(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745609
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】液体材料吐出方法および装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20150618BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20150618BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20150618BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-266425(P2013-266425)
(22)【出願日】2013年12月25日
(62)【分割の表示】特願2009-516174(P2009-516174)の分割
【原出願日】2008年5月19日
(65)【公開番号】特開2014-61525(P2014-61525A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2007-132440(P2007-132440)
(32)【優先日】2007年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−537928(JP,A)
【文献】
特開2005−279628(JP,A)
【文献】
特開2000−246887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 1/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと吐出口を相対移動させることができ、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する吐出装置による液体材料の吐出方法において、
吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置を設け、
吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aを第1の距離取得装置により取得し、
吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの1倍以下から距離Aの半分より大きい距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料の吐出方法。
【請求項2】
前記第1の距離取得装置が、ビデオカメラまたはデジタルカメラであることを特徴とする請求項1に記載の液体材料の吐出方法。
【請求項3】
前記吐出装置が、弁体着座タイプまたは弁体非着座タイプのジェット式の吐出装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体材料の吐出方法。
【請求項4】
前記液体材料が、クリーム半田、銀ペーストおよびエポキシ剤の中から選択された一の液体材料であることを特徴とする請求項3に記載の液体材料の吐出方法。
【請求項5】
ワークと吐出口を水平方向に相対移動しながら液体材料を吐出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体材料の吐出方法。
【請求項6】
ワークと吐出口との距離を取得する第2の距離取得装置を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体材料の吐出方法。
【請求項7】
吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、
吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、
制御部が、予め取得した吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aに対して、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの1倍以下から距離Aの半分より大きい距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料吐出装置。
【請求項8】
前記第1の距離取得装置が、ビデオカメラまたはデジタルカメラであることを特徴とする請求項7に記載の液体材料吐出装置。
【請求項9】
ワークと吐出口を水平方向に相対移動する水平方向相対移動機構を設け、
制御部が、ワークと吐出口との距離を一定に保持することを特徴とする請求項7または8に記載の液体材料吐出装置。
【請求項10】
前記吐出部は、弁体着座タイプまたは弁体非着座タイプのジェット式の吐出機構を有することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の液体材料吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料をワークと接触させた後にノズルから分断して吐出する液体材料吐出方法および装置に関し、特に、液体材料に慣性力を与えて点状塗布する液体材料の吐出方法および装置に関する。
本明細書中、「液体材料」とは、流動性のあるものは全て該当し、例えば、フィラーと呼ばれる粒子状の微小物質を有する液体材料も当然に含まれる。
また、「液滴の状態」とは、吐出口から吐出した液体材料が、吐出口と塗布対象物とのいずれにも接触せずに、空間中を移動する状態である。
【背景技術】
【0002】
液体材料をノズルから離間した後にワークに着弾させる従来の液滴吐出装置としては、例えば、ノズルにつながる出口付近に弁座を有する流路内に、プランジャーロッドの側面が非接触に配設され、プランジャーロッドの先端が弁座に向けて移動し弁座に当接することにより、ノズルから液体材料を液滴の状態で吐出させるものがある(特許文献1)。
また、急速前進するプランジャーを弁座に当接させることなく急激に停止させて液体材料を飛滴させる技術としては、出願人が提言した、先端面が液体材料に密接した液体材料吐出用プランジャーを高速前進させ、次いでプランジャー駆動手段を急激停止させて、液体材料に慣性力を印加して液体材料を吐出させる液体材料の吐出方法および装置がある(特許文献2,3)。
