【実施例1】
【0013】
まず、構成を説明する。
実施例1におけるベルト式無段変速機CVTの制御装置の構成を、「全体システム構成」、「ベルトスリップ制御構成」、「通常制御とベルトスリップ制御の切り替え構成」、「ベルトスリップ制御中のセカンダリ油圧制御構成」、「ベルトスリップ制御中の初期位相設定構成」に分けて説明する。
【0014】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用されたベルト式無段変速機搭載車両の駆動系と制御系を示す全体システム図である。
図2は、ベルト式無段変速機構を示す斜視図である。
図3は、ベルト式無段変速機構のベルトの一部を示す斜視図である。以下、
図1〜
図3に基づき、全体システム構成を説明する。
【0015】
実施例1の制御装置が適用されたベルト式無段変速機搭載車両の駆動系は、
図1に示すように、エンジン1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、ベルト式無段変速機構4と、終減速機構5と、駆動輪6,6と、を備えている。なお、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とベルト式無段変速機構4と終減速機構
5をトランスミッションケース内に収納することにより構成される。
【0016】
前記エンジン1は、
図1に示すように、ドライバによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号により出力トルクが制御可能である。このエンジン1には、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等により出力トルク制御を行う出力トルク制御アクチュエータ10を有する。
【0017】
前記トルクコンバータ2は、
図1に示すように、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21を直結可能なロックアップクラッチ20を有する。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたタービンランナ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたポンプインペラ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26と、を構成要素とする。
【0018】
前記前後進切替機構3は、
図1に示すように、ベルト式無段変速機構4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向で切り替える機構である。この前後進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、前進クラッチ31と、後退ブレーキ32と、を有する。
【0019】
前記ベルト式無段変速機構4は、
図1に示すように、ベルト接触径の変化により変速機入力軸40の入力回転数と変速機出力軸41の出力回転数の比である変速比を無段階に変化させる無段変速機能を備え、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44と、を有する。前記プライマリプーリ42は、
図2に示すように、固定プーリ42aとスライドプーリ42bにより構成され、スライドプーリ42bは、プライマリ油圧室45に導かれるプライマリ油圧によりスライド動作する。前記セカンダリプーリ43は、
図2に示すように、固定プーリ43aとスライドプーリ43bにより構成され、スライドプーリ43bは、セカンダリ油圧室46に導かれるプライマリ油圧によりスライド動作する。前記ベルト44は、
図2に示すように、プライマリプーリ42のV字形状をなすシーブ面42c,42dと、セカンダリプーリ43のV字形状をなすシーブ面43c,43dに掛け渡されている。このベルト44は、
図3に示すように、環状リングを内から外へ多数重ね合わせた2組の積層リング44a,44aと、打ち抜き板材により形成され、2組の積層リング44a,44aに対する挟み込みにより互いに連接して環状に設けられた多数のエレメント44bにより構成される。そして、エレメント44bには、両側位置にプライマリプーリ42のシーブ面42c,42dと、セカンダリプーリ43のシーブ面43c,43dと接触するフランク面44c,44cを有する。
【0020】
前記終減速機構5は、
図1に示すように、ベルト式無段変速機構4の変速機出力軸41からの変速機出力回転を減速すると共に差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、変速機出力軸41とアイドラ軸50と左右のドライブ軸51,51に介装され、減速機能を持つ第1ギヤ52と、第2ギヤ53と、第3ギヤ54と、第4ギヤ55と、差動機能を持つギヤディファレンシャルギヤ56を有する。
【0021】
実施例1の制御装置が適用されたベルト式無段変速機搭載車の制御系は、
図1に示すように、変速油圧コントロールユニット7と、CVTコントロールユニット8と、を備えている。
【0022】
前記変速油圧コントロールユニット7は、プライマリ油圧室45に導かれるプライマリ油圧Ppriと、セカンダリ油圧室46に導かれるセカンダリ油圧Psecを作り出す両調圧方式による油圧制御ユニットである。この変速油圧コントロールユニット7は、オイルポンプ70と、レギュレータ弁71と、ライン圧ソレノイド72と、ライン圧油路73と、第1調圧弁74と、プライマリ油圧ソレノイド75と、プライマリ圧油路76と、第2調圧弁77と、セカンダリ油圧ソレノイド78と、セカンダリ圧油路79と、を備えている。
【0023】
前記レギュレータ弁71は、オイルポンプ70から吐出圧を元圧とし、ライン圧PLを調圧する弁である。このレギュレータ弁71は、ライン圧ソレノイド72を有し、オイルポンプ70から圧送された油の圧力を、CVTコントロールユニット8からの指令に応じて所定のライン圧PLに調圧する。
【0024】
前記第1調圧弁74は、レギュレータ弁71により作り出されたライン圧PLを元圧とし、プライマリ油圧室45に導かれるプライマリ油圧Ppriを作り出す弁である。この第1調圧弁74は、プライマリ油圧ソレノイド75を有し、CVTコントロールユニット8からの指令に応じて第1調圧弁74のスプールに作動信号圧を与える。そして、第1調圧弁74は、ロー変速比側で弁調圧状態とし、ライン圧油路73からのライン圧PLを減圧制御により調圧した変速圧をプライマリ圧油路76に導く。また、第1調圧弁74は、ハイ変速比側で弁全開状態とし、ライン圧油路73からのライン圧PLをそのままプライマリ圧油路76に導く。なお、第1調圧弁74は、最ハイ変速比の位置にメカニカル固定する場合、セカンダリプーリ43のスライドプーリ43b、もしくは、プライマリプーリ42のスライドプーリ42bがストロークできず、第1調圧弁74が調圧状態でないことから圧力制御での影響はなく、応答遅れは生じない。流量制御での変速応答も同様である。よって、同相となる。
【0025】
