(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能性モノマー(B)は、ジ又はトリアリル化合物、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジビニル化合物、及びマレイミド系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の医薬品用ゴム栓。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の医療用ゴムは、芳香環構造を有しない有機過酸化物(A)で、多官能性モノマー(B)と亜鉛華(C)が添加されたエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を架橋し、更に二次架橋を施して得られるものである。
【0015】
EPDMを前記式(1)、(2)などの芳香環を有しない有機過酸化物で架橋することにより、薬局方の溶出物試験に適合するような高い清浄性を付与した医療用ゴムを作製できるものの、充分満足できる耐圧縮永久歪み性を付与することは難しい。本発明では、多官能性モノマーと亜鉛華が添加されたEPDMを前記有機過酸化物で架橋し、更に二次架橋を施すことにより、高い清浄性だけでなく、優れた耐圧縮永久歪み性も得ることが可能になる。また、多官能性モノマーと亜鉛華が添加されたEPDMを特定有機過酸化物で架橋したものであるため、耐熱性にも優れ、ハロゲン原子を含まない医療用ゴムにすることで環境面から望ましい製品も提供できる。
【0016】
本発明では、ゴム成分としてEPDMが使用される。これにより、優れたガスバリア性、耐熱性、耐薬品性が得られる。EPDMとしては、公知のものを使用でき、例えば、エチレンとプロピレンの共重合体とジエン成分とを共重合して不飽和結合を導入したエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体などが挙げられる。EPDMは、1種でも、2種以上を併用したものでも良い。
【0017】
上記EPDMに用いられるジエン成分としては特に限定されないが、通常炭素数5〜20程度のものが用いられる。具体的には、5−エチリデン−2−ノルボルネン(エチリデンノルボルネン)、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン等が挙げられる。なかでも、清浄性、耐圧縮永久歪み性の点から、環状ジエンが好ましく、5−エチリデン−2−ノルボルネンが特に好ましい。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
EPDMを構成する原料全体100質量%中のジエン成分の含有量は、好ましくは6〜14質量%、より好ましくは8〜13質量%である。6質量%未満では、架橋度が小さくなるため、硬度や寸法安定性が低下するおそれがある。14質量%を超えると、耐熱性や耐薬品性、耐疲労性能などが悪くなるおそれがある。なお、EPDMはジエン量の異なるEPDMの混合物でも良く、その場合、前記ジエン成分の含有量は、全EPDM中のジエン成分の平均含有量であり、該平均含有量が上記範囲内であれば、ジエン量が6〜14質量%以外のEPDMを混合したものでも良い。
【0019】
また、EPDMを構成する原料全体100質量%中のエチレン含有量は、好ましくは35〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。下限未満であると、ゴム組成物の機械的強度が低下する恐れがあり、上限を超えると、伸びが悪化する恐れがある。
【0020】
EPDMは、ムーニー粘度(ML
1+4 125℃)が5〜100であることが好ましく、7〜90であることがより好ましく、10〜85であることが更に好ましい。下限未満であると、ゴムへの充填剤の分散が困難となり、機械的強度が低下する恐れがある。また上限を超えると、混練性や成形性が低下する恐れがある。
なお、上記ムーニー粘度は、原料ゴムのムーニー粘度計による粘度である。
【0021】
本発明は、ゴム成分としてEPDMを含むが、本発明の効果を阻害しない範囲内で他のゴム成分を含んでも良い。他のゴム成分として、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリル−ブタジエンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、イソプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。なお、本発明の効果の点から、ゴム成分100質量%中のEPDMの含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0022】
本発明では、EPDMの架橋に芳香環構造を含まない有機過酸化物(A)が使用される。これにより、芳香環構造を有する分解残渣が薬局方試験で溶出し、UV吸収量が規定値を超えることを防止でき、高い清浄性が得られる。また、EPDMに後述の多官性モノマー及び亜鉛華を添加することで優れた耐圧縮永久歪み性も得られる。
【0023】
芳香環構造を有しない有機過酸化物(A)としては、下記式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を好適に使用できる。これにより、優れた清浄性及び耐圧縮永久歪み性が顕著に改善され、本発明の効果が充分に得られる。
【化4】
(式(1)中、R
11は置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基を表す。)
【化5】
(式(2)中、R
21は1価の飽和炭化水素基又は飽和アルコキシ基を表す。)