【0003】
インクジェットプリンタもインクを液滴の状態で吐出する吐出装置である。インク液滴の吐出量は、年々微量化が進んでおり、近年では吐出量が30ピコリットル以下のインクジェットプリンタも提供されている。このような、微量のインク液滴を吐出するインクジェットプリンタにおいては、ノズルから用紙までの距離、いわゆる紙間と呼ばれる距離が1.0mm〜1.5mmという狭さになっている。また、インクジェットヘッドは、500mm〜2000mm/secの高速で移動される(特許文献4)。
【特許文献1】特表2001−500962号公報
【特許文献2】特開2003−190871号公報
【特許文献3】特開2005−296700号公報
【特許文献4】特開2006−192590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体材料に慣性力を印加して飛滴吐出する方法においては、液滴より小さなサテライト(小滴)が形成され、液体材料が所望しない位置に着弾するという課題がある。サテライトは短絡等の問題を引き起こすため、サテライトの形成を防ぐことは重要な課題である。
【0005】
液体材料を吐出口から飛翔吐出させる場合には、飛翔角度なるものがあるが、その飛翔角度が鉛直で無い場合には、吐出口とワークとの距離が大きくなる程、着弾位置のブレは大きくなる。
また、吐出口とワークとの距離が大きくなると、着弾時のいわゆる跳ね返りが生じるという課題がある。跳ね返りが生じると、所望位置に液滴が配置されないこととなり、結果として位置ズレの問題が生じる。
【0006】
一方、
図4に示すように、液体材料をワークと接触させた状態(濡れた状態)で、液体材料を吐出する方法がある。この方法においては、液体材料がクリーム半田等の粘性材料である場合には、ノズル等の吐出口から流出した液体材料が基板等ワークに接触しても、液体材料がなお吐出口につながった状態となる。そこで、吐出口を上昇させて糸切りする必要があったが、吐出口を上下させるために吐出作業の生産性が低下してしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することができる液体材料吐出方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
液体材料の吐出方法に係る本発明は、ワークと吐出口を相対移動させることができ、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する吐出装置による液体材料の吐出方法において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置を設け、吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aを第1の距離取得装置により取得し、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの
1倍以下から距離Aの半分より大きい距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする。
上記液体材料の吐出方法において、前記第1の距離取得装置が、ビデオカメラまたはデジタルカメラであることを特徴としてもよい。
上記液体材料の吐出方法において、前記吐出装置が、弁体着座タイプまたは弁体非着座タイプのジェット式の吐出装置であることを特徴としてもよく、さらに、前記液体材料が、クリーム半田、銀ペーストおよびエポキシ剤の中から選択された一の液体材料であることを特徴としてもよい。
上記液体材料の吐出方法において、ワークと吐出口を水平方向に相対移動しながら液体材料を吐出することを特徴としてもよい。
上記液体材料の吐出方法において、ワークと吐出口との距離を取得する第2の距離取得装置を設けたことを特徴としてもよい。
【0009】
液体材料吐出装置に係る本発明は、吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、制御部が、予め取得した吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aに対して、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの
1倍以下から距離Aの半分より大きい距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする。
上記液体材料吐出装置において、前記第1の距離取得装置が、ビデオカメラまたはデジタルカメラであることを特徴としてもよい。
上記液体材料吐出装置において、ワークと吐出口を水平方向に相対移動する水平方向相対移動機構を設け、制御部が、ワークと吐出口との距離を一定に保持することを特徴としてもよい。
上記液体材料吐出装置において、前記吐出部は、弁体着座タイプまたは弁体非着座タイプのジェット式の吐出機構を有することを特徴としてもよい。
【0010】
別の観点からの本発明は、次の技術手段により構成される。
[1]ワークと吐出口を相対移動させることができ、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する吐出装置による液体材料の吐出方法において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置を設け、吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aを第1の距離取得装置により取得し、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aと同じ距離に保持して液体材料を吐出し、液体材料が吐出口とつながった状態でワークに着弾し、その後分断されるようにすることを特徴とする液体材料の吐出方法。
[2]ワークと吐出口を相対移動させることができ、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する吐出装置による液体材料の吐出方法において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置を設け、吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aを第1の距離取得装置により取得し、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの60〜100%の距離範囲で一定に保持して液体材料を吐出し、液体材料が吐出口とつながった状態でワークに着弾し、その後分断されるようにすることを特徴とする液体材料の吐出方法。
