(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745652
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】両親媒性高屈折率オルガノポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
C08G 77/46 20060101AFI20150618BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20150618BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20150618BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20150618BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20150618BHJP
A61K 8/892 20060101ALI20150618BHJP
A61K 8/893 20060101ALI20150618BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20150618BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20150618BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20150618BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20150618BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20150618BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
C08G77/46
C08G77/14
C08L83/12
C08L83/06
A61K8/891
A61K8/892
A61K8/893
A61K8/06
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q19/00
A61Q1/04
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-554852(P2013-554852)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2014-507535(P2014-507535A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2012052714
(87)【国際公開番号】WO2012113714
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年10月8日
(31)【優先権主張番号】13/032,883
(32)【優先日】2011年2月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,アループ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】コフイー,マイケル
【審査官】
前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−114895(JP,A)
【文献】
特開2000−239389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00− 77/62
C08L 83/00− 83/16
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
R3SiO、(R12SiO)w、(R1JSiO)x、(R1KSiO)y、(R1LSiO)z、SiR3、RSiO3/2およびSiO4/2
(式中、
Rは、基LまたはC1−30炭化水素基であり、R3SiO−または−SiR3基の1つのRが、場合によってヒドロキシル基であり、R3SiO−または−SiR3基の1つまたは複数のRが場合によってC1−8アルコキシ基であり;
R1は、水素またはC1−30炭化水素基であり;
Jは、アリールアルキル基であり;
Kは、長鎖C6−45アルキル基であり;
Lは、複数のヒドロキシル基を含む、またはポリエーテル基である、またはそれらの組み合わせである、100ダルトンより大きい分子量を有する、Si−C結合の酸素含有親水性基であり;
wは、0から200であり;
xは、1−100であり;
yは、1から50であり;
zは、1から50である)
の基からなる両親媒性シリコーンであって、ただし、両親媒性シリコーンが、w、x、yおよびzの総モルを基準にして、分枝部位を形成するRSiO3/2基およびSiO4/2基5モル%未満を含有してよいことを条件とし、両親媒性シリコーンが1.42より大きい屈折率を有し、さらに、両親媒性シリコーンが、水中で乳化性であり、5個以下のケイ素原子を有するシクロシロキサンを実質的に含まないことを条件とする、両親媒性シリコーン。
【請求項2】
Rが、メチル、エチルおよびフェニルからなる群から独立に選択される、請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項3】
R1がメチルまたはフェニルである、請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項4】
Jが、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルブチル、2−ナフチルエチルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項5】
Kが、C8−26アルキル基である、請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項6】
水に自己分散性である、請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項7】
請求項1に記載の両親媒性シリコーンを含む水性分散物。
【請求項8】
請求項1に記載の両親媒性シリコーンを含む水中シリコーン型ミクロエマルション。
【請求項9】
wが、3から200であり、
xが、5から100であり、
yが、5−40であり、
zが、3−20である、
請求項1に記載の両親媒性シリコーン。
【請求項10】
式(I):
