特許第5745818号(P5745818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745818
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20150618BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20150618BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20150618BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H04N1/00 108M
   H04N1/12 Z
   G06T1/00 420J
   B65H5/38
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-246736(P2010-246736)
(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-100115(P2012-100115A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】池崎 繁
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−139704(JP,A)
【文献】 特開平04−150549(JP,A)
【文献】 特開2001−229343(JP,A)
【文献】 特開2009−166917(JP,A)
【文献】 特開2005−328216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04− 1/207
G06T 1/00
B65H 5/00− 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1媒体が導入される導入口と、
前記第1媒体が排出される排出口と、
前記導入口から前記排出口に至る前記第1媒体の搬送経路に設けられて前記第1媒体の画像を読み取る画像読取手段と、
前記第1媒体を前記導入口から前記排出口へ搬送する一方、前記第1媒体よりも幅狭の第2媒体の画像を前記画像読取手段によって読み取るために、前記排出口から導入される前記第2媒体を、前記第1媒体の搬送経路内に設けられた前記第2媒体の搬送経路に沿って前記画像読取手段へ搬送する搬送手段と、
前記第1媒体の搬送に支障がない位置において前記第2媒体の幅方向の側面部に対向するように前記第2媒体の搬送方向に沿って前記第2媒体の搬送経路に設けられ、前記排出口から導入される前記第2媒体のみを前記第2媒体の搬送経路に沿って案内する規制壁部と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記規制壁部は、前記第2媒体の搬送経路を形成する部分に設けた凹部の内側側面により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記凹部の前記排出口側の端部は、前記第2媒体の導入口を形成していることを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記排出口の一部は、前記第2媒体の導入口と、前記画像読取手段によって画像を読み取った後の第2媒体の排出口とを兼ねることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第1媒体の搬送経路は、前記画像読取手段の上流側で屈曲した屈曲部を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第2媒体の搬送経路は、前記排出口から前記第1媒体の搬送経路を通って前記屈曲部に開口するスリットに連通して形成された直進経路からなることを特徴とする請求項5記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記規制壁部は、前記第2媒体の搬送経路における少なくとも前記画像読取手段の前記排出口側及びその反対側に対応する部分にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記画像読取手段は、前記第2媒体の厚みに応じて前記搬送経路から離れる方向に移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記搬送手段は、前記導入口から前記排出口に向けて媒体搬送を行う第1搬送モードと前記排出口から前記画像読取手段に向けて媒体搬送を行う第2搬送モードとを有し、前記排出口への前記第2媒体の導入に伴って前記第2搬送モードで前記第2媒体を搬送し、前記画像読取手段に対向する領域を前記第2媒体が通過した後に前記第1搬送モードに切り替わることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリなどの画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置として、例えば、積層されたシート状の媒体を連続的に読み取ることができるADF(Auto Document Feeder)型の画像読取装置がある。