(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ナノ多孔質粒子と中空ラテックス粒子とを含んでなる製品であって、前記中空ラテックス粒子が剛性の内側シェルと接着性の外側シェルとを含んでなり、また前記中空ラテックス粒子が互いに直接結合して連続マトリックスを形成し、前記ナノ多孔質粒子が前記中空ラテックス粒子の連続マトリックス中に分散している製品。
【背景技術】
【0002】
エネルギー効率の良好な建造物はますます重要になってきており、行政からの要求のテーマの1つにさえなりつつある。このため、建築業では、改善された断熱性を提供し且つ建築環境及び建築用途での使用に適した断熱材を見つける必要性がかつてないほど増大している。
【0003】
軽量のナノ多孔質材料は高断熱性である。例えば、エーロゲル材料は、大部分の建築用断熱材より優れた断熱性を示す。しかしながら、エーロゲル材料を含めたナノ多孔質材料は現在、諸事情により建築用途での使用が実用的ではない。例えば、断熱構造建築物で使用するのに十分なサイズの構造体としてナノ多孔質材料を製造するのは困難である。厳しい建築環境に耐える十分な機械的完全性を有するナノ多孔質断熱材の製造もまた困難である。建築用途での使用に適した断熱製品にナノ多孔質材料の利点を取り入れようと様々な研究努力がなされている。
【0004】
米国特許出願公開第2008/0287561号明細書、米国特許第5137927号明細書及び国際公開第2007/146945パンフレットでは、エーロゲル材料を含有する高分子発泡体が開示されている。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0080949号明細書では、有機/無機ハイブリッドエーロゲル粒子を、そのエーロゲル粒子に共有結合するポリマー又はオリゴマーバインダと共に含んでなる組成物が開示されている。
【0006】
国際公開第03/064025号パンフレットでは、水性バインダ中の疎水性エーロゲル粒子の基層を含んでなるエーロゲル複合材料が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0077738号明細書では、少なくとも3種類の成分:疎水性エーロゲル粒子、非多孔質中空粒子及び水性バインダ系を含んでなる物品が開示されている。この非多孔質中空粒子は、典型的には、1μm以上で1mm以下の直径を有する。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0003284号明細書では、バインダマトリックス中にエーロゲル材料を含有する層と、バインダマトリックス中にポリエチレンテレフタレート繊維を含有する層とを含んでなる物品が開示されている。
【0009】
米国特許第5656195号明細書では、少なくとも1種の有機又は無機バインダにより互いに結合したシリカエーロゲル粒子を含有し、更に層状ケイ酸塩及び/又は粘土鉱物を含有するモールディングが開示されている。
【0010】
ナノ多孔質材料を含有する断熱製品の製造技術を進歩させ続けて最適な多機能性と性能を提供する製品を更に開発することが望ましい。例えば、製品の断熱性を更に上昇させるためにそれ自体もナノ多孔質であるマトリックス中にナノ多孔質粒子を含んでなる断熱製品を提供することが望ましい。様々な形状をとることが可能な製品及びそのような製品をフライス加工又は切断の必要なく多様な形状で形成する方法はより望ましい。より一層望ましいのは、ナノサイズのセルを形成する際に制御が困難な場合がある発泡を必要としない製品である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
試験法番号の日付が異なるものでない限り、試験法は、本明細書の優先日の時点で最新の試験法のことである。試験法に言及する際には、試験機関及び試験法番号の両方に言及する。本明細書では以下の試験法省略記号を適用する。ASTMとはアメリカ材料試験協会(American Society for Testing and Materials)のことであり、ENとは欧州規格(European Norm)のことであり、DINとはドイツ規格協会(Deutsches Institute fur Normung)のことであり、ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standards)のことである。
