特許第5745524号(P5745524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745524エチレンおよびポリアルケン由来の単位を含むポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745524
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】エチレンおよびポリアルケン由来の単位を含むポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20150618BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20150618BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C08F10/02
   C08F2/01
   C08J5/18
【請求項の数】6
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2012-529001(P2012-529001)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-504667(P2013-504667A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】US2010048824
(87)【国際公開番号】WO2011032176
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2013年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/242,137
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デミロース,メフメット
(72)【発明者】
【氏名】カルジャラ,テレサ,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】オスビー,ジョン,オー.
(72)【発明者】
【氏名】バービー,オットー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デン ドエルデル,コーネリス,エフ.ジェイ.
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭46−004395(JP,A)
【文献】 米国特許第03462249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーであって、
13C核磁気共鳴(NMR)によって決定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有し、
前記ポリアルキレンは、30,000〜410万グラム/モルの重量平均分子量を有し、
前記ポリマーは、ポリマーの重量に基づいて、過半数の重量パーセントである重合エチレンを含む
ポリマー。
【請求項2】
13C NMRによって決定すると、測定可能なメチル分岐部を含まない、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
13C NMRによって決定すると、測定可能なプロピル分岐部を含まない、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーは、0.89〜0.93g/ccの密度を有する請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のポリマーを含む組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書中に完全に組み込まれている2009年9月14日に出願された米国特許仮出願第61/242,137号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
通常の低密度ポリエチレン(LDPE)は良好な加工性を有するが、フィルム用途において使用されるとき、良好な密着特性(密着強度または表面への改善された接着など)を得るために、ポリイソブチレン(PIB)などの添加物が典型的には必要である。しかし、これらの添加物は、標準的押出または物理的ブレンド技術によってブレンドされるとき、時間の経過による相分離および/またはフィルムへの移動もしくはフィルムからの浸出を避けるために、低レベルで加えなければならないことが多い。したがって、必要に応じてまた架橋することができ、一貫した密着挙動を有するフィルムを形成するのに使用することができる、良好な加工性を有するLDPE組成物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、本発明は、エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマー(polymer comprising units derived from ethylene and polyalkylene)であって、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有するポリマーである。このポリマーは、ポリアルキレンを、エチレンベースのポリマー分岐部と共に含む。炭素原子1000個当たり0.15個のアミル基の尺度は、ポリアルキレンの一部を形成している炭素原子を除いた、エチレンベースのポリマー分岐部中の炭素原子の数に基づいている。
【0004】
一実施形態において、本発明は、エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、
A.第1の反応器または複数パーツ反応器の第1の部分において、フリーラジカル開始剤の存在下で、少なくとも1種のポリアルキレンをエチレンと接触させること、および
B.フリーラジカル開始剤の存在下で、ポリアルキレンをさらなるエチレンと反応させ、少なくとも1つの他の反応器または複数パーツ反応器の後の部分において、ポリアルキレンに結合しているエチレンベースのポリマー分岐部を形成させること
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】2つの数学的関係を使用して、市販のLDPEおよび2種の本発明のポリマーおよび2種の比較ポリマーの、ピーク溶融温度(Tm)と密度との関係を報告する図である。
図2】異なる分岐タイプのピーク特性の位置を示す、LDPEの13C NMRスペクトルである。
図3】C5分岐部数/炭素1000個の定量化の例を示す、LDPEの13C NMRスペクトルである。
図4】C1分岐部を含有するLDPEの13C NMRスペクトルである。
図5】C3分岐部を含有するLDPEの13C NMRスペクトルである。
図6】PIBの特徴的なピークを示す、代表的な本発明のポリマーの13C NMRスペクトルである。
図7】実施例および選択的比較例の分子量分布を報告するグラフである。
図8】2種の実施例および比較例のDMSの重なりである。
図9】2種の本発明の実施例、市販のLDPEおよび比較ポリマーの、ピーク溶融温度Tmと密度との関係を報告するグラフである。
図10】2種の実施例、市販のLDPEおよび比較ポリマーの、融解熱と密度との関係を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のポリマー
「エチレンベースのポリマー分岐部」という用語は、重合エチレンを含み、ポリアルキレンに結合しているポリマー単位を意味する。一実施形態において、本発明のポリマー(「エチレンポリマー」と称されることがある)は、式1の構造式を含む。
【0007】
【化1】
式1において、エチレンベースのポリマー分岐部は、ホモポリマー、例えば、LDPE、またはエチレン−プロピレンコポリマー分岐部などのインターポリマーでよい。ポリマーは、主鎖炭素原子において共有結合しているエチレンベースのポリマー分岐部と共に、ポリアルキレン単位(ここでは、ポリイソブチレンまたはPIB由来)を含む。「ポリアルキレン由来の単位」という句は、ポリアルキレンのオリゴマーまたはポリマー単位を意味することができる。エチレンベースのポリマー分岐部は、ポリアルキレン上に直接形成され、すなわち、エチレンモノマーまたはオリゴマーがポリアルキレンにおいて結合し、他のエチレンモノマーと引き続いて重合され、またはさらに重合され(または1つもしくは複数のオレフィンコモノマーと共重合され)、エチレンベースのポリマー分岐部を形成し、あるいはエチレンベースのポリマーが独立に形成され、引き続いてポリアルキレンにグラフトされる。ポリアルキレンは、1つまたは複数のエチレンベースのポリマー分岐部を含有することができ、任意のポリアルキレン上の分岐部の数は、少なくとも部分的に、ポリアルキレンのサイズ、およびエチレンが重合され、またはポリエチレンがポリアルキレンにグラフトされる条件の関数である。エチレンベースのポリマー分岐部は、サイズおよび構造が異なってもよいが、典型的には好ましくは、1つまたは複数の長鎖分岐部(LCB、高圧LDPEの特徴である)を含む。エチレンベースのポリマー分岐部が由来する、エチレンベースのポリマーが、高圧プロセスによって作製され、かつ/または長鎖分岐部を含有する場合、場合によりこのポリマー、またはこのポリマーに由来する分岐部は、高度に分岐したエチレンベースのポリマーとして公知である。
【0008】
2つの構成成分(ポリアルキレンおよび高度に分岐したエチレンベースのポリマー)の共有結合は、高度に分岐したエチレンベースのポリマー成分と類似した加工特性を保持する一方で、ポリアルキレン成分と類似したまたはそれより良好の物理学的性質を有するポリマーをもたらす。
【0009】
開示された本発明のポリマーについての物理的特性および加工特性の組合せは、ポリアルキレンと高度に分岐したエチレンベースのポリマーとの単なるブレンドにおいては観察されない。開示された本発明のポリマーの独特の化学構造はポリアルキレンとして有利であり、高度に分岐したエチレンベースのポリマー置換基は共有結合している。
【0010】
本発明のポリマーは、未反応のポリアルキレンを含み得る。本発明のポリマーはまた、形成され、または本発明のポリマーを作製するプロセスに導入されたが、ポリアルキレンと結合しなかった遊離または非結合のエチレンベースのポリマーを含み得る。エチレンベースのポリマーに結合していないポリアルキレン、およびポリアルキレンに結合していないこれらのエチレンベースのポリマーは通常、低レベルで存在し、または当業者には公知の様々な精製または回収方法によって低レベルまで除去することができる。
【0011】
一実施形態において、ポリマーは、エチレンおよびポリアルキレン由来の各単位を含み、ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位、典型的には少なくとも0.5単位、より典型的には少なくとも0.8単位のアミル基を有する。典型的にはポリマーは、下記の1つまたは複数を有する。(1)13C NMRによって決定すると、炭素原子1000個当たり1単位、典型的には少なくとも1.2単位、より典型的には少なくとも1.4単位のC6+分岐部、(2)13C NMRによって決定すると、炭素原子1000個当たり測定可能でないメチル分岐部(測定可能なメチル分岐部を含まない)、(3)13C NMRによって決定すると、炭素原子1000個当たり測定可能でないプロピル分岐部(測定可能なプロピル分岐部を含まない)、および(4)13C NMRによって決定すると、炭素原子1000個当たり5単位以下、典型的には3単位以下、より典型的には2単位以下のアミル基。一実施形態において、ポリマー、またはポリマーのエチレンベースのポリマー分岐部は、これらの特性の2つ、3つ、または4つ全てを有する。
【0012】
一実施形態において、ポリマーは、ASTM D792によって測定すると、1立方センチメートル当たり0.89グラム超、または0.90グラム超、または0.91グラム超であり、0.93グラム未満、または0.925グラム未満、または0.92グラム未満の密度(g/ccまたはg/cm)を有する。一実施形態において、ポリマーは、0.89〜0.93g/cc、または0.90〜0.925g/ccまたは0.91〜0.92g/ccの密度を有する。
【0013】