前記第2調圧弁77は、レギュレータ弁71により作り出されたライン圧PLを元圧とし、セカンダリ油圧室46に導かれるセカンダリ油圧Psecを作り出す弁である。この第2調圧弁77は、セカンダリ油圧ソレノイド78を有し、CVTコントロールユニット8からの指令に応じて第2調圧弁77のスプールに作動信号圧を与える。そして、第2調圧弁77は、ロー変速比側で弁全開状態とし、ライン圧油路73からのライン圧PLをそのままセカンダリ圧油路79に導く。また、第2調圧弁77は、ハイ変速比側で弁調圧状態とし、ライン圧油路73からのライン圧PLを減圧制御により調圧した変速圧をセカンダリ圧油路79に導く。
【0026】
前記CVTコントロールユニット8は、スロットル開度等に応じた目標ライン圧を得る制御指令をライン圧ソレノイド72に出力するライン圧制御、車速やスロットル開度等に応じて目標変速比を得る制御指令をプライマリ油圧ソレノイド75及びセカンダリ油圧ソレノイド78に出力する変速油圧制御、前進クラッチ31と後退ブレーキ32の締結/解放を制御する前後進切替制御、ロックアップクラッチ20の締結/解放を制御するロックアップ制御、等を行う。このCVTコントロールユニット8には、プライマリ回転センサ80、セカンダリ回転センサ81、セカンダリ油圧センサ82、油温センサ83、インヒビタースイッチ84、ブレーキスイッチ85、アクセル開度センサ86、プライマリ油圧センサ87、ライン圧センサ89、等からのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。また、エンジンコントロールユニット88からはトルク情報を入力し、エンジンコントロールユニット88へはトルクリクエストを出力する。
【0027】
[ベルトスリップ制御構成]
図4は、実施例1の制御装置におけるベルトスリップ制御のアルゴリズムを示す制御ブロック図である。以下、
図4に基づき、ベルトスリップ制御構成を説明する。
【0028】
実施例1のベルトスリップ制御のアルゴリズム構成は、
図4に示すように、正弦波加振指令部91と、実セカンダリ油圧検出部92と、実変速比検出部93と、バンドパスフィルタ94と、バンドパスフィルタ95と、位相差算出部96(位相差算出手段)と、を備えている。加えて、第1調圧弁調圧状態判定部97と、初期位相設定部98(初期位相設定手段)と、スリップ位相差決定部99と、ベルトスリップ状態検知部100(ベルトスリップ状態検知手段)と、セカンダリ油圧補正量決定部101(ベルトスリップ制御手段)と、を備えている。
【0029】
前記正弦波加振指令部91は、ベルトスリップ制御に適した加振周波数と加振振幅を決定し、セカンダリ油圧に決定した周波数と振幅による正弦波油圧振動を加えるように、指令セカンダリ油圧に加える正弦波加振指令を出力する。
【0030】
前記実セカンダリ油圧検出部92は、指令セカンダリ油圧に加えられた正弦波加振指令により油圧振動しているセカンダリ油圧を、セカンダリ油圧センサ82により検出する。
【0031】
前記実変速比検出部93は、プライマリ回転センサ80からのプライマリ回転数とセカンダリ回転センサ81からのセカンダリ回転数の比(=実変速比)を算出することで、油圧振動しているセカンダリ油圧に基づき振動する実変速比を検出する。
【0032】
前記バンドパスフィルタ94は、加振周波数帯域の油圧振動データを通過させるフィルタであり、実セカンダリ油圧検出部92により取得された検出データからセカンダリ油圧の振動成分を抽出する。
【0033】
前記バンドパスフィルタ95は、加振周波数帯域の変速比振動データを通過させるフィルタであり、実変速比検出部93により取得された検出データから実変速比の振動成分を抽出する。
【0034】
前記位相差算出部96は、バンドパスフィルタ94により抽出されたセカンダリ油圧の振動成分と、バンドパスフィルタ95により抽出された実変速比の振動成分と、の位相差を算出する。
【0035】
圧力制御弁における油圧システムでの前記第1調圧弁調圧状態判定部97は、プライマリ油圧センサ87とライン圧センサ89からのセンサ信号に基づき、第1調圧弁74が全開状態(状態B)か、第1調圧弁74が調圧状態(状態C)か、を判定する。メカハイ状態(状態A)では、前記第1調圧弁調圧状態判定部97は、判定を行わない。
なお、流量制御弁における油圧システムでの前記第1調圧弁調圧状態判定部97は、プライマリ油圧センサ87とライン圧センサ89からのセンサ信号に基づき、第1調圧弁74が全閉状態(状態D)か、第1調圧弁74が調圧状態(状態E)か、を判定する。メカハイ状態(状態A)では、前記第1調圧弁調圧状態判定部97は、判定を行わない。
【0036】
前記初期位相設定部98は、第1調圧弁調圧状態判定部97による判定結果に基づき、状態A、Dであれば初期位相=0°、状態Bであれば初期位相=90°、状態Cであれば初期位相=90°〜180°に設定する。
【0037】
前記スリップ位相差決定部99は、位相差算出部96により算出された位相差から、初期位相設定部98により設定された初期位相に置き換えて、ベルトスリップに基づくスリップ位相差を決定する。
【0038】
前記ベルトスリップ状態検知部100は、スリップ位相差決定部99からのスリップ位相差に基づき、ベルトスリップ状態を検知する。このとき、スリップ位相差をそのままベルトスリップ状態として検知しても良い。また、スリップ位相差を、マップ等を用いてベルトスリップ率等に変換し、変換後のベルトスリップ率等をベルトスリップ状態として検知しても良い。
【0039】
前記セカンダリ油圧補正量決定部101は、ベルトスリップ状態検知部100により検知されたベルトスリップ状態に基づき、セカンダリ油圧補正量を決定し、決定したセカンダリ油圧補正量を指令セカンダリ油圧や正弦波加振指令に加える。ここで、セカンダリ油圧補正量は、ベルトスリップ制御中、ベルトスリップ状態がマイクロスリップ状態を維持するように、減算補正量・維持補正量・加算補正量の何れかの量として決定される。
【0040】
[通常制御とベルトスリップ制御の切り替え構成]
図5は、実施例1のCVTコントロールユニット8にて実行されるセカンダリ油圧の通常制御とベルトスリップ制御(=「BSC」)の間での切り替え処理を示すフローチャートである。以下、
図5の各ステップについて説明する。
【0041】
ステップS1では、キーオンによるスタート、あるいは、ステップS2でのBSC不許可の判定、あるいは、ステップS5での通常制御復帰処理に続き、ベルト式無段変速機構4の通常制御を行い、ステップS2へ進む。なお、通常制御中は、BSC作動フラグ=0にセットすると共に、セカンダリ圧F/B禁止フラグをゼロにセットする。
【0042】
ステップS2では、ステップS1での通常制御に続き、下記のBSC許可条件を全て満たすか否かを判定する。YES(全てのBSC許可条件を満たす)の場合、ステップS3へ進み、ベルトスリップ制御(BSC)を行う。NO(BSC許可条件のうち1つでも満たさない条件がある)の場合、ステップS1へ戻り、通常制御を続ける。
ここで、BSC許可条件の一例を下記に示す。
(1) ベルト式無段変速機構4の伝達トルク容量が安定していること(伝達トルク容量の変化率が小さいこと)。
この条件(1)は、例えば、
a. |指令トルク変化率|<所定値
b. |指令変速比変化率|<所定値
という2つの条件成立に基づき判断する。
