特許第5745259号(P5745259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745259
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】筆記具用クリップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20150618BHJP
   B43K 23/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   B43K25/00 G
   B43K9/00 F
   B43K9/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-267471(P2010-267471)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2011-136555(P2011-136555A)
(43)【公開日】2011年7月14日
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-273717(P2009-273717)
(32)【優先日】2009年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕史
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−156489(JP,A)
【文献】 特開2004−130681(JP,A)
【文献】 特開平09−066694(JP,A)
【文献】 特開平11−342697(JP,A)
【文献】 特開2011−136556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08−23/12
B43K 25/00−25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先を保護するための筒状のキャップ本体であって側面に取付穴が形成された弾性体からなるキャップ本体に2色成形によって組み合わされて筆記具用キャップを構成するのに適した筆記具用クリップであって、基部及び該基部外側面に設けられた挟持部を具備し、前記基部が前記取付穴の部分を除く前記キャップ本体内に収容されて筆記具先端を受容し且つ前記挟持部が前記取付穴を介して前記キャップ本体外に延びるように前記キャップ本体に設けられ、
前記基部が、両端が開口した円筒形状に形成されると共に後側の円筒形状の内壁部分に複数のガイド突起を有している筆記具用クリップ。
【請求項2】
2色成形の1次工程によって成形された請求項1に記載の筆記具用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用クリップ及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具を、コンピュータや電子手帳の入力手段であるタッチペンとして利用可能にする目的で、先端部にシャープペンシルの芯が出没可能な貫通孔を有し、軟質系弾性材料で形成された筆記具のキャップ状の筆記具用グリップが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
さらに、部品点数を少なくし、装飾の目的で、キャップ本体と、キャップ本体へ固定されるクリップ支持部及びクリップ支持部により支持されるクリップ片からなるクリップとを有する筆記具用キャップが公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−198585号公報
【特許文献2】特開2004−130681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の筆記具用グリップは、シャープペンシルをタッチペンとして利用可能にするためのグリップに過ぎず、キャップとしての機能は考慮されていない。すなわち、特許文献1の筆記具用グリップは、書類や衣類等の物品を挟持するためのクリップや、筆記具先端の筆記部からのインクの揮発を防止するためのシールゴム等を具備していない。仮にこの構造にクリップを取り付けようとすると、グリップ本体全体が弾性材料で形成されていることから、取り付け部分の強度が弱くなり、従って物品を安定して挟持することができない。さらに、全体が弾性材料で形成されていることから、垂直に落下した場合等、筆記具の軸線方向に力を受けたときに、座屈が生じ、筆記具先端の筆記部が損傷する恐れもある。
