(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法であって、前記供給原料流が5重量%未満の(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有し、前記生成物流が5重量%から17重量%の(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有する方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
多くのCFC類は、オゾン破壊性の化合物であることが知られているので、より商業的に許容される化学薬品が優先され、これらのオゾン破壊性化合物の使用は削減されてきた。いくつかの場合において、効果的で、より環境に優しい代替のCFC化合物が見出されている。1つの例として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下「1233zd」という)には、数ある使用の中で、例えば熱伝導剤、発泡剤および溶媒としての、非常に様々な用途があることが見出されている。「Heat Transfer Methods Using Heat Transfer Compositions Containing Trifluoromonochloropropene(トリフルオロモノクロロプロペンを含む熱伝達組成物を使用した熱伝達方法)」という名称の米国特許公報第2008/0098755A1号(特許文献1)、および「Foaming Agents, Foamable Compositions, Foams and Articles Containing Fluorine Substituted Halogens, and Methods of Making the Same(フッ素置換されたハロゲンを含む発泡剤、発泡可能な組成物、発泡体、及び製品、並びにその製造方法)」という名称の米国特許公報第2008/0207788A1号(特許文献2)、ならびに「Hydro−Fluorination of Chlorinated Hydrocarbons(塩素化された炭化水素のヒドロフッ素化)」という名称の米国特許第6,362,383B1号(特許文献3)は、このような使用の例を開示している。1233zdは、複数の異なる方法で生成することができる。例えば、「Process for Dehydrofluorination of 3−chloro−1,1,1,3−tetrafluoropropane to 1−chloro−3,3,3−trifluoropropene(3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンへの脱フッ化水素化)」という名称の特許出願第61/047,613号(特許文献4);「Vapor Phase Process for Making 1,1,1,3,3−pentafluoropropane and 1−chloro−3,3,3−trifluoropropene(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン及び1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの気相製造法)」という名称の米国特許第5,710,352号(特許文献5)、「Method for Producing 1,1,1,3,3−pentafluoropropane(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造方法)」という名称の米国特許第6,111,150号(特許文献6)、および「Low Temperature Production of 1−chloro−3,3,3−trifluoropropene(HCFC−1233ZD)(1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233zd)の低温製造)」という名称の米国特許第6,844,475B1号(特許文献7)は、1233zdを製造するためのいくつかの方法を記載している。これらの特許文献のすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0010】
1233zdは、物理的特性の異なる2つの異性体を有する。2つの異性体間の異なる特性の1つの例としては、1233zd(Z)の沸点は約38℃である一方、1233zd(E)の沸点は約19℃である。一部の用途では、溶液の特性を制御するために、純粋な1233zd(E)、純粋な1233zd(Z)、(Z)および(E)異性体の特定のブレンド、または1233zd異性体の1つもしくは両方と別の化合物との特定のブレンドのいずれかを使用することが望ましい。例えば、一部の溶媒用途では、比較的高い沸点を有することが望ましい。いくつかのこのような用途では、純粋な1233zd(Z)は、純粋な1233zd(E)または2つの1233zd異性体の混合物のいずれかよりも望ましい物理的特性(例えば、より高い沸点)を有することになる。
【0011】