ADF型の画像読取装置は、所定サイズのシート状の媒体を1枚ずつ分離して連続的に自動給紙して、画像の読み取り処理を行うことができることから、大量の媒体を自動的に搬送して読み取ることができる。
【0003】
一方、薄い媒体やフィルム状の媒体、或いは、カード等、一般的に使用される紙類とは異なる媒体の場合、自動給紙に適さない場合がある。そこで、自動給紙に適さない媒体については、排出口側からの手差し給紙とし、通常時とは搬送系の搬送方向を逆方向とすることで装置内にカードを導入して、その画像読取を対応可能としたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−284478号公報
【特許文献2】特開2008−270954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像読取装置の排出口の幅方向のサイズは、その画像読取装置での使用が予定されている最大サイズの媒体が排出できるように設計される。このため、カードのように小サイズの媒体に対しては排出口の幅が大きすぎる場合があり、排出口から小サイズの媒体を手差し給紙すると斜行を生じてその排出に支障を生じたり、画像が適切に読み取れない場合がある。
【0006】
本発明は、カードのような小サイズの媒体を排出口から導入するにあたり、その斜行を防止するための仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1媒体が導入される導入口と、前記第1媒体が排出される排出口と、前記導入口から前記排出口に至る前記第1媒体の搬送経路に設けられて前記第1媒体の画像を読み取る画像読取手段と、前記第1媒体を前記導入口から前記排出口へ搬送する一方、前記第1媒体よりも幅狭の第2媒体の画像を前記画像読取手段によって読み取るために、前記排出口から導入される前記第2媒体を、前記第1媒体の搬送経路内に設けられた前記第2媒体の搬送経路に沿って前記画像読取手段へ搬送する搬送手段と、前記第1媒体の搬送に支障がない位置において前記第2媒体の幅方向の側面部に対向するように前記第2媒体の搬送方向に沿って前記第2媒体の搬送経路に設けられ、前記排出口から導入される前記第2媒体のみを前記第2媒体の搬送経路に沿って案内する規制壁部と、を備えたことを特徴とする画像読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カードのような小サイズの媒体を排出口から導入するにあたり、その斜行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置の外観図、(B)は図1(A)の線I−Iに沿う画像読取装置の概略断面図。
図2】画像読取装置の平面図。
図3】(A)は図1(A)の線II−IIに沿う画像読取装置の概略断面図、(B)は媒体と排出口の寸法関係の説明図、(C)は図3(A)の線III−IIIに沿う上下の壁部の概略断面図。
図4】画像読取装置の動作説明図。
図5】画像読取ユニットの可動機構の説明図。
図6】(A)は本発明の他の実施形態に係る画像読取装置の外観図、(B)は規制部材の外観図。
図7】(A)及び(B)は規制部材の動作説明図。
図8】(A)は図7(A)の線V−Vに沿う規制部材周辺の概略断面図、(B)は壁部に溝を設けた例を示す概略断面図。
図9】(A)及び(B)は規制部材と画像読取ユニットとの連動機構の説明図。
図10】(A)及び(B)は規制部材の他の例を示す説明図。
図11】他の例の規制部材の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1(A)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの外観図、図1(B)は図1(A)の線I−Iに沿う画像読取装置Aの概略断面図、図2は画像読取装置Aの平面図、図3(A)は図1(A)の線II−IIに沿う画像読取装置Aの概略断面図である。
【0011】
