(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745732
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ドライビングダイナミクスコントロールのための装置とドライビングダイナミクスセンサの位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/34 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2002-521071(P2002-521071)
(86)(22)【出願日】2001年8月21日
(65)【公表番号】特表2004-506572(P2004-506572A)
(43)【公表日】2004年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2001009656
(87)【国際公開番号】WO2002016179
(87)【国際公開日】20020228
【審査請求日】2008年8月15日
【審判番号】不服2013-17186(P2013-17186/J1)
【審判請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】100 41 206.8
(32)【優先日】2000年8月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】100 51 811.7
(32)【優先日】2000年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】101 17 640.6
(32)【優先日】2001年4月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ブルクドルフ・ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト・カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】フォルツ・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ツィデク・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハイゼ・アンドレアス
【合議体】
【審判長】
森川 元嗣
【審判官】
冨岡 和人
【審判官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第98/43470(WO,A2)
【文献】
特開平11−278225(JP,A)
【文献】
特開平11−115717(JP,A)
【文献】
特開平10−213437(JP,A)
【文献】
特開平6−324070(JP,A)
【文献】
特開昭62−12810(JP,A)
【文献】
特表平4−504902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ブロック(19)と電子コントローラユニット(1)を備え、少なくともブレーキ介入のための電子部品(38)が前記電子コントローラユニット内に配置され、この電子部品がヨーレイトセンサおよび/または加速度センサのような少なくとも1個のドライビングダイナミクスセンサ(3,14,47)の信号を処理し、少なくとも電気油圧式弁が前記弁ブロック内に配置されている、自動車のエンジンルーム内に配置されたドライビングダイナミクスコントロールのための装置において、
少なくとも1個のヨーレイトセンサが電子コントローラユニットまたは弁ブロックに一体化され、ヨーレイトセンサが電子コントローラユニットのケーシングに機械的に連結されているかあるいはこのケーシングによって取り囲まれており、調節手段が設けられ、この調節手段によって、車両軸線に対する前記ヨーレイトセンサの位置誤差が補正可能であり、前記調節手段が電子補正手段であり、電子的なろ波手段が設けられ、このろ波手段が、前記ヨーレイトセンサに対する、例えば振動等のような不所望な加速度の影響を抑制することを特徴とする装置。
【請求項2】
ヨーレイトセンサが共通の1個の支持体(39)上に配置され、この支持体が電子コントローラユニット(8)の部品のための支持体に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
