロピルサクシネート、ジエチル2,2−ジシクロヘキシル−サクシネート、エチルベンゾエート、p−エトキシエチルベンゾエートである。ジオールのエステルもUS7,388,061に開示されている。この群の中では、2,4−ペンタンジオールジベンゾエート誘導体が特に好ましい。また次式の1,3−ジエーテルも好ましく使用できる。
【0033】
式中、RとR
I、R
II、R
III、R
IV、R
Vは、相互に同じであっても異なっていてもよく、水素または1〜18個の炭素原子をもつ炭化水素基であり、R
IVとR
VIIは、同じであっても異なっていてもよく、水素であってはならないこと以外はR〜R
Vと同じ意味を持ち;R〜R
VII基の一つ以上が、結合して環を形成していてもよい。内部のR
VIとR
VIIがC
1−C
4アルキル基から選ばれる1,3−ジエーテルが特に好ましい。
【0034】
この電子供与体化合物は、一般的には、含まれるマグネシウムに対して1:4〜1:60のモル比で存在している。
【0035】
固体触媒成分の粒子が実質的に同じ大きさと形状を持つことが好ましく、本発明の付加物が一般的には5〜150μmであることが好ましい。この好ましい触媒成分の製造方法により、カルボン酸金属塩が液体反応剤と溶媒に溶解し、たがってこれが最終の固体触媒成分中にもはや存在しないことが判明した。
【0036】
遷移金属化合物との反応の前に、本発明の付加物を、アルコール含量を減少させて付加物自体の空孔率を増加させることを目的とする脱アルコール化にかけてもよい。この脱アルコール化は、既知の方法で、例えばEP−A−395083に記載の方法で実施できる。この脱アルコール化処理の程度によっては、1モルのMgCl
2に対するアルコール含量が通常0.1〜2.6モルである部分的に脱アルコール化された付加物が得られることもある。この脱アルコール化処理の後で、上述の方法で付加物を遷移金属化合物と反応させて固体触媒成分を得る。
【0037】
本発明の固体触媒成分の表面積(BET法)は一般的には10〜500m
2/g、好ましくは20〜350m
2/gであり、総空孔率(BET法)は0.15cm
3/gより大きく、好ましくは0.2〜0.6cm
3/gである。最終触媒成分中のチタン化合物の量は0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0038】
本発明の触媒成分は、Alアルキル化合物と反応してα−オレフィンCH
2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)重合用の触媒を形成する。このアルキルAl化合物は、上記の式AlR
3−zX
z(式中、RはC
1−C
15炭化水素アルキル基であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、zは0≦z<3の数字である)で表わされる。このAlアルキル化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物から選ばれることが好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムの中から選ばれることが好ましい。必要なら上記トリアルキルアルミニウム化合物とともに、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウムハイドライド、またはAlEt
2ClやAl
2Et
3Cl
3などのアルキルアルミニウムセスキクロリドを使用することもできる。
【0039】
Al/Ti比は1より大きく、一般的には50〜2000の範囲である。
【0040】
この重合系で、電子供与体化合物(外部供与体)を使用することができ、これは上に開示の内部供与体として使用可能な化合物と同一であっても異なっていてもよい。内部供与体がポリカルボン酸のエステル、特にフタール酸エステルである場合には、この外部供与体は、式R
a1R
b2Si(OR
3)
c(式中、aとbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数、(a+b+c)の合計は4であり;R
1とR
2とR