【0019】
「複数」とは2つ以上を意味する。「及び/又は」は「及び、あるいは代案として」を意味する。特に記載がない限り、範囲は全て端点を含む。
【0020】
「長さ」、「幅」及び「厚さ」は、製品の3つの互いに直角な寸法である。長さは、長さ、幅及び厚さの最大寸法と同等の大きさを有する寸法である。厚さは、長さ、幅及び厚さの最小値に等しい大きさを有する。幅は、長さ、厚さ、長さと厚さの両方に等しい大きさ、あるいは長さと厚さの中間の大きさを有する。
【0021】
「機能的に〜非含有である(functionally free of)」とは、この記載がある場合、本明細書において具体的に定義されていない限り、濃度が本発明の製品の物理的性質に大きな影響を与え得る濃度より低いことを意味する。例えば、機能的にコーティング非含有であるナノ多孔質粒子とは、コーティングの存在が、ナノ多孔質粒子を含有する本発明の製品の物理的性質に大きな影響を及ぼさないことを意味する。「機能的に〜非含有である」という表現の定義の範囲には、「〜を含有しない(不在を意味する)」も含まれる。
【0022】
「粒子」とは、5ミリメートル(mm)未満の最大寸法を有する全ての形状の物体のことである。
【0023】
本発明で使用するナノ多孔質粒子は、1ミクロン未満、好ましくは500ナノメートル(nm)以下、より一層好ましくは250nm以下、より一層好ましくは100nm以下、更に一層好ましくは70nm以下の断面寸法を有する空洞又は細孔がその内部に画定されている粒子である。典型的には、ナノ多孔質粒子の平均細孔断面直径は5nm以上である。ナノ多孔質粒子の平均細孔断面直径は、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)(Brunauer-Emmett-Teller)法に従い、バレット・ジョイナー・ヘンダ(Barrett- Joyner-Henda)法を用いて集めた脱着曲線データを使用した計算で求める(K.S.W.Sing et al., Pure & Appl. Chem., Vol. 57, No. 4, pp. 603-619 (1985)を参照のこと)。細孔径及び等温線の分類はIUPAC規格に準拠する。
【0024】
ナノ多孔質粒子は、有機、無機又は有機材料と無機材料とのハイブリッドになり得る。望ましくは、ナノ多孔質粒子は無機ナノ多孔質粒子である。ナノ多孔質粒子は、潜在的な共有結合反応性(共有結合を形成しやすい反応性)を有する有機成分非含有になり得て、また望ましくは有機成分を全く含有しない。
【0025】
適切なナノ多孔質粒子には、エーロゲル、キセロゲル、クリオゲル、ゼオライト、乾燥アルコゲル、熱分解法シリカ、有機熱可塑性及び/又は架橋ナノ多孔質粒子並びにメソ構造気泡材料が含まれる。無機エーロゲル材料はおそらく、本発明での使用に適した最も良く知られたナノ多孔質材料である。無機エーロゲル材料には、ゾルゲル法で調製するようなシリカ、アルミナ、チタニア、セリア等の金属酸化物から成るものが含まれる。ケイ素(Si)系又はアルミニウム(Al)系エーロゲル複合材料の2つは、そのようなより広く使用されている材料である。本発明のナノ多孔質粒子として使用するための一般的且つ特に望ましいエーロゲル材料は二酸化ケイ素(SiO
2)エーロゲルである。
【0026】
典型的には、本発明での使用に適したナノ多孔質粒子は、4mm以下、好ましくは2mm以下の最大寸法を有する。同時に、典型的には、本発明で使用するナノ多孔質粒子は5μm以上、好ましくは50μm以上、より一層好ましくは200μm以上の最大寸法を有する。広い粒径分布のナノ多孔質粒子及び/又は多峰性若しくは二峰性の粒径分布を有するナノ多孔質粒子の使用は本発明の範囲内であり、狭い粒径分布のナノ多孔質粒子を用いるより容易により高密度で最終製品内にナノ多孔質粒子を充填するのに望ましい場合がある。
【0027】