ヨーレイトセンサが少なくとも充分に密閉されたセンサケーシング(3)内に配置されていることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
ヨーレイトセンサのためのセンサケーシングまたは支持体が、コントローラユニットのケーシングまたはコントローラユニットの部品支持体の収容手段(4)内に挿入され、この収容手段がヨーレイトセンサを予め定めた組み込み位置に収容することができることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
ヨーレイトセンサのためのセンサケーシングまたは支持体が、ドライビングダイナミクスコントロールのための装置内で緩衝要素(5,44)によって弾性的にかつ機械的に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
コントローラユニットのセンサケーシングおよび/またはケーシングおよび/またはコントローラユニット内の印刷回路基板が、少なくともセンサの範囲に電気的なシールド(9,10)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
位置の誤差を調節するための電子補正手段が補正アルゴリズムであり、この補正アルゴリズムが装置の電子演算装置内で行われることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
ヨーレイトセンサが、弁ブロックまたはポンプモータの振動に対して保護するための少なくとも1個の振動減衰器(22)を介して、弁ブロックから分離されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のドライビングダイナミクスコントロールのための装置に一体化されている、ヨーレイトセンサおよび/または加速度センサのような1個または複数のドライビングダイナミクスセンサを位置決めするための方法であって、前記装置が弁ブロック(19)と電子コントローラユニット(1)を備え、少なくともブレーキ介入のための電子部品が前記コントローラユニット内に配置され、この電子部品がドライビングダイナミクスセンサの信号を処理し、自動車に組み込んだ後で、感知される前記ドライビングダイナミクスセンサの軸線が、自動車軸線に対する位置の誤差を有し得る(実際のセンサ組み込み軸線)、上記方法において、
センサを組み込んだ装置を、1本または複数の所定の軸線回りにおよび/または所定の方向に回転および/または加速し、
この軸線回りの回転中および/またはこの軸線方向の加速中にセンサ信号を測定し、
測定されたセンサ信号を理論的に予想されるセンサ信号と比較することによって、実際のセンサ組み込み軸線と所定のセンサ組み込み軸線の間の角度差と、実際のセンサ組み込み方向と所定のセンサ組み込み方向の間の角度差とを演算し、
ヨーレイトセンサを組み込んだ後で、演算された角度差に基づいて補正手段によって配向の誤差を補正することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は請求項1の前提部分に記載した装置と、請求項
9の前提部分に記載した方法に関する。
【0002】
独国特許第19755431号明細書はドライビングダイナミクスコントロールシステムを開示している。このドライビングダイナミクスコントロールシステムの場合、ヨーレイトセンサと加速度センサを含むドライビングダイナミクスセンサのためのセンサモジュールは、油圧制御装置から分離して配置された電子ケーシング内に配置されている。このケーシング内で、センサ信号の処理が行われ、油圧ユニットの制御のために必要な信号が発生する。油圧制御ユニットはシステムバスを介して電子ケーシングに接続されている。
【0003】
分離されたケーシング内にドライビングダイナミクスセンサを配置したドライビングダイナミクスコントロールのための他の装置は独国特許出願公開第19847667号明細書に記載されている。この明細書では、ドライビングダイナミクスセンサはブレーキコントロールのためのCPUと共に、車両中央の範囲内のケーシング内に設けられている。これに対して、弁ドライバを備えたパワーエレクトロニクス機器はブレーキコントローラに一体化されている。このブレーキコントローラはインターフェースを介してCPUに接続されている。
【0004】