R3SiO、(R12SiO)w、(R1JSiO)x、(R1KSiO)y、(R1LSiO)z、SiR3、RSiO3/2およびSiO4/2
(式中、
Rは、基LまたはC1−30炭化水素基であり、R3SiO−または−SiR3基の1つのRが、場合によってヒドロキシル基であり、R3SiO−または−SiR3基の1つまたは複数のRが場合によってC1−8アルコキシ基であり;
R1は、水素またはC1−30炭化水素基であり;
Jは、アリールアルキル基であり;
Kは、長鎖C6−45アルキル基であり;
Lは、複数のヒドロキシル基を含む、またはポリエーテル基である、またはそれらの組み合わせである、100ダルトンより大きい分子量を有する、Si−C結合の酸素含有親水性基であり;
wは、0から200であり;
xは、1−100であり;
yは、1から50であり;
zは、1から50である)
の基からなる両親媒性シリコーンであって、ただし、両親媒性シリコーンが、w、x、yおよびzの総モルを基準にして、分枝部位を形成するRSiO3/2基およびSiO4/2基5モル%未満を含有してよいことを条件とし、両親媒性シリコーンが1.42より大きい屈折率を有し、さらに、両親媒性シリコーンが、水中で乳化性であり、5個以下のケイ素原子を有するシクロシロキサンを実質的に含まないことを条件とする、両親媒性シリコーンの調製のための方法であって、式
R3−cHcSi−O−(R12SiO)i−(R1HSiO)j−(H2SiO)k−Si R3−cHc
(式中、cは、1または2であり、
ヒドロシリル化反応において、i、jおよびkは、ヒドロシリル化の後に式(I)の生成物が得られる。)
のSi−H含有オルガノポリシロキサンを;
(a)少なくとも1つのアリールアルケン;
(b)炭素原子6から45個を有する少なくとも1つの長鎖アルケン;および
(c)100ダルトンより大きい分子量を有し、アルケニル基またはアルキニル基から選択される少なくとも1つのヒドロシリル化反応可能な炭化水素基を有する、複数のヒドロキシル基を含むか、ポリエーテル基であるか、それらの組み合わせである少なくとも1つの酸素含有親水性基
を含むヒドロシリル化反応可能な反応物質
と反応させるステップを含み、
Si−H含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応可能な化合物(a)、(b)および(c)との反応が、一緒にまたは任意の順番で、希釈なしでまたは有機溶媒の存在下で、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒の存在下で起こって、式(I)の両親媒性シリコーンを形成し、ただし、段階的添加の順番が(a)、次いで(b)、次いで(c)であることを条件とする、方法。
【請求項11】
Si−H含有オルガノポリシロキサンが、メチル水素シロキシ単位、フェニル水素シロキシ単位またはそれらの組み合わせ、および場合によって二水素シロキシ単位を含有するオルガノポリシロキサンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Si−H含有オルガノポリシロキサンが、ジメチルシロキシ基、ジフェニルシロキシ基、フェニルメチルシロキシ基またはそれらの組み合わせをさらに含有し、トリメチルシリル、ジメチル水素シリルおよびヒドロキシジメチルシリルからなる群から選択される少なくとも1つの−SiR3基を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのアリールアルケン(a)が、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルナフタレンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの長鎖アルケン(b)が、炭素原子8から26個を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、
反応物質(c)が、ホモポリオキシエチレングリコール、ホモポリオキシプロピレングリコールおよびポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ポリエーテルコポリマーからなる群から選択される、アルケニル基末端を有するポリオキシアルキレンポリエーテルを含み、前記ポリオキシアルキレンポリエーテルが、C1−30アルキル、ヒドロキシル、ならびに反応物質(c)のヒドロシリル化を妨げないC1−30アルキルおよびヒドロキシル以外の基から選択される末端基も有する、方法。
【請求項16】
炭素原子4から30個を有する炭化水素少なくとも1つと、エチレン性不飽和の2つの部位またはエチレン性不飽和の2つの部位を有する親水性基とを反応させるステップもさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の両親媒性シリコーンをパーソナルケア製品の成分と混合することによるパーソナルケア製品を調製する方法。
【請求項18】
パーソナルケア製品が、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアシャインスプレー、ヘアポマード、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアクリーム、スキンケアローションおよびクリーム、口紅、リップグロス、ならびに輝き/光沢が望まれる顔または目の領域のための他の化粧料からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性調製物において容易に乳化または自己乳化して、ミクロまたはマクロエマルションを形成し、環式オルガノポリシロキサンを含まず、ポリマー鎖に沿ってアリールアルキル、長鎖アルキルおよび親水性基を有する、高屈折率を有する両親媒性オルガノポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリジメチルシリコーンは、場合によって官能性であり、シャンプーやコンディショナーなどの化粧料およびパーソナルケア製品を含めて、多様な用途で長く使用されてきた。残念ながら、このようなシリコーンは、比較的低い屈折率を欠点として有する。特にパーソナルケア部門で、ヘアケア製品での高い光沢への強調が増している。このような製品は、ワックスや研磨剤などの洗浄製品における用途も有する。
【0003】
