(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1アンモニアセンサ部および前記第2アンモニアセンサ部は、共通の基準電極を用いて構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマルチガスセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態に係るマルチガスセンサ装置1について、
図1から
図9までを参照しながら説明する。本実施形態のマルチガスセンサ装置1は、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス(被測定ガス)に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する尿素SCRシステムに用いられるものである。より具体的には、排気ガスに含まれるNOxと、アンモニア(尿素)とを反応させた後の排気ガスに含まれる一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)およびアンモニアの濃度を測定するものである。
【0028】
なお、本実施形態のマルチガスセンサ装置1が適用されるエンジンは、上述のディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンにも適用することができ、特にエンジンの形式を限定するものではない。
【0029】
マルチガスセンサ装置1には、
図1および
図2に示すように、センサ本体であるマルチガスセンサ2と、マルチガスセンサ2を制御すると共にセンサ出力を演算処理することにより、NO、NO
2およびアンモニアの濃度を算出する制御部(演算部)3と、が主に設けられている。
【0030】
マルチガスセンサ2には、
図1に示すように、センサ素子部10と、主体金具110と、セパレータ134と、接続端子138と、が主に設けられている。なお、以下の説明では、マルチガスセンサ2のセンサ素子部10が配置されている側(
図1の下側)を先端側、接続端子138が配置されている側(
図1の上側)を後端側と表記する。
【0031】
センサ素子部10は、軸線O方向に延びる板形状を有する。センサ素子部10の後端には電極端子部10A、10Bが配置されている。
図1においては、図示を容易にするために、センサ素子部10に形成された電極端子部を、電極端子部10Aおよび電極端子部10Bのみとしているが、実際には、後述するNOxセンサ部11や第1アンモニアセンサ部21や第2アンモニアセンサ部22が有する電極等の数に応じて、複数の電極端子部が形成されている。なお、センサ素子部10のより詳細な説明は後述する。
【0032】
主体金具110は、マルチガスセンサ2をディーゼルエンジンの排気管に固定するネジ部111が外表面に形成された筒状の部材である。主体金具110には、軸線方向に貫通する貫通孔112と、貫通孔112の径方向内側に突出する棚部113と、が主に設けられている。棚部113は、貫通孔112の径方向外側から中心に向かって先端側へ近づく傾きを有する内向きのテ―パ面として形成されている。
【0033】
また、主体金具110は、センサ素子部10の先端側を、貫通孔112から先端側に突出させ、センサ素子部10の後端側を貫通孔112の後端側に突出させた状態で保持するものである。
【0034】
主体金具110の貫通孔112の内部には、先端側から後端側に向かって順に、センサ素子部10の径方向周囲を取り囲む筒状の部材であるセラミックホルダ114、粉末充填層である滑石リング115,116、セラミックスリーブ117が積層されている。
【0035】
セラミックスリーブ117と主体金具110の後端側の端部との間には、加締めパッキン118が配置されている。セラミックホルダ114と主体金具110の棚部113との間には、金属ホルダ119が配置されている。金属ホルダ119は、滑石リング115やセラミックホルダ114を保持するものである。主体金具110の後端側の端部は、加締めパッキン118を介してセラミックスリーブ117を先端側に向かって押し付けるように加締められる部分である。
【0036】
主体金具110の先端側の端部には、外部プロテクタ121および内部プロテクタ122が設けられている。外部プロテクタ121および内部プロテクタ122は、先端側の端部が閉塞されたステンレス鋼などの金属材料から形成された筒状の部材である。内部プロテクタ122は、センサ素子部10の先端側の端部を覆った状態で主体金具110に溶接され、外部プロテクタ121は、内部プロテクタ122を覆った状態で主体金具110に溶接されている。
【0037】
主体金具110の後端側の端部には、筒状に形成された外筒131の先端側の端部が固定されている。さらに、外筒131の後端側の端部である開口には、当該開口を閉塞するグロメット132が配置されている。
【0038】
グロメット132には、リード線141が挿通されるリード線挿通孔133が形成されている。リード線141は、センサ素子部10の電極端子部10Aや、電極端子部10Bに電気的に接続されるものである。
【0039】
セパレータ134は、センサ素子部10の後端側に配置された筒状に形成された部材である。セパレータ134の内部に形成された空間は、軸線方向に貫通する挿通孔135である。セパレータ134の外表面には、径方向外側に突出する鍔部136が形成されている。
【0040】
セパレータ134の挿通孔135には、センサ素子部10の後端部が挿入され、電極端子部10A、10Bがセパレータ134の内部に配置される。
【0041】
セパレータ134と外筒131との間には、筒状に形成された保持部材137が配置されている。保持部材137は、セパレータ134の鍔部136と当接すると共に、外筒131の内面とも当接することにより、セパレータ134を外筒131に対して固定保持するものである。
【0042】
接続端子138は、セパレータ134の挿通孔135内に配置される部材であり、センサ素子部10の電極端子部10Aや電極端子部10Bと、リード線141と、をそれぞれ独立に電気的に接続する導電部材である。なお、
図1では、図示を容易にするために、2つの接続端子138のみが図示されている。
【0043】
マルチガスセンサ装置1の制御部3は、
図2に示すように、マルチガスセンサ装置1が搭載された車両の車両側制御装置であるECU200と電気的に接続されている。ECU200は、制御部3で算出された排気ガス中のNO濃度、NO
2濃度およびアンモニア濃度を示すデータを受信し、受信データに基づいてディーゼルエンジンの運転状態の制御処理を実行したり、触媒に蓄積されたNOxの浄化処理を実行したりするものである。
【0044】