“分割されたインテリジェンス”を有する上記装置のほかに、ドライビングダイナミクスコントール(ESP)のためおよびABS,TCS等のために、一体化された制御機器が多重使用される。この制御機器は省スペース的であり、特に低コストで製作可能である。この種の制御機器の特徴は、電子コントローラユニットと、自動車のエンジンルーム内に配置された弁ブロックとからなるモノリスユニットを備えたコンパクトな構造である。車輪回転速度センサ、充填レベルセンサ、電磁式油圧弁、リレー等のようなセンサといろいろな種類のアクチュエータに連結されたコントローラユニットは実質的に、ブレーキを制御または調整するためおよびエンジンマネジメントに介入する働きをする。プラグシステムを介してコントローラユニットに接続された弁ブロックは、ブレーキシリンダを制御するための磁気操作可能な油圧弁と、フランジ止めされたポンプモータを備えている。
【0005】
加速度センサと少なくとも1個のヨーレイトセンサを備えたドライビングダイナミクスセンサ装置は今日では、車両の重心の範囲において、個々の部品の形であるいは一体化された制御機器から分離されて配置された、固有のプロセッサインテリジェンスを有するモジュール(センサクラスタ)内にまとめて収納されている。
【0006】
しかし、エラー監視およびバス処理のための付加的なマイクロプロセッサと共に別個のケーシング内にドライビングダイナミクスセンサを配置することは、最新のブレーキシステムの場合には安全性に対する要求がきびしいので、不利である。例えば別個のセンサモジュール内に配置された付加的に必要なマイクロプロセッサまたは必要な伝達装置が故障することがあり得る。これを排除するために、付加的な安全手段を講じなければならない。他の欠点は、センサクラスタのために、信頼性のある電流供給を行わなければならないことにある。これは同様にコストがかかる。更に、エラーを含むセンサ信号を回避するために、分離されたケーシングを、電磁放射線に対して効果的に遮蔽しなければならない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、信頼性が高く、エラーのないように動作する、ブレーキコントロールおよびドライビングダイナミクスコントロールのための装置を提供することである。
【0008】
この課題は本発明に従い、請求項1記載の装置によって解決される。
【0009】
本発明では、ドライビングダイナミクスセンサの若干、特にすべてが、一体化されたブレーキ制御装置内に収納または固定されている。好ましくは1個または複数のドライビングダイナミクスセンサが電子コントローラユニット内に一体化されている。しかし、ドライビングダイナミクスセンサを例えば弁ブロックの凹部内に配置してもよい。
【0010】
用語ドライビングダイナミクスセンサは本発明では、回転速度センサと加速度センサを含む。この場合、センサの感知軸線はそれぞれ、すべての三次元軸線の方に向けることができる。ドライビングダイナミクスコントロールの場合、自動車の垂直軸線回りの回転速度だけをセンサで検出することが合目的である。従って、ドライビングダイナミクスセンサには、個々の横方向加速度センサまたは縦方向加速度センサが含まれる。回転速度センサによって3つの三次元軸線すべてを感知検出すると特に有利である。後述する調節方法の理由から、1個または複数の回転速度センサを、本発明によるアセンブリにまとめると合目的である。加速度センサは電子コントローラユニットの回路支持体に直接収納可能であるかまたは制御ユニットから分離して他の部品支持体または別個のケーシングに収納可能である。
【0011】
ドライビングダイナミクスセンサは好ましくは共通の1個の支持体上に配置されている。この支持体は電子コントローラユニットの部品のための支持体に電気的に接続されている。
【0012】
ドライビングダイナミクスセンサが少なくとも充分に閉鎖されたセンサケーシング内に収納されていると合目的である。このセンサケーシングは場合によっては付加的な他の電子部品を含むことができる。
【0013】
本発明による好ましい他の実施形は、電子コントローラユニットの部品支持体上に、ドライビングダイナミクスセンサを配置することにある。この方法は、ドライビングダイナミクスセンサの間違った位置決め(方向づけ)を、例えば共通のコントローラユニットの調節によって補正するときに用いられる。
【0014】
装置を運転するために、ドライビングダイナミクスセンサは、車両軸線に関連して設けられた位置に、できるだけ正確に合わせなければならない。すなわち、車両軸線に関連して、センサ要素の軸線を、充分に正確に定めた位置(方向)に取付けなければならない。例えば最も簡単な場合、センサ軸線が車両の縦軸線、横軸線または垂直軸線に一致しなければならない。
【0015】
