特許第5745835号(P5745835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745835
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】充填十分性の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20150618BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   G01N27/46 338
   G01N27/30 353T
   G01N27/30 353B
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-275896(P2010-275896)
(22)【出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2011-123074(P2011-123074A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2013年11月12日
(31)【優先権主張番号】61/285,916
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502328710
【氏名又は名称】ライフスキャン・スコットランド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース ジェイムズ イアン
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ リアン
(72)【発明者】
【氏名】カルドーシ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】リーチ クリス
(72)【発明者】
【氏名】モファット ジェイムズ
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−523327(JP,A)
【文献】 特表2007−514931(JP,A)
【文献】 特表2002−526759(JP,A)
【文献】 特開平08−320304(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0240166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース濃度を測定するための計測器に電気的に接続する試験ストリップに適用される流体試料の体積の十分性を判定する方法であって、前記方法が、
第1作用電極と、
共用の参照電極と、
第2作用電極と、
前記第1作用電極の少なくとも一部分と、前記共用の参照電極の少なくとも一部分と、前記第2作用電極の少なくとも一部分との上に配置される、少なくとも1つの伝達層と、
前記第1作用電極の少なくとも一部分の上に配置される前記伝達層の少なくとも一部分の上に配置される、第1検体試薬層と、
前記第2作用電極の少なくとも一部分と前記共用の参照電極の少なくとも一部分との上に配置される前記伝達層の少なくとも一部分の上に配置される、第2検体試薬層と、を有する試験ストリップを準備する工程と、
前記第1検体試薬層及び前記第2検体試薬層の一方の少なくとも一部分の上に、生理学的試料を付着させる工程と、
前記付着させる工程の後、前記第1作用電極と、前記共用の参照電極と、前記第2作用電極との間に、第1時間周期の間、第1電圧を近似的に印加する工程と、
前記第1時間周期の間の、前記第1作用電極における第1電流を測定する工程と、
第1電圧以外の電圧を、前記共用の参照電極と前記第2作用電極との間に、前記第1時間周期後の第2時間周期の間、印加する工程と、
前記第2作用電極及び前記参照電極における第2電流を測定する工程と、
前記第2時間周期の間の、前記第2作用電極における推定第2電流を予測する工程と、
前記第2時間周期の間の、測定された前記第2電流と前記推定第2電流との差異を評価する工程と、
前記第2時間周期の間の測定された前記第2電流と前記第2時間周期の間の前記推定第2電流との差異が許容限界を超える場合に、体積の不十分性を示すエラー状態を表示する工程と、を含み、
前記第1電流は、伝達体の還元電流であり、
前記第2電流は、伝達体の酸化電流であり、
前記推定第2電流は、十分に充填された試料からの既知の第1電流のデータ及び既知の第2電流のデータと相関されて測定された前記第1電流から判定される、方法。
【請求項2】