ここで、センサ素子部10の構成の詳細について、
図2を参照しながら説明する。なお、
図2では説明の便宜のために、センサ素子部10の長手方向に沿う断面図のみを表示している。
【0045】
センサ素子部10には、NOxセンサ部11と、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22と、が主に設けられている。本実施形態におけるNOxセンサ部11、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22は、それぞれ公知のNOxセンサと同様な構成、公知のアンモニアセンサと同様な構成を有している。
【0046】
NOxセンサ部11は、主に、絶縁層10e、第1固体電解質体12a、絶縁層10d、第3固体電解質体16a、絶縁層10c、第2固体電解質体18a、及び絶縁層10b、10aが、この順に積層された構造となっている。上述の各絶縁層10a、10b、10c、10d、10eはアルミナを主体として形成されている。
【0047】
さらにNOxセンサ部11には、第1測定室S1が第1固体電解質体12aと第3固体電解質体16aとの層間に設けられ、NOx測定室に相当する第2測定室S2が、第1固体電解質体12aと第2固体電解質体18aとの層間に、第3固体電解質体16aを貫通して設けられている。
【0048】
被測定ガスが導入される第1測定室S1の入口端(
図2の左側の端)には、第1拡散抵抗体14が配置されている。第1測定室S1における入口端と反対側の端(
図2の右側の端)には、第1測定室S1と第2測定室S2とを区画する第2拡散抵抗体15が配置されている。上述の第1拡散抵抗体14および第2拡散抵抗体15はアルミナ等の多孔質物質から形成され、被測定ガスの透過性を有している。
【0049】
NOxセンサ部11には、さらに、NOxセンサ部11や、第1アンモニアセンサ部21や、第2アンモニアセンサ部22を活性温度にまで昇温し、それぞれのセンサを構成する固体電解質体における酸素イオンの導電性を高めるヒータ(ヒータ部)19が設けられている。ヒータ19は、白金または白金を含む合金を、センサ素子部10の長手方向に沿って延びる長尺板状に形成したものであり、絶縁層10bおよび絶縁層10aの間に埋設されるものである。
【0050】
その他にNOxセンサ部11には、第1ポンピングセル12と、酸素濃度検出セル16と、第2ポンピングセル18と、が設けられている。
【0051】
第1ポンピングセル12は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体とする第1固体電解質体12aと、白金を主体とする内側第1ポンピング電極(第1電極)12bおよび外側第1ポンピング電極(第1電極)12cと、から主に構成されている。
【0052】
内側第1ポンピング電極12bは、第1固体電解質体12aにおける第1測定室S1に露出する面に設けられている。さらに内側第1ポンピング電極12bは、多孔質体からなる保護層12dによって第1測定室S1側の表面が覆われている。
【0053】
外側第1ポンピング電極12cは、内側第1ポンピング電極12bの対極となる電極であり、内側第1ポンピング電極12bとの間に第1固体電解質体12aを挟んで配置されるものである。絶縁層10eにおける外側第1ポンピング電極12cが配置された領域に相当する部分は、くり抜かれて多孔質体12eが充填されている。多孔質体12eは、外側第1ポンピング電極12cと外部との間でガス(酸素)の出入りを可能とするものである。
【0054】
酸素濃度検出セル16は、第1ポンピングセル12と下流側で、かつ第2ポンピングセル18の上流側に配置されている。この酸素濃度検知セル16は、ジルコニアを主体とする第3固体電解質体16aと、白金を主体とし、第3固体電解質体16aを間に挟んで配置された検知電極16bおよび基準電極16cと、から主に構成されている。
【0055】
検知電極16bは、第3固体電解質体16aにおける第1測定室S1に露出する面であって、内側第1ポンピング電極12bよりも下流側、言い換えると、第2拡散抵抗体15側の領域に設けられている。
【0056】
検知電極16bの対極である基準電極16cは、絶縁層10cを切り抜いて形成した基準酸素室17の内部に配置されている。この基準酸素室17の内部には、多孔質体が充填されている。基準酸素室17には、第1測定室S1から送りこまれた酸素が存在し、基準酸素室17内の酸素が酸素基準とされている。
【0057】
第2ポンピングセル18は、ジルコニアを主体とする第2固体電解質体18aと、白金を主体とする内側第2ポンピング電極(第2電極)18bおよび第2ポンピング対電極(第2電極)18cと、から主に構成されている。
【0058】
内側第2ポンピング電極18bは、第2固体電解質体18aにおける第2測定室S2に露出する領域に設けられている。第2ポンピング対電極18cは、第2固体電解質体18aにおける基準酸素室17に露出する領域であって、基準電極16cと対向する部分に設けられている。
【0059】
さらに、上述の内側第1ポンピング電極12b、検知電極16b、および、内側第2ポンピング電極18bは、それぞれ基準電位に接続されている。
【0060】
その一方で、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22は、NOxセンサ部11の外表面、より具体的には、絶縁層10eの上に形成されている。第1アンモニアセンサ部21は、NOxセンサ部11における基準電極16cと軸線O方向に略同位置(例えば
図2の上側)に配置され、第2アンモニアセンサ部22は、第1アンモニアセンサ部21に対して後端側に隣接して配置されている。
【0061】
本発明においては、酸素濃度検知セル16の温度が測定されており(本発明の温度検知部に相当)、この測定された温度をもとに、ヒータ19が加熱されている。また、第1アンモニアセンサ部21の温度が650℃となる位置に、第1アンモニアセンサ部21が配置されている。なお、本実施形態では、第2アンモニアセンサ部22は、第1アンモニアセンサ部21よりも温度が100℃低くなる位置に配置されている。
【0062】
第1アンモニアセンサ部21は、
図2および
図3に示すように、白金を主体とする第1基準電極(基準電極)21aと、ジルコニアを主体とするアンモニア用固体電解質体23と、酸化コバルトおよびジルコニアを主体とする第1中間層21bと、金を主体とする第1アンモニア電極21cと、から主に構成されている。第2アンモニアセンサ部22は、白金を主体とする第2基準電極(基準電極)22aと、アンモニア用固体電解質体23と、酸化コバルトおよびジルコニアを主体とする第2中間層22bと、金を主体とする第2アンモニア電極22cと、から主に構成されている。さらに、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22は、多孔質からなる保護層24によって一体に覆われている。