一実施形態において、ポリマーは、ASTM1238−04(2.16kg/190℃)によって測定すると、0.01〜100グラム/10分、典型的には0.05〜50グラム/10分、より典型的には0.1〜10グラム/10分(g/10分)のメルトインデックスを有する。
【0014】
一実施形態において、本発明のポリマーを作製する方法において使用される、70重量パーセント未満、60重量パーセント未満、50重量パーセント未満、40重量パーセント未満、30重量パーセント未満、20重量パーセント未満または10重量パーセント未満のポリアルキレンが、ポリマーからの溶媒抽出によって抽出可能である。
【0015】
一実施形態において、本発明は、エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーを含む組成物であり、ポリマーは、13C NMRによって測定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有する。一実施形態において、本発明は、このような組成物を含む物品であり、一実施形態において、本発明は、このような組成物を含む成分を含む物品である。一実施形態において、物品は、フィルムである。
【0016】
一実施形態において、ポリマーは、ポリマーの重量に基づいて、過半数の重量パーセントである重合エチレンを含む。
【0017】
少なくとも1種のポリアルケンと高度に分岐したエチレンベースのポリマーとの単なる物理的ブレンドを超えた物理学的性質の改善を達成するために、ポリアルキレンの存在下で高度に分岐したエチレンベースのポリマーの重合によって形成された共有結合は、高度に分岐したエチレンベースのポリマー成分と類似した加工特性を維持する一方で、少なくとも1種のポリアルケンベースのポリマー成分と類似したまたはそれより良好の物理学的性質を有するエチレンポリマー材料をもたらすことが見出された。開示されたエチレンポリマー構造は、グラフトした高度に分岐したエチレンベースのポリマー置換基、または少なくとも1種のポリアルケンベースのポリマー上のラジカル化された部位からもたらされる「フリーラジカル重合によって生じるエチレンベースの長鎖ポリマー分岐部」からなると考えられる。開示された組成物は、高度に分岐したエチレンベースのポリマーの長鎖分岐部を伴う、少なくとも1種のポリアルケンベースのポリマーからなるエチレンポリマーである。
【0018】
ポリアルケン
適切なポリアルケンベースのポリマーは、式2に例示されているように繰返し単位を含む。
【0019】
【化2】
式中、各R1およびR2は、独立に、水素またはアルキルであり、ただし、R1およびR2は、同時に水素ではなく、nは、典型的には10以上の、より典型的には50以上の、さらにより典型的には100以上の整数である。nの最大値は、価格および実際的な重合の考察の関数である。一実施形態において、各R1およびR2は、独立に、水素またはC1〜C6アルキル、好ましくはC1〜C3アルキル、よりさらに好ましくはメチルである。末端基は広範に変動し得るが、典型的には独立に、水素またはアルキルである。本発明のポリアルキレンは、特にホモポリマーであるポリエチレンを除外する。一実施形態において、ポリアルキレンは、ポリイソブチレン(PIB)である。本発明のポリアルキレンは典型的には、カチオン重合によって作製される。
【0020】
一実施形態において、ポリアルキレンは、GPCによって決定すると、30,000〜410万、または40,000〜250万、または45,000〜110万、または50,000〜500,000の重量平均分子量を有する。
【0021】
一実施形態において、ポリアルキレンは、150℃の粘度で30,000〜100万、または40,000〜700,000cP(mPa・s)のブルックフィールド粘度を有する。
【0022】
一実施形態において、ポリアルキレンは、典型的には2〜5、より典型的には2.5〜4の分子量分布(Mw/Mn)を有する。
【0023】
高度に分岐したエチレンベースのポリマー
高度に分岐したエチレンベースのポリマー(低密度ポリエチレン(LDPE)など)は、エチレンモノマーを重合するフリーラジカル化学を使用した高圧プロセスを使用して作製することができる。典型的なポリマー密度は、0.91〜0.94g/cmである。低密度ポリエチレンは、0.01〜150g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。LDPEなどの高度に分岐したエチレンベースのポリマーはまた、「高圧エチレンベースのポリマー」とも称されてもよく、ポリマーが、ペルオキシドなどのフリーラジカル開始剤を使用して、オートクレーブまたは管形反応器において、13,000psigを超える圧力で、部分的にまたは完全にホモポリマー化または共重合されることを意味する(例えば、米国特許第4,599,392号(McKinneyら)を参照されたい)。このプロセスは、モノマー/コモノマー材料から、長鎖分岐部を含めたかなりの分岐部を有するポリマーを生じさせる。
【0024】
高度に分岐したエチレンベースのポリマーは典型的には、エチレンのホモポリマーであるが、ポリマー中に少なくとも50モルパーセントの重合エチレンモノマーが存在する限り、ポリマーは、1種または複数のα-オレフィンコポリマー由来の単位を含み得る。
【0025】
高度に分岐したエチレンベースのポリマーを形成するために使用し得るコモノマーには、これらに限定されないが、典型的には20個以下の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーが含まれる。例えば、α−オレフィンコモノマーは、例えば3〜10個の炭素原子を有してもよく、または代わりに、α−オレフィンコモノマーは、例えば3〜8個の炭素原子を有してもよい。例示的なα−オレフィンコモノマーには、これらに限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、および4−メチル−1−ペンテンが含まれる。代わりに、例示的なコモノマーには、これらに限定されないが、α,β−不飽和C〜C−カルボン酸、特に、α,β−不飽和C〜C−カルボン酸のマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸誘導体、例えば、不飽和C〜C15−カルボン酸エステル、特に、C〜C−アルカノールのエステル、または無水物、特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、n−メタクリル酸ブチル、ter−メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、tert−アクリル酸ブチル、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物、およびイタコン酸無水物が含まれる。別の代わるものとして、例示的なコモノマーには、これらに限定されないが、カルボン酸ビニル、例えば酢酸ビニルが含まれる。別の代わるものとして、例示的なコモノマーには、これらに限定されないが、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0026】
プロセス
少なくとも1種のポリアルケンは、高度に分岐したエチレンベースのポリマーによる反応プロセスの前に、またはそれとは別に生成し得る。他の開示されたプロセスにおいて、少なくとも1種のポリアルケンは、十分に撹拌される反応器(管形反応器またはオートクレーブ反応器など)内で、インサイチュで、および高度に分岐したエチレンベースのポリマーの存在下で形成し得る。高度に分岐したエチレンベースのポリマーは、エチレンの存在下で形成される。
【0027】
エチレンポリマーは、エチレンの存在下で形成される。実施形態のエチレンポリマーを形成する2つの開示した手段(少なくとも1種のラジカル化されたポリアルケンベースのポリマー分子への、高度に分岐したエチレンベースのポリマー分子のフリーラジカルグラフト化、および少なくとも1種のラジカル化されたポリアルケンベースのポリマー部位からの長鎖分岐部を形成するための、フリーラジカルエチレン重合)の全体像。少なくとも1種のポリアルケンの形成、高度に分岐した置換基エチレンベースのポリマー、および開示されたエチレンポリマーへのそれらの組合せについての他の実施形態のプロセスが存在し得る。
【0028】
一実施形態において、高度に分岐したエチレンベースのポリマー、および少なくとも1種のポリアルケンは、実施形態のエチレンポリマーを形成するために使用される反応プロセスの外部で調製され、エチレンの存在下にてフリーラジカル重合条件下で一般の反応器中で合わされ、2つのポリマーはプロセス条件および反応剤に供され、実施形態のエチレンポリマーの形成をもたらす。
【0029】
一実施形態において、高度に分岐したエチレンベースのポリマー、および少なくとも1種のポリアルケンは両方とも、同じプロセスの異なる前方のパーツにおいて調製され、次いでエチレンの存在下でフリーラジカル重合条件下にてプロセスの共通の下流のパーツにおいて一緒に合わさる。少なくとも1種のポリアルケンおよび高度に分岐した置換基エチレンベースのポリマーは、別々の前方の反応領域またはゾーン(別々のオートクレーブ、または管形反応器の上流のパーツなど)において作製される。次いで、これらの前方の反応領域またはゾーンからの生成物を、エチレンの存在下でフリーラジカル重合条件下にて下流の反応領域またはゾーンに移し、合わせ、実施形態のエチレンポリマーの形成を促進する。いくつかのプロセスにおいて、フリーラジカル生成化合物を下流の反応領域またはゾーンに加え、反応を促進する。いくつかのプロセスにおいて、触媒を加え、下流の反応領域またはゾーンにおいて反応を促進する。いくつかの他のプロセスにおいて、さらなる新鮮なエチレンを前方の反応領域またはゾーンのプロセス下流に加え、高度に分岐したエチレンベースのポリマー分岐部の形成、および少なくとも1種のポリアルケンへの高度に分岐したエチレンベースのポリマーのグラフト化の両方、ならびにエチレンモノマーと少なくとも1種のポリアルケンとの直接の反応を促進し、開示されたエチレンポリマーを形成させる。いくつかの他のプロセスにおいて、前方の反応領域またはゾーンからの生成物流の少なくとも1つを下流の反応領域またはゾーンに達する前に処理し、下流の反応を阻害し得る任意の残渣または副生成物を中和する。
【0030】
一実施形態において、方法は、インサイチュの方法であり、少なくとも1種のポリアルケンは、第1もしくは前方の反応領域またはゾーン(第1のオートクレーブ、または管形反応器の上流のパーツなど)中で生じる。次いで、生成した生成物流を下流の反応領域またはゾーンに移すが、そこではフリーラジカル重合条件でエチレンが存在する。これらの条件は、高度に分岐したエチレンベースのポリマーの形成、および少なくとも1種のポリアルケンへの高度に分岐したエチレンベースのポリマーのグラフト化の両方、ならびにエチレンモノマーと少なくとも1種のポリアルケン上の少なくとも1つのラジカル化された部位との直接の反応を補助し、それによって実施形態のエチレンポリマーが形成される。いくつかの実施形態のプロセスにおいて、フリーラジカル生成化合物を、下流の反応領域またはゾーンに加え、グラフト化反応を促進する。いくつかの他の実施形態のプロセスにおいて、触媒を加え、下流の反応領域またはゾーンにおけるグラフト化および反応を促進させる。いくつかの他の実施形態のプロセスにおいて、さらなる新鮮なエチレンを前方の反応領域またはゾーンのプロセス下流に加え、高度に分岐したエチレンベースのポリマーの形成およびグラフト化の両方、ならびにエチレンモノマーと少なくとも1種のポリアルケンとの反応を促進させ、開示されたエチレンポリマーを形成させる。いくつかの実施形態のプロセスにおいて、前方の反応領域またはゾーンからの生成物流を下流の反応領域またはゾーンに達する前に処理し、高度に分岐したエチレンベースのポリマー形成、少なくとも1種のポリアルケンへの高度に分岐したエチレンベースのポリマーのグラフト化、または少なくとも1種のポリアルケンとのエチレンモノマーの反応を阻害し得る前の反応からの任意の残渣もしくは副生成物を中和し、開示されたエチレンポリマーを形成させる。
【0031】