3は、1〜18個の炭素原子をもつアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基である)で表わされる少なくとも一個のSi−OR結合シラン化合物から選ばれることが好ましい。aが1で、bが1、cが2、R
1とR
2のうち少なくとも一つが3〜10個の炭素原子をもつ分岐状のアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選ばれ、R
3がC
1−C
10アルキル基、特にメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このように好ましいケイ素化合物の例には、メチルシクロヘキシルジメトキシシランやジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが含まれる。Moreover、aが0で、cが3、R
2が分岐状のアルキルまたはシクロアルキル基、R
3がメチルであるケイ素化合物も好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシランやt−ブチルトリメトキシシラン、テキシルトリメトキシシランである。
【0041】
テトラヒドロフランなどの環状エーテルと上記の式の1,3ジエーテルも外部供与体として使用できる。
【0042】
上述のように、本発明の成分とこれらから得られる触媒は、式CH
2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子を持つ炭化水素基である)で表されるオレフィンの(共)重合の用途に用いられる。
【0043】
本発明の触媒は、先行技術に知られるオレフィン重合プロセスのいずれで用いることもできる。これらは、例えば希釈剤として不活性炭化水素系溶媒を用いるスラリー重合で使用でき、あるいは反応媒体として液体モノマー(例えば、プロピレン)を用いるバルク重合で使用できる。また、これらは、一台以上の流動床反応器または機械攪拌床反応器中で運転される気相重合プロセスで使用することもできる。
【0044】
この重合は、一般的には20〜120℃の温度で行われ、好ましくは40〜80℃の温度で行われる。重合を気相で行う場合は、運転圧力は、一般的には0.1〜10MPaであり、好ましくは1〜5MPaである。バルク重合の場合は、運転圧力は一般的には1〜6MPaであり、好ましくは1.5〜4MPaである。
【0045】
本発明の触媒は、広範囲のポリオレフィン製品の製造に極めて有用である。製造可能なオレフィン系ポリマーの具体例には、高密度エチレンポリマー(HDPE、密度が0.940g/ccより大きい)、例えばエチレンホモポリマーやエチレンと3〜12個の炭素原子をもつα−オレフィンのコポリマー;エチレンと一種以上の3〜12個の炭素原子を含み、エチレン由来単位のモル含量が80%を越えるα−オレフィンのコポリマーからなる線状低密度のポリエチレン(LLDPE、密度が0.940g/ccより小さい)や極低密度や超低密度のポリエチレン(VLDPEとULDPE、密度が0.920g/ccあるいは0.880g/ccより小さい);アイソタクチックポリプロピレンと、プロピレンとエチレン及び/又は他のα−オレフィンからなりプロピレン由来単位の含量が85質量%を越える結晶性のコポリマー;プロピレンと1−ブテンからなり1−ブテン由来単位の含量が1〜40質量%であるコポリマー;また結晶性のポリプロピレンマトリックスと、プロピレンとエチレン及び/又は他のα−オレフィンとのコポリマーからなる非晶相とを含む異相コポリマーがあげられる。
【0046】
特に、上記の付加物から得られる触媒成分が小直径のポリマー粒子を形成し、このためスラリープロセスの制御を容易にさせることが判明した。
【0047】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、なんら本発明を制限するものではない。
【0048】
特性評価
下に報告する性質は、以下の方法で決定した:
【0049】
キシレン溶解性画分(XS)
