(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縦にした板材の一方の面に前記板材を搬送方向へ送り出すベルトを接触させるとともに、前記板材の他方の面に流体による圧力を加えて前記板材を前記ベルトに向かって押し、これにより前記ベルトと前記流体によって前記板材を挟むようにして保持し、前記板材を浮かせた状態で搬送する、板材の搬送方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。なお、以下で説明する板材の搬送装置は、精密面と普通面を有する板ガラス(板材)を搬送することとする。ここでいう「精密面」とは精密な加工が施される面をいい、「普通面」に比べて高い清浄度が求められるものとする。
【0012】
(第1実施形態)
はじめに、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る搬送装置100について説明する。ここで、
図1は本実施形態に係る搬送装置100の平面図である。
図1において、紙面右から左に向かう方向が板ガラス101の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と称す。)である。搬送装置100には、
図1の紙面右側にあたる上流側から縦にした状態の板ガラス101が供給される。
図1に示すように、本実施形態に係る搬送装置100は、送出装置10を備えている。さらに、送出装置10は、搬送部20と、加圧部40と、によって主に構成されている。
【0013】
搬送部20は、板ガラス101を搬送方向に送り出す装置である。
図1において、板ガラス101よりも紙面下側に図示された部分が搬送部20である。ここで、
図2は、
図1のII−II矢視断面図である。
図2において、紙面上方が搬送装置100の上方であり、紙面奥から手間に向かう方向が搬送方向である。
図1及び
図2に示すように、搬送部20は、無端ベルト21と、ベルト受け部材22と、下端ガイド部材23と、上端ガイド部材24とを有している。
【0014】
無端ベルト21は、環状に形成されたベルトである。無端ベルト21は、搬送方向の前後に位置する2台の駆動プーリ25によって駆動される。この無端ベルト21は板ガラス101の普通面103に接触するように構成されており、板ガラス101に接触した状態で駆動プーリ25を回転駆動させることで、板ガラス101を搬送方向に送り出すことができる。なお、本実施形態に係る無端ベルト21は、ゴム製のゴムベルト部26と、金属製の金属ベルト部27によって主に構成されており、二層構造を有している。ゴムベルト部26と金属ベルト部27は互いに連結されて一体として無端ベルト21を形成している。
【0015】
ゴムベルト部26は、無端ベルト21の外表面側に位置しており、板ガラス101に接する。一方、金属ベルト部27は無端ベルト21の内表面側に位置しており、駆動プーリ25に接する。金属ベルト部27は、
図2に示すように、ゴムベルト部26よりもベルト幅(上下方向寸法)がわずかに大きく、下端及び上端がそれぞれゴムベルト部26の下端及び上端よりも上下方向外側に位置している。金属ベルト部27は、剛性が高く、無端ベルト21が自重によって撓むのを抑える役割も果たしている。
【0016】
ゴムベルト部26の外表面には、そのベルト幅方向の上端から下端まで上下方向に延びる流体排出溝28が、環状の無端ベルト21の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。なお、ここでいう「周方向」とは、無端ベルト21の延在方向、別の言い方をすれば、無端ベルト21の進行方向をいう。流体排出溝28は、鉛直に形成される他、鉛直方向に対して傾斜して形成されていてもよい。これにより、板ガラス101とゴムベルト部26の間に水や洗浄液等の液体が侵入した場合でも、この流体排出溝28を通って下方に排出される。これにより、無端ベルト21と板ガラス101の間に液体が留まるのを防ぐことができ、ひいては無端ベルト21に対する板ガラス101の滑りを防ぐことができる。なお、本実施形態では、後述する加圧部40から放出された水が普通面103の一部に付着して水の跡が残るのを防ぐため、板ガラス101の普通面103側に水が供給されている。
【0017】
ベルト受け部材22は、無端ベルト21を支持する部材である。ベルト受け部材22は、搬送方向に延びる板状の形状を有している。ベルト受け部材22は、無端ベルト21の内側に位置しており、板ガラス101が通過する搬送路と並行に配置されている。換言すれば、ベルト受け部材22は、無端ベルト21を挟んで板ガラス101の搬送路と対向するように配置されている。また、ベルト受け部材22は、無端ベルト21に接する平面状のベルト受け面29を有しており、このベルト受け面29の表面を無端ベルト21が摺動する。このように、本実施形態のベルト受け部材22によれば、平面状のベルト受け面29で無端ベルト21を支持するため、例えばローラー等で受けた場合などに発生する無端ベルト21がベルト面と垂直方向に波打つような現象の発生を抑えることができる。よって、板ガラス101を安定して搬送することができる。