(2) プライマリプーリ42への入力トルクの推定精度が信頼できる範囲に入っていること。
この条件(2)は、例えば、エンジンコントロールユニット88からのトルク情報(推定エンジントルク)、トルクコンバータ2のロックアップ状態、ブレーキペダルの操作状態、レンジ位置等に基づき判断する。
(3) 所定時間、上記(1),(2)の許可状態を継続すること。
ステップS2では、以上の条件(1),(2),(3)の全ての条件を満たすか否かを判断する。
【0043】
ステップS3では、ステップS2でのBSC許可判定、あるいは、ステップS4でのBSC継続判定に続き、ベルト式無段変速機構4のベルト44への入力を低減し、ベルト44を滑らせることなく、適正なスリップ状態(マイクロスリップ状態)を維持するベルトスリップ制御(
図6、
図7)を行い、ステップS4へ進む。なお、ベルトスリップ制御中は、BSC作動フラグ=1にセットすると共に、セカンダリ圧F/B禁止フラグを“1”にセットする。
【0044】
このステップS3では、ベルトスリップ制御中、ベルトスリップ制御処理として、実セカンダリ油圧を用いて指示セカンダリ油圧を求めるフィードバック制御の禁止処理(ステップS31)と、通常制御への復帰に備えたトルクリミット処理(ステップS32)と、ベルトスリップ制御を行うためのセカンダリ油圧の加振・補正処理(ステップS33:
図6)と、第1調圧弁74の調圧状態にかかわらずベルトスリップ状態の検知精度を確保する初期位相設定処理(ステップS34:
図7)と、が同時進行にて行われる。
【0045】
ステップS4では、ステップS3でのベルトスリップ制御に続き、下記のBSC継続条件を全て満たすか否かを判定する。YES(全てのBSC継続条件を満たす)の場合、ステップS3へ戻り、ベルトスリップ制御(BSC)をそのまま継続する。NO(BSC継続条件のうち1つでも満たさない条件がある)の場合、ステップS5へ進み、通常制御復帰処理を行う。
ここで、BSC継続条件の一例を下記に示す。
(1) ベルト式無段変速機構4の伝達トルク容量が安定していること(伝達トルク容量の変化率が小さいこと)。
この条件(1)は、例えば、
a. |指令トルク変化率|<所定値
b. |指令変速比変化率|<所定値
という2つの条件成立に基づき判断する。
(2) プライマリプーリ42への入力トルクの推定精度が信頼できる範囲に入っていること。
この条件(2)は、例えば、エンジンコントロールユニット88からのトルク情報(推定エンジントルク)、トルクコンバータ2のロックアップ状態、ブレーキペダルの操作状態、レンジ位置等に基づき判断する。
以上の条件(1),(2)を共に満たすか否かを判断する。すなわち、BSC許可条件とBSC継続条件の差異は、BSC継続条件にはBSC許可条件のうち(3)の継続条件が無いことである。
【0046】
ステップS5では、ステップS4でのBSC継続条件のうち1つでも満たさない条件があるとの判断に続き、ベルトスリップ制御から通常制御へ復帰するときのベルト44の滑りを防止する通常制御復帰処理を行い、処理終了後、ステップS1へ戻り、通常制御へ移行する。
【0047】
このステップS5では、BSC継続中止から通常制御が開始されるまでのベルトスリップ制御から通常制御への復帰中、通常制御復帰処理として、実セカンダリ油圧を用いて指示セカンダリ油圧を求めるフィードバック制御の復帰処理(ステップS51)と、通常制御への復帰に向かうトルクリミット処理(ステップS52)と、ベルトスリップ制御のためのセカンダリ油圧の加振・補正のリセット処理(ステップS53)と、変速速度を規制する変速規制処理(ステップS54)と、が同時進行にて行われる。
【0048】
[ベルトスリップ制御中のセカンダリ油圧制御構成]
図6は、実施例1のCVTコントロールユニット8にて実行される切り替え処理でのベルトスリップ制御(BSC)のうちセカンダリ油圧の加振・補正処理(ステップS33)を示すフローチャートである。以下、ベルトスリップ制御中のセカンダリ油圧制御構成をあらわす
図6の各ステップについて説明する。
【0049】
ステップS331では、指令セカンダリ油圧を加振する。すなわち、指令セカンダリ油圧に所定振幅かつ所定周波数の正弦波油圧を重畳し、ステップS332へ進む。
【0050】
ステップS332では、ステップS331での指令セカンダリ油圧の加振に続き、セカンダリ油圧センサ82から実セカンダリ油圧を検出し、プライマリ回転センサ80とセカンダリ回転センサ81からの回転数情報に基づき、実変速比を計算により検出し、ステップS333へ進む。
【0051】
ステップS333では、ステップS332での実セカンダリ油圧と実変速比の検出に続き、実セカンダリ油圧と実変速比のそれぞれにバンドパスフィルタ処理を行い、実セカンダリ油圧と実変速比それぞれの振動成分(正弦波)を抽出し、それらを掛け合わせて乗算し、乗算値にローパスフィルタ処理を行い、振幅と実セカンダリ油圧振動から実変速比振動までの位相差θ(余弦波)にて表される値に変換し、ステップS334へ進む。
ここで、実セカンダリ油圧振幅をA、実変速比振幅をBとすると、
実セカンダリ油圧振動:Asinωt …(1)
実変速比振動:Bsin(ωt+θ) …(2)
で表される。
(1)と(2)を掛け合わせ、積和の公式である
sinαsinβ=-1/2{cos(α+β)−cos(α−β)} …(3)
を用いると、
Asinωt×Bsin(ωt+θ)=(1/2)ABcosθ−(1/2)ABcos(2ωt+θ) …(4)
となる。
上記(4)式において、ローパスフィルタを通すと、加振周波数の2倍成分である(1/2)ABcos(2ωt+θ)が低減され、上記(4)式は、
Asinωt×Bsin(ωt+θ)≒(1/2)ABcosθ …(5)
というように、振幅A,Bと実セカンダリ油圧振動から実変速比振動までの位相差θの式にて表すことができる。
【0052】
ステップS334では、ステップS333での実セカンダリ油圧振動から実変速比振動までの位相差θの算出に続き、
図7に示す初期位相設定処理により設定された初期位相を読み込み、ステップS335へ進む。
【0053】
ステップS335では、ステップS334での初期位相の読み込みに続き、初期位相と算出された位相差θからベルトスリップにより生じたスリップ位相差Sθを算出し、ステップS336へ進む。
【0054】
ステップS336では、ステップS335でのスリップ位相差Sθの算出に続き、スリップ位相差Sθが、0≦Sθ<所定値1(マイクロスリップ領域を示す値)であるか否かを判断する。YES(0≦Sθ<所定値1)の場合はステップS337へ進み、NO(所定値1≦Sθ)の場合はステップS338へ進む。
【0055】
ステップS337では、ステップS336での0≦Sθ<所定値1、つまり、マイクロスリップ領域に到達するまでのベルトスリップが生じていないとの判断に続き、セカンダリ油圧補正量を「−ΔPsec(減少)」とし、ステップS341へ進む。
【0056】
ステップS338では、ステップS336での所定値1≦Sθ、つまり、マイクロスリップ領域以上のベルトスリップが生じているとの判断に続き、スリップ位相差Sθが、0≦Sθ<所定値2(目標スリップ領域)であるか否かを判断する。YES(所定値1≦Sθ<所定値2)の場合はステップS339へ進み、NO(所定値2≦Sθ)の場合はステップS340へ進む。
