(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745612
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】共通のコアリムに軸方向に上下に配置された少なくとも2つのコイルを有する装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/12 20060101AFI20150618BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20150618BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20150618BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
H01F41/12 E
H01F27/32 Z
H01F27/28 K
H01F27/28 J
H01F27/28 M
H01F41/04 D
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-500363(P2013-500363)
(86)(22)【出願日】2011年3月9日
(65)【公表番号】特表2013-522919(P2013-522919A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011001155
(87)【国際公開番号】WO2011116884
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月14日
(31)【優先権主張番号】10003059.2
(32)【優先日】2010年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508346767
【氏名又は名称】アーベーベー・テクノロジー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】バーヴェッシュ・パテル
(72)【発明者】
【氏名】ブラク・エセンリク
(72)【発明者】
【氏名】フランク・コルネリウス
(72)【発明者】
【氏名】マルコス・ボックホルト
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・テッパー
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−270439(JP,A)
【文献】
特開平01−273303(JP,A)
【文献】
特開平01−270306(JP,A)
【文献】
米国特許第02924799(US,A)
【文献】
米国特許第02359544(US,A)
【文献】
米国特許第03699488(US,A)
【文献】
実開平01−179422(JP,U)
【文献】
実開昭55−115021(JP,U)
【文献】
特開昭59−123216(JP,A)
【文献】
特開平08−236384(JP,A)
【文献】
実開昭61−046719(JP,U)
【文献】
実開昭49−145117(JP,U)
【文献】
実開昭52−042214(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0211611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/12
H01F 27/32
H01F 19/00
H01F 27/28
H01F 27/30
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のコアリム(7)に軸方向に上下に配置された少なくとも2つのコイル(1,4)を備える装置であって、各コイルは、半径方向に上下に配置された少なくとも2つの巻き線(2,3,5,6)を有し、かつ前記巻き線(2,3,5,6)の間に障壁が設けられ、
隣接するコイル(1,4)の前記障壁(9〜13,15〜19)が、互いに対して半径方向にオフセットされ、かつ前記障壁(9〜13,15〜19)の端部が互いにくし状に係合することを特徴とする、装置。
【請求項2】
共通のコアリム(7)に軸方向に上下に配置された少なくとも2つのコイル(1,4)を備える装置であって、各コイルが半径方向に上下に配置された少なくとも2つの巻き線(2,3,5,6)を有し、かつ前記巻き線(2,3,5,6)の間に障壁が設けられ、
隣接するコイル(1,4)の前記障壁(21〜25,27〜31)の互いに直接対向する部分が交互に短縮および延長され、その結果、一方のコイル(1)の短縮された障壁(21,23,25)は、常に他方のコイル(4)の延長された障壁(27,29,31)に対向し、かつ逆に、前記一方のコイル(1)の延長された障壁(22,24)は、常に前記他方のコイル(4)の短縮された障壁(28,30)に対向し、かつ各コイル(1,4)において、短縮された障壁は常に延長された障壁の次にくることを特徴とする、装置。
【請求項3】
前記障壁(9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49)が、前記コイル(1,4)に巻きつき、したがって該障壁は、前記コイルの形に自動的に追随することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記障壁(9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49)が予め形成された部品として設計され、それぞれの場合に前記コイル(1,4)の形状および寸法に合致することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項5】
外周に沿って形成された間隔を維持するために、内側巻き線(2,5)、個々の障壁(9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49)および外側巻き線(3,6)の間にブロックが配置されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通のコアリムに軸方向に上下に配置された少なくとも2つのコイルを備える装置に関し、各コイルは、半径方向に上下に配置された少なくとも2つの巻き線を有し、かつ障壁が巻き線の間に設けられている。
【0002】
用途の1つは、コイルおよび変圧器であり、特に乾式変圧器である。
【背景技術】
【0003】