【化6】
(Di−tert−butylperoxyde)
【0024】
前記式(1)において、R
11の置換基を有してもよい2価の飽和炭化水素基としては、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基(環状アルキレン基):これらの置換基を有する基などが挙げられる。
【0025】
R
11の置換基としては特に限定されないが、−C(=O)−O−R
12で表される基(R
12は1価の飽和炭化水素基を表す。)が好ましい。R
12の1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基などが挙げられる。
【0026】
前記式(2)において、R
21の1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、前記R
12と同様の基が挙げられる。R
21の1価の飽和アルコキシ基としては、前記1価の飽和炭化水素基に対応するアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。
【0027】
式(1)で示される有機過酸化物としては、1,1−Di(t−butylperoxy)−2−methylcyclohexane、1,1−Di(tert−butylperoxy)cyclohexane、1,1−Di−(tert−butylperoxy)−3,3,5−trimethylcyclohexane、2,2−Di(tert−butylperoxy)butane、n−Butyl−4,4−Di(tert−butylperoxy)valerate、2,5−Dimethyl−2,5−Di(tert−butylperoxy)hexane、Di−tert−butylperoxydeなどが挙げられる。
【0028】
式(2)で示される有機過酸化物としては、tert−Butyl peroxyneodecanoate、t−Butyl peroxyneoheptanoate、tert−Butyl peroxy−2−ethylhexanoate、t−Butyl peroxy−3,5,5−trimethylhexanoate、t−Butyl peroxylaurate、tert−Butyl peroxy isopropyl monocarbonate、t−Butyl peroxy 2−ethylhexyl monocarbonate、tert−Butyl peroxyacetateなどが挙げられる。
【0029】
なお、芳香環構造を有しない有機過酸化物は、不飽和結合(C=C、C=O、C≡C)を含まない有機過酸化物がより好ましい。不飽和結合を有する有機過酸化物は、分解残渣として、アルコール(OH)、アルデヒド(CHO)などの化合物が生成しやすく、過マンガン酸カリウム還元性物質試験で規定値を超える可能性がある。
【0030】
芳香環構造を有しない有機過酸化物(A)としては、R
11が2価の飽和炭化水素基である式(1)で示される化合物がより好ましく、架橋速度と架橋度のバランスが良いという理由から、特に2,5−Dimethyl−2,5−Di(tert−butylperoxy)hexane、2,2−Di(tert−butylperoxy)butane、Di−tert−butylperoxydeなどが好ましい。芳香環構造を有しない有機過酸化物は、1種を使用しても2種類を併用してもよい。
【0031】
芳香環構造を有しない有機過酸化物(A)の添加量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましく、2〜6質量部がさらに好ましい。0.3質量部未満であると、十分な硬度が得られず、寸法精度やシール性が低下する傾向がある。10質量部を超えると、ゴムが硬くなり過ぎ、シール性や耐屈曲性、耐摩耗性が低下する傾向があり、清浄性も低下する傾向がある。
【0032】
多官能性モノマー(B)は、1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有するモノマーであり、例えば、ジ又はトリアリル化合物、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジビニル化合物、マレイミド系化合物などが挙げられる。多官能性モノマー(B)の添加により、圧縮永久歪みを小さくできる。
【0033】
ジ又はトリアリル化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等;ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等;トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等;ジビニル化合物としては、ジビニルベンゼン、ブタジエン等;マレイミド系化合物としては、N−フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等;が挙げられる。なかでも、ジ又はトリアリル化合物が好ましく、トリアリル化合物がより好ましく、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。これら多官能性モノマーは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
多官能性モノマーの含有量は、EPDM100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部がより好ましく、2〜6質量部がさらに好ましい。0.5質量部未満であると十分な圧縮永久歪みが得られず、寸法安定性や製品としての耐久性が低下する傾向にある。10質量部を超えると、清浄性が低下する傾向にある。