【0057】
ステップS339では、ステップS338での所定値1≦Sθ<所定値2、つまり、マイクロスリップ領域以上であるが目標スリップ領域未満の適正なベルトスリップ状態であるとの判断に続き、セカンダリ油圧補正量を「0(維持)」とし、ステップS341へ進む。
【0058】
ステップS340では、ステップS338での所定値2≦Sθ(マイクロ/マクロスリップ遷移領域)であるとの判断に続き、セカンダリ油圧補正量を「+ΔPsec(増加)」とし、ステップS341へ進む。
【0059】
ステップS341では、ステップS337、ステップS339、ステップS340でのセカンダリ油圧補正量の設定に続き、基本セカンダリ油圧+セカンダリ油圧補正量を、指令セカンダリ油圧とし、エンドへ進む。
【0060】
[ベルトスリップ制御中の初期位相設定構成]
図7は、実施例1のCVTコントロールユニット8にて実行される切り替え処理でのベルトスリップ制御(BSC)のうち初期位相設定処理(ステップS34)を示すフローチャートである。以下、ベルトスリップ制御中の初期位相設定構成をあらわす各ステップについて説明する。
【0061】
ステップS350では、メカハイ状態(状態A)であるか否かの判断を行う。YES(メカハイ状態)の場合は、ステップS363(状態A)→ステップS364へと進み、ステップS364では、初期位相αを0°にセットし、エンドへ進む。NO(メカハイ以外の状態)の場合は、ステップS351へ進み、ステップS351では、プライマリ油圧センサ87とライン圧センサ89からのセンサ信号を読み込み、ステップS352へ進む。
【0062】
ステップS352では、ステップS351でのセンサ信号の読み込みに続き、第1調圧弁74によるプライマリ圧制御が圧力制御であるか否かを判断する。YES(圧力制御)の場合はステップS353へ進み、NO(流量制御)の場合はステップS358へ進む。
【0063】
ステップS353では、ステップS352でのプライマリ圧制御が圧力制御であるとの判断に続き、ライン圧=プライマリ圧であるか否かを判断する。YES(ライン圧=プライマリ圧)の場合はステップS354(状態B)→ステップS355へと進み、ステップS355では、初期位相βを90°にセットし、エンドへ進む。
【0064】
ステップS353でNO(ライン圧≠プライマリ圧)の場合は、ステップS356(状態C)→ステップS357へと進み、ステップS357では、初期位相γを90°〜180°にセットし、エンドへ進む。
【0065】
すなわち、プライマリ圧制御が圧力制御であり、かつ、ライン圧≠プライマリ圧であることで、第1調圧弁74が調圧状態(状態C)と判定する。第1調圧弁74が調圧状態と判定されると、第1調圧弁74のスプール位置による調圧弁開度(全開側弁開度〜全閉側弁開度)に応じて初期位相γを90°〜180°にセットする。具体的な初期位相γの設定手法としては、例えば、初期位相実験データ等に基づき第1調圧弁74の調圧弁開度に応じた初期位相マップを予め作成しておき、ライン圧とプライマリ圧の差圧等を用いて第1調圧弁74の調圧弁開度を推定する。そして、調圧弁開度推定値と、初期位相マップと、を用い、第1調圧弁74の調圧弁開度に応じた初期位相γを設定する。
【0066】
ステップS358では、ステップS352でのプライマリ圧制御が流量制御であるとの判断に続き、流量制御の流量制御弁が全閉であるか否かを判断する。YES(全閉)の場合はステップS359(状態D)→ステップS360へと進み、ステップS360では、初期位相αを0°にセットし、エンドへ進む。
【0067】
ステップS358でNO(全閉以外の弁開度であり調圧状態あるいは全開状態)の場合は、ステップS361(状態E)→ステップS362へと進み、ステップS362では、初期位相βを90°にセットし、エンドへ進む。
【0068】
次に、作用を説明する。
実施例1のベルト式無段変速機CVTの制御装置における作用を、「BSC許可判定作用とBSC継続判定作用」、「ベルトスリップ制御作用(BSC作用)」、「BSC中のセカンダリ油圧のフィードバック制御禁止作用」、「位相差検知によるBSCの技術背景」、「BSC中の初期位相設定作用」に分けて説明する。
【0069】
[BSC許可判定作用とBSC継続判定作用]
走行中、ベルトスリップ制御(BSC)の走行区間をできる限り長く確保することが燃費性能の向上に繋がる。以下、これを反映するBSC許可判定作用とBSC継続判定作用について説明する。
【0070】
車両走行を開始すると、
図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、ステップS2でのBSC許可判定条件の全てを満足しない限り、ステップS1→ステップS2へと進む流れが繰り返され、通常制御が維持される。すなわち、ステップS2でのBSC許可判定条件の全てを満足することが、BSC制御の開始条件とされる。
【0071】
ここで、実施例1でのBSC許可条件について下記に述べる。
(1) ベルト式無段変速機構4の伝達トルク容量が安定していること(伝達トルク容量の変化率が小さいこと)。
この条件(1)は、例えば、
a. |指令トルク変化率|<所定値
b. |指令変速比変化率|<所定値
という2つの条件成立に基づき判断する。
(2) プライマリプーリ42への入力トルクの推定精度が信頼できる範囲に入っていること。
この条件(2)は、例えば、エンジンコントロールユニット88からのトルク情報(推定エンジントルク)、トルクコンバータ2のロックアップ状態、ブレーキペダルの操作状態、レンジ位置等に基づき判断する。
(3) 所定時間、上記(1),(2)の許可状態を継続すること。
ステップS2では、以上の条件(1),(2),(3)の全ての条件を満たすか否かを判断する。
【0072】
したがって、通常制御中、ベルト式無段変速機構4の伝達トルク容量が安定していて、かつ、プライマリプーリ42への入力トルクの推定精度が信頼できる範囲に入っている状態が、所定時間継続すると、ベルトスリップ制御の開始が許可される。
【0073】
このように、変速比範囲条件を含まないBSC許可条件の全てを満足することにより、ベルトスリップ制御の開始が許可されるため、ロー変速比側であるかハイ変速比側であるかにかかわらず、トルク変化や変速比変化が小さく安定している走行領域であればベルトスリップ制御を開始することができる。
【0074】
そして、ステップS2でBSC許可判定がなされると、ステップS3へ進み、ベルト式無段変速機構4のベルト44への入力を低減し、ベルト44を滑らせることなく、適正なスリップ状態を保つベルトスリップ制御が行われる。そして、ステップS3でのベルトスリップ制御に続き、次のステップS4では、BSC継続条件を全て満たすか否かが判定され、全てのBSC継続条件を満たす限り、ステップS3→ステップS4へと進む流れが繰り返され、ベルトスリップ制御(BSC)が継続される。
【0075】
ここで、実施例1でのBSC継続条件としては、BSC許可条件のうち(1),(2)条件を用いている。つまり、BSC許可条件のうち(3)の所定時間継続条件がBSC継続条件には無い。
