特許第5745257号(P5745257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745257
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ナーリング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20150618BHJP
   B29C 43/46 20060101ALI20150618BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20150618BHJP
【FI】
   B29C59/04 Z
   B29C43/46
   B29L7:00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-257155(P2010-257155)
(22)【出願日】2010年11月17日
(65)【公開番号】特開2011-136549(P2011-136549A)
(43)【公開日】2011年7月14日
【審査請求日】2013年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2009-274587(P2009-274587)
(32)【優先日】2009年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】舛田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】大森 昭倫
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−011343(JP,A)
【文献】 特開昭62−212025(JP,A)
【文献】 特開2003−147092(JP,A)
【文献】 特開2008−246682(JP,A)
【文献】 実公昭43−025611(JP,Y1)
【文献】 特開2006−289447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
B29C 43/46
B29L 7/00
F16C 13/00
B21D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとで樹脂フィルムを挟圧して樹脂フィルムにナーリング加工を施すナーリング加工装置であって、
前記第一のナーリングロールの外周面には、頂部が平面とされ、該平面が樹脂フィルムを介して前記第二のナーリングロールの外周面に当接する、周方向に延びる凸条が突設され、
前記第二のナーリングロールの外周面には、前記第一のナーリングロールの凸条間に形成される溝部に樹脂フィルムを押し込む、周方向に延びる凸条が突設され
前記第一のナーリングロールの溝部に前記第二のナーリングロールの凸条によって押し込まれた樹脂フィルムが、前記第一のナーリングロールの溝部の内壁及び前記第二のナーリングロールの凸条の側面に接触しないように、前記第二のナーリングロールの凸条の高さ及び幅が前記第一のナーリングロールの溝部の深さ及び幅よりも小さくされていることを特徴とするナーリング加工装置。
【請求項2】
前記第二のナーリングロールの凸条の先端部は、頂部に向かい漸次縮幅することを特徴とする、請求項に記載のナーリング加工装置。
【請求項3】
前記第一のナーリングロールの凸条の頂部の平面と側面との間が曲面とされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナーリング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナーリング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に樹脂フィルム(以下、単にフィルムという)は、ロール状に巻き取られてフィルムロールとされ、フィルムロールの状態で保管・輸送されることが多い。フィルムをロール状に巻き取る際には、フィルムを蛇行させないように制御し、ロール芯の方向へ誘導しながら巻き取り作業が行われる。
【0003】
ところが、フィルムを巻き取る際には、フィルム間に空気が同伴されて、フィルムロールの幅方向のずれ(巻きずれ)を生じることがある。このような巻きずれが生じると、巻きずれ部分がロスとなることに加え、フィルムロールにシワが生じやすい。
【0004】
従来、こうした問題に対し、ナーリング加工による凹凸形成等の滑り止め加工をフィルムに施し、フィルムの巻きずれを防止することが行われている。例えば、巻き取り前のフィルムの一部にエンボス加工を施すことで、フィルムを巻き取る際、あるいは巻き取った後の巻きずれを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法では、エンボス加工装置として、周面に鋸歯状ボスが形成された押圧ロールと周面を弾性体で被覆した支持ロールとでフィルムの両端部を挟圧する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−11343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、必ずしも満足できるフィルムロールの巻きずれ防止効果が得られなかった。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、比較的硬質な材質のフィルムに対し、十分な巻きずれ防止効果を付与できなかった。
