(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745632
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサおよび固体電解コンデンサを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20150618BHJP
H01G 9/04 20060101ALI20150618BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
H01G9/24 C
H01G9/05 G
H01G9/04 340
H01G9/02 331H
【請求項の数】48
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-529428(P2013-529428)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-541206(P2013-541206A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011052496
(87)【国際公開番号】WO2012040292
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年4月23日
(31)【優先権主張番号】61/384,785
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポルトラック ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】サミー ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ ヨンジャン
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−021296(JP,A)
【文献】
特許第2811915(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/028
H01G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード金属を提供する工程と、
前記アノード金属上に誘電体を形成する工程と、
前記アノード金属と前記誘電体上の活性カソード領域との間に導電性ブリッジを形成する工程と、
前記アノード金属に電圧を印加する工程と、
前記導電性ブリッジを通じてモノマーを電気化学的に重合させることにより、前記活性カソード領域上に前記モノマーの導電性ポリマーを形成する工程と、
前記アノード金属と前記活性カソード領域との間の前記導電性ブリッジを途絶させる工程と
を含む、コンデンサを形成するための方法。
【請求項2】
前記活性カソード領域は、導電性シード層によって少なくとも部分的に被覆される請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項3】
前記導電性シード層は、二酸化マンガンと導電性ポリマーとから選択される材料を含む請求項2に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項4】
前記導電性ブリッジは、導電性シード層を含む請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項5】
前記誘電体上に絶縁体を形成することをさらに含む請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項6】
前記導電性ブリッジは、前記絶縁体を越えて延びる請求項5に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項7】
前記導電性ブリッジは、プロセスキャリアと電気接続される請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項8】
前記導電性ブリッジを途絶させることは、レーザアブレーションを含む請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項9】
前記導電性ブリッジは、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーから選択される材料を含む請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項10】
前記導電性を途絶させることは、前記導電性ブリッジの導電性を途絶させることを含む請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項11】
前記アノード金属は、バルブ金属およびバルブ金属の導電性酸化物からなる群から選択される請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項12】