【0018】
下端ガイド部材23は、無端ベルト21を下方から支持する部材である。下端ガイド部材23は、
図2に示すように、搬送方向に直行する方向を回転軸の方向として回転するローラーである。下端ガイド部材23は、板ガラス101の搬送路に沿ってその近傍に複数配置されている。そして、下端ガイド部材23は、無端ベルト21の下方に位置し、金属ベルト部27の下端を支持している。このようにして、下端ガイド部材23は、剛性の高い金属ベルト部27を介して無端ベルト21全体を支持し、無端ベルト21が自重により撓むのを防いでいる。なお、本実施形態では下端ガイド部材23はローラーであるが、下端ガイド部材23はこのような構成に限られない。例えば、下端ガイド部材23はローラーに代えて搬送方向に延びる板状の部材であってもよい。この場合、下端ガイド部材23の上面で金属ベルト部27を支持しながら摺動させれば、無端ベルト21を支持することができる。
【0019】
上端ガイド部材24は、無端ベルト21の上方への変位を抑える部材である。上端ガイド部材24は、
図2に示すように、搬送方向に直交する方向を回転軸の方向として回転するローラーである。上端ガイド部材24は、下端ガイド部材23と対をなすようにして、板ガラス101の搬送路の近傍に複数配置されている。そして、上端ガイド部材24は、無縁ベルト21の上方に位置し、金属ベルト部27の上端と接触している。さらに、上端ガイド部材24には、ばね30により無端ベルト21に向かう下向きの力が加えられている。この構成により、上端ガイド部材24は、常に無端ベルト21に接した状態となる。上端ガイド部材24は、以上のような構成を備えているため、無端ベルト21を下方に押さえ込み、無端ベルト21の上方への変位を抑えることができる。なお、下端ガイド部材23のみで無端ベルト21を安定して保持できる場合には、搬送部20は上端ガイド部材24を備えなくてもよい。
【0020】
加圧部40は、板ガラス101に垂直方向の流体圧力を加える装置である。なお、板ガラス101に流体の圧力を加える際に用いる流体(以下、「加圧流体」と称す。)104は、本実施形態では水とする。ただし、加圧流体104は、洗浄液であってもよく、他の液体であってもよく、空気などの気体であってもよい。加圧部40は、板ガラス101を介して無端ベルト21に対向するように搬送方向に沿って複数配置されている。ここで、
図3は、
図1のIII−III矢視図である。
図1から
図3に示すように、加圧部40は、円柱状の流入側部材41と、矩形板状の流出側部材42とによって主に構成されている。
【0021】
流入側部材41は、加圧流体104の入口となる部材である。
図2に示すように、流入側部材41の内部には、流出側部材42とは反対側の端面に開口する入口流路43が形成されている。この入口流路43には図示しない流体供給装置が接続されており、この入口流路43を介して流入側部材41の内部に加圧流体104が供給される。さらに、流入側部材41の内部には、流出側部材42側の端面に開口する流体溜44が形成されている。この流体溜44は、入口流路43から流入した加圧流体104を一旦溜めることができる。そのため、例えば入口流路43に供給される加圧流体104の圧力が変動するような場合であっても、この流体溜44を介することにより、圧力の変動量を低減した状態で加圧流体104を流出側部材42へと供給することができる。つまり、流体溜44はダンパとして機能している。
【0022】
流出側部材42は、加圧流体104を板ガラス101に放出する部材である。流出側部材42は、流入側部材41よりも板ガラス101の搬送路に近い部分に位置し、流入側部材41に連結されている。流出側部材42の内部には、流入側部材41側の面に開口する中間流路45が形成されている。中間流路45は、小径部46と、小径部46よりも径の大きい大径部47とによって構成されている。これにより、流入側部材41の流体溜44を通過した加圧流体104は、小径部46、大径部47の順にこれらの内部を流れる。流出側部材42には、板ガラス101の搬送路側に開口する放出開口部48が形成されている。放出開口部48は、
図3に示すように、板ガラス101の搬送路側から見て略矩形状に形成されている。中間流路45を通過した加圧流体104は、この放出開口部48へ流入し、板ガラス101の精密面102へと放出される。なお、本実施形態に係る流出側部材42は加圧部40ごとにそれぞれ独立して構成されているが、これらを一体に形成してもよい。