そこで、本発明は、フィルムロールの巻きずれ防止の精度向上が図れるナーリング加工装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のナーリング加工装置は、第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとで樹脂フィルムを挟圧して樹脂フィルムにナーリング加工を施すナーリング加工装置であって、前記第一のナーリングロールの外周面には、頂部が平面とされ、該平面が樹脂フィルムを介して前記第二のナーリングロールの外周面に当接する、周方向に延びる凸条が突設され、前記第二のナーリングロールの外周面には、前記第一のナーリングロールの凸条間に形成される溝部に樹脂フィルムを押し込む、周方向に延びる凸条が突設されていることを特徴とする。
前記第一のナーリングロールの溝部に前記第二のナーリングロールの凸条によって押し込まれた樹脂フィルムが、前記第一のナーリングロールの溝部の内壁に接触しないように前記第二のナーリングロールの凸条の高さ及び幅が、前記第一のナーリングロールの溝部の深さ及び幅よりも小さくされていることが好ましく、前記第二のナーリングロールの凸条の先端部は、頂部に向かい漸次縮幅することが好ましく、前記第一のナーリングロールの凸条の頂部の平面と側面との間が曲面とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナーリング加工装置によれば、第一のナーリングロールの外周面に、頂部が平面とされ、該平面が樹脂フィルムを介して前記第二のナーリングロールの外周面に当接する、周方向に延びる凸条を突設し、第二のナーリングロールの外周面に、前記第一のナーリングロールの凸条間に形成される溝部に樹脂フィルムを押し込む、周方向に延びる凸条を突設することで、ナーリング加工により滑り止め部を形成でき、巻きずれ防止の精度向上が図れる。
前記第一のナーリングロールの溝部に前記第二のナーリングロールの凸条によって押し込まれた樹脂フィルムが、前記第一のナーリングロールの溝部の内壁に接触しないように前記第二のナーリングロールの凸条の高さ及び幅を、前記第一のナーリングロールの溝部の深さ及び幅よりも小さくすることで、フィルムに滑り止め部を効率的に形成できる。
前記第二のナーリングロールの凸条の先端部を頂部に向かい漸次縮幅させることで、硬質の材質のフィルムに、ナーリング加工による滑り止め部を形成でき、巻きずれ防止の精度向上が図れる。
前記第一のナーリングロールの凸条の頂部の平面と側面との間を曲面とすることで、ナーリング加工中のフィルムの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一の実施形態にかかるナーリング加工装置を備えた巻き取りシステムの斜視図である。
図2】本発明の第一の実施形態にかかるナーリング加工装置を構成する第一のナーリングロールの断面図である。
図3図2の第一のナーリングロールの部分拡大図である。
図4】本発明の第一の実施形態にかかるナーリング加工装置を構成する第二のナーリングロールの断面図である。
図5図4の第二のナーリングロールの部分拡大図である。
図6図1の第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとでフィルムを挟圧した状態を示すナーリング加工装置の部分断面図である。
図7】本発明の第二の実施形態にかかるナーリング加工装置を備えた巻き取りシステムの斜視図である。
図8】本発明の第二の実施形態にかかるナーリング加工装置を構成する第二のナーリングロールの断面図である。
図9図8の第二のナーリングロールの部分拡大図である。
図10図7の第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとでフィルムを挟圧した状態を示すナーリング加工装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかるナーリング加工装置について、以下に図面を用いて説明する。図1において、符号1は、ナーリング加工装置10と、ナーリング加工が施されたフィルムを巻き取るロール芯40とを有する巻き取りシステムを示す。ロール芯40は、図示されない駆動装置と接続され、フィルム50を矢印Fの方向に移送しながら、巻き取るものである。
【0011】
ナーリング加工装置10は、第一のナーリングロール軸22と、第一のナーリングロール軸22に設けられた略円筒形の第一のナーリングロール20と、第二のナーリングロール軸32と、第二のナーリングロール軸32に設けられた略円筒形の第二のナーリングロール30とで概略構成されている。
