特許第5745810号(P5745810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745810有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745810
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20150618BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150618BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20150618BHJP
   H05B 33/24 20060101ALI20150618BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H05B33/26 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/24
   G09F9/30 365
   G09F9/30 338
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-236372(P2010-236372)
(22)【出願日】2010年10月21日
(65)【公開番号】特開2011-119238(P2011-119238A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0117071
(32)【優先日】2009年11月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】高 武恂
(72)【発明者】
【氏名】劉 在浩
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−197010(JP,A)
【文献】 特開2008−218427(JP,A)
【文献】 特開2005−038642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/22
H05B 33/24
H05B 33/26
G09F 9/30
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1副画素領域ないし第3副画素領域に離隔されて形成された第1アノード電極と、
前記第1アノード電極の上端部表面及び側面表面の全周を覆うように、前記基板上に備わり、前記基板を露出させるクラッドと、
前記第1副画素領域及び前記第2副画素領域の前記第1アノード電極上部に形成された第2アノード電極と、
前記第1副画素領域の前記第2アノード電極上部に形成された第3アノード電極と、を含み、前記第2アノード電極及び前記第3アノード電極は前記クラッドが形成された前記第1アノード電極の上部に形成され、前記第1アノード電極は金属を含み、前記第2アノード電極及び前記第3アノード電極は透明酸化膜からなり、前記クラッドは前記第1アノード電極の一部と前記基板の一部とを露出させることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記クラッドは、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1アノード電極は、ITO/Ag/ITO、ITO/Ag/IZO、ATD及びITO/APC/ITOのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第2アノード電極は、ITO、IZO、ZnO及びInのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第3アノード電極は、ITO、IZO、ZnO及びInのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第1副画素は、赤色副画素であり、前記第2副画素は、緑色副画素であり、前記第3副画素は、青色副画素であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
基板の第1副画素領域ないし第3副画素領域に、第1アノード電極を離隔させて形成する段階と、
前記第1アノード電極の上端部表面及び側面表面の全周を覆い、前記基板の一部を露出させるクラッドを形成する段階と、
前記第1副画素領域及び前記第2副画素領域の前記第1アノード電極上部に、第2アノード電極を形成する段階と、
前記第1副画素領域の前記第2アノード電極上部に、第3アノード電極を形成する段階と、が順に実施され
前記第1アノード電極は金属を含み、前記第2アノード電極及び前記第3アノード電極は透明酸化膜からなり、前記クラッドは前記第1アノード電極の一部と前記基板の一部とを露出させることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項8】
前記クラッドは、フォトリソグラフィ工程によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2アノード電極は、フォトリソグラフィ工程によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項10】
前記第3アノード電極は、フォトリソグラフィ工程によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項11】
