【実施例】
【0047】
A.使用される材料
石油精製所からの粒径が60μm未満の元素硫黄および硫黄ポリマ(STX(登録商標))を使用した。粒径が4mmと6.30mmの間である砂利および4mm未満の粒径まで破砕されたケイ砂の乾燥混合物を骨材として使用した。0.125mm未満の粒径を有する炭酸カルシウム(99.5%純度)を微粒子材料として使用した。それぞれの比は、重量%として表され、これらは30−60−10(砂利、砂および微粒子)であった。粒度分析曲線を
図1で示す。これらの実施例で使用される水銀は、塩化ナトリウムの電気分解により塩素を得るための工場から来ている。
【0048】
B.硫化水銀の形成
100gの混合物あたり86.2gの水銀および13.8gの硫黄により構成される液体Hgおよび元素Sの混合物を調製した。これらの比を、HgS(式1)の形成のための化学量論的反応に合わせた。形成反応は遊星ミルプルベリセッテ6により提供される機械的エネルギーを介して、5.4のボール/ロード重量比、400rpmの速度、および1時間のミリングで実施される。
【0049】
硫化水銀の鉱物組成を、X線回折(XRD)により、Cuアノード(CuKα放射線)を有するブルカーD8ディスカバー(Bruker D8 Discover)回折計を用いて決定した。発電機電圧および電流はそれぞれ、40kVおよび40mAであった。
【0050】
X線回折スペクトルにおいて観察されるように(
図2)、1時間後の反応生成物は、主に黒辰砂およびずっと少量の残留硫黄から構成される。
【0051】
液体水銀と硫黄の間の反応で得られる生成物の形態分析を、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により日立(Hitachi)S−2100顕微鏡を用いて実施した。反応生成物を接着テープ上に堆積させ、その後それらを、グラファイトを用いて金属化することによりサンプルを調製した。
【0052】
反応生成物の形態を
図3(セクションaおよびb)に示す。図からわかるように、好ましくは立方相黒辰砂の表面粒子堆積を有する粒状形態である。
【0053】
浸出性水銀量を決定するために、TCLP(EPA法1311)プロトコルに従った。このため、1時間の粉砕後に得られた反応生成物、それぞれ20gの3つのサンプルを、酢酸および水酸化ナトリウムの混合物400mlで抽出した。サンプルを18時間の間撹拌し続け、その後、47mmのフローサイズを有するプレフィルタおよび0.7μmのフローサイズを有するガラス繊維フィルタが備えられたミリポア(Millipore)真空フィルタ上で濾過した。濾過された溶液を、硝酸でpH<2まで酸性化し、水銀量をレコ(Leco)AMA254装置上で冷蒸気原子吸収技術を用いる分析により決定した。
【0054】
同じ分析手順に従い、本発明で使用される最初の液体水銀サンプル中の浸出性水銀量を決定した。
【0055】
1時間のミリング後、水銀と硫黄の間の反応から得られた浸出生成物中の水銀量の分析は、31μg/lの平均値を与える。液体水銀サンプルに対し実施された同じ分析は、8.96mg/lの平均値を与える。水中のHg量の許容限度は200μg/lである。
【0056】
C.硫化水銀を安定な骨材、元素硫黄および硫黄ポリマから構成される混合物に組み込むことによる硫黄ポリマセメントの生成
前の工程で得られた硫化水銀(HgS)を使用し、それらを骨材、元素硫黄および硫黄ポリマから構成される混合物中に組み込むことにより、石材の生成を実施した。
【0057】
セクションAで記載される骨材混合物および元素硫黄を155−160℃の間、グリセリン浴中で維持し、その後、石材の形成反応を実施した。混合物を撹拌し、この温度では、溶融段階にある硫黄の均質化を促進する。混合物が約150℃の温度にある時に、前の工程で得られた硫化水銀を添加し、その後、ポリマ硫黄を添加し、混合物を振盪、撹拌し、その融合および全ての成分の均質化を促進する。これは約6分で達成される。
【0058】
温度を140℃未満に降下させずに、熱混合物をモールドに注ぎ入れ、これを、サンプルの粘度によって、30秒と60秒の間の範囲の期間の間、3000rpmの振動数で、振動する台内で撹拌させる。その後、表面を平滑化し、モノリスを室温まで冷却させる。それらをその後、モールドから取り出し、室温で保存する。
【0059】
使用するモールドは、40x40x160mm
3の寸法であり、それらの物理化学特性の研究に標準規則を適用することを可能にする。
