(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745298
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】石炭ガス化システムおよび石炭ガス化方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/46 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
C10J3/46 G
C10J3/46 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-52885(P2011-52885)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-188539(P2012-188539A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】並木 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】小管 克志
(72)【発明者】
【氏名】糸永 眞須美
(72)【発明者】
【氏名】小水流 広行
(72)【発明者】
【氏名】武田 卓
【審査官】
内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/132549(WO,A1)
【文献】
特開2000−161076(JP,A)
【文献】
特表2008−542481(JP,A)
【文献】
特表2009−536260(JP,A)
【文献】
特開2011−006619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J1/00−3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を乾燥させながら粉砕する粉砕乾燥装置と、
該粉砕乾燥装置から供給された石炭が内部で燃焼することで、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスが生成される石炭ガス化炉と、を備える石炭ガス化システムであって、
前記粉砕乾燥装置よりも上流側に配設され、石炭を予備乾燥して前記粉砕乾燥装置に供給する予備乾燥装置と、
前記石炭ガス化炉よりも下流側に設けられ、前記石炭ガス化ガスをメタネーションするメタン合成装置と、
該メタン合成装置におけるメタネーションにより生じた熱を前記予備乾燥装置に移送する熱移送装置と、を備えていることを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項2】
請求項1記載の石炭ガス化システムであって、
前記予備乾燥装置は、石炭における水分の含有比率を20wt%よりも小さくなるように石炭を予備乾燥することを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項3】
石炭を乾燥させながら粉砕する粉砕乾燥装置と、
該粉砕乾燥装置から供給された石炭が内部で燃焼することで、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスが生成される石炭ガス化炉と、
該石炭ガス化炉よりも下流側に設けられ、前記石炭ガス化ガスをメタネーションするメタン合成装置と、を備える石炭ガス化システムにおいて、前記石炭ガス化炉に、乾燥、粉砕された石炭を供給する、石炭ガス化システムを用いた石炭ガス化方法であって、
前記メタン合成装置におけるメタネーションにより生じた熱を利用して石炭を予備乾燥した後、前記粉砕乾燥装置に供給することを特徴とする石炭ガス化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭をガス化する石炭ガス化システムおよび石炭ガス化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の石炭ガス化システムとして、例えば下記特許文献1記載の構成が知られている。該石炭ガス化システムでは、石炭を粉砕して微粉炭を製造する微粉炭機と、空気を酸素及び窒素のガスに分離する空気分離装置と、微粉炭と酸素及びガスとを導入して製品ガスを製造するガス化炉とを備えている。前記微粉炭機には、微粉炭を乾燥させる低酸素濃度ガス源が供給され、微粉炭は、該微粉炭機内で乾燥されながら粉砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−59383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、石炭ガス化システムには、石炭として、例えば褐炭や亜瀝青炭などの低品位石炭が好適に用いられている。
しかしながら、これらの低品位石炭は、水分の質量比が高いことから、微粉炭機内で乾燥させながら粉砕することは効率が悪かった。そのため、例えば、微粉炭機内で石炭を微粉炭に粉砕した後でも、該微粉炭の乾燥が不十分である場合があり、この場合、微粉炭を単に乾燥させるために微粉炭機を使用しなくてはならず、システム全体として効率が悪いという問題がある。なお、微粉炭の乾燥が不十分な場合、微粉炭をガス化炉に搬送する際に、流路が閉塞する等のおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、効率的に石炭ガス化ガスを生成することができる石炭ガス化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本願の請求項1に係る石炭ガス化システムは、石炭を乾燥させながら粉砕する粉砕乾燥装置と、該粉砕乾燥装置から供給された石炭が内部で燃焼することで、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスが生成される石炭ガス化炉と、を備える石炭ガス化システムであって、前記粉砕乾燥装置よりも上流側に配設され、石炭を予備乾燥して前記粉砕乾燥装置に供給する予備乾燥装置