このため、ベルトスリップ制御中において、(1),(2)の条件のうち1つの条件でも満足しない状態となったら直ちにベルトスリップ制御を止めて通常制御へ復帰させるため、位相差によるベルトスリップ状態の検知精度が保証されない状態でのベルトスリップ制御の継続を防止することができる。
【0076】
[ベルトスリップ制御作用(BSC作用)]
上記のように、BSC許可判定とBSC継続判定に基づき実行されるベルトスリップ制御は、通常制御時のセカンダリ油圧を低下していき、ベルトクランプ力としてマイクロスリップ状態を維持するクランプ力を保つことで行われる。以下、
図6及び
図8に基づき、これを反映するベルトスリップ制御作用を説明する。
【0077】
ベルトスリップ制御の開始時は、安全率を見積もってベルト滑りのないクランプ力を得るセカンダリ油圧となっている。このため、スリップ位相差Sθが所定値1未満という条件が成立し、
図6のフローチャートにおいて、ステップS331→ステップS332→ステップS333→ステップS334→ステップS335→ステップS336→ステップS337→ステップS341へと進む流れが繰り返され、この流れを繰り返す毎に指令セカンダリ油圧が、SEC油圧補正量である−ΔPsecの補正を受けて低下する。そして、スリップ位相差Sθが所定値1以上になると、スリップ位相差Sθが所定値2になるまでは、
図6のフローチャートにおいて、ステップS331→ステップS332→ステップS333→ステップS334→ステップS335→ステップS336→ステップS338→ステップS339→ステップS341へと進む流れとなり、SEC油圧補正量がゼロとされ、指令セカンダリ油圧が維持される。そして、スリップ位相差Sθが所定値2以上になると、
図6のフローチャートにおいて、ステップS331→ステップS332→ステップS333→ステップS334→ステップS335→ステップS336→ステップS338→ステップS340→ステップS341へと進む流れとなり、指令セカンダリ油圧が、SEC油圧補正量である+ΔPsecの補正を受けて上昇する。
すなわち、ベルトスリップ制御では、スリップ位相差Sθが所定値1以上で所定値2未満という範囲内となるマイクロスリップ状態を維持する制御が行われることになる。
【0078】
図8に示すタイムチャートにより、ベルトスリップ制御を説明する。
まず、時刻t1にて上記(1),(2)のBSC許可条件が成立し、(1),(2)のBSC許可条件成立が継続し((3)のBSC許可条件)、時刻t2に達すると、上記(1),(2)のBSC継続条件のうち、少なくとも一つの条件が不成立となる時刻t2〜時刻t3までの間、BSC作動フラグとSEC圧F/B禁止フラグ(セカンダリ圧フィードバック禁止フラグ)が立てられ、ベルトスリップ制御が行われる。なお、時刻t3の少し前からのアクセル踏み込み操作によりBSC継続条件のうち、少なくとも一つの条件が不成立になると、時刻t3から時刻t4までは、通常制御への復帰制御が行われ、時刻t4以降は、通常制御が行われることになる。
【0079】
このように、ベルトスリップ制御は、アクセル開度特性・車速特性・エンジントルク特性から明らかなように、
図8の矢印Cに示す定常走行判定中において、セカンダリ油圧ソレノイド75へのソレノイド電流補正量特性に示すように、セカンダリ油圧を加振した結果あらわれるセカンダリ油圧の振動成分と変速比の振動成分との位相差θを監視し、電流値を増減させることで行われる。なお、セカンダリ油圧ソレノイド75は、ノーマルオープン(常開)であり、電流値を上昇させるとセカンダリ油圧は逆に低下する。
【0080】
このベルトスリップ制御により、実変速比は、
図8の実変速比特性(Ratio)に示すように、小さな振幅にて振動しているがほぼ一定に維持される。そして、位相差θは、
図8のSEC圧振動とRatio振動との位相差特性に示すように、スリップ率がゼロに近い時刻t2からの時間経過にしたがって、スリップ率が徐々に高まって目標値(目標スリップ率)に収束する特性を示す。そして、セカンダリ油圧は、
図8のSEC油圧特性に示すように、安全率を持った時刻t2からの時間経過にしたがって矢印Gに示すように低下していき、最終的に設計上の最低圧に油圧振幅を加えたものとなり、実最低圧に対しては余裕のある油圧レベルに収束する特性を示す。なお、ベルトスリップ制御が長く継続する場合は、位相差θの目標値(スリップ率の目標値)を保つように、設計上の最低圧+油圧振幅域での実セカンダリ油圧を維持することになる。
【0081】
このように、ベルトスリップ制御によりセカンダリ油圧を低減することによって、ベルト44に作用するベルトフリクションが低下し、このベルトフリクションの低下分、ベルト式無段変速機構4を駆動する駆動負荷が低く抑えられる。この結果、BSC許可判定によるベルトスリップ制御中においては、走行性能に影響を与えることなく、エンジン1の実用燃費性能の向上を図ることができる。
【0082】
[BSC中のセカンダリ油圧のフィードバック制御禁止作用]
ベルトスリップ制御中は実セカンダリ油圧を意図的に加振することで、指令セカンダリ油圧をフィードバック制御により求めると、制御が不安定になったり、制御が発散したりする。以下、これを反映するBSC中のセカンダリ油圧のフィードバック制御禁止作用を説明する。
【0083】
例えば、ベルトスリップ制御中に指示セカンダリ油圧を、実セカンダリ油圧情報を用いたフィードバック制御により求めると、実セカンダリ油圧が含む振動成分により偏差が変動し、この偏差に応じたフィードバック制御量を加算し続けるため、セカンダリ油圧制御が不安定となる。特に、ベルトスリップ制御において、単一周波数で実セカンダリ油圧を加振した場合、フィードバック制御によるセカンダリ油圧が発散する可能性がある。
【0084】
一般的に、実セカンダリ油圧が発散するかどうかは、油圧フィードバック制御、変速制御の周波数応答性、ハード応答性によって決定される。そのため、単一周波数でセカンダリ油圧を加振する場合、油圧フィードバック制御、変速制御の周波数応答を考慮し、加振周波数を設定するか、あるいは、加振周波数に合わせて油圧フィードバック制御、変速制御の周波数応答を決定する必要がある。しかし、何れの手法を採用しても、制御そのものが複雑になってしまう。
【0085】
これに対し、実施例1では、ベルトスリップ制御中、実セカンダリ油圧情報を用いないため、実セカンダリ油圧に振動成分が存在することや意図的に振動成分を含ませることが許容される。言い換えると、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分と実変速比に含まれる振動成分との位相差θを監視することで推定するベルトスリップ状態の推定精度が確保される。特に、実セカンダリ油圧を加振しても、セカンダリ油圧制御に影響を及ぼさないことで、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分と実変速比に含まれる振動成分との位相差θが明確に取得でき、この位相差θを監視することで、ベルトスリップ直前の領域を確実に判定することができる。
【0086】
加えて、実施例1では、ベルトスリップ制御中、セカンダリ油圧制御がフィードバック情報(実セカンダリ油圧情報)を用いないオープン制御とされるため、フィードバック制御によるセカンダリ油圧制御をベルトスリップ制御中に維持する場合のように、制御が不安定になったり、制御が発散したりすることが防止される。