前記第1電圧がゼロボルトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1電圧が、前記参照電極と、前記第1作用電極と、前記第2作用電極との間に、0秒〜4秒の間印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1時間周期後の第2時間周期の間の、前記第1電圧以外の電圧が、200ミリボルト〜500ミリボルトのいずれの値の電圧をも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定された前記第2電流と前記推定第2電流との間の、前記許容限界は、−40%〜+40%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グルコース濃度を測定するための計測器に電気的に接続する試験ストリップに適用される流体試料の体積の十分性を判定する方法であって、前記方法が、
伝達層上に配置される第1試薬層によってコーティングされた第1作用電極と、伝達層によってコーティングされた共用の参照電極と、伝達層上に配置される第2試薬層によってコーティングされた第2作用電極との間に、第1電圧を印加する工程と、
第1時間周期の間の、前記第1作用電極における第1電流を測定する工程と、
第1電圧以外の電圧を、前記参照電極と前記第2作用電極との間に、前記第1時間周期後の第2時間周期の間、印加する工程と、
前記第2時間周期の間の、前記第2作用電極における第2電流を計測器で測定する工程と、
前記第2時間周期の間の、前記第2作用電極における推定第2電流を予測する工程と、
前記第2作用電極における、前記第2時間周期の間の測定された前記第2電流と前記第2時間周期の間の前記推定第2電流との差異を評価する工程と、
前記第2時間周期の間の測定された前記第2電流と前記第2時間周期の間の前記推定第2電流との差異が許容限界を超える場合に、体積の不十分性を示すエラー状態を表示する工程と、を含み、
前記第1電流は、伝達体の還元電流であり、
前記第2電流は、伝達体の酸化電流であり、
前記推定第2電流は、十分に充填された試料からの既知の第1電流のデータ及び既知の第2電流のデータと相関されて測定された前記第1電流から判定される、方法。
【請求項7】
前記第1電圧がゼロボルトを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1電圧が、前記参照電極と、前記第1作用電極と、前記第2作用電極との間に、0秒〜4秒の間印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1時間周期後の第2時間周期の間の、前記第1電圧以外の電圧が、200ミリボルト〜500ミリボルトを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第2時間周期の間の前記推定第2電流が、十分に充填された試料からの既知の第1電流のデータ及び既知の第2電流のデータと相関されて、測定された前記第1電流から判定される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
測定された前記第2電流と前記推定第2電流との間の、前記許容限界は、−40%〜+40%を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ユーザーの生理学的流体中の少なくともグルコース濃度を測定するための検体測定システムであって、前記検体測定システムが、
参照電極と、伝達体を有するマトリックス層上に配置される第1試薬層によってコーティングされた第1作用電極と、前記マトリックス層上に配置される第2試薬層を有する第2作用電極と、を有する基板を含み、これら電極は、対応する接触パッドに接続されている、試験ストリップと、
前記試験ストリップの前記接触パッドを受容する試験ストリップポートと接続する試験回路を有する検体計測器と、を含み、
前記第1試薬層及び前記第2試薬層の一方の少なくとも一部分の上には、生理学的試料が付着され、
前記試験回路は、前記検体計測器が、前記第1作用電極と、前記参照電極と、前記第2作用電極との間に、第1時間周期の間、第1電圧を近似的に印加して、前記第1時間周期の間の、前記第1作用電極における第1電流を測定できるように、及び、前記第1電圧以外の電圧を、前記参照電極と前記第2作用電極との間に、前記第1時間周期後の第2時間周期の間、印加して、前記第2作用電極及び前記参照電極における第2電流を測定できるように構成され、
前記検体計測器は、前記第2時間周期の間の、前記第2作用電極における推定第2電流を予測し、第2作用電極における予測された前記推定第2電流と前記第2作用電極における測定された前記第2電流との比較によって、前記試薬層の不十分な試料の充填を判定するように構成され
