特許第5745530号(P5745530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5745530-溝係合部を有する外科用鉗子 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745530
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】溝係合部を有する外科用鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   A61B17/28 310
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-540298(P2012-540298)
(86)(22)【出願日】2010年11月9日
(65)【公表番号】特表2013-512011(P2013-512011A)
(43)【公表日】2013年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2010006803
(87)【国際公開番号】WO2011063892
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年8月28日
(31)【優先権主張番号】102009055747.4
(32)【優先日】2009年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】アウエ,トーマス
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−042262(JP,A)
【文献】 特開2008−246145(JP,A)
【文献】 特表2001−501125(JP,A)
【文献】 特開平10−192290(JP,A)
【文献】 特開平09−271476(JP,A)
【文献】 特表平03−500500(JP,A)
【文献】 特表2002−528167(JP,A)
【文献】 特開2004−105390(JP,A)
【文献】 特開2009−112538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28
A61B 17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い軸部(2)を有する外科用鉗子(1)であって、前記軸部は、その遠位端に、互いに相対運動可能な2つの口部材(5、6)を含む鉗子口(3)を備え、かつ、その近位端に操作把持部(4)を備えており、前記操作把持部により、中空の前記軸部(2)に縦移動可能に挿通された操作ロッド(17)と、前記操作ロッドまたは前記鉗子口(3)に前記操作ロッド(17)の移動方向(V)に対して斜めに配設された溝(19)内での前記鉗子口(3)または前記操作ロッド(17)の少なくとも1つのカム(18)の係合とを介して、前記口部材(5、6)の相対運動を制御可能であるものにおいて、
前記溝(19)は、少なくとも部分的に、前記溝(19)内で摩擦によるセルフロックが起きる最大傾斜角度よりも小さい傾斜角度(S−V)を有して形成され、かつ、操作力を加えると撓むばね(14)が前記鉗子口(3)に設けられていることを特徴とする鉗子。
【請求項2】
前記溝(19)は、第1端領域(21)ではセルフロック式に形成され、第2端領域(22)では大きな傾斜角度で非セルフロック式に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉗子。
【請求項3】
前記鉗子口(3)が前記操作把持部(4)に対して回転可能であることを特徴とする請求項1または2記載の鉗子。
【請求項4】
前記鉗子口(3)が前記軸部(2)の遠位端で回転可能に支承されていることを特徴とする請求項記載の鉗子。
【請求項5】
前記操作ロッド(17)が前記操作把持部(4)側から回転制御可能でありかつ前記鉗子口(3)と相対回転不能に係合(24)していることを特徴とする請求項または記載の鉗子。
【請求項6】
前記軸部(2)が湾曲形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に指摘した種類の鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が示す前文に係る鉗子はカムと係合する溝を有し、この溝は操作ロッドの移動方向に対して大きな傾斜角度で配置されている。その際、溝係合部は両方向で運動を伝達することができる。移動方向に対する溝の大きな角度のゆえにセルフロックは起きない。大きな角度のゆえに可動口部材の大きな角度変化は遅滞なく引き起こすことができる。
【0003】