第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール30とは、フィルム50を介して当接するように配置されている。
【0012】
図2は、第一のナーリングロール20の軸線に沿った断面図であり、図3は、第一のナーリングロール20の外周面近傍の部分拡大図である。
図2に示すように、第一のナーリングロール20には、第一のナーリングロール軸22を挿入するロール軸穴21が形成されている。また、第一のナーリングロール20の外周面29には、周方向に延びる複数の凸条24が突設されると共に、凸条24間に溝部26が形成されている。
図3に示すように、凸条24は、その頂部25が第一のナーリングロール20の半径方向と略直交する平面とされ、頂部25から外周面29に向かうに従い、暫時その幅が広くなる形状とされている。また、頂部25の平面と、該平面に隣接し外周面29へと続く側面28との間は、曲面27とされている。
なお、本実施形態において、溝部26の内壁は、曲面27、側面28、外周面29で構成されている。
【0013】
第一のナーリングロール20の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属が好ましい。第一のナーリングロール20を金属製とすることで、後述するナーリング加工により、フィルムに良好な滑り止め効果を付与できる。
【0014】
第一のナーリングロール20における頂部25の幅W1は、フィルム50の材質やナーリング加工の程度を勘案して決定でき、好ましくは0.2〜0.6mmとされる。0.2mm未満であるとフィルムが切断されやすくなり、0.6mm超であるとフィルムに十分な滑り止め効果を付与できないおそれがある。
【0015】
曲面27は、フィルム50の材質や、ナーリング加工の程度等を勘案して決定でき、R:3〜10mm程度とされる。
【0016】
また、溝部26を介して隣接する側面28同士がなす角度θ1(図3)は、好ましくは50〜70°とされる。50°未満であると、フィルムに付与できる滑り止め効果が飽和し、さらなる滑り止め効果の向上が望めない。70°超であると、フィルムを十分に挟圧できずナーリング加工が不十分となるおそれがあると共に、後述するナーリング加工で形成される滑り止め部の幅が広くなりフィルムの歩留まりが低下する。
【0017】
溝部26の深さD、即ち頂部25から外周面29までの距離は、後述する凸条34の高さ、ナーリング加工の程度等を勘案して決定できる。
【0018】
図4は、第二のナーリングロール30の軸線に沿った断面図であり、図5は、第二のナーリングロール30の外周面近傍の部分拡大図である。
図4に示すように、第二のナーリングロール30には、第二のナーリングロール軸32を挿入するロール軸穴31が形成され、第二のナーリングロール30の外周面39には、周方向に延びる複数の凸条34が突設されている。
【0019】
図5に示すように、第二のナーリングロール30は、その頂部35が、第二のナーリングロール30の半径方向に略直交する平面とされ、頂部35に隣接する側面36は、第二のナーリングロール30の半径方向と略平行とされている。加えて、側面36と外周面39との間は、曲面37とされている。
【0020】
凸条34の高さH、即ち外周面39から頂部35までの距離は、溝部26の深さD、フィルム50の材質、求めるナーリング加工の程度等を勘案して決定でき、例えば、1〜10mm程度とされる。高さHが1mm未満であるとナーリング加工が不十分となって、十分な巻きずれ防止効果をフィルム50に付与できないおそれがある。高さHが10mm超であると、凸条34の耐久性が不十分となるおそれがある。
【0021】
なお、本実施形態においては、図6に示すように、第二のナーリングロール30の凸条34は、フィルム50を溝部26に押し込んだ際に、フィルム50が溝部26の内壁に接触しない大きさとされている。即ち、凸条34の高さHが溝部26の深さDよりも小さく、凸条34の幅が溝部26の幅よりも小さいものとされている。
【0022】
頂部35の幅W2は、フィルム50の材質、求めるナーリング加工の程度等を勘案して決定でき、例えば、1〜6mm程度とされる。
隣接する凸条34間の距離Lは、フィルム50の材質、求めるナーリング加工の程度等を勘案して決定でき、例えば、3〜30mm程度とされる。距離Lが3〜30mmであれば、巻きずれ防止に十分な滑り止め部をフィルム50に形成することができる。
【0023】
第二のナーリングロール30の材質は、例えば、ナイロン、ポリオレフィン等の樹脂が好適に用いられる。第二のナーリングロール30を樹脂製とすることで、ナーリング加工の際にフィルムを破損しにくくできる。
【0024】
なお、本実施形態においては、加工対象となるフィルム50の幅に応じて、第二のナーリングロール30を移動させて対応できるように、第一のナーリングロール20が、第二のナーリングロール30よりも広い幅で、かつ第二のナーリングロール30の凸条34の数以上の溝部26を有するものとされている。