前記検体計測器は、前記推定第2電流を、前記試薬層に十分に充填された試料からの既知の第1電流のデータ及び既知の第2電流のデータに相関された、前記第1作用電極における測定された前記第1電流から判定する、検体測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参考としてその全体が本出願に組み込まれる、先行出願の米国仮出願第61/285,916号(2009年12月11日出願)からの35 USC§ 119及び/又は§120に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は充填十分性の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学センサーは、流体試料中の物質の存在を検出又は測定するために長きにわたって使用されてきた。電気化学センサーは、少なくとも、電子移動剤(「電子伝達体」とも称される)と検体特異的生物触媒タンパク質(例えば、特定の酵素)とを含有する試薬混合物、及び1つ以上の電極を含む。そのようなセンサーは、電子伝達体と電極表面との間の電子移動、及び電気化学的酸化還元反応の測定による機能に依存する。電気化学バイオセンサーシステム又はデバイスにおいて使用される場合、電子移動反応は、流体試料中の測定されている検体の濃度に相関を示す電気信号によって監視される。
【0004】
血液又は血液由来の産物、涙、尿、及び唾液のような体液中の検体を検出するためのそのような電気化学センサーの使用は、特定個人の健康を維持するために重要であり、場合によっては不可欠なものとなっている。保健医療分野において、例えば、糖尿病患者のような人々は、体液中の特定構成成分を監視しなければならない。数多くのシステムにより、血液、尿、又は唾液などの体液を試験して、コレステロール、タンパク質、及びグルコースなどの特定の流体構成要素の濃度を容易に監視することが可能である。糖尿病、即ち、不充分なインスリン産生によって適正な糖質消化が妨げられる膵臓疾患を患っている患者は、血糖値を日単位で慎重に監視する必要がある。糖尿病の人々に対する日常検査及び血糖の制御が、目、神経、及び腎臓への重大な障害のリスクを低減させ得る。
【0005】
電気化学バイオセンサーは、測定に望ましくない影響を与え、また検出信号の精度不良の原因となり得る、試験試料中の妨害物質の存在によって、悪影響を受ける場合がある。精度不良の別の原因は、十分な試料が試験ストリップに適用されていないことによるものである。精度不良のこれらの原因は、不正確なグルコース指数を生じさせ、潜在的に危険な血糖値に患者が気付かないままとなる場合がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、作用電極から下流側に配置された追加の充填検出用電極を有し、十分な体積の流体が試験ストリップに適用されているかを判定することが知られている。追加の電極は、電極セルの寸法を増大させ、このことがセルを充填するために必要な試料の寸法を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,582,697号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出願者らは、別個の充填検出用電極を必要とすることのない、試験ストリップに適用される流体試料の体積の十分性の判定に使用可能なシステム及び方法が必要であるという認識に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のことを考慮し、また一態様に従って、計測器と試験ストリップとを有するシステムを動作させる方法を提供する。試験ストリップは、第1作用電極、共用の参照電極、及び第2作用電極を含み、全ての電極は伝達層でコーティングされる。一実施形態では、第1検体の濃度を測定するための第1試薬層が、第1作用電極を覆う伝達層の一部分上に配置され、第2検体の濃度を測定するための第2試薬層が、第2作用電極を覆う伝達層の一部分上に配置される。別の実施形態では、第1作用電極は伝達層によってのみコーティングされる。
【0010】