シャンプー、コンディショナー、スキンケア製剤やカラー化粧品などのパーソナルケア消費者製品は、それらが与える輝きおよび/または光沢の利点から、高いまたはより高い美的および商業的価値をしばしば引き出す。約1.44より大きい屈折率(=RI)を有する成分は、ケラチンおよび皮膚の表面上の明瞭な/識別できる輝き/光沢の認識をもたらすことができる。小分子およびポリマーの両方におけるアリール(=Ar)置換基は、パーソナルケア製剤の輝きのために使用される成分のRIを高める好ましい方法である。Ar−Si単位を有する分子は、パーソナルケア、特に、フェニルトリメチコン(INCI命名法)などの成分で最も一般に使用され、市場で、例えば、Dow Corning(登録商標)556 Fluidとして販売されているが、シリコン上にAr−Si部分またはアラルキル置換のどちらかを含有する高RIアリール化シリコーン(ジメチルシロキサンを用いるホモ−およびコポリマーの両方)は、文献およびパーソナルケア業界で広く知られている。
【0004】
高屈折率のアリールアルキルシリコーンは、U.S.5,384,383で知られており、2−フェニルプロピルメチルジクロロシランの加水分解縮合により調製される。しかし、調製により、環境的または毒物学的に懸念され得る大量の環式生成物をもたらす。α−メチルスチレンのヒドロシリル化による比較調製は、生成物が、α−メチルスチレンの強い臭気を有する点で欠陥があることを米国特許第5,384,383号により教示されている。
【0005】
上記のアリール化およびアリールアルキル化シリコーンは、天然油、合成エステル、炭化水素などの一般的製剤成分との相溶性のため、製剤の油相で主に使用されることに留意されたい。水ベースの製剤、特に、パーソナルケアでの透明で水ベースの製剤への傾向は、消費者のより「自然」で「有機」な製品を使用したい要望により、着実に増加している。したがって、油相溶性を大きく損なうことなしに、極性製剤媒体、特に水と相溶性があるまたは容易に相溶性になるアリール含有シロキサンを介して、輝き/光沢の利点を提供する明確な必要性がある。そのような両親媒性で多用途の、一般用途アリールアルキル含有シリコーンは市販されていなかった。
【0006】
U.S.6,133,370は、アリールアルキル部分とポリエーテル部分の両方を含有するシリコーンの調製を開示している。しかし、’370特許により可能になる調製方法は、すべて、適切に置換されたクロロシランの共加水分解縮合または平衡反応の使用のどちらかを含み、したがって、生成物はすべて大きな割合の環式化合物被疑物を含有する。ポリエーテル部分の導入のみがヒドロシリル化により達成される。’370特許の方法では、反応生成物からアリールアルキル化環式種を除去することは非常に困難である。’370特許の生成物が、水中の自己乳化またはミクロエマルション形成のどちらかを実施できる兆候はなく、期待もできない。
【0007】
EP1094088 A1は、長鎖アルキルおよびアリール置換基の両方を含有し、低残留SiH含有量を含むシリコーンコポリマーの調製について記載している。これらのコポリマーは、離型剤の実用性およびパーソナルケア用途で良く知られている。しかし、これらのコポリマーは純粋に炭化水素置換基ベースであるため、化粧料などの多くの用途で望まれている通り、極性成分および媒体と不相溶性であると予想される。さらに、それらは、アラルキルおよびアルキル置換の両方を含むターポリマーであるが、ヒドロシリル化を介してこれらを作製する方法は簡単であり、アルケニルポリエーテルなどの高極性オレフィンも反応物質として含まれる場合において、潜在的困難さは予想されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,384,383号明細書
【特許文献2】米国特許第6,133,370号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1094088号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人は、驚くべきことに、また思いがけなく、環式オルガノポリシロキサンを含まない高屈折率を有するオルガノポリシロキサンは、アリールアルケン、エチレン性不飽和ポリエーテルおよび長鎖アルケンのヒドロシリル化によるワンポット合成で、Si−H官能性オルガノポリシロキサンとの反応により、調製することができ、平衡または加水分解縮合が必要でないことを見出した。得られるター(またはより高次の)ポリマーは、マクロまたはミクロエマルションを提供するため水性製剤に分散性であり、好ましくは自己乳化性である。それらは驚くべきことに、アリールアルケンの強い臭気も有さない。
【0010】
本発明のオルガノポリシロキサンは、アリールアルキルシロキシ部分、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有するシロキシ部分、親水性基を有するシロキシ部分、場合によってより低級のジアルキルシロキシ部分を含有し、共加水分解または平衡によってではなく、ヒドロシリル化により調製される。したがって、それらは、好ましくない量の環式オルガノポリシロキサンを含有しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンは、一般に、構造式(I):
R
3SiO(R
12SiO)
w(R
1JSiO)
x(R
1KSiO)
y(R
1LSiO)
zSiR
3 (I)
に対応し、式中、各Rは、互いに独立に、C
1−30炭化水素基であり、好ましくは炭素原子1から30個を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルカリール基であり、Rがアリール基を含有する場合、アリール、アルカリール、またはアリールアルキル基のアリール環が、酸素、硫黄、窒素およびリンの群から選択されるヘテロ原子も含有し得ることに加え、少なくとも5個の環原子を含有し、またはRは、ヒドロシリル化反応において実質的に非反応性であるまたはヒドロシリル化を阻害しない、別の有機基または無機基(例えば、ヒドロキシル基、アシロキシ基、もしくはアルコキシ基)、好ましくは炭素原子1から4個を含有するアルコキシ基のアルコール部分、最も好ましくはメトキシまたはエトキシ基であってよく、またはRは、L基である。Rは、好ましくはC
1−6アルキル基、フェニル、フェニルエチル、2−フェニルプロピルまたはナフチルエチル基、最も好ましくは経済的理由から、メチル基である。
【0012】
R
1は、それぞれ独立にC
1−30炭化水素基、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルカリール基であってよく、ここで、アリール基は、Rに関してヘテロ原子を含有してよく、より好ましくはC
1−4アルキル基、フェニル基またはオキシアルキル基を含有してよく、最も好ましくはメチル基を含有してよい。R