少なくとも1種のポリアルケンを反応器に供給するために、任意の適切な方法を使用してもよく、反応器では少なくとも1種のポリアルケンは、高度に分岐したエチレンベースのポリマーと反応し得る。例えば、気相法を使用して少なくとも1種のポリアルケンが生成される場合、少なくとも1種のポリアルケンを、高度に分岐したエチレンベースのポリマーの反応器に供給する前に、高度に分岐したエチレンベースのポリマーの反応器圧力を超える圧力で、少なくとも1種のポリアルケンを溶解するのに少なくとも十分に高い温度で、過剰な粘度をもたらさない濃度でエチレンに溶解し得る。
【0032】
高度に分岐したエチレンベースのポリマーを生成するために、高圧フリーラジカルによって開始される重合プロセスを典型的には使用する。2つの異なる高圧フリーラジカルによって開始される重合プロセスのタイプが公知である。第1のタイプにおいて、1つまたは複数の反応ゾーンを有する撹拌オートクレーブ容器を使用する。オートクレーブ反応器は、開始剤もしくはモノマー供給流、または両方のためのいくつかの注入ポイントを通常有する。第2のタイプにおいて、ジャケット付き管を、1つまたは複数の反応ゾーンを有する反応器として使用する。適切な(しかし限定的ではない)反応器の長さは、100〜3000メーター、好ましくは1000〜2000メーターでよい。いずれかのタイプの反応器についての反応ゾーンの始まりは、反応の開始剤、エチレン、テロマー、コモノマー(複数可)、および任意のこれらの組合せのサイド注入によって定められる。少なくとも2つの反応ゾーンを有するオートクレーブもしくは管形反応器において、またはオートクレーブおよび管形反応器の組合せ(各々が、1つもしくは複数の反応ゾーンを含む)において、高圧プロセスを行うことができる。
【0033】
一実施形態において、フリーラジカル重合が誘発される反応ゾーンの前に、触媒または開始剤を注入する。他の実施形態のプロセスにおいて、少なくとも1種のポリアルケンは、反応器系の前部において反応系中に供給してもよく、系自体中では形成されない。触媒活性の終結は、反応のフリーラジカル重合部分についての高い反応器温度の組合せによって、あるいは極性溶媒(イソプロパノール、水など)、または通常の開始剤溶媒(分岐アルカンまたは非分岐アルカンなど)の混合物に溶解された開始剤を反応器に供給することによって達成し得る。
【0034】
実施形態のプロセスは、変換効率を改善するためのプロセスリサイクルループを含み得る。このような実施形態のプロセスにおいて、下流の反応領域またはゾーンは、高度に分岐したエチレンベースのポリマーが少なくとも1種のポリアルケンから相分離する温度より低い温度に維持し得る。共重合が起こる反応器が、高いポリマー(「固体」)濃度を有する反応器(ループ反応器など)であり、反応器中の重合可能な高度に分岐したエチレンベースのポリマーの濃度を最大化することが好ましい。いくつかの実施形態のプロセスにおいて、リサイクルループを処理し、少なくとも1種のポリアルケンもしくは高度に分岐したエチレンベースのポリマーの重合を阻害し得る、または開示されたエチレンポリマーを形成させる反応を阻害し得る、前の反応サイクルからの残渣もしくは副生成物を中和し得る。いくつかの実施形態のプロセスにおいて、新鮮なモノマーをこの流に加える。
【0035】
高度に分岐したエチレンベースのポリマーの生成のために使用するエチレンは、ループリサイクル流から極性成分を除去することによって、または新鮮なエチレンのみが少なくとも1種のポリアルケンベースのポリマーを作製するために使用されるように反応系構成を使用することによって得られる精製したエチレンでよい。典型的な精製したエチレンは、高度に分岐したエチレンベースのポリマーを作製するのに必要とされない。このような場合、リサイクルループからのエチレンを使用し得る。
【0036】
実施形態のプロセスは、少なくとも1種のポリアルケンの存在下でのエチレンの単独重合、あるいは少なくとも1種のポリアルケンの存在下でエチレンと1種または複数の他のコモノマーとの共重合のために使用し得るが、ただし、これらのモノマーは、フリーラジカル条件下、高圧条件下で、エチレンと共重合可能であり、高度に分岐したエチレンベースのポリマーを形成する。
【0037】
連鎖移動剤またはテロゲン(CTA)を典型的には使用して、フリーラジカル重合プロセスにおいてメルトインデックスを制御する。連鎖移動は伸長しているポリマー鎖の終了を伴い、したがってポリマー材料の最終の分子量を制限する。連鎖移動剤は典型的には、伸長しているポリマー鎖と反応し、鎖の重合反応を停止させる水素原子供与体である。高圧フリーラジカル重合のために、これらの作用剤は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、アルデヒド、ケトンまたはアルコールなどの多くの異なるタイプでよい。使用することができる典型的なCTAには、これらに限定されないが、プロピレン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、メチルエチルケトン、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、およびイソプロパノールが含まれる。このプロセスにおいて使用されるCTAの量は、全反応混合物の約0.03〜約10重量パーセントである。
【0038】
分子量と反比例するポリマーのメルトインデックス(MIまたはI)は、連鎖移動剤の濃度を操作することによって制御する。フリーラジカル重合のために、水素原子の供与の後に、CTAは、モノマー、または既に形成されているオリゴマーもしくはポリマーと反応して、新たなポリマー鎖をスタートすることができる基を形成する。これは、連鎖移動剤中に存在する任意の官能基が、ポリマー鎖に導入されることを意味する。多数のCTA、例えば、オレフィン系不飽和結合を有するプロピレンおよび1−ブテンをまた、共重合反応によってポリマー鎖自体に組み込み得る。連鎖移動剤の存在下で生成されるポリマーは、加工性、光学特性(濁りおよび透明性など)、密度、剛性、降伏点、フィルム延伸および引裂き強度などのいくつかの物理学的性質が改質される。
【0039】
水素は、高圧フリーラジカル重合のための連鎖移動剤であることが示されてきた。開示されているプロセスについての反応ゾーン中で作製される分子量の制御は、水素を、触媒または開始剤が注入される反応ゾーンに供給することによって達成し得る。最終生成物のメルトインデックスの制御は、連鎖移動剤を、ラジカル重合が起こる反応ゾーンに供給することによって達成される。フリーラジカル連鎖移動剤の供給は、反応ゾーンへの直接の注入によって、または反応器の前部にそれらを供給することによって達成することができる。水素が反応器の前部に供給される場合、水素は、開始剤が注入される反応ゾーンに入るまで連鎖移動剤として作用することが予想されず、反応ゾーンに入った時点で不飽和連鎖移動剤は、伸長しているポリマー鎖と相互作用することが予想される。いくつかの実施形態のプロセスにおいて、リサイクル流からの過剰なCTAを除去し、またはプロセスの最前部においてCTAの過剰な蓄積を防止するために注入を制限することが必要であり得る。
【0040】
開示されたプロセスにおいて使用されるフリーラジカル開始剤のタイプは、決定的ではない。エチレンベースのポリマーを生成するために一般に使用されるフリーラジカル開始剤は、重合可能なモノマー、およびペルオキシドの重量に基づいて0.0001〜0.005重量%の通常の量で、管形反応器において使用可能な酸素である。好ましい開始剤は、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセテートおよびt−ブチルペルオキシ−2−ヘキサノエートまたはこれらの混合物である。これらの有機ペルオキシ開始剤は、重合可能なモノマーの重量に基づいて0.005〜0.2重量%の通常の量で使用される。
【0041】
ペルオキシド開始剤は、例えば、有機ペルオキシドでよい。例示的な有機ペルオキシドには、これらに限定されないが、環状ペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ酸エステル、およびペルオキシケタールが含まれる。
【0042】
例示的な環状ペルオキシドには、これらに限定されないが、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナンが含まれる。このような環状ペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX301(Akzo Nobel;Arnhem、The Netherlands)で市販されている。例示的なジアシルペルオキシドには、これらに限定されないが、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドが含まれる。このようなジアシルペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX36(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なジアルキルペルオキシドには、これらに限定されないが、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ−tert−アミルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルオキシド;およびtert−ブチルクミルペルオキシドが含まれる。このようなジアルキルペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX101、TRIGONOX145、TRIGONOX201、TRIGONOX B、およびTRIGONOX T(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なヒドロペルオキシドには、これらに限定されないが、tert−アミルヒドロペルオキシド;および1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが含まれる。このようなヒドロペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX TAHP、およびTRIGONOX TMBH(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なペルオキシカーボネートには、これらに限定されないが、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート;tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート;およびtert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートが含まれる。このようなペルオキシカーボネートは、例えば、商標TRIGONOX117、TRIGONOX131、およびTRIGONOX BPIC(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なペルオキシジカーボネートには、これらに限定されないが、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート;およびジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネートが含まれる。このようなペルオキシジカーボネートは、例えば、商標TRIGONOX EHP、およびTRIGONOX SBP(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なペルオキシ酸エステルには、これらに限定されないが、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;tert−アミルペルオキシネオデカノエート;tert−アミルペルオキシピバレート;tert−アミルペルオキシベンゾエート;tert−アミルペルオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン;tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;tert−ブチルペルオキシネオデカノエート;tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート;tert−ブチルペルオキシピバレート;tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート;tert−ブチルペルオキシイソブチレート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート;tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;クミルペルオキシネオデカノエート;tert−ブチルペルオキシベンゾエート;およびtert−ブチルペルオキシアセテートが含まれる。