画像読取装置Aは、第1媒体M1及び第2媒体M2を搬送しながらその画像を読み取る機構を備えた搬送・読取部10と、その両側に配置された収容部20、21と、を備える。収容部20には媒体M1及び媒体M2を搬送する搬送機構15の駆動源155が配置される。駆動部155は例えばモータと、モータの出力を後述するローラの駆動軸等に伝達する伝達機構と、を備える。収容部21には例えば制御回路等が収容される。
【0012】
媒体M1は本実施形態の場合、シート状の媒体であり、例えば紙類である。媒体M2は本実施形態の場合、媒体M1よりも幅狭で厚さが厚い媒体であり、例えばプラスチック製のカード類である。
【0013】
搬送・読取部10の一方端部には、給紙トレイ111が開閉可能に設けられている。この給紙トレイ111を開状態とした状態においては、画像読取装置Aの上部端側に媒体M1を導入するための導入部11が開放される。一方、搬送・読取部10の他方端部には媒体M1が排出される排出口12が形成されている。この排出口12の一部は、例えば、本実施形態では、媒体M2が手差し等で導入される導入口(挿入口)と、読取部によって画像を読み取った後の媒体M2の排出口とを兼ねている。また、この排出口12は、媒体M1を排出するための排出口12aと、排出口12aよりも上下の高さが拡大され、媒体M2を導入、排出するための排出口12bと、を備える。
【0014】
排出口12bが排出口12aよりも上下の高さが拡大されていることで、ユーザが視覚的に媒体M2の導入位置が分かり易いという利点がある。また、排出口12bには、その上下、左右の縁部に開口面積が徐々に縮小するテーパ12b'を形成しており、媒体M2を排出口12bから挿入し易くしている。
【0015】
導入部11には、媒体M1を搬送・読取部10内に導入するための給紙口(導入口)110が設けられていると共に、本実施形態の場合、自動給紙装置(ADF)が配設されている。ADFは、複数枚の媒体M1が積載される給紙トレイ111と、フィードローラ122と、分離パッド113と、を備える。
【0016】
給紙トレイ111は、回転ヒンジ部111aを有し、搬送・読取部10の上面に折り畳み可能に構成されており、使用時は各図に示す開状態で使用される。フィードローラ112は駆動部155により回転駆動され、給紙トレイ111に積載された媒体M1のうち最下層に位置する媒体M1を給送するものである。
【0017】
分離パッド113は、フィードローラ112の外周面と接するように設けられており、フィードローラ112の回転に伴って給送される媒体M1を、この分離パッド113とフィードローラ112の外周面との間に取り込むことで、1枚ずつ自動で分離して給送することができる。
【0018】
フィードローラ112と分離パッド113とは、搬送・読取部10の左右の幅方向の中央部にのみ設けられており、図3(A)に示すように排出口12bの背後の領域においては設けられていない。これは媒体M2の読取時に媒体M2と、フィードローラ112及び分離パッド113とが干渉することを回避するためである。
【0019】
媒体M1、M2が搬送される搬送経路(搬送空間)RTは、その天壁を形成する壁部156と、その底壁を形成する157と、から形成される。壁部156、157は搬送・読取部10の略全域に渡って配設されている。
【0020】
主に図1(B)を参照して、搬送部15は、媒体M1の搬送機構として、搬送・読取部10の左右の幅方向に延在する駆動軸152a、154a、従動軸151a、153aを備える。媒体M1の搬送機構は、駆動軸152aに設けられた駆動ローラ152及び従動軸151aに設けられた従動ローラ151を備える搬送ローラ対と、駆動軸154aに設けられた駆動ローラ154及び従動軸153aに設けられた従動ローラ153を備える搬送ローラ対と、を備える。
【0021】
これら各ローラは、搬送・読取部10の左右の幅方向に1又は複数設けられ、壁部156又は157に形成された開口部を通って搬送経路RT内に進入している。ADFにより導入部11から導入された媒体M1は、これらの搬送ローラ対によって、図1(B)において矢印で示す方向に搬送されて搬送経路RT内を排出口12(12a)へ搬送されて排出される。
【0022】
導入部11から排出口12に至る搬送経路RTの途中には画像読取ユニット13、14が配設されている。画像読取ユニット13、14は、搬送経路RT内を搬送される媒体M1、M2からその画像を読み取るユニットであり、搬送・読取部10の左右の幅方向略全域に渡って延在している。画像読取ユニット13、14は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。
【0023】