【0063】
第1基準電極21aおよび第2基準電極22aは、絶縁層10eの外側面(
図3の上側の面)に配置された矩形状の電極であり、絶縁層10eの長手方向(
図3の左右方向)に延びる、白金を主体とする基準電極リード25により一体的に形成されている。基準電極リード25の後端側(
図3の右側)の端部は、電極端子部を形成している。
【0064】
アンモニア用固体電解質体23は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の酸素イオン伝導性材料で構成されたものであり、絶縁層10eとの間に第1基準電極21aおよび第2基準電極22aを挟んで配置されるものである。言い換えると、アンモニア用固体電解質体23は、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22に共通のものである。
【0065】
第1中間層21bおよび第2中間層22bは、酸化コバルト(Co
3O
4)を含む材料から形成された層であり、第1中間層21bおよび第2中間層22bは、アンモニア用固体電解質体23の外側面であって、それぞれ第1基準電極21aおよび第2基準電極22aと対向する位置に配置されたものである。
【0066】
第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cは、金を主成分とする材料から形成された電極であり、検知電極として働くものである。第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cは、それぞれ第1中間層21bおよび第2中間層22bの外側面に配置されたものである。言い換えると、第1アンモニア電極21cは、第1基準電極21aとの間にアンモニア用固体電解質体23および第1中間層21bを挟んで配置されたものであり、第2アンモニア電極22cは、第2基準電極22aとの間にアンモニア用固体電解質体23および第2中間層22bを挟んで配置されたものである。
【0067】
第1アンモニア電極21cには、第1アンモニア電極リード21dが第1アンモニア電極21cから後端側に向かって延びて形成され、第2アンモニア電極22cには、第2アンモニア電極リード22dが第2アンモニア電極22cから後端側に向かって延びて形成されている。第1アンモニア電極リード21dおよび第2アンモニア電極リード22dは、白金を主成分とする材料で形成されている。また、第1アンモニア電極リード21dおよび第2アンモニア電極リード22dの後端側の端部は、電極端子部を形成している。
【0068】
第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cは、アンモニアとの反応性が高い。そのため、第1アンモニア電極21cと第1基準電極21aとの間、および、第2アンモニア電極22cと第2基準電極22aとの間には起電力(電位差)が生じる。
【0069】
なお、本実施形態では、第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cと第1中間層21bおよび第2中間層22bとを分けて設けているが、第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cに、第1中間層21bおよび第2中間層22bに含まれる酸化コバルトを含有させて、第1中間層21bおよび第2中間層22bを省略してもよい。
【0070】
保護層24は、第1アンモニア電極21c及び第2アンモニア電極22cへの被毒物質の付着を防止すると共に、外部から第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22に流入する被測定ガスの拡散速度を調整するものである。保護層24を形成する材料としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、スピネル(MgAl
2O
4)、シリカアルミナ、および、ムライトの群から選ばれる少なくとも1種の材料を例示できる。保護層24による被測定ガスの拡散速度は、保護層24の厚さや、粒径や、粒度分布や、気孔率や、配合比率などを調整することにより調整される。
【0071】
なお、上述の実施形態のように保護層24を設けてもよいし、保護層24を設けることなく第1アンモニア電極21cや、第2アンモニア電極22cなどを露出させてもよく、特に限定するものではない。
【0072】
上述の第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22は、以下の説明のようにして製造することができる。
【0073】
まず、絶縁層10eの上に第1基準電極21aおよび第2基準電極22aを形成する材料を印刷と同様な手法(以下、「印刷手法」と表記する。)を用いて配置し、その上に、アンモニア用固体電解質体23を形成する材料を印刷手法で配置する。その後、1500℃で焼成することにより、第1基準電極21a、第2基準電極22a、および、アンモニア用固体電解質体23が形成される。
【0074】
次いで、アンモニア用固体電解質体23の上に、第1中間層21bおよび第2中間層22bを形成する材料を印刷手法で配置する。その後、1000℃で焼成することにより、第1中間層21bおよび第2中間層22bが形成される。
【0075】
さらに、第1中間層21bおよび第2中間層22bの上に、それぞれ第1アンモニア電極21c及び第2アンモニア電極22cを形成する材料を印刷により配置し、所定温度(例えば、1000℃)で焼成することにより、第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cが配置される。最後に、第1基準電極21a、第2基準電極22a、アンモニア用固体電解質体23、第1中間層21b、第2中間層22b、第1アンモニア電極21cおよび第2アンモニア電極22cを覆うように、アルミナ等を含むペーストをスクリーン印刷により配置し、所定温度(例えば、1000℃)で焼成することにより、保護層24が形成される。以上により第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22が完成する。
【0076】
制御部3には、
図2に示すように、回路基板上に配置されたアナログ回路である制御回路50と、マイクロコンピュータ60と、が設けられている。
【0077】