前記クラッドは、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1アノード電極は、ITO/Ag/ITO、ITO/Ag/IZO、ATD及びITO/APC/ITOのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2アノード電極は、ITO、IZO、ZnO及びInのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項14】
前記第3アノード電極は、ITO、IZO、ZnO及びInのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1副画素は、赤色副画素であり、前記第2副画素は、緑色副画素であり、前記第3副画素は、青色副画素であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1アノード電極と前記基板との間に備わった少なくとも一つの絶縁膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項17】
前記第1アノード電極と前記基板との間に備わり、前記第1アノード電極と電気的に連結された駆動回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法に係り、さらに詳細には、下部反射電極の損傷を防止できる有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機電界発光素子(OLED:organic light emitting device)は、蛍光性有機化合物を電気的に励起させて発光させる自発光型ディスプレイであって、低い電圧で駆動が可能であり、薄型化が容易であり、光視野角、迅速な応答速度など、液晶表示装置において問題点として指摘された欠点を解決できる次世代ディスプレイとして注目されている。
【0003】
有機電界発光素子は、アノード電極とカソード電極との間に、機能性薄膜形態の有機発光層が挿入されている構造であり、正極から正孔が注入され、負極で電子が注入され、有機発光層内で、電子と正孔とが結合して励起子(exciton)が形成され、この励起子が発光再結合されつつ光を出す素子である。
【0004】
有機電界発光素子は、基板方向に光を発光する背面発光型(bottom emission)と、基板の反対方向に光を発光する前面発光型(top emission)とに区分される。背面発光型有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)回路が内蔵された場合、TFT回路が基板で占める広い面積によって、光が出てくる面積、すなわち、開口率に制約を受けるという短所がある。一方、前面発光型有機電界発光素子は、TFT回路が占める面積に関係なしに、広い面積を発光領域に使用でき、開口率が高いという長所がある。
【0005】
前面発光型有機発光素子の製作時、TFT回路のソース電極またはドレイン電極と電気的に連結されるアノード電極の下部に、光抽出を高めるために、反射膜を形成する。しかし、反射膜とアノード電極及びカソード電極との微小共振効果(micro cavity effect)のために、正確なスペクトルの色が発光されずに、波長が分離(split)されたり、色によっては、輝度と色座標とが変わりうる。そして、反射膜の湿式エッチング時に、反射膜に含まれる金属がエッチャント液滴の浸透などによって損傷されるという問題点がある。
【0006】
また、前記微小共振による短所を補完するために、アノード電極とカソード電極との間の有機層にバッファ層(buffer layer)を形成し、アノード電極とカソード電極との間の距離を調節することによって、適切な共振構造を形成するが、このとき、R(red)、G(green)、B(blue)別に、異なる厚さを有するバッファ層を形成するためには、蒸着マスク(mask)が追加されねばならず、有機材料の損失(loss)も増えることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副画素別に、アノード電極の厚さが異なる有機発光ディスプレイを提供するものである。
【0008】
本発明はまた、単純な有機物積層構造を利用し、下部反射電極の損傷を防止し、不良減少を介した品質向上及び材料費の低減を図ることができる有機発光ディスプレイを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の望ましい一実施形態による有機発光ディスプレイ装置は、基板の第1副画素領域ないし第3副画素領域に離隔されて形成された第1アノード電極と、前記第1アノード電極の上端部を覆うように、前記基板上に備わり、前記基板を露出させるクラッドと、前記第1副画素領域及び前記第2副画素領域の前記第1アノード電極上部に形成された第2アノード電極と、前記第1副画素領域の前記第2アノード電極上部に形成された第3アノード電極と、を含むことができる。
【0010】
本発明の望ましい一実施形態による有機発光ディスプレイ装置の製造方法は、基板の第1副画素領域ないし第3副画素領域に、第1アノード電極を離隔させて形成する段階と、前記第1アノード電極の上端部を覆い、前記基板の一部を露出させるクラッドを形成する段階と、前記第1副画素領域及び前記第2副画素領域の前記第1アノード電極上部に、第2アノード電極を形成する段階と、前記第1副画素領域の前記第2アノード電極上部に、第3アノード電極を形成する段階と、を含むことができる。
【0011】
前記クラッド、第2アノード電極及び第3アノード電極は、フォトリソグラフィ工程によって形成されうる。
【0012】
前記クラッドは、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されうる。
【0013】
