特許第5745740号(P5745740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745740医療診断に用いる超音波探触子及びこれを用いた超音波診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745740
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】医療診断に用いる超音波探触子及びこれを用いた超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2008-209037(P2008-209037)
(22)【出願日】2008年8月14日
(65)【公開番号】特開2010-42166(P2010-42166A)
(43)【公開日】2010年2月25日
【審査請求日】2011年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】胡 智強
(72)【発明者】
【氏名】森 修
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−042894(JP,U)
【文献】 実開平02−098908(JP,U)
【文献】 実開昭58−056966(JP,U)
【文献】 特開2003−164453(JP,A)
【文献】 特開2007−117127(JP,A)
【文献】 特開2003−341697(JP,A)
【文献】 特開2008−099745(JP,A)
【文献】 特開2005−328925(JP,A)
【文献】 特開2003−339706(JP,A)
【文献】 特開2007−289721(JP,A)
【文献】 アロカ株式会社,超音波探触子カタログ,2004年 4月,第6、7頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に超音波を送信し、診断部位から反射するエコー信号を受信する超音波探触子において、前記超音波探触子を指で挟み持つ握り部から先端の送受信面にかけて軸が折れ曲がらない構造を有し、前記送受信面は振動子の各素子を長軸方向に沿って短冊状に配列して形成され、前記握り部の断面形状が正8角形に形成されてなることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探触子において、
前記正8角形の外面又は角部に、当該探触子の長軸方向を認識又はスキャン開始点を把握できる突起部が設けられていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波探触子において、
前記送受信面は、前記握り部から送受信面に至る軸に垂直に形成されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から受信される超音波画像データに基いて超音波画像を構成する超音波画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部とを備えた超音波診断装置であって、
前記超音波探触子は、請求項1又は2に記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断に用いる超音波探触子及びこれを用いた超音波診断装置に係り、特に、超音波探触子の握り部の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子は、被検体内に超音波を送信し、診断部位から反射するエコー信号を受信するものである。超音波診断装置は、受信した反射エコー信号に基づいて診断部位の画像を生成してモニタに表示し、画像を観察して医療診断を行なう。
【0003】
このような医療診断に用いられる超音波探触子として、特許文献1に記載されているように、複数の振動子を1次元配列して超音波送受信面を構成したものが知られている。電子走査型の超音波探触子には大別して、リニア型超音波探触子とセクタ型超音波探触子とがある。リニア型超音波探触子は腹部検査に好適であり、セクタ型超音波探触子は心臓検査に好適である。なお、リニア走査型の変形として、コンベックス型超音波探触子があり、小型のコンベックス型超音波探触子も心臓検査に用いられる。
【0004】
一般に、振動子が配列された方向を長軸方向と称し、これに直交する方向を短軸方向と称し、被検体の所望部位を撮像する場合は、超音波探触子の送受信面を被検体の体表に押し当てて超音波の送受信を行なってモニタに画像を表示し、モニタの超音波像を観察しながら、送受信面の鉛直軸の傾きや、長軸方向の向きを変えて超音波スキャン面を操作して所望の断面における断層像を取得するようにしている。
【0005】
例えば、心臓の診断においては、心壁の運動を観察して評価するために、いろいろな方向から心臓の断面を撮像して描出することが要求される。この場合、例えば、検査者が超音波探触子の握り部を指先で摘むように保持して体表に押し当て、握り部に形成されたマークを基準として指先の操作で送受信面の長軸を面内で回転して、例えば、基準位置(0°)とする長軸像と、これに対して90°ずれたいわゆる短軸像を撮像することが行なわれている。特に、セクタ型超音波探触子の例でも、握り部の断面形状は丸みを帯びた長方形に形成されているので、比較的精度よく90°回転することできる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、心臓の運動を評価する場合には、長軸像(0°)と短軸像(90°)の断面だけでなく、それらの間の45°、あるいは135°等の角度における断層像を撮像する要請がある。このような中間角度の場合、従来技術によれば、検査者の経験と勘によって、指先の操作で送受信面の長軸を面内で回転して角度調整しなければならないから、精度が悪いだけでなく、操作が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、長軸像と短軸像との中間の複数の角度位置に置ける断層像を比較的精度よく、簡単な操作で調整可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、被検体内に超音波を送信し、診断部位から反射するエコー信号を受信する超音波探触子において、前記超音波探触子を指で挟み持つ握り部から先端の送受信面にかけて軸が折れ曲がらない構造を有し、前記送受信面は振動子の各素子を長軸方向に沿って短冊状に配列して形成され、前記握り部の断面形状が正8角形に形成されてなることを特徴とする。