マイクロコンピュータ60は、制御部3の全体を制御するものである。マイクロコンピュータ60には、中央演算処理装置であるCPU61と、記憶手段であるRAM62およびROM63と、信号入出力部64と、A/Dコンバータ65と、クロック(図示せず。)と、が主に設けられている。マイクロコンピュータ60は、ROM63などに予め格納されたプログラムをCPU61が実行することにより、各種の処理を行うものである。
【0078】
制御回路50は、基準電圧比較回路51と、Ip1ドライブ回路52と、Vs検出回路53と、Icp供給回路54と、Ip2検出回路55と、Vp2印加回路56と、ヒータ駆動回路57と、第1起電力検出回路58と、第2起電力検出回路59と、から主に構成されている。
【0079】
Ip1ドライブ回路52は、NOxセンサ部11の外側第1ポンピング電極12cに電気的に接続され、Vs検出回路53およびIcp供給回路54は、基準電極16cに並列に電気的に接続されている。Ip2検出回路55およびVp2印加回路56は、第2ポンピング対電極18cに並列に電気的に接続され、ヒータ駆動回路57は、ヒータ19に電気的に接続されている。
【0080】
第1起電力検出回路58は、第1アンモニアセンサ部21における第1基準電極21aおよび第1アンモニア電極21cに電気的に接続され、第2起電力検出回路59は、第2アンモニアセンサ部22における第2基準電極22aおよび第2アンモニア電極22cに電気的に接続されている。さらに、第1起電力検出回路58は、第1基準電極21aおよび第1アンモニア電極21cの間の起電力である、第1アンモニア起電力EMFを検出してマイクロコンピュータ60に出力している。第2起電力検出回路59は、同様に、第2基準電極22aおよび第2アンモニア電極22cの間の起電力である、第2アンモニア起電力EMFを検出してマイクロコンピュータ60に出力している。
【0081】
Ip1ドライブ回路52は、内側第1ポンピング電極12bと外側第1ポンピング電極12cとの間に第1ポンピング電流Ip1を供給するとともに、供給した第1ポンピング電流Ip1を検出するものである。
【0082】
Vs検出回路53は、検知電極16bと基準電極16cとの間の電圧Vsを検出し、検出した結果を基準電圧比較回路51に出力するものである。基準電圧比較回路51は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路53の出力(電圧Vs)とを比較し、比較した結果をIp1ドライブ回路52に出力するものである。
【0083】
Ip1ドライブ回路52は、電圧Vsが上述の基準電圧と等しくなるようにIp1電流の流れる向きと、大きさとを制御するとともに、第1測定室S1内の酸素濃度をNOxが分解しない程度の所定値に調整するものである。
【0084】
Icp供給回路54は、検知電極16bと基準電極16cとの間に微弱な電流Icpを流すものであり、電流Icpを供給することで、酸素を第1測定室S1から基準酸素室17内に送り込み、基準電極16cを基準となる所定の酸素濃度に晒させるものである。
【0085】
Vp2印加回路56は、内側第2ポンピング電極18bと第2ポンピング対電極18cとの間に、一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加し、NOxを窒素と酸素に分解させるものである。一定電圧Vp2は、被測定ガス中のNOxガスが酸素とN
2ガスに分解する程度の電圧である。
【0086】
Ip2検出回路55は、第2ポンピングセル18に流れる第2ポンピング電流Ip2を検出するものである。第2ポンピング電流Ip2は、NOxの分解により生じた酸素が第2測定室S2から第2固体電解質体18aを介して第2ポンピング対電極18c側に汲み出される際に流れる電流である。
【0087】
Ip1ドライブ回路52は、検出した第1ポンピング電流Ip1の値をA/Dコンバータ65に出力するものであり、Ip2検出回路55は、検出した第2ポンピング電流Ip2の値をA/Dコンバータ65に出力するものである。A/Dコンバータ65は、第1ポンピング電流Ip1および第2ポンピング電流Ip2の値をデジタル変換し、信号入出力部64を介してCPU61に出力するものである。
【0088】
次に、制御回路50による制御について以下に説明する。
まず、エンジンが始動されて外部から制御回路50に電力が供給されると、ヒータ駆動回路57からヒータ19に電力が供給される。電力が供給されたヒータ19は熱を発生して、第1ポンピングセル12、酸素濃度検出セル16、および、第2ポンピングセル18を活性化温度まで加熱させる。
【0089】
ヒータ19によってNOxセンサ部11が目標とする温度まで加熱されると、それに伴ってNOxセンサ部11の上に配置された第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22もそれぞれの所望温度に昇温される。
【0090】
さらに、Icp供給回路54から、検知電極16bと基準電極16cとの間に電流Icpが供給される。すると酸素が酸素を第1測定室S1から基準酸素室17内に送り込まれ、送りこまれた酸素は酸素基準となる。
【0091】
第1ポンピングセル12や、酸素濃度検出セル16や、および、第2ポンピングセル18が活性化温度に加熱されると、第1ポンピングセル12により、第1測定室S1内の酸素の汲み出しが行われる。つまり、第1測定室S1に流入した被測定ガス(排ガス)中の酸素が、第1ポンピングセル12の内側第1ポンピング電極12bから外側第1ポンピング電極12cに向かって汲み出される。
【0092】
第1測定室S1内の酸素濃度は、酸素濃度検出セル16の電極間電圧Vsに対応した濃度になる。Ip1ドライブ回路52は、電極間電圧Vsが上述の基準電圧となるように、第1ポンピングセル12に流れる第1ポンピング電流Ip1を制御する。このようにすることで、第1測定室S1内の酸素濃度は、NOxが分解しない程度に調整される。
【0093】
第1測定室S1において酸素濃度が調整された被測定ガスは、次に、第2測定室S2に流入する。第2測定室S2において被測定ガスに含まれるNOxは、窒素と酸素に分解される。つまり、第2ポンピングセル18の電極間電圧として、Vp2印加回路56から一定電圧Vp2(例えば450mV)が印加されると、NOxは窒素と酸素に分解される。一定電圧Vp2は、被測定ガス中のNOxガスが酸素とN2ガスに分解する程度の電圧であり、酸素濃度検出セル16の制御電圧の値より高い電圧である。
【0094】
NOxの分解により生じた酸素は、第2ポンピングセル18により第2測定室S2から汲み出される。このとき第2ポンピングセル18には、酸素を汲み出すために第2ポンピング電流Ip2が供給される。第2ポンピング電流Ip2とNOx濃度との間には直線比例関係があるため、Ip2検出回路55によって検知される第2ポンピング電流Ip2は、NOx濃度と直線比例する値となる。