【0006】
特許文献2の筆記具用キャップは、キャップ本体の内壁に設けられた嵌合部でのみ筆記具本体と嵌合するため、クリップ片を持ち上げて物品を挟持する際に、嵌合が緩む場合がある。さらに、この筆記具用キャップは、筆記具先端の筆記部からのインクの揮発を防止するためのシールゴムを配置するような構成とはなっていない。
【0007】
そこで本発明は、組み合わされる筆記具用キャップの強度が確保され、クリップによって物品を安定して挟持できる筆記具用クリップ及び筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、ペン先を保護するための筒状のキャップ本体であって側面に取付穴が形成された弾性体からなるキャップ本体に2色成形によって組み合わされて筆記具用キャップを構成するのに適した筆記具用クリップであって、基部及び該基部外側面に設けられた挟持部を具備し、前記基部が前記取付穴の部分を除く前記キャップ本体内に収容されて筆記具先端を受容し且つ前記挟持部が前記取付穴を介して前記キャップ本体外に延びるように前記キャップ本体に設けられ、前記基部が、両端が開口した円筒形状に形成されると共に後側の円筒形状の内壁部分に複数のガイド突起を有している筆記具用クリップが提供される。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明では、組み合わされる筆記具用キャップの内部に当該筆記具用クリップの基部が配置されることから、キャップ本体の強度が確保され、クリップにより物品を安定して挟持できるという効果を奏する。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、2色成形の1次工程によって成形された筆記具用クリップが提供される。
【発明の効果】
【0011】
各請求項に記載の発明によれば、組み合わされる筆記具用キャップの強度が確保され、クリップにより物品を安定して挟持できるという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】筆記具用キャップの斜視図である。
図2】筆記具用キャップの正面図である。
図3】筆記具用キャップの平面図である。
図4】筆記具用キャップの底面図である。
図5】筆記具用キャップの右側面図である。
図6】筆記具用キャップの左側面図である。
図7】筆記具用キャップの断面図である。
図8】筆記具用キャップのクリップ部材の斜視図である。
図9】シールゴムを装着した筆記具用キャップの断面図である。
図10】筆記具用キャップを装着した筆記具全体の断面図である。
図11図10に示される筆記具先端の部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は筆記具用キャップの斜視図である。1は筆記具用キャップ全体を示し、2はクリップ部材、3はキャップ本体を示す。
【0014】
キャップ本体3の側面には、筆記具の中心軸線に対して対称に配置され、クリップ部材2を介して筆記具用キャップ1内部と連通する2つの貫通孔3aが設けられている。キャップ本体3に貫通孔3aが設けられていることによって、筆記具用キャップ1の筆記具本体に対する着脱時に、貫通孔3aを介して筆記具用キャップ1内の空気が自由に出入りできるようになる。そのため、筆記具用キャップ1内圧の上昇又は低下がなく、筆記具用キャップ1をスムーズに着脱することが可能となる。また、2つの貫通孔3aが軸対称に配置されることによって、2つの穴から空気の出入りが均等に行われ、軸対称に配置されていない場合に較べてよりスムーズな着脱が可能となる。なお、本実施形態では、貫通孔は2つであるが、1つ又は3つ以上であってもよく、外表面のどこに設けられていてもよい。
【0015】
キャップ本体3の側面には、さらに、美的効果及び滑り止めのため、外周面に複数のディンプル3bが形成されている。ディンプルの代わりに、外周面周りに螺旋状に形成された溝による模様や、外周面に沿って環状に形成された溝による模様、又は、長手方向に延びる直線状に形成された溝を外周面に周りに複数配置した模様等であってもよい。
【0016】