と、前記石炭ガス化炉よりも下流側に設けられ、前記石炭ガス化ガスをメタネーションするメタン合成装置と、該メタン合成装置におけるメタネーションにより生じた熱を前記予備乾燥装置に移送する熱移送装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、前記予備乾燥装置を備えているので、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えるときに、該石炭の乾燥が十分となる程度、予備乾燥装置で石炭を予備乾燥しておくことができる。これにより、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えた後、石炭を単に乾燥させるためだけの粉砕乾燥装置の使用を抑えることができる。
また、前記熱移送装置を備えているので、メタネーションにより生じた熱を排熱とせずに有効に利用することができる。
【0008】
また、本願の請求項2に係る石炭ガス化システムは、前記予備乾燥装置は、石炭における水分の含有比率を20wt%よりも小さくなるように石炭を予備乾燥することを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項
3に係る石炭ガス化方法は、石炭を乾燥させながら粉砕する粉砕乾燥装置と、該粉砕乾燥装置から供給された石炭が内部で燃焼することで、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスが生成される石炭ガス化炉と、
該石炭ガス化炉よりも下流側に設けられ、前記石炭ガス化ガスをメタネーションするメタン合成装置と、を備える
石炭ガス化システムにおいて、前記石炭ガス化炉に、乾燥、粉砕された石炭を供給する
、石炭ガス化システムを用いた石炭ガス化方法であって、
前記メタン合成装置におけるメタネーションにより生じた熱を利用して石炭を予備乾燥した後、前記粉砕乾燥装置に供給することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えるときに、該石炭の乾燥が十分となる程度、石炭を、粉砕乾燥装置に供給する前に予備乾燥しておくことができる。これにより、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えた後、石炭を単に乾燥させるためだけの粉砕乾燥装置の使用を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1記載の石炭ガス化システムによれば、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えた後、石炭を単に乾燥させるためだけの粉砕乾燥装置の使用を抑えることができるので、効率的に石炭ガス化ガスを生成することができる。
また、メタネーションにより生じた熱を排熱とせずに有効に利用することができるので、当該石炭ガス化システムのエネルギーロスを抑えることができる。
【0014】
本願の請求項2記載の石炭ガス化システムによれば、予備乾燥装置が、石炭における水分の含有比率を20wt%よりも小さくなるように石炭を予備乾燥するので、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0016】
本願の請求項
3記載の石炭ガス化方法によれば、粉砕乾燥装置で石炭を粉砕し終えた後、石炭を単に乾燥させるためだけの粉砕乾燥装置の使用を抑えることができるので、効率的に石炭ガス化ガスを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化システムを説明する。
図1に示すように、石炭ガス化システム1は、石炭を原料として水素ガスと一酸化炭素ガスを主成分とする石炭ガス化ガスを生成し、この石炭ガス化ガスから最終的にメタン、メタノールおよびアンモニア等、製品である合成天然ガス(SNG)を製造するプラント設備である。
【0019】
石炭ガス化システム1は、予備乾燥装置2と、粉砕乾燥装置3と、石炭ガス化炉4と、顕熱回収装置5と、チャー回収装置6と、シフト反応装置7と、酸性ガス処理装置8と、メタン合成装置9と、空気分離装置10と、熱交換装置11と、を備えている。
【0020】
一般に石炭は、外径が不均一であり、その種類によって所望の値より多くの水分を含む場合がある。そこで、まず予備乾燥装置2および粉砕乾燥装置3において、石炭は、例えば平均粒子径が30〜60(μm)程度の微粉炭となるように粉砕され、さらに所定の水分含有量となるように乾燥される。
【0021】
続いて、石炭は、石炭ガス化炉4内に供給するために搬送ガス等により所定の圧力まで昇圧され、その後で石炭ガス化炉4に搬送(気流搬送)される。なお、粉砕乾燥装置3の後から石炭ガス化炉4までは、乾燥した石炭中の水分量が変化しないように、石炭は密閉された空間内を移動する。
【0022】
一方で、空気分離装置10は、空気を圧縮して液化し、液体となった空気から沸点の違いを利用して、乾燥した酸素ガスや窒素ガス等を分離する。空気分離装置10で分離された酸素ガスは、石炭ガス化炉4に供給される。
【0023】
そして、石炭ガス化炉4は、その内部で粉砕乾燥装置3から搬送された石炭を、空気分離装置10から供給された酸素を用いて熱分解(燃焼)することにより、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする高温の石炭ガス化ガスやチャー(未ガス化石炭残滓または熱分解残滓)などを生成する。これらの石炭ガス化ガスおよびチャーは、石炭ガス化炉4から顕熱回収装置5に搬送される。
【0024】
顕熱回収装置5では、石炭ガス化炉4から搬送された石炭ガス化ガスおよびチャーを、冷却用の水との間で熱交換させて顕熱を回収し冷却する。
顕熱回収装置5で冷却された石炭ガス化ガスおよびチャーは、顕熱回収装置5からチャー回収装置6に供給され、チャー回収装置6でチャーが回収される。