【0095】
その一方で、第1アンモニアセンサ部21の第1基準電極21aと第1アンモニア電極21cとの間には、被測定ガスに含まれるアンモニア濃度に応じて起電力が発生する。第1起電力検出回路58は、第1基準電極21aと第1アンモニア電極21cとの間の起電力を第1アンモニア起電力として検出する。同様に、第2アンモニアセンサ部22の第2基準電極22aと第2アンモニア電極22cとの間にも、アンモニア濃度に応じて起電力が発生する。第2起電力検出回路59は、第2基準電極22aと第2アンモニア電極22cとの間の起電力を第2アンモニア濃起電力として検出する。
【0096】
なお、第2ポンピング電流Ip2の値には、第2測定室S2における被測定ガスの酸素濃度、NO
2濃度およびアンモニア濃度の影響も含まれている。また、第1アンモニアセンサ部21から出力される第1アンモニア起電力EMFおよび第2アンモニアセンサ部22から出力される第2アンモニア起電力EMFには、被測定ガスの酸素濃度、NO濃度、NO
2濃度および各センサ部11、21、22の温度の影響も含まれている。本実施形態では、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力から酸素濃度の影響を取り除いた後に、NO濃度、NO
2濃度およびアンモニア濃度を演算処理により求めている。なお、当該演算処理の詳細については後述する。また、酸素濃度は、第1ポンピング電流Ip1から関係式を用いて求められるものを用いている。
【0097】
ここで、マイクロコンピュータ60のROM63には、以下に説明する各種のデータが格納されている。CPU61は、ROM63から当該各種データを読み込み、第2ポンピング電流Ip2の値、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力から酸素濃度の影響を取り除くなどの種々の演算処理を行う。
【0098】
ROM63には、「アンモニア起電力−アンモニア濃度出力関係式」と、「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」と、「第2ポンピング電流Ip2−NOx濃度出力関係式」が格納されている。
【0099】
なお、各種データは、上述のように所定の関係式として設定されていてもよいし、センサの出力から各種ガス濃度を算出するものであればよく、例えばテーブルとして設定されていてもよい。その他にも、予めガス濃度が既知のガスモデルを用いて得られた値(関係式やテーブルなど)とされていてもよい。
【0100】
「アンモニア起電力−アンモニア濃度出力関係式」は、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22から出力されたアンモニア起電力と、被測定ガスのアンモニア濃度に係るアンモニア濃度出力との関係を表す式である。
【0101】
「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」は、酸素濃度別に設定されたものであり、酸素濃度の影響を受けた第1アンモニア濃度出力と、酸素濃度の影響を除去した補正アンモニア濃度出力との関係を表す式、および、酸素濃度の影響を受けた第2アンモニア濃度出力と、酸素濃度の影響を除去した補正アンモニア濃度出力との関係を表す式である。
【0102】
なお、「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」に設定されていない所定の酸素濃度におけるアンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式は、以下のように求めることができる。つまり、所定の酸素濃度よりも低濃度の設定された酸素濃度における「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」と、高濃度の設定された酸素濃度における「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」と、から外挿法を用いて所定の酸素濃度におけるアンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式を求めることができる。
【0103】
「第2ポンピング電流Ip2−NOx濃度出力関係式」は、第2ポンピング電流Ip2と、被測定ガスのNOx濃度との関係を表す式である。
【0104】
次に、マイクロコンピュータ60のCPU61において実行される、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力EMFおよび第2アンモニア起電力EMFから、NO濃度、NO
2濃度およびアンモニア濃度を求める演算処理について説明する。
【0105】
CPU61は、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力が入力されると、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力を求める演算処理を行う。具体的には、ROM63から「アンモニア起電力−アンモニア濃度出力関係式」を呼び出し、当該関係式を用いて第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力を算出する処理を行う。
【0106】
次いで、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力から酸素濃度の影響を取り除いた補正第1アンモニア濃度出力および補正第2アンモニア濃度出力を求める演算処理を行う。具体的には、ROM63から「アンモニア濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」を呼び出し、当該関係式を用いて補正第1アンモニア濃度出力および補正第2アンモニア濃度出力を算出する処理を行う。
【0107】
さらに、第2ポンピング電流Ip2からNOx濃度出力を求める演算処理を行う。具体的には、ROM63から「第2ポンピング電流Ip2−NOx濃度出力関係式」を呼び出し、当該関係式を用いてNOx濃度出力を算出する処理を行う。
【0108】
NOx濃度出力、補正第1アンモニア濃度出力および補正第2アンモニア濃度出力が求められると、CPU61は、以下に説明する補正式(1)から補正式(3)を用いた演算を行うことで、被測定ガスのNO濃度、NO
2濃度およびNH
3濃度を求める。
【0109】
x=(1+ay)(1+bz)A+cz ・・・(1)
x=(1+dy+ez)B+fz ・・・(2)
C=y+0.8z+1.2x ・・・(3)
ここで、xはNH
3濃度であり、yはNO濃度であり、zはNO