画像読取ユニット13は搬送される媒体M1、M2の上面を、画像読取ユニット14は搬送される媒体M1、M2の下面を、それぞれ読み取るように画像読取ユニット13は搬送経路RTの天部側に、画像読取ユニット14は搬送経路RTの底部側にそれぞれ配置されている。本実施形態では、このように媒体M1、M2の両面を読み取る構成としているが、画像読取ユニット13、14のいずれか一方を配して片面を読み取る構成としてもよい。なお、画像読取ユニット13、14での媒体M1の画像読取のタイミングは、画像読取ユニット13、14の上流側に配置されたセンサ30aで検出される。センサ30aは例えば光センサである。
【0024】
ここで、上述した媒体M1の導入部11から排出口12への搬送にあっては、フィードローラ112と搬送ローラ対(駆動ローラ152及び従動ローラ151)の間の屈曲部RTwで媒体M1を湾曲させて搬送させていることから、カード状の媒体(特に厚手の媒体、高剛性の媒体等)は搬送が困難となる。そこで、媒体M2については排出口12bから導入して画像読取ユニット13、14へ搬送して画像を読み取りび排出口12bから排出するようにしている。このように媒体M1の搬送経路RTを屈曲させることにより、画像読取装置Aにおける装置の高さ寸法、奥行き寸法等を小さくでき、装置全体の小型化を図ることができる。主に図3(A)を参照して、搬送部15の媒体M2の搬送機構について説明する。
【0025】
搬送部15は、媒体M2の搬送機構として、駆動軸152aに設けられた駆動ローラ152'及び従動軸151aに設けられた従動ローラ151'を備える搬送ローラ対と、駆動軸154aに設けられた駆動ローラ154'及び従動軸153aに設けられた従動ローラ153'を備える搬送ローラ対と、を備える。
【0026】
詳細には、搬送手段である駆動部155は、導入部11から排出口12に向けて媒体搬送を行う第1搬送モード(通常搬送モード)と、排出口12bから画像読取ユニット13、14に向けて媒体搬送を行う第2搬送モード(逆搬送モード)とを有し、両モードを切り替え制御可能となっている。
【0027】
例えば、本実施形態では、排出口12bへの媒体M2の導入に伴って逆搬送モードで媒体M2を搬送し、画像読取ユニット13、14に対向する領域を媒体M2が通過した後に通常搬送モードに切り替え可能となっている(以下、媒体M2の「スイッチバック搬送」ともいう)。なお、媒体M2のスイッチバック搬送においては、搬送方向を転換する際に連続的に搬送してもよいし、媒体M2を一時的に停止するようにしてもよい。
【0028】
ところで、本実施形態では、画像読取ユニット13、14よりも導入部11側、具体的には、画像読取ユニット13、14と搬送ローラ対(駆動ローラ152及び従動ローラ151)との間には、媒体M2の到達及び通過を検知するためのセンサ31が設けられている。
【0029】
センサ31は、媒体M2の搬送時において、画像読取ユニット13又は14で読み取った媒体M2を排出口12bから排出するために逆搬送するタイミング(スイッチバック搬送のタイミング)を取るために用いる。なお、媒体M2の画像読取においては、往路又は復路の何れかで両面を読み取ってもよいし、往路と復路とで片面ずつ分けて読み取ってもよい。
【0030】
また、本実施形態の場合、各ローラ151'乃至154'は、各ローラ151乃至154よりも小径のものを使用している。これは、媒体M1よりも媒体M2の方が厚さが厚いことを考慮したものである。もっとも、いずれのローラについて同径のものを使用することも可能である。
【0031】
なお、各ローラ151'乃至154'の少なくとも表面層が、各ローラ151乃至154よりも柔らかい素材(低硬度のゴム、エラストマーやスポンジ等のクッション性素材)によって形成されていることが好ましい。これは、媒体M2の種類等に起因した厚み変動を適度に吸収しながら、適切な搬送力を確保するためである。
【0032】
また、媒体M2としてクレジットカードを例に挙げると、文字領域におけるエンボス部分がある場合、そのエンボス部分を各ローラ151'乃至154'の弾性変形によって吸収し、搬送時にエンボス部分が局所的に抵抗領域となって媒体M2が斜行することを有効に防ぐことができる。このような場合、各ローラ151'乃至154'は、各ローラ151乃至154と同径のものを使用してもよい。
【0033】
本実施形態では、媒体M1の搬送機構と、媒体M2の搬送機構とで駆動軸152a、154a、従動軸151a、153aを共用し、これにより駆動部155も共用している。しかし、媒体M1の搬送部と媒体M2の搬送部とをそれぞれ独立して構成してもよい。
【0034】
ユーザが手差しで媒体M2を導入する際、その向きが適切でないと媒体M2の搬送に際して斜行を生じるおそれがある。斜行を防止するために以下の構成を備える。
【0035】