図2は、筆記具用キャップ1の正面図であり、図3はその平面図、図4はその底面図、図5はその右側面図、図6はその左側面図であり、図7は、筆記具用キャップ1の断面図であり、図8は、筆記具用キャップ1のクリップ部材の斜視図である。
【0017】
なお、本明細書では、筆記具用キャップの閉鎖端側を先端又は前側とし、筆記具用キャップの開口端側を後端又は後側とする。
【0018】
図2乃至図8を参照しながらクリップ部材2について説明する。クリップ部材2は、基部4及び基部4の外側面に一体的に形成された挟持部5からなる。なお、本実施形態では、基部4は環状に形成されており、以下、環状部4と称す。
【0019】
環状部4は、後側の口径が前側の口径よりも大きく、その外観は略テーパー形状となっており、筆記具先端を受容するように構成されている。環状部4の内壁は、前端部及び後端部から内方に所定長さだけ略円筒形状で形成され、これら円筒形状で形成された領域間はテーパー状に形成されている。また、キャップ本体3の貫通孔3aに対応する部分には、筆記具用キャップ1の外部と内部とが連通するように、貫通孔3aと同様の形状をした切り欠き部4aが形成されている。さらに、後側の円筒形状の内壁部分には、長手方向に亘って中心軸線に向かって突出したガイド突起4bが等間隔に複数設けられている。ガイド突起4bについては後述する。
【0020】
挟持部5は、キャップ本体3との間に書類や衣類等の物品を、挟持することができるような弾性を有するように構成されている。挟持部5の後端には玉部5aが一体的に形成される。
【0021】
クリップ部材2を形成する材料として、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂が挙げられる。しかしながら、挟持部5の屈曲時等における破断防止のため、弾性材料、特に以下に示すキャップ本体と同じ弾性材料を用いて形成してもよい。
【0022】
キャップ本体3は、筆記具のペン先を保護するように、一端が閉鎖された弾性体からなる筒状の部材であり、その側面に取付穴3cが形成されている。キャップ本体3内にクリップ部材2の環状部4が配置され、クリップ部材2の挟持部5が取付穴3cを介してキャップ本体3の外に延びるように設けられている。すなわち、キャップ本体3は、クリップ部材2の環状部4の前側の開口を閉鎖すると共に後側の開口から所定長さだけ円筒状に延び、筆記具本体が挿入される開口を形成している。
【0023】
クリップ部材2の玉部5aに対向するキャップ本体3の外周面には、玉部5aに対応する形状をした凹部3dを形成してもよい。玉部5a及び凹部3dが対応する形状を有することによって、書類や衣類等の挟持される物品も同様の形状に変形されて、よりしっかりと挟持され、外れにくくなる。
【0024】
キャップ本体3を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといった弾性材料、2種以上の弾性材料の混合物、及び、弾性材料と合成樹脂との混合物が挙げられる。
【0025】
図9は、シールゴム6を配置した筆記具用キャップ1の側断面図である。シールゴム6は、筆記具用キャップ1が用いられる筆記具が揮発性の高いインクを使用したボールペン等の場合に、筆記具先端の筆記部からのインクの揮発を防止するためにキャップ本体3内に配置される。図9は、シールゴム6を付加した点以外、図7に示される断面図と同様である。
【0026】
本実施形態におけるシールゴム6は任意の弾性材料からなる弾性体からなり、図9に示されるように、両面に同軸に円形の凹部を有する略円板状であり、H型の縦断面形状を有している。なお、シールゴム6は、球状等その他形状であってもよい。
【0027】
図7及び図9を参照すると、キャップ本体3の先端内壁には、長手方向に亘って中心軸線に向かって延びる複数のリブ3eが設けられ、シールゴム6を弾性変形させつつ挟持する構造となっている。リブ3eは、等間隔に配列され、3つ以上あることが好ましい。
【0028】
キャップ本体3内にシールゴム6を配置した状態で筆記具用キャップ1に筆記具本体を挿入すると、筆記具先端の筆記部がシールゴム6と係合する。すなわち、筆記部がシールゴム6の中央部分を押圧すると、シールゴム6は弾性変形し、筆記部がシールゴム6内に埋没する。その結果、筆記部からのインクの揮発を防止することが可能となる。
【0029】