25℃でのキシレンへの溶解度を以下の方法で決定した。約2.5gのポリマーと250mlのo−キシレンを、冷却器と還流冷却器を備えた丸底フラスコに入れ、窒素下で維持した。得られた混合物を135℃に加熱し、約60分間攪拌を続けた。最終溶液を連続的に攪拌しながら25℃まで冷却させ、濾過した。次いで濾液を窒素流中140℃で気化させて一定重量とした。上のキシレン可溶性分画の含量を、元の2.5グラムに対する百分率で表わした。
【0050】
付加物と触媒の
粒度中央値
「マルバーン・インストルメント2600」装置を用いて、単色レーザー光の光学回折の原理による方法で決定した。この
粒度中央値をP50とする。P10とP90も、この方法で決定した。
【0051】
粒度分布(
スパン:幅)は、次式で計算した。
【0053】
なお、式中、P90は全粒子の90%がこの値よりも小さな直径を持つ直径であり;P10は全粒子の10%がこの値よりも小さな直径を持つ直径であり;P50は全粒子の
50%がこの値よりも小さな直径を持つ直径である。
【0054】
マスターサイザー2000粒子径分布測定装置は、通常は3つのユニットに分けられる:
1)光学ユニット;二個のレーザー光源(He/Ne赤色レーザー、出力:5mW、波長:633nmと、青色(ダイオード)レーザー、波長:450nm)を備えた、大きさが0.02〜2000μの範囲の個体の測定に適した光学的コアユニット:
2)サンプリングユニット;内部容量、遠心ポンプ、攪拌器、出力が40Wの超音波プローブを備えた50〜120mLの体積用の「ヒドロ2000S」自動サンプリングユニット:
3)PCコンソール;ウインドウ2000またはNT用のマルバーン・プロフェッショナルソフトウェアを使用するポータブルLGペンチウム・シリーズ製品。ミー光学理論を用いるデータ加工方法(試料の屈折率=1.596;n−ヘプタンの屈折率=1.39)。
【0055】
方法
測定のために、n−ヘプタン(+2g/lの静電防止剤スパン80)を分散剤として用いる。測定セルに分散剤を入れ、ポンプ/攪拌器速度を2205RPMに設定する。次いでバックグラウンドを測定する。次いで専用の固体またはスラリーの投入具を用いて試料を入れる。その時点で、PS測定に先立って試料を30秒間の超音波処理にかける。その後、測定を行う。
【0056】
ポリマーの平均粒度
ASTM−E−11−87に準拠した六個セットの篩(番号:5、7、10、18、35、200)を備えたコンバッション・エンジニアリング・エンデコット社製のタイラー試験篩振とう機RX−29−B型を用いて測定した。
【0057】
カルボン酸金属塩含量の測定
Mg以外の金属塩は、「ICP分光計ARLアキュリス」を用いて誘導結合プラズマ発光分光法による金属含量の分析で決定した。「フラキシ」白金るつぼ中に、0.1÷0.3グラムの触媒と3グラムのメタホウ酸リチウム/四ホウ酸リチウムの1/1混合物(付加物の製造にLiステアレートを使用する場合は四ホウ酸ナトリウム)を精秤して、試料を作成した。このるつぼを弱いブンゼン炎中に入れて燃焼させ、次いで数滴のKI溶液を添加した後に、特別な装置「クライス社のフラキシ」に入れて完全燃焼させる。残渣を5%v/vHNO
3溶液で捕集し、ICP測定にかける。最終の固体中の金属含量と初期の量と製造に用いたカルボン酸金属塩の種類から、回収率(%)を計算でき、これにより、この固体中のカルボン酸金属塩の含量を計算できる。
【0058】
マグネシウム塩を用いる場合は、得られる固体付加物のフーリエ変換モードで200.13MHzで作動するブルカーAV200装置による1H−NMRスペクトルにより測定を行った。
【0059】
60℃〜150℃(内温:130℃)の真空中で最小量の窒素流下(圧力が0.2barの真空)で37時間処理してエタノールが実質的に完全に除かれ脂肪酸/塩濃度が最大となった付加物試料を用いて、この試験を行う。次いで、この脱アルコール化された前駆体をD−アセトンとD−トリフルオロ酢酸に溶解し、H−NMRを分析する。
【実施例】
【0060】
実施例1
5リットルの反応器に、557gの無水MgCl