本発明による装置のための自動製造プロセスにおいて、許容される誤差を狭くして、ドライビングダイナミクスセンサを正しい位置に一体化することは容易ではない。これに対して、許容誤差が拡大され、組立て後の位置誤差が所定の程度甘受されると、製造コストが低減される。
【0016】
そこで、本発明の有利な実施形では、装置に調節手段が設けられている。この調節手段によって、装置の組立て後、ドライビングダイナミクスセンサの位置誤差を実質的に完全に除去することができる。
【0017】
他の実施形は、車両のタイプに応じてブレーキ装置を異なる方向に取付けなければならないという問題を解決する。すべてのタイプの車両のためにできるだけ同じ装置を使用できるようにするために、本発明の他の有利な実施形では、コントローラユニットのケーシングまたは部品支持体に、収容手段が設けられている。この収容手段は、ケーシングおよび/または回路支持体を大幅に変更することなく、ブレーキ制御装置内の予め定めたいろいろな組み込み位置に、ドライビングダイナミクスセンサを取付けることができる。
【0018】
収容手段は好ましくは、スクリーン(格子)の形をした組み込み位置を、特にスクリーンの放射状形状によって設定する。スクリーンは好ましくはコントローラユニットのケーシングの凹部または切欠きとして形成可能である。
【0019】
本発明による電子コントローラユニットは好ましくは、1個または複数のマイクロプロセッサに基づく制御システムを含んでいる。この制御システム内で、ESPとABSのための制御タスクの大部分を実施することができる。
【0020】
センサケーシングまたはドライビングダイナミクスセンサ用支持体と、特に電子部品のための印刷回路基板を備えてドライビングダイナミクスコントロールのための装置との間の電気的な接続は好ましくは弾性的な接触要素によって行われる。しかし、このようなセンサモジュールの接続のために、特にセンサモジュールを収容するプラグソケットの形をした差込み継手を設けることができる。弾性的な接触要素による接触は好ましくは、未公開の独国特許出願第19940461.5号明細書において弁コイルのために既に説明されているような方法で行うことができる。
【0021】
この独国特許出願第19940461.5号明細書によれば、コイルは弾性的な接触要素を介して印刷回路基板に接続される。接触要素は好ましくは圧力および/または力で付勢された接触要素である。この接触要素は対応して形成された印刷回路基板の接点(例えば金属化された面)上に取外し可能に接触する。
【0022】
接触要素は好ましくは、弾性要素または媒体によって付加的に、その位置を接点の方に移動させることができるように配置されている。この場合、対応する要素が同時に接触要素のガイドでもある。
【0023】
接触要素がばねまたは可撓性のフィルム導体であると特に有利である。このばねまたは可撓性のフィルム導体は特に、センサ要素の回路支持体またはコントローラユニットの印刷回路基板に取外し不能に導電的に固定されている。
【0024】
接触要素はコントローラユニットまたはセンサアセブンリのケーシング内に好ましくは軸方向に移動可能に配置されている。
【0025】
印刷回路基板上に配置された接点は好ましくは、印刷回路基板材料上に、平面状の導電性接触領域として形成されている。
【0026】
本発明に接触はドライビングダイナミクスセンサを支持するために特に有利である。なぜなら、これによって、敏感なセンサ要素がソフトにかつショックのないようにそして同時に電気的に確実に固定されるからである。
【0027】
センサケーシングおよび/またはコントローラユニットのケーシングおよび/またはコントローラユニット内の印刷回路基板は好ましくは、少なくともセンサの範囲内に、電気的なシールドを備えている。このようなシールドは特にケーシング材料上の金属的なコーティングによってあるいはケーシング材料内に例えば金属粒子のような吸収材料を入れることによって達成される。
【0028】
シールドのために適した金属コーティングは特に、ケーシング材料または印刷回路基板材料に金属層を被覆形成することによって得られる。この場合、ケーシング材料と印刷回路基板材料は好ましくは導電性でない材料からなっている。
【0029】
金属的なシールドは特に、遮蔽ケーシングスクープ(窪み)が設けられていることによって達成される。この遮蔽ケーシングスクープはケーシングカバーの内面をコーティングすることによってあるいは金属ソケット状部材を挿入することによって生じる。
【0030】
前述のシールドは印刷回路基板のレイアウトを生じるので、ドライビングダイナミクスセンサの周りに実質的に閉鎖されたシールド外周壁が形成される。ケーシングシールドと印刷回路基板シールドの連結が、分離可能な接点によって行われると有利である。