【0023】
上記の構成を備える加圧部40は、
図2に示すように、搬送される板ガラス101との間にわずかな隙間が生じるように配置される。このように配置することで、加圧部40から放出された加圧流体104が、加圧部40と板ガラス101の間のわずかな隙間を通って、加圧部40の外へと流出することになる。これにより、加圧部40と板ガラス101との間に加圧流体104の膜が生じる。そのため、加圧部40は板ガラス101に接触することなく、この加圧流体104の圧力によって、板ガラス101を無端ベルト21に向かって垂直方向に押すことができる。そして、加圧流体104の圧力を大きくすれば、加圧部40(加圧流体104)と搬送部20との間で板ガラス101を強く保持でき、板ガラス101をその下端を支持しない状態で搬送することができる。
【0024】
本実施形態に係る搬送装置100によれば、板ガラス101の精密面102は流体膜以外に接することはないため、清浄度が保たれる。また、板ガラス101を下端を支持しない状態で搬送することができるため、板ガラス101の下端縁がベルトコンベア等に接触するようなこともなく、板ガラス101の破損が起こりにくい。さらに、板ガラス101を縦にした状態で搬送することができるため、搬送対象の板ガラス101が大きくなったとしても、搬送装置100の設置に広いスペースは要求されない。つまり、省スペース化が図れる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、
図4及び
図5を参照して、第2実施形態に係る搬送装置200について説明する。ここで、
図4は、第2実施形態に係る搬送装置200の平面図である。
図4に示すように、本実施形態では特に搬送部20の構成が第1実施形態のものと異なる。本実施形態に係る搬送部20は、無端ベルト21と、ベルト受け部材22と、中央ガイド部材31と、を有している。なお、本実施形態の加圧部40は、第1実施形態のものと同じであるため説明を省略する。
【0026】
無端ベルト21は、内表面側と外表面側のそれぞれに歯が形成されたゴム製の両歯付ゴムベルトである。本実施形態の無端ベルト21は、第1実施形態のような二層構造ではなく、金属ベルト部27(
図1参照)も含まれていない。無端ベルト21の内表面側に形成された歯32と外表面側に形成された歯33(各流体排出溝28の間の部分)は、同じ間隔で配列されている。無端ベルト21は、搬送方向の前後に位置する2台の駆動歯車34によって駆動される。この駆動歯車34には、無端ベルト21の内表面側の歯32に噛み合う歯が形成されている。ここで、
図5は
図4のV−V矢視断面図である。
図5に示すように、無端ベルト21の内表面には、内表面側の歯32(
図4参照)を横切るようにして、ガイド溝35が全周にわたって形成されている。このガイド溝35には、後述する中央ガイド部材31が挿入される。
【0027】
ベルト受け部材22は、第1実施形態の場合と同様にベルト受け面29を有している。無端ベルト21の内表面側の歯32の先端が、このベルト受け面29の表面を摺動する。さらに、ベルト受け部材22には、後述する中央ガイド部材31を収容する収容部36が複数形成されている。この収容部36は、ベルト受け部材22のベルト受け面29からその反対側に位置する面まで貫通している。つまり、収容部36は、トンネル状に形成されている。
【0028】
中央ガイド部材31は、無端ベルト21を支持する部材である。中央ガイド部材31は、円盤状の形状を有しており、上下方向を回転軸の方向として回転するように構成されている。また、上記のとおり、中央ガイド部材31は、無端ベルト21に形成されたガイド溝35に挿入されている。これにより、中央ガイド部材31は、無端ベルト21を回転しながら支持することができる。よって、無端ベルト21が自重によって撓むのを防止することができる。なお、本実施形態の搬送装置200に係る搬送部20は、下端ガイド部材23及び上端ガイド部材24(
図2参照)を有しておらず、これに代えて中央ガイド部材31を有している。これは、本実施形態の無端ベルト21には剛性の高い金属ベルト部27(
図2参照)が含まれておらず、無端ベルト21をその下端で支持するのが難しいためである。
【0029】
本実施形態に係る搬送装置200であっても、板ガラス101の精密面102の清浄度を保つことができ、また板ガラス101が破損しにくく、さらに設置に広いスペースは要求されず、省スペース化が図れる。なお、本実施形態に係る搬送装置200では、無端ベルト21の内表面側に形成された歯32と外表面側に形成された歯33が同じ間隔で配列されているが、無端ベルト21はこのような構成に限られない。つまり、外表面側の歯33と内表面側の歯32とは、異なる間隔をおいて形成されてもよく、異なる形状であってもよい。外表面側の歯33は、流体排出溝28を形成した結果生じたものであるのに対し、内容面側の歯32は駆動歯車34に噛み合うように形成されており、両歯32、33の技術的意義は異なるからである。