前記アノード金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、およびNbOからなる群から選択される請求項1に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項13】
誘電体を上に有するアノード金属と、前記アノード金属と電気接触する導電性ノードとを提供する工程と、
前記導電性ノードと前記誘電体上の活性カソード領域との間に導電性経路を形成する工程と、
前記アノード金属に電圧を印加する工程と、
前記導電性経路を通じてモノマーを電気化学的に重合することにより、前記活性カソード領域上に前記モノマーの導電性ポリマーを形成する工程と、
前記導電性ノードと前記活性カソード領域との間の前記導電性経路を途絶させる工程と
を含む、コンデンサを形成するための方法。
【請求項14】
前記導電性経路は、導電性ブリッジである請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項15】
前記活性カソード領域は、導電性シード層によって少なくとも部分的に被覆される請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項16】
前記導電性シード層は、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーから選択される材料を含む請求項15に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項17】
前記導電性ブリッジは、前記導電性シード層を含む請求項15に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項18】
前記導電性ブリッジは、前記導電性シード層である請求項17に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項19】
前記誘電体上に絶縁体を形成することをさらに含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項20】
前記導電性経路は、前記絶縁体を越えて延びる請求項19に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項21】
前記導電性経路を途絶させることは、レーザアブレーションを含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項22】
前記導電性経路は、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーから選択される材料を含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項23】
前記導電性を途絶させることは、前記導電性経路の導電性を途絶させることを含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項24】
前記アノード金属は、バルブ金属およびバルブ金属の導電性酸化物からなる群から選択される請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項25】
前記アノード金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、およびNbOからなる群から選択される請求項24に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項26】
前記導電性ノードは、前記アノード金属と前記導電性経路との間の電気経路である請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項27】
前記導電性ノードは、導電性非バルブ金属である材料を含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項28】
前記導電性ノードは、貴金属、ステンレス鋼、および炭素から選択される材料を含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項29】
前記ノードは、半導体および導体から選択される請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項30】
前記ノードは、102ΩM以下の抵抗率を有する請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項31】
前記導電性経路を途絶させることは、前記導電性経路の少なくとも一部分を除去するか、または酸化させることを含む請求項13に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項32】
前記除去または前記酸化は、アブレーションによって行われる請求項31に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項33】
前記除去または前記酸化は、レーザアブレーションによって行われる請求項32に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項34】