前記第1アノード電極は、酸化インジウムスズ(ITO)/Ag/ITO、ITO/Ag/酸化インジウム亜鉛(IZO)、ATD、ITO/APC/ITOのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されうる。
【0014】
前記第2アノード電極及び前記第3アノード電極は、ITO、IZO、ZnO及びInのうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されうる。
【0015】
前記第1副画素は、赤色副画素であり、前記第2副画素は、緑色副画素であり、前記第3副画素は、青色副画素でありうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、副画素毎にITO層を選択的に成膜することにより、アノード電極を副画素毎に異なる厚さで形成して副画素毎に共振のための厚みを制御するので、別途のバッファ層などを形成するための蒸着マスクの追加が必要ではない。
【0017】
また本発明によれば、反射膜として機能するアノード電極のエッジ部に有機クラッドを形成することによって、その上に形成される透明酸化膜(例えば、ITO層)の湿式エッチング時に、金属層の損傷、アノード電極へのエッチャント液滴浸透、電極損傷などの不良を抑制できる。従って、反射膜の損傷なしに、ITO層のパターニングが可能であるので、不良減少を介した品質向上及び材料費の低減によって、生産性向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置を概略的に図示する断面図である。
図2】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置を概略的に図示する断面図である。
図3】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図4A】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図4B】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図4C】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図5A】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図5B】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図5C】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図6A】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図6B】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図6C】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
図7】本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の望ましい実施形態について、添付された図面を参照しつつ説明する。図面中の同じ構成要素については、たとえ他の図面上に表示されていても、可能な限り、同じ参照番号及び符号で示してあることに留意する必要がある。以下本発明について説明するが、関連した公知機能または構成に係わる具体的な説明が、本発明の要旨を必要以上に不明確にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略するものとする。
【0020】
また、ある部分がある構成要素を「含む」というときは、それは、特に記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0021】
図1及び図2は、本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置を概略的に図示する断面図である。
【0022】
図1を参照すれば、本発明の前面発光型有機発光ディスプレイ装置は、基板100と、基板100に形成された赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の副画素領域とを含む。
【0023】
基板100は、ガラス材によって形成されうるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、プラスチック材、金属材なども適用可能である。この基板100上には、図面に図示していないが、表面を平坦化し、かつ基板からの不純物拡散を防止できるように、別途の絶縁膜がさらに形成されうる。この基板100は、透明な基板が使われうるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、不透明な基板を使用できることは、言うまでもない。
【0024】
前記基板100の上部には、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の副画素領域に対応し、多層構造のアノード電極300A,300B及び300Cが互いに離隔されて形成される。アノード電極300A,300B及び300Cは、副画素領域別に全体厚が異なって形成される。赤色副画素(R)は、第1アノード電極301、第2アノード電極302及び第3アノード電極303を具備し、緑色副画素(G)は、第1アノード電極301及び第2アノード電極302を具備し、青色副画素(B)は、第1アノード電極301を具備する。各副画素の第1アノード電極301の両端には、有機絶縁膜305が備わる。
【0025】