【0035】
本発明では、亜鉛華が添加され、これにより、二次架橋時における架橋ゴムの劣化を抑制できる。亜鉛華としては、市販の酸化亜鉛粒子などを使用でき、例えば、粒度0.01〜1.0μmのものを使用でき、0.05〜0.25μmのものも好適に使用できる。一般的な亜鉛華の粒度は0.3〜0.7μmであるが、これに比べて粒度が0.1μm前後と小さく、活性度が著しく高い活性亜鉛華も本発明では使用可能である。
なお、亜鉛華の粒度は、電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0036】
亜鉛華の含有量は、EPDM100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましく、2〜6質量部がさらに好ましい。0.5質量部未満であると、十分な架橋ゴムに対する劣化の抑制効果が得られない傾向にある。10質量部を超えると、清浄性が低下する傾向にある。
【0037】
本発明の医療用ゴムは、前記成分の他に、一般にゴムに使用される充填材、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してもよいが、清浄性への影響が大きいため、物性とのバランスに注意して使用は最小量にすることが望ましい。
【0038】
ダイヤフラムなどのように変形と接触を繰り返すような動的に使用される部品の場合、耐摩耗性能を向上させる点から、充填材を使用することが好ましい。充填材としては炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、タルクなどの無機充填材やカーボンブラックなどを使用できる。
【0039】
充填材の添加量は、耐摩耗性と清浄性のバランスから、ゴム成分100質量部に対して70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、また、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。70質量部を超えると、清浄性が低くなる傾向にあり、また、耐屈曲疲労性が低下する傾向にある。20質量部未満であると、耐摩耗性が不十分であり、製品寿命が短くなる傾向がある。
【0040】
可塑剤としては、ミネラルオイルなどの鉱物油、液状ポリイソブチレンなどの低分子量ポリマーなどを使用できるが、アロマオイルなどの芳香環構造を有するものは清浄性が低下するため好ましくない。
【0041】
本発明の医療用ゴムは、例えば、前記各成分を混練する工程1、該工程1で得られた未架橋ゴム組成物を架橋する工程2、及び該工程2で得られた架橋ゴムに更に二次架橋を施す工程3を含む製法により製造できる。
【0042】
工程1の混練工程は、インターミックス、バンバリミキサ、ニーダー等の密閉式混練機、オープンロール等、公知の混練機、混合機を用いて実施できる。
【0043】
工程2の架橋工程は、公知の架橋方法を適用でき、例えば、温度150〜220℃で0.5〜60分間程度の条件下において、プレスなどによる圧縮成型やトランスファー成型、または射出成型などによって架橋成形することで実施できる。
【0044】
工程3の二次架橋工程は、工程2で得られた架橋ゴムを熱処理するものであり、これにより、架橋ゴム中の残渣やポリマー分解物などの低分子化合物を低減でき、清浄性が高められる。二次架橋の熱処理は、オーブンなど、公知の熱処理装置を用いて実施でき、具体的には、バッチ式の場合はイナートオーブン、真空乾燥機など、連続式の場合はコンベア式乾燥機など、を使用して行うことができる。
【0045】
二次架橋は、高温かつ長時間施すことが好ましいが、架橋ゴムの劣化を促進する懸念があるため、二次架橋温度は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。一方、下限は特に限定されないが、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。二次架橋時間は、二次架橋温度、製品の形状に応じて、15分〜24時間など、適宜設定すれば良く、例えば、140℃の場合、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。架橋ゴムの劣化又は経済性の点で二次架橋時間は短時間の方が望ましく、好ましくは12時間以下、より好ましくは8時間以下、さらに好ましくは4時間以下である。
【0046】
本発明の医療用ゴムは、例えば、医薬品用ゴム栓、シリンジ用ガスケット、シリンジ用キャップ、採血管用ゴム栓などに適用できる。なかでも、医薬品用ゴム栓に好適に使用できる。また、本発明の医療用ゴムは、第十六改正日本薬局方の溶出物試験に適合するものとして好適に使用可能である。
【実施例】
【0047】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0048】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
EPDM:三井化学(株)製の三井EPT4021(ジエン量(エチリデンノルボルネン):8.1質量%、エチレン量:51質量%、ML
1+4(125℃):13)
トリアリルイソシアヌレート:日本化成(株)製
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2号(粒度:0.5μm)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN550(N
2SA:42m
2/g)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸 つばき