[3]ワークと吐出口を相対移動させることができ、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する吐出装置による液体材料の吐出方法において、
吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置を設け、
吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aを第1の距離取得装置により取得する第1工程、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの60〜100%とする第2工程、液体材料を吐出し、液体材料が吐出口とつながった状態でワークに着弾し、その後分断されるようにする第3工程、を含むことを特徴とする液体材料の吐出方法。
[4]ワークと吐出口を水平方向に相対移動しながら液体材料を吐出することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかの液体材料の吐出方法。
[5]前記距離Bを測定する第2の距離測定装置を設け、前記吐出口を上下動して前記距離Bを一定に保持することを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかの液体材料の吐出方法。
[6]液体材料の吐出量が、100mg以下であることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかの液体材料の吐出方法。
[7]前記吐出装置は、インクジェット式の吐出装置であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかの液体材料の吐出方法。
[8]前記吐出装置は、ジェット式の吐出装置であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかの液体材料の吐出方法。
[9]吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を測定する吐出距離測定装置と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、制御部が、予め取得した吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aに対して、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aと同じ距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料吐出装置。
[10]吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、制御部が、予め取得した吐出口から流出した液体材料が吐出口から離間する際の、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離Aに対して、吐出口の下端とワーク表面との距離Bを、前記距離Aの60〜100%の距離範囲で一定に保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料吐出装置。
[11]吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、制御部が、吐出口から離間する瞬間の液滴の最下端部とワーク表面との距離をゼロに保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料吐出装置。
[12]吐出口を有する吐出部と、吐出口と対向する位置にワークを保持するワーク保持機構と、吐出口の下端とワーク表面との距離を調整可能とする吐出距離調整機構と、制御部とを備え、液体材料を液滴の状態で吐出口から吐出する液体材料吐出装置において、吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離を取得する第1の距離取得装置、および、吐出口の下端とワーク表面との距離を取得する第2の距離取得装置を設け、ワークと吐出口との距離を、吐出口から流出した液体材料がワークに着弾してから分断される距離であって吐出口を移動させることなく液体材料が吐出口から離間される距離に保持して液体材料を吐出することを特徴とする液体材料吐出装置。
[13]ワークと吐出口を水平方向に相対移動する水平方向相対移動機構を設け、制御部が、ワークと吐出口との距離を一定に保持することを特徴とする[10]ないし[12]のいずれかの液体材料吐出装置。
[14]前記吐出部は、インクジェット式の吐出機構を有することを特徴とする[10]ないし[13]のいずれかの液体材料吐出装置。
[15]前記吐出部は、ジェット式の吐出機構を有することを特徴とする[10]ないし[13]のいずれかの液体材料吐出装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サテライトの発生の問題や着弾位置の精度の問題を解消することができる。
また、吐出口を上昇させて糸切りする必要がないことから、吐出口を上下させる作動時間が不要となるので、吐出作業の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る吐出装置のバルブ開口時(第一の位置)の概略図である。
【
図2】実施例1に係る吐出装置のバルブ閉止時(第二の位置)の概略図である。
【
図3】吐出口、ワークおよび液滴の位置関係を説明するための側面図である。
【
図4】従来の吐出口を上下動させる吐出方法を説明するための側面図である。
【
図5】実施例2に係る吐出装置の外観図および要部断面図である。
【
図6】実施例4に係る吐出装置を搭載した塗布装置の外観斜視図である。
【
図7】実施例3に係る吐出装置を搭載した塗布装置の外観斜視図である。
【