2と805gのEtOHと6.8gのステアリン酸Mg(アルドリッチ26454グレード)を入れた。温度を125℃にまで上げ、この温度で8時間維持した。その後、乳化装置中で、得られた溶融物を、125℃で連続的に投入されたROL‐OB55ATワセリン油で乳化させた。攪拌速度を2800rpmに上げ、この値に5分間維持しながら、このようにして得られたエマルションを、冷ヘキサンを含む攪拌反応器中に500rpmで攪拌しながら連続的に供給した。
【0061】
次いで、この固体球状の触媒前駆体を結晶化させ、洗浄、乾燥して、組成が0.45%のステアリン酸Mg、57.5%のEtOH、10.3%のMg、30%のCl、1,1%のH
2Oであり、P50が27.3ミクロンである材料を得た。
【0062】
実施例2
652gの無水MgCl
2と919gのEtOH、23.6gのステアリン酸Mg(アルドリッチ26454グレード)を用いた以外は、実施例1で開示のものと同一の方法を繰り返した。得られた固体球状の触媒前駆体の組成は、1.3%のステアリン酸Mg、57%のEtOH、10.3%のMg、30.2%のCl、0,8%のH
2Oであり、P50は23.8ミクロンであった。
【0063】
実施例3
557gの無水MgCl
2と805gのEtOH、34gのステアリン酸Mg(アルドリッチ26454グレード)を使用した以外は、実施例1で開示のものと同一の方法を、繰り返した。得られた固体球状の触媒前駆体の組成は、2.4%ステアリン酸Mgと55%のEtOH、10.3%のMg、30.3%のCl、1.3%のH
2Oであり、P50は21.9ミクロンであった。
【0064】
実施例4
557gの無水MgCl
2と805gのEtOH、68gのステアリン酸Mg(アルドリッチ26454グレード)を使用した以外は、実施例1で開示のものと同一の方法を、繰り返した。得られた固体球状の触媒前駆体の組成は、55.3%のEtOH、10.2%のMg、29.3%のCl、H
2Oが1,25%、ステアレートが4.0%であり、P50は20.9ミクロンで、粒度分布は1.15であった。
【0065】
実施例5
130gのROL−OB55AT油と、30gの57質量%のEtOHを含む付加物MgCl
2/EtOH、0.6gのステアリン酸を、4ピッチのブレードタービンを備えた250ccの円筒容器中に室温で投入した。次いで、攪拌下で(200RPM)で温度を125℃にまで上げ、このレベルで30分間維持した。この後、このエマルションを1.6Lの冷イソヘキサンを含む500RPMで作動している攪拌器を備えた3L容器に移した。エマルションの移送後、容器内温度を約30分かけて室温まで上げ、室温で2時間維持した。この後、得られた固体をフレッシュなイソヘキサンで洗浄し、乾燥して、マルバーン・マスターサイザー2000で分析した。この粒度分布では、P50が40.3ミクロンであり、粒度分布が1.48であった。
【0066】
実施例6
ステアリン酸の量を0.6gから0.4gに代えて、実施例1に記載のものと同一の方法を、繰り返した。この場合に得られた固体の粒度分布は、P50が73.9ミクロンであり、粒度分布が1.70であった。
【0067】
比較例7
ステアリン酸Mgを使用しなかった以外は実施例1で開示のものと同一の方法を繰り返した。得られた固体球状の触媒前駆体の組成は、56.1%のEtOH、10.8%のMg、31.2%のCl、0,45%のH
2Oであり、P50は32.7ミクロン、粒度分布は1.23であった。
【0068】
比較例8
ステアリン酸Mgに代えてソルビタンステアレート(スパン65)が用いた、即ち653gの無水MgCl
2と921gのEtOHと39gのスパン65(アルドリッチシグマ85547)を用いた以外は実施例3で開示のものと同一の方法を繰り返した。得られた固体球状の触媒前駆体の組成は、58.2%のEtOH、10.5%のMg、30.6%のClであり、P50は34.8ミクロンであった。
【0069】
比較例9
ステアリン酸を添加しない以外は実施例5に記載の方法と同じ方法でMgCl
2系球状前駆体を製造したところ、P50が83.1ミクロンで粒度分布が1.77である固体が形成された。
【0070】
実施例10と比較例11
固体触媒成分の製造
実施例4と比較例7で得られた前駆体を、以下の方法で触媒成分に変換した:
攪拌器を備えた2リットルのスチール反応器に、0℃で1000cm
3のTiCl
4を投入した。
【0071】