【0025】
チャー回収装置6を通過した石炭ガス化ガスは、シフト反応装置7に供給される。そして、石炭ガス化ガス中の一酸化炭素ガスに対する水素ガスの比率を一定の値まで高めるために、シフト反応装置7中に水蒸気が供給され、下記の化学反応式(1)で示されるシフト反応により、一酸化炭素ガスが消費されて代わりに水素ガスが発生する。
【0026】
CO+H
2O→CO
2+H
2 ・・・(1)
【0027】
シフト反応装置7で成分を調整された石炭ガス化ガスは、酸性ガス処理装置8に供給され、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素ガスや、硫黄を成分として含むガス等の酸性ガスが回収される。
酸性ガス処理装置8で精製された石炭ガス化ガスは、メタン合成装置9に供給される。そしてメタン合成装置9で、該石炭ガス化ガスが発熱を伴いながらメタネーションされることにより、前述したSNGが製造される。
【0028】
ここで熱交換装置11は、石炭ガス化炉4、顕熱回収装置5およびメタン合成装置9に冷却用の水を供給し、これらの各装置4、5、9で生じる熱を回収する。このとき、熱交換装置11側の水は昇温させられて水蒸気となる。そして熱交換装置11は、該水蒸気を、例えば上記の化学反応式(1)で示されたシフト反応用の水蒸気等としてシフト反応装置7等に供給する。
【0029】
次に、予備乾燥装置2および粉砕乾燥装置3について詳しく説明する。
予備乾燥装置2は、粉砕乾燥装置3よりも上流側に配設され、石炭を予備乾燥して前記粉砕乾燥装置3に供給する。該予備乾燥装置2は、粉砕乾燥装置3で石炭を粉砕して微粉炭としたときに、該微粉炭の乾燥が十分となる程度、粉砕乾燥装置3に石炭を供給する前に、石炭を予備乾燥するものであり、例えば、石炭における水分の含有比率を20wt%よりも小さくなるように石炭を予備乾燥する。なお一般に、例えば褐炭や亜瀝青炭などの低品位石炭は、水分の含有比率が約20wt%以上であり、例えば約30wt%〜70wt%程度となっている。
【0030】
また予備乾燥装置2には、空気分離装置10で分離されたガスのうち、石炭ガス化炉4での石炭ガス化ガスの生成に用いられず、かつ不燃性である窒素ガスが供給される。該窒素ガスは、石炭ガス化炉4、顕熱回収装置5およびメタン合成装置9内の熱を回収した熱交換装置11側の水蒸気により昇温させられた後、予備乾燥装置2に供給される。この窒素ガスは、石炭に直接接触することにより石炭を加熱して乾燥させる乾燥用のガス(流体)として作用するとともに、乾燥させた石炭を搬送する搬送ガスとしても作用する。
【0031】
ここで前記窒素ガスは、熱交換装置11により、予備乾燥装置2に供給される石炭よりも高温に昇温される。すなわち、空気分離装置10および熱交換装置11は、該メタン合成装置9におけるメタネーションにより生じた熱を、水蒸気および窒素ガスを介して予備乾燥装置2に移送する熱移送装置12を構成する。
なお本実施形態では、熱移送装置12は、メタン合成装置9で生じた熱だけでなく、石炭ガス化炉4および顕熱回収装置5における余剰顕熱も予備乾燥装置2に移送している。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る石炭ガス化システム1および石炭ガス化方法によれば、前記予備乾燥装置2を備えているので、粉砕乾燥装置3で石炭を粉砕し終えるときに、該石炭の乾燥が十分となる程度、予備乾燥装置2で石炭を予備乾燥しておくことができる。これにより、粉砕乾燥装置3で石炭を粉砕し終えた後、石炭を単に乾燥させるためだけの粉砕乾燥装置3の使用を抑えることが可能になり、効率的に石炭ガス化ガスおよびSNGを生成することができる。
【0033】
また予備乾燥装置2が、石炭における水分の含有比率を20wt%よりも小さくなるように石炭を予備乾燥するので、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
また、前記熱移送装置12を備えているので、メタネーションにより生じた熱を排熱とせずに有効に利用することが可能になり、当該石炭ガス化システム1のエネルギーロスを抑えることができる。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、熱移送装置12が、メタン合成装置9で生じた熱だけでなく、石炭ガス化炉4および顕熱回収装置5における余剰顕熱も予備乾燥装置2に移送するものとしたが、これら各装置4、5、9のうち、少なくとも1つの装置で生じる熱を移送するものであってもよい。
さらに前記熱移送装置12に代えて、外部の熱により窒素ガスを昇温する昇温装置を備えていてもよい。
【0035】
また前記実施形態では、予備乾燥装置2には、空気分離装置10で分離された窒素ガスが供給されるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、外部の窒素ボンベ等から窒素ガスを供給してもよい。
さらに前記実施形態では、予備乾燥装置2が、窒素ガスにより石炭を乾燥するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば不活性ガスを用いてもよい。
【0036】
また予備乾燥装置2は、前記実施形態に示したものに限られず、粉砕乾燥装置3よりも上流側に配設され、石炭を予備乾燥して粉砕乾燥装置3に供給する構成であれば、適宜変更することが可能である。
さらに前記実施形態では、石炭ガス化システム1がメタン合成装置9を備え、石炭を原料としてSNGを製造するものとしたが、本願発明は、メタン合成装置9を備えていなシステムであって、SNGを製造せずに単に石炭ガス化ガスを製造する石炭ガス化システムに適用することも可能である。
【0037】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 石炭ガス化システム
2 予備乾燥装置
3 粉砕乾燥装置
9 メタン合成装置
12 熱移送装置