本実施形態では、排出口12bの背後の領域において、図3(A)に示すように壁部156、157がそれぞれ凹部156a、157aを備える。凹部156a、157aは、媒体M2の左右幅に対応した左右幅(例えば媒体M2の左右幅よりも僅かに幅広)を有して、奥行き方向(媒体M2の搬送方向)に延設されている。
【0036】
凹部156aは上方にへこみ、凹部157aは下方にへこんでいる。へこみの深さは媒体M2の厚さにしたがって設定される。図3(B)は媒体M2の厚さtと、搬送経路RTのうち、凹部156a、157aが形成された部分の上下方向の高さK1と、搬送経路RTのうち、凹部156a、157aを除く部分の上下方向の高さK2との関係を示す。なお、排出口12aの高さもK2である。
【0037】
そして、これらの関係は、K2<t<K1という関係を有している。このような関係を有していることで、媒体M2をユーザが排出口12に差し込む際、排出口12b以外の部分に差し込むことが困難となり、適切な位置に差し込むことを促すことができる。
【0038】
そして、凹部156a、157aの内側側面は、図3(C)に示すように媒体M2の幅方向の側面部に対向するように媒体M2の搬送方向に沿って配置され、排出口12bから搬送経路RTへ導入される媒体M2を案内する規制壁部SWを形成することになる。この規制壁部SWの存在により媒体M2の斜行を防止することができる。この規制壁部SWは、媒体M1との関係においては、媒体M1が通過する位置よりも上又は下に存するので、媒体M1の搬送時にその支障になることもない。本実施形態の場合、凹部156a、157aの端部は排出口12まで延設されており、排出口12bを構成している。
【0039】
なお、本実施形態では、壁部156、157のそれぞれに凹部156a、157aを形成したが、いずれか一方に凹部を形成し、規制壁部SWも上側又は下側の一方のみとしてもよい。
【0040】
次に、図4を参照して媒体M2の画像読取時の画像読取装置Aの動作について説明する。本実施形態では搬送・読取部10の背部に、開口部16が形成されており、媒体M2の画像読取時に媒体M2を直線的に搬送し、開口部16から媒体M2を一時的に突出させる。これは画像読取装置Aのコンパクト化に寄与する。
【0041】
具体的には、図2に示すように、例えば、本実施形態では、画像読取装置Aの奥行き方向の長さ寸法Dは、媒体M2の長手方向の長さ寸法D´と略同等としている。また、媒体M2の搬送経路RTは、排出口12bから媒体M2の搬送経路の一部を通って屈曲部RTwに開口するスリット(媒体M2専用の搬送経路であって、本実施形態ではスイッチバックのための退避エリア)に連通して形成された直進経路からなる。このスリットは、例えば、本実施形態では、画像読取装置Aの背部(背面)に開口部16として開放されている。
【0042】
このため、排出口12bから媒体M2を導入後に、媒体M2の先端が画像読取装置Aの後端部に到達する状態では、画像読取装置A内部に媒体M2の全体が一時的に収容される。その後、媒体M2の後端部がセンサ31を通過した時点で、媒体M2がスリット内に突入すると共に駆動部155がスイッチバック搬送に切り替えられる。
【0043】
このとき、媒体M2の先端部側は、一時的に開口部16から突出することになる。このときも、媒体M2は、その後部側が規制壁部SWに案内されるので、幅方向の移動が実質的に規制される。これにより、媒体M2のスイッチバック搬送時においても媒体M2の斜行を有効に防止することができる。
【0044】
このように、本実施形態においては、媒体M2の斜行防止のための規制壁部として、媒体M2の搬送経路RTにおける少なくとも画像読取ユニット13、14の排出口12b側及びその反対側(開口部16側)に対応する部分にそれぞれ各壁部(媒体M2の搬送ガイド)が設けられている。これにより、本実施形態の画像読取装置Aは、媒体M1の搬送を可能としながらも一部の搬送経路を兼用して媒体M2のスイッチバック搬送を実現しつつ、媒体M2の斜行を有効に防止することができて、画像読取の品質を向上することができる。
【0045】
図4において、ST1はユーザにより媒体M2が排出口12bに導入された状態を示す。規制壁部SWの案内を利用してユーザは媒体M2を簡易に正しい姿勢で排出口12bに導入することができる。媒体M2の導入は、センサ30で検出される。センサ30は例えば反射型の光センサである。センサ30で媒体M2の導入(実際には媒体M2の先端部側の到達)が検出されると、駆動ローラ154'、152'を回転駆動して媒体M2が矢印方向に搬送され、排出口12bに導入された媒体M2が画像読取ユニット13、14へ搬送される。搬送の際、規制壁部SWの存在により媒体M2の面方向の移動が規制されて媒体M2の斜行が有効に防止される。
【0046】