【0030】
(第3実施形態)
次に、
図6から
図10を参照して、第3実施形態に係る搬送装置300について説明する。ここで、
図6は本実施形態に係る搬送装置300の縦断面図である。本実施形態に係る搬送装置300は、送出装置10に加え、流体ガイド装置60を備えている点で、第1実施形態に係る搬送装置100及び第2実施形態に係る搬送装置200と構成が異なる。
【0031】
流体ガイド装置60は、板ガラス101の両面に垂直方向の流体圧力を加えて板ガラス101の横揺れを抑える装置である。この流体ガイド装置60は、一対の流路管61によって構成されている。この一対の流路管61は、板ガラス101の搬送路の両側に対向するように、かつ、板ガラス101の搬送方向に延びるように配置されている。また、流路管61のうち板ガラス101に対向する部分には、所定の間隔をおいて噴射口62が複数形成されている。さらに、各流路管61の内部には加圧流体104である水が流れており、その加圧流体104の圧力を上げると噴射口62から板ガラス101に向かって垂直方向に加圧流体104が噴射される。よって、流体ガイド装置60によれば、板ガラス101に機械類が触れることなく、その両面に加圧流体104による垂直方向の圧力を加えることができ、板ガラス101の横揺れを防止することができる。
【0032】
なお、流体ガイド装置60は、以上で説明した構成に限定されない。例えば、上述した送出装置10の加圧部40を板ガラス101の搬送路の両側に対向するように配置し、これを流体ガイド装置60としてもよい。また、板ガラス101の両側に配置する流路管61は必ずしも対向させる必要はない。つまり、搬送する板ガラス101の両面に加わる力のバランスが崩れない限り、板ガラス101の精密面102側の流路管61と普通面103側の流路管61とを、異なる上下方向位置に配置し、場合によっては配置する数を異なるようにしてもよい。
【0033】
本実施形態に係る搬送装置300では、
図6に示すように、送出装置10が板ガラス101の上端付近に配置されており、流体ガイド装置60が板ガラス101の中央付近及び下端付近に配置されている。送出装置10によって板ガラス101を支持しない状態で搬送させる場合には、板ガラス101のうち送出装置10から離れた部分が、搬送方向に直交する方向に変位(横揺れ)しやすい。しかしながら、流体ガイド装置60を送出装置10と異なる上下方向位置に配置することで、板ガラス101の横揺れを低減し、板ガラス101をより安定して搬送することができる。
【0034】
なお、送出装置10と流体ガイド装置60の配置は、
図6に示すものに限定されない。例えば
図7から
図10に示すように配置してもよい。
図7から
図10は、それぞれ本実施形態の変形例1から4に係る搬送装置300の縦断面図である。変形例1では、
図7に示すように、送出装置10が板ガラス101の下端付近に配置されており、流体ガイド装置60が板ガラス101の中央付近及び上端付近に配置されている。変形例2では、
図8に示すように、送出装置10が板ガラス101の中央付近に配置されており、流体ガイド装置60が板ガラス101の上端付近に配置されている。変形例3では、
図9に示すように、送出装置10が板ガラス101の下端付近に配置されており、流体ガイド装置60が板ガラス101の上端付近に配置されている。変形例4では、
図10に示すように、送出装置10が板ガラス101の下端付近及び上端付近に配置されており、流体ガイド装置60が板ガラス101の中央付近に配置されている。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。なお、以上では、搬送される板ガラス101が精密面102と普通面103を有する場合について説明したが、例えば、搬送する板ガラス101の両面が普通面であってもよい。このような場合でも、板ガラスの表面を清浄に保つべきことに変わりなく、本発明に係る板材の搬送装置は有効である。
【0036】
また、以上では本実施形態に係る板材の搬送装置100が、板ガラスを搬送する場合について説明したが、仮にある装置が板ガラス以外の板材を搬送するものであったとしても、そのことをもって、その装置が本発明に含まれなくなる理由にはなりえない。また、以上では、搬送装置100が環状の無端ベルト21を用いる場合について説明したが、例えば無端ベルト21に代えて環状型以外のベルトを用いても良い。