有機過酸化物(1):化薬アクゾ(株)製のトリゴノックス D−T50(2,2−Di(tert−butylperoxy)butane)
有機過酸化物(2):日油(株)製のパーヘキサV40(n−butyl−4,4−Di(tert−butylperoxy)valerate)(純度40%)
有機過酸化物(3):日油(株)製のパーブチルE(t−Butyl peroxy−2−ethylhexyl monocarbonate)
有機過酸化物(4):日油(株)製のパーブチルL(t−Butyl peroxylaurate)
有機過酸化物(5):日油(株)製のパーブチルD(Di−tert−butylperoxyde)
有機過酸化物(6):日油(株)製のパークミルD(Dicumyl peroxide;芳香環構造含有)
有機過酸化物(7):日油(株)製のパーブチルC(tert−butyl cumyl peroxide;芳香環構造含有)
【0049】
<実施例及び比較例>
(混練)
有機過酸化物以外の材料を、加圧式ニーダーを使用し、温度80℃、回転数40rpmで10分以上混合し、120℃に達した時点で排出した。得られた組成物を60℃のオープンロールにて有機過酸化物とともに約5分練り、未架橋ゴム組成物を得た。
(成型)
混練で得られた組成物を150℃で30分間プレスにて架橋成型し、架橋ゴムを得た。
(二次架橋)
イナートオーブンに入れ、140℃で0.5〜13時間二次架橋し、試験用の二次架橋ゴムを得た。
【0050】
上記の方法で得られた二次架橋ゴムについて、下記の評価を行った。結果は表1に示す。
【0051】
(硬度)
JIS K6253−3に従い、タイプAデュロメータ硬度を測定した。
【0052】
(圧縮永久歪)
JIS K6262:2006に準じて次の方法にて圧縮永久歪みを測定した。
直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を治具ではさみ、23℃において、24時間25%圧縮した。治具をはずし、30分後に厚みを測定し、圧縮永久歪を算出した。値が小さい方が残留歪が小さく、良好であると判定できる。そこで、比較例1の二次架橋を施していない架橋ゴムの圧縮永久歪を100としたときの各実施例、比較例の圧縮永久歪の相対値を求め、前記相対値が105未満のものを良好、105以上のものを不良と評価した。
【0053】
<溶出物試験>
日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法に準拠し、下記のように測定した。各試験の基準を満たしたものを良い(○)、満たさなかったものを悪い(×)とした。
試験液の調製は、2mm厚のスラブシートを水洗したのち、室温で乾燥し、これを硬質ガラス容器に入れ、試料質量の10倍量の水を加え、適当な栓をした。121℃に加熱したオートクレーブ中で1時間加熱してから、硬質ガラス容器を取り出して室温になるまで放置し、速やかにシートを除き、この液を試験液とした。別に、水だけを入れ、プレスシートを入れずに、同様の方法で空試験液を調製した。
【0054】
(透過率)
空試験液を対照とし、層長10mmで波長430nmおよび650nmの透過率を測定した。透過率が99.0%以上であれば、規格に適合する。
【0055】
(泡立ち)
試験液5mLを内径約15mm、長さ約200mmの共栓試験管に入れ、3分間激しく振り混ぜ、生じた泡が3分間以内にほとんど消失すれば、規格に適合する。
【0056】
(pH)
試験液および空試験液20mLずつをとり、これに塩化カリウム1.0gを水に溶かして1000mLとした液1.0mLずつを加え、両液のpHを測定した。両液のpHの差が1.0以下であれば、規格に適合する。
【0057】
(亜鉛)
試験液10.0mLに3倍に薄めた希硫酸を加えて20mLとし試料溶液とし、原子吸光光度用亜鉛標準用溶液1.0mLに3倍に薄めた希硫酸を加えて20mLとて標準溶液とする。下記条件で原子吸光光度により試験を行い、試料溶液の吸光度が標準溶液の吸光度以下であれば、規格に適合する。
なお、原子吸光光度用亜鉛標準用溶液は亜鉛標準原液10mLに水を加えて1000mLに調整した液で1mL中に亜鉛を0.01mg含んでいる。
測定条件
使用ガス:アセチレン
支燃性ガス:空気
ランプ:亜鉛中空陰極ランプ
波長:213.9nm
【0058】
(過マンガン酸カリウム還元性物質)
試験液100mLを共栓三角フラスコに採り、0.002mol/L過マンガン酸カリウム液10.0mLおよび希硫酸5mLを加え、3分間煮沸し、冷却後、これにヨウ化カリウム0.10gを加えて密栓し、振り混ぜて10分間放置したのち、0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウムで滴定した(指示薬;デンプン試液5滴)。別に、空試験液100mLを用い、同時に操作した。0.002mol/L過マンガン酸カリウム液の消費量の差を測定した。0.01N過マンガン酸カリウム液の消費量の差が2.0mL以下であれば、規格に適合する。
【0059】
(蒸発残留物)
試験液100mLをとり、水浴上で蒸発乾固し、残留物を105℃で1時間乾燥して、残留物の質量を測定した。残留物が2.0mg以下であれば、規格に適合する。
【0060】
(紫外線吸収)
試験液につき、空試験液を対照とし、吸光度測定法により、試験を行った。波長220〜350nmにおける吸光度が0.20以下であれば、規格に適合する。
【0061】
【表1】
【0062】
多官能性モノマーと亜鉛華を含むEPDMを芳香環構造を有しない有機過酸化物で架橋し、さらに二次架橋した実施例では、溶出物試験の結果が良好で、また、優れた耐圧縮永久歪み性も有していた。よって、ハロゲン原子を含まない実施例の医療用ゴムは、環境面でも望ましいものでありながら、優れた清浄性及び耐圧縮永久歪み性を有することが明らかとなった。