2濃度である。また、Aは第1アンモニア濃度出力であり、Bは第2アンモニア濃度出力であり、CはNOx濃度出力である。さらに、a,b,c,e,fは補正係数である。
【0110】
なお、補正式(1)は第1アンモニアセンサ部21の特性に基づいて定まり、補正式(2)は第2アンモニアセンサ部22の特性に基づいて定まり、補正式(3)はNOxセンサ部11の特性に基づいて定まる式である。なお、(1)から(3)は、補正式の一例を示したものであり、ガス検知特性に応じて、他の補正式や、係数等を適宜変更しても良い。
【0111】
上述の補正式(1)から(3)に基づくNO濃度y、NO
2濃度zおよびNH
3濃度xの計算手順は以下の通りである。
1.補正式(2)および(3)より、式をx=・・・z、y=・・・zの形式に変形する。
2.上述の式を補正式(1)に代入してzについての2次方程式を求める。
3.求められたNO
2濃度zの2次方程式についての、解の公式を用いてNO
2濃度zの値を求める。なお、zの2次項の係数が0の場合には、NH
3濃度xを0とする。
4.補正式(1)と(3)、zの値から、NO濃度yを算出する。
5.補正式(3)にNO濃度yおよびNO
2濃度zを入力してNH
3濃度xを算出する。
【0112】
次に、
図4から
図9を参照しながら、第1アンモニアセンサ部21、第2アンモニアセンサ部22およびNOxセンサ部11の検出特性を説明するとともに、本実施形態の補正処理を行う前後のNO濃度、NO
2濃度およびNH
3濃度の違いについて説明する。
【0113】
まず、
図4を用いて第1アンモニアセンサ部21、第2アンモニアセンサ部22およびNOxセンサ部11の単体のNO、NO
2およびNH
3に対する検出特性について説明する。なお、
図4(a)が第1アンモニアセンサ部21の検出特性を説明するグラフであり、
図4(b)が第2アンモニアセンサ部22の検出特性を説明するグラフであり、
図4(c)がNOxセンサ部11検出特性を説明するグラフである。また、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)で表示されたグラフがNH
3のみが投入された際のセンサからの出力濃度を表すグラフであり、白抜き三角(△)がNOのみが投入された際の出力濃度を表すグラフであり、白抜き丸(○)がNO
2のみが投入された際のセンサからの出力濃度を表すグラフである。
【0114】
高温側に配置された第1アンモニアセンサ部21について見ると、NH
3についてのみ、投入濃度に比例した正確な出力濃度が出力されていることが判る。NOに対しては出力がなく、NO
2に対しては投入濃度が高くなるに伴い、出力濃度が低下している。また、低温側に配置された第2アンモニアセンサ部22についても、第1アンモニアセンサ部21と略同様な出力濃度となっている。
【0115】
NOxセンサ部11について見ると、NO、NO
2およびNH
3に対して投入濃度が高くなるに伴い、出力濃度が増加している。特に注目する点としては、NOxセンサ部11が、NOやNO
2と同様に、NH
3に対しても感度を有していることである。
【0116】
次に、
図5を用いて、NOを含む被測定ガスに対して投入されるNH
3の濃度を変化させた場合(NO
2は含まれていない)の第1アンモニアセンサ部21、第2アンモニアセンサ部22およびNOxセンサ部11の検出特性について説明する。なお、被測定ガスに含まれるNO濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)で表示されたグラフは、NO濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)は50ppmである場合を表している。
【0117】
図5(a)に示している、第1アンモニアセンサ部21について見ると、NO濃度の高低に関わらず、投入されたNH
3濃度に比例した正確な出力濃度が出力されていることが判る。言い換えると、第1アンモニアセンサ部21は、NO濃度の影響をほとんど受けていないことが判る。
【0118】
また、
図5(b)に示している、第2アンモニアセンサ部22について見ると、NO濃度が高くなるに伴い、投入されたNH
3濃度よりも低い出力濃度が出力され、グラフの傾きが変化することが判る。言い換えると、NO濃度が高くなるに伴い、第2アンモニアセンサ部22の検出感度が低下することが判る。
【0119】
さらに、
図5(c)に示している、NOxセンサ部11について見ると、投入されたNH
3濃度に比例した値の出力濃度が出力され、かつ、NO濃度が高くなるに伴い出力濃度を示すグラフが高濃度側へ平行移動する(オフセットする)ことが判る。
【0120】
次に、
図6を用いて、NO
2を含む被測定ガスに対して投入されるNH
3の濃度を変化させた場合(NOは含まれていない)の第1アンモニアセンサ部21、第2アンモニアセンサ部22およびNOxセンサ部11の検出特性について説明する。なお、被測定ガスに含まれるNO
2濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)で表示されたグラフは、NO
2濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)は50ppmである場合を表している。
【0121】
図6(a)に示している、第1アンモニアセンサ部21について見ると、投入されるNH
3濃度の変化に対する出力濃度の値の変化に与えるNO
2濃度の影響は小さいが、投入されるNH
3濃度の変化に対する出力濃度の値そのものは小さくなることが判る。つまり、出力濃度のグラフの傾きの変化は小さいが、グラフが低濃度側に平行移動することが判る。言い換えると、NO
2濃度が高くなると、第1アンモニアセンサ部21は、主に出力濃度が低濃度側にオフセットすることが判る。
【0122】
図6(b)に示している、第2アンモニアセンサ部22について見ると、投入されるNH
3濃度の変化に対する出力濃度の値の変化に与えるNO
2濃度の影響が大きいことが判る。つまり、出力濃度のグラフの傾きの変化が大きいことが判る。その一方で、当該グラフの平行移動は、第1アンモニアセンサ部21と比較すると小さい。言い換えると、NO
2濃度が高くなると、第2アンモニアセンサ部22は、主に検出感度が低下することが判る。
【0123】
図6(c)に示している、NOxセンサ部11について見ると、投入されたNH
3濃度に比例した値の出力濃度が出力され、かつ、NO
2濃度が高くなるに伴い出力濃度を示すグラフが高濃度側へ平行移動する(オフセットする)ことが判る。
【0124】
次に、
図7を用いて、NOを含む被測定ガスに対して投入されるNO
2の濃度を変化させた場合(NH