媒体M2が画像読取ユニット13、14を通過する際、画像読取ユニット13、14によりその表裏面の画像が読み取られる。ST2は読み取りが完了した状態を示す。媒体M2はその一部が開口部16から突出している。
【0047】
読み取りが完了すると、駆動ローラ154'、152'を逆方向に回転駆動して媒体M2が逆方向に搬送される。読み取りの完了の判断には例えば画像読取ユニット13、14の読み取り結果を利用することができる。ST3は媒体M2を逆方向に搬送している状態を示す。なお、画像の読み取りはこの逆方向の搬送途中で行ってもよい。
【0048】
ST4は媒体M2を排出口12bから排出途中の状態を示す。媒体M2が排出口12bから排出されると一単位の処理が終了する。
【0049】
こうして本実施形態では、規制壁部SWにより媒体M2の斜行を防止することができ、しかも、規制壁部SWが媒体M1の搬送時において媒体M1と干渉しないようにすることができる。
【0050】
<第2実施形態>
画像読取ユニット13、14を固定して配設した場合、両者の読み取り面の間隔は、媒体M1よりも厚さが厚い媒体M2が通過可能な間隔となる。このため、媒体M1の表裏面から画像読取ユニット13、14の読み取り面が離れてしまう場合があり、より鮮明な画像を得られにくい場合がある。そこで、画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔が近接、離間するように画像読取ユニット13、14を可動させる可動機構を設けてもよい。図5はその一例を示す。
【0051】
同図において画像読取ユニット13は、ガイド板131、131により上下に変位可能に設けられていると共にコイルバネ等の弾性部材132により吊り下げ状態で支持されている。画像読取ユニット14は、ガイド板141、141により上下に変位可能に設けられていると共にコイルバネ等の弾性部材142により上方に付勢されている。これにより、媒体M2の厚みに応じて画像読取ユニット13が搬送経路から離れる方向に移動自在となる。
【0052】
なお、弾性部材132による画像読取ユニット13の吊り下げ位置、弾性部材142による画像読取ユニット14の付勢位地は、各画像読取ユニットの長手方向両端部側にそれぞれ配置することが望ましい。画像読取ユニットの一端部側での媒体M2の搬送時において媒体M2に対して効率よくユニット読取面を密着させることができるからである。また、画像読取ユニット13、14の、媒体M1、M2の搬送方向の両端部には傾斜面13a、14aが形成されている。
【0053】
通常時にはST11の状態にある。この状態では画像読取ユニット13はその最下位置、画像読取位置14はその最上位置に位置しており、画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔は媒体M1が通過可能な範囲で狭い間隔である。なお、画像読取ユニット13の最下位置、画像読取位置14の最上位置を規定するストッパをそれぞれ設けてもよい。
【0054】
媒体M2の通過時には、傾斜面13a、14aが媒体M2と当接することで画像読取ユニット13は上に、画像読取ユニット14は下に、それぞれ移動し、各読み取り面の間隔は媒体M2の厚み分に広がる。媒体M2の通過が完了すると、弾性部材132、142により、再びST11の状態に戻る。
【0055】
こうして本実施形態では媒体M1、M2に応じて画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔が変化するので、より好適な画像読取が実現できる。なお、本実施形態では、画像読取ユニット13、14のそれぞれを上下動するように構成したが、何れか一方の画像読取ユニットだけ上下動するようにしてもよい。
【0056】
<第3実施形態(参考例)
上記第1実施形態では、規制壁部SWを壁部156、157を利用して形成したが、別の部材を用いて形成してもよい。図6(A)は本発明の他の実施形態に係る画像読取装置Bの外観図、図6(B)は規制部材40の外観図、図7(A)及び(B)は規制部材40の動作説明図であり、図6(A)の線IV−IVに沿う画像読取装置Bの概略断面図である。これらの各図において、画像読取装置Bの各構成のうち、画像読取装置Aに対応する構成については同じ符号を付して説明を割愛し、以下、異なる構成について説明する。
【0057】
本実施形態の場合、排出口12、搬送経路RTの上下方向の高さは、媒体M2の厚さを基準としており、全域に渡って同じ高さとしている。
【0058】
規制部材40は、天部41bと一対の側部41aとを有する、略コの字型の本体部41と、天部41bから前方に延設された摘み部42と、を備える。本体部41には従動ローラ153'及び従動軸153aと、規制部材40との干渉を避けるための切り欠き43が形成されている。また、側部41aの下端の前後部分には傾斜面41a'が形成されている。