【0060】
様々な量の硫化水銀を、骨材と硫黄の混合物中に混入した。混合物は、それら全て(総重量に基づく重量%)に、15%の元素硫黄および1.5%のポリマ硫黄を添加することにより調製した。
【0061】
混合物の総重量に基づき、5.8重量%と23.2重量%の間のHgSの添加について試験した。これらの量は、混合物の総重量に基づく5重量%と20重量%の間の液体Hg量と同等である。表1は試験した混合物の組成を示す。
【0062】
図4は、前に記載された工程で得られた、様々な比率の硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントのマクロ写真を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
D.水銀を含む硫黄ポリマセメントのキャラクタリゼーション
表1で記載されるポリマセメントの圧縮および曲げ引張に対する機械抵抗の研究(表2)をその後実施し、ユニバーサルイベールテストオートテスト(Universal Ibertest Autotest)200−10−W機械で決定した。ローディング速度は、UNE196−1標準に従い、曲げ引張において0.05kN/s、圧縮において2.4kN/sとした。表2は、得られたデータを含む。HgSを含まないサンプルは、他のものと同じ条件下であるが、硫化水銀の添加なしで得られた参照サンプルである。
【0065】
【表2】
【0066】
浸出性水銀量の決定は、TCLP(U.S.EPA法1311)プロトコルに従い実施した。そのために、1時間のミリング後に得られた反応生成物、それぞれ20gの3つのサンプルを、酢酸および水酸化ナトリウムの混合物400mlで抽出した。サンプルを18時間の間撹拌し続け、その後、47mmのフローサイズを有するプレフィルタおよび0.7μmのフローサイズを有するガラス繊維フィルタが備えられたミリポア真空フィルタ上で濾過した。濾過された溶液を、硝酸でpH<2まで酸性化し、水銀量をレコAMA254装置上で冷蒸気原子吸収技術を用いる分析により決定した。表3は、生成された硫黄ポリマセメント由来の浸出液中のHg量を示す。硫化水銀を含む全てのポリマセメントが、水中のHg量の限界値としてU.S.EPA により決定された値(200μg/l)よりも低いHg量を有する浸出液を生成する。
【0067】
【表3】
【0068】
骨格密度、p
sおよび真密度、p
rは、ヘリウムピクノメーターアキュピック(AccuPyc)1330を用いて決定した。骨格密度は、硫黄ポリマセメントの破片で決定し、真密度は、ポリマセメントを50μm未満の粒径まで粉砕して得た。バルク密度p
bはポリマセメント粒子ラップ(wrap)の体積(比気孔体積)をジオピック(GeoPyc)1360装置を用いて測定することにより決定した。密度データから、総気孔率(P
T)、閉鎖気孔率(P
c)およびヘリウムに対する開放気孔率(P
He)の値を得た。表4は、得られた硫黄ポリマセメントのいくつかに対する密度の測定結果を示し、これらの値を硫化水銀以外は同じ成分を含む参照サンプルのものと比較する。表5には、得られた気孔率を示す。
【0069】
毛管水吸収を標準UNE−EN480に従い決定した。異なるポリマセメントサンプルを55%相対湿度および5cmの厚さの水層を有する密閉チャンバに入れ、ここでは、セメント試験管を直立して配置させ、すなわち、片側上に存在させた。各サンプルをそれぞれ、チャンバに入れる前に計量した。試験管を28日間硬化させ、10分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間、72時間および28日の間の浸漬後に吸収された水の量を決定した。
【0070】
28日後、サンプルをチャンバから取り出し、紙で拭き表面水を除去し、計量し、研究した試験管の各々の表面に対して、質量変化(△Μ)および毛管作用による吸着(W
S)を決定した。この表面は、全ての場合において16cm
2であった。表6は、毛管による水の吸収の測定において得られた結果を示し、硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントで得られた値を、硫化水銀以外は同じ成分を含む参照サンプルと比較する。
【0071】