図8】本発明を説明するための吐出口およびそれから流出した液体材料の経時的変化を示す側面図である。
【
図9】実施例2に係る吐出装置を搭載した塗布装置の外観斜視図である。
【
図10】実施例3に係る吐出装置の外観側面図である。
【
図11】実施例3に係る吐出装置の弁体の第1位置を示す要部拡大断面図である。
【
図12】実施例3に係る吐出装置の弁体の第2位置を示す要部拡大断面図である。
【
図13】実施例4に係る吐出ヘッドの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0013】
図面に用いた主な凡例を以下に示す。
1 バルブ本体/2 隔壁/3 貫通孔/4 駆動部室/5 液室/6 液室出口/7 ピストン/8 プランジャーロッド/9 スプリング/10 ストローク調整ネジ/11 ノズル/12,13 接続口/14 空圧源/15 バルブ作動圧制御装置/16 流量制御弁/17 切替弁/18 液体加圧装置/19 液体貯留容器/20,21 パイプ/30 ワーク/41 バネ室/42 空気室/51 バネ/52 ピストン/53 ピストン室 /54 ガイド/55 ブランジャ/56 液室/57 吐出口/61 制御部/62 エア供給装置/63 シリンジ/64 シリンジ取付部材/71,371 X方向移動機構/72 センサー装置/73,373 Y方向移動機構/74,374 ワーク/75,375 テーブル/91 テーブル/92 ビーム/93 Y軸スライダー/94 塗布ヘッド/95 X軸スライドベース/96 X軸スライダー/200 液体材料塗布装置/300,500 吐出装置/301 卓上型ロボット/303 Z方向移動機構/400 ガントリー型塗布装置/501 べース/502 支柱板/503 板(天板)/504 中間板/511 貯留部/512 計量部/513 プランジャー/514 プランジャー駆動用モータ/516 円筒部/526 弁体/28 バルブ駆動用モータ/529 バルブ駆動用アクチュエータ/531 ノズル/532 吐出口/550 本体/553 管/554 液送管/561 蓋/581 第1流路/582 第2流路/583 第3流路/584 第4流路/585 第5流路/591 ジョイント/600 吐出ヘッド/601 インクジェットヘッド/602 ヘッド保持部材/603 切替バルブ/604 接触センサ/605 ベース/606 流路ブロック/611 第一供給チューブ/612 第二供給チューブ/614 バルブ駆動用電力線/615 ヘッド供給用チューブ/616 信号線/621,622 継手/623,624 固定部材(ネジ)/641 可動子
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、プランジャーを前進移動させ、次いで急激に停止して液体材料に慣性力を印加して吐出するプランジャージェット式の吐出装置を例に、本発明の最良の形態を説明する。
例示されるプランジャージェット式の吐出装置は、吐出口を有するバルブ本体と、進退動作により液体材料を吐出するプランジャーロッドと、バルブ本体に液体材料を供給する液体貯留容器と、液体貯留容器内の液体を所望圧力に加圧する液体加圧装置と、バルブ作動用エアーを所望圧力に制御するバルブ作動圧制御装置と、バルブ作動圧制御装置とバルブ本体とを連通する第一の位置と、バルブ本体と大気とを連通する第二の位置とを切替可能とする電磁切替弁と、バルブ作動圧制御装置とバルブ本体とを連通する流量制御弁とで構成される。
【0015】
バルブ本体の動作は、バルブ閉止時は駆動源としてスプリングの弾性力、空気圧などを利用してプランジャーロッドを弁座に着座させ、バルブ開口時は前記スプリングの弾性力あるいは空気圧により大きな圧力でプランジャーロッドを弁座から離間させる原理に基づいており、プランジャーロッドの移動方向及び移動速度はスプリングの弾性力あるいは空気圧とエアー(すなわち、スプリング/エアー)による圧力との差によって決まる。従って、開口するバルブを閉止する場合、前記エアーによる圧力を低下させることで、前記エアーによる圧力を前記スプリングの弾性力より小さくし、プランジャーロッドを弁座に着座させる。
【0016】
プランジャーロッドの先端面には、最大径が前記吐出口の内径に等しい突起(シール部)が設けられており、プランジャーロッドの弁座への着座と移動の停止は、バルブ本体のプランジャーロッド当接面とプランジャーロッドの先端面とを面接触させることにより、適確に行われる。
【0017】
閉止位置にいるプランジャーロッドを退行動作させて開口位置に移動する場合は、第二位置から第一位置へ切替弁を作動させる。また、開口位置にいるプランジャーロッドを進出動作させて閉止位置に移動する場合は、第一位置から第二位置へ切替弁を作動させる。
エアー圧力の急激な低下により、プランジャーロッドに大きな加速度を与え、さらにプランジャーロッドが弁座に着座すると同時にプランジャーロッドの移動が停止することで、このプランジャーロッドの動作により液体に慣性力が与えられて前記吐出口より液体が飛滴される。
【0018】
上記構成を備える従来の吐出装置においては、
図3(a)に示すごとく、ワーク接触前の吐出口(ノズル)とつながった状態の液体材料の高さh
0と比べ、吐出口とワークとの距離h
1が数倍以上で吐出動作させることが通常であった。しかしながら、このような吐出口から流出した液体材料を、液滴の状態で着弾させてワーク表面に液滴を形成させる手法においては、着弾位置の精度に問題があった。すなわち、吐出口を高速移動させながら吐出口から流出した液体材料を、液滴の状態でワーク表面に着弾させる吐出装置においては、吐出口から離間した液滴に慣性力が働き、吐出時の吐出口の直下に液滴が着弾しないという問題がある。例えば、吐出口を平行移動しながら毎秒数十発から数百発以上(例えば、200発以上)の液滴を発射する吐出装置があるが、このような吐出口を高速移動させる吐出装置においては、かかる問題は顕著となる。
また、液滴が吐出口から離間する際に、サテライトが生じるという問題もある。
そこで、発明者は、鋭意工夫を重ね、吐出口とワークの位置を最適な距離とすることにより、かかる課題を解決した。
【0019】