いくつかの従来技術の異性化反応において、試薬(本明細書では、任意の化学的に反応性の物質として定義され、即ち、1233zd自体あるいは本明細書に記載の様々な触媒ではないものとして定義される)は、1233zdの異性化を容易にするために使用される。例えば、1つの従来技術の異性化反応において、臭素が、1233zdを異性化するために1233zd(E)に添加される。本発明の一部の実施形態では、異性化反応は、試薬を含まないか、または異性化反応は、いかなる試薬の使用も必要としない。以下にさらに記載するとおり、一部の実施形態では、試薬の不存在によって、純粋な1233zdの生成が容易になり、より詳細には、純粋な1233zd(Z)および純粋な1233zd(E)の生成が容易になり得る。
【0012】
以下にさらに記載するとおり、本発明の一部の実施形態では、供給原料流は、1233zd(Z)、1233zd(E)、またはこれらの混合物のいずれかから本質的になる。しかしながら、一部の実施形態では、供給原料流は、1233zd(Z)または1233zd(E)以外の材料を含有し得る。例えば、供給原料流は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハロゲン化オレフィンまたはその他化合物などのその他の化合物を、5重量%未満(少なくとも95重量%の1233zd)、3重量%未満(少なくとも97重量%の1233zd)、2重量%未満(少なくとも98重量%の1233zd)、1.5重量%未満(少なくとも98.5重量%の1233zd)、または1重量%未満(少なくとも99重量%の1233zd)含有し得る。これらの化合物のいくつかは、1233zdの生成からの副生成物または未反応の化合物であり得る。一部の実施形態では、これらの化合物は、本明細書に記載した異性化反応に大きな影響は与えない。他の実施形態では、これらの化合物のいくつかは、異性化反応の範囲内で1233zdまたは他の化合物と反応し、その過程で、異性化反応の生成物流の収量または純度に影響を与え得る。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の方法が、1233zdの(Z)および(E)異性体間の変換のために提供される。この方法には、(E)異性体対(Z)異性体の平衡比が存在する熱力学的平衡を有する異性化反応が含まれる。以下に記載する実施例によって示されるように、この平衡比は、温度、反応容器の種類や形態、および/または1種または複数の触媒の存在を含めたある種の反応条件によって、変化し得る。Z対Eの異性体の比が平衡比よりも大きい場合、1233zd(Z)の少なくとも一部は、1233zd(E)に変換される。Z対E異性体の比が平衡比よりも小さいようなその他の実施形態では、1233zd(E)の少なくとも一部は、1233zd(Z)に変換される。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法には、加熱面の温度を50℃より高く制御する工程が含まれる。この加熱面は、1233zd(E)、または1233zd(E)および1233zd(Z)の混合物から本質的になる供給原料流と接触する。この供給原料流は、1233zd(E)の少なくとも一部を1233zd(Z)に変換するのに十分な時間、前記加熱面と接触し、生成物流が生成される。その他の実施形態では、この加熱面は、1233zd(Z)、または1233zd(E)および1233zd(Z)の混合物から本質的になる供給原料流と接触する。この供給原料流は、1233zd(Z)の少なくとも一部を1233zd(E)に変換するのに十分な時間、前記加熱面と接触し、生成物流が生成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記加熱面には、反応容器の内部が含まれる。加えて、または別法では、前記加熱面には、充填材料の外部表面、例えば反応容器中に充填された充填材料の外部表面も含まれる。一部の実施形態では、反応容器は、供給原料流を装填することができる回分式反応容器である。いくつかのこのような実施形態では、供給原料流は、回分式反応器中に密封することができ、所望の量の1233zdを異性体化するのに十分な時間が経過した後、反応容器を開放して、生成物流を取り出すことができる。その他の実施形態では、反応容器は、連続式反応容器、例えば、第1の開口部および第2の開口部、ならびに第1および第2の開口部の間に流体経路を備えた反応容器である。供給原料流は、第1の開口部を通して反応容器に供給され、所望の量の1233zdを異性体化するのに十分な速度で反応容器を通過する。得られた生成物流は、第2の開口部から出る。一実施例において、反応容器は、第1の端部に第1の開口部および第2の端部に第2の開口部を備えた細長い反応容器(例えば、モネル(MONEL)(商標)チューブ)である。
【0016】
一部の実施形態では、反応容器は、充填材料で、例えばステンレス鋼充填剤で、部分的または完全に充填することができる。いくつかの実施形態では、充填材料の表面積が比較的広いことによって、(E)および(Z)異性体間の変換反応が容易になり得る。また、充填材料を支持する支持構造は、反応容器中、または反応容器上に配置されてもよい。例えば、充填材料は、充填材料の下、周囲、および/またはその中に配置されるメッシュまたはその他の構造によって支持されていてもよい。支持構造は、充填材料(例えば、ステンレス鋼)と同様の材料、ニッケル、または任意のその他の適した材料を含むことができる。
【0017】