【0031】
電子コントローラの組立てを簡単にするために、印刷回路基板は好ましい実施形に従って圧入接点によって電子コントローラケーシングに接続されている。圧入接点はろう付けしないで印刷回路基板のプリント配線との電気的な接続を行い、迅速かつ確実に機械的に行うことができる。多数の個々の接点と適切に形成されたコントローラケーシングの載置手段によって、印刷回路基板の機械的な固定が、付加的な固定手段なしに、もっぱら既存の圧入接点によってのみ行われる。
【0032】
他の有利な実施形では、調節可能な固定手段は熱で変形可能なホルダー、特に棒である。
【0033】
しかし、ドライビングダイナミクスセンサを振動から保護するために、ドライビングダイナミクスセンサと印刷回路基板、特にセンサの印刷回路基板との電気的な接続は好ましくは、印刷回路基板を貫通する上記の接触要素によってではなく、例えば上記のばね要素によって形成可能である。
【0034】
本発明による装置の好ましい実施形では、電子的なろ波手段(フィルタ手段)が設けられている。このろ波手段は、例えば振動(ポンプモータ、弁操作等によって生じる)のようなドライビングダイナミクスセンサの加速度の不所望な作用を抑制する。電子的なろ波手段は好ましくはアナログまたはデジタルフィルタによって、センサデータを処理することにより実現可能である。ろ波はマイクロコントローラ内でも行うことができる。
【0035】
本発明は更に、例えば製造プロセスによって誤って方向づけられて(位置決めされて)組み込まれたドライビングダイナミクスセンサのセンサデータが、先ず最初に所定の回転の間測定され、測定の結果が誤った方向づけを補正するために使用される、1個または複数のドライビングダイナミクスセンサを方向づけするための請求項
9記載の方法に関する。
すなわち、この方法は、本発明に係るドライビングダイナミクスコントロールのための装置に一体化されている、ヨーレイトセンサおよび/または加速度センサのような1個または複数のドライビングダイナミクスセンサを位置決めするための方法であって、前記装置が弁ブロックと電子コントローラユニットを備え、少なくともブレーキ介入のための電子部品が前記コントローラユニット内に配置され、この電子部品がドライビングダイナミクスセンサの信号を処理し、自動車に組み込んだ後で、感知される前記ドライビングダイナミクスセンサの軸線が、自動車軸線に対する位置の誤差を有し得る(実際のセンサ組み込み軸線)、上記方法において、センサを組み込んだ装置を、1本または複数の所定の軸線回りにおよび/または所定の方向に回転および/または加速し、この軸線回りの回転中および/またはこの軸線方向の加速中にセンサ信号を測定し、測定されたセンサ信号を理論的に予想されるセンサ信号と比較することによって、実際のセンサ組み込み軸線と所定のセンサ組み込み軸線の間の角度差と、実際のセンサ組み込み方向と所定のセンサ組み込み方向の間の角度差とを演算し、ヨーレイトセンサを組み込んだ後で、演算された角度差に基づいて補正手段によって配向の誤差を補正することを特徴とするものである。
【0036】
一般的には、互いに間違って方向づけられ得る次の3つの座標系が重要である。(1)センサで感知される軸線を有するセンサの座標系、(2)弁ブロックとコントローラユニットからなる組立てられた制御装置の座標系、(3)車両の座標系。調節の目的は、コントローラユニットによってドライビングダイナミクスコントロールのために必要なセンサデータが、車両軸線に沿った回転速度または加速度をできるだけ正確に表すことである。
【0037】
上記の方法に従って先ず最初に定められた方法で、定められた軸線回りに回転または移動させられる。この軸線は好ましくは制御装置の組み込み軸線または車両軸線である。
【0038】
本発明に従って検出された誤った位置の補正は好ましくは、本発明による調節手段によって、あるいは電子コントローラユニットの演算装置内の演算ステップ、特にセンサデータを補正するために適したソフトウェアによって行われる。
【0039】
例えば学習相において、間違った位置が演算装置によって自動的に決定され、記憶され、そして装置の運転中の後の相において、学習相で決定された補正値が、誤った位置を補正するために測定されたセンサデータと結合される。
【0040】
更に、ショックや振動(例えばポンプまたは油圧弁によって生じる)をアナログまたはデジタルろ波によってあるいは適当なソフトウェアを用いて、センサ信号から適当な方法でろ波除去すると有利である。それによって、ドライビングダイナミクス的に重要な信号だけが制御アルゴリズムによって処理される。