1は、H−シロキサン反応物質中の過剰なSi−H結合水素の結果として、または不完全反応の結果として、水素でもよい。
【0013】
基Jは、ヒドロシリル化反応によるオルガノポリシロキサン骨格に結合できる化合物残渣であるアリールアルキル部分である。Jは、好ましくはフェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルブチルまたはナフチルエチルである。最も好ましくは、Jは、2−フェニルプロピルである。R
1JSiOシロキシ単位中のR
1部分は、メチルまたはフェニルであり、R
1JSiOシロキシ単位は、最初のオルガノ水素ポリシロキサンが、任意の大量のH
2SiO基またはメチルもしくはフェニル以外の有機基とSi−H結合水素の両方を有するシロキシ基(これは費用を増すことになる。)を含有する必要がないように置換されていることが好ましい。好ましいポリマーでは、R
1JSiOシロキシ基で、R
1は、フェニルまたはC
1−4アルキルであり、好ましくはメチルである。基Jは、好ましくは炭素原子8−30個、より好ましくは炭素原子9−13個を有する。
【0014】
Kは、炭素原子少なくとも6個、好ましくは炭素原子少なくとも8個、好ましくは炭素原子45個以下、より好ましくは炭素原子30個以下を有する長鎖アルキル基である。Kは、好ましくはC
8からC
20のアルキル基であり、より好ましくはC
8からC
18のアルキル基である。K基は、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンなどの適切なアルケンのヒドロシリル化から誘導される。R
1JSiOシロキシ単位の場合と同様に、R
1KSiOシロキシ単位では、R
1は、メチルまたはフェニルであることが好ましい。
【0015】
基Lは、疎水性種J、Kおよび存在する場合はアリール、シクロアルキル、アリールアルキルまたはアルカリールであるRまたはR
1種と共に、両親媒性特性、特に易乳化特性および/または自己乳化特性を与える親水性種である。両親媒性シリコーンにおいて、Lは、式(II)
−R
a−O−(R
bO)
c−X (II)
(式中、R
aはSi−C結合しているアルキレンまたはアルケニレン基であり、R
bは二価の炭化水素基であり、Xはヒドロシリル化を妨げない末端基であり、cはポリオキシアルキレンポリエーテルが300−6000の分子量を有するように存在する。)を有するSi−C結合ポリオキシアルキレンポリエーテル;
式(III)
−R
a−O−(グリセリルまたはポリグリセリル) (III)
のポリヒドロキシ化合物;
式(IV)
−R
a−O−(モノサッカリドまたはポリサッカリド) (IV)
のサッカリジル基;
および式(V)
−R
a−(ポリビニルアルコールホモまたはコポリマー) (V)
のポリビニルアルコールホモポリマーまたはコポリマー
から独立に選択されてよい。
【0016】
基Lは、互いに独立に、複数のヒドロキシル基を含有するもしくはポリエーテル基である親水性種であり、またはそれらの混合物である。Lは、L基の親水性部分に結合したアルケニルまたはアルキニル基のヒドロシリル化から誘導されるアルキレンまたはアルキレニル基を介して結合しており、ヒドロシリル化反応可能な基、好ましくはビニルまたはアリル基を一方の末端とし、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ、もしくは硫酸エステル、リン酸エステルなどの他の基またはヒドロシリル化反応を妨げない他の末端基を他方の末端とするポリオキシアルキレンポリエーテルから好ましくは選択される。Lは、例えば、グリセリルもしくはポリグリセリル種、モノサッカリジルもしくはポリサッカリジル種またはポリビニルアルコール種も含み得る。基Lは、親水性部分を含有する不飽和化合物のヒドロシリル化から誘導される基である。
【0017】
例えば、好ましくは、L基は、アルキルポリエーテル部分−R
2−O(CH
2CH
2)
p−(C
3H
6O)
q(C
nH
n+2O)
r−R
bであってよく、式中、R
2は、C
2−C
20二価炭化水素基であり、nは、4−10であり、R
bは、好ましくはC
1−20炭化水素であり、より好ましくはアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、もしくはアルカリール基またはヒドロキシルもしくはアシル基、最も好ましくはヒドロキシル、メチル、ブチルまたはアセチル基である。親水性であるために、pおよびq基が、優勢でなければならず、好ましくはp基が、優勢でなければならない。変数pおよびqは、0−30、好ましくは0−20の範囲の値を有するが、少なくとも1つのp、qまたはr基は、存在しなければならない。最も好ましくは、rは、4未満であり、好ましくは0であり、qは、約20以下である(平均で)。p+q+rの合計は、約6以上でなければならず、Lの分子量は、好ましくは約300から約6000の範囲にある。p、qおよびr単位は、ホモポリマーブロックとして、ヘテリック(heteric)ブロックとして、または任意の望ましい分布でランダムに分布して存在し得る。ホモポリマー性オキシプロピレンまたはオキシ(より高度なアルキレン)ブロックが使用される場合、このようなブロックは、親水性、または親水性と親油性の組み合わせではなく疎水性を与えるほど長くはない。例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどの低分子量類似物は、非常に親水性であるが、400−500ダルトンより大きい分子量を有するポリオキシプロピレンホモポリマーポリエーテルは、油性で疎水性であることが比較的よく知られている。ポリブチレングリコール、例えば、ポリテトラメチレングリコールなどのより高度なポリオキシアルキレンの場合、酸素に対する炭素の比が高いほど、さらにより低い分子量でそのようなオリゴエーテルおよびポリエーテルを疎水性にする。したがって、ホモポリオキシエチレングリコールおよびコポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、コポリ(オキシエチレン/オキシブチレン)グリコールまたはターポリ(オキシエチレン/オキシ−プロピレン/オキシブチレン)グリコールが好ましい。さらに、非常に重要なのは、生成物の易分散性である。この分散性は、次に示されるように、容易に評価される。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから誘導されるブロックコポリエーテルまたはブロック/ヘテリックコポリエーテルの使用は、これらの基が、親水性であるだけでなく、乳化(すなわち表面活性な)特性を提供することも知られており、特に有用である可能性がある。