充填材料は、1種または複数の触媒材料を含むこともできる。1233zdの異性化に適した触媒の例は、金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、ルイス酸金属ハロゲン化物、ゼロ価金属、ならびにこれらの触媒の組合せである。
【0018】
この触媒に、金属酸化物またはハロゲン化金属触媒が含まれる場合、触媒は、原子数が約21から約57の遷移金属、原子数が約13から約81のIIIA族からの金属、原子数が約51から約83のVA族からの金属、セリウムなどの希土類金属、原子数が約3から約37のIA族からのアルカリ金属、原子数が約12から約56のIIA族からのアルカリ土類金属、またはこれらの金属の任意の適した混合物もしくは合金を含むことができる。
【0019】
この触媒に、ルイス酸金属ハロゲン化物が含まれる場合、触媒は、原子数が約21から約57の遷移金属、原子数が約13から約81のIIIA族からの金属、原子数が約51から約83のVA族からの金属、セリウムなどの希土類金属、原子数が約3から約37のIA族からのアルカリ金属、原子数が約12から約56のIIA族からのアルカリ土類金属、またはこれらの金属の任意の適した混合物もしくは合金を含むことができる。
【0020】
適した触媒の具体的な例は、AlF
3、Cr
2O
3、フッ化Cr
2O
3、酸化ジルコニウムおよびこれらのハロゲン化したもの、または酸化アルミニウムおよびこれらのハロゲン化したものである。加えて、触媒は、使用の前に活性化することができる。いくつかの適した触媒の活性化手順の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Processes for Geometric Isomerization of Halogenated Olefins(ハロゲン化されたオレフィンの幾何異性化の方法)」という名称の米国特許公開第2008/0103342A1号公報に見出すことができる。
【0021】
供給原料流は、気相で反応容器に供給することができる。あるいは、供給原料流は、液相で反応容器に供給され、反応容器内の加熱面の温度によって、この供給原料流は気化する。反応容器内の加熱面に適した温度の例は、約50℃より高い温度、約100℃より高い温度、約250℃より高い温度、約50℃から約400℃の間、約50℃から約350℃の間、約100℃から約350℃の間、約150℃から約350℃の間、約200℃から約300℃の間、約50℃、約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、または約300℃である。
【0022】
異性化反応中の反応容器内の圧力は、大気圧であるか、大気圧をわずかに超えてもよく、または、その圧力は、大気圧から300psiの間、大気圧から200psiの間、または大気圧から100psiの間とすることができる。連続式反応容器では、供給原料流は、大気圧をわずかに超えたところ、もしくは上で特定した任意の高い圧力範囲以内で供給することができ、または供給原料流は、大気圧未満で反応容器に供給することができ、反応容器の出口を、真空下に設置することができる。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、1233zd(E)を1233zd(Z)に変換する方法は、1233zd(E)、または1233zd(Z)が約5重量%未満であるEおよびZ異性体の混合物を含むか、またはこれらから本質的になる供給原料流を提供する工程を含む。その他の実施形態では、供給原料流は、約7重量%未満の1233zd(Z)または約9重量%未満の1233zd(Z)を有する。供給原料流は、所望の量の1233zd(Z)が生成物流中に存在するように、十分な時間、加熱面と接触する。いくつかの実施形態では、生成物流は、1233zd(Z)および1233zd(E)から本質的になる。生成物流中の1233zd(Z)の量は、約5重量%を超える量、約7重量%を超える量、約9重量%を超える量、約10重量%を超える量、約12重量%を超える量、約15重量%を超える量、約5重量%から約20重量%の間、約5重量%から約17重量%の間、約5重量%から約15重量%の間、約5重量%から約12重量%の間、または約5重量%、約7重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、もしくは約15重量%とすることができる。一部の実施形態では、生成物流中の1233zd(Z)の量は、1233zd(Z)の平衡比に相当するが、その他の実施形態では、1233zd(Z)の量は、1233zd(Z)の平衡比未満に相当する。
【0024】