【0041】
装置が例えば垂直軸線、横方向軸線および縦方向軸線のための1つ以上、特に3個のヨーレイトセンサを備えていると、本発明による方法をきわめて有利に実施することができる。
【0042】
所定の回転中に得られる位置誤差を決定するためのセンサデータは好ましくは、ドライビングダイナミクスセンサによって直接的にあるいは位置誤差の決定のために設けられた付加的なセンサ要素によって生じる。
【0043】
本発明によって、センサを接続するためのケーブルハーネスを省略することができる。それによって、ケーブルハーネスによって生じる多数のエラー源、例えば電気的なプラグ継手における接触不良が回避される。これによって、例えば漏洩電流や部のプラグ連結部の境界抵抗のチェックおよび付加的なマイクロプロセッサ制御監視技術のための、コストのかかる監視回路費用が低減される。
【0044】
他の有利な実施形は、従属請求項と図面に基づく次の説明から明らかになる。
【0045】
図1には、弁ブロック19に取付け可能な電子コントローラユニット1が斜視図a)と側面図b)と平面図c)で概略的に示してある。簡単化するために、弁ブロックは細部(例えば弁、ポンプモータ)を省略して示してある。コントローラユニットのケーシングは、ドライビングダイナミクスセンサを収容するためのスクープ33を支持し、一体化された電気プラグ17を備えている。コントローラユニットのケーシングはねじ31によって弁ブロックに固定される。この場合、コントローラケーシングの適当に形成された凹部内に、位置決めばね32が設けられている。部分図b)に示すように、例えばねじ31′を回転させることによって、弁ブロックに対するコントローラユニットの位置(向き)を調節することができる。軸線34回りの回転は、ねじ直径がねじのためのコントローラケーシングの収容穴とばね32の内径よりも小さく選定されているときに行うことができる。
【0046】
図2の電子コントローラユニットは上述のように、弁ブロックに対して調節可能である。調節装置の一例が部分図b)に示してある。部分図a)のコントローラユニットのコントローラケーシングはカバー29を備え、従ってコントローラユニットは2つの部分からなっている。このカバーには、センサを収容するためのスクープ33が材料一体的に連結されている。ケーシングを二つの部分から形成することにより、カバーとコントローラケーシングの間に、周方向に延びる中間室30
を設けることができる。この中間室によって、カバーとコントローラケーシングの間の調節を行うことができる。調節を終了した後で、位置の固定はカバーとコントローラケーシングの材料一体的な連結によって行うことができる。
【0047】
図3には、ポンプモータ18をフランジ止めした弁ブロック19と、電子コントローラユニット1とからなる一体化された制御装置が示してある。この制御装置はホルダー34によって車体の適当な載置個所に調節可能に固定することができる。弁ブロックと車体の間の向きの調節は好ましくは、ねじ31″と位置決めばね32″によって行うことができる。この場合、ホルダー34は長穴37を備えている。位置決めばねの代わりに、締付けスペーサリングを使用することができる。
【0048】
組み込み位置をチェックするために、本発明による装置は好ましくは組み込みマークを有する。この組み込みマークは特にコントローラケーシングに取付けることができる。更に、コントローラケーシング1が1つまたは複数の穴48を備えていると合目的である。組立てた後で、この穴から例えばねじ回しによって、コントローラケーシング内でセンサをコントローラユニットに対して調節することができる。
【0049】
一体化されたブレーキ装置の他の例が
図4に示してある。ドライビングダイナミクスセンサはサブアセンブリ14にまとめられている。このサブアセンブリはコントローラユニットのケーシングに一体化されている。弁ブロック19からコントローラの方に突出する弁ドーム12は、コントローラユニット内に配置された弁コイル16によって取り囲まれている(磁気プラグ)。弁コイルは弾性的で導電性である取外し可能な接続部材13によって、コントローラ内の印刷回路基板8に接続されている。
【0050】