【0087】
さらに、実施例1のセカンダリ油圧制御では、ベルトスリップ制御中、偏差のみをゼロとし、ベルトスリップ制御へ移行する直前までのフィードバック制御量を保持し、保持した一定のフィードバック制御量を用いてセカンダリ油圧のオープン制御を行うようにしている。
【0088】
例えば、ベルトスリップ制御中、フィードバック制御量をゼロとするオープン制御を行うと、ベルトスリップ制御から通常制御へ移行する時点で、定常偏差を含んだ大きな値によるフィードバック制御量が目標セカンダリ油圧に加算されることになり、フィードバック制御量の有無によりセカンダリ油圧に不連続な落差を生じ、油圧落差が大きいと、乗員に違和感を与えるショックになる可能性がある。
【0089】
これに対し、ベルトスリップ制御中、偏差のみをゼロとし、一定のフィードバック制御量を用いてセカンダリ油圧のオープン制御を行うため、
図8の矢印Hに示すように、ベルトスリップ制御から通常制御へ移行する時刻t3の領域にて、セカンダリ油圧が連続性を持って滑らかに上昇するというように、オープン制御からフィードバック制御への復帰時、セカンダリ油圧に落差が生じることにより乗員に違和感を与えることを防止することができる。
【0090】
[位相差検知によるBSCの技術背景]
上記のように、ベルトスリップ状態を実セカンダリ油圧に含まれる振動成分と実変速比に含まれる振動成分の位相差検知により行う場合、BSC許可判定領域をできる限り拡大し、BSCによる走行区間を長く確保したいという要求がある。以下、これを反映する位相差検知によるBSCの技術背景を説明する。
【0091】
まず、ベルトスリップ状態を実セカンダリ油圧に含まれる振動成分と実変速比に含まれる振動成分の位相差検知により行う場合、ベルトスリップ状態の検知精度が低下する状況では、ベルトスリップ制御(BSC)を行うことができない。
ここで、|指令トルク変化率|≧所定値の場合や|指令変速比変化率|≧所定値の場合には、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分や実変速比に含まれる振動成分の振動波形そのものが、トルク変化勾配や変速比変化勾配により引き伸ばされて消える方向になるため、ベルトスリップ状態の検知精度の低下原因になる。
したがって、BSCは、トルク変化や変速比変化が少ない安定した定常走行領域で許可されるようになっている。そして、実質的なBSCの開始判定においては、トルク変動が比較的小さいロード/ロード付近の変速比変化が小さい高車速・高速段(ハイ変速比側)で低スロットル開度などの条件が含まれる。このため、トルク変化や変速比変化が少ない安定した定常走行領域であっても、最ハイ変速比及びその近傍の変速比で、BSCが許可されるのみで、これ以外の領域では、トルク変化や変速比変化が少ない安定した定常走行状態であっても、BSCが不許可となっていた。
このように、BSCが許可される走行領域が限られるということは、燃費低減効果が薄れるし、BSCも安定しない、という課題がある。
【0092】
そして、BSCが許可される走行領域が限られるということは、BSCが不許可となる走行条件として、トルク変化や変速比変化が大きく安定しない過渡走行条件以外の原因を持つことを示唆している。そこで、過渡走行条件以外では、どのような条件でベルトスリップ状態の検知精度が低下するのかを詳しく分析したところ、
・BSC中に感知する実変速比の振動成分の位相が、条件によって変化する。
・この条件とは、実変速比の振動成分の1つであるプライマリ側の調圧状態によるものである。
・このプライマリの調圧状態により変速応答に違いがあり、このために実変速比の振動成分の振幅起点(初期位相と呼ぶ)に違いが生ずる。
ことが解明された。
このことは、トルク変化や変速比変化が大きく安定しない過渡走行条件とは別に、初期位相を原因とし、ベルトスリップ状態の検知精度が低下することで、BSC許可走行領域を狭くせざるを得ない理由となっていることが明らかになった。
【0093】
次に、何故、初期位相が生ずるかのメカニズムについて解析結果を説明する。
BSCでは、セカンダリ側の第2調圧弁77とセカンダリプーリ43の間にセカンダリ油圧センサ82を設け、第2調圧弁77を微動させることで加振させる。
この加振によりセカンダリプーリ43の推力変化を及ぼすこととなり、この推力変化は、プライマリ側の推力とのバランスに影響する。よって、指示変速比を維持するためには、プライマリ側の推力もセカンダリ側の推力に応動して変化させる必要があり、プライマリ側の推力変化に応じたプライマリ圧Ppriとなるように第1調圧弁74を調圧する。つまり、プライマリ圧Ppriを調圧する第1調圧弁74が指令プライマリ圧に応じたバランス圧となるようにフィードバック制御する。このフィードバック制御は、第1調圧弁74の開度変更を伴うことで、第1調圧弁74とプライマリプーリ42の油圧アクチュエータとの間で流量変動が生ずる。このプライマリ油圧回路の流量変動に伴って、プライマリプーリ42のスライドプーリ42bが軸方向に移動・ストロークし、ベルト44とプライマリプーリ42の接触半径が変動する変速比変動になる。
このように、BSC中の実変速比に含まれる振動成分には、セカンダリ油圧Psecの加振によりセカンダリプーリ43のスライドプーリ43bが軸方向に移動・ストロークすることで生じる変速比振動成分に、プライマリプーリ側での流量変動に応答する変速比振動成分が重畳することになる。この結果、第1調圧弁74による調圧状態のとき、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分の初期位相に対して、実変速比に含まれる振動成分の初期位相が遅れることになり、初期位相が生じる。
【0094】
[BSC中の初期位相設定作用]
上記のように、初期位相をベルトスリップ状態の検知精度の低下原因とし、BSC許可走行領域が狭くしている以上、この初期位相による影響を排除する初期位相対策が必要である。
ここで、圧力制御弁における油圧システムでの第1調圧弁調圧状態判定部97は、プライマリ油圧センサ87とライン圧センサ89からのセンサ信号に基づき、第1調圧弁74が全開状態(状態B)か、第1調圧弁74が調圧状態(状態C)か、を判定する。メカハイ状態(状態A)では、第1調圧弁調圧状態判定部97は、判定を行わない。
また、流量制御弁における油圧システムでの第1調圧弁調圧状態判定部97は、プライマリ油圧センサ87とライン圧センサ89からのセンサ信号に基づき、第1調圧弁74が全閉状態(状態D)か、第1調圧弁74が調圧状態(状態E)か、を判定する。メカハイ状態(状態A)では、第1調圧弁調圧状態判定部97は、判定を行わない。
このように、圧力制御弁における油圧システムと流量制御弁における油圧システムとのシステム違いがあるが、以下、
図7、
図9〜
図11に基づき、これを反映する圧力制御弁における油圧システムでのBSC中の初期位相設定作用を説明する。
【0095】
上記のように、第1調圧弁74による調圧状態のとき初期位相が生じるが、この初期位相は、非調圧状態での変速応答と調圧状態での変速応答に違いが生じるため、変速応答に違いに応じて違いが出る。そして、変速応答に違いが出る第1調圧弁74の調圧モードとしては、