本発明のその他の実施形態では、1233zd(Z)を1233zd(E)に変換する方法は、1233zd(Z)、または1233zd(Z)が約15重量%を超える(E)および(Z)異性体の混合物を含むか、またはこれらから本質的になる供給原料流を提供する工程を含む。その他の実施形態では、供給原料流は、約25重量%を超える1233zd(Z)、約50重量%を超える1233zd(Z)、約75重量%を超える1233zd(Z)、約85重量%を超える1233zd(Z)、約90重量%を超える1233zd(Z)、または約95重量%を超える1233zd(Z)を有する。供給原料流は、所望の量の1233zd(E)が生成物流中に存在するように、十分な時間、加熱面と接触する。いくつかの実施形態では、生成物流は、1233zd(Z)および1233zd(E)から本質的になる。生成物流中の1233zd(E)の量は、約15重量%を超える量、約25重量%を超える量、約40重量%を超える量、約50重量%を超える量、約55重量%を超える量、約60重量%を超える量、約70重量%を超える量、約80重量%を超える量、約90重量%を超える量、または約95重量%を超える量でもよい。一部の実施形態では、生成物流中の1233zd(E)の重量%は、約55重量%、約60重量%、約65重量%、または約70重量%である。一部の実施形態では、生成物流中の1233zd(E)の重量%は、供給原料流中に存在する1233zd(E)の重量%より少なくとも約1重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%高い。いくつかの実施形態では、生成物流中の1233zd(Z)の量は、約5重量%から約50重量%の間、約10重量%から約40重量%の間、または約20重量%から約40重量%の間である。一部の実施形態では、生成物流中の1233zd(E)の量は、1233zd(E)の平衡比に相当するが、その他の実施形態では、1233zd(E)の量は、1233zd(E)の平衡比未満に相当する。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン間の変換方法は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの異性体の一方または両方を含むか、またはこれらから本質的になる、気化した供給原料流を提供する工程を含む。この供給原料流は、(E)異性体対(Z)異性体の第1の比を有する。本明細書に記載したとおり、温度制御反応容器を使用することができ、この温度制御反応容器には、内部表面、第1の開口部、第2の開口部、当該第1と第2の開口部とを流体接続する経路、および当該経路に配置された充填材料が含まれる。その加熱される面(加熱面)には、内部表面および充填材料が含まれ、前記供給原料流を所望の温度で保持したこの加熱面と接触させる。所望の温度とは、本明細書で述べた温度範囲のいずれか、例えば50℃から350℃の間とすることができる。供給原料流は、この供給原料流を、(E)対(Z)の異性体の第2の比を有する生成物流に変換するのに十分な時間、前記加熱面と接触させることができる。
【0026】
上述の方法には平衡反応が含まれるので、生成物流は、1233zdの両方の異性体の混合物を含むことになる。しかしながら、物理的特性が異なる(例えば、沸点が異なる)ので、この2つの異性体は、分離プロセスを用いて、互いに分離することができる。例えば、上記の方法のいずれかからの生成物流は、適した蒸留操作に直接供給することができる。その他の実施形態では、生成物流は、蒸留カラムに供給される前に中間単位操作を経て供給されるか、または蒸留カラムを経て供給される前に保管される。いくつかの実施形態では、蒸留プロセスによって、1233zd(Z)および1233zd(E)の実質的に純粋な、または純粋な、分離した生成物流が得られる。(Z)または(E)の分離した生成物流のうち1つだけが商業的に望ましい場合、望ましくない分離した生成物流のすべてまたは一部は、異性化プロセスに戻して再循環させることができる。
【0027】
上記の方法の生成物流が1233zdの異性体以外の追加の化合物を含む一部の実施形態では、この追加の化合物は、(Z)または(E)異性体の1つと同様の特性(例えば、沸点)を有し得ることがあり、この場合は、追加の化合物が(Z)または(E)生成物流のいずれかまたは両方において捕捉され得ることになる。このような実施形態において、追加の化合物を有する(Z)または(E)生成物流は、特定の用途に有用であり得る。その他の実施形態では、追加の化合物を有する生成物流は廃棄してもよく、追加の化合物を有する生成物流の一部は、異性化方法の1つのために供給原料流に再循環することができ、および/または生成物流の一部は、追加の化合物の1種またはすべてから1233zdを分離することになるさらなる単位操作に送ることができる。その他の実施形態では、追加の化合物は、1233zd(Z)および1233zd(E)の両方とは異なる特性を有し得ることがあり、この場合は、1233zd(Z)、1233zd(E)および追加の化合物を3つ以上の生成物流に分離することができる。
【0028】
さらに、1233zdを生成するいくつかの方法では、生成物流には、副生成物および未反応の材料と一緒に、(Z)および(E)異性体の両方が含まれる。一部のこのような実施形態では、分離操作(例えば、蒸留操作)は、(Z)および(E)の生成物流を互いに分離するために使用されるが、副生成物および未反応の材料の多くは、沸点および/または異なる特性を有し、このことによって、副生成物および未反応の材料の少なくとも一部は、生成物流の1つにおいて、例えば1233zd(E)の生成物流において捕捉される。このような実施形態では、1233zd(E)の生成物流は、その他の用途のために捕捉することができ、純粋または実質的に純粋な1233zd(Z)の生成物流は、上述の異性化方法の1つのための供給原料流として、1233zd(E)および1233zd(Z)の混合物から実質的になる生成物流を生成するために使用されてもよい。上述したように、異性化方法からの生成物流は、次いで、(Z)および(E)の異性体のための分離した生成物流を得るために分離プロセスに供給されてもよい。