室温攪拌下で30gの上記付加物を、内部供与体としてある量のジイソブチルフタレート(DIBP)とともに添加して、Mg/供与体モル比を8とした。全体を90分かけて100℃にまで加熱し、これらの条件を60分間維持した。攪拌を停止し、温度を100℃に維持しながら15分後に、沈積した固体から液相を分離した。1000cm
3のTiCl
4を加え、この混合物を110℃で10分間加熱し、攪拌条件下(500rpm)で上記条件に30分間維持して、この固体をさらに処理した。次いで攪拌を停止し、温度を110℃に維持しながら15分後に、沈積した固体から液相を分離した。この固体を、さらに二度、1000cm
3のTiCl
4を添加し、この混合物を120℃で10分間加熱し、攪拌条件(500rpm)下で同条件に30分間維持する処理を行った。次いで、攪拌を停止し、温度を120℃に維持しながら15分後に、沈積した固体から液相を分離した。その後、60℃で1500cm
3の無水ヘキサンで3回洗浄し、室温で1000cm
3の無水ヘキサンで3回洗浄した。次いで得られた固体触媒成分を真空中窒素環境下で、40〜45℃の範囲の温度で乾燥させた。
【0072】
プロピレン重合試験
攪拌器と圧力計、温度計、触媒供給システム、モノマー供給ライン、恒温ジャケットを備えた4リットルのスチール製オートクレーブを使用した。この反応器に、0.01グラムの固体触媒成分と0.76gのTEAL、0.06gのシクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3.2lのプロピレン、2.0lの水素を投入した。この系を攪拌下で10分かけて70℃に加熱し、これらの条件下で120分間維持した。重合終了後に、未反応モノマーをすべて除いてポリマーを回収し、真空中で乾燥させた。その結果を表1に示す。
【0073】
比較例12
500mLのジャケット付き攪拌反応器に、100mLのROL−OB55AT油を加え、次いで99gの無水MgCl
2を投入した。MgCl
2結晶が均一にこの油に分散して、混合と発熱挙動の取り扱いが良くなった後で、激しく混合しながらこの反応器に143gのEtOHを投入した。発熱反応の結果、内温が室温から約80℃に自然に上がるが、この注意深く密栓されたジャケット付き反応器を125℃にまで加熱してMgCl
2−アルコール錯体を溶融させ、これをこの温度で5時間維持した。その後、この溶融物を定量的に、すでに1000mLのROL−OB55AT油を含んでいるエマルションステージ(内径が1.8mmの薄いアルミニウム製移送パイプを保持するスチールヘッドを持つ強力3lt反応器)に125℃で移送した。次いで、1500rpmで運転された攪拌器により、エマルションを急冷ステージに送るのに必要な時間(約2〜3分)この溶融物をワセリン油で乳化させた。1分間攪拌後、この乳化反応器に窒素圧(0.3bar)をかけて、このエマルジョン状混合物を細管を通して7リットルの−7℃の冷ヘキサンを含む10リットル反応器に連続的に移動させ、温度が0℃を越えないようにしながら、この溶融材料を急冷して球状に固化させた。次いでこの固体球状の触媒前駆体を結晶化させ、洗浄・乾燥させて88グラムの、表2に示す組成と大きさの材料を得た。
【0074】
実施例13〜20
MgCl
2とエタノールに加えて、表2に示す量のステアレート誘導体も加えた以外は、比較例11に開示されている条件と同じ条件で全ての試験を行った。同表に、得られた固体の物理的性質と化学的性質も示す。
【0075】
実施例13〜15と実施例9、比較例12で製造した支持体を、実施例10に記載の方法と同じ方法で固体触媒成分の製造に使用し、次いで一般的な方法でプロピレンの重合に用いた。ポリマー平均粒度(APS)に関する結果を表3に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
Mg=ステアリン酸マグネシウム
Ca =ステアリン酸カルシウム
Al
3d=アルミニウムモノヒドロキシジステアレート
Al
3t=ステアリン酸アルミニウム
Na=ステアリン酸ナトリウム
Zn=ステアリン酸亜鉛
Li=ステアリン酸リチウム
K=ステアリン酸カリウム
【0079】
【表3】