【0059】
規制部材40は、摘み部42を除いて搬送・読取部10内に設けられており、上下方向に変位可能になっている。摘み部42は搬送・読取部10の正面に形成された開口部10aから外部に突出し、ユーザが操作可能となっている。開口部10aは規制部材40の上下の変位を許容するよう、上下方向の高さが設定されている。
【0060】
図7(A)は規制部材40が下側の案内位置に位置している状態を示している。図8(A)は図7(A)の線V−Vに沿う規制部材40周辺の概略断面図である。規制部材40は、その側部41aが壁部156に設けたスリットを通過して壁部157上に着地した状態となっている。側部41aの内側側面は規制壁部SWを形成している。この案内位置では、規制壁部SWが排出口12から搬送経路RTへ導入される媒体M2を案内し、その斜行を防止する。
【0061】
なお、図8(B)に示すように壁部157に溝G、Gを設けて側部41aの下端が溝Gに進入するようにすることができる。これにより側部41aの下端と壁部157との間に隙間が生じて、規制壁部SWが媒体M2を案内しない事態をより確実に防止できる。
【0062】
本実施形態の場合、規制壁部SWは排出口12と搬送ローラ対(153'、154')との間の領域設けられており、その範囲内で媒体M2の斜行を防止する。したがって、上記第1実施形態と比べて媒体M2を案内する長さが狭い。しかし、媒体M2の斜行の原因の多くが、ユーザが媒体M2を導入する際に、媒体M2の向きが不適切であることにあるため、本実施形態の範囲で規制壁部SWが設けられていても、媒体M2の斜行防止に一定の効果がある。
【0063】
図7(B)は規制部材40が上側の退避位置に位置している状態を示している。規制部材40の側部41aは、概ね搬送経路RTから脱した状態にあり、搬送経路RTを通過する媒体M1の搬送を妨げない。
【0064】
ユーザは摘み部42を摘んで規制部材40を上下することで、媒体M1をADFにより自動給紙する場合は、図7(B)の退避位置に、媒体M2を排出口12から手差しで導入する場合は図7(A)の案内位置に、規制部材40を変位させる。なお、媒体M1の読み取りの際、ユーザが規制部材40を案内位置に変位させることを忘れたとしても、本実施形態の場合、傾斜面41a'の存在により、媒体M1が傾斜面41a'に当接して規制部材40を押し上げて、媒体M1が詰まることを防止することができる。
【0065】
こうして本実施形態では、規制壁部SWにより媒体M2の斜行を防止することができ、しかも、規制壁部SWが媒体M1の搬送時において媒体M1と干渉しないようにすることができる。
【0066】
なお、規制部材40が通常は退避位置に位置するように、規制部材40を常時付勢するコイルバネ等の弾性部材を設けてもよい。また、本実施形態では、規制部材40を手動で上下するようにしたが、自動で上下する電動アクチュエータを設けてもよい。
【0067】
<第4実施形態>
上記第3実施形態と上記第2実施形態とは互いに組み合わせることが可能である。また、上記第2実施形態で述べた媒体M1、M2に応じて画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔を変化させる観点で、規制部材40の変位に連動して画像読取ユニット13、14の少なくともいずれか一方を変位させる連動機構を設けてもよい。
【0068】
図9(A)及び(B)は規制部材40と画像読取ユニット13との連動機構50の説明図である。連動機構50は規制部材40に設けたラック51と、画像読取ユニット13に設けたラック52と、ラック51とラック52との間において回転自在に支持され、これらに噛合するピニオン53と、を備える。なお、画像読取ユニット13は、例えば、図5に示したガイド板131、131により上下に変位可能に設けることができる。
【0069】
この連動機構50により、規制部材40が上昇する場合には画像読取ユニット13は降下し、規制部材40が降下する場合には画像読取ユニット13は上昇する。そして、
規制部材40が退避位置にある場合は画像読取ユニット13が媒体M1読取用の、画像読取ユニット14に近接した位置に、規制部材40が案内位置にある場合は画像読取ユニット13が媒体M2読取用の、画像読取ユニット14から離間した位置に、それぞれ位置するように位置関係を設定する。これにより、媒体M1、M2に応じて画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔を変化させることができる。
【0070】
<第5実施形態(参考例)