ポンプモータと弁によってショックと振動が発生し、ドライビングダイナミクスセンサに悪影響を与え得る。ドライビングダイナミクスセンサへのこのショックと振動の伝達は、ドライビングダイナミクスセンサ、コントローラケーシングまたは弁ブロックの緩衝固定部によって低減することができる。図示した例では、弁ブロックがねじ24と緩衝要素22を介してホルダー25に弾性的に懸吊されている。ホルダー25は車体に固定連結されている。ホルダー25は同時に、弁ブロック19を固定する働きをする。この弁ブロックはねじ24′を介してホルダーに振動を減衰しないように固定されている。更に、電子コントローラは中間室15を介して弁ブロックから切り離されている。この中間室は最も簡単な場合には、平面状の中間空間であるが、適当な材料を充填することができる。
【0051】
図5には、センサ構成要素47を備えた本発明による支持体39が示してある。この支持体はコントローラ構成要素38のための印刷回路基板8に調節可能に固定されている。部分図a)において、調節兼保持ねじ40によって所定の限度内で向きを調節することができる。しかし同様に、図示していない釘を印刷回路基板に押し込むことができる。この場合にも、押し込み深さによって間隔を変えることができる。支持体39の下方の範囲において印刷回路基板8上に電子部品を装着すると有利である。センサと印刷回路基板8の間の電気的な接続は弾性的な接触要素41を介して行うことができる。
【0052】
部分図b)は調節兼保持ねじの横断面を示している。ねじのための穴を適当に採寸することにより、印刷回路基板に対して垂直に向いた回転軸線42回りの調節を行うことができる。
【0053】
部分図c)には弾性的な要素が示してある。この要素はねじ40を押し込むことによって支持体39と印刷回路基板8の間で挟持される。弾性的な要素はゴム状の材料44または金属ばねである。これらの材料は同時に導電的な接続を行うことができる。
【0054】
図6において、ドライビングダイナミクスセンサのための支持体39は、圧入接点によって電子コントローラユニットの印刷回路基板8に連結されている。この場合、向き(位置)の調節は異なる圧入レベルによって行うことができる。
【0055】
図7(平面図の部分図a)と横断面図の部分図b))に示した電子コントローラユニット1は、ドライビングダイナミクスセンサのための収容手段を備えている。この収容手段は所定の組み込み位置でのセンサモジュール3の組み込みを可能にする。
図9は部分図a)とb)に従って異なる組み込み位置にセンサモジュール3を挿入したこの実施の形態を示している。センサモジュールは印刷回路基板上に配置されたセンサ構成要素47を備えたセンサケーシング46からなっている。図示した例では、収容手段はコントローラケーシングの星形の凹部である。この凹部には、センサモジュールを所望な向きに応じて、好ましくは緩衝要素5によって弾性的に緩衝して挿入可能である。センサ要素の接触は、弾性的なばね接点要素による弁コイルの接触と同様に行われる。電気的なプラグ17は
図8の実施の形態と異なり、上側に案内されている。
【0056】
図10には、弁ブロック19と電子コントローラユニット1の組立て過程が示してある。組立ての前に、弁コイル11は弁ブロックから突出する図示していない弁ドームに嵌められる。弁コイルには、片側を固定した接触要素13が取付けられる。この接触要素は組立てた後で力を加えることによって分離可能である
、印刷回路基板8上の適当に金属化された面との接続部を形成する。センサモジュールの接触要素6は適当な方法で形成可能である。
【0057】
参照符号9は、好ましくは合成樹脂で作られた電子コントローラユニットのケーシング上の、遮蔽のために設けられた金属化された面を示している。センサモジュール3をほぼ完全に被包する遮蔽部材は、印刷回路基盤の範囲内の条導体材料からなる金属化された面10に接続している。
【0058】
図8において、センサモジュール3は同様に緩衝要素5によって弾性的に支承されている。
図7と異なり、付加的な緩衝要素がセンサモジュールと印刷回路基板8の間に配置されている。センサの接触は弾性的な導電性接続部材、例えば可撓性の導体、結合線、リボンケーブル等を介して行われる。センサモジュールとは反対の印刷回路基板の側において、コントローラユニットのケーシング内には弁コイル11が配置されている。
【0059】
図11の部分図a)には、調節可能な長い固定手段49によって支持体39を印刷回路基板8に固定するための非常に有利な例が示してある。固定手段49は、調節を行うために熱で変形可能な材料からなっている。
【0060】