さらに、製造工程においてシールゴム6をキャップ本体3内へ配置するとき、キャップ本体3が弾性体からなることから、シールゴム6の挿入時にキャップ本体3も弾性変形するため、シールゴム6の寸法公差が多少大きくても確実に配置することが可能となる。
【0030】
次に、図10及び図11を参照しながら、筆記具用キャップ1を筆記具本体7へ装着した際の嵌合について説明する。図10は、筆記具用キャップ1を装着した筆記具全体の断面図であり、図11は、筆記具用キャップ1を装着した筆記具先端の部分拡大断面図である。
【0031】
筆記具本体7は、筆記部7aと嵌合突起7bと係止面7cとを有している。図10及び図11に示される筆記部7aは、ボールペンの筆記部7aであり、シールゴム6が弾性変形している状態で示されている。嵌合突起7bは、筆記具本体7の外周面全周に亘って形成された突起であり、係止面7cは、筆記部7a側の嵌合突起7bの底部近傍から形成された、筆記具の中心軸線に対して略垂直な環状の平面である。一方、クリップ部材2の環状部4よりも後側のキャップ本体3の内壁には、筆記具本体7の嵌合突起7bと係合する係止突起3fが全周に亘って形成されている。
【0032】
図面右方向から左方向に向かって筆記具用キャップ1内に筆記具本体7を挿入すると、まず、筆記具本体7の嵌合突起7bが、キャップ本体3の係止突起3fと当接し係止する。その状態からさらに筆記具本体7を押し込むと、筆記具本体7の嵌合突起7bとキャップ本体3の係止突起3fとが互いに押圧し合い、中心軸線に対して垂直方向の反力が双方に生じる。その結果、筆記具本体7の収縮方向及びキャップ本体3の拡大方向のいずれか一方又は両方の弾性変形が生じ、筆記具本体7の嵌合突起7bが、キャップ本体3の係止突起3fとの係止を離れて、キャップ本体3内奥へと通過することができる。筆記具本体7の嵌合突起7bがキャップ本体3の係止突起3fを通過した後に、筆記具本体7の係止面7cが、クリップ部材2の環状部4の後端面4cと当接して係止し、図10及び図11に示された状態のように、筆記具用キャップ1と筆記具本体7との嵌合が完了する。
【0033】
嵌合が完了すると、筆記具本体7をキャップ本体3内に押し込む方向については、筆記具本体7の係止面7cと環状部4の後端面4cとの係止によって規制され、筆記具本体7をキャップ本体3から外す方向については、筆記具本体7の嵌合突起7bとキャップ本体3の係止突起3fとの間の、上述の押し込む方向とは逆方向の係止によって規制される。
【0034】
筆記具用キャップ1を筆記具本体7から外す際には、上述の筆記具用キャップ1の筆記具本体への装着とは反対に、筆記具本体7を引っ張ることによって、中心軸線に対して垂直方向の反力を双方に生じさせる。それによって生じる弾性変形によって、筆記具本体7の嵌合突起7bとキャップ本体3の係止突起3fとの係止が外れ、筆記具用キャップ1を筆記具本体7から外すことができる。
【0035】
嵌合時、筆記具本体7の係止面7cと環状部4の後端面4cとが当接又は近接していることによって、物品を挟持するために挟持部5を持ち上げる際に筆記具用キャップ1自体に加わる力は、環状部4と、係止面7c及び後端面4c間の当接面とによって吸収される。従って、キャップ本体3が、大きく変形したり、筆記具本体7に対して大きく移動したりするようなことはなく、筆記具先端の筆記部7aとシールゴム6との係合も外れることなく維持される。
【0036】
筆記具本体7の嵌合突起7b及びキャップ本体3の係止突起3fは、それぞれ筆記具本体7の外周面の全周及びキャップ本体3の内壁の全周に亘って形成されているが、それぞれ少なくとも一部に形成されるように構成してもよい。
【0037】
キャップ本体3に対する環状部4の後端面4cの位置と、キャップ本体3の係止突起3fの形状及び位置と、筆記具本体7の嵌合突起7bの形状とを調整することにより、ゆるみ(遊び)の少ない、よりしっかりとした嵌合を実現することが可能となる。係止突起3fの位置は、後端面4cに近い位置の方が望ましい。さらに、ゆるみが少ないため、筆記部7aがシールゴム6と確実に係合し、筆記部7aのシール不良によるインクの揮発を防止することができる。さらに、上述の嵌合及び筆記部7aとシールゴム6との係合を阻害しないように、キャップ本体3の後端面と該後端面と係合する筆記具本体7の部分とが間隙を有して構成されている(図10のA部参照)。
【0038】