上記第3実施形態では、規制部材40を上下の平行移動で、案内位置と退避位置との間で変位可能としたが、揺動により変位可能としてもよい。図10(A)及び(B)は規制部材60の説明図であり、規制部材60を使用した画像読取装置Cの概略断面図である。図11は規制部材60の説明図であり、揺動機構の概略を示す。以下、上記第3実施形態の例と異なる構成について説明する。
【0071】
主に図11を参照して規制部材60は、媒体M1の搬送方向と直交する方向と平行な軸線回りに揺動自在に設けられている。具体的には、本実施形態の場合、一対の規制部材60が1組で用いられ、各規制部材60は、従動軸153aが遊挿される軸孔61を有して、軸孔61から排出口12側へ延設された板状をなしている。また、各規制部材60は、媒体M1の搬送方向で後端部となる位置に傾斜面63が形成されている。
【0072】
軸孔61の両側方には、規制部材60の、従動軸153aの軸方向の移動を規制する止め部材62が従動軸153a装着されている。一対の規制部材60は媒体M2の左右方向の幅に応じた距離だけ離間して従動軸153aに取り付けられ、その内側側面は規制壁部SWを構成する。
【0073】
なお、本実施形態では、一対の規制部材60を1組として用いる構成としたが、両者を一体化して一部材としてもよい。また、揺動中心軸を従動軸153aで兼用したが、これとは別の専用の揺動中心軸を設けてもよい。
【0074】
次に、図10を参照して規制部材60の動作について説明する。上記第3実施形態と異なり、規制部材60はユーザが手動で操作を行うものではなく、このため、その全体が搬送・読取部10内に設けられている。
【0075】
通常時は、規制部材60はその自重による揺動で図10(A)に示す案内位置に位置している。この状態では、規制部材60は壁部156に設けたスリットを通過して壁部157上に着地した状態となっている。丁度図8(A)における規制部材40の側部41と同様の状態であり、規制部材60の内側側面の規制壁部SWは排出口12から搬送経路RTへ導入される媒体M2を案内し、その斜行を防止する。
【0076】
媒体M1が搬送されて排出口12から排出される場合には、媒体M1の先端部が傾斜面63に当接して規制部材60に揺動を生じさせ、図10(B)に示す退避位置に自動的に移動する。つまり、規制部材60の自重による同図反時計回りの揺動力を、媒体M1の搬送力による同図時計回りの揺動力が上回ることにより自動的に規制部材60が退避位置に移動する。図11に示す各矢印は、媒体M1の搬送方向と、規制部材60の揺動方向とを示している。
【0077】
こうして本実施形態では、規制壁部SWにより媒体M2の斜行を防止することができ、しかも、規制壁部SWが媒体M1の搬送時において媒体M1と干渉しないようにすることができる。なお、本実施形態と上記第2実施形態や図8(B)の構成例(溝G)との組み合わせも好適である。
【0078】
<他の実施形態>
以上本発明を第1〜第5実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した第1〜第5実施形態に限定されるものでなく、また、各実施形態は相互に組み合わせてもよい。
【0079】
さらに、上述した第1実施形態等では、媒体M2をスイッチバック搬送する場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、媒体M2を媒体M1の排出口から導入して装置背面側(開口部16)に排出するようにしてもよい。
【0080】
また、上述した第1実施形態等では、媒体M2をスイッチバック搬送する際に装置背面側に一時的に突出させるようにしたが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、画像読取ユニットの端部と装置背面との間の領域を十分に確保することにより、装置背面から媒体M2を突出させないようにしてもよい。
【0081】
さらに、媒体M2が長方形状のもの(クレジットカード等)の場合において、第1実施形態等のように媒体M2をその長手方向一端部から装置に挿入するのではなく、例えば、媒体M2の幅方向一端部からの挿入、即ち、媒体M2の長辺側の端部からの挿入によって媒体M2を搬送して画像読取を実行するようにしてもよい。
【0082】
この場合には、媒体M2を装置背面から突出させないようにすることが可能となり、装置を大型化させることなくスイッチバック搬送を実現できる。また、装置背面側の障害物に媒体M2が衝突してスイッチバック搬送に支障がでてしまうことを防ぐこともできる。さらに、装置背面に媒体M2の突出用開口を設けなくてもよくなるため、例えば、装置内部への埃等の混入を防止できる他、装置の剛性及び耐久性等も向上することができる。
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11