図9及び
図10に示すように、第1調圧弁全開状態(B)と第1調圧弁調圧状態(C)とメカハイ状態(A)がある。
【0096】
メカハイ状態(A)とは、
図9に示すように、セカンダリプーリ43のスライドプーリ43b、もしくは、プライマリプーリ42のスライドプーリ42bが、ストロークできないメカハイ変速比に達している状態をいう。
このメカハイ状態(A)では、
図7のフローチャートにおいて、ステップS350→ステップS363→ステップS364へと進み、ステップS364では、初期位相αが0°にセットされる。
このメカハイ状態(A)で初期位相αを0°にセットする理由は、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分の初期位相に対して、実変速比に含まれる振動成分の初期位相が、ほぼ同位相となることによる。なお、メカハイ変速比状態においては、ベルト張力変動による変形のみが影響因子になる。
【0097】
第1調圧弁全開状態(B)とは、第1調圧弁74を全開固定状態にしているときをいう。この第1調圧弁全開状態(B)では、
図7のフローチャートにおいて、ステップS350→ステップS351→ステップS352→ステップS353→ステップS354→ステップS355へと進む。そして、ステップS355では、初期位相βが90°にセットされる。
この第1調圧弁全開状態(B)で初期位相βを90°にセットする理由は、第1調圧弁74による全開解放(プライマリ圧Ppri=ライン圧PL)により、ライン圧PLとプライマリ圧Ppriの間でフィードバック流量変化が無いため、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分の位相に対して、実変速比に含まれる振動成分の位相が、単純な一次応答遅れになることによる。
【0098】
第1調圧弁調圧状態(C)とは、
図9に示すように、ベルト式無段変速機構4の第1調圧弁74によりプライマリ圧Ppriを調圧状態にしているときをいう。
この第1調圧弁調圧状態(C)では、
図7のフローチャートにおいて、ステップS350→ステップS351→ステップS352→ステップS353→ステップS356→ステップS357へと進み、ステップS357では、初期位相γが90°〜180°にセットされる。
この第1調圧弁調圧状態(C)で初期位相γを90°〜180°にセットする理由は、第1調圧弁74による調圧(プライマリ圧Ppri<ライン圧PL)により、ライン圧PLとプライマリ圧Ppriの間でフィードバック流量変化が生じるため、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分の位相に対して、実変速比に含まれる振動成分の位相が、第1調圧弁全開状態(B)よりも応答遅れが大きくなる。そして、応答遅れ量は、第1調圧弁74のスプール位置による調圧弁開度(全開側弁開度〜全閉側弁開度),油温,管路オリフィス径,等により異なることで、初期位相γを、第1調圧弁74の調圧弁状態に応じてセットする必要があることによる。
なお、3つの調圧モードでの初期位相α,β,γの大きさの関係は、
図11に示すように、メカハイ状態(A)<第1調圧弁全開状態(B)<第1調圧弁調圧状態(C)という関係にある。
【0099】
ここで、第1調圧弁74による調圧モード以外の変速応答に影響させる因子について説明を加えると、変速比を一定と考えたときセカンダリ圧加振による推力変化量はほぼ一定と考えられる。しかし、ハイ側変速比、ロー側変速比、ライン圧、油温、等により変速応答に対する影響が多少異なる。よって、これらの影響因子を考慮し、初期位相を補正することで、より精度の高い初期位相をセットすることができる。なお、最ハイ変速比のときは、変速比変動がなく、油圧調圧状態の影響を受けないので変速応答性に関係なく固定となるため、第1調圧弁全閉状態と同様に同位相となる。
【0100】
上記のように、実施例1では、実セカンダリ油圧の油圧初期位相と実変速比の変速比初期位相の差である初期位相を、第1調圧弁74による実プライマリ油圧の調圧状態の判定に基づき設定する構成を採用した。
すなわち、ベルトスリップが無い初期状態において発生する初期位相が、ベルトスリップ状態の検知精度を低下させる原因の一つになることを解明した。そして、この初期位相は、第1調圧弁74によるプライマリ油圧Ppriの調圧により発生し、かつ、プライマリ油圧Ppriの調圧状態により初期位相の大きさが異なることを知見した。
したがって、
図6のフローチャートにおいて、初期位相α,β,γを含んで算出された位相差θを、実プライマリ油圧の調圧状態の判定に基づき設定された初期位相α,β,γにより補正することで、補正後の位相差(=スリップ初期位相Sθ)は、プライマリ油圧Ppriの調圧状態を原因とする初期位相分を排除した後のベルトスリップにより生じるスリップ位相差分となる。
このため、プライマリ油圧Ppriの調圧状態(=変速比状態)にかかわらずベルトスリップ状態が精度良く検知されることで、ベルトスリップ状態の検知精度に依存するBSCが安定する。そして、BSCを許可する変速比範囲条件が緩和され、
図9に示すように、領域A,B,Cを併せたロー変速比からハイ変速比までの範囲を許可範囲とするように、BSCの許可領域の拡大が図られる。
このように、ベルトスリップ状態の検知精度を低下させる原因の一つである初期位相α,β,γを、実プライマリ油圧の調圧状態の判定に基づき精度良く取得する構成としたことで、BSCの安定化と、BSCの許可領域拡大と、の両立が図られる。この結果、ベルトフリクションを抑えるBSCを実行しながら走行する区間が延長され、BSCで狙っている燃費低減効果の実効が達成される。
【0101】
実施例1では、初期位相設定の際、第1調圧弁74により実プライマリ油圧を調圧している調圧状態のとき、非調圧状態のときの初期位相α,βに比べ、初期位相γを大きく設定する構成を採用した。
すなわち、初期位相は、ライン圧PLとプライマリ圧Ppriの間でのフィードバック流量変化に依存するため、フィードバック流量変化がある第1調圧弁74による調圧状態と、フィードバック流量変化が無い第1調圧弁74による非調圧状態と、に大別できる。したがって、調圧状態のときの初期位相γを、非調圧状態のときの初期位相α,βに比べて大きく設定することで、第1調圧弁74が調圧状態であるか非調圧状態であるかにかかわらず、ベルトスリップ状態の検知精度が確保される。
【0102】
実施例1では、初期位相設定の際、第1調圧弁74により実プライマリ油圧を調圧していない非調圧状態を、第1調圧弁全閉状態(A)と第1調圧弁全開状態(B)に分けたとき、
メカハイ状態(A)<第1調圧弁全開状態(B)<第1調圧弁調圧状態(C)
の関係にて初期位相α,β,γの大きさを設定する構成を採用した。
すなわち、第1調圧弁74の非調圧状態には、ライン圧PLとプライマリ圧Ppriの遮断により一切の流量変化が無い全閉状態と、油路連通によりプライマリ圧Ppriがライン圧PLと一致するがフィードバック流量変化が無い全開状態と、の2つのモードがある。