このようなペルオキシ酸エステル溶媒は、例えば、商標TRIGONOX121;TRIGONOX123;TRIGONOX125;TRIGONOX127;TRIGONOX133;TRIGONOX141;TRIGONOX21;TRIGONOX23;TRIGONOX257;TRIGONOX25;TRIGONOX27;TRIGONOX41;TRIGONOX421;TRIGONOX423;TRIGONOX425;TRIGONOX42;TRIGONOX99;TRIGONOX C;およびTRIGONOX F(Akzo Nobel)で市販されている。例示的なペルオキシケタールには、これらに限定されないが、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン;1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;および2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタンが含まれる。このようなペルオキシケタールは、例えば、商標TRIGONOX122、TRIGONOX22、TRIGONOX29、およびTRIGONOX D(Akzo Nobel)で市販されている。フリーラジカル開始剤系には、例えば、上記のペルオキシド開始剤のいずれかの混合物または組合せが含まれてもよい。ペルオキシド開始剤は、60重量パーセント未満のフリーラジカル開始剤系を含み得る。
【0043】
フリーラジカル開始剤系には、少なくとも1種の炭化水素溶媒がさらに含まれる。炭化水素溶媒は、例えば、C〜C30炭化水素溶媒でよい。例示的な炭化水素溶媒には、これらに限定されないが、鉱質溶媒(mineral solvents)、通常のパラフィン溶媒、イソパラフィン溶媒、環状溶媒などが含まれる。炭化水素溶媒は、例えば、n−オクタン、イソ−オクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、n−ドデカン、イソ−ドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)、および他のイソパラフィン溶媒からなる群から選択し得る。イソパラフィン溶媒などの例示的な炭化水素溶媒は、例えば、商標ISOPAR C、ISOPAR E、およびISOPAR H(ExxonMobil Chemical Co.)で市販されている。炭化水素溶媒は、99重量パーセント未満のフリーラジカル開始剤系を含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態のプロセスにおいて、フリーラジカル開始剤系には、極性共溶媒をさらに含み得る。極性共溶媒は、アルコール共溶媒、例えば、C〜C30アルコールでよい。さらに、アルコール共溶媒のアルコール官能基は、例えば、単官能基または多官能基でよい。極性共溶媒としての例示的なアルコールには、これらに限定されないが、イソプロパノール(2−プロパノール)、アリルアルコール(1−ペンタノール)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、これらの組合せ、これらの混合物などが含まれる。極性共溶媒は、40重量パーセント未満のフリーラジカル開始剤系を含み得る。
【0045】
極性共溶媒は、アルデヒドでよい。アルデヒドは、当業者には一般に公知である。例えば、プロピオンアルデヒドは、極性共溶媒として使用し得る。しかし、このようなアルデヒドを極性共溶媒として使用するとき、連鎖移動剤としてのアルデヒドの反応性ポテンシャルを考慮に入れるべきである。このような反応性ポテンシャルは、当業者に一般に公知である。
【0046】
極性共溶媒は、ケトンでよい。ケトンは、当業者には一般に公知である。例えば、アセトンを、極性共溶媒として使用し得る。しかし、このようなケトンを極性共溶媒として使用するとき、連鎖移動剤としてのケトンの反応性ポテンシャルを考慮に入れるべきである。このような反応性ポテンシャルは、当業者に一般に公知である。
【0047】
いくつかの実施形態のプロセスにおいて、フリーラジカル開始剤系は、同時注入のための溶媒としてまたはブレンドとして、連鎖移動剤をさらに含み得る。前に考察したように、連鎖移動剤は当業者に一般に公知であり、連鎖移動剤には、これらに限定されないが、プロパン、イソブタン、アセトン、プロピレン、イソプロパノール、ブテン−1、プロピオンアルデヒド、およびメチルエチルケトンが含まれる。他の開示されたプロセスにおいて、連鎖移動剤を、開始剤系からの別々の入口ポートによって反応器中に充填し得る。別の実施形態のプロセスにおいて、連鎖移動剤をエチレンとブレンドし、加圧し、次いでそれ自体の注入系において反応器中に注入し得る。
【0048】
いくつかの実施形態のプロセスにおいて、ペルオキシド開始剤を、最初に炭化水素溶媒に溶解または希釈し、次いでフリーラジカル開始剤系を重合反応器中に計量する前に、極性共溶媒をペルオキシド開始剤/炭化水素溶媒の混合物に加えてもよい。別の実施形態のプロセスにおいて、ペルオキシド開始剤を、極性共溶媒の存在下で炭化水素溶媒に溶解してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態のプロセスにおいて、このプロセスにおいて使用されるフリーラジカル開始剤は、少なくとも1種のポリアルケンから抽出可能な水素を抽出することによって、少なくとも1種のポリアルケン上のグラフト部位を誘導し得る。フリーラジカル開始剤の例には、ペルオキシドおよびアゾ化合物などの、前に考察したそれらのフリーラジカル開始剤が含まれる。いくつかの他の実施形態のプロセスにおいて、電離放射線をまた使用して、抽出可能な水素を遊離させ、少なくとも1種のポリアルケン上にラジカル化された部位を生じさせ得る。ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、およびtert−ブチルペルアセテート、t−ブチル−α−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−アミルペルオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、および2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンを使用するなど、有機開始剤は、抽出可能な水素を抽出する好ましい手段である。好ましいアゾ化合物は、亜硝酸アゾビスイソブチルである。
【0050】
いくつかの実施形態の方法において、可塑剤などの加工助剤をまた、実施形態のエチレンポリマー生成物に含めることができる。これらの助剤には、これらに限定されないが、フタル酸エステル(フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジイソブチルなど)、天然油(ラノリン、およびパラフィンなど)、石油精製から得られるナフテン系および芳香族油、ならびにロジンまたは石油供給原料からの液体樹脂が含まれる。加工助剤として有用な例示的なクラスの油には、白色鉱油、例えば、KAYDOL油(Chemtura Corp.;Middlebury、Conn.)およびSHELLFLEX371ナフテン系油(Shell Lubricants;Houston、Tex.)が含まれる。別の適切な油は、TUFFLO油(Lyondell Lubricants;Houston、Tex)である。
【0051】
いくつかの実施形態のプロセスにおいて、実施形態のエチレンポリマーを、1種または複数の安定剤、例えば、抗酸化剤、例えば、IRGANOX1010およびIRGAFOS168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg、Switzerland)で処理する。一般に、押出または他の溶融プロセスの前に、ポリマーを1種または複数の安定剤で処理する。他の実施形態のプロセスにおいて、他のポリマー添加物には、これらに限定されないが、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、成核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、発煙阻害剤、粘度調整剤および粘着防止剤が含まれる。実施形態のエチレンポリマー組成物は、実施形態のエチレンポリマーの重量に基づいて、例えば10パーセント未満の1種または複数の添加物の合わせた重量を含み得る。
【0052】
実施形態のエチレンポリマーは、さらに配合し得る。いくつかの実施形態のエチレンポリマー組成物において、1種または複数の抗酸化剤をポリマー中にさらに配合してもよく、配合ポリマーはペレット化される。配合エチレンポリマーは、任意の量の1種または複数の抗酸化剤を含有し得る。例えば、配合エチレンポリマーは、100万部のポリマー毎に200〜600部の1種または複数のフェノール系酸化防止剤を含み得る。さらに、配合エチレンポリマーは、100万部のポリマー毎に800〜1200部のホスフィットベースの抗酸化剤を含み得る。開示された配合エチレンポリマーは、100万部のポリマー毎に300〜1250部のステアリン酸カルシウムをさらに含み得る。
【0053】
使用
実施形態のエチレンポリマーを種々の通常の熱可塑性製作プロセスにおいて用いて、注型、インフレーション(blown)、カレンダー加工、または押出コーティングプロセスによって調製した、少なくとも1つのフィルム層(単層フィルムなど)、または多層フィルム中に少なくとも1つの層を含む物体;成形物品(吹込成形、射出成形、またはロト成形物品など);押出し成形物;繊維;および織布または不織布を含めて、有用な物品を生成してもよい。エチレンポリマーを含む熱可塑性組成物には、他の天然または合成材料とのブレンド、ポリマー、添加物、強化剤、発火耐性添加物、抗酸化剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、および可塑剤が含まれる。
【0054】
実施形態のエチレンポリマーは、他の用途のための繊維を生成するために使用し得る。実施形態のエチレンポリマー、またはそのブレンドから調製し得る繊維には、ステープル繊維、トウ、多成分、シース/コア、撚糸、および単繊維が含まれる。適切な繊維形成プロセスには、スピンボンド、メルトブロー技術(USP4,340,563(Appelら)、4,663,220(Wisneskiら)、4,668,566(Nohrら)、および4,322,027(Reba)に開示されているような)、ゲル紡糸繊維(USP4,413,110(Kaveshら)に開示されているような)、織布および不織布(USP3,485,706(May)に開示されていような)、あるいはポリエステル、ナイロンもしくは綿などの他の繊維とのブレンドを含めたこのような繊維から作製した構造体、熱成形品、押出形状物(異形押出および共有押出を含めた)、カレンダー加工物品、ならびに延伸、撚り加工、またはけん縮糸または繊維が含まれる。
【0055】
実施形態のエチレンポリマーは、これらに限定されないが、透明収縮フィルム、コレーション収縮フィルム(collation shrink films)、キャストストレッチフィルム、牧草用フィルム、ストレッチフード、シーラント、およびおむつのバックシートを含めた種々のフィルムにおいて使用し得る。
【0056】
実施形態のエチレンポリマーはまた、他の直接の最終用途において有用である。実施形態のエチレンポリマーは、ワイヤーおよびケーブルのコーティング操作、真空成形操作のためのシート押出、ならびに成形物品の形成(射出成形、ブロー成形プロセス、またはロト成形プロセスの使用を含めた)のために有用である。実施形態のエチレンポリマーを含む組成物はまた、通常のポリオレフィン加工技術を使用して製造物品に形成することができる。
【0057】