全ての場合において毛管水吸収は非常に低く、硫化水銀がセメントの開放気孔率および気孔の比体積を減少させる結果として、それは硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントでは参照セメントにおいてよりも低い(表5を参照されたい)。毛管水吸収は従来のセメントモルタルで生成された硫黄ポリマセメントにおいてずっと低く、これに対しては毛管作用による水吸収の値は2−3g/cm
2である。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
低圧での水吸収は、10cmの水柱に等しい圧力下、特定の時間で単位面積あたりの吸収された水の量を決定することから構成されるRILEM(国際材料構造試験研究機関連合(International Union for Testing and Research Laboratories for Materials and Structures))の低圧下での水吸収(パイプ方法))の試験第II.4号方法に従い決定した。試験は、柱の圧力が、本研究の物質に対する、高速(約140km/h)での雨水滴の衝突により生成される圧力を表す実際の状況をシミュレートする。
【0076】
結果は、低圧または硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントの場合、もしくは参照硫黄ポリマセメントにおいて、水吸収がないことを示す。
【0077】
これらの結果を他の材料、例えばセメントのモルタル(52ml/180分)、またはセラミックモルタル(9.6ml/180分)または不浸透性モルタル(1.96ml/180分)と比較すると、硫黄ポリマセメント材料は、水に対し非常に不浸透性であるとみなされる。
【0078】
疎水性含浸のための水吸収およびアルカリに対する抵抗性を、UNE−EN 13580標準に従い決定した。このために、硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントサンプルを、立方体試験管を満たすのに十分な量の、5.6g/lに等しい濃度を有する水酸化カリウム溶液を含む、1550mlの容量の個々のグラスに入れ、スペーサ内に置き、過剰の(25±5)マザーグラスと共に、透明プラスチックフィルムで(21±0.1)日間、蓋をした。この時間の後、立方体試験管をそれらの個々の容器から取り出し、実験台上で、重量が試験管の最初の重量に関し±2gに等しくなるまで空気乾燥させた。その後、各サンプルを再びアルカリ溶液に浸漬させ、21日後、取り出し、空気乾燥させ、計量した。
【0079】
次に、第2の浸漬試験を実施し、アルカリ試験後に処理した各立方体試験管の重量の増加を計算した。グラムの%で表される吸収係数(ARalk)は、研究後の各サンプルの重量と最初の重量の間の比を計算することにより決定することができる。
【0080】
表7は得られた結果を示す。硫化水銀を含むポリマ硫黄要素は、アルカリに対し非常に高い抵抗性を示す。
【0081】
【表7】
【0082】
塩水噴霧チャンバでの抵抗性を、UNE−EN 14147:2003に従い実施した。この目的のために、塩水噴霧による促進老化チャンバ450Tアスコット(Ascott)を使用した。塩溶液は、1リットルの脱イオン水あたり100gのNaCl(>95%w/w)を溶解することにより調製し、20μS/cm
2未満のイオン伝導率を有した。チャンバの温度は、35±5℃で一定に維持した。
【0083】
試験は、硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントおよび参照ポリマセメントを、チャンバの塩水環境内での60サイクルの暴露に供することから構成した。各サイクルは、4時間の塩水噴霧への暴露、チャンバ内での8時間のサンプルの乾燥から構成される。60サイクルの終わりに、試験管をチャンバから取り出し、脱イオン水に浸漬させ、堆積した塩を全て除去した。塩が完全に除去するまで水を毎日交換したが、これは、試料と接触する溶液の伝導度が最初の洗浄水の特性値の2倍を超えなくなる時に達成される。その後、試験管を70±5℃の温度で一定質量になるまで乾燥させた。結果は、質量損失として表される(%質量)。表8は、塩水噴霧チャンバ内での促進老化試験後の硫化水銀を含む硫黄ポリマセメントのサンプルおよび参照のために使用されるものの質量損失を示す。質量損失は、試験した全ての場合において1%未満であり、これは硫黄ポリマセメントが塩水環境に対し非常に高い抵抗性を示すことを示す。
【0084】
【表8】