変圧器の場合、コアリムに軸方向に上下に2つ以上のコイルを配置し、各コイルが内側巻き線、または低電圧巻き線、および外側巻き線、または高電圧巻き線を有することが普通である。十分な絶縁耐力に必要な2つのコイルの間の空間は、コイルの連結によって計算される。さらに、障壁は通常コイルの内側巻き線および外側巻き線の間に配置され、障壁は、2つのコイルの間の電気のフラシュオーバを防ぐことを目的としている。
【0004】
この目的のために、
図4は、従来技術による少なくとも2つのコイルを備える装置の横断面を示す。コアリム7が示され、その上に第1コイル1および第2コイル4が軸方向に上下に配置されている。第1コイル1は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線2,3を有し、巻き線2はまた内側巻き線または低電圧巻き線と呼ばれ、巻き線3は、また外側巻き線または高電圧巻き線と呼ばれる。第2コイル4は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線5,6を有し、巻き線5はまた内側巻き線または低電圧巻き線と呼ばれ、巻き線6はまた、外側巻き線または高電圧巻き線と呼ばれる。
【0005】
2つの巻き線2,3の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、複数の障壁51が第1コイル1の内側巻き線2および外側巻き線3の間に配置される。同様に、巻き線5,6の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、複数の障壁52が第2コイル4の内側巻き線5および外側巻き線6の間に配置される。
【0006】
コイルの連結および電圧差に応じて決定される2つのコイル1,4の間の軸方向の間隔は、A1で示される(内側巻き線2,5の間で測定される)。巻き線の軸Wに垂直に配置された障壁突出量、つまり障壁が巻き線の端面を越えて突出する量は、Bで示される(巻き線3および障壁51の間、および巻き線6および障壁52の間で測定される)。
【0007】
特に高電圧または高電圧差においては、個々のコイルの巻き線を越える必要とされる障壁突出量は、比較的大きいため、コアリムの延長をもたらす−必要なコアリム長さL1を参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明によって取り組まれる課題は、要求される寸法に対して最適化された、共通のコアリムに軸方向に上下に配置された少なくとも2つのコイルを備える装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の特徴部の前の節に関連する第1実施形態によると、この課題は、隣接するコイルの障壁が互いに対して半径方向にオフセットされ、かつ障壁の端分がくし状に互いに係合している本発明によって解決される。
【0010】
請求項2の特徴部の前の節に関連する第2実施形態によると、この課題は、隣接するコイルの障壁の互いに直接対向する部分が交互に短縮および延長され、その結果、一方のコイルの短縮された障壁は、常に他方のコイルの延長された障壁に対向し、かつ逆に一方のコイルの延長された障壁は、常に他方のコイルの短縮された障壁に対向し、かつ各コイルにおいて、短縮された障壁は常に延長された障壁の次にある本発明によって解決される。
【0011】
請求項3の特徴部の前の節に関連する第3実施形態によると、この課題は、いくつかの障壁が絶縁環として設計され、さらに巻き線の端面の周囲に係合し、その端面は、巻き線軸に垂直に配置される本発明によって解決される。
【0012】
本発明によって達成可能な利点は、特にコイルまたは変圧器のコアリム長さを減少させることができ、それにより、コイルまたは変圧器を全体としてよりコンパクトな設計にすることができるということにある。障壁の装置は、互いに対するコイルの軸方向の間隔が減少されるにもかかわらず、外側にある巻き線から内側にある巻き線への電気のフラッシュオーバが回避されるように設計される。
【0013】
本発明の実施形態は、従属請求項に示される。
【0014】
本発明は、図面に示された実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】少なくとも2つのコイルを備える第1実施形態による最適化された装置の横断面を示す。
【
図2】少なくとも2つのコイルを備える第2実施形態による最適化された装置の横断面を示す。
【
図3】少なくとも2つのコイルを備える第3実施形態による最適化された装置の横断面を示す。
【
図4】少なくとも2つのコイルを備える従来技術による装置の横断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、少なくとも2つのコイルを備える、第1実施形態による最適化された装置の横断面を示す。コアリム7が示され、そこに第1コイル1および第2コイル4が軸方向に上下に配置されている。第1コイル1は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線2,3を有し、巻き線2はまた、内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線3はまた、外側巻き線と呼ばれる。第2コイル4は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線5,6を有し、巻き線5はまた、内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線6はまた、外側巻き線と呼ばれる。コアリム7の中央軸は、同時に巻き線軸Wである。
【0017】
障壁9,10,11,12,13は、2つの巻き線2,3の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、第1コイル1の内側巻き線2および外側巻き線3の間に配置される。同様に、障壁15,16,17,18,19は、2つの巻き線5,6の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、第2コイル4の内側巻き線5および外側巻き線6の間に配置される。
【0018】
ここで、障壁が互いに接触することなく2つのコイル1,4が軸方向に共に近づくように動くことができる方法で、障壁9〜13および15〜19が直径−コアリムの中央軸が巻き線軸Wである−に配置される。明らかなように、隣接するコイルの障壁は、互いに対して半径方向にオフセットされて配置され、かつ障壁9〜13および15〜19の端部は、互いにくし状に係合する。隣接するコイル1,4の障壁の間に重複部分Uが形成される。障壁突出量Bは、ここでは
図4による実施形態から変化しない。軸方向間隔A1(
図4参照)と比較すると、好都合に軸方向間隔A2は減少する。それに対応して、コアリムの長さL2が減少する。