前記アノード電極300A,300B及び300C間には、前記アノード電極300A,300B及び300Cの表面一部を露出させる開口を有する画素定義膜500が備わる。
【0026】
前記露出されたアノード電極300A,300B及び300Cの上部に、少なくとも発光層を有する有機膜320を形成する。前記有機膜320の上部には、前記アノード電極300A,300B及び300Cに対向するカソード電極340が形成される。
【0027】
前記基板100の上部には、図2に図示されているように、前記アノード電極300A,300B及び300Cと電気的に連結される駆動回路(薄膜トランジスタ(TFT))120を含むことができる。
【0028】
図2を参照すれば、基板100の上面には、不純物イオンが拡散することを防止し、水分や外気の浸透を防止し、表面を平坦化するためのバリヤ層及び/またはバッファ層のような絶縁層112が形成されうる。
【0029】
前記絶縁層112上に、TFTの活性層121が半導体材料によって形成され、これを覆うように、ゲート絶縁膜113が形成される。活性層121にはアモルファス・シリコンまたはポリシリコンのような無機半導体や有機半導体が使われ、ソース/ドレイン領域とそれらとの間のチャンネル領域を有する。
【0030】
活性層121はポリシリコンによって形成され、この場合、所定領域が不純物でドーピングされてもよい。活性層121がポリシリコンではないアモルファス・シリコンによって形成されてもよいことは言うまでもなく、さらに、ペンタセンのような多様な有機半導体物質によって形成されてもよい。活性層121がポリシリコンによって形成される場合、アモルファス・シリコンを形成し、これを結晶化させてポリシリコンに変化させるが、このような結晶化方法としては、RTA(rapid thermal annealing)工程、SPC法(solid phase crystallization)、ELA法(excimer laser annealing)、MIC(metal induced crystallization)、MILC法(metal induced lateral crystallization)またはSLS法(sequential lateral solidification)のような多様な方法が適用されうる。
【0031】
ゲート絶縁膜113は、半導体層121とゲート電極123とを絶縁するために備わる。ゲート絶縁膜113は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物のような絶縁性物質によって形成され、これ以外にも、絶縁性有機物などで形成されうることは、言うまでもない。
【0032】
ゲート絶縁膜113上には、ゲート電極123が備わり、これを覆うように、層間絶縁膜114が形成される。そして、層間絶縁膜114上には、ソース/ドレイン電極125が、コンタクトホール127を介して活性層121と連結される。
【0033】
ゲート電極123は、多様な導電性物質によって形成されうる。例えばMg、Al、Ni、Cr、Mo、W、MoWまたはAuなどの物質によって形成され、その場合にも、単一層だけではなく、複層形状によって形成することができるような多様な変形が可能である。
【0034】
層間絶縁膜114は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物のような絶縁性物質によって形成され、これ以外にも、絶縁性有機物などで形成されうることは、言うまでもない。前記層間絶縁膜114とゲート絶縁膜113とを選択的に除去し、ソース/ドレイン領域が露出されるコンタクトホール127を形成できる。そして、前記コンタクトホール127が埋め込まれるように、層間絶縁膜114上に、前述のゲート電極123用物質で、単一層または複層の形状に、ソース/ドレイン電極125を形成する。
【0035】
ソース/ドレイン電極125の上部には、平坦化膜115が備わり、下部のTFTを保護して平坦化させる。平坦化膜115は、多様な形態に構成されうるが、ベンゾシクロブテン(BCB)またはアクリルのような有機物、またはSiNのような無機物によって形成されうる。また、平坦化膜115は、単層にも形成され、二重あるいは多重層にも形成されるなど、多様な変形が可能である。
【0036】
前記平坦化膜115の上部には、前記アノード電極300A,300B及び300Cが形成され、前記アノード電極300A,300B及び300Cは、ビアホ―ル130を介して、ソース/ドレイン電極125と電気的に連結される。
【0037】
前述のようなTFTの層構造は、必ずしもそれに限定されるものではなく、多様な構造のTFTがいずれも適用可能である。
【0038】
図3ないし図7は、本発明の一実施形態による前面発光型有機発光ディスプレイ装置の製造工程を概略的に図示する断面図である。以下、基板100上部に備わるTFTの製造過程は、省略する。
【0039】
図3を参照すれば、基板100上に、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の副画素別に、第1アノード電極301を形成する。前記第1アノード電極301は、金属層と、前記金属層上下部の伝導性酸化膜とによる多層構造であり、前記第1アノード電極301は、ITO(indium tin oxide)/Ag/ITO、ITO/Ag/IZO(indium zinc oxide)、ATD(ITO/Ag合金/ITO)、ITO/APC(Ag−Pd−Cu合金)/ITO、及びその等価物のうちから選択された少なくともいずれか一つによって形成されうる。第1アノード電極301は、金属層を含むことによって、反射膜としての役割を行う。よって、本発明では、第1アノード電極301を、反射膜または反射電極と混用して使用する。本実施形態では、ITO/Ag/ITO多層伝導膜である第1アノード電極301が形成される。第1アノード電極301は、真空蒸着、またはスパッタリングによって、各層が順に積層された後、フォトリソグラフィ法によって、同時にエッチング及びパターニングされうる。エッチャントは、硝酸または酢酸を含むことができる。