ナノ多孔質粒子は機能的に機能性コーティング非含有となり得て、また完全に機能性コーティング非含有となり得る。機能性コーティングはナノ多孔質粒子の上に密着層を形成する又はナノ多孔質粒子を包み込み、また被覆前の粒子表面の化学的及び物理的な性質及び特性とは異なる少なくとも1つの化学的又は物理的な性質又は特性をその表面に付与する。例えば、米国特許出願公開第2008/0287561号明細書には、ポリマーマトリックス中にエーロゲル粒子を有する高分子発泡体が記載されているが、このエーロゲル粒子は粒子の外面上に粘着性バリア層を形成することによってポリマーがエーロゲル粒子の細孔に侵入するのを防止する機能性コーティングを含んでなる。したがって、米国特許出願公開第2008/0287561号のエーロゲル粒子は、機能的に機能性コーティング非含有ではない。
【0028】
望ましくは、ナノ多孔質粒子の細孔壁は、粒子の多孔質構造全体にわたっての水分吸収を妨げるための十分に疎水性の表面を有する。粒子の細孔壁が親水性すぎると、バインダ組成物からの水分が粒子の細孔構造に染み込む可能性があり、最終製品の乾燥が困難となり、また細孔ネットワークから抜ける水分の毛管力により粒子が乾燥中に潰れてしまう可能性がある。十分に疎水性の表面を有するとは、米国特許出願公開第2008/0287561号で必要とされるような粒子自体の外面へのコーティング又は処理を必ずしも必要とはせず、むしろそれが粒子内の細孔壁の1つの特性だということである。粒子群を30分間にわたって水浴に供し、粒子を80℃の強制通風炉(forced-air oven)で3時間にわたって乾燥させ、粒子中に残っている水分量を測定することによって、ナノ多孔質粒子が、粒子の多孔質構造全体にわたっての水分吸収を妨げるためのそのような十分に疎水性の表面を有するかを判断する。水分量が乾燥粒子の重量の15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より一層好ましくは2%未満ならば、この粒子の細孔壁は、粒子の多孔質構造全体にわたっての水分吸収を妨げるための十分に疎水性の表面を有する。
【0029】
ラテックス粒子とは、ラテックスとして水性媒体に懸濁させる又は一旦懸濁させた、水性媒体を除去すると互いに直接結合してラテックス粒子の連続的で互いにつながった網目構造(すなわち「マトリックス」)を形成する粒子である。ラテックス粒子は、ラテックス粒子それ自体の成分とは別にいずれのバインダ又は接着剤も使用することなく互いに付着するならば、互いに「直接」結合する。
【0030】
本発明で使用するラテックス粒子は「中空」のラテックス粒子であり、これはこの粒子が、空洞の周りのシェルによって画定される内部空洞を有することを意味する。この空洞の平均直径はラテックス粒子の「内径」である。中空ラテックス粒子の平均内径は概して1000nm以下、より典型的には500nm以下である。同時に、中空ラテックス粒子の平均内径は概して50nm以上、より典型的には200nm以上である。望ましくは、各中空ラテックス粒子は1000nm以下、好ましくは500nm以下で望ましくは20nm以上、好ましくは200nm以上の内径を有する。典型的には、中空ラテックス粒子の空洞体積は、中空ラテックス粒子の総体積の5体積%(vol%)以上、好ましくは10vol%以上である。同時に、中空ラテックス粒子の空洞体積は概して、中空ラテックス粒子の総体積の30vol%以下、より典型的には25vol%以下、より一層典型的には20vol%以下である。
【0031】
各中空ラテックス粒子における空洞を取り囲むシェルは少なくとも剛性の内側シェル(第1シェル)と接着性の外側シェル(第2シェル)とを含んでなる。中空ラテックス粒子を含有しているラテックスが乾燥する際にシェルが中空ラテックス粒子の完全な潰れを防止するのならば、シェルは「剛性」である。シェルは、少なくとも1つのシェルがその外側にあるのならば「内側」であり、「外側」は、粒子の中心からより遠い半径方向距離を有することに対応する。シェルは、粒子を含んでなるラテックスが乾燥する際に毛管作用により粒子が引き寄せられて類似の接着性を有する別の表面と結合可能であるならば「接着性」である。接着性の外側シェルは、典型的には、隣接する中空ラテックス粒子の外側シェルと膜を形成する膜形成材料である。この結果、中空ラテックス粒子は、共有結合、イオン結合又は共有結合若しくはイオン結合することなく(すなわち、いずれの化学結合もせずに)粒子間で結合し得る。シェルは、その外側にシェルがないのならば「外側」である。