【0029】
一部の実施形態では、1233zd生成操作は、第1の分離操作と直接または間接的に連続して行われ、(Z)異性体、(E)異性体ならびに副生成物および未反応の材料を分離する。第1の分離操作は、異性化操作と直接または間接的に連続して行うことができ、次に、第2の分離操作と直接または間接的に連続して行うことができる。本明細書で使用される「間接的に連続して行われる」には、別の単位操作を経て連続して行われること、ならびに生成物流が、次の操作に供給される前に一時的に保管される実施形態の両方が含まれる。
【実施例】
【0030】
実施例1
99.9%の純粋な1233zd(E)の試料を、AlF
3を充填したモネル(MONEL)(商標)チューブに供給した。このチューブを、炉を用いて200℃の温度で保持した。1233zd(E)を、ほぼ周囲圧力でチューブに通過させ、チューブを出たときにドライアイスで冷却したシリンダー中に捕捉した。次いで、同様の出発物質を、300℃に設定した炉を用いて再度チューブに通過させた。それぞれの温度での試行後、捕捉した材料の試料を取って、GC(ガスクロマトグラフィー)によって分析した。200℃でAlF
3を通過した試料は、4.4%の1233zd(Z)に変換しており、まだ透明であった。300℃で触媒を通過した試料の色は、わずかに黄色であり、10.8%の1233zd(Z)に変換していた。
【0031】
実施例2
99.9%の純粋な1233zd(E)の試料を、206gのステンレス鋼充填剤で充填したモネル(MONEL)(商標)チューブに通過させた。このチューブを、炉で300℃に加熱し、1233zd(E)をチューブに通過させて、チューブ出口で、ドライアイスで冷やしたシリンダー中に収集した。収集した材料を、反応チューブを通して再循環し、熱平衡が達成されたかどうかを調査した。収集した材料の再循環を、反応チューブへの全4回の通過に対して行った。各通過後に試料を取って、これらの試料を分析した結果を表1に示す。この実験で収集したすべての試料の色は透明であった。この実施例は、非常に高い収量で1233zd(E)を熱的に1233zd(Z)に変換することができることを示している。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例3
熱伝達を高めるためにニッケルメッシュで満たした、モネル(MONEL)(商標)予熱器(内径2.54センチ(1インチ)、長さ81.28センチ(32インチ))を装備した、モネル(MONEL)(商標)反応器(内径5.08センチ(2インチ)、長さ81.28センチ(32インチ))を用いて、1233zd(E)の1233zd(Z)への変換を実施した。ペレット化したフッ素化Cr
2O
3触媒1.5Lで、反応器を満たした。触媒を支持するために、ニッケルメッシュを反応器の最上部および底部に設置した。マルチポイント熱電対を、反応器の中心に挿入した。99.9%の純粋な1233zd(E)を、362.9g(0.8ポンド)/時間の速度で反応器に導入した。供給原料は、反応予熱器に入る前に気化させた。この実験に対する反応温度を、250℃に設定した。反応器全体の温度勾配は、決して3〜5℃を超えなかった。反応生成物の試料を1時間ごとに取って、これらの試料をGC分析した結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例4
反応温度を300℃に設定した以外は、実施例3を繰り返した。反応器全体の温度勾配は、決して3〜5℃を超えなかった。反応生成物の試料を1時間ごとに取って、これらの試料をGC分析した結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例5
熱伝達を高めるためにニッケルメッシュで満たした、モネル(MONEL)(商標)予熱器(内径2.54センチ(1インチ)、長さ81.28センチ(32インチ))を装備したモネル(MONEL)(商標)反応器(内径5.08センチ(2インチ)、長さ81.28センチ(32インチ))を用いて、1233zd(Z)の1233zd(E)への変換を実施した。ペレット化したフッ素化Cr
2O
3触媒1.5Lで、反応器を満たした。触媒を支持するために、ニッケルメッシュを反応器の最上部および底部に設置した。マルチポイント熱電対を、反応器の中心に挿入した。約10.0重量%の1233zd(E)および86.3重量%の1233zd(Z)を含有する供給原料を、317.5g(0.7ポンド)/時間の速度で反応器に導入した。供給原料は、反応予熱器に入る前に気化させた。この実験に対する反応器温度を、100℃から200℃の間で変化させた。反応器全体の温度勾配は、決して3〜5℃を超えなかった。反応生成物の試料を1時間ごとに取り出して、これらの試料をGC分析した結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
比較例