クリップ部材2の環状部4の長手方向の長さは、様々に設定することができるが、短くすればするほど、キャップ本体3が弾性体であることから、挟持部5の安定性が悪くなる。従って、環状部4の長手方向の長さは、挟持部5の安定性が許容範囲内となるように決定される。また、環状部4の後端面4cが、キャップ本体3の後端面を越えないように決定されることが好ましい。
【0039】
筆記具用キャップ1に筆記具本体7を挿入する際には、筆記具用キャップ1の中心軸線と筆記具本体7の中心軸線とが一致するように、真っ直ぐに挿入されることが望ましい。
しかしながら、時として、筆記具用キャップ1に筆記具本体7が真っ直ぐ挿入されず、2つの中心軸線が斜めになった状態で挿入される。このため、両者をうまく嵌合させることができない場合がある。
【0040】
そこで、上述のように、クリップ部材2の環状部4にガイド突起4bを設け、筆記具用キャップ1に筆記具本体7が斜めに挿入された場合であっても、最終的に嵌合が完了するときには両者の中心軸線は一致した状態に案内されるように構成される。すなわち、クリップ部材2の環状部4にガイド突起4bが設けられていることによって、ガイド突起4b頂点部分を通るクリップ部材2の環状部4の実質的な内径が、ガイド突起4bを有さない通常のキャップの内径と比較して小さくなる。そのため、環状部4と筆記具本体7との間のゆるみ(遊び)が少なくなり、筆記具本体7の挿入時に両中心軸線が形成し得る角度がより小さくなる。従って、筆記具本体7が斜めに挿入された場合において、環状部4のガイド突起4bと当接した筆記具本体7の外周との間の摩擦抵抗がより小さくなり、嵌合がスムーズに行われる。
【0041】
また、ガイド突起4bを有することによって、筆記具本体7の外周との接触面積もより小さくなり、そのため摩擦抵抗もより小さくなる。なお、ガイド突起4bはその他の形状を有してもよく、その形状及び長手方向の長さは、ガイド突起4bと筆記具本体7の前方部は接触しない又は嵌合しない形状にすることで、筆記具本体7が斜めに挿入された場合であっても嵌合不良を起こさないように最適化される。
【0042】
ガイド突起4bは、筆記具用キャップ1に対する筆記具本体7のセンタリングにも役立つ。すなわち、ガイド突起4bを有することによって、上述のように環状部4と筆記具本体7との間のゆるみが少なくなり、正確にセンタリングをすることができる。また、筆記具本体7のセンタリングは主にクリップ部材2の環状部4に設けられたガイド突起4bによって行われることから、筆記具用キャップ1の全長によらずセンタリングを行うことが可能となる。
【0043】
さらに、このガイド突起4bは、例えば筆記時に、筆記具用キャップ1を筆記具本体7の後端部7dに取り付けた場合に安定した嵌合を提供する。すなわち、上述の筆記具本体7の筆記部7a側への筆記具用キャップ1の嵌合は、スナップ式の嵌合であるのに対して、筆記具本体7の後端部7dへの筆記具用キャップ1の嵌合は、圧入によって行われる。
従って、ガイド突起4b頂点部分を通るクリップ部材2の環状部4の内径と、筆記具本体7の後端部7dの外径との関係に加え、図10における圧入距離Lの長さを最適に設計することによって、所望の嵌合力を得ることが可能となる。嵌合力を設定する1つの指針として、筆記具用キャップ1を筆記具本体7の後端部7dに嵌合した状態で、後述するように、キャップ本体3の頂部等を筆跡の消去部材として使用し、紙面等を擦過した場合に、安定しているか否かということが挙げられる。
【0044】
筆記具用キャップ1は、例えば、2色成形によって作製することができる。2色成形を用いた場合には、まず、クリップ部材2を1次成形し、その後、キャップ本体3を2次成形することによって、筆記具用キャップが形成される。
【0045】
2色成形は、通常、1次成形用及び2次成形用の金型とコアピンを用い、コアピン先端周りに筆記具用キャップを成形するが、射出成形時に、コアピンが一端でしか保持されていない場合は、コアピンの曲がり等が生じ、正確な寸法形状に成形できない場合がある。
すなわち、射出成形時にコアピンの先端部は、通常、固定されておらず、他端によってのみ保持されている。
【0046】
そこで、射出成形時に、金型からキャビティ内へ突出する固定ピンがコアピン先端に当接し支持することによって、コアピンの先端部を固定し、射出成形時のコアピンの曲がりを防止している。なお、射出成形中もコアピン先端には固定ピンが当接しているため、成形品は固定ピンの形状で空隙を有する。これを利用し、固定ピンの横断面形状を選択することによって、1次成形ではクリップ部材2の切り欠き部4aを、2次成形ではキャップ本体3の貫通孔3aを、成形することができる。なお、固定ピンはコアピン側に設けられてもよい。