【0032】
概して、各中空ラテックス粒子は、最内側シェルとしての役割を果たし且つ中空ラテックス粒子内側の空洞空間を画定するコア材料を含んでなるコアを有する。このコア材料は、剛性の内側シェル(第1シェル)及び接着性の外側シェル(第2シェル)との組み合わせで存在する。コア材料は一般に、概して中空球体の形状をしたアクリルポリマーである。第1シェルと第2シェルとの間には直接、タイコートも存在し得る。欧州特許出願公開第2143742A1号明細書(参照により本明細書に全て組み込まれる)では本発明での使用に適した中空ラテックス粒子が開示されていて、この粒子はコア、剛性の第1シェル、接着性の第2シェル及び第1シェルと第2シェルとの間の任意のタイコートを有する。欧州特許出願公開第2143742号A1明細書では、そのようなラテックス粒子をどのようにして調製するかも開示している。
【0033】
コアは概して50ナノメートル(nm)〜1.0ミクロン、好ましくは100nm〜300nmの非膨張粒径を有する。典型的には、コア材料は、中空ラテックス粒子の総重量の5wt%以下、より典型的には3wt%以下である。同時に、コア材料は概して中空ラテックス粒子の総重量の1wt%以上である。
【0034】
内側シェル(第1シェル)は、望ましくは、50℃より高く、好ましくは75℃より高く、より一層好ましくは90℃以上であり且つ100℃以上になり得るガラス転移温度(Tg)を有するポリマー組成物である。更に、内側シェルが、内側シェルポリマー組成物全体の重量に対して、重合された単位として、15重量%(wt%)〜60wt%、好ましくは20wt%〜50wt%、より好ましくは20wt%〜40wt%の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びこれらの混合物から成る群から選択されるモノマーを含むことが望ましい。内側シェルポリマー組成物は、望ましくは、内側シェルポリマー組成物の重量に対して0.3wt%〜10wt%、好ましくは0.5wt%〜10wt%の(メタ)アクリロニトリル等のマルチエチレン性不飽和モノマーを更に含有する。スチレンが好ましいコモノマーである。1つの望ましい内側シェルポリマー組成物は、内側シェルポリマー組成物の総重量に対して15wt%〜25wt%、好ましくは18wt%〜23wt%、最も好ましくは約20wt%の範囲の濃度でアクリロニトリルを含有するスチレン/アクリロニトリルコポリマーである。内側(第1)シェルは、典型的には、中空ラテックス粒子の総重量の25wt%以上、好ましくは30wt%以上である。同時に、内側(第1)シェルは、典型的には、中空ラテックス粒子の総重量の40wt%以下、好ましくは35wt%以下である。
【0035】
外側シェル(第2シェル)は、望ましくは、−60℃〜50℃、好ましくは−40℃〜30℃、より好ましくは−20℃〜20℃の範囲のTgを有するポリマーから成る。外側シェルポリマーの調製に適したモノマーには、外側シェルポリマーの総重量に対して0.05wt%〜10wt%のマルチエチレン性不飽和モノマーと組み合わせたモノエチレン性不飽和モノマーが含まれる。外側シェルのポリマー組成物の選択は、中空ラテックス粒子の連続マトリックスの形成に適した条件下で互いに付着するポリマー組成物に制限される。適切な外側シェル(第2シェル)ポリマーには、典型的には、アクリル及びメタクリルポリマー並びにコポリマーが含まれる。適切な外側シェルポリマー組成物の一例は、ブチルアクリレート/メチルメタクリレートコポリマーである。
【0036】
中空ラテックス粒子が、内側(第1)シェルと外側(第2)シェルとの間に結合層(tie layer)を含んでなる場合もある。概して、この結合層は外側(第2)シェルに類似したポリマー材料を含んでなり、またアクリレート及びメタクリレートモノマーと共重合したアクリル及び/又はメタクリル酸モノマーを更に含んでなる場合がある。外側(第2)シェルと結合層との組み合わせの重量は、中空ラテックス粒子の総重量に対して典型的には50wt%以上、より典型的には60wt%以上、より一層典型的には65wt%以上である。同時に、外側(第2)シェルと結合層との組み合わせの重量は、中空ラテックス粒子の総重量に対して典型的には90wt%以下、より典型的には80wt%以下である。