図8は、平行移動する吐出口から流出した液体がどのような位置変化をするかを示したものである。吐出口から流出した液体は、先端部より細い糸状の部分により吐出口とつながっている状態においては、水平位置の変化は微小である。しかし、糸状の部分が切れると、急激に落下の速度が増すため、糸状の部分が切れた時点からワークに着弾するまでの時間を無くすことにより、跳ね返りから生ずるサテライトを解消することができる。換言すれば、離間する瞬間の液滴の最下端部とワーク表面との距離をゼロにすることで、いわゆるワークへのソフトランディングを可能とする。
なお、
図8の左から4番目が、吐出口から離間する瞬間の液滴を示している。
【0020】
図3(b)は、吐出口とワークとの距離h
2を、液体材料が吐出口とつながった状態でワークに着弾し、その後分断される距離とした状態を示すものである。すなわち、吐出口とワークとの距離h
2は、液体材料の高さh
0と比べ狭い距離となっており、液体材料がソフトランディングされることとなる。そのため、吐出口から流出した液体材料は、ワーク表面に接触した後、吐出口から離間してワーク上に塗布されることとなる。吐出口とワークとの距離を液体材料の高さh
0と比べ狭い距離とした場合には、液体材料に働く慣性力は最小限となり、液体材料の着弾位置を吐出口のほぼ直下とすることが可能となる。また、ワークに液体材料が接触した後に分断されるため、サテライトの発生を抑制することが可能である。
ここで、h
2をどの程度とするかは、液体材料の粘度や吐出口の直径等の要素に応じて決定する設計事項であるが、液体材料がワークに着弾した後、分断される(液切れが良好に行われる)距離とする必要がある。すなわち、吐出口を上昇して糸切りを行わなくとも、液滴が形成される距離とすることが重要である。そのためには、h
2を液体材料が吐出口から分断される直前の高さh
0と同じかやや短い距離(例えば、h
2を液体材料の高さh
0の60〜100%、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%、更に好ましくは90%〜100%)とするのが好ましい。実験上の経験則から、吐出口とワークとの距離h
2が液体材料の高さh
0の半分以下である場合には、吐出口から良好な液切れが得られないことを開示することができる。
【0021】
吐出口から流出した液体材料の分離直前の高さ(吐出口の下端から吐出口から流出した液体材料の下端までの距離)h
0は、例えば、高速ビデオカメラなどの撮像装置によって測定可能である。すなわち、鉛直下向きに液体材料が射出されるよう配置された吐出口に対し、水平方向に高速度ビデオカメラを設置し、液体材料が吐出口より吐出される際の液体材料の態様を高速ビデオカメラにより記録する。そして、記録された映像を解析することにより液体材料の分離直前の高さh
0を測定することができる。
h
0の測定方法は上記に限定されず、例えば、吐出口から液体材料が離間する瞬間の画像をデジタルカメラで撮像してh
0を測定してもよい。
【0022】
インクジェット等の比較的粘度の低い液体材料を用いる吐出装置においては、吐出口から流出した液体材料はしずく状となり、落下時は表面張力により略球形状となることが多いが、液体材料の粘度、吐出口からの液体材料の射出速度等の条件によっては必ずしもこのような形状の変化を伴う訳ではない。しかし、本発明は、インク等の粘度の低い液体材料のみを対象とするものではなく、クリーム半田、銀ペースト、エポキシ剤等の比較的粘度の高い液体材料をも対象とすることを確認的に記載する。
本発明が適用できる液体材料としては、銀ペースト等の導電性材料、エポキシ・アクリル等の樹脂材料・接着剤、半田ペースト、液晶材料、グリス等潤滑剤、インク、着色材、塗料、コーティング材、電極材、水溶液、オイル、有機溶剤などが例示される。
【0023】
本発明は、微量の液体材料を高精度に吐出する作業に適しており、例えば、半導体などの電機部品、或いは機械部品の製造における対象物への塗布作業に好適である。
より詳しくは、電機部品の製造における銀ペーストなどの導通剤の微小塗布、モータなどの機械部品の摺動部へのグリス塗布、部材の接着のための微小接着領域へのエポキシ樹脂等の接着剤の塗布、また、半導体製造におけるチップと基板との間に液体材料を充填するアンダーフィルやチップの上面を封止剤で覆う封止塗布などに好適である。
【0024】
本発明が適用される液体材料の吐出量の範囲は限定されるものではないが、本発明は特に微量の液体材料を吐出する場合に特に優れており、例えば、吐出量が100mg以下の場合に好適であり、1mg以下の場合により好適であり、とりわけ数ng〜100μgの場合に特に効果的である。
【0025】
ワーク表面に凹凸がある場合において、吐出口を平行移動した際にワーク表面と吐出口との距離が上記
図3(b)の範囲を保てないことが分かっているときは、ワーク表面と吐出口との距離が好ましい範囲に保たれるように吐出口を上下動する。具体的には、吐出口近傍にセンサー等の公知の距離測定装置を設け、吐出口とワーク表面との距離を測定しながら吐出を行うことを開示することができる。
公知の距離測定装置としては、ワーク表面に接触してワーク表面までの距離を計測する接触式計測装置、レーザー光をワークに照射してワーク表面までの距離を計測するレーザー変位センサー等の非接触式計測装置が例示される。
さらに、吐出口とワーク表面との距離(クリアランス)は、上記範囲内において常に一定であることが好ましく、吐出口とワーク表面との距離を常に一定に保つために、前記距離測定装置を利用できることはいうまでもない。このクリアランスは、吐出装置のタイプや吐出量などに応じて異なる値を設定することとなるが、例えば、インクジェット式吐出装置の場合、クリアランスが1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましく、例えば、ジェット式吐出装置の場合、クリアランスが数mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明は、吐出口とワークを相対的に水平動させる場合において、最も顕著な効果を奏するが、吐出口とワークが互いに停止している状態における吐出作業においても有利な効果を奏することを補足説明する。すなわち、吐出口から飛翔吐出させる場合には、飛翔角度(静止状態における鉛直下向きの吐出口から射出される液滴の鉛直方向に対する角度)なるものがあるが、距離が大きくなる程、着弾位置のブレ(所望着弾値と実着弾位置の位置ずれ)は大きくなるが、吐出口とワークとの距離が狭い場合には、着弾位置のブレを最小限にすることができるからである。