【0018】
Lは、ペンタエリトリトールの誘導体、ポリグリセリン、サッカリドまたはポリサッカリド等などのグリセリルまたは他の高度ヒドロキシル基含有種も含み得る。グリコシル種が、特に好ましい。グリセリン、ポリグリコール、ポリグリセロール、オリゴおよびポリサッカリドやポリビニルアルコールなどの種、すべての親水性種は、少なくとも1つの、好ましくは実質的にただ1つのエチレン性(またはエチリン性)不飽和の、ヒドロシリル化反応可能な基を有する誘導体を生成するために、有機化学における従来の技法により誘導体化することができる。したがって、例えば、ビニル基、アリル基、アクリラートまたはメタアクリラート基は、これらの誘導体中に存在することができる。ポリエーテルの場合、ポリエーテルは、アリルアルコールまたは別の不飽和アルコールのオキシアルキル化により合成することができる。グリセリル、ポリグリセリル、サッカリジル、ポリビニルアルコールなどのヒドロキシル官能性親水性基の場合、必要なエチレン性またはエチリン性不飽和を導入するために、ベース物質は、不飽和基でエーテル化もしくはエステル化することができ、または、不飽和イソシアネート等と反応することができる。
【0019】
ポリビニルアルコール親水性部分は、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。ポリビニルアルコールは、一般に、ポリビニルエステル、主にポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルおよび混合型のポリビニル(酢酸/プロピオン酸)の加水分解により調製される。加水分解は、実質的に完全、すなわち95−99モル%以上の完全または部分的であり得る。残留エステル基の含有量が多いほど、生じるポリマーの親水性は低い。ポリビニルアルコールは、完全に加水分解しているかどうかにかかわらず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドまたはブチルアルデヒドなどのアルデヒドとのアセタール化により変性されていてもよい。アセタール化の度合いが高いほど、コポリマーの親水性は低い。さらに、コポリマーポリビニルアルコールは、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーなどの混合型ポリビニルエステルポリマーを加水分解することにより調製することができる。エチレン単位が多く存在するほど、加水分解後のコポリマーの親水性は低い。ヒドロシリル化反応を妨げない基を生じる他のモノマーも存在することができる。特定の基がヒドロシリル化を妨げるかどうかは、この一成分をSi−H官能性オルガノポリシロキサンでヒドロシリル化する試験において、前に述べたように不飽和炭素−炭素結合を有するコポリマーをヒドロシリル化することにより日常的に決定することができる。適切なコモノマー、誘導体化(アセタール化によるなど)の選択により、およびビニルエステル基の加水分解の度合いを調整することにより、広範囲の親水性を得ることができる。
【0020】
本発明の両親媒性シリコーンは、ケイ素−炭素結合炭化水素基または親水性基を含有する、鎖延長基および架橋または分枝基も含有し得る。鎖延長基は、例えば、SiH官能性末端基含有H−シロキサンと2つのヒドロシリル化反応可能な不飽和基を有する化合物との反応により、調製することができる。このような化合物の例には、ジビニルベンゼン、α,ω−ジエンおよびα,ω−アリル末端を有するポリオキシアルキレンポリエーテルがある。本質的に、これらのビス不飽和基は、前に論じられたR、R
1、J、KおよびL基に対応するが、炭素−炭素不飽和の少なくとも2つの部位を含む。
【0021】
したがって、好ましい鎖延長基は、次式のものに対応し、
[O
1/2R
12Si−R’−SiR
12O
1/2]
t (VI)
式中、tは、0−100であり、好ましくは0−50であり、より好ましくは0−20であり、さらにより好ましくは0−5であり、最も好ましくは0−3である。好ましくは、反応性成分中の不純物から形成される不可避の連結を除き、鎖延長基は存在しない。R’は、鎖延長基の両方のケイ素原子にSiC結合する炭素原子4−30個を有する炭化水素基または、C2−20炭化水素連結、好ましくはC2−4炭化水素連結を介して両方のケイ素原子にSiC結合する親水性基である。R’単位は、上述の分枝構造のR’基でもあり得るように、J’、K’およびL’基と定義することもでき、これらのJ’、K’およびL’基は、J、KおよびL基の定義に対応するが、ヒドロシリル化反応可能な不飽和の追加の部位を持つ。
【0022】
分枝または架橋基は、好ましくは式(VII)のものであり、
【0023】
【化1】
式中、uは、0−100であり、好ましくは0−50であり、より好ましくは0−20であり、さらにより好ましくは0−5であり、最も好ましくは0−3である。分枝基では、R’は、この点でオルガノポリシロキサン中の分枝を形成するように、少なくとも1つの他のシロキシ基とR’を介して分枝単位を結合する二価の分枝部分である。少なくとも1つの他のシロキシ基は、オルガノポリシロキサン鎖の末端であってよく、またはオルガノポリシロキサン鎖内のシロキシ基であり得る。したがって、分枝および架橋ポリマーのようなデンドリマーまたはラダーが形成され得る。
【0024】
鎖延長は、分子量を制御するために使用され得るが、また分枝および架橋の量を増やさずにそうすることは困難である。鎖延長の量が大きいほど、分子量および粘度は大きい。架橋はシリコーンを膨潤させるが、油相に不溶にする可能性がある一方で、分枝の増加は、一般に高粘度化ももたらす。したがって、鎖延長と分枝/架橋はどちらもポリマー特性を調整するのに使用することができる。
【0025】
鎖延長および分枝/架橋基のR’基を最終的に形成するビスヒドロシリル化反応可能な化合物は、本発明の両親媒性シリコーンの調製時にいつでも添加することができる。しかし、ごく少量添加するのでなければ、分枝および架橋が、ヒドロシリル化の容易さを妨げる可能性があり、または溶解の問題を引き起こし得るので、合成の終期近くで添加するのが望ましい。R’基前駆体は、反応の初期と終期近くの両方で添加することができる。分枝基または鎖延長基が存在する場合は、R’基は、ビス(アルケニルまたはアルキニル)親水性部分から誘導されることが好ましい。1つのそのような好ましい部分は、両親媒性シリコーンのL基に対して前に記載したように、α,ω−ビス(アリル)末端を有するポリオキシアルキレンポリエーテルである。
【0026】