実施形態のエチレンポリマーについての他の適切な用途には、弾性フィルムおよび繊維;柔らかな感触の物品(歯ブラシの柄および電化製品のハンドルなど);ガスケットおよび異形材(profiles);接着剤(ホットメルト接着剤および感圧接着剤を含めた);履物(靴底および靴のライナーを含めた);自動車の内装品および異形材;気泡物品(連続気泡および独立気泡の両方);他の熱可塑性ポリマー(高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、または他のオレフィンポリマーなど)のための耐衝撃性改良剤;コーティング布帛;ホース;管類;目詰め材;キャップライナー;フローリング;ならびに潤滑剤のための流動点改質剤としても知られている粘度指数改質剤が含まれる。
【0058】
実施形態のエチレンポリマーのさらなる処理を、実施形態のエチレンポリマーを他の最終用途へ適用するために行い得る。例えば、本発明のポリマー、または本発明のポリマーを含む配合物を使用して、分散剤(水性および非水性の両方)をまた形成することができる。PCT出願公開第2005/021622号(Strandeburgら)に開示されているように、実施形態のエチレンポリマーを含む気泡をまた形成することができる。実施形態のエチレンポリマーはまた、ペルオキシド、電子ビーム、シラン、アジド、または他の架橋技術の使用などの任意の公知の手段によって架橋し得る。実施形態のエチレンポリマーはまた、グラフト化(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シラン、もしくは他のグラフト化剤の使用によって)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン酸化反応、または他の化学修飾によるなど、化学修飾することができる。
【0059】
形成後に、添加物およびアジュバントを実施形態のエチレンポリマーに加えてもよい。適切な添加物には、充填剤、例えば、有機または無機粒子(粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末金属を含めた)、有機または無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維を含めた)、鋼線または鋼鉄の網、ナイロンまたはポリエステルコーディング、ナノサイズ粒子、粘土など;粘着付与剤、エキステンダー油(パラフィン系油またはナフテン系油を含めた);ならびに他の天然および合成のポリマー(実施形態の方法によって作製される、または作製できる他のポリマーを含めた)が含まれる。
【0060】
実施形態のエチレンポリマーと他のポリオレフィンとのブレンドおよび混合物を実施し得る。実施形態のエチレンポリマーとブレンドするための適切なポリマーには、熱可塑性および非熱可塑性のポリマー(天然および合成のポリマーを含めた)が含まれる。ブレンドのための例示的なポリマーには、ポリプロピレン(耐衝撃性改良ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、およびランダムエチレン/プロピレンコポリマーの両方)、様々なタイプのポリエチレン、例えば、高圧フリーラジカルLDPE、チーグラー−ナッタLLDPE、メタロセンPE(複数の反応器PE(チーグラー−ナッタPEおよびメタロセンPEの「反応器内」ブレンド、例えば、USP6,545,088(Kolthammerら);6,538,070(Cardwellら);6,566,446(Parikhら);5,844,045(Kolthammerら);5,869,575(Kolthammerら);および6,448,341(Kolthammerら)に開示されている生成物)を含めた)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよびその水素化誘導体(SBSおよびSEBS)、ならびに熱可塑性ポリウレタンが含まれる。均一なポリマー、例えば、オレフィンプラストマーおよびエラストマー、エチレンおよびプロピレンベースのコポリマー(例えば、VERSIFY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Company)、ならびにVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマー)はまた、実施形態のエチレンポリマーを含むブレンド中の成分として有用であり得る。
【0061】
実施形態のエチレンポリマーのブレンドおよび混合物は、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)およびスチレン系ポリマーブレンドを含み得る。TPEおよびTPVブレンドは、実施形態のエチレンポリマー(その官能化誘導体または不飽和誘導体を含めた)と、任意選択のゴム(通常のブロックコポリマー、特に、SBSブロックコポリマーを含めた)、および任意選択で架橋剤または加硫剤とを合わせることによって調製し得る。TPOブレンドは一般に、実施形態のポリマーと、ポリオレフィン、および任意選択で架橋剤または加硫剤とをブレンドすることによって調製される。上記のブレンドは、成形物体を形成させ、このように得られた成形物品を任意選択で架橋させることにおいて使用し得る。異なる成分を使用する同様の手順は、USP6,797,779(Ajbaniら)において以前に開示されてきた。
【0062】
定義
Periodic Table of Elementsへの任意の言及は、CRC Press, Inc.、1990-1991によって公表された通りである。この表における元素の族への言及は、族を番号付けするための新規な表示法による。それとは反対のことが記載されず、状況から暗黙でなく、または当技術分野で通例でない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づいており、全ての試験法は、本開示の出願日時点で最新である。米国特許の実施の目的のために、任意の参照された特許、特許出願または公開資料の内容は、特に、定義の開示(本開示において特に提供する任意の定義と矛盾しない程度まで)および当技術分野の一般知識に関して、その全体が参照により組み込まれている(またはその同等のUS版は、参照により組み込まれている)。
【0063】
本開示における数値の範囲は概算であり、したがって他に示さない限り、この範囲の外の値が含まれてもよい。数値の範囲には、より低い値およびより高い値(1単位ずつ)を含めた全ての値が含まれ、ただし、任意のより低い値と任意のより高い値との間に少なくとも2単位の差異が存在する。一例として、組成上、物理的または他の特性(例えば、分子量、粘度、メルトインデックスなど)が、100〜1,000であるとき、全ての個々の値(100、101、102など)、および部分的な範囲(100〜144、155〜170、197〜200など)は、明確に列挙されていることを意図する。1未満である値を含む、または1超の分数を含有する範囲(例えば、1.1、1.5など)について、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なす。10未満の一桁の数字を含有する範囲(例えば、1〜5)について、1単位は典型的には、0.1であると見なす。これらは、特に意図したものの単に例であり、列挙された最小値と最大値との間の数値の全ての可能な組合せは、本開示において明確に記述されていると考えられる。本開示において、とりわけ、密度、メルトインデックス、分子量、試薬の量およびプロセス条件について、数値の範囲を提示する。
【0064】
「組成物」という用語は、本明細書で使用されるように、2つ以上の材料の組合せを意味する。本発明のポリマーに関して、組成物は、少なくとも1種の他の材料、例えば、添加物、充填剤、別のポリマー、触媒などと組み合わせた本発明のポリマーである。本発明の状況において、本発明のポリマーは、未反応ポリアルキレンおよび/またはエチレンベースのポリマーの存在のために組成物でない。これは、これらの材料と式1によって記載されるようなポリマーとの会合は、本発明のポリマーの定義の一部であるためである。
【0065】
「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、使用されるように、2種以上のポリマーの均質な物理的(すなわち、反応を伴わない)混合物を意味する。ブレンドは、混和性(分子レベルで相分離されていない)でもよく、または混和性でなくてもよい。ブレンドは、相分離されても、またはされていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において公知の他の方法から決定すると、1つまたは複数のドメイン構成を含有してもよく、または含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、樹脂を溶融混合もしくは配合する)で、またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内で同時に形成する)で2種以上のポリマーを物理的に混合することによって実施し得る。
【0066】
「ポリマー」という用語は、同じまたは異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される化合物を意味する。したがって、総称ポリマーは、ホモポリマー(極微量の不純物がポリマー構造中に組み込まれていてもよいという了解の下で、1タイプのモノマーのみから調製されるポリマーを意味する)という用語を包含し、「インターポリマー」という用語は、下記の定義の通りである。
【0067】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種の異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。総称インターポリマーには、コポリマー(2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを意味する)、および2種を超える異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0068】
「エチレンベースのポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づいて過半数の量である重合エチレンを含み、かつ任意選択で少なくとも1種のコモノマーを含み得るポリマーを意味する。
【0069】
「エチレンベースのインターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて過半数の量である重合エチレンを含み、かつ少なくとも1種のコモノマーを含むインターポリマーを意味する。
【0070】
「測定可能でない」という用語は、13C NMR分析においてアルキル分岐部を報告することとの関係で使用される場合、所与の信号雑音比で分岐部が検出できなかったことを意味する。
【0071】
「複数パーツ反応器」という用語は、本明細書において使用する場合、複数の反応ゾーンを有する反応器を意味し、反応ゾーンには典型的には、供給ポートおよび/または1つもしくは複数の物的障壁が含まれる。
【0072】
本発明のさらなる実施形態
本発明の一実施形態において、ポリマーは、エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含み、ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位、または少なくとも0.5単位、または少なくとも0.8単位のアミル基を有する。
【0073】
一実施形態において、本発明のポリマーは、1個または複数のケイ素原子に結合しているエチレンの一部を含む。
【0074】
一実施形態において、本発明のポリマーは、ポリアルキレンの主鎖炭素原子に結合している少なくとも1つのエチレンベースのポリマー分岐部を含む。
【0075】
一実施形態において、本発明のポリマーのポリアルキレンの主鎖炭素原子に結合しているエチレンベースのポリマー分岐部は、長鎖分岐部を含有する。
【0076】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、13C NMRによって決定すると、少なくとも1単位、または少なくとも1.2単位、または少なくとも1.4単位のC6+分岐部を含む。