計測器は、共用の参照電極と第1作用電極との間に第1試験電圧を印加し、また共用の参照電極と第2作用電極との間に第2試験電圧を印加するための、電子回路を含む。計測器はまた、第1試験電流及び第2試験電流を測定し、少なくとも2つの検体濃度をこれら第1及び第2試験電流から算出するための、信号プロセッサを含む。この方法は、試験ストリップ内の第1作用電極と、共用の参照電極と、第2作用電極との間に第1電圧を印加する工程と、第1時間周期の間の第1作用電極における電流を測定する工程と、第1電圧以外の電圧を、共用の参照電極と第2作用電極との間に、第1時間周期後の第2時間周期の間、印加する工程と、第2時間周期の間の第2作用電極における電流を計測器で測定する工程と、第1電流に基づき、第2時間周期の間の第2作用電極における推定第2電流を予測する工程と、第2作用電極における、第2時間周期の間の測定第2電流と第2時間周期の間の推定第2電流との差異を評価する工程と、第2時間周期の間の測定第2電流と第2時間周期の間の推定第2電流との差異が許容限界を超える場合に、体積の不十分性を示すエラー状態を表示する工程と、によって達成され得る。
【0011】
一実施形態では、第1電圧はゼロであり、第1作用電極と、共用の参照電極と、第2作用電極との間に、約0秒〜約4秒の間、印加される。
【0012】
一実施形態では、第1時間周期後の第2時間周期の間の、第1電圧以外の電圧は、約200ミリボルト〜約500ミリボルトを含む。
【0013】
一実施形態では、第2時間周期の間の推定第2電流は、十分に充填された試料からの既知の第1電流のデータ及び既知の第2電流のデータと相関させて、測定第1電流から決定される。
【0014】
一実施形態では、許容限界は約−40%〜約+40%を含む。
【0015】
これら及び他の実施形態、特徴並びに利点は、以下に述べる発明のより詳細な説明を、はじめに簡単に述べる付属の図面と共に参照することによって当業者にとって明らかになろう。
【0016】
本明細書中に用いた明細書の一部をなす添付図面は、本発明の好適な実施形態を示したものであって、上記に述べた一般的説明並びに下記に述べる詳細な説明と共に、本発明の特徴を説明する役割(同様の数字は、同様の要素を表す)を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】少なくとも2つの検体の濃度を測定するためのシステムの平面図の代表的な実施形態。
図2】試験ストリップの斜視分解図の代表的な実施形態。
図3図2に示す試験ストリップの平面図の代表的な実施形態。
図4A】試験ストリップの遠位部上の導電層上に配置された、伝達層及び試薬層の平面図の代表的な実施形態。
図4B】試験ストリップの遠位部上の導電層上に配置された、伝達層及び試薬層の平面図の代表的な実施形態。
図5図2及び図3の試験ストリップと電気的接続を形成する、図1に示す計測器の機能的構成要素の概略図の代表的な実施形態。
図6図1に示すシステムを使用して体積の十分性を判定する方法のフローチャートの代表的な実施形態。
図7】計測器によって試験ストリップに印加される試験電圧を示すグラフの代表的な実施形。
図8A図7の試験電圧が試験ストリップに印加される際に発生する試験電流を示すグラフの代表的な実施形態。
図8B図7の試験電圧が試験ストリップに印加される際に第2電極において発生する試験電流。
図8C】較正された試験ストリップの群に関して作成した過去のデータに基いた、tにおいて第1電極で発生する電流とtにおいて第2電極で発生する電流との間の相関。
図8D】tにおける第2電流とtにおける実際の第2電流との間の相関。
図9A】本発明の方法の代表的な実施形態を、図2及び図3に示す試験ストリップで得たデータに適用する前の、一致/エラーのグリッド。
図9B】本発明の方法の代表的な実施形態を、図2及び図3に示す試験ストリップで得たデータに適用した後の、一致/エラーのグリッド。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきものであって、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は必ずしも一定の縮尺を有さず、特定の実施形態を示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。「発明を実施するための形態」は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として記載するものである。この説明文は、当業者による発明の製造、実施を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0019】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」なる語は、構成要素部分又は構成要素集合が、本明細書で述べるその所望の目的に見合って機能することを可能とするような適当な寸法交差を指していうものである。更に、本明細書で用いられる「患者」、「ホスト」、「ユーザー」、及び「被験者」なる語は、いずれかのヒト又は動物被験対象を指し、ヒト患者における本発明の使用は好ましい実施形態であるが、システム又は方法をヒトへの使用に制限することは意図されない。