また、ワークに接触してから滴を分断する場合には、着弾時のいわゆる跳ね返りが生じない。しかも、
図4に示すような従来の接触式吐出作業における効果であるサテライトが発生しないという効果をも享受することができる。
【0027】
本発明は、液体材料を吐出する種々の装置において実施可能であり、例えば、先端にノズルを有するシリンジが貯留する液体材料に調圧されたエアを所望時間だけ印加するエア式、フラットチュービング機構またはロータリチュービング機構を有するチュービング式、先端にノズルを有する貯留容器の内面に密着摺動するプランジャーを所望量移動して吐出するプランジャー式、スクリューの回転により液体材料を吐出するスクリュー式、所望圧力が印加された液体材料をバルブの開閉により吐出制御するバルブ式などにも適用することができる。
しかしながら、本発明は、液体材料に慣性力を与えて「液滴の状態」で吐出する吐出装置において特に有利な効果を奏する。この種の吐出装置には、ノズルと連通する液室内に、可動弁体、静電型、圧電型などのアクチュエータ、ダイヤフラムおよび殴打ハンマー、バブル発生用ヒーター、などの圧力発生手段により圧力を発生させて液滴を吐出する吐出装置も含まれる。吐出装置の具体例をあげると、(i)弁体着座タイプのジェット式(例えば、弁座に弁体を衝突させて液体材料を吐出するジェット式)、(ii)弁体非着座タイプのジェット式(例えば、プランジャーを前進移動させ、次いで急激に停止して液体材料に慣性力を印加して吐出するプランジャージェット式)、(iii)連続噴射方式或いはオンデマンド方式のインクジェット式などがある。
【0028】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、弁体が着座して液滴の状態で吐出を行う、弁体着座タイプのジェット式吐出装置に関する。
図1はバルブ開口時(第一の位置)の各部の状態を、
図2はバルブ閉止時(第二の位置)の各部の状態を示す概略図である。
バルブ部を構成するバルブ本体1は、下面に液滴吐出用のノズル11を備えるとともに、プランジャーロッドが挿通する貫通孔3を有する隔壁2によって、駆動部室4と液室5とに上下2分されている。上部の駆動部室4には、プランジャーロッド8を上下動させるピストン7が摺動自在に装着されており、ピストン7の上方の駆動部室4はバネ室41を形成し、ピストン7の上面とバネ室41の上部内壁面との間にはスプリング9が配設される。また、ピストン7の下方の駆動部室4は空気室42を形成し、バルブ本体1の側壁に形成した接続口12に接続したパイプ20及びエアー供給部を介して高圧空圧源14に接続され、プランジャーロッド8後退用の高圧空気が供給される。なお、図中10は、駆動部室4の上壁に螺合したストローク調整用ネジ10であり、上下位置を変更することによってプランジャーロッド8の移動上限を調整して、液体の吐出量を調整するものである。
【0030】
液室5には、上記ピストン7により進退動するプランジャーロッド8が嵌装されており、液室5の底壁にバルブ本体1の下面に設けたノズル11に連通する液室出口6が形成されている。また、液室5はバルブ本体1の側壁に形成した接続口13に接続したパイプ21を介して液体貯留容器19に接続され、液滴形成用の液体が供給される。
【0031】
プランジャーロッド8は、その先端面は、プランジャーロッド8が前進したとき液室5の底壁に当接して前記液室出口6を閉止するものであり、従って、バルブ閉止時プランジャーロッド8が液室5の底壁に接触した際、上記ピストン7の下方に空気室が形成できる程度の長さを有している。
なお、プランジャーロッド8の先端面及び吐出室の底壁は平面に形成されており、バルブ閉止時には上記両面は面接触して前記液室出口6を閉止して液滴の吐出を停止するように構成すると、バルブ閉止時の吐出すべき液滴と液室5内の液体とを確実に分離することができる。なおまた、プランジャーロッド8の先端面に最大径が前記液室出口6の内径に等しい突起を設け、バルブ閉止時液室出口6に係合するように構成すると、バルブ閉止時の液切りを良好にできる。
【0032】
液体供給部は、液体加圧装置18と、一体に形成されるか、継手を用いて接続されるパイプ21によってバルブ本体1の液室5に連通する液体貯留容器19と、で構成されており、液体貯留容器19内の液体は、液体加圧装置18により所望圧力に調整されたエアー圧によって常時定圧になるように調整される。なお、図示の実施例では、液体加圧装置18により液体貯留容器19内の圧力を一定にすることにより調圧した液体をバルブ部に供給するようにしたが、液体供給源(図示せず)とバルブ部を繋ぐ管路中に圧力調整装置を配置し、その圧力調整装置によって調圧してバルブ部に供給するようにしてもよい。
【0033】
エアー供給部は、バルブ作動圧制御装置15と、流量制御弁16と、切替弁17とを直列に接続して構成されており、具体的な構成においては、バルブ本体1と連通する電磁切替弁17と、プランジャーロッド8作動用エアーを所望圧力に制御するバルブ作動圧制御装置15との間に、流量制御弁16が配設して構成している。
【0034】
上記切替弁17は、前記バルブ作動圧制御装置15に連通する流量制御弁16と前記バルブ本体1とを連通してプランジャーロッドを開口位置にする第一の位置と、前記駆動部室4の空気室42と大気とを連通してプランジャーロッド8を閉止位置にする第二の位置とに切替可能に構成されており、プランジャーロッド8の移動方向の切替を行う。
【0035】
上記構成によって、閉止位置にいるプランジャーロッド8を退行動作させて開口位置に移動する場合は、第二位置から第一位置へ切替弁17を作動させる。第一位置では、所望圧力に制御されたプランジャーロッド8作動用エアーがさらに流量制御弁16により流量制御されてバルブ本体1に前記作動用エアーが供給されるから、プランジャーロッド8が所望する速度で退行移動を始める。このようにプランジャーロッド8を所望する速度で移動させることが可能であるから、プランジャーロッド8の移動量を大きくしても、液室出口6先端より気泡を吸い込むことを防止することができる。
【0036】
また、開口位置にいるプランジャーロッド8を進出動作させて閉止位置に移動する場合は、第一位置から第二位置へ切替弁17を作動させる。第二位置ではバルブ本体1と大気とを連通するからプランジャーロッド8を退行移動させていたプランジャーロッド8作動用エアーが一気に大気中に放出され、前記プランジャーロッド作動用エアーの圧力が瞬間的に大気圧と等しくなる。これにより、退縮してエネルギーを貯えていたスプリング9が一気に伸張してプランジャーロッドを進出移動させる。その後、プランジャーロッドは弁座に当接して移動を急速に停止するから、液体のみが液室出口6より液滴となって吐出される。