3は含まれていない)の第1アンモニアセンサ部21、第2アンモニアセンサ部22およびNOxセンサ部11の検出特性について説明する。なお、被測定ガスに含まれるNO濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)で表示されたグラフは、NO濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)は50ppmである場合を表している。
【0125】
図7(a)に示している、第1アンモニアセンサ部21について見ると、投入されるNO
2濃度が高くなるに伴い出力濃度の値は低下し、かつ、出力濃度はNO濃度の高低の影響をほとんど受けていないことが判る。
【0126】
図7(b)に示している、第2アンモニアセンサ部22について見ると、第1アンモニアセンサ部21と同様に、投入されるNO
2濃度が高くなるに伴い出力濃度の値は低下し、かつ、出力濃度はNO濃度の高低の影響をほとんど受けていないことが判る。
【0127】
図7(c)に示している、NOxセンサ部11について見ると、投入されるNO
2濃度に比例した値の出力濃度が出力され、かつ、NO濃度が高くなるに伴い出力濃度を示すグラフが高濃度側へ平行移動する(オフセットする)ことが判る。
【0128】
次に
図8および
図9を用いて、本実施形態の補正処理を行う前後のNO濃度、NO
2濃度およびNH
3濃度の違いについて説明する。
図8(a)は、妨害ガスであるNOを含む被測定ガスに対して投入されるNH
3の濃度を変化させた場合(NO
2は含まれていない)の求められた補正前のNH
3濃度と、補正後のNH
3濃度とを示すグラフである。
【0129】
なお、被測定ガスに含まれるNO濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NO濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNH
3濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNH
3濃度を表している。
【0130】
図8(a)に示される補正前のNH
3濃度を見ると、NO濃度が高くなるに伴い、求められたNH
3濃度が低下し、感度が低下していることが判る。言い換えると、求められたNH
3濃度にNO濃度の影響が含まれていることが判る。これに対して、補正後のNH
3濃度を見ると、NO濃度に関わらず、投入されたNH
3濃度を正しく表すNH
3濃度が求められていることが判る。言い換えると、NO濃度の影響が排除されたNH
3濃度が求められていることが判る。
【0131】
図8(b)は、妨害ガスであるNH
3を含む被測定ガスに対して投入されるNOの濃度を変化させた場合(NO
2は含まれていない)の求められた補正前のNO濃度と、補正後のNO濃度とを示すグラフである。
【0132】
なお、被測定ガスに含まれるNH
3濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NH
3濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNO濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNO濃度を表している。
【0133】
図8(b)に示される補正前のNO濃度を見ると、NH
3濃度が高くなるに伴い、求められたNO濃度が増加し、NO濃度の値がオフセットしていることが判る。言い換えると、求められたNO濃度にNH
3濃度の影響が含まれていることが判る。これに対して、補正後のNO濃度を見ると、求められたNO濃度の値がオフセットしているものの、補正前と比較するとオフセット幅が減少していることが判る。言い換えると求められたNO濃度に対するNH
3濃度の影響が抑制されていることが判る。
【0134】
図8(c)は、妨害ガスであるNH
3を含む被測定ガスに対して投入されるNO
2の濃度を変化させた場合(NOは含まれていない)の求められた補正前のNO
2濃度と、補正後のNO
2濃度とを示すグラフである。
【0135】
なお、被測定ガスに含まれるNH
3濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NH
3濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNO
2濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNO
2濃度を表している。
【0136】
図8(c)に示される補正前のNO
2濃度を見ると、NH
3濃度が高くなるに伴い、求められたNO
2濃度が増加し、NO
2濃度の値がオフセットしていることが判る。言い換えると、求められたNO
2濃度にNH
3濃度の影響が含まれていることが判る。これに対して、補正後のNO
2濃度を見ると、求められたNO
2濃度の値がオフセットしているものの、補正前と比較するとオフセット幅が減少していることが判る。言い換えると求められたNO
2濃度に対するNH
3濃度の影響が抑制されていることが判る。
【0137】
図9(a)は、妨害ガスであるNO
2を含む被測定ガスに対して投入されるNH
3の濃度を変化させた場合(NOは含まれていない)の求められた補正前のNH
3濃度と、補正後のNH
3濃度とを示すグラフである。
【0138】
なお、被測定ガスに含まれるNO
2濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NO
2濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNH
3濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNH
3濃度を表している。
【0139】
図9(a)に示される補正前のNH
3濃度を見ると、NO
2濃度が高くなるに伴い、投入されるNH
3濃度の変化に対する求められたNH
3濃度の値の変化が減少するとともに、求められたNH
3濃度の値も低下することが判る。言い換えるとグラフの傾きが小さくなると共に、グラフが低濃度側にオフセットすることが判る。これに対して、補正後のNH
3濃度を見ると、求められたNH
3濃度におけるNO
2濃度の影響が大幅に抑制されていることが判る。
【0140】
図9(b)は、妨害ガスであるNO
2を含む被測定ガスに対して投入されるNOの濃度を変化させた場合(NH
3は含まれていない)の求められた補正前のNO濃度と、補正後のNO濃度とを示すグラフである。
【0141】
なお、被測定ガスに含まれるNO
2濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NO
2濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNO濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNO濃度を表している。
【0142】
図9(b)に示される補正前のNO濃度を見ると、NO
2濃度が高くなるに伴い、求められたNO濃度が増加し、NO濃度の値がオフセットしていることが判る。言い換えると、求められたNO濃度にNO
2濃度の影響が含まれていることが判る。これに対して、補正後のNO濃度を見ると、求められたNO濃度におけるNO
2濃度の影響が大幅に抑制されていることが判る。
【0143】
図9(c)は、妨害ガスであるNOを含む被測定ガスに対して投入されるNO
2の濃度を変化させた場合(NH
3は含まれていない)の求められた補正前のNO
2濃度と、補正後のNO
2濃度とを示すグラフである。
【0144】
なお、被測定ガスに含まれるNO濃度は所定の一定値に固定されており、各グラフにおける白抜きの菱形(◇)および黒塗りの菱形(◆)で表示されたグラフは、NO濃度が0ppmの場合を表し、白抜き三角(△)および黒塗り三角(▲)は20ppmの場合を表し、白抜き丸(○)および黒塗り丸(●)は50ppmである場合を表している。さらに、白抜きマーク(◇,△,○)で表されたグラフは補正前のNO
2濃度を表し、黒塗りマーク(◆,▲,●)で表されたグラフは補正後のNO
2濃度を表している。
【0145】
図9(b)に示される補正前のNO
2濃度を見ると、NO濃度が高くなるに伴い、求められたNO
2濃度が増加し、NO濃度の値がオフセットしていることが判る。言い換えると、求められたNO
2濃度にNO濃度の影響が含まれていることが判る。これに対して、補正後のNO
2濃度を見ると、求められたNO
2濃度におけるNO濃度の影響が大幅に抑制されていることが判る。
【0146】
上記の構成のマルチガスセンサ装置1によれば、測定時に第1アンモニアセンサ部21と第2アンモニアセンサ部22との間に温度差があるため、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22におけるNOおよびNO
2に対する検出感度などに差が生じる。そのため、NOxセンサ部11、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22のそれぞれから異なる値の出力濃度を得ることができる。この3つの出力濃度を用いて演算を行うことにより、一酸化窒素、二酸化窒素およびアンモニアの濃度を求めることができる。
【0147】
また、具体的な演算方法としては、NH
3の影響が含まれるNOxセンサ部11の出力濃度(NO濃度の出力濃度)、NOx(NOおよびNO
2)の影響が含まれる第1アンモニアセンサ部21の出力濃度(NH
3濃度の出力濃度)、および、同じくNOxの影響が含まれる第2アンモニアセンサ部22の出力濃度(NH
3濃度の出力濃度)の3つの出力濃度から、NH
3およびNO
2の影響を取り除いたNOの濃度、NH
3およびNOの影響を取り除いたNO
2の濃度、および、NOおよびNO
2の影響を取り除いたNH
3の濃度を算出することができる。
【0148】
ここで、高温領域に配置される第1アンモニアセンサ部21と、低温領域に配置される第2アンモニアセンサ部22とは構成要素が同じであっても、配置される領域の温度(つまりセンサ部の温度)が異なることにより、出力濃度におけるNOxの影響の度合いが変わってくる。言い換えると、出力濃度におけるNOxの影響度はセンサ部の温度にも依存している。そのため、第1アンモニアセンサ部21の出力濃度と、第2アンモニアセンサ部22の出力濃度とは、異なる出力濃度として扱うことができ、これにNOxセンサ部11の出力を加えた3つの異なる出力濃度を用いて、NO、NO
2およびNH
3の濃度を求めることができる。
【0149】
また、第1アンモニアセンサ部21と第2アンモニアセンサ部22とを構成する要素を同じとすることにより、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22の経時的な劣化の程度も同程度となる。そのため、別々の構成要素を用いて第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22を構成する場合と比較して、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22の間の出力濃度の関係を一定に保ちやすくなる。言い換えると、第1アンモニアセンサ部21および第2アンモニアセンサ部22の出力濃度を較正する必要性が低くなり、NO、NO
2およびNH
3濃度の精度を保ちやすい。
【0150】
なお、本実施形態においては、第1アンモニアセンサ部21は、アンモニア用固体電解質体23、第1基準電極21a、第1中間層21b、第1アンモニア電極21c、および保護層24からなり、第2アンモニアセンサ部22は、アンモニア用固体電解質体23、第2基準電極22a、第2中間層22b、第2アンモニア電極21c、および保護層24からなり、同じ構成を有している。また、第1基準電極21aと第2基準電極22a、第1中間層21bと第2中間層22b、第1アンモニア電極21cと第2アンモニア電極22cとは、同材料からなる。
【0151】
高温領域に配置される第1アンモニアセンサ部21を、温度検出部に相当する酸素濃度検知セル16に近い位置に配置することにより、第1アンモニアセンサ部21の温度を正確に制御することができる。特に、第1アンモニアセンサ部21の温度を、上述の上限温度である800℃に近い温度に制御する場合には、上限温度を超えることによる第1アンモニアセンサ部21の検出性能の低下を抑制しやすくなる。
【0152】
そして、第1アンモニアセンサ部21を、センサ素子部10の外表面であり、軸線O方向における酸素濃度検知セル16と同じ位置に設けることで、第1アンモニアセンサ部21の温度をより正確に制御することができる。なお、「同じ位置」とは、酸素濃度検知セル16と第1アンモニアセンサ部21とが軸線O方向において重なるように配置されていることを指す。
【0153】
さらに、第1アンモニアセンサ部21の第1基準電極21aおよび第2アンモニアセンサ部22の第2基準電極22aを共通の電極とすることにより、マルチガスセンサ2およびマルチガスセンサ装置1における測定精度の悪化を抑制できる。具体的には、第1基準電極21aの劣化度合いと、第2基準電極22aの劣化度合いが一致するため、基準電極を別々に設けた場合と比較して、劣化度合いの違いによる測定精度の悪化が抑制される。