【0025】
加工対象であるフィルム50の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、PET等のポリエステル等が挙げられる。本実施形態において、フィルム50は、ポリオレフィンやポリスチレン等の比較的軟質な材質であることが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態のナーリング加工装置10を有する巻き取りシステム1を用いたフィルムロールの製造方法について、図1、6を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、フィルム50を繰り出し、第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール30との間にフィルム50を供給する。第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール30とは、矢印Fの方向にフィルム50が移送されるのに伴って回転しつつ、供給されたフィルム50を挟圧する。この間、図6に示すように、フィルム50は、その一部が第一のナーリングロール20の頂部25と第二のナーリングロール30の外周面39とで挟圧されると共に、他の一部が第二のナーリングロール30の凸条34により溝部26に押し込まれる。
凸条34によりフィルム50が溝部26に押し込まれると、頂部25と外周面39とで挟圧された部分のフィルム50が頂部25に押し付けられて粗面化され、擦り傷状の粗面部52が線状に形成される(図1)。加えて、溝部26内では、フィルム50が、溝部26の両端に位置する頂部25と外周面39とで挟圧されたまま凸条34で押圧されるため、幅方向に伸びて皺様の歪み部が形成される。こうして、ナーリング加工装置10を通過したフィルム50の幅方向の一方の端部近傍には、粗面部52と、該粗面部52間に形成された歪み部とからなる滑り止め部51が、フィルム50の移送方向に沿って形成される(ナーリング加工)。一方、ナーリング加工が施されていない領域である未処理部56は、フィルム50の当初の性状、例えば平滑面が維持される。
【0028】
ナーリング加工装置10により滑り止め部が形成されたフィルム50は、さらに矢印Fの方向に移送され、ロール芯40に巻き取られ、フィルムロール54となる(巻き取り工程)。フィルム50はロール状に巻き取られる際、隣接するフィルム50の滑り止め部51同士が引っ掛かり、あるいは抵抗となって、巻きずれを起こすことなくフィルムロール54となる。
【0029】
本実施形態によれば、フィルムの移送方向に沿って、粗面部と歪み部とで構成された滑り止め部が形成されるため、ロール状に巻き取る際、あるいはフィルムロールとした後にも、滑り止め部同士が引っ掛かり、あるいは抵抗となってフィルム幅方向のずれを防止できる。
【0030】
従来のナーリング加工装置では、所望する凹凸の形状に対応する型が形成されたナーリングロールをフィルムに押し付けて凹凸を形成し、この凹凸の引っ掛かりによって巻きずれ防止を図っていた。このような凹凸が形成されたフィルムを巻き取ると、凸形状同士が重なる箇所が生じ、この重なりが多数層に生じるとフィルムロールのナーリング加工を施した部分が厚くなる。そうすると、ナーリング加工が施されていない未処理部は、フィルム間に空気を抱き込んだ状態となり、巻きずれが生じやすくなる。
本実施形態のナーリング加工装置により形成された滑り止め部は、粗面部と歪み部とで構成され、かつこの歪み部はフィルムが幅方向に伸ばされて薄くなっている。このため、本実施形態のナーリング加工装置により滑り止め部が形成されたフィルムを巻き取っても、フィルムロールの幅方向の端部近傍が厚くならず、フィルム間に空気を抱き込むことなく巻きずれを防止できる。
【0031】
さらに、本実施形態のナーリング加工装置は、第一のナーリングロールの頂部と第二のナーリングロールの外周面とでフィルムを挟圧しつつ、第二のナーリングロールの凸条でフィルムを押圧して粗面部及び歪み部を形成する。このため、フィルムは、ナーリング加工の際に未処理部が幅方向に引っ張られるようなストレスを受けず、未処理部が歪むことなくナーリング加工が施される。
【0032】
加えて、第一のナーリングロールの凸条は、その頂部が平面とされているため、ナーリング加工の際にフィルムを破損することなく、フィルムを第一のナーリングロールの溝部に安定的に押し込むことができる。この結果、フィルムに粗面部と歪み部とを効率的に形成できる。
【0033】
第二のナーリングロールの凸条は、その高さ及び幅が、ナーリング加工の際に第一のナーリングロールの溝部の内壁に接触しないように、第一のナーリングロールの溝部の深さ及び幅よりも小さくされているため、フィルムを破損することがない。
【0034】
第一のナーリングロールの凸条の頂部の平面と側面との間が曲面とされているため、ナーリング加工の際に、第一のナーリングロールの凸条の頂部にフィルムをより強く押し付けることができる。この結果、フィルムを破損せずに効率的に粗面部を形成できる。