前記除去または前記酸化は、機械的アブレーションによって行われる請求項31に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項35】
前記除去または前記酸化は、熱分解によって行われる請求項31に記載のコンデンサを形成するための方法。
【請求項36】
アノード金属と、
前記アノード金属上の誘電体と、
前記アノード金属と電気接触する導電性ノードと、
前記導電性ノードと前記誘電体上の活性カソード領域との間の途絶された導電性ブリッジであって、前記活性カソード領域は導電性ポリマーを含む、途絶された導電性ブリッジと
を含み、
前記導電性ポリマーが、途絶される前の前記導電性ブリッジを通じてモノマーを電気化学的に重合させることにより形成されている、コンデンサ。
【請求項37】
前記活性カソード領域は、導電性シード層をさらに含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項38】
前記導電性シード層は、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーから選択される材料を含む請求項37に記載のコンデンサ。
【請求項39】
前記導電性ブリッジは、導電性シード層を含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項40】
前記誘電体上に絶縁体をさらに含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項41】
前記導電性ブリッジは、前記絶縁体の上で途絶させられる請求項40に記載のコンデンサ。
【請求項42】
前記導電性ブリッジは、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーから選択される材料を含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項43】
前記アノード金属は、バルブ金属およびバルブ金属の導電性酸化物からなる群から選択される材料を含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項44】
前記アノード金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、およびNbOからなる群から選択される請求項43に記載のコンデンサ。
【請求項45】
前記途絶された導電性ブリッジは、前記アノード金属と前記導電性ノードとの間の途絶された電気経路である請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項46】
前記途絶された導電性ノードは、導電性非バルブ金属である材料を含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項47】
前記導電性ノードは、貴金属、ステンレス鋼、および炭素から選択される材料を含む請求項36に記載のコンデンサ。
【請求項48】
誘電体を上に有するアノード金属と、前記アノード金属と電気接触する導電性ノードとを提供する工程と、
前記誘電体上に絶縁体を形成する工程と、
前記誘電体上に導電性シード層を適用する工程と、
前記導電性シード層と前記導電性ノードとの間に導電性ブリッジを形成する工程と、
前記アノード金属に電圧を印加する工程と、
前記導電性ブリッジを通じてモノマーを電気化学的に重合することにより、前記導電性シード層上に前記モノマーの導電性ポリマーを形成する工程と、
前記導電性シード層と前記導電性ノードとの間の導電性を途絶させる工程と
を含むコンデンサを形成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年9月21日出願の係属中の米国仮特許出願第61/384,785号に対する優先権を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、固体電解コンデンサと、固体電解コンデンサを製造する方法とに関する。さらに詳細には、本発明は、電気化学的に重合された固有導電性ポリマーを含むカソードの形成を改善するための導電性ブリッジを形成する方法に関する。
【0003】
固体電解コンデンサは当該分野において周知である。固有導電性ポリマーカソードを含む固体電解コンデンサもまた周知である。固有導電性ポリマーカソードを含む固体電解コンデンサに関する特有の問題は、製造コストと、各部分内および部分から部分へのポリマーの被覆率およびビルドアップ、すなわち厚みのばらつきである。製造コストは、2つのことと関連付けられる。1つは、充分な被覆率を達成するために必要とされるその場での化学重合のために必要とされる浸漬/乾燥サイクルの繰り返し数である。もう1つは、電気化学重合の現行方法における機器の費用と複雑さとである。
【0004】