しかしながらこの公知構造では欠点として、鉗子口から加えるべき閉鎖力は、例えば持針器を使用する場合、針の保持時に操作ロッドを介して操作力を加えることによって常時維持されていなければならない。このために先行技術では操作把持部内に固定機構を設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第195 21 257号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前文に係る鉗子を一層容易に操作できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部分の特徴でもって解決される。
【0007】
本発明によれば溝の傾斜角度は、少なくとも部分領域では、セルフロックが起きる最大角度よりも小さい。つまり溝のこの部分領域内にカムがあるときセルフロックは存在する。これは、操作ロッドの操作時に溝内で運動が可能であるが、しかし逆の路程で口部材の運動時には可能でないことを意味する。つまり操作ロッドを介して可動口部材に作用を加えることができるが、しかし逆方向ではセルフロックが存在するので逆方向では可能でない。セルフロックにより、操作ロッドを操作して鉗子口内で対象物をしっかり締付けたのち締付位置は操作ロッドが解放される場合でも維持されることになる。つまりセルフロックは締付状態で鉗子口のロックをもたらす。これは、例えば持針器の場合、針が掴まれて十分な閉鎖力で締付可能であることを意味する。その場合操作把持部は、針を確実に保持する締付位置を維持しながら解放することができる。セルフロックが生じる傾斜角度は、使用する材料の摩擦値に応じて数度である。
【0008】
溝は全長にわたってセルフロック式に形成しておくことができる。しかし有利には、請求項2により、第1端領域のみがセルフロック式に形成され、他方の端領域は非セルフロック式に大きな傾斜角度で形成されている。こうして第2端領域では小さな伝達比でもって鉗子口は大きな角度範囲にわたって迅速に動かすことができる。鉗子口を閉じるときカムはセルフロック式第1端領域内に達し、そこでセルフロックが現れ、鉗子は締付状態で解放することができる。対象物の締付け時、例えば針の保持時にカムが実際にもセルフロック式第1端領域内に達するように鉗子の動力学機構は選択されている。
【0009】
外科用鉗子において、把持位置で鉗子を鎖錠すべきであるとき、操作力を緩衝するためのばねは有利である。掴まれた対象物、例えば組織が持続的に撓み、例えば電気凝固時に収縮するとしても、このばねは閉鎖力を維持できる。さらに、鉗子が例えば持針器として使用されるときこのようなばねは剛性体を掴んだ時に力を維持することができる。公知の外科用鉗子では操作力が操作ロッドによって持続的に伝達される。それゆえに、ばねは把持部内に配置しておくことができる。本発明に係る鉗子において有利には請求項3によりこのようなばねが鉗子口内に配置されており、鉗子口がそれ自体で、カムの係合によって溝の第1端領域で鎖錠されているとき、このばねはそこで操作力を維持することができる。このため単純な例において一方の口部材は弾性撓み可能に形成しておくことができる。
【0010】
有利には請求項4により鉗子口が操作把持部に対して回転可能に支承されており、これにより鉗子の利用可能性が改善される。
【0011】
回転可能な鉗子口を有する公知の外科用鉗子では欠点として、操作把持部から遠位側に配置される鉗子口へと操作力が伝達され、それとともに、軸部によって伝達される相手力が回転軸受内を通り、この力によって回転軸受がロックされる。それゆえに先行技術によれば、操作力を同時に伝達しながら鉗子口が回転することは鉗子全体の回転によってのみ達成することができる。本発明に係る鉗子では口部材の間で閉鎖力を加えるときにも軸部は軸方向諸力を受けず、口の回転は難なく可能である。その際有利には請求項5により軸部の遠位端に回転支承部が設けられている。これにより、鉗子口の回転時に軸部が一緒に回転することは避けられる。これにより、例えばトロカールシール内での軸部の回転摩擦は避けられる。さらに、付設箇所で大抵は全体として回転可能でない湾曲軸部も使用することができる。
【0012】
請求項6により操作ロッドを介して操作把持部の方から特別有利な回転制御が行われ、これにより構造が簡素となる。
【0013】
本発明に係る鉗子において請求項7により有利には鉗子の軸部が湾曲している。このような湾曲軸部は最小侵襲外科手術において鉗子の取扱いを容易とする。
【0014】
図面に本発明が例示的に略示してある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る鉗子の側面図である。
図2図1の鉗子の遠位端領域を一部断面で示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に側面図で示す鉗子1は特に腹腔鏡で使用するように形成されており、細長い湾曲した軸部2を有する。軸部の遠位端に鉗子口3が配置され、軸部の近位端に操作把持部4が配置されている。
【0017】
鉗子口3が2つの口部材を有し、一方の口部材5は固定式に、他方の口部材6は揺動可能に、軸部2に固着されている。
【0018】
操作把持部4が本体7を有し、この本体で2つのフィンガーグリップ8、9がそれぞれ、図示したように把持リングを有して軸10の周りで支承されている。さらに本体7で回転リング11が支承されている。