【0020】
図1は、少なくとも2つの検体の濃度を測定するためのシステム100を示し、このシステム100は、計測器102及び試験ストリップ200を含む。計測器102は、ディスプレイ104、ハウジング106、複数個のユーザーインターフェースボタン108、及びストリップポート110を含む。計測器102は、ハウジング106内部に、メモリー120、マイクロプロセッサ122、試験電圧を印加し、また少なくとも2つの試験電流値を測定するための電子的構成要素、などの電子回路機構を更に含む。試験ストリップ200の近位部204は、ストリップポート110内に挿入され得る。ディスプレイ104は、少なくとも2つの検体の濃度、例えば、グルコース、及び/又はケトンの濃度を出力し得、また試験の実施方法についてユーザーにプロンプトを出すためのユーザーインターフェースを示すために使用され得る。複数個のユーザーインターフェースボタン108によって、ユーザーは、ユーザーインターフェースソフトウェアを進めて行くことにより計測器102を動作させることができる。ディスプレイ104は、所望により、バックライトを含み得る。
【0021】
任意選択のデータポート114は、接続導線に取り付けられた好適なコネクタを受容し、これにより計測器102は、パーソナルコンピュータなどの外部デバイスに接続され得る。データポート114は、データ(直列又は並列)の伝送を可能にするいずれのポート、例えば、有線若しくは無線形態の、シリアルポート又はパラレルポートであってよい。パーソナルコンピュータは、適切なソフトウェアを実行することで、セットアップ情報(例えば、現在の時刻、日付、及び言語)の入力及び変更を可能とし、また、計測器102によって収集されたデータの分析を実行することができる。更に、パーソナルコンピュータは、改善された診断及び治療のための、高度な分析機能の遂行、及び/又は他のコンピュータへのデータの転送(即ち、インターネット上で)を可能にし得る。計測器102をローカル又はリモートコンピュータと接続することにより、医療提供者による改善された治療が促される。
【0022】
図2及び図3は、試験ストリップ200の、それぞれ代表的な分解斜視図及び平面組立図であり、基板205上に配置される7つの層を含み得る。基板205上に配置される7つの層は、導電層250、絶縁層216、伝達層222、第1試薬層224及び第2試薬層226、接着層260、親水層270、並びに最上層80であり得る。試験ストリップ200は、基板205上に、導電層250、絶縁層216、伝達層222、第1試薬層224、第2試薬層226、及び接着層260が、例えばスクリーン印刷法を使用して順次配置される、一連の工程において製造され得る。親水層270及び最上層280は、一体化ラミネート、又は個別の層のいずれかとして、ロール状素材から基板205上に配置され、積層され得る。試験ストリップ200は、図2に示すように、遠位部203及び近位部204を有する。
【0023】
試験ストリップ200は、血液試料を引き込むことができる試料収容室292を含み得る。試料収容室292は、試験ストリップ200の近位端に入口を含み得る。以下に記載するように、出口又は空気抜きが、親水層270に含まれる。血液試料は、少なくとも2つの検体の濃度が測定され得るように、入口に適用されて試料収容室292を充填し得る。第1試薬層224及び第2試薬層226に隣接して位置する、接着層260の切り欠き部分の側縁部は、図2に示すように、試料収容室292の壁部を画定する。試料収容室292の底部、即ち「床」は、基板205、導電層250、及び絶縁層216の一部を含み得る。試料収容室292の上部、即ち「天井」は、遠位親水性部分232を含み得る。
【0024】
試験ストリップ200に関して、基板205は、図2に示すように、順次適用される層の支持に役立つ土台として使用され得る。基板205は、例えばMitsubishiなどの供給元から市販されている、ポリエチレンテレフタレート(PET)材料のような、ポリエステルシートの形態であってよい。基板205は、名目上、厚さ350ミクロン、幅370ミリメートル、及び長さ約60メートルの、ロール状フォーマットであってよい。
【0025】