【0047】
筆記具用キャップ1の表面の大部分を占めるキャップ本体3が、弾性材料からなることから、筆記具用キャップ1及びそれを装着した筆記具は滑りにくい。また、クリップ部材2が環状部4を有することによって、挟持動作時に特に負荷がかかる部分が補強されるため、強度を確保することができ、物品を安定して挟持することができる。従って、筆記具を持った手や、収納した胸ポケット等からの脱落の危険性が、従来の筆記具に較べて少なくなるという利点がある。なお、本実施形態では、基部4を環状に形成したが、キャップ本体を補強することができる任意の形状、例えば、C字型の横断面を有する形状であってもよい。
【0048】
また、例えば、通常、使用者が良く行う動作であるが、掌、中指、薬指、及び小指で筆記具本体を把持し、人差し指と親指で筆記具用キャップを着脱する場合にも、滑りにくく、容易に着脱ができるという利点もある。さらに、例えば、振動や衝撃に弱いボールペン等において、筆記具がキャップ頂部から垂直に落下した場合等、筆記具本体への衝撃は弾性体からなる筆記具用キャップによって緩和され、且つ、クリップ部材2によって強度も確保される。それによって、筆記部からの液漏れ等の不具合が発生する危険性も軽減されるという利点もある。
【0049】
さらに、筆記具用キャップの大部分が弾性体によって覆われていることから、弾性体に覆われている任意の部分で擦過することによって、筆記具によって描かれた筆跡を消去する消去部材として用いることができる。例えば、当該筆記具用キャップを、鉛筆による筆跡の消去に用いることができ、また、熱によって変色するインクを有する筆記具に用いた場合には、紙面を擦過することによって摩擦熱を生じさせ、紙面上に描かれた筆跡を変色させることができる。なお、キャップ表面の表面粗さは、Ra=0.009μm〜0.014μmが望ましい。0.009μmより滑らかだと紙面上を滑り、0.014μm以上であると紙面を不用意に引っ掛けるおそれがある。また、JIS K6253 Dに規定されたデュロメータ硬度を35〜90とすることで、キャップ全体の剛性を向上させつつ、紙面を傷めずに摩擦熱を容易に発生させることができる。
【0050】
なお、弾性体に覆われている部分を消去部材として用いる場合、通常、消しゴム付き鉛筆等に見られるような、筆記具本体の筆記部とは反対側の端部への消去部材の嵌合を行っていないため、消去部材が外れる等の不具合も生じないという利点もある。
【0051】
また、キャップ本体3の射出成形において、金型のキャビティ内への入口であるゲート部をキャップ本体3の頂部ではなく、側面、例えばキャップ本体を45°に傾斜しても筆記面又は紙面に当接しない位置に配置することによって、頂部表面を滑らかな外観にすることができる。また、頂部を消去部材として使用する際には、いわゆるゲート残り(又はゲート跡)によって紙面を傷つける等の問題なく、使用することが可能となる。
【0052】
本発明の参考例によれば、上記筆記具用クリップを備えた筆記具用キャップを具備した筆記具が提供される。
【0053】
本発明の参考例によれば、当該筆記具の本体と前記筆記具用キャップとの嵌合時に、前記基部が、当該筆記具の本体に設けられた係止面と当接する後端面を有する筆記具が提供される。すなわち、筆記具用キャップ及び筆記具本体間の相対的な長手方向の位置決めが可能となる。また、嵌合時に係止面と後端面とが当接することからゆるみの少ない嵌合が実現できる。
【0054】
本発明の参考例によれば、当該筆記具の本体と前記筆記具用キャップとの嵌合時に、前記筆記具用キャップが、前記筆記具の先端の筆記部と係合して該筆記部をシールするシール部材を有する筆記具が提供される。すなわち、筆記具が揮発性の高いインクを使用している場合に、筆記部がシールされることから、筆記部からのインクの揮発を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 筆記具用キャップ
2 クリップ部材
3 キャップ本体
3c 取付穴
4 環状部、基部
5 挟持部
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
図11