【0037】
欧州特許出願公開第2143742A1号明細書の段落17、18に記載の通りに、フォックス式を用いて内側及び外側シェルポリマー組成物のガラス転移温度を計算する。
【0038】
中空ラテックス粒子の組成は、本発明の範囲内で同一又は異なり得る。例えば、単一の中空ラテックス粒子のラテックスを製品の製造に使用し得るが、それぞれが異なる組成を有する中空ラテックス粒子を含有し得る2種以上の異なるラテックスのブレンドを使用しても本発明の製品を製造し得る。望ましくは、製品が異なる組成を有する中空ラテックス粒子を含有する場合、この異なる粒子の接着性外側シェルは互いに結合可能である。
【0039】
本発明で使用する中空ラテックス粒子は、典型的には、水性媒体に分散させている間、典型的には100nm以上、好ましくは250nm以上、概して500nm以上の平均粒径を有する。同時に、中空ラテックス粒子は、典型的には、水性媒体に分散させている間、典型的には4.5ミクロン以下、好ましくは3.5ミクロン以下、より一層好ましくは2.0ミクロン以下の平均粒径を有する。これらのサイズは、pH6未満で非膨張状態で分散させた粒子についてのものである。
【0040】
中空ラテックス粒子は、中空ガラスマイクロスフィアに勝る性能的利点を提供する。本発明で使用する中空ラテックス粒子は、中空ガラスマイクロスフィアで必要とされるような別のバインダを必要とすることなく互いに結合する。加えて、中空ラテックス粒子の密度は、少なくとも部分的に中空ガラスマイクロスフィアより低い。これは中空ラテックス粒子の空洞を取り囲むシェルが主に、好ましくは全てが、ガラスマイクロスフィアの場合の無機材料とは反対に有機ポリマーだからである。低密度の中空ラテックス粒子は、中空ラテックス粒子と同等の濃度で中空ガラスマイクロスフィアを含有する製品より低い密度を有する製品の形成を可能にする。更に、バインダ及び中空充填剤の両方の役割を1つで担う中空ラテックス粒子を使用することにより、中空充填剤を別のバインダに分散させるよりも、最終製品においてナノスケールの空洞をより均質に分布させることができる。
【0041】
本発明の製品は、互いに直接結合して連続マトリックスを形成する中空ラテックス粒子とその中空ラテックス粒子の連続マトリックス中に分散したナノ多孔質粒子とを含んでなる。ラテックス粒子は、粒子の外側シェルを互いに接着させることによって、例えば粒子の外側シェルポリマー組成物間で膜を形成することによって互いに直接結合する。結合したラテックス粒子間では共有結合が不在になり得る。ラテックス粒子とナノ多孔質粒子との間でも共有結合は不在になり得る。典型的には、ナノ多孔質粒子は連続中空ラテックス粒子マトリックス中に機械的に閉じ込められていて、ラテックス粒子への共有結合、イオン結合又は共有結合及びイオン結合の両方を有さない(すなわち、化学結合していない)。
【0042】
本発明の製品は、典型的には、ナノ多孔質粒子を55体積%(vol%)以上、好ましくは70vol%以上、より好ましくは90vol%以上の濃度で含んでなる。同時に、製品は、典型的には、ナノ多孔質粒子を99vol%以下、好ましくは98vol%以下の濃度で含んでなる。Vol%は、製品の総体積に相対的である。
【0043】
本発明の製品は、典型的には、中空ラテックス粒子を1vol%以上、好ましくは5vol%以上の濃度で含んでなる。同時に、製品は、典型的には、中空ラテックス粒子を50vol%以下、好ましくは35vol%以下、より一層好ましくは25vol%以下の濃度で含んでなる。Vol%は、製品の総体積に相対的である。
【0044】
ナノ多孔質粒子に加えて、本発明の製品は更に、中空ラテックス粒子マトリックス中に分散させる追加の添加剤を含み得る。適切な追加の添加剤には、繊維(有機又は無機)、難燃剤、顔料、赤外減衰剤、反射粒子及び紫外線安定剤から成る群から選択される1つ又は2つ以上の材料の組み合わせが含まれる。概して、追加の添加剤の濃度は、製品の総重量に対して5wt%以下である。同時に、本発明は、同追加の添加剤のいずれか1つ又は2つ以上を非含有にもなり得る。更に、本発明は中空ガラスマイクロスフィア非含有になり得て、望ましくは中空ガラスマイクロスフィア非含有である。