誘電体の非常に抵抗性がある性質により、アノードから誘電体を通して電流を流すことによってポリマーコーティングを形成することは困難である。この問題を避けるために、導電性シード層が、典型的には誘電体上に形成され、それから外部電気接点が導電性シード層と接触して配置される。この構成は、典型的には、複雑なハードウェアを必要とするか、または外部接続を可能にするものに製品設計を制限する。従来の外部接続法は、素子の活性表面を損傷する可能性が高い。この損傷は、外部ハードウェアと導電性シード層との間の直接的な物理接触を必要とする現行の製造法において生じる。外部ハードウェアは、誘電体と適合性がなく、誘電体および/またはポリマーカソード層に対する物理的な損傷は通常のことである。ポリマーカソード層に対する損傷の結果として、誘電体のポリマー被覆率が不充分になり得、不十分な被覆率の結果として、カソード層が誘電体の性質を損なったり、露出した誘電体の処理損傷がもたらされたりし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、導電性ポリマーコーティングを形成する非常に効率的な方法を提供することにより、外部電気接点が、素子の活性カソード領域から外部電気接点を電気的に隔離するプロセスによって改善される。これは、物理的または電気的いずれでもポリマーの品質に悪影響を与えることなく、または下にある誘電体層とアノード層とに悪影響を与えることなく達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、改良型固体電解コンデンサを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、より効率的であると共に、当該分野において一般的に認識される、コンデンサ形成の問題を軽減する固体電解コンデンサを形成する方法を提供することである。
【0008】
認識される通り、これらの利点や他の利点が、コンデンサを形成するための方法において提供される。方法は、
誘電体を上に有するアノードと、アノードと電気接触する導電性ノードとを提供する工程と、
誘電体上に導電性シード層を適用する工程と、
導電性シード層と導電性ノードとの間に導電性ブリッジを形成する工程と、
アノードに電圧を印加する工程と、
モノマーを電気化学的に重合させることにより、モノマーの導電性ポリマーを導電性シード層上に形成する工程と、
導電性シード層と導電性ノードとの間の導電性ブリッジを途絶させる工程と
を含む。
【0009】
別の実施形態は、
誘電体を上に有するアノードと、アノードと電気接触する導電性ノードとを提供する工程と、
誘電体上に絶縁体を形成する工程と、
誘電体上に導電性シード層を適用する工程と、
導電性シード層と導電性ノードとの間に導電性ブリッジを形成する工程と、
アノードに電圧を印加する工程と、
モノマーを電気化学的に重合させることにより、モノマーの導電性ポリマーを導電性シード層上に形成する工程と、
導電性シード層と導電性ノードとの間の導電性を途絶させる工程と
を含む、コンデンサを形成する方法において提供される。
【0010】
さらに別の実施形態は、
プロセスキャリアを提供する工程と、
プロセスキャリアに取り付けられたアノードを提供する工程であって、アノードは、誘電体を上に含む、工程と、
導電性シード層を誘電体上に適用する工程と、
導電性シード層とプロセスキャリアとの間に導電性ブリッジを形成する工程と、
プロセスキャリアに電圧を印加する工程と、
モノマーを電気化学的に重合させることにより、モノマーの導電性ポリマーを導電性シード層上に形成する工程と、
導電性シード層とプロセスキャリアとの間の導電性ブリッジを途絶させる工程と
を含む、コンデンサを形成する方法において提供される。
【0011】
理解される通り、さらに別の実施形態が、コンデンサを形成する方法において提供される。その方法は、
誘電体を上に含むアノードを提供する工程と、
誘電体上に導電性シード層を適用する工程と、
導電性シード層と外部電気接点との間に導電性ブリッジを形成する工程と、
外部電気接点に電圧を印加する工程と、
モノマーを電気化学的に重合させることにより、モノマーの導電性ポリマーを導電性シード層上に形成する工程と、
導電性シード層と外部電気接点との間の導電性ブリッジの接続を途絶させる工程と
を含む。
【0012】
さらに別の実施形態が、コンデンサを形成する方法において提供される。その方法は、
アノード上に誘電体を有するアノードと、アノードと電気接触する導電性ノードとを提供する工程と、
導電性ノードと活性カソード領域との間に導電性経路を形成する工程であって、活性カソード領域は誘電体上にある、工程と、
アノードに電圧を印加する工程と、
モノマーを電気化学的に重合させることにより、活性カソード領域においてモノマーの導電性ポリマーを形成する工程と、
導電性ノードと活性カソード領域との間の導電性経路を途絶させる工程と
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、改良型固体電解コンデンサと、固体電解コンデンサを製造する方法とに関する。さらに詳細には、本発明は、改良型導電性ポリマーカソードを有するコンデンサと、導電性ポリマーカソードを形成する改良型の方法とに関する。
【0015】
本発明を、本開示と一体で非制限的な構成要素を形成する図面を参照して記載する。様々な図面全体を通して、同様な要素には、それに応じて番号を振る。
【0016】
本発明の実施形態を、
図1を参照して記載する。