【0077】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、13C NMRによって決定すると、炭素原子1000個当たり5単位以下、または3単位以下、または2単位以下のアミル基を含む。
【0078】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、0.93g/cm未満または0.92g/cm未満の密度を有する。
【0079】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、0.92g/cm未満または0.915g/cm未満の密度を有する。
【0080】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、15g/10分未満、または10g/10分未満、または6g/10分未満のメルトインデックス(I)を有する。
【0081】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、0.1g/10分超、または0.5g/10分超のメルトインデックス(I)を有する。
【0082】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、少なくとも5、または少なくとも8、または少なくとも10のメルトフロー比(I10/I)を有する。
【0083】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、30未満、25未満、20未満のI10/Iを有する。
【0084】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、10未満、8未満または6未満のI、および5超、8超または10超のI10/Iを有する。
【0085】
一実施形態において、本発明のポリマーは、5〜20、または10〜15の分子量分布(MWD)を有する。
【0086】
一実施形態において、本発明のポリマーは、ポリマーの重量に基づいて、1〜30重量パーセントまたは4〜20重量パーセントのポリアルキレンを含む。
【0087】
一実施形態において、本発明は、前述のポリマーの実施形態のいずれかの本発明のポリマーを含む組成物である。
【0088】
一実施形態において、前述の実施形態の組成物は、1種または複数の添加物を含む。
【0089】
一実施形態において、本発明は、前述の組成物の実施形態のいずれかの組成物を含む物品である。
【0090】
一実施形態において、本発明は、組成物の実施形態のいずれかの組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品である。
【0091】
一実施形態において、前述の物品の実施形態のいずれかの物品は、フィルムの形態である。
【0092】
一実施形態において、本発明は、エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、
A.第1の反応器または複数パーツ反応器の第1の部分において、フリーラジカル開始剤の存在下で、少なくとも1種のポリアルキレンをエチレンと接触させること、および
B.フリーラジカル開始剤の存在下で、ポリアルキレンをさらなるエチレンと反応させ、少なくとも1つの他の反応器または複数パーツ反応器の後の部分において、ポリアルキレンに結合しているエチレンベースのポリマー分岐部を形成させること
を含む方法である。
【0093】
1つのプロセスの実施形態において、エチレンベースのポリマー分岐部は、エチレンモノマーをポリアルキレンと結合させてエチレン−ポリアルキレン部分を形成し、得られた部分を少なくともさらなるエチレンモノマーと重合させてエチレンベースのポリマー分岐部を形成することによって形成される。
【0094】
1つのプロセスの実施形態において、エチレンベースのポリマー分岐部はポリアルキレンとは独立に形成され、次いでポリアルキレンにグラフトされる。
【0095】
一実施形態において、本発明は、プロセスの実施形態のいずれかによって製造されるポリマーである。
【0096】
一実施形態において、本発明のポリマーは、70重量パーセント未満、60重量パーセント未満、50重量パーセント未満、40重量パーセント未満、30重量パーセント未満、20重量パーセント未満、または10重量パーセント未満の、溶媒抽出によって抽出可能なポリアルキレンを含む。
【0097】
一実施形態において、本組成物は、70重量パーセント未満、60重量パーセント未満、50重量パーセント未満、40重量パーセント未満、30重量パーセント未満、20重量パーセント未満、または10重量パーセント未満の、溶媒抽出によって抽出可能なポリアルキレンを含む。
【0098】
一実施形態において、本発明のポリマーは、105℃未満の融点Tm、および0.915g/cc未満の密度を有する。
【0099】
一実施形態において、本発明のポリマーは、130J/g未満の融解熱、および0.915g/cc未満の密度を有する。
【0100】
一実施形態において、本発明のポリマーは、少なくとも15、好ましくは少なくとも17の粘度比(V0.1/V100)を有する。
【0101】
一実施形態において、本発明のポリマーは、30未満、または25未満の粘度比(V0.1/V100)を有する。
【0102】
実験
参照樹脂
30種の市販のLDPE樹脂(「市販の樹脂」または「CAR」と称する)を、全て下記に記載する密度、メルトインデックス、DSC結晶化度、ゲル浸透クロマトグラフィー、3D−GPCによるg’、および3D−GPC法によるgpcBR分岐インデックスを使用して、密度、メルトインデックス(I)、融解熱、ピーク溶融温度、g’、gpcBR、およびLCBfについて試験する。市販の樹脂は、表1に一覧表示する特性を有する。
【0103】
【表1】
【0104】
試験法
密度
密度について測定する試料は、ASTM D1928によって調製する。試料を、374°F(190℃)および30,000psiで3分間、次いで70°F(21℃)および30,000psiで1分間プレスする。密度測定は、ASTM D792(方法B)を使用して、試料プレスの1時間以内に行う。
【0105】
メルトインデックス
メルトインデックス、またはIは、ASTM D1238(条件、190℃/2.16kg)によって測定し、10分毎に溶出するグラムで報告する。I10は、ASTM D1238(条件、190℃/10kg)によって測定し、10分毎に溶出するグラムで報告する。
【0106】
ポリアルキレンについての粘度決定
溶融粘度を、Brookfield Laboratories(Middleboro、MA)DVII+粘度計および使い捨てのアルミニウム試料チャンバーを使用して決定する。使用するスピンドルは、約480,000〜約950,000センチポイズの粘度を測定するのに適したSC4−25ホットメルトスピンドルである。ポリマーの粘度がこの範囲以外である場合、またはこの手順において記載されているような推奨されるトルク範囲を得るために、他のスピンドルを使用して粘度を得てもよい。試料を試料チャンバー中に注ぎ、Brookfield Thermoselに挿入し、所定の場所に組み込む。試料チャンバーは、底部上にBrookfield Thermoselの底部に嵌合するノッチを有し、スピンドルが挿入され、回転しているときにチャンバーが方向を変えないことを確実としている。溶融された試料が試料チャンバーの最上部の約1インチ下になるまで(概ね8グラムの樹脂)、試料を必要とされる温度(150℃)に加熱する。粘度計装置を下げ、スピンドルを試料チャンバー中に浸す。粘度計上のブラケットがThermosel上で位置合わせするまで下降を続ける。粘度計の電源を入れ、約30〜約60パーセントのトルク測定値をもたらす剪断速度で作動するように設定する。測定値は約15分間または値が安定化するまで1分毎に行い、その時点で最終測定値を記録する。
【0107】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲の温度について所与の温度での試料の結晶化度を測定することができる。実施例のために、RCS(Refrigerated Cooling System)冷却アクセサリーおよびオートサンプラーモジュールを備えたTAモデルQ1000DSC(TA Instruments;New Castle、DE)を使用して、試験を行う。試験の間、50ml/分の窒素パージガス流を使用する。樹脂を、空気中1500psi圧力下、350℃で1インチの円形プラークによって3mmの厚さに5分間圧縮成形する。次いで、試料をプレスから取り出し、カウンタートップ上に置き、室温(約25℃)に冷却する。冷却した材料の3〜10mgの試料を6mm直径のディスクに切断し、秤量し、軽いアルミニウムパン(約50mg)中に入れ、クリンプして閉じる。次いで、試料をその熱的挙動について試験する。
【0108】
試料の熱的挙動を、試料温度を上方および下方に変化させ、温度に対する反応のプロファイルを生じさせることによって決定する。試料を最初に180℃に急速に加熱し、前の熱履歴を除去するために恒温状態に3分間維持する。次に、試料を次いで10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、試料を、10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する。冷却および第2の加熱曲線を記録する。決定した値は、ピーク溶融温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融解熱(H)(J/g)、および等式1
結晶化度%=((H)/(292J/g))×100(等式1)
を使用したポリエチレン試料についての計算した結晶化度パーセントである。
【0109】
融解熱(H)およびピーク溶融温度を、第2の熱曲線から報告する。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から決定する。
【0110】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
GPCシステムは、搭載されている示差屈折計(RI)を備えたWaters(Milford、MA)150℃高温クロマトグラフ(他の適切な高温GPC機器には、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)モデル210およびモデル220が含まれる)からなる。さらなる検出器には、Polymer ChARからのIR4赤外線検出器(Valencia、Spain)、Precision Detectors(Amherst、MA)2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、およびViscotek(Houston、TX)150R4−キャピラリー溶液粘度計を含めることができる。最後の2つの独立した検出器、および第1の検出器の少なくとも1つによるGPCは、「3D−GPC」と称されることがあり、一方、「GPC」という用語は単独で、一般に通常のGPCと称される。試料によって、15度角または90度角の光散乱検出器を、計算の目的のために使用する。データ収集を、Viscotek TriSECソフトウェア(バージョン3)、および4チャンネルViscotek Data Manager DM400を使用して行う。システムはまた、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)からのオンライン溶媒脱気装置を備えている。4つの30cm長さのShodex HT803(13ミクロン)カラム、または4つの30cmのPolymer Labsカラム(20ミクロン、混合孔径充填)(MixA LS、Polymer Labs)など、適切な高温GPCカラムを使用することができる。試料カルーセルコンパートメント(sample carousel compartment)を140℃で操作し、カラムコンパートメントを150℃で操作する。試料を、50ミリリットルの溶媒中の0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。クロマトグラフィー用溶媒および試料調製溶媒は、200ppmのブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。両方の溶媒を窒素でスパージする。ポリエチレン試料を、160℃で4時間穏やかに撹拌する。注入量は、200マイクロリットルである。GPCを通る流量を、1ml/分に設定する。