導電層は、グルコースの電気化学的測定のために使用され得る電極を形成するために必要とされる。導電層250は、基板205上にスクリーン印刷されるカーボンインクから作製され得る。スクリーン印刷プロセスでは、カーボンインクをスクリーン上に積載し、次いでスキージを使用してスクリーンを通過させて移動させる。印刷されたカーボンインクは、約140℃の高温の空気を使用して乾燥され得る。カーボンインクは、VAGH樹脂、カーボンブラック、グラファイト(KS15)、並びにこれら樹脂、カーボン、及びグラファイトの混合物のための1つ以上の溶媒を含み得る。より具体的には、カーボンインクは、カーボンブラックとVAGH樹脂とを、好適な比率でカーボンインク中に混和してよく、これは、例えばDuPont、Fujifilm Sericol、Gwent、Acheson、又はEltecksから市販されている。
【0026】
試験ストリップ200に関して、導電層250は、図2に示すように、第1作用電極212、第2作用電極214、第1作用電極212及び第2作用電極214に共用される参照電極210、参照接触パッド211、第1接触パッド213、第2接触パッド215、参照電極トラック207、第1作用電極トラック208、第2作用電極トラック209、及びストリップ検出バー217を含み得る。図2に示す実施形態では、第1作用電極212と第2作用電極214との間のクロストークを最小限に抑えるために、参照電極210は、第1作用電極212と第2作用電極214の中間に位置決めされる。また、第1作用電極212は、参照電極210及び第2作用電極214の上流側にある。別の実施形態(図示せず)では、第2作用電極214が、参照電極210及び第1作用電極212の上流側にある。
【0027】
この導電層は、カーボンインクから作製することができる。参照接触パッド211、第1接触パッド213、及び第2接触パッド215は、試験計測器に電気的に接続するように構成され得る。参照電極トラック207は、参照電極210から参照接触パッド211に至る電気的に連続した経路を提供する。同様に、第1作用電極トラック208は、第1作用電極212から第1接触パッド213に至る電気的に連続した経路を提供する。同様に、第2作用電極トラック209は、第2作用電極214から第2接触パッド215に至る電気的に連続した経路を提供する。ストリップ検出バー217は、参照接触パッド211に電気的に接続する。試験計測器は、試験ストリップ200が適切に挿入されたことを、参照接触パッド211とストリップ検出バー217との間の導通状態を測定することにより検出し得る。
【0028】
絶縁層216は、液体試料によって湿潤され得る、参照電極210、第1作用電極212、及び第2作用電極214の一部分を露出させる、矩形開口218を含み得る。第1作用電極212、第2作用電極214、及び参照電極210の、この領域は、液体試料に曝露される領域として画定され得る。電極領域の画定に加えて、絶縁層216は、液体試料が電極トラック207、208、及び209に接触することを防止する。試験電流の振幅は、電極の有効面積に正比例するため、作用電極の機能領域を正確に画定することが重要である。一例として、絶縁層216は、Ercon,Incから購入可能なErconインクであってよい。試験ストリップはこの時点でプラズマ処理され得る。プラズマは、イオン化した高エネルギー粒子からなり、大気温度及び標準大気圧にて、高電圧ACにより作り出される。得られたプラズマを、基板から約100ミリメートルに定置させ、空気流中で下流に掃引して基板に衝突させる。プラズマ処理を使用して、スクリーン印刷されたカーボンベースの電極の表面を改質する。この表面改質は、カーボン表面の電気化学活性を増大させ、印刷層の表面エネルギーを増大させることにより、それらの層とその後の印刷層との間の良好な接着を可能にすると考えられる。プラズマ処理はまた、カーボン表面の電気化学性を改善し、伝達体との反応をより理想的にすると考えられる。
【0029】
伝達層222は、例えば、フェリシアニドのような伝達体、及び例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)のような補助因子を含む。一実施形態では、伝達層222は、フェリシアン化カリウム、NADH、トリス−HCL緩衝剤、ヒドロキシエチルセルロース、DC 1500消泡剤、Cabosil TS 610、ポリ(ビニルピロリドンビニルアセテート)、Triton X−100、塩化カルシウム及びanalar水を含み得る。
【0030】
第1試薬層224及び第2試薬層226は、図2に示すように、伝達層222上にそれぞれ配置される。第2試薬層226は、第2作用電極214及び参照電極210の上の伝達層222上に配置される。第1試薬層224及び第2試薬層226は、対象検体と選択的に反応する酵素のような化学物質をそれぞれ含み得、それにより検体の濃度を判定し得る。糖尿病の監視のための代表的な対象検体としては、グルコース及びケトンが挙げられる。一実施形態では、第1試薬層224は、ケトンと選択的に反応する少なくとも1つの酵素を含み、第2試薬層226は、グルコースと選択的に反応する酵素を含む。更に別の実施形態(図示せず)では、第1試薬層224は、検体と選択的に反応する酵素を含まず、第2試薬層226は、グルコースと選択的に反応する酵素を含む。