【0040】
図4Aないし図4Cを参照すれば、第1アノード電極301の上部に、フォトリソグラフィ工程によって、クラッド305が形成される。前記クラッド305は、第1アノード電極301の上端部及び側面を覆い、前記第1アノード電極301の一部(前記上端部を除外した部分)と前記基板100の一部とを露出させる。
【0041】
図4Aを参照すれば、第1アノード電極301が形成された基板100全面に、絶縁膜305Aが真空蒸着またはスパッタリングによって形成される。絶縁膜305Aは、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドなどの有機絶縁物質のうち一つでありうる。図4Bを参照すれば、この絶縁膜305Aを覆うように、基板100上部に、フォトレジストを塗布する。フォトレジストが塗布された絶縁膜305Aを、フォトマスク(図示せず)を介して露光及び現像し、第1アノード電極301の上端部に、フォトレジスト・パターン501を形成する。図4Cを参照すれば、フォトレジスト・パターン501をマスクとして使用し、絶縁膜305Aをエッチングし、フォトレジスト・パターン501が形成されていない絶縁膜305Aを除去する。エッチングは、湿式エッチングが使われうる。エッチャントは、硝酸または酢酸を含むことができる。その後、ストリッパ(stripper)を利用し、絶縁膜305Aの上部に残存するフォトレジスト・パターン501を除去する。これにより、赤色副画素(R)領域、緑色副画素(G)領域、及び青色副画素(B)領域の第1アノード電極301の上端部に、クラッド305が形成される。その後、クラッド305は、UV(ultraviolet)照射または加熱によって、硬化される。クラッド305は、第1アノード電極301の上端部を覆うように薄く形成され、もしもクラッド305が画素定義膜を兼ねる場合には、副画素間の損傷を防止できるように、約2μm厚に形成されることが望ましい。前記クラッド305は、後述する第2アノード電極302と第3アノード電極303との湿式エッチング時、第1アノード電極301の金属層の損傷を防止する。クラッド305は、湿式エッチング時に、第1アノード電極301へのエッチャント滴の浸透や電極損傷不良による損傷もまた抑制できる。従って、第1アノード電極301の損傷なしに、透明伝導層である第2アノード電極302と第3アノード電極303とのパターニングが可能なので、生産性向上に寄与できる。
【0042】
図5Aないし図5Cを参照すれば、前記クラッド305が形成された第1アノード電極301の上部に、フォトリソグラフィ工程によって、第2アノード電極302が形成される。前記第2アノード電極302は、赤色副画素(R)領域と緑色副画素(G)領域にだけ形成される。
【0043】
図5Aを参照すれば、第1アノード電極301及びクラッド305を覆うように、基板100全面に、蒸着またはスパッタリングによって、透明伝導層302Aを形成する。前記透明伝導層302Aは、ITO、IZO、ZnOまたはInなどの伝導物でありうる。図5Bを参照すれば、この透明伝導層302Aを覆うように、基板100の上部に、フォトレジストを塗布する。フォトレジストが塗布された透明伝導層302Aを、フォトマスク(図示せず)を介して露光及び現像し、赤色副画素(R)領域の第1アノード電極301と、緑色副画素(G)領域の第1アノード電極301との上部に、フォトレジスト・パターン503を形成する。図5Cを参照すれば、フォトレジスト・パターン503をマスクとして使用し、透明伝導層302Aをエッチングし、フォトレジスト・パターン503が形成されていない透明伝導層302Aを除去する。エッチングは、湿式エッチングが使われうる。エッチャントは、硝酸または酢酸を含むことができる。その後、ストリッパを利用し、透明伝導層302A上に残存するフォトレジスト・パターン503を除去する。これにより、赤色副画素(R)領域の第1アノード電極301と、緑色副画素(G)領域の第1アノード電極301との上部に、第2アノード電極302が形成される。その後、第2アノード電極302は、UV照射または加熱によって硬化される。
【0044】
図6Aないし図6Cを参照すれば、前記第2アノード電極302の上部に、フォトリソグラフィ工程によって、第3アノード電極302が形成される。前記第3アノード電極302は、赤色副画素(R)領域にだけ形成される。
【0045】
図6Aを参照すれば、青色副画素(B)領域の第1アノード電極301、赤色副画素(R)領域並びに緑色副画素(G)領域の第2アノード電極302、及びクラッド305を覆うように、基板100全面に、蒸着またはスパッタリングによって透明伝導層303Aを形成する。前記透明伝導層303Aは、ITO、IZO、ZnOまたはInなどの伝導物でありうる。図6Bを参照すれば、この透明伝導層303Aを覆うように、基板100の上部にフォトレジストを塗布する。フォトレジストが塗布された透明伝導層303Aを、フォトマスク(図示せず)を介して露光及び現像し、赤色副画素(R)領域の第2アノード電極302の上部に、フォトレジスト・パターン505を形成する。図6Cを参照すれば、フォトレジスト・パターン505をマスクとして使用し、透明伝導層303Aをエッチングし、フォトレジスト・パターン505が形成されていない透明伝導層303Aを除去する。エッチングは、湿式エッチングが使われうる。エッチャントは、硝酸または酢酸を含むことができる。その後、ストリッパを利用し、透明伝導層303Aに残存するフォトレジスト・パターン505を除去する。これにより、赤色副画素(R)領域の第2アノード電極302の上部に、第3アノード電極303が形成される。その後、第3アノード電極303は、UV照射または加熱によって硬化される。