【0111】
GPCカラムセットを、21種の分布の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を流すことによって、実施例を流す前に較正する。標準物質の分子量(MW)は580〜8,400,000グラム/モルの範囲であり、標準物質は、6つの「カクテル」混合物中に含有される。各標準混合物は、個々の分子量の間に少なくとも一桁の差異を有する。標準混合物は、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)から購入する。ポリスチレン標準物質を、1,000,000グラム/モル以上の分子量では50mLの溶媒中0.025gで、および1,000,000グラム/モル未満の分子量では50mlの溶媒中0.05gで調製する。ポリスチレン標準物質を、穏やかに30分間撹拌しながら80℃で溶解した。分布の狭い標準物質の混合物を最初に流し、かつ分解を最小限にするため最も高い分子量の成分が減少する順番で流す。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、等式2を使用してポリエチレン分子量に変換する(WilliamsおよびWard, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載されているように)。

ポリエチレン=A×(Mポリスチレン(等式2)、

式中、Mは、ポリエチレンまたはポリスチレンの分子量であり(表示されているように)、Aは、0.43の値を有し、Bは、1.0と等しい。分子量分布および関連する統計を得るためのこのポリエチレン較正の使用は、WilliamsおよびWardの方法と定義される。等式3におけるAおよびBの他の値は、ポリスチレンおよびポリエチレンについてのMark−HouwinkのKおよびa(αと称されることがある)値の異なる選択からもたらされてもよく、一般に従来通り較正した3D−GPCと称される。
【0112】
3D−GPCによって、絶対重量平均分子量(「Mw、Abs」)および固有粘度もまた、上記と同じ条件を使用して適切な分布の狭いポリエチレン標準物質から独立に得られる。これらの分布の狭い直鎖状ポリエチレン標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire、UK;品番PL2650−0101およびPL2650−0102)から得てもよい。
【0113】
多検出器オフセットの決定のための体系的なアプローチは、Balke, Moureyら(Mourey and Balke, Chromatography Polym., Chapter 12, (1992))(Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym., Chapter 13, (1992))によって公表されたものと一貫した態様で行われ、分布の広いDow1683ポリスチレン(American Polymer Standards Corp.;Mentor、OH)またはその同等物からの3種の検出器log(Mおよび固有粘度)の結果を、分布の狭いポリスチレン標準物質較正曲線からの分布の狭い標準によるカラム較正結果に最適化する。検出器容量オフセット決定を説明する分子量データは、Zimm(Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099 (1948))およびKratochvil(Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY (1987))によって公表されたものと一貫した態様で得られる。分子量の決定において使用される全体の注入濃度は、適切な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、またはポリエチレン標準物質の1つに由来する質量検出器面積および質量検出器定数から得られる。計算した分子量は、言及したポリエチレン標準物質の1つまたは複数、および0.104の屈折率濃度係数dn/dcに由来する光散乱定数を使用して得る。一般に、質量検出器の反応および光散乱定数は、約50,000ダルトンを超えた分子量を有する線状標準物質から決定すべきである。粘度計の較正は、製造者が記載する方法を使用して、または代わりに適切な線状標準物質(標準参照物質(SRM)1475a、1482a、1483、または1484aなど)の公表された値を使用することによって達成することができる。クロマトグラフィー濃度は、第2ビリアル係数の作用(分子量に対する濃度効果)を考慮しなくてよいだけ十分に低いと仮定する。
【0114】
3D−GPCによるgpcBR分岐インデックス
3D−GPC構成において、2つのポリマータイプ(ポリスチレンおよびポリエチレン)の各々について独立に、ポリエチレンおよびポリスチレン標準物質を使用して、Mark−Houwink定数(Kおよびα)を測定することができる。これらを使用して、下記の方法の適用において、WilliamsおよびWardのポリエチレン同等物の分子量を精密にすることができる。
【0115】
gpcBR分岐インデックスは、上記のように、光散乱、粘度、および濃度検出器を最初に較正することによって決定する。次いで、ベースラインを、光散乱、粘度計、および濃度クロマトグラムから減算する。次いで、積分ウィンドウを、屈折率クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す、光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持容量範囲の全ての積分を確実にするように設定する。次いで、直鎖状ポリエチレン標準物質を使用して、上記のように、ポリエチレンおよびポリスチレンのMark−Houwink定数を確立する。定数を得ると、2つの値を使用して、等式3および4に示されているように、溶出容量の関数として、ポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度についての2つの線状参照通常較正(「cc」)を構築する。
【0116】
【数1】
【0117】
gpcBR分岐インデックスは、長鎖分岐の特性決定のための確固とした方法である。Yau, Wallace W., "Examples of Using 3D-GPC - TREF for Polyolefin Characterization", Macromol. Symp., 2007, 257, 29-45。このインデックスは、全ポリマー検出器面積および面積ドット積に有利なように、g’値の決定および分岐頻度計算において従来使用される、区画毎の3D−GPC計算を回避する。3D−GPCデータから、ピーク面積法を使用して、光散乱(LS)検出器によって試料バルクのMを得ることができる。この方法は、g’の決定において必要とされるように、光散乱検出器シグナルと濃度検出器シグナルとの区画毎の比を回避する。
【0118】
【数2】
【0119】
等式5における面積計算は、全試料面積として、検出器ノイズ、ならびにベースラインおよび積分限度についてのGPCの設定によって生ずる変動にはるかに敏感でないため、より高い精度を提供する。より重要なことに、ピーク面積計算は、検出器容量オフセットによって影響されない。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)は、等式6に示される面積法によって得られる。
【0120】
【数3】
式中、DPは、オンライン粘度計から直接モニターした差圧シグナルを表す。
【0121】
gpcBR分岐インデックスを決定するために、試料ポリマーについての光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定する。試料ポリマーについての粘度検出器溶出面積を使用して、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定する。
【0122】
最初に、直鎖状ポリエチレン標準試料(SRM1475aまたは同等物など)についての分子量および固有粘度を、等式7および8により、溶出容量の関数として、分子量および固有粘度の両方について通常の較正を使用して決定する。
【0123】
【数4】
【0124】
等式9を使用して、gpcBR分岐インデックスを決定し、
【0125】
【数5】
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]ccは、通常の較正からの固有粘度であり、Mは、測定された重量平均分子量であり、Mw,ccは、通常の較正の重量平均分子量である。等式(5)を使用した光散乱(LS)によるMwは、一般に絶対Mwと称され、一方、通常のGPC分子量較正曲線を使用した等式(7)からのMw,ccは、ポリマー鎖Mwと称されることが多い。「cc」の下付き文字を伴う全ての統計値は、それらの各々の溶出容量、上記のような相当する通常の較正、および質量検出器の反応に由来する濃度(C)を使用して決定する。下付き文字を伴わない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計面積に基づいた測定値である。KPEの値は、線状標準試料が0のgpcBR測定値を有するまで繰り返し調節する。例えば、この特定の場合、gpcBRの決定のためのαおよびLog Kについての最終値は、ポリエチレンについて各々0.725および−3.355であり、ポリスチレンについて各々0.722および−3.993である。
【0126】
Kおよびα値が決定されると、分岐した試料を使用して手順を繰り返す。分岐した試料は、最終Mark−Houwink定数を最良の「cc」較正値として使用し、等式5〜9を適用して分析する。
【0127】
gpcBRの解釈は、直接的である。線状ポリマーについて、LSおよびビスコメトリーによって測定される値は通常の較正標準に近いため、等式9から計算したgpcBRは0に近い。分岐ポリマーについて、測定したポリマーMは計算したMw,ccより高く、計算したIVccは測定したポリマーIVより高いため、gpcBRは、特に高レベルのLCBで0より高い。実際は、gpcBR値は、ポリマー分岐の結果として分子の大きさの収縮作用によるIVの分数変化率を表す。0.5または2.0のgpcBR値は、等しい重量の線状ポリマー分子に対して、各々50%および200%のレベルのIVの分子の大きさの収縮作用を意味する。
【0128】
これらの特定の例について、g’インデックスおよび分岐頻度計算と比較して、gpcBRを使用する利点は、gpcBRのより高い精度による。gpcBRインデックス決定において使用するパラメーターの全ては良好な精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での3D−GPC検出器の低い反応によって悪影響を及ぼされない。検出器容量アラインメントにおけるエラーはまた、gpcBRインデックス決定の精度に影響を与えない。他の特定の場合において、Mモーメントを決定するための他の方法は、上記の技術より好ましい場合がある。
【0129】
核磁気共鳴(13C NMR)
NORELL1001−7 10mm NMR管中の0.25gの試料に、0.025MのCr(AcAc)(トリス(アセチルアセトナト)−クロム(III))を含有するテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物(概ね2.7g)を加えることによって試料を調製する。試料を溶解し、加熱ブロックおよびヒートガンを使用して管およびその内容物を150℃に加熱することによってホモジナイズする。各試料を視覚的に点検し、均一性を確実にする。
【0130】
BRUKER DUAL DUL高温CRYOPROBEを備えたBRUKER400MHz分光計を使用してデータを集める。120℃の試料温度で、データファイル毎に320の過渡応答、6秒のパルス繰返し遅延、90度のフリップ角、および反転ゲートデカップリングを使用してデータを得る。全ての測定は、ロックモードにおいて無回転試料で行う。データ収集の前に、試料を7分間熱的に平衡させる。13C NMR化学シフトは、30.0ppmでのEEEトライアド(EEE triad)を内部参照とする。