【0045】
それ自体が多数のナノスケールの空洞を有するマトリックス中にナノ多孔質粒子を分散させる組み合わせにより、本発明の製品は望ましい低さの熱伝導率を有することになる。本発明の製品は、望ましくは、25ミリワット/メートル・ケルビン(mW/m・K)以下、好ましくは23mW/m・K以下、より一層好ましくは22mW/m・K以下、更に一層好ましくは21.5mW/m・K以下の熱伝導率を有する。熱伝導率はASTM C518に準拠して測定する。
【0046】
本発明の製品の別の望ましい特徴は、製品が低密度製品であることからその取り扱い及び設置が容易となり、またこの製品を取り付ける構造体に大きな重量を加えることなく断熱価値を付与可能なことである。本発明の製品は、典型的には、密度0.13グラム/立法センチメートル(g/cm
3)以下を有する。製品の密度はASTM D1622に準拠して測定する。
【0047】
本発明の製品は、考えられるいずれの形状も有し得る。1つの一般的な形状は、ある長さ、幅及び厚さを有するボードの形状である。しかしながら、本発明の製品は更に、器具又は建物の造りに合わせて嵌め込む及び/又は取り付けるのに適したカスタム形状になり得る。製品は、管又はパイプを断熱するための、管又はパイプの周囲に適用するのに適した中空のチューブになり得る。全ての考えられる形状の製品が本発明の製品の範囲に含まれる。しかしながら、本発明の製品は、5mmより大きい、好ましくは10mm以上であり且つ25mm以上になり得る、製品の重心を通って延びる最小寸法を有する点で膜とは異なる。
【0048】
本発明の製品は驚くほど柔軟である。本発明の製品は、折れたり砕けたりすることなく屈曲可能であるため、典型的なエーロゲル構造体に勝る耐久性上の利点を提供する。本発明の特に望ましい製品は、マンドレルが製品の厚さに等しい直径を有する場合に、製品の表面に対して平行なマンドレルを中心として少なくとも30度、好ましくは少なくとも60度屈曲可能である。
【0049】
本発明の特定の実施形態は更に、ナノ多孔質粒子と結合した中空ラテックス粒子との間に粒子間(interstitial)ナノ空隙を有する。それまでは水性媒体が占めていた空間全てを中空ラテックス粒子が変形して埋めることができないと、中空ラテックス粒子を含有するラテックスの水性媒体が蒸発するにつれて粒子間ナノ空隙が形成される傾向がある。概して、中空ラテックス粒子の外側(第2)層は隣接する中空ラテックス粒子の外側(第2)層と膜を形成し、この膜がそれまでは水性媒体が占めていた空間の大部分を埋める。しかしながら、幾つかの空隙空間が、ナノ多孔質粒子と中空ラテックス粒子との間にナノメートルオーダーのサイズの空隙の形態で残ることは普通である。これらの空隙は粒子間ナノ空隙である。このような粒子間ナノ空隙の存在は、粒子間ナノ空隙を有さない製品より低密度の製品、更にはより低い熱伝導率を有する製品を得るのに寄与することから望ましいものになり得る。
【0050】
本発明の製品が更に、製品の1つ以上の表面上に化粧仕上げ材料(facer material)(又は単純に「化粧仕上げ材(facer)」)を含んでなる場合もある。適切な化粧仕上げ材には、繊維性織布及び不織布シート材料、固体金属、木材及び/若しくはポリマーシート又はこれらの組み合わせが含まれる。適切な繊維状シート材料の例には、紙のシート、スクリム及びガラスマットが含まれる。
【0051】
本発明の製品を、中空ラテックス粒子のラテックスを準備し、ナノ多孔質粒子を準備し、ナノ多孔質粒子をラテックスに分散させ、次に中空ラテックス粒子が互いに結合するようにラテックスを乾燥させて本発明の製品を形成することで製造する。特定の形状の製品を形成させるには、ナノ多孔質粒子を分散させたラテックスをその特定の形状をした鋳型に流し込んでから乾燥させると、得られる製品はその鋳型と同様の形状をとる。この鋳型は特定の厚さの単純なシートになり得て、ラテックスを乾燥させる際にラテックスをボード形状に保持するためボード形状の製品が得られる。鋳型は複雑な形状にもなり得る。例えば、鋳型は、パイプの断熱に適した中空チューブである製品にラテックスを成型するのに十分なものになり得る。鋳型は、特定の器具又は建物の造りに合わせて嵌め込む及び/又は取り付けるためのカスタム形状に本発明の製品を形成するのに適したものになり得る。