親水性基およびヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素多重不飽和を含有するそのようなヒドロシリル化反応可能な誘導体の調製は、従来の有機化学で知られており、当業者に周知されている。好ましくは、Lは、酸素含有で、100ダルトン以上の分子量を有するSi−C結合親水性基である。好ましい実施形態では、本発明の両親媒性シリコーンは、基J、KおよびLを供給するヒドロシリル化反応可能な化合物を、内部繰り返し単位が、実質的にジメチルシロキシ、メチル水素シロキシ、場合によって好ましくはないが、二水素シロキシ単位であるポリシロキサンと反応させることにより調製可能であるものである。なお、H−シロキサンは、その末端単位にSi−H結合水素を含有していてもいなくてもよい。今述べた基に加え、またはその代わりに、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシおよびフェニル水素シロキシ基を含有するポリシロキサンも、好ましい。末端基は、好ましくはトリメチルシリル基であるが、ヒドロシリル化を妨げない適切な任意の末端基、例えば、ジメチルフェニルシロキシ、水素ジメチルシロキシ、ヒドロキシルジメチルシロキシなども使用することができる。そのようなSi−H含有シロキサンは、「H−シロキサン」と呼ばれることもあるが、市販品として容易に入手でき、または、有機ケイ素化学においてよく知られた方法により合成することができる。経済的理由から、H−シロキサンは、好ましくはトリメチルシリルを末端とするポリ(メチル水素シロキシ/ジメチルシロキシ)シリコーン、例えば、次式のものであり、
A−[OSiMe
2]
d[OSiHMe]
eO−A
式中、Aは、独立にHMe
2SiまたはMe
3Siであり、
eは、好ましくはx、yおよびzの合計に等しく、dとeの合計は、望ましい分子量および/または鎖長が得られるようなものである。言い換えれば、好ましくは、基J、KおよびLの実質的にすべてが、H−シロキサンを用いるヒドロシリル化により両親媒性シリコーンに結合している。しかし、H−シロキサンが、基J、KおよびLのいくつかをすでにR
1基として、すなわち、ヒドロシリル化の前に含有し得ることも可能である。経済的理由から、これは好ましくない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の両親媒性シリコーンは、J、KおよびL前駆体、ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素多重結合を含むこれらの前駆体のヒドロシリル化を介して調製される。ヒドロシリル化は、反応物質の添加について、協奏的でも、見掛け上協奏的でも、または完全に段階的でもよいが、好ましくは段階的である。ヒドロシリル化の順番は重要ではないが、アリールアルケンが最初に反応し、次いでアルケンが反応し、最後にアルケニル官能性親水性種が反応するのが好ましい。アルケンが最後に反応する場合、かなりの異性化が起こり、より多量のアルケンが必要になり得ることが分かった。
【0028】
ヒドロシリル化触媒は、任意の有用なヒドロシリル化触媒であり得る。たいていのヒドロシリル化触媒は、貴金属(例えば、ロジウム、イリジウム、パラジウムまたは白金)または貴金属の化合物もしくは錯体であるが、白金化合物が、その概してより高い活性のため、一般に好ましい。
【0029】
例えば、ヒドロシリル化触媒として、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム(好ましくは白金およびロジウム)などの金属およびそれらの化合物を使用することが可能である。金属は、場合によって活性炭などの微粉担体材料、酸化アルミニウムや二酸化ケイ素などの金属酸化物に固定することができる。白金および白金化合物を使用することが好ましい。ポリオルガノシロキサンに可溶性であるこれらの白金化合物が特に好ましい。使用することができる可溶性白金化合物には、例えば、式(PtCl
2・オレフィン)
2およびH(PtCl
3・オレフィン)の白金−オレフィン錯体が含まれ、この状況で、エチレン、プロピレン、ブテンおよびオクテンの異性体などの炭素原子2から8個を有するアルケンまたはシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどの炭素原子5から7個を有するシクロアルケンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、ヘキサクロロ白金酸とアルコール、エーテルおよびアルデヒドもしくはそれらの混合物との反応生成物または重炭酸ナトリウムのエタノール溶液の存在下でのヘキサクロロ白金酸とメチルビニルシクロテトラシロキサンとの反応生成物である。リン、硫黄およびアミン配位子を有する白金触媒、例えば(Ph
3P)
2PtCl
2も使用することができる。特に好ましいのは、対称ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのビニルシロキサンを有する白金錯体である。他のヒドロシリル化触媒は、特許および非特許の文献で知られている。
【0030】
ヒドロシリル化触媒は、反応開始時にすべて最初から存在していてもよく、最初は一部が存在し、追加の触媒を計り入れてもよく、または増加的に添加してもよく、好ましくは種々の反応物質の添加段階に対応して増加的に添加してよい。触媒の量は、従来通りで、例えば、最終生成物重量について、貴金属元素を基準にして、1から5000ppmであり、より好ましくは10から500ppmであり、最も好ましくは約50−250ppmである。その量は、例えば、反応速度を観察することにより、または未反応の出発材料を測定することにより、当業者により容易に調整される。触媒の適切な量の選択は、当業の技術の範囲内にある。
【0031】
ヒドロシリル化反応は、希釈なし、または有機溶媒中で行うことができる。希釈なしの調製が好ましい。温度は従来通りであり、例えば、20℃から200℃、好ましくは50℃から180℃の範囲とすることができる。反応に続き、真空下もしくは窒素などの不活性ガスを用いて除去することにより、または従来の処理を使用することにより、例えば、流下膜式蒸発器もしくは拭き取り(wiped)膜式蒸発器を使用することにより、生成物から、残留溶媒および他の揮発性物質を除去することができる。
【0032】
本発明の生成物を調製する簡便なワンポット化学は、好ましくは不飽和基質としてアラールケン(aralkene)、アルケン、および通常はポリアルキレンオキシドおよび/または他のポリヒドロキシ化合物のモノアリルエーテルを用いるポリ(メチルシロキサン)またはポリ(メチルシロキサンcoジメチルシロキサン)との継続的ヒドロシリル化反応を含む。好ましいヒドロシリル化触媒は、Speier’s触媒もしくはKarstedt’s触媒またはこれらの改質型などの白金化合物または錯体である。