図1は、アノードと、アノード上の誘電体とを有するフィルム10の概略的平面図である。少なくとも1つの導電性ノード12、好適には複数の導電性ノードが、アノードと電気接触し、一実施形態においては、導電性ノードが、アノードから誘電体を通って外方向に延びる。絶縁体14が図示される。絶縁体14の目的は、本明細書においてさらに記載する。
【0017】
本発明の実施形態を、
図2の断面概略図に示す。
図2において、誘電体18を上に有するアノード16を含むフィルムが、まとめて10で表示されている。導電性ノード12は、アノード16と電気接触する。導電性シード層20は、好適には誘電体と絶縁体14とを全て覆って導電性フィルムを形成し、導電性シード層は、導電性ノードと直接的に電気接触する。理解される通り、アノードに印加された電圧は、アノード、導電性ノードを通過し、そして導電性シード層全体を通ることにより、誘電体の表面にわたって電荷を提供する。電流は直接的には誘電体を通過しない。なぜならば、誘電体は、導電性ノードよりも高い抵抗を有するからである。導電性ポリマー22が、モノマーのその場での電気化学重合によって導電性シード層の表面上に形成される。導電性ポリマー22は、少なくとも活性カソード領域21内に形成される。導電性ポリマーが形成された後、アノードと導電性ポリマーとの間の導電性が、絶縁体14の境界の範囲内、例えば、破線24に沿って途絶させられ、2つの導電層が絶縁体によって隔離されることによりコンデンサを形成する。考察の目的のために、アノードは、明細書全体を通して16と表示され、カソードは、アノードから誘電体の反対側にある。当業者は、これが利便性のためのものであり、バルブ金属が使用されない場合には、アノードとカソードとは、物理的に、またはコンデンサを逆に設置することによってのいずれかで交換されることにより、本発明の範囲を逸脱することなく記法に関して専門用語を変えることが出来ることを理解する。この実施形態において、導電性シード層は、導電性シード層と導電性ブリッジとの両方の役割を果たしている。レーザアブレーションなどによる途絶後の
図2の実施形態を、
図3の断面概略図に示す。
【0018】
本発明の実施形態を、
図4の断面概略図に示す。
図4において、誘電体18を上に有するアノード16は、10でひとまとめにして考えられる。導電性ノード12は、アノード16と電気接触する。導電性シード層20は、好適には誘電体全体を覆って導電性フィルムを形成し、少なくとも絶縁体14に導電性フィルムを形成する。絶縁体は、ダムとして機能してもよく、導電性シード層が絶縁体で終端してもよく、あるいは導電性シード層は、導電性ノード12まで、さらにはそれを越えて延びることにより、導電性ノードを覆ってもよい。コーティングである導電性ブリッジ26は、導電性シード層20と導電性ノードとの間で延びて電気接点を形成することにより、アノードから導電性ノードを通って導電性シード層に橋絡する導電性経路を形成する。導電性ノードと導電性ブリッジとを通る導電性経路は、誘電体を通る導電性経路よりも抵抗が低い。電圧が印加されることにより、少なくとも活性カソード領域21において導電性ポリマー22を形成する。導電性ポリマーの形成後、ブリッジの導電性が、28などの、絶縁体の境界の範囲内で途絶させられることにより、
図5に示されるように導電性ポリマーからアノードを電気的に隔離する。
【0019】
本発明の実施形態を、
図6の断面概略図に示す。
図6において、誘電体18を上に有するアノード16が、10としてひとまとめにして考えられる。絶縁体14は、導電性シード層20が誘電体の上で移動するのを妨げることにより、絶縁体において導電性シード層を終端させる。導電性ノード12が、アノードと導電性シード層20との間の電気接点を形成することにより、好ましい導電性経路を確立する。なぜならば、誘電体を通る経路は、高い抵抗を有するからである。少なくとも活性カソード領域21における導電性ポリマー層22の形成後、アノードと導電性ポリマーとの間の導電性が、例えば、線30において途絶させられることにより、
図7に示すように、誘電体を間に有する電気絶縁された導電層を有するコンデンサを形成する。
【0020】
本発明の実施形態を、
図8の断面概略図において示す。
図8において、アノード16は、上に誘電体18を有する。導電性シード層20は、誘電体の上に形成され、好適には、絶縁体14において終端する。導電性ブリッジ26は、導電性シード層20と、プロセスキャリア50または外部電気接続52のうちの少なくとも一方との間の電気接続を提供する。電圧がプロセスキャリアまたは外部電気接続のいずれかに印加され、導電性ポリマー層22が、少なくとも活性カソード領域21において、モノマーのその場での電気化学重合によって形成される。導電性ポリマー層が完成した後、導電性ブリッジの導電性が、好適には54において途絶させられることにより、電解コンデンサを形成する。
【0021】
導電性は、導電層または導電性素子を通る電流を途絶させるのに適したいかなる方法によっても途絶させることが出来る。途絶は、除去、破壊、酸化、気化、磨滅、アブレーション、化学処理、熱処理などによって行われることが出来るが、それらには限定されない。電流を途絶させるための特に好適な方法は、レーザアブレーションであり、導電性材料が、レーザによって処理されることにより、それによって処理された材料をアブレーションまたは気化によって除去する。さらに、アブレーションの熱が、導電性ポリマー、またはその同等物を局所的に酸化させることにより、酸化されたポリマーの部分を非導電性にすることがある。