【0131】
LDPEにおける様々な分岐タイプの同定および定量化
図2は、LDPE(下記の試料C−3)の13C NMRスペクトルを示し、様々な分岐長さからもたらされる特徴的なピークを示す。大部分の重要な識別ピークのみを標識化する。残りのピークについての帰属を、表2に示す。C53は、5炭素分岐部における第3の炭素を意味し、メチルを炭素1として数える。
【0132】
【表2】
【0133】
C5(アミル)分岐部の決定
C5(アミル)分岐部を、32.7ppmでのピークによって決定する。全炭素1000個当たりのC5分岐部の数を、1000の値に対して完全なLDPEスペクトル(約40〜5ppm)の積分を設定し、32.7ppmのピークを積分することによって決定する。32.7ppmのピーク積分は、その場合には炭素1000個当たりのC5分岐部の数の直接の尺度である。実施例は、図3において、1.67のC5分岐部数/1000Cを含有する。
【0134】
C1(メチル)分岐部の決定
C1分岐部は、約20ppm、33.3ppm、37.6ppm、および27.5ppmにおけるピークをもたらす。図4は、プロピレンを連鎖移動剤(CTA)として使用して生成した13C NMRスペクトルを示し、したがって有意なレベルのC1(メチル)分岐部を示す。これは、プロピレンがCTAとしておよびコモノマーとしての両方で作用し、エチレン−プロピレンLLDPEにおいて観察されるようにC1分岐部を導入するからである。
【0135】
C3(プロピル)分岐部の決定
C3分岐部は、37.9ppm、37.0ppm、20.3ppmおよび14.7ppm(および、LDPEスペクトルにおいて不明瞭になったその他のもの)におけるピークをもたらす。図5は、ペンテンコモノマーから作製したHDPEの13C NMRスペクトルを示し、したがってC3分岐部を含有する。この特定の試料はまた、ブテンからの非常に低いレベルのC2分岐部を含有する。
【0136】
C6+分岐部の決定
C6およびより長い分岐部(C6+)を、LDPEスペクトルにおいて代数的に決定する。これは、C4、C5、およびC6+分岐部からのピークにおける重複による。C4およびC5は、独立に決定することができ、それらの合計を、これらの2つ以上の寄与を含有するピークから引く。C6+分岐部を、LDPEにおけるC6+分岐部の直接の尺度によって決定し、ここでは長い分岐部は「鎖末端」と識別されない。6個以上の炭素の全ての鎖または分岐部の末端から第3番目の炭素を表す32.2ppmのピークを、C6+決定のために使用する。
【0137】
ポリアルキレンの抽出
100mLのジャーに、0.0001g最も近くまで秤量した2.0gのLDPE−グラフトポリイソブチレン(PIB)を加える。この固体に、50+/−1gのHPLCグレードのテトラヒドロフランを加え、混合物を4時間振盪する。混合物を、#41無灰濾紙を通して風袋を量った2ozのジャー(tared 2 oz jar)中に濾過する。溶媒を窒素流下で一晩蒸発乾固させる。非溶解性固体をまた窒素流下で一晩乾燥させる。テトラヒドロフラン溶液からの残渣を、乾燥させた非溶解性固体と同じように秤量する。抽出された材料の割合を、下記の式によって決定する。
((残渣塊/(残渣塊+非溶解性固体塊))100。
【0138】
動的機械分光法(DMS)
樹脂を、空気中1500psi圧力下で、350°F(177℃)にて3mmの厚さ×1インチの円形プラークに5分間圧縮成形する。次いで、試料をプレスから取り出し、カウンター上に置き、冷却する。
【0139】
溶融レオロジー、一定温度での周波数掃引を、窒素でパージしながら、25mmの平行プレートを備えたTA Instrumentsの「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を使用して行う。試料をプレート上に置き、190℃で5分間溶融させる。次いで、プレートを2mmに閉じ、試料をトリミングし、次いで試験を開始する。この方法は、さらなる5分の遅延が組み込まれており、それによって温度の平衡が可能となる。実験を0.1〜100rad/sの周波数範囲に亘り190℃で行う。ひずみ振幅は10%で一定である。ストレス応答を振幅および相の点から分析し、そこから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、動的粘度η、およびtan(δ)を計算する。
【0140】
試料(本発明のポリマー)の調製
PIB(BASFから入手可能なOPPANOL B15SFN)を、反応器に加える。100mlの高圧ステンレス鋼バッチ反応器を閉鎖した後、撹拌機を、1000rpm(毎分回転数)でオンにする。システムを真空化し、窒素で加圧することによって、反応器を脱酸素化する。これを3回繰り返す。次いで、反応器を周囲温度の間にエチレンで2000バールまで加圧し、次いで排気する。これを3回繰り返す。反応器の最終のエチレン排気によって、圧力を僅かに約100バールの圧力に減少させ、そこで反応器加熱サイクルを開始する。約225℃の内部温度に達すると、次いで反応器をエチレンで開始圧力まで加圧する(表3Aを参照されたい)。エチレン/PIB混合物を撹拌し、225℃で少なくとも30分間保持する。次いで、エチレンを使用して、n−ヘプタン中の0.2395ミリモル/mlのプロピオンアルデヒド(連鎖移動剤として)、0.00599ミリモル/mlのジ−tert−ブチルペルオキシドおよび0.00239ミリモル/mlのtert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(開始剤として)の混合物(1.32ml)を反応器中に流す。開始剤の添加と合わせた圧力の増加によって、エチレンモノマーのフリーラジカル重合がもたらされる。重合によって、温度の増加がもたらされる。反応器の混合を15分間続け、225℃に冷却した後、n−ヘプタン中の0.00599ミリモル/mlのジ−tert−ブチルペルオキシドおよび0.00239ミリモル/mlのtert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエートの混合物(1.32ml)の第2の注入を、エチレンと共に反応器中に流す。開始剤の添加と合わせた圧力の増加によって、エチレンモノマーのフリーラジカル重合がもたらされる。第2の重合によって、温度の増加がもたらされる。第3の開始剤注入を、第2の開始剤注入と同じ供給条件で行う。形成されたポリマーを、1600バールで5分間反応器からのエチレンでパージする。この手順によって、2つの試料を作製する。プロセス条件を、表3A〜3Bに示す。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
PIBグラフト
PIBを図613C NMRスペクトルにおいて観察する。PIBの重量パーセントを、総スペクトル積分(スペクトル中の全ての炭素を表す)で割ったPIB積分の合計から計算する。PIBおよびLDPEにおいて、全ての炭素は、平均で2個のプロトンを有するため、イソブチレンおよびエチレン式量は、この計算において説明される必要はない。
【0145】
試料PIB−2は、16.0±0.5重量%のPIBを含有する。同じ結果(16.0重量%のPIB)が、2つの異なる機器を使用して、この試料に対して行った両方のNMRの取得によって得られる。試料PIB−1は、4.8±0.3重量%のPIBを含有する。
【0146】
【表6】
【0147】
メルトインデックス、メルトインデックス比I10/I、および密度
表5Aは、同程度のメルトインデックスの2種の市販のLDPEと比較した、2種の本発明のポリマーの測定したメルトインデックス(I)、メルトインデックス比(I10/I)、および密度を示す。
【0148】
【表7】
【0149】
表5Bは、実施例および比較例のメルトインデックス(参照のため)ならびに分子量特性を報告する。図7に分子量分布のグラフを示す。両方の例は、非常に広範な分子量分布を有する。同等のメルトインデックスで、実施例は、LCBおよびgpcBRによって示されるように、より広範な分子量分布(M/M)、相対的に高いz−平均分子量(M)、および高いレベルの長鎖分岐部を有する。図7に示すように、実施例はまた、分子量分布においてショルダーを示し、これはより高い分子量画分を生じさせるPEへのPIBの結合に起因し得る。
【0150】
【表8】
【0151】
表5Cは、実施例および比較例のメルトインデックスおよび密度(参照のため)ならびにDSC特性を報告する。
【0152】
【表9】
【0153】
融点対密度を図9に示し、融解熱対密度を図10に示す。
【0154】
短鎖分岐
全ての値は、全炭素1000個当たりの分岐部の数である。グラフトされた試料についての分岐値は、グラフトポリマー(PIB)の観察された全炭素を含めて、観察された全炭素に基づいて計算し、LDPE炭素のみに基づいている。No C3(プロピル)分岐部は、試料において観察される。
【0155】
【表10】
【0156】
表7は、本発明の実施例および比較例の、動的機械分光法によって測定した周波数および粘度データを示す。
【0157】
【表11】
【0158】
本発明のポリマーは、比較ポリマーより良好な粘度比を示し、これはより良好な加工性の表れである。データを図8においてグラフによって例示する。
【0159】
本発明について、好ましい実施形態を前述の説明を通して特定の詳細によって記載してきたが、この詳細は主に例示するためである。下記の請求項に記載されているように、当業者は、多くの変形および改変を本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーであって、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定すると、炭素原子1000個当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有するポリマー。
[2] ポリアルキレンの1個または複数の炭素原子に結合しているエチレンの一部を含む、[1]に記載のポリマー。
[3] ポリアルキレンの炭素原子に結合している少なくとも1つのエチレンベースのポリマー分岐部を含む、[1]に記載のポリマー。
[4] 13C NMRによって決定すると、測定可能なメチル分岐部を含まない、[1]から[3]のいずれかに記載のポリマー。
[5] 13C NMRによって決定すると、測定可能なプロピル分岐部を含まない、[1]から[4]のいずれかに記載のポリマー。
[6] 少なくとも0.91g/cmの密度を有する、[1]から[5]のいずれかに記載のポリマー。
[7] 70重量パーセント未満のポリアルキレンが、溶媒抽出によって抽出可能である、[1]から[6]のいずれかに記載のポリマー。
[8] 10未満のIを有する、[1]から[7]のいずれかに記載のポリマー。
[9] 少なくとも15の粘度比V0.1/V100を有する、[1]から[8]のいずれかに記載のポリマー。
[10] [1]から[9]のいずれかに記載のポリマーを含む組成物。
[11] [10]に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
[12] フィルムの形態の、[11]に記載の物品。
[13] エチレンおよびポリアルキレン由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、
A.第1の反応器または複数パーツ反応器の第1の部分において、フリーラジカル開始剤の存在下で、少なくとも1種のポリアルキレンをエチレンと接触させること、および
B.フリーラジカル開始剤の存在下で、ポリアルキレンをさらなるエチレンと反応させ、少なくとも1つの他の反応器または複数パーツ反応器の後の部分において、ポリアルキレンに結合しているエチレンベースのポリマー分岐部を形成させること
を含む方法。
[14] エチレンベースのポリマー分岐部が、エチレンモノマーをポリアルキレンと結合させてエチレン−ポリアルキレン部分を形成し、得られた部分を少なくともさらなるエチレンモノマーと重合させてエチレンベースのポリマー分岐部を形成することによって形成される、[13]に記載の方法。
[15] エチレンベースのポリマー分岐部がポリアルキレンとは独立に形成され、次いでポリアルキレンとグラフトされる、[13]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10