【0052】
中空ラテックス粒子は、本発明の製品について上述した通りである。本発明の製品の場合のように、本発明の方法は、この方法のいずれの時点においてもナノ多孔質粒子と中空ラテックス粒子との間に共有結合を有さないものになり得る。
【0053】
本発明の方法は、(本発明の製品で説明したように)追加の添加剤をラテックスの乾燥前にラテックスに分散せることを含み得る。中空ラテックス粒子、ナノ多孔質粒子及び任意の追加の添加剤の濃度は、本発明の製品について上述した通りである。
【0054】
本発明の方法は更に、中空ラテックス粒子間に架橋を引き起こすための架橋ステップを、好ましくはラテックスの乾燥後に含み得る。
【0055】
本発明の製品は特には断熱材として有用である。本発明の製品を使用する1つの方法では、両者が接する境界面を有する2つの領域を画定する構造体を準備し、本発明の製品をこれら2つの領域の境界面に隣接して配置する。一旦設置すると、本発明の製品は、これら2つの領域の間で断熱材としての役割を果たすことができる。例えば、建造物の壁は建物の内部領域と外部領域との間で境界面を画定している。本発明の製品を構造体の壁内に配置することは、内部領域を外部領域から断熱し、また外部領域を内部領域から断熱するのに役立つ。同様に、冷蔵庫等の器具は内部の空洞及び外部領域を有し、その境界面に壁がある。本発明の製品をこのような器具の壁に隣接して配置することで、内部の空洞を外部領域から断熱し、また外部領域を内部領域から断熱する。
【0056】
以下の実施例は、本発明の実施形態について更に説明する役割を担う。
【実施例】
【0057】
実施例1
欧州特許出願公開第2143742号の実施例13に従って中空ラテックス粒子のラテックスを調製する。このラテックスは、約47wt%の固形分を有する。50mlのラテックスに、33.75グラムのNANOGEL(商標)ブランドのシリカエーロゲル粒子(NANOGELはCabot Corporationの商標である)を混合しながらゆっくりと添加する。エーロゲル粒子は、0.7〜1.2mmの平均粒径及び平均細孔径20〜40nmを有し、また潜在的な共有結合反応性を有する有機成分及び機能性コーティングを機能的に非含有である。エーロゲル粒子は更に、粒子群を水浴に30分間にわたって供し、次に粒子を80℃の強制通風炉で3時間にわたって乾燥させた後に最大で1.4wt%の水分を有する。
【0058】
ラテックス/エーロゲル組成物を20分間にわたって混合し続け、次にこの組成物を長さ15cm、幅15cm、厚さ1.5cmの鋳型に注ぐ。組成物を流し込んだ鋳型を60℃の炉に入れて約3時間にわたって乾燥させることによって本発明の製品である実施例1を形成する。
【0059】
実施例1は、長さ15cm、幅15cm及び厚さ1.5cmの寸法を有する。実施例1の中空ラテックス粒子は、約310nmの内径を有する。実施例1は、エーロゲル粒子と中空ラテックス粒子との間に共有結合を有さず、また柔軟である。実施例1の内部には粒子間ナノ空隙が画定され、また実施例1は0.12グラム/立法メートルの密度(ASTM D1622に準拠)を有し、また21.2mW/m・Kの熱伝導率(ASTM C518に準拠)を有する。エーロゲル粒子は、実施例1中に乾燥させた最終製品の約95.2vol%の濃度で存在し、中空ラテックス粒子は、乾燥させた最終製品の4.8vol%を占める。実施例1は柔軟であり、また折れたり砕けたりすることなく屈曲可能である。実施例1は、製品の表面に対して平行な、製品の厚さに等しい直径を有するマンドレルを中心として少なくとも30度屈曲可能である。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
ナノ多孔質粒子と中空ラテックス粒子とを含んでなる製品であって、前記中空ラテックス粒子が剛性の内側シェルと接着性の外側シェルとを含んでなり、また前記中空ラテックス粒子が互いに直接結合して連続マトリックスを形成し、前記ナノ多孔質粒子が前記中空ラテックス粒子の連続マトリックス中に分散している製品。