110mLのガラスの圧力容器を窒素でパージして空気を除去し、13.75gである99.7%の純粋な1233zd(E)および0.07gの臭素(1233zd(E)に対して0.4モル%)を装填した。この混合物を、60Wの広範スペクトル光を用いて、17.75時間、室温で照射した。分析結果は、95.85%の1233zd(E)および3.57%の1233zd(Z)を示した。1233zd(E)に対して2モル%の臭素を用いた以外は、この実験を繰り返した。22時間の照射後、分析結果は、95.1%の(E)異性体および3.27%の(Z)異性体を示した。したがって、実験的に、熱力学的な比は、約95.5%の(E)異性体および3.4%の(Z)異性体である。このことを確認するために、89.5%の1233zd(E)および10.2%の1233zd(Z)で構成される14.86gの混合物を、0.4gの臭素と合わせ、この混合物を上で述べたとおり19時間照射した。分析結果は、95.5%の1233zd(E)および3.2%の1233zd(Z)を示した。この比較例での試薬である臭素の使用は、試薬を必要としない異性化反応である実施例1〜5とは著しく異なるものである。
【0040】
これまでの説明を使用すれば、当業者は、さらなる労力を必要とせず、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、これまでの好ましい特定の実施形態は、単に実例として解釈されるべきであり、開示のその他の部分をいかなることがあっても決して制限しない。既述において、温度のすべては、修正不要の摂氏で示され、すべての部および割合は、特に指示がなければ重量による。
【0041】
既述の説明から、当業者は、本発明の不可欠な特徴を確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用法および条件に本発明を適合させるために、本発明の様々な変更および修正を行うことができる。
[本発明の態様]
1.(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換する方法であって、
(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、または(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約5重量%未満である(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合物から本質的になる供給原料流を提供すること;
前記供給原料流を、(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一部を(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換するのに十分な時間、150℃から350℃の間で保持される加熱面と接触させ、生成物流を生成すること;および
前記生成物流を蒸留して(E)および(Z)異性体を互いに分離すること;
を含む、前記方法。
2.(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換する方法であって、
(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、または(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約15重量%を超える(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合物から本質的になる供給原料流を提供すること;
前記供給原料流を、(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一部を(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換するのに十分な時間、50℃と350℃の間で保持される加熱面と接触させ、生成物流を生成すること;および
前記生成物流を蒸留して(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを互いに分離すること;
を含む、前記方法。
3.前記生成物流が、約5重量%から約17重量%の間の(Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有する、1に記載の方法。
4.前記生成物流中の(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの量が、前記供給原料流中の(E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの重量%より少なくとも5%多い、2に記載の方法。
5.内部表面、第1の開口部、第2の開口部、前記第1と第2の開口部とを流体接続する経路、および前記経路に配置された充填材料が含まれる温度制御反応容器を提供することをさらに含み、ここで前記加熱面には、前記内部表面および前記充填材料が含まれる、1から4のいずれか一つに記載の方法。
6.前記供給原料流が、前記供給原料流を前記加熱面と接触させる工程の前に気化されている、1から5のいずれか一つに記載の方法。
7.前記加熱面には、充填材料の外部表面が含まれる、1から6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記充填材料が、金属酸化物、ハロゲン化金属酸化物、ルイス酸金属ハロゲン化物もしくはゼロ価金属、またはこれらの混合物もしくは合金を含む触媒材料である、7に記載の方法。
9.前記触媒材料が、AlF
3、フッ素化Cr
2O
3、またはCr
2O
3である、8に記載の方法。
10.前記変換方法が試薬を含まない、1から9のいずれか一つに記載の方法。