【0031】
一実施形態では、ケトンの濃度を判定するために使用される試薬層内の構成成分としては、β−ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(BHD)、トリス−HCL緩衝剤、ヒドロキシエチルセルロース、フェリシアン化カリウム、DC 1500消泡剤、Cabosil TS 610、ポリ(ビニルピロリドンビニルアセテート)、Triton X−100、塩化カルシウム及びanalar水が挙げられる。別の実施形態では、ケトンを測定するために使用される試薬層は、例えば、ジアホラーゼのような第2の酵素を含む。
【0032】
グルコースを測定するための試薬層内での使用に適した酵素の例は、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼのいずれかを含み得る。より具体的には、グルコースデヒドロゲナーゼは、ピロロ−キノリンキノン(PQQ)補助因子、又はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補助因子を有し得る。一実施形態では、グルコースの濃度を判定するために使用される試薬層内の構成成分としては、グルコースオキシダーゼ、トリス−HCL緩衝剤、ヒドロキシエチルセルロース、フェリシアン化カリウム、DC 1500消泡剤、Cabosil TS 610、ポリ(ビニルピロリドンビニルアセテート)、Triton X−100、塩化カルシウム及びanalar水を挙げることができる。
【0033】
第1試薬層224及び第2試薬層226は、試薬インクから形成され得、伝達層222上に配置されて乾燥される。試薬インクはまた、酵素インク又は試薬製剤とも称され得ることを留意されたい。試薬インクは、典型的には、グルコースなどの検体の電気化学的検出に使用される材料の分散及び/又は溶解のための、緩衝剤のような液体を含む。一実施形態では、第1試薬層224及び第2試薬層226は、連続する2つの工程において、伝達層222上にスクリーン印刷され得る。試薬インクは、スクリーン上に溢れるまで積載され得る。次に、スキージを使用して、試薬インクを、スクリーンを通過させて伝達層222上に移動させ得る。付着後、試薬インクは、約50℃の高温空気を使用して乾燥され得る。
【0034】
一実施形態では、第1試薬層224の領域は、第1作用電極212の全領域を覆うに十分な大きさであり、第2試薬層226は、第2作用電極214及び参照電極210の全領域を覆うに十分な大きさである。第1試薬層224及び第2試薬層226のそれぞれは、試験ストリップ200において使用され得る最大の電極領域に少なくとも相当する、十分な大きさの幅及び長さを含む。第1試薬層224及び第2試薬層226の幅は、約2ミリメートルであってよく、これは矩形開口218の幅の2倍を超える。
【0035】
図2を参照すると、第1試薬層224及び第2試薬層226の付着後に、接着層260が試験ストリップ200上に配置され得る。接着層260の諸部分は、第1試薬層224及び第2試薬層226と直接隣接、接触、又は部分的に重なり合うように位置合わせされ得る。接着層260は、供給元から市販の、水性アクリル共重合体感圧接着剤を含み得る。接着層260は絶縁層216、導電層250、及び基板205の一部分の上に配置される。接着層260は親水層270を試験ストリップ200に結合させる。
【0036】
親水層270は、図2に示すように、遠位親水性部分232及び近位親水性部分234を含み得る。間隙部235は、遠位親水部分232と近位親水部分234との間に含まれる。間隙部235は、血液が試料収容室292を充填する際に、側方空気抜きとしての役割を果たす。親水層270は、市販されている防曇コーティングのような親水性の一方の表面を有するポリエステルであってよい。
【0037】
試験ストリップ200に加えられる最終層は、図2に示すように、最上層280である。最上層280は、透明部分236及び不透明部分238を含み得る。最上層280は親水層270上に配置されると共に親水層270に接着される。最上層280は、一方の面上に接着剤コーティングを有するポリエステルであってよい。透明部分236は、遠位親水性部分232に実質的に重なり合っており、試料収容室292が十分に充填されていることを使用者が視覚的に確認できるようになっていることに留意されたい。不透明部分238によって、使用者は、例えば試料収容室292内の血液などの色を有する液体と、不透明部分238とを、高いコントラストで観察することが可能となる。