【0010】
これによれば、断面形状が正8角形に形成された超音波探触子の握り部を指先(例えば、親指と人さし指、あるいはこれらに加えて中指)で挟み持ち、超音波探触子を軸回りに1又は複数角(ピッチ)数、回転することにより、45°ピッチの複数の角度位置に簡単な操作で、比較的精度よく調整可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長軸像と短軸像との中間の複数の角度位置に置ける断層像を比較的精度よく、簡単な操作で調整可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置について図を用いて説明する。図9は、本発明を適用した超音波診断装置の構成を示すブロック図である。超音波診断装置1は、被検体2内に超音波を送受信して得られた反射エコー信号を用いて、診断部位について2次元超音波画像あるいは3次元超音波画像を形成して表示するもので、被検体2に超音波を照射し受信する振動素子を備えた超音波探触子3と、超音波信号を送受信する超音波送受信部4と、受信信号に基いて2次元超音波画像(Bモード画像)あるいは3次元超音波画像を構成する超音波画像構成部5と、超音波画像構成部5において構成された超音波画像を表示する表示部6と、各構成要素を制御する制御部7と、制御部7に指示を与えるコントロールパネル8を有している。
【0014】
ここで、各構成要素を具体的に説明する。超音波探触子3は、振動素子が超音波探触子の長軸方向に1〜mチャンネル分配列される。ここで、短軸方向にk個に切断されて1〜kチャンネル分配列されている場合、短軸方向の各振動素子(1〜kチャンネル)に与える遅延時間を変えることにより、短軸方向にも送波や受波のフォーカスがかけられるようになっている。また、短軸方向の各振動素子に与える超音波送信信号の振幅を変えることにより送波重み付けがかけられ、短軸方向の各振動素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより受波重み付けがかけられるようになっている。さらに、短軸方向のそれぞれの振動素子をオン、オフすることにより、口径制御ができるようになっている。
【0015】
なお、超音波探触子3は、超音波送信部4から供給される駆動信号に重畳して印加されるバイアス電圧の大きさに応じて超音波受信感度つまり電気機械結合係数が変化する。
【0016】
超音波送受信部4は、超音波探触子3に送信信号を供給するとともに受信した反射エコー信号を処理するもので、その内部には、超音波探触子3を制御し超音波ビームの打ち出しをさせる送波回路と、この打ち出しされた超音波ビームの被検体内からの反射エコー信号を受信し生体情報を収集する受波回路と、これらを制御する制御回路とを有している。
【0017】
超音波画像構成部5は、超音波送受信部4で処理した反射エコー信号を超音波断層像に変換するもので、順次入力される反射エコー信号に基づいて超音波画像を形成するデジタルスキャンコンバータと、超音波画像を記憶する磁気ディスク装置及びRAMからなる記憶装置とからなり、超音波送受信部4で受信した反射エコー信号を信号処理し、2次元超音波画像や3次元超音波画像,各種ドプラ画像に画像化して出力する。
【0018】
表示部6は、超音波画像構成部5で作成された画像を表示制御部を介して入力し超音波画像として表示するもので、例えばCRTモニタ、液晶モニタからなる。
【0019】
そして、制御部7は、前記各構成要素の動作を制御するもので、ユーザインターフェース回路とのインターフェースを有する制御コンピュータシステムより構成されている。この制御部7は、それに含まれるユーザインターフェース及び該ユーザフェースインターフェースからの情報等から超音波送受信部4を制御する。また、超音波送受信部4で受信した生体情報を超音波画像構成部5に転送したり、超音波画像構成部5で画像化した情報を表示制御部に伝送するなどの制御を行う。
【0020】
以下に、本発明の特徴である超音波探触子3の握り部の構成を、実施例に分けて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の超音波探触子3の一実施例の握り部の断面図を示し、図2は本実施例の超音波探触子3の外観斜視図を示し、図3は本実施例の超音波探触子3の正面図である。
【0022】
図2図3に示すように、超音波探触子3は、配列振動子とバッキング材、音響整合層、音響レンズ等から成る振動子部11と、配列振動子の電極とケーブルとの接続回路を収納する本体部12と、ケーブルのブッシングとケーブルとから成るケーブル部13とを有している。
【0023】
配列振動子20の各素子は、実際には音響レンズに覆われて外部から見えないが、超音波の送受信面21の長軸方向に沿って短冊状に配列されている。本体部12のケース22には、くびれ状に形成された握り部23と丸み部24が形成されている。握り部23は振動子部11に連なる部分に位置し、検査者が指で超音波探触子3を掴む部分として形成されている。握り部23の詳細構成については、後述する。丸み部24は握り部23に連なりケーブル部13までの部分に位置し、検査者が超音波探触子3を掴んだときに親指と人差し指のつけ根にフィッティングするように、真円形、楕円形、長円形を含む円形に形成されている。なお、それらの図において、振動子部11には、穿刺用のアタッチメントを取り付ける凹状の取り付け部25と、凸状の取り付け部26が形成されている。
【0024】