【0019】
図1の鉗子1の遠位端領域が図2に著しく拡大して示してある。
【0020】
軸部2は断面で管として形成されており、断面図が示すように回転軸受12によって回転可能に固定口部材5の近位端領域で支承されている。固定口部材5は回転軸受12からその遠位端まで延び、そこで把持顎13として形成されている。この把持顎は弱化弾性箇所14を介して口部材5の残部と結合されている。口部材5にさらに軸ピン15が固着されており、揺動可能な口部材6がこの軸ピンで揺動可能に支承されており、この揺動可能な口部材はその遠位端領域がやはり把持顎16として形成されている。
【0021】
軸部2の内部で操作ロッド17が縦移動可能に支承されており、フィンガーグリップ8、9の操作時に操作ロッドは図示しないその近位端が操作把持部4の本体7内で縦変位可能に接続されている。
【0022】
操作ロッド17は多角形領域24でもって相対回転不能に、但し縦移動可能に固定口部材5の近位端領域で支承されている。さらに操作把持部4で操作ロッド17は図示しない仕方で回転リング11と縦移動可能に回転連結されている。こうして回転リング11の回転時に固定口部材5は回転軸受12内で回転駆動される。
【0023】
操作ロッド17の遠位端でカム18が横に突出させて固着されており、このカムは揺動可能な口部材6に形成される溝19内を動く。溝19は第1端領域21と第2端領域22とを有する。
【0024】
第1端領域21は破線傾斜線Sの方向に延びており、この傾斜線は図2が示すように操作ロッド17の移動方向Vに対してごく小さな角度、傾斜角度で傾斜している。それに対して溝19の第2端領域22は図2が示すようにごく大きな傾斜角度を有する。
【0025】
カム18が第2端領域22に移動すると、操作ロッド17を僅かに変位させても揺動可能な口部材6のごく大きな揺動が生じる。それに対して溝19の第1端領域21内でカム18を変位させてもごく僅かな揺動運動が生じるだけである。
【0026】
図2に示す鉗子の動力学機構により、操作ロッド17を矢印P1の方向に引き戻すとき把持顎16は矢印P2の方向で固定把持顎13の方に揺動することになる。その際、まず第2端領域22の内部でカム18の運動時に僅かな力で迅速な揺動が起きる。操作ロッド17をさらに引き戻すとカム18は第1端領域21内に達し、いまやごく僅かな揺動運動を、但し高い力伝達比でもたらす。
【0027】
図2に示すように本発明に係る鉗子1は、把持顎13、16の間で針23を強い力で保持できるようにするために特に持針器として適している。
【0028】
把持顎13、16のこの構成において、針23の保持時に図2に示す如くにカム18が第1端領域21内に達することができるように鉗子1は設計されており、そのことが図2に示してある。針23は次に把持顎13、16の間で強い力で保持することができ、操作ロッド17ではごく僅かな力が必要であるだけである。
【0029】
第1端領域21内で溝19の傾斜角度は0とすることもできる。その場合、強い力で把持顎13、16を保持時に操作ロッド17は力をまったく受けないようにすることができる。操作ロッド17が力を受けておらずもしくはごく僅かな閉鎖力で負荷されているとき、回転軸受12はその自由回転性を妨げるような縦負荷を受けていない。それゆえに、鉗子口3は強い把持力を受けていてもごく容易に回すことができる。そのことは、固定保持した針23を特定縫合位置に揺動させるべきとききわめて有益である。
【0030】
破線S、Vの間の傾斜角度、つまり溝19の第1端領域21の方向と操作ロッド17の移動方向との間の傾斜角度は、図2に示すようにごく小さい。カム18が操作ロッド17の引き戻しによって第1端領域21内に引かれてそこで締付けられ、操作ロッド17の完全無負荷時でも鉗子口3の自動開放を妨げるように、傾斜角度がセルフロック式に働くように傾斜角度は選択されている。
【0031】
図2に示す本発明に係る鉗子1では、操作把持部4の方から軸部2によって強い閉鎖力を伝達する必要もなしに強い閉鎖力を鉗子口3内で維持することが可能である。それゆえに鉗子口3はその場で、つまりそれ自身でロックされている。
【0032】
操作力をばねで緩衝することは多くの目的にとって、例えば針23等のきわめて剛性の対象物において閉鎖力を確保するために、または保持された対象物が消えるとき閉鎖力を維持するために、有益である。ふつうこのために操作把持部4内にばねが設けられている。
【0033】
鉗子口3がセルフロック作用によってそれ自身でロックされる図2の本発明に係る構造では、このようなばねを口部材内に設けておかねばならない。図示実施例ではこのために両方の口部材の一方、つまり固定口部材5がばね14を備えており、このばねは実施例において口部材5とその把持顎13との間に弱化箇所として形成されている。ばねは単純に一方の口部材の弾性可撓部として形成しておくこともできる。
【0034】
図示実施例において口部材5は固定式に形成され、口部材6は軸ピン15の周りで揺動可能に形成されている。しかし、2つの揺動可能な口部材を有する構造も使用することができる。
図1
図2