【0037】
上記の構成の装置において、吐出口の下端とワーク表面との距離(クリアランス)を異なる条件に設定し、吐出の精度を確認したところ、本実施例に係るクリアランスでは、サテライトの発生が無く、本実施例と比べ格段に大きいクリアランスではサテライトが発生していることが確認できた。
【実施例2】
【0038】
実施例2は、弁体が着座して液滴の状態で吐出を行う、弁体着座タイプのジェット式吐出装置に関する。
≪構成≫
図9は、本実施例の吐出装置が搭載される液体材料塗布装置の全体外観図である。
液体材料塗布装置200は、卓上型ロボット301の吐出ヘッドに吐出装置300を搭載し、ワーク374と吐出装置300を相対移動させながらワークの所望位置に所望量の液体材料を塗布する。
吐出装置300は、卓上型ロボット301のX方向移動機構371が備えるZ方向移動機構303に着脱自在に固定されており、X方向に移動自在である。ワーク374は、卓上型ロボット301のY方向移動機構373に配設されたテーブル375上に載置される。吐出装置300は、Z方向に移動自在であり、吐出装置300が吐出動作する際の、吐出装置300とワーク374の表面との距離(クリアランス)を所望量に調整することができる。
【0039】
図5に詳細を示す本実施例の吐出装置300は、プランジャー55の後端にピストン52が後方側からバネ51によって前方に付勢されるようにして固設された構成である。ピストン52は、ピストン室53内のピストン52より前方側にエアを供給してプランジャー55ごと後退し、ピストン52より前方側のエアを大気に開放することでプランジャー55を前進させ、液室56内の液体材料の一部を吐出口から液滴の状態で吐出する。プランジャー55は、液室56のプランジャーの前方の内壁に当接して停止される。
このような装置においては、プランジャー55は、その先端部の周面が液室56内の内壁とは非接触の状態で前進するので、一部の液体材料はプランジャー55と液室56との間を後方に移動するため、プランジャー55前進時の抵抗が少なく、プランジャー55をスムーズに高速前進させることができる。
【0040】
≪準備≫
所望量の吐出量が得られるよう調整された吐出装置300を作動させ、液体材料が吐出装置300の吐出口57から離間する際の、吐出口57から液体材料の進出方向末端までの高さ(距離)h
0を測定する。高さh
0は、吐出装置300を卓上ロボット301に搭載させる前に予め測定してもよいし、卓上ロボット301に搭載させた状態でその下方に液受け用のカップを設け、前記カップに向けて吐出装置300から液体材料を吐出させて測定してもよい。高さh
0の測定に際しては、液体材料が被着体に着弾する前に吐出口57から離間するよう、吐出口57と被着体との距離を設けて行うことが重要である。
この測定作業は、高速度ビデオカメラで吐出装置300の吐出口57から液体材料が吐出される態様を撮像し、得られた画像から吐出口から離間する際の画像を選び出し、これを画像処理することにより得られることは、前述したとおりである。
ところで、本実施例では、高速度ビデオカメラを用いて、液体材料が吐出装置300の吐出口57から離間する際の、吐出口57から液体材料の進出方向末端までの高さh
0を測定したが、これに限らず既知の計測手段を用いて前記距離を測定できることはいうまでもない。
【0041】
≪塗布作業≫
以上の手順により、吐出口57から離間する際の液体材料の高さh
0が得られた後は、液体材料が塗布されるワークと吐出装置300の吐出口57との距離が、高さh
0よりも小さい距離にて塗布作業が行われるよう、塗布装置200の塗布作業時のZ方向移動機構303を制御して塗布作業を行う。
本実施例の吐出装置300は、数十cps〜十万cpsという広範囲の粘度の液体材料を吐出することができる装置であり、比較的高粘度の液体材料をも吐出することができる。1ショットあたり数μg〜数10mg程度の量を吐出する。
【0042】
上記の構成の装置において、吐出口の下端とワーク表面との距離(クリアランス)を、液体材料がワークに着弾した後にノズルの吐出口から離間する条件に設定し、サテライトの発生を確認したところ、本実施例に係るクリアランスでは、サテライトの発生は確認されてなかった。一方、本実施例と比べ格段に大きいクリアランスを設定したところ、サテライトが発生していることが確認できた。
【0043】
吐出装置:ジェット式吐出装置(弁体着座タイプ)
ノズル:内径75μm、外径200μm
液体材料:熱硬化型エポキシ系一液性樹脂
吐出量:10μg
吐出口とワーク表面の距離(クリアランス):1mm
吐出口とワークの相対移動速度:50mm/s
【実施例3】
【0044】
実施例3は、プランジャーを前進移動させ、次いで急激に停止することで液体材料に慣性力を印加して液滴の状態で吐出を行う、弁体非着座タイプのジェット式吐出装置に関する。
本実施例の吐出装置500は、
図7に示すように、ガントリー型塗布装置400に搭載される。
ガントリー型塗布装置400は、例えば、ボックス内において、液体材料を吐出するノズルと当該ノズルに対向するようにワークを載置するテーブルとを相対的に移動させて当該ワーク表面の所望する位置に液体材料を塗布する装置であって、前記ボックスの側面に設けたワークを搬出入するための搬入出口と、前記搬入出口に向かって延設されたビームを前記テーブルの上方を平行移動させるビーム移動手段と、それらの作動を制御する制御部と、を備える。以下に詳細に説明する。
【0045】
本実施例のガントリー型塗布装置400は、
図7に示すように、ワークが載置されるテーブル91と、テーブル91を挟んでX軸方向に平行に延設される一対のX軸スライドベース95と、X軸スライダー96に支持され、Y方向に延設される2本のビーム92を備える。
【0046】
テーブル91は、ワークをθ軸方向に移動させて所定の角度に位置決めするためのθ回転機構を備える。テーブル91は、テーブル91の下方に設けられたθ回転機構に直接支持させる構成としてもよいし、X軸方向またはY軸方向に移動する移動機構に載置して、X軸スライダー/Y軸スライダーによる相対移動作動を補助させる構成としてもよい。