【0033】
式Iのw:x:y:z比は、ヒドロシリル化のために使用されるヒドロシロキサンに依存して、ゲル状および未加工材料に対して液体または固体の生成物を製造することに関して重要であり得る。当業者にとって、より望ましい液体生成物またはソフトな固体は、日常の実験によって確保され得る。両親媒性シリコーンにおいて、wは、0から200であり、好ましくは0から100であり、より好ましくは0から50であり;xは、1−100であり、好ましくは1から50であり、より好ましくは1から25であり;yは、1から50であり、好ましくは1から25であり、より好ましくは1から10であり;zは、1−50であり、好ましくは1から25であり、より好ましくは1から10である。
【0034】
水中シリコーン型(Si/W)エマルションは、本発明の組成物を用いて容易に調製することができる。特に、シリコーン内相粒子サイズ30−55nmのSi/Wミクロエマルションは、一般的で市販の界面活性剤および界面活性剤の混合物を使用して得ることができた。これらのエマルションのシリコーン含有量は、15−20重量%以上であり得る。
【0035】
さらにより驚くべきことに、当業者による通常の実験により決定することができる、w:x:y:z比ならびに長鎖ヒドロカルビルおよび極性ポリオキシアルキレンまたはポリヒドロキシ置換基の性質に依存して、本発明の組成物は、15重量%以上の水中で自己乳化性であった。
【0036】
等しく驚くべきは、市販の製剤に濁りを全く生じることなしに、本発明の両親媒性シリコーンを2−5重量%の濃度で直接、製造業者数社による複数の市販の無色透明シャンプーに添加することができたことであった。これらのシャンプーのひ薄化(thinning)が観察されたが、これは、当業者による複数の手段を介して対処することができる。市販のシャンプーとの同じ相溶性が、両親媒性シリコーンから製造されたミクロエマルションで観察された。
【0037】
本発明の2%両親媒性シリコーンを含有する単純なポンプスプレー製剤で噴霧された漂白ヨーロピアンヘア見本は、未処理のヘア見本および溶媒のみで処理されたものに比べ、明確な光沢を示した。
【0038】
したがって、本発明の組成物は、以前は入手できなかった、輝き/光沢を高めた両親媒性シリコーンの新しいクラスを提供する。したがって、これらは、純粋の流体としてまたはエマルションの形態のどちらかの、シャンプー、コンディショナー、ヘアシャインスプレー、ポマード、ムース、ジェル、クリーム、スキンケアローションおよびクリーム、保湿剤、バスオイル、ボディソープ、石鹸、アフターシェイブ製品、口紅、リップカラー、リップグロス、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、ほお紅、ファンデーションおよび他の顔用化粧品、固形パウダーおよび種々の化粧落としなどの、オイルまたは水ベースのヘアケア、スキンケアおよびカラー化粧料製剤での使用に適している。それらは、ワックス、研磨剤、タイヤグロスおよび他の用途における使用にも適している。
【0039】
本発明の両親媒性シリコーンおよびこれらの調製方法の利点は、それらが低分子量シクロシロキサンを実質的に含まず、実際、低分子量シクロシロキサンを一般に検出不能であることである。さらなる利点は、シリコーンを調製するためのヒドロシリル化の使用にもかかわらず、生成物が、スチレンまたはα−メチルスチレンなどのアリールアルカンの強い臭気を有さないことである。「環式物を含まないは、揮発性環式物の含有量が、両親媒性シリコーンの総重量を基準にして、0.5重量%未満であることを意味する。より好ましくは、環式物の含有量は、0.1重量%未満であり、さらにより好ましくは0.05重量%未満である。最も好ましくは、揮発性シクロシロキサンは、
1H−NMRまたは
29Si−NMRにより何も検出されない。「低分子量」は、25−37℃でかなりの蒸気圧を有するシクロシロキサン、特に、シクロトリシロキサン、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサンなどの5個以下のケイ素原子を有するシクロシロキサンを意味する。4個以下のケイ素原子を含有するオリゴシロキサンなどの低分子量直鎖種も、好ましくは存在しないか、非常に低濃度である。
【実施例】
【0040】
本発明は次に、実施例により例示されるが、実施例は、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0041】
一般的装置構成:
機械式撹拌機、熱電対、滴下漏斗、水冷コンデンサー、窒素ガス注入口および排出口ならびにゴムセプタムを取り付けるための、種々のネックアダプター、ストップコック付きバイパスアダプターおよびテフロン(登録商標)PTFEネックスリーブを装備した四つ口丸底フラスコを、ヒドロシリル化のために使用した。フラスコを加熱するために加熱マントルを使用した。フラスコおよび内容物の加熱を制御するために、電子サーモスタットを熱電対と共に使用した。調製は、乾燥窒素ガスを穏やかに流しながら実施した。反応の完了直後に、水冷コンデンサーをバイパスにするか取り外し、揮発性物質をすべて減圧除去した。生成物を40℃に冷却し、プレフィルターあり、またはなしの0.45−1μmナイロンまたはテフロン(登録商標)メンブランフィルターを使用して空気または窒素圧下で濾過した。
【0042】
[実施例1]
反応フラスコにポリ(メチルシロキサンcoジメチルシロキサン)[300g、H含有量0.642重量%]を入れた。フラスコを80℃に加熱し、α−メチルスチレン(AMS、112.6g)を滴下漏斗に入れ、フラスコ内容物の温度を約120−125℃に上げながらAMSの約3分の1量をフラスコに添加した。125℃で、クロロ白金酸のシクロヘキサノール中溶液(シクロヘキサノール溶液中1重量%Pt、120μL)を、フラスコ中の撹拌(200−250rpm)している混合物にシリンジを介して速やかに添加した。急速な発熱が起こり、漏斗からのAMS添加を続けて、反応熱からの温度を140−160℃の範囲に保った。AMS添加の完了直後に、Pt触媒のさらなる分量(120μL)を添加し、混合物を145℃で30分間加熱した。次いで温度を125−130℃に下げ、1−オクテン(54.5g)を滴下漏斗からゆっくり添加して、温度を約140℃未満に維持した。混合物を140℃で30分間加熱した。次いで温度を150℃に設定し、ポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、10molEO、(249.5g)添加を開始した。ポリエーテル添加の開始後、触媒のさらなる分量(120μL)を添加し、添加の途中で温度を155℃に上げ、温度を約150℃未満に低下させることなく、ポリエーテル添加を完了した。触媒の4分の1量(120μL)を添加し、混合物を1時間加熱し、触媒の半分量(60μL)を添加し、混合物をさらに1時間加熱して、2時間の混合の間、温度を好ましくは150−155℃の範囲に維持した。次いで、反応混合物を約155℃で減圧下(10−15mmHg)でストリッピングして、残りの揮発性オレフィンもすべて除去した。40℃に冷却後、次いでオフホワイトから淡黄色の生成物を濾過して、ほぼ無色で透明な液体を得た。