【0022】
導電性ブリッジは、誘電体の抵抗よりも低い抵抗、好適には10
4Ω以下の抵抗を有する導電性経路を形成する被覆された材料であり、導電性経路は、典型的には導電性ノードと導電性シード層との間に及ぶが、それには限定されない。導電性シード層は、誘電体との不利な反応を伴うことなく導電性シード層にわたって誘電体上での電気化学重合を促進する。導電性ブリッジは、材料が、電流が漏れる性質が低い点と保護の面とで誘電体と適合性があり、製品の動作の間に誘電体と接触したままであっても同じ性質を示すという点で、既存のカソード材料と共通する性質を有する材料から構成される。導電性ブリッジにおける使用のために特に好適な材料は、二酸化マンガンおよび導電性ポリマーである。導電性シード層を覆って形成された導電性ポリマーと同じである導電性ポリマーが、製造の簡易さと適合性の確かさとから好ましいが、それらには制限されない。導電性ポリマーブリッジは、その場での重合によって、またはポリマースラリーの塗布とそれに続く乾燥によって形成されることが出来る。
【0023】
導電性ノードは、誘電体を通る電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する経路を形成する領域である。導電性ノードは、誘電体、半導体、または導体を通る電流経路であり得、最も好適には、導電性ノードは導電性である。導電性ノードの抵抗率は、好適には10
4Ω以下であり、またさらに好適には10
2Ω以下である。導電性ノードは、電流が導電性ノードを通って流れる間に水分の存在下で酸化物の形成を妨げる材料を含むか、またはその材料で被覆されることが好ましい。貴金属と、ステンレス鋼と、炭素とが、本発明の実施のために特に適するものとして挙げられる。
【0024】
絶縁体材料は、好適には、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、シロキサン、およびシリコーンから選択されるポリマーである。絶縁体は、2つの機能を提供する。絶縁体の1つの機能は、ダムとして働くことにより、モノマーまたはあらゆる溶液のウィッキングが絶縁体を越えることを妨げられることである。もう1つの機能は、導電性の途絶と誘電体との間のバッファを提供することである。例えば、電気途絶が絶縁体にわたって生じた時に、絶縁体の一部分が損害を伴うことなく残ることが出来ることにより、誘電体上のレーザ衝突のあらゆる悪影響の可能性を軽減する。
【0025】
本発明の目的のために、直接的な電気接触は、物理的に接触する2つの構成要素間の電気接触として定義される。間接的な電気接触は、2つの構成要素間に導電性接着剤などの導体を用いた2つの構成要素間の電気接触として定義される。
【0026】
導電性シード層は、好適には、二酸化マンガンや導電性ポリマーなどの導電性材料の薄い層である。導電性シード層は、誘電体の一部分にわたって電荷を広げるシード層であることにより、その場で電気化学的に形成される導電性ポリマーの形成を改善することができる。二酸化マンガンは、島状で使用されることが出来、島は導電性ポリマーが成長すると導電性ポリマーによって電気的に接続される。あるいは、二酸化マンガンは、下にある面を全て覆うことが出来る。導電性ポリマーの薄い層、さらに好適には、導電性シード層上に形成されたものと同じ導電性ポリマーの薄い層が使用されることが出来る。導電性シード層のための導電性ポリマーの薄い層が、ポリマースラリーを用いた浸漬被覆によって、またはその場での重合によって形成されることが出来る。
【0027】
アノードは、好適には、バルブ金属、またはバルブ金属の導電性酸化物を含み、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、および酸化ニオブは、本発明の実施のために特に適するものとして挙げられる。ニオブ、タンタル、アルミニウム、およびNbOは、アノードとして特に好適である。
【0028】
誘電体は、好適にはアノードの酸化物であるが、それらには限定されない。アノード上での誘電体の形成、特にバルブ金属アノード上での誘電体の形成は、当該分野において、幅広く実証され充分に理解されており、本明細書におけるさらなる詳述は必要ではない。活性カソード領域は、その場で電気化学的に重合されたポリマーによって被覆される容量性素子の領域である。含まれる実施形態において、活性カソード領域は、典型的には、その場で電気化学的に重合されたポリマーの成長さえ促進する導電性シード層によって被覆されるが、導電性シード層は、活性カソード領域を越えて延びたり、活性カソード領域の被覆範囲よりも被覆範囲が少なかったりし得るので、活性カソード領域は導電性シード層によって画定されない。活性カソード領域はまた、アノード誘電体の表面と接触するのが好ましい。
【0029】
カソード層は、好適には、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、もしくはそれらの誘導体、二酸化マンガン、酸化鉛、またはそれらの組み合わせなどの導電性ポリマーを含む導電層である。固有導電性ポリマーが最も好ましい。