部分図b)では、印刷回路基板にも連結可能である、熱で変形可能な棒49が、溶融可能な材料からなる連結個所50または接着剤によって支持体39に連結される。この場合、好ましくは棒の端面のピン状の突起51が支持体の適当な穴に差し込まれる。連結個所50が硬化した後で、棒49が加熱されるので、棒は軟化し、材料によって設定された限度内で調節のために変形可能である。部分図c)は棒の側方変形を示し、部分図d)は垂直方向における棒の圧縮を示している。調節過程は棒が冷たくなることによって終了する。それによって、印刷回路基板に対する支持体の調節された位置が固定される。支持体と印刷回路基板の間の必要な電気的な接続は、図示した例では可撓性の条導体によって非常に合目的に実施可能である。
【0061】
図12には、図示していない印刷回路基板8上での支持体39の機械的な組立て方法の一つの例が示してある。先ず最初に、供給装置52によって、支持体39が印刷回路基板に連結された棒49に近づけられる。この棒は例えば図示していない吸引装置によって支持体39を固定保持する。続いて、支持体は上述の突起51上に降ろされる。その後で、ディスペンサによって、熱可塑性の溶融可能な金属材料53が噴射され、棒49と支持体39が材料一体的に連結される。支持体内に設けられた、突起51を収容する穴は好ましくは、突起よりも大きな直径を有する。従って、支持体はその固定の後で、例えば放射加熱器を使用して材料53を加熱することによって調節可能である。このような再調節を行わないときには、材料53として接着剤を使用することができる。
【0062】
図13には、ドライビングダイナミクスセンサ用ホルダーを電子コントローラユニットの印刷回路基板8に固定する他の有利な実施の形態が示してある。センサケーシング55の固定はろう付けによって取外し可能かつ調節可能なホルダー、アングル部材54または薄板によって行われる。この薄板はセンサモジュール55をこの薄板に挿入できるように形成されている。センサモジュール55の表面は好ましくは金属材料で被覆されているかあるいはこのような金属材料からなっている。これによって、ホルダーとの平面状のろう付け連結が行われる。ろう付け連結部を加熱し、接触面を介して連結された面を互いにずらすことにより、印刷回路基板8に対してセンサモジュールを調節することができる。
【図面の簡単な説明】
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図1】 ドライビングダイナミクスコントロールのための本発明による装置を示す。
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図2】 電子コントローラユニットの概略的な斜視図である。
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図3】 調節のための保持装置を備えた一体化された制御装置を示す図である。
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図4】 一体化されたドライビングダイナミクスセンサを備えた一体化されたブレーキ装置のための他の例を示す図である。
【
図5】 ドライビングダイナミクスセンサのための本発明による支持体を示す図である。
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図6】 圧入接点を介してセンササブアセンブリと印刷回路基板を調節可能に連結するための例を示す図である。
【
図7】 収容手段を備えた電子コントローラユニットの実施の形態を示す図である。
【
図8】 緩衝されるように組み込まれたセンサモジュールを備えた電子コントローラユニトを示す図である。
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図9】 センササブアセンブリを挿入した電子コントローラユニットを示す図である。
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図10】 弁ブロックと電子コントローラユニットの組立てを示す図である。
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図11】 調節可能な固定手段を用いて印刷回路基板にセンサ支持体を固定するための他の例を示す図である。
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図12】 材料一体的な連結によってセンサ支持体を固定するための異なる実施の形態を示す図である。
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図13】 平面状のろう付け接点によるセンサ支持体の固定を示す図である。