[実施形態2]
前記中空ラテックス粒子が500nm未満の内径を有することを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態3]
前記中空ラテックス粒子と前記ナノ多孔質粒子との間に共有結合が存在しないことを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態4]
前記中空ラテックス粒子がスチレン内側シェルとアクリル外側シェルとを有することを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態5]
前記ナノ多孔質粒子が、製品の総体積に対して50〜99体積%の範囲の濃度で存在することを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態6]
前記ナノ多孔質粒子が、二酸化ケイ素を含有するエーロゲル粒子を含む、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態7]
前記ナノ多孔質粒子が、前記粒子の多孔質構造全体にわたっての水分吸収を妨げるための十分に疎水性の細孔壁を有する、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態8]
25ミリワット/メートル・ケルビン未満の熱伝導率を有することを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態9]
5mmより大きい最小寸法を有することを更に特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態10]
多数の粒子間ナノ空隙が内部に画定されている、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態11]
少なくとも1つの表面上に化粧仕上げ材を更に含んでなることを特徴とする、[実施形態1]に記載の製品。
[実施形態12]
製品の製造方法であって、
(a)剛性の内側シェルと接着性の外側シェルとを含んでなる中空ラテックス粒子のラテックスを準備する工程と、
(b)ナノ多孔質粒子を準備し、前記ナノ多孔質粒子を前記ラテックス中に分散させる工程と、
(c)前記中空ラテックス粒子が互いに結合するように前記ラテックスを乾燥させ、それによって[実施形態1]の製品を形成する工程と、
を含んでなる方法。
[実施形態13]
前記中空ラテックス粒子が500nm未満の内径を有することを更に特徴とする、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態14]
製造時のいずれの時点においても、前記中空ラテックス粒子と前記ナノ多孔質粒子との間に共有結合が存在しないことを更に特徴とする、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態15]
前記中空ラテックス粒子がスチレン内側シェルとアクリル外側シェルとを有することを更に特徴とする、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態16]
前記ナノ多孔質粒子が、製品の総体積に対して50〜99体積%の範囲の濃度で存在することを更に特徴とする、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態17]
前記ナノ多孔質粒子が、前記粒子の多孔質構造全体にわたって水分吸収を妨げるために十分な疎水性の細孔壁を有する、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態18]
前記工程(b)の後に、前記中空ラテックス粒子間に架橋を引き起こすための架橋工程を更に含んでなる、[実施形態12]に記載の方法。
[実施形態19]
[実施形態1]の製品の使用方法であって、両者が接する境界面を有する2つの領域を画定する構造体を準備し、前記製品を前記2つの領域の境界面に隣接して配置することを含んでなる、方法。