【0047】
一対のX軸スライドベース95上には、X軸スライドベースの長手方向に移動可能なX軸スライダー96をそれぞれ2つ配設され、X軸スライダー96は2本のビーム92の両端部を支持し、X軸スライダー96がX軸スライドベース95上を移動することにより、ビーム92がテーブル91の上方でX方向に移動自在とすることを可能としている。
X軸スライドベース95は、ビーム92が端部に位置する際に、妨げられることが無い程度に、充分に幅広に構成されている。これにより、ビーム92や塗布ヘッド94がワーク搬入時に干渉することを防ぐことができる。
【0048】
一対のビーム92の外方側面には、Y軸スライダー93がそれぞれ2つ配設され、Y軸スライダー93には液体材料を吐出する塗布ヘッド94がZ方向に移動可能に配設される。
【0049】
X軸およびY軸のスライドベースは、リニアモータ用マグネットおよび直動ガイドを備え、スライダーはリニアモータを備える構成が例示される。但し、スライドベースとスライダーとの組み合わせは、この構成に限定されず、例えば、スライドベースにモータとモータに連動して回転するボールねじを備え、スライダーにボールねじの回転に連動して直進移動するナットを備える構成としてもよい。
【0050】
≪動作≫
ワーク搬入時は、主制御部はX軸スライダー96を可動して、右側のビーム92をX軸スライドベース95の右端に移動させ、左側のビーム92をX軸スライドベース95の左端に移動させ、テーブル91上にビーム92が被さらないようにする。ビーム92の移動完了後、搬入出口12よりワーク搬送機17がワークを搬入する。テーブル91上へのワーク載置が完了すると、主制御部21はX軸スライダー96および前記Y軸スライダー93を可動して、塗布ヘッド94をワークの所望位置に配置し、塗布ヘッド94が備えるZ軸移動機構により塗布ヘッド94を下降させ、ワークへの液体材料を塗布を行う。この際、X軸スライダー96およびY軸スライダー93を適宜移動させて所望する形状に描画することができる。
【0051】
塗布作業終了後、主制御部21はX軸スライダー96を可動して、右側のビーム92をX軸スライドベース95の右端に移動させ、左側のビーム92bX軸スライドベース95の左端に移動させ、テーブル91上にビーム92が被さらないようにする。ビーム92の移動完了後、搬入出口12よりワーク搬送機17がワークを搬出する。
なお、ワークの搬入出はフォーク形の搬送機で行ったり、エアータイプの搬送機で行われる。
【0052】
吐出装置500は、吐出する液体材料を供給する液体材料供給部と、液体材料を吐出する吐出口を有する吐出部と、計量孔及び計量孔の内壁面と摺動して計量孔内に液体材料を吸収し、排出するプランジャーからなる計量部と、本体、並びに、液体材料供給部と計量部とを連通する流路及び計量部と吐出部とを連通する流路が形成され、本体内に設けられた空間内で摺動する弁体からなるバルブ部と、これらを制御する制御部と、を具備する。
吐出装置500は、
図10から
図12までに示すように、ベース501の下面に固定されたバルブ駆動用アクチュエータ529の進退動作が、それに連結されたジョイント591を介して弁体526に伝達されるよう構成されている。従って、バルブ駆動用アクチュエータ529の進退動作によって弁体526がスライド動作する。
前記制御部は、計量孔内に液体材料を吸入する際は、前記弁体を第1の位置に配して液体材料供給部と計量部とを連通し、かつ、計量部と吐出部とを遮断し、計量孔内の液体材料を排出する際は、前記弁体を第2の位置に配して計量部と吐出部とを連通し、かつ、液体材料供給部と計量部とを遮断する。
【0053】
本実施例の吐出装置500は、数cps〜数百cpsの比較的低粘度の液体材料を、1ショットあたり0.1mg〜数mg程度の量を吐出する。
本実施例の吐出装置500は、例えば、液晶パネル製造工程における液晶滴下工程で使用される液晶滴下装置としても利用される。
【0054】
上記の構成の装置において、吐出口の下端とワーク表面との距離(クリアランス)を、液体材料がワークに着弾した後にノズルの吐出口から離間する条件に設定し、着弾位置のズレ(跳ね返りに起因するものを含む)およびサテライトの発生を確認したところ、本実施例に係るクリアランスでは、サテライトの発生は確認されなかった。一方、本実施例と比べ格段に大きいクリアランスを設定したところ、サテライトが発生していることが確認できた。
【実施例4】
【0055】
実施例4は、インクジェット式の吐出装置に関する。
本実施例の吐出装置を、
図6および
図13を参照しながら説明する。
図6は、吐出ヘッド600とワークとを相対移動させながら塗布を行う液体材料塗布装置である。吐出ヘッド600はZ方向に移動自在であり、接触センサ4の有する可動子641により変位量を測定することができ、インクジェットヘッド1の吐出面とワーク7とのクリアランスを調整することができる。
【0056】
本実施例の吐出ヘッド600は、
図13に示す如く、ノズルと連通する液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する公知のインクジェットヘッド601と、インクジェットヘッド601を着脱可能に保持するヘッド保持部材602と、液体供給路及び加圧エア供給路と接続される切替機構と、を備える。前記切替機構は、インクジェットヘッド601に、液体及び加圧エアのいずれかを選択供給することを特徴とするインクジェット吐出ヘッドである。
インクジェットヘッド601は、ネジ623,624を緩めることで、ヘッド保持部材602に着脱自在である。可撓性の材料で構成された各チューブも継手接続されているので着脱容易であり、メンテナンスが容易な構造となっている。
吐出ヘッド600に搭載されるインクジェットヘッド601のノズルは、複数でも単数でもよい。
【0057】
本実施例の吐出装置は、例えば、数cps〜数十cpsの低粘度の液体材料を、1ショットあたり数ng程度の吐出量で吐出する。
上記の構成の装置において、吐出口の下端とワーク表面との距離(クリアランス)を、液体材料がワークに着弾した後にノズルの吐出口から離間する条件に設定し、着弾位置のズレおよびサテライトの発生を確認したところ、本実施例に係るクリアランスでは、着弾位置のズレおよびサテライトの発生は確認されなかった。一方、本実施例と比べ格段に大きいクリアランスを設定したところ、サテライトが発生していることが確認できた。