【0019】
図2は、少なくとも2つのコイルを備える第2実施形態による最適化された装置の横断面を示す。コアリム7が示され、そこに、第1コイル1および第2コイル4が軸方向に上下に配置されている。第1コイル1は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線2,3を有し、巻き線2はまた、内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線3はまた、外側巻き線と呼ばれる。第2コイル4は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線5,6を有し、巻き線5はまた内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線6はまた、外側巻き線と呼ばれる。
【0020】
障壁21,22,23,24,25は、2つの巻き線2,3の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、第1コイル1の内側巻き線2および外側巻き線3の間に配置される。同様に、障壁27,28,29,30,31は、巻き線5,6の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、第2コイル4の内側巻き線5および外側巻き線6の間に配置される。
【0021】
ここで、2つのコイル1,4の障壁21〜25および27〜31の互いに直接対向する部分は、交互に短縮および延長され、その結果、各コイルにおいて一方のコイルの短縮された障壁は、他方のコイルの延長された障壁に対向し、かつ短縮された障壁は、延長された障壁の次にくる。隣接するコイル1,4の障壁の間に重複部分が存在する。このように、2つのコイル1,4は、障壁が互いに接触することなく軸方向に共に近づくように移動することができる。延長された障壁の障壁突出量Bは、ここでは、
図4の実施形態の障壁突出量Bに一致する。短縮された障壁21,28,23,30,25は、対向する障壁が互いに接触することなく、延長された障壁27,22,29,24,31に直接対向する。軸方向間隔A1(
図4参照)と比較すると、好都合に軸方向間隔A2は減少する。それに対応して、コアリムの長さL2が減少する。
【0022】
図3は、少なくとも2つのコイルを備える第3実施形態によって最適化された装置の横断面を示す。コアリム7が示され、そこに第1コイル1および第2コイル4が軸方向に上下に配置される。第1コイル1は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線2,3を有し、巻き線2はまた内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線3はまた外側巻き線と呼ばれる。第2コイル4は、半径方向に上下に配置された2つの巻き線5,6を有し、巻き線5はまた内側巻き線と呼ばれ、かつ巻き線6はまた、外側巻き線と呼ばれる。
【0023】
2つの巻き線2,3の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、障壁33,36,37,40および障壁34/35,38/39としての絶縁環が第1コイル1の内側巻き線2および外側巻き線3の間に配置される。同様に、2つの巻き線5,6の間の電気のフラッシュオーバを確実に防ぐために、障壁42,45,46,49および障壁43/44,47/48としての絶縁環が第2コイル4の内側巻き線5および外側巻き線6の間に配置される。絶縁環34/35は、さらに内側巻き線2の巻き線軸Wに垂直の端面の周囲に係合し、絶縁環38/39は、さらに外側巻き線3の巻き線軸Wに垂直の端面の周囲に係合し、絶縁環43/44は、さらに内側巻き線5の端面の周囲に係合し、かつ絶縁環47/48は、さらに外側巻き線6の端面の周囲に係合する。軸方向間隔A1(
図4参照)と比較して、軸方向間隔A3は好都合に減少する。それに対応して、コアリムの長さL3は、減少する。
【0024】
ごく大まかにいえば、以下の点が上記で説明された実施形態に適用される。
− 上述の方策は、円形、卵形、または長方形断面を有するコイル1,4に適用することができる。
− 障壁9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49は、電気絶縁プラスチックから形成される。
− ここでは連続的な沿面経路が設けられないように、隣接するコイルの障壁9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49は、接触しないようになっている。
− 障壁9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49コイル1,4に巻きつくことができ、したがって自動的にコイルの形に追随する。あるいは、障壁9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49は、それぞれの場合にコイル1,4の形および寸法に合致するように、予め形成された部品として設計されることができる。
− 外周に沿って形成された間隔を維持するために、内側巻き線2,5、個々の障壁9〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33〜40,42〜49および外側巻き線3,6の間にブロックが配置される。
− 図面は、本発明による原理を説明するために多少歪められており、コイル/巻き線および巻き線の間の描かれた間隔の寸法に関して縮尺は異なる。
− 前述の実施形態において、各場合の5つの障壁は、一例として用いられる。障壁の数の上限はない。
図1に示す実施形態は、1つの障壁で機能し、
図2および
図3に示す実施形態は、2つの障壁で機能する。
− 障壁の構成として上の実施形態の組み合わせを実行することができること明らかである。特に、
図3の実施形態は、巻き線の間の中央部分に配置された障壁に関して、
図1または
図2の実施形態と組み合わすことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 第1コイル
2 第1コイルの内側巻き線
3 第1コイルの外側巻き線
4 第2コイル
5 第2コイルの内側巻き線
6 第2コイルの外側巻き線
7 コアリム
9〜13、15〜19、21〜25、27〜31 障壁
33、36、37、40 障壁
34、35、38、39 絶縁環
42、45、46、49 障壁
43、44、47、48 絶縁環
51、52 障壁
A1、A2、A3 2つのコイル間の軸方向間隔
B 障壁突出量
L1、L2、L3 コイルリムの長さ
U 重複部分
W 巻き線軸