【0035】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかるナーリング加工装置について、以下に図面を用いて説明する。第一の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略すると共に、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。第一の実施形態と異なる点は、凸条の先端部が、頂部、即ち突端に向かい漸次縮幅する第二のナーリングロールを備える点である。
図7において、符号100は、ナーリング加工装置110と、ナーリング加工が施されたフィルムを巻き取るロール芯40とを有する巻き取りシステムを示す。
【0036】
ナーリング加工装置110は、第一のナーリングロール軸22と、第一のナーリングロール軸22に設けられた略円筒形の第一のナーリングロール20と、第二のナーリングロール軸32と、第二のナーリングロール軸32に設けられた略円筒形の第二のナーリングロール130とで概略構成されている。
第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール130とは、フィルム50を介して当接するように配置されている。
【0037】
図8は、第二のナーリングロール130の軸線に沿った断面図であり、図9は、第二のナーリングロール130の外周面近傍の部分拡大図である。また、図10は、フィルム50にナーリング加工を施す工程を説明するナーリング装置の部分断面図である。
図8に示すように、第二のナーリングロール130の外周面39には、周方向に延びる複数の凸条134が突設されている。
【0038】
図9に示すように、凸条134には、外周面39から曲面137を介して略垂直に立ち上がる側面136と、側面136から突端に向かい互いに近づく傾斜面138と、傾斜面138に隣接する頂部135とが形成されている。凸条134には、頂部135と、頂部135を挟んで形成された傾斜面138とで先端部133が形成され、先端部133が外周面39から頂部135に向かい漸次縮幅するものとされている。凸条134の突端である頂部135は、第二のナーリングロール30の半径方向に略直交する平面とされている。
任意の凸条134の傾斜面138同士がなす角度θ2は、例えば、35〜45°とされる。
【0039】
凸条134の高さh、即ち外周面39から頂部135までの距離は、第一の実施形態における凸条34の高さHと同様である。
【0040】
なお、本実施形態においては、図10に示すように、第二のナーリングロール130の凸条134は、フィルム50を溝部26に押し込んだ際に、フィルム50が溝部26の内壁に接触しない大きさとされている。即ち、凸条134の高さhが溝部26の深さDよりも小さく、凸条134の幅w2が溝部26の幅よりも小さいものとされている。
【0041】
凸条134の側壁136部分の幅w2は、第二のナーリングロール30の材質等を勘案して決定でき、例えば、1〜6mm程度とされる。
頂部135の幅w3は、フィルム50の材質、求めるナーリング加工の程度等を勘案して決定でき、好ましくは0.27〜1.0mm、より好ましくは0.27〜0.5mmとされる。0.27mm未満であると、フィルム50が切断されやすくなり、1.0mm超であると頂部35からフィルム50に掛かる荷重が不十分となり、ナーリング加工が不十分となるおそれがある。
隣接する凸条134間の距離lは、第一の実施形態における凸条34間の距離Lと同様である。
【0042】
第二のナーリングロール130の材質は、第二のナーリングロール30と同様である。
【0043】
本実施形態において、加工対象であるフィルム50の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、PET等のポリエステル等が挙げられ、中でもPET等のポリエステルのように比較的硬質な材質であることが好ましい。本実施形態のナーリング加工装置100は、硬質のフィルム50に対するナーリング加工において、その効果が顕著なためである。
【0044】
次に、本実施形態のナーリング加工装置110を有する巻き取り装置100を用いたフィルムロールの製造方法について、図7、10を用いて説明する。
【0045】
図7に示すように、フィルム50を繰り出し、第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール130との間にフィルム50を供給し、第一のナーリングロール20と第二のナーリングロール130とで供給されたフィルム50を挟圧する。この間、図10に示すように、フィルム50は、その一部が第一のナーリングロール20の頂部25と第二のナーリングロール130の外周面39とで挟圧されると共に、他の一部が第二のナーリングロール130の凸条134により溝部26に押し込まれる。この際、凸条134の先端部133が頂部135に向かい漸次縮幅しているため、十分な荷重がフィルム50に掛けられる。