ここで、図1を参照して、本実施例の握り部23の断面構成を説明する。図1は、図3のC−Cにおける握り部23の断面図である。図示のように、握り部23の断面23aは、外形が正8角形の多角形に形成されている。そして、握り部23の正8角形のA面に対応する部位に突起部27が設けられている。検査者が突起部27を指で触れることにより、被検体に押し当てている超音波探触子3の長軸方向を認識できるようになっている。また、突起部27はスキャン開始点を示しており、検査者は突起部27により、スキャン開始点を把握し、超音波診断装置のモニタに表示された画像を確認することができる。丸み部24にも同様に突起部が設けられており、親指と人差し指の間のつけ根の部分でもスキャン開始点を把握することができるようになっている。例えば、突起部27が超音波探触子3の軸心、つまり送受信面の中心を通る長軸方向上に形成されていれば、突起部27の位置が基準位置(0°)となる。なお、握り部23の断面の内面形状は円形である。
【0025】
次に、本実施例の超音波探触子3の使用方法について説明する。まず、図示B面に親指を当てて、B面に対向する面に人差し指を当てて超音波探触子3を挟み持つ。この状態のときに、突起部27が形成されたA面が図示位置にあれば、長軸像を撮像できる。次に、この長軸像から45°ずれた位置の断層像を取得する場合は、親指で超音波探触子3を軸回りに1ピッチ回転させることにより、いわゆる45°画像を撮像することができる。さらに回転させて、親指がD面に当接した状態になると、いわゆる90°画像である短軸像を撮像することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施例によれば、超音波探触子3の握り部23を指先(例えば、親指と人さし指、あるいはこれらに加えて中指)で挟み持ち、正8角形の角数に応じて超音波探触子3を軸回りに1又は複数角(ピッチ)数、回転することにより、例えば、長軸像の0°画像に対して、45°画像、90°画像を、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【実施例2】
【0027】
図4に本発明の超音波探触子の他の実施例の握り部の断面図を示す。超音波探触子そのものは、図2、3に記載の超音波探触子3と同一に形成され、実施例1と相違する点は握り部23の断面23aの形状を正8角形ではなく、長軸方向に長い長8角形にしたことにある。なお、握り部23の断面23aの内面形状は長軸方向に長い長円形である。
【0028】
本実施例によっても、実施例1と同様に、長8角形の各面に設定された角度で、超音波探触子3を軸回りに1又は複数角(ピッチ)数、回転することにより、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【実施例3】
【0029】
図5に本発明の超音波探触子の他の実施例の握り部の断面図を示す。超音波探触子そのものは、図2、3に記載の超音波探触子3と同一に形成され、実施例1と相違する点は握り部23の断面23aの形状を正12角形に形成したことにある。なお、握り部23の断面23aの内面形状は円形である。
【0030】
本実施例によれば、長軸像の0°画像と90°画像の他に、親指がC面に当接させた30°画像、親指がD面に当接させた60°画像を、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【実施例4】
【0031】
図6に本発明の超音波探触子の他の実施例の握り部の断面図を示す。超音波探触子そのものは、図2、3に記載の超音波探触子3と同一に形成され、実施例3と相違する点は握り部23の断面23aの形状を正12角形ではなく、長軸方向に長い長12角形にしたことにある。なお、握り部23の断面23aの内面形状は長軸方向に長い長円形である。
【0032】
本実施例によっても、実施例3と同様に、長12角形の各面に設定された角度で、超音波探触子3を軸回りに1又は複数角(ピッチ)数、回転することにより、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【実施例5】
【0033】
図7に本発明の超音波探触子の他の実施例の握り部の断面図を示す。超音波探触子そのものは、図2、3に記載の超音波探触子3と同一に形成され、実施例1と相違する点は握り部23の断面23aの形状を正16角形に形成したことにある。なお、握り部23の断面23aの内面形状は円形である。
【0034】
本実施例によれば、長軸像の0°画像と90°画像の他に、親指をC面に当接させた30°画像、親指をD面に当接させた45°画像、親指をE面に当接させた60°画像を、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【実施例6】
【0035】
図8に本発明の超音波探触子の他の実施例の握り部の断面図を示す。超音波探触子そのものは、図2、3に記載の超音波探触子3と同一に形成され、実施例5と相違する点は握り部23の断面23aの形状を正16角形ではなく、長軸方向に長い長16角形にしたことにある。なお、握り部23の断面23aの内面形状は長軸方向に長い長円形である。
【0036】
本実施例によっても、実施例5と同様に、長16角形の各面に設定された角度で、超音波探触子3を軸回りに1又は複数角(ピッチ)数、回転することにより、簡単な操作で、比較的精度よく調整して撮像することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の超音波探触子の実施例1の握り部の断面図を示す。
図2】実施例1の超音波探触子の外観斜視図を示す。
図3】実施例1の超音波探触子の正面図である。
図4】本発明の超音波探触子の実施例2の握り部の断面図を示す。
図5】本発明の超音波探触子の実施例3の握り部の断面図を示す。
図6】本発明の超音波探触子の実施例4の握り部の断面図を示す。
図7】本発明の超音波探触子の実施例5の握り部の断面図を示す。
図8】本発明の超音波探触子の実施例6の握り部の断面図を示す。
図9】本発明の一実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
3 超音波探触子
21 送受信面
23 握り部
23a 断面
図1
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図2
図3