したがって、非調圧状態のとき、全閉状態の初期位相αに比べて全開状態の初期位相βを大きく設定することで、第1調圧弁74が非調圧状態であるとき、全閉状態か全開状態かにかかわらず、ベルトスリップ状態の検知精度が確保される。
【0103】
実施例1では、初期位相設定の際、メカハイ状態(A)のとき初期位相αを0°に設定し、第1調圧弁全開状態(B)のとき初期位相βを90°に設定し、第1調圧弁調圧状態(C)のとき初期位相γを第1調圧弁74の調圧弁開度に応じて90°〜180°の範囲に設定する構成を採用した。
すなわち、メカハイ状態(A)のときには、ライン圧PLとプライマリ圧Ppriの遮断により一切の流量変化が無く、流量変化による初期位相の発生がない。第1調圧弁全開状態(B)のときには、油路連通によりプライマリ圧Ppriがライン圧PLと一致するがフィードバック流量変化が無く、流量変化による初期位相は単純な一次遅れになる。第1調圧弁調圧状態(C)のときには、フィードバック流量変化が第1調圧弁74の調圧弁開度に応じて発生する。
したがって、第1調圧弁74の調圧状態を3つの調圧モードに分け、3つの調圧モード毎に初期位相α,β,γをそれぞれ設定することで、第1調圧弁74のあらゆる調圧モードにおいて、ベルトスリップ状態の検知精度が確保される。
【0104】
実施例1では、初期位相設定の際、第1調圧弁73の調圧状態を、ライン圧センサ89からのライン圧PLと、プライマリ油圧センサ87からのプライマリ油圧Ppriのセンサ検出値に基づいて判定する構成を採用した。
すなわち、第1調圧弁73の調圧状態のうち、特に、第1調圧弁調圧状態(C)のときに調圧弁開度を判別する必要がある。これに対し、ライン圧センサ89やプライマリ油圧センサ87は、システムに既存のセンサであり、第1調圧弁73のスプールストロークセンサ等の新たなセンサを追加することがない。また、ライン圧レベルと差圧の大きさを監視することで、第1調圧弁73の調圧弁開度を精度良く判別できる。
したがって、システムに既存のセンサからのセンサ検出値を用いて第1調圧弁73の調圧状態を判定することで、第1調圧弁73の調圧状態が、安価に、かつ、調圧弁開度を含めて精度良く判別される。
【0105】
次に、効果を説明する。
実施例1のベルト式無段変速機CVTの制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0106】
(1) 駆動源(エンジン1)から入力するプライマリプーリ42と、駆動輪6,6へ出力するセカンダリプーリ43と、前記プライマリプーリ42と前記セカンダリプーリ43に掛け渡したベルト44と、前記プライマリプーリ42への実プライマリ油圧を調圧する第1調圧弁74と、前記セカンダリプーリ43への実セカンダリ油圧を調圧する第2調圧弁77と、を備えたベルト式無段変速機CVTの制御装置において、
ベルトスリップ制御許可条件の成立時、前記セカンダリプーリ43へのセカンダリ油圧を加振し、実セカンダリ油圧に含まれる振動成分と実変速比に含まれる振動成分との位相差θを算出する位相差算出手段(位相差算出部96)と、
実セカンダリ油圧の振動成分特性の振幅起点である油圧初期位相と、実変速比の振動成分特性の振幅起点である変速比初期位相と、の差である初期位相α,β,γを、前記第1調圧弁74による実プライマリ油圧の調圧状態の判定に基づき設定する初期位相設定手段(初期位相設定部98)と、
前記位相差算出手段(位相差算出部96)により算出された位相差θを前記初期位相設定手段(初期位相設定部98)により設定された初期位相α,β,γにより補正することでベルトスリップ状態を検知するベルトスリップ状態検知手段(ベルトスリップ状態検知部100)と、
前記ベルトスリップ状態検知手段(ベルトスリップ状態検知部100)によるベルトスリップ状態の検知に基づき、前記ベルト44が両プーリ42,43に対してマイクロスリップ状態を維持するように指令セカンダリ油圧を決め、実セカンダリ油圧を前記第2調圧弁77により調圧するベルトスリップ制御手段(セカンダリ油圧補正量決定部101)と、
を有する(
図4)。
このように、ベルトスリップ状態の検知精度を低下させる原因の一つである初期位相α,β,γを、実プライマリ油圧の調圧状態の判定に基づき精度良く取得する構成としたことで、ベルトスリップ制御(BSC)の安定化と、ベルトスリップ制御(BSC)の許可領域拡大と、の両立を図ることができる。
【0107】
(2) 前記初期位相設定手段(初期位相設定部98)は、前記第1調圧弁74により実プライマリ油圧を調圧している調圧状態のとき、非調圧状態のときの初期位相α,βに比べ、初期位相γを大きく設定する。
このため、(1)の効果に加え、第1調圧弁74が調圧状態であるか非調圧状態であるかにかかわらず、ベルトスリップ状態の検知精度を確保することができる。
【0108】
(3) 前記初期位相設定手段(初期位相設定部98)は、前記第1調圧弁74により実プライマリ油圧を調圧している第1調圧弁調圧状態(C)と、前記第1調圧弁74により実プライマリ油圧を調圧していない非調圧状態を、メカハイ状態(A)と第1調圧弁全開状態(B)に分けたとき、
メカハイ状態(A)<第1調圧弁全開状態(B)<第1調圧弁調圧状態(C)
の関係にて初期位相α,β,γの大きさを設定する。
このため、(2)の効果に加え、第1調圧弁74が非調圧状態であるとき、全閉状態か全開状態かにかかわらず、ベルトスリップ状態の検知精度を確保することができる。
【0109】
(4) 前記初期位相設定手段(初期位相設定部98)は、メカハイ状態(A)のとき初期位相αを0°に設定し、第1調圧弁全開状態(B)のとき初期位相βを90°に設定し、第1調圧弁調圧状態(C)のとき初期位相γを前記第1調圧弁74の調圧弁開度に応じて90°〜180°の範囲に設定する。
このため、(3)の効果に加え、第1調圧弁74の3つの調圧モード毎に初期位相α,β,γをそれぞれ設定することで、第1調圧弁74のあらゆる調圧モードにおいて、ベルトスリップ状態の検知精度を確保することができる。
【0110】
(5) 前記第1調圧弁74の上流側にライン圧センサ89を設け、前記第1調圧弁74の下流側にプライマリ油圧センサ87を設け、
前記初期位相設定手段(初期位相設定部98)は、前記第1調圧弁74の調圧状態を、ライン圧PLとプライマリ油圧Ppriのセンサ検出値に基づいて判定する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、第1調圧弁73の調圧状態を、既存のセンサを用いて安価に、かつ、調圧弁開度を含めて精度良く判別することができる。
【0111】
以上、本発明のベルト式無段変速機の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0112】
実施例1では、加振する手段として、指示セカンダリ油圧に適切な振動成分を与える例を示したが、ソレノイド電流値に適切な振動成分を与えるような例であっても良い。
【0113】
実施例1では、ベルト式無段変速機を搭載したエンジン車両への適用例を示したが、ベルト式無段変速機を搭載したハイブリッド車両やベルト式無段変速機を搭載した電気自動車等に対しても適用することができる。要するに、第1調圧弁と第2調圧弁を用いて変速制御を行うベルト式無段変速機を搭載した車両であれば適用できる。