凸条134によりフィルム50が溝部26に押し込まれると、頂部25と外周面39とで挟圧された部分のフィルム50が頂部25に押し付けられて粗面化され、擦り傷状の粗面部52が線状に形成される(図7)。加えて、溝部26内では、フィルム50が、溝部26の両端に位置する頂部25と外周面39とで挟圧されたまま凸条134で押圧されるため、幅方向に伸びて皺様の歪み部が形成される。この際、先端部133は、頂部135に向かい漸次縮幅しているため、頂部135に荷重が集中し、PETのような硬質のフィルム50を容易に延伸して歪み部を形成できる。
こうして、ナーリング加工装置10を通過したフィルム50の幅方向の一方の端部近傍には、粗面部52と、該粗面部52間に形成された歪み部とからなる滑り止め部51が、フィルム50の移送方向に沿って形成される(ナーリング加工)。そして、フィルム50は、ロール芯40に巻き取られ、フィルムロール54となる(巻き取り工程)。
【0046】
本実施形態によれば、先端部が頂部に向かい漸次縮幅するため、フィルムがPET等の硬質なものであっても、第一のナーリングロールの溝部にフィルムを押し込んだ際、十分にフィルムに荷重を掛け、擦り傷状の粗面部と皺様の歪み部とを良好に形成できる。
加えて、第二のナーリングロールの凸条は、その高さ及び幅が、ナーリング加工の際に第一のナーリングロールの溝部の内壁に接触しないように、第一のナーリングロールの溝部の深さ及び幅よりも小さくされているため、フィルムを破損することがない。
さらに、第一のナーリングロールの凸条の頂部の平面と側面との間が曲面とされているため、ナーリング加工の際に、第一のナーリングロールの凸条の頂部にフィルムをより強く押し付け、フィルムを破損せずに効率的に粗面部を形成できる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
第一及び第二の実施形態では、第一のナーリングロールの凸条は、頂部から外周面に向かうに従い、暫時その幅が広くなる形状とされているが、例えば、その側面が第一のナーリングロールの半径方向と略平行とされていてもよい。ただし、第一のナーリングロールの凸条の形状は、耐久性等を上げる観点から、頂部から外周面に向かうに従い、暫時その幅が広くなる形状が好ましい。
【0048】
第一及び第二の実施形態では、第二のナーリングロールの凸条の頂部が平面とされているが、例えば、第二のナーリングロールの凸条の頂部は曲面とされていてもよい。ただし、ナーリング加工の際に、第一のナーリングロールの溝部内でフィルムに安定的した荷重を掛けると共に、フィルムの破損を防止する観点から、第二のナーリングロールの凸条の頂部は平面とされていることが好ましい。
【0049】
第一及び第二の実施形態では、第二のナーリングロールには3つの凸条が突設されているが、例えば、第二のナーリングロールには1〜2つの凸条が突設されていてもよいし、4つ以上の凸条が突設されていてもよい。ただし、巻きずれ防止効果の向上、安定生産の観点から、第二のナーリングロールに突設される凸条の数は、2〜3つが好ましく、3つがより好ましい。
【0050】
第一及び第二の実施形態では、第二のナーリングロールの凸条の側面は第二のナーリングロールの半径方向と略平行とされているが、例えば、第二のナーリングロールの凸条の側面が、第二のナーリングロールの外周面に向かうに従い傾斜する形状であってもよい。
【0051】
第一及び第二の実施形態では、第一のナーリングロールの幅が、第二のナーリングロールよりも大きい幅とされているが、例えば、第一のナーリングロールの幅は第二のナーリングロールの幅と同等であってもよい。
また、第一及び第二の実施形態では、第一のナーリングロールに、第二のナーリングロールの凸条の数以上の溝部が形成されているが、例えば、該溝部の数は、第二のナーリングロールの凸条の数と同じであってもよい。
【0052】
第一及び第二の実施形態では、第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとが、フィルムの幅方向の一方の端部近傍に配置されているが、例えば、フィルムの中央部に滑り止め部が形成されるように、第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとが配置されていてもよい。あるいは、第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとが、フィルムの幅方向の両端近傍に配置されていてもよい。
また、第一及び第二の実施形態では、第一のナーリングロールと第二のナーリングロールとが一対設けられているが、二対以上であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10、110 ナーリング加工装置
20 第一のナーリングロール
24、34、134 凸条
25、35、135 頂部
26 溝部
27 曲面
28 側面
29、39 外周面
30、130 第二のナーリングロール
50 フィルム
133 先端部
図1
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