【0046】
図4Aないし図6Cの製造工程によって、赤色副画素(R)領域では、3層のアノード電極300Aが形成され、緑色副画素(G)領域では、2層のアノード電極300Bが形成され、青色副画素(B)領域では、1層のアノード電極300Cが形成される。従って、アノード電極300A,300B及び300Cは、副画素別に異なる多層構造を有することによって、副画素別に厚み制御が可能になる。また、第1アノード電極301ないし第3アノード電極303の厚みは、互いに同一にする必要はなく、各副画素の光抽出を効率的に達成できる最適厚になるように、異なって成膜されうる。これは、各層の成膜時間を調整することによってなされうる。
【0047】
図7を参照すれば、アノード電極300A,300B及び300Cが形成された基板100全体にわたって、画素定義膜500を蒸着する。前記画素定義膜500は、単位画素部を定義する絶縁膜である。前記画素定義膜500は、有機物、無機物、または有無機物の複合多層構造で形成されうる。無機物としては、シリコン酸化物(SiO)、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸窒化物などの無機物のうちから選択された物質を使用できる。有機物としては、前記クラッド305と同じ物質であり、例えば、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドなどの有機絶縁物質のうち一つでありうる。前記画素定義膜500をエッチングし、前記アノード電極300A,300B及び300Cの一部を露出させて開口部を形成する。本実施形態では、クラッド305と別途に、画素定義膜500を形成する構造を図示したが、前記クラッド305が、画素定義膜500の役割を果たすように形成されもする。その場合、別途の画素定義膜500の製造工程が省略されうる。
【0048】
その後、図1に図示されているように、前記アノード電極300A,300B及び300Cの開口部内に、有機膜層320が形成される。前記有機膜層320は、少なくとも有機発光層(EML:emissive layer)を含み、それ以外に、正孔注入層(HIL:hole injection layer)、正孔輸送層(HTL:hole transport layer)、電子輸送層(ETL:electron transport layer)、電子注入層(EIL:electron injection layer)のうちいずれか1層以上の層をさらに含むことができる。
【0049】
有機膜層320は、低分子または高分子の有機物で備わりうる。低分子有機物を使用する場合、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層などが、単一あるいは複合の構造で積層されて形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などを始めとして多様に適用可能である。かような低分子有機層は、真空中で有機物を加熱して蒸着する方式で形成されうるが、そのうち発光層の形成は、画素に対応するように、所定パターンのスリットが備わったマスクを介在させて、カラー別に順に蒸着して形成できる。高分子有機物の場合には、おおむね正孔輸送層及び発光層で備わった構造を有することができ、このとき、前記正孔輸送層として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を使用し、発光層として、ポリフェニレンビニレン(PPV)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物質を使用し、これをスクリーン印刷やインクジェット印刷の方法などで形成できる。前記のような有機膜層320は、必ずしもこれに限定されるものではなく、多様な実施形態が適用されうることは、言うまでもない。
【0050】
次に、前記有機膜層320を含んだ基板全面上に、カソード電極340を形成する。前記カソード電極340は、前記画素定義膜500の開口部で、アノード電極300A,300B及び300Cに対向し、前面発光のために透明電極によって形成される。カソード電極340は、仕事関数が小さい金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びそれらの化合物を蒸着した後、その上に、ITO、IZO、ZnO、またはInなどの透明導電物質で、補助電極層やバス電極ラインを形成できる。
【0051】
本発明は、図面に図示された一実施形態を参考として説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び実施形態の変形が可能であるということを理解することができるであろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【符号の説明】
【0052】
100 基板
112,305A 絶縁層
113 ゲート絶縁膜
114 層間絶縁膜
115 平坦化膜
120 駆動回路(TFT)
121 半導体層
123 ゲート電極
125 ソース/ドレイン電極
127 コンタクトホール
130 ビアホール
300A,300B,300C アノード電極
301 第1アノード電極
302 第2アノード電極
302A 透明伝導層
303 第3アノード電極
305 クラッド
305A 絶縁膜
320 有機膜
340 カソード電極
500 画素定義膜
501,503,505 フォトレジスト・パターン
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7