【実施例】
【0032】
以下に示す実施例では、実施例1から4、及びこれと比較すべき比較例1から3による歯科用レジンブロックを作製して、その品質を検証した。以下に説明する。
【0033】
<歯科用レジン材料>
ここではペースト1から4の4種類のペースト状(未硬化)の歯科用レジン材料を準備した。各ペーストはシリンジに充填され、型に注入できるようにした。
また、各ペーストについてちょう度を測定した。ちょう度(mm)測定は次のように行った。すなわち、セロファンの上にシリンジからペーストを1.0mL押し出し、静かにセロファンを被せた後、総重量750gとしたカバーガラスと錘を静かに乗せ、60秒間静置した。60秒経過後にただちにカバーガラスと錘を外し、広がったペーストの長辺と短辺の長さを測定し、平均値をちょう度(mm)とした。
表1にペーストの組成及びちょう度を表した。表1中のMPTSは、γ−メタクリロキシプロリルトリエトキシシランを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1中のモノマー1からモノマー4は次の表2の通りである。なお、表2用いた略称はそれぞれ次の化学物質を意味する。
UDMA:ウレタンジメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
Bis-MEPP:2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン
HDMP:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン
【0036】
【表2】
【0037】
<実施例1>
実施例1では、厚さ1mmのポリプロピレンシートを真空成型して、縦横が12mm×14mm、深さが20mmの凹型を得た。この凹型にペースト1を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト1が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で2.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120℃に昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60℃以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
【0038】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ型を用い、この型にペースト2を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト2が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で3.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120℃に昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60℃以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
【0039】
<実施例3>
実施例3では、縦横高さが12mm×14mm×18mmのダミーブロックを歯科用シリコーン印象材であるフュージョンIIウォッシュタイプ(株式会社ジーシー)にて包埋し、硬化後にこのダミーブロックを取り出して凹型を得た。この凹型にペースト3を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト3が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で3.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120℃に昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60℃以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
【0040】
<実施例4>
実施例4では、実施例1と同じ型を用い、この型にペースト4を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト4が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で4.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120℃に昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60℃以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
【0041】
<比較例1>
分解可能なアルミニウム製の型にペースト1を静かに注入して内部を隙間なく満たした。型の材質以外は実施例1と同じ条件で歯科用レジンブロックを製造した。
【0042】
<比較例2>
分解可能なステンレス(SUS303)製の型にペースト2を静かに注入して内部を隙間なく満たした。型の材質以外は実施例2と同じ条件で歯科用レジンブロックを製造した。
【0043】
<比較例3>
実施例4に対して、窒素で昇圧する圧力を0.9MPaとした。それ以外は実施例4と同じである。
【0044】
表3に実施例1乃至4及び比較例1乃至3の主要な条件をまとめた。
【0045】
【表3】
【0046】
各例で得た歯科用レジンブロックに対して次の試験をした。
<成型性>
取り出した歯科用レジンブロックをに空隙がなく型の内面形状に沿っており、形状が適正であるか確認した。
<亀裂・気泡>
取り出した歯科用レジンブロックを1mm厚にスライスして得られた10枚の板を7倍のルーペで観察し、亀裂や気泡の有無を観察した。
<曲げ強度>
重合から24時間以上経過した後、歯科用レジンブロックを厚さ1.2mm±0.2mm、幅4.0mm±0.2 mm、長さ14mm以上となるように切り出し、表面を耐水研磨紙1000番で均一化してから支点間距離12mm、クロスヘッドスピード1.0mm/分の条件で三点曲げ試験を行った。
結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例1については、硬化前のペースト1はちょう度が68mmであり、最も流動性が高かった。成型性は良好で亀裂や気泡も確認されず、均一で型どおりの形状の歯科用レジンブロックが得られた。曲げ強度についてフィラー量が64質量%(シリカ粉末0.9質量%+MPTS処理アルミノシリケートガラス63.1質量%)に対して234MPaと良好な値を示した。
【0049】
実施例2については、硬化前のペースト2はちょう度が53mmであり、比較的流動性は高かった。成型性は良好で亀裂や気泡も確認されず、均一で型どおりの形状の歯科用レジンブロックが得られた。曲げ強度についてフィラー量が70.8質量%に対して218MPaと良好な値を示した。
【0050】
実施例3については、硬化前のペースト3はちょう度が47mmであり、比較的流動性は低かった。成型性は良好で亀裂や気泡も確認されず、均一で型どおりの形状の歯科用レジンブロックが得られた。曲げ強度についてフィラー量が65.8質量%に対して184MPaと良好な値を示した。
【0051】
実施例4については、硬化前のペースト4はちょう度が30mmであり、最も流動性は低かった。成型性は良好で亀裂や気泡も確認されず、均一で型どおりの形状の歯科用レジンブロックが得られた。曲げ強度についてフィラー量が65.8質量%に対して243MPaと良好な値を示した。
【0052】
比較例1については、実施例1と異なり成型性が不良で、空隙の発生した箇所が認められた。更に歯科用レジンブロックの表面または内部に亀裂が確認された。ただし歯科用レジンブロックの内部に気泡は確認されなかった。成型性が不良で亀裂も発生していたため曲げ試験を行う試験体を作製できなかった。
【0053】
比較例2については、実施例2と異なり成型性が不良で、空隙の発生した箇所が認められた。更に歯科用レジンブロック表面又は内部に亀裂が確認された。ただし歯科用レジンブロックの内部に気泡は確認されなかった。成型性が不良で亀裂も発生していたため曲げ試験を行う試験体を作製できなかった。
【0054】
比較例3については、実施例4と異なり歯科用レジンブロックの内部に気泡が多数確認された。曲げ試験を行ったところ気泡が多かったためその値は低かった。