1H NMR分析は、予想の生成物であることを示した。GC MS分析は、残留AMS含有量が100ppm未満であることを示した。粘度268mPa・s。屈折率1.4615。揮発性物質0.03重量%。
【0043】
[実施例2]
実施例1の手順に非常に類似した手順を使用して、ポリ(メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン)[58.5g、H含有量0.64重量%]は、AMS(21.8g)、1−オクタデセン(24.4g)およびアリル末端を有するポリエチレンオキシド、10molEO(48.8g)と、その添加の順番で反応させた。オクタデセン添加のための添加温度は、145℃であり、使用したPt触媒は、プロピレングリコール中のヘキサクロロ白金酸(0.5重量%Pt、総触媒量216μL)であった。粗生成物を20mmHgおよび160℃で減圧除去し、濾過して、透き通ったほぼ無色の液体を得た。NMR分析は、予想の生成物であることを示した。粘度290mPa・s。屈折率1.4603。
【0044】
[実施例3]
実施例1の手順に非常に類似した手順を使用して、ポリ(メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン)[83g、H含有量0.64重量%]は、AMS(15.6g)、1−オクテン(15.1g)およびモノアリル末端を有するポリエチレンオキシド、10molEO(137.4g)とその添加の順番で反応させた。オクテン添加のための出発温度は、130℃であり、使用したPt触媒は、プロピレングリコール中のヘキサクロロ白金酸(0.5重量%Pt、総触媒溶液体積276μL)であった。粗生成物を18mmHgおよび160−166℃で減圧除去し、濾過して、透き通ったほぼ無色の液体を得た。NMR分析は、予想の生成物であることを示した。粘度757mPa・s。屈折率1.4572。
【0045】
[実施例4]
実施例1の手順に非常に類似した手順を使用して、ポリ(メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン)[105g、H含有量0.656重量%]は、AMS(40.2g)、1−オクテン(19.5g)およびモノアリル末端を有するポリ(エチレンオキシドcoプロピレンオキシド)、20molEO−20molPO(316.6g)とその添加の順番で反応させた。オクテン添加のための出発温度は、130℃であり、使用したPt触媒は、シクロヘキサノール中のクロロ白金酸(1重量%Pt、総触媒量194μL)であった。ポリエーテルの添加を155℃で開始し、半分はこの温度で添加し、半分は160℃で添加した。実施例1−3のように、ポリエーテル添加の完了後、混合物を2時間撹拌した(この実施例では160℃で)。粗生成物を20mmHgおよび160℃で減圧除去し、濾過(0.8μmナイロンメンブランフィルター)して、透き通った無色の液体を得た。NMR分析は、予想の生成物であることを示した。粘度410mPa・s。屈折率1.4580。揮発性物質0.03重量%。
【0046】
[実施例5]
実施例1の手順に非常に類似した手順を使用して、ポリ(メチルシロキサン)[34.6g、H含有量1.6w/w]は、AMS(11.6g)、1−ドデセン(58.3g)およびモノアリル末端を有するポリエチレンオキシド、10molEO、(58.8g)とその添加の順番で反応させた。ドデセン添加のための出発温度は、145℃であり、使用したPt触媒は、AMSで50%v/vに希釈した改質型Karstedt’s触媒(0.5重量%Pt、総触媒量365μL)であった。粗生成物を18mmHgおよび160−168℃で減圧除去し、濾過して、微濁でほぼ無色の液体を得た。NMR分析は、予想の生成物であることを示した。粘度4100mPa・s。屈折率1.4629。
【0047】
[実施例6]
実施例2の生成物を使用して、水中シリコーン型(Si/W)ミクロエマルションを調製した。したがって、脱イオン水(7.32g)を入れたビーカーに、常にせん断しながら、界面活性剤Genapol X100(8.78g)、Lutensol TO5(1.0g)、Lutensol AT25(1.0g)をその順番で添加し、次にシリコーン流体(15g)、グリセリン(1.0g)および水(65.9g)を加えた。エマルションへのグリース相の完全な取り込みを確実にするため、必要に応じ、ビーカーの壁をかき取り、混合物の温度を約60℃より高くさせなかった。必要に応じて冷却後に、エマルションを濾過した。これにより、完全に透明なシリコーン流体のミクロエマルションを得た。シリコーン内相の粒子サイズ、33nm(Malvern、Z平均)。
【0048】
[実施例7]
実施例6と同一の手順を使用して、実施例1の構造および組成のシリコーン流体から、半透明のミクロエマルションを得た。内相の粒子サイズ、55nm(Malvern、Z平均)。
【0049】
[実施例8]
実施例6に類似した方法で、実施例7のシリコーン流体から、組成物:水−7.32g、Genapol X100−11.18g、Lutensol TO5−1.3g、Lutensol AT25−1.3g、シリコーン流体−15g、グリセリン−1.3gおよび水−62.6gを使用してマクロエマルションを得た。内相の粒子サイズ、87nm(Malvern、Z平均)。
【0050】
[実施例9]
実施例3のシリコーン流体は、脱イオン水に15重量%で容易に自己乳化し、半透明エマルションを生じた。
【0051】
[実施例10]
実施例4のシリコーン流体は、脱イオン水に10重量%で容易に自己乳化し、半透明エマルションを生じた。
【0052】
種々の一般的なパーソナルケア溶媒中の室温で10重量%におけるWacker(登録商標)TN(アルキル−アラルキルシリコーン流体)および本発明の組成物の溶解性。S−可溶、I=不溶、SC=微濁
【0053】
【表1】
【0054】
本発明の実施形態が、例示され、記載されてきたが、これらの実施形態が、本発明のすべての可能な形態を例示し、記載しているわけではない。