【0030】
特に好適な導電性ポリマーを式1に示す。
【0032】
式1のR
1とR
2とは、環のβ部位における重合を妨げるように選択される。α部位重合だけが進むことができることが最も好ましい。従って、R
1とR
2とは、水素ではないことが好ましい。さらに好適には、R
1とR
2とはαディレクタである。従って、エーテル結合がアルキル結合よりも好ましい。基が立体障害を回避するために小さいことが最も好ましい。これらの理由のために、−O−(CH
2)
2−O−としてまとめられるR
1とR
2とが最も好ましい。式1において、XはSまたはNであり、最も好適にはXはSである。
【0033】
R
1とR
2とは独立して、直鎖または分岐の、C
1−C
16アルキルもしくはC
2−C
18アルコキシアルキルを表すか、またはC
1−C
6アルキル、C
1−C
6アルコキシ、ハロゲン、またはOR
3によって置換されないかもしくは置換されたC
3−C
8シクロアルキル、フェニル、またはベンジルであるか、またはR
1とR
2とは一緒になって、C
1−C
6アルキル、C
1−C
6アルコキシ、ハロゲン、C
3−C
8シクロアルキル、フェニル、ベンジル、C
1−C
4アルキルフェニル、C
1−C
4アルコキシフェニル、ハロフェニル、C
1−C
4アルキルベンジル、C
1−C
4アルコキシベンジルもしくはハロベンジル、2つの酸素元素を含有する、5員環、6員環、または7員環の複素環構造によって置換されないかもしくは置換された直鎖C
1−C
6アルキレンである。R
3は、好適には水素、直鎖または分岐のC
1−C
16アルキルもしくはC
2−C
18アルコキシアルキルを表すか、またはC
1−C
6アルキルによって置換されていないかもしくは置換されたC
3−C
8シクロアルキル、フェニル、またはベンジルである。
【0034】
導電性ポリマーは、好適には、特に有機スルホン酸塩と組み合わせて、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、および式1の繰り返し単位を含むポリマーから選択される。特に好適なポリマーは、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)である。
【0035】
二酸化マンガン層は、好適には、硝酸マンガン水溶液にアノード素子を浸漬することによって得られる。次に、乾燥雰囲気または蒸気雰囲気において200℃〜350℃の温度で硝酸塩を熱分解することによって、酸化マンガンが形成される。アノードは最適な被覆率を確実にするように複数回処理されてもよい。
【0036】
当該分野で典型的に利用されるように、様々なドーパントが、重合プロセスの間にポリマーに組み込まれることが出来る。ドーパントは、芳香族スルホン酸、芳香族ポリスルホン酸、ヒドロキシ基を有する有機スルホン酸、カルボキシルヒドロキシル基を有する有機スルホン酸、脂環式スルホン酸およびベンゾキノンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、スルホサリチル酸、スルホイソフタル酸、カンファースルホン酸、ベンゾキノンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸を含む様々な酸または塩に由来し得る。他の適切なドーパントとしては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,381,121号に例示される通り、スルホキノン、アントラセンモノスルホン酸、置換ナフタレンモノスルホン酸、置換ベンゼンスルホン酸、または複素環式スルホン酸が挙げられる。
【0037】
結合剤と架橋剤とがまた、所望される場合には導電性ポリマー層の中に組み込まれることが出来る。適切な材料としては、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルブチラート)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン、およびピロール/アクリレート、ビニルアセテート/アクリレート、ならびにエチレン/ビニルアセテートコポリマーが挙げられる。
【0038】
ポリマー内にドーパントを含むことが好ましい。ドーパントは、別個に被覆されるか、またはモノマー溶液に含まれることが出来る。特に好適なドーパントは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)のナトリウム塩である。
【0039】
リードフレームなどの外部終端への後続の接続を増強するために、接着層が導電性ポリマー層に適用されてもよい。接着層は、典型的には、炭素含有層と、銀またはニッケル含有層などの金属含有層とを含む。最外層は、好適にははんだ付け可能な層、例えば、蒸着などによって堆積したニッケル層または銀層である。
【0040】
本発明は、述べられた実施形態を特に参照して記載されてきたが、それらには限定されない。具体的には述べられていないが、添付の特許請求の範囲の境界内および範囲内である、さらなる実施形態、さらなる代替物、およびさらなる改善を当業者は理解する。