【0038】
図5は、試験ストリップ200と連携する計測器102の簡易化した概略図を示す。計測器102は、参照コネクタ180、第1コネクタ182、及び第2コネクタ184を含み、それぞれが、参照接触211、第1接触213、及び第2接触215と電気的接続を形成する。上述の3つのコネクタは、ストリップポート110の部分である。試験実施の際、第1試験電圧源186が、第1試験電圧Vを、第1作用電極212と参照電極210との間に印加し得る。第1試験電圧Vの結果として、次に計測器102が第1試験電流Iを測定し得る。同様の方法で、第2試験電圧源188が、第2試験電圧Vを、第2作用電極214と参照電極210との間に印加する。第2試験電圧Vの結果として、次に計測器102が第2試験電流Iを測定し得る。一実施形態では、第1試験電圧Vと第2試験電圧Vとは、ほぼ等しくてよい。
【0039】
図4Aに示すように、3つの電極の全て(第1作用電極212、参照電極210、及び第2作用電極214)は、好適な伝達体、例えば、ルテニウム又はフェリシアニドなどをその中に配置して有するマトリックス層でコーティングされる。第1酵素試薬225を、第1作用電極212及び参照電極210のそれぞれの少なくとも一部分の上に付着させる。第2酵素試薬226を、参照電極210及び第2作用電極214の上に付着させる。この構成により、2つの異なる検体の検出が可能になると考えられる。
【0040】
この実施形態の動作を説明するために、図4Bにおける試験ストリップの一部分の概略の構成を参照されたい。図4Bでは、試験ストリップの全ての電極(210、212、及び214)は、内部に分散された好適な伝達体(例えば、フェリシアニド)を有するマトリックス層222によって覆われている。この試験ストリップを、約0Vの第1電圧を各電極ペア(第1のペアは第1作用電極212及び参照電極210であり、第2のペアは第2作用電極214及び参照電極210である)に印加する計測器内に挿入する。試験ストリップが血液230で充填される場合、血液230は複数の検体(例えば、ケトン及びグルコース)を含有する。酵素は、いったん血液230で湿潤するとフェロシアニドを形成する、フェリシアニドと反応する。第1電圧(例えば、〜0V)が維持されている状態では、フェリシアニドへと戻るフェロシアニドの電気触媒再酸化は、第2電圧(例えば、約400mV)が印加されるまでは発生しないと考えられる。第2酵素試薬226がグルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ補助因子又はFAD補助因子を含み得る)を含む場合、第2作用電極214における反応が速まり、第2作用電極214におけるフェロシアニドの迅速な蓄積を可能にする。第1作用電極212におけるフェロシアニドのいかなる蓄積も、第2作用電極214におけるものよりもはるかに少ないと考えられる。こうして、第1作用電極212と第2作用電極214との間にフェロシアニドの濃度勾配が確立し、これによって第1作用電極212と第2作用電極214との間に電位差が発生すると考えられる。
【0041】
しかしながら、3つの電極は全て、塩橋として機能する試料230と電気的に接続するため、回路が作り出され、これによって、印加された第1電圧(例えば、〜0V)による電位差を復元させる第2の負の電流が発生する。このことが、第2作用電極214でのフェロシアニドのフェリシアニドへの酸化、及び第1作用電極212での対応するフェロシアニドのフェリシアニドへの還元を引き起こすと考えられる。第1の電極ペア(212及び210)を流れるいずれの逆電流も相対的に小さいことを想定すると、第1電圧(例えば、〜0V)が印加される第1時間周期の間、事実上、第2作用電極214は「作用」電極として機能し、第1作用電極212は「参照」電極として機能する。第2酵素試薬226は、第2作用電極214及び参照電極210の双方を実質的に覆うように付着されるため、参照電極210は、第1時間周期の間、第2作用電極として機能すると同時に、第1作用電極212は独立参照電極として機能すると考えられる。第2時間周期の間に測定される第2電流は単一電極の測定であるが、一方、第1時間周期の間に測定される電流は、2つの電極の集合体(即ち、第2作用電極214及び参照電極210)から事実上引き出されるため、第1時間周期の間の第1測定電流と第2時間周期の間の第2測定電流とが良好な相関性を示す場合、第1時間周期の間の参照電極反応は、第1時間周期の間の第2作用電極反応と同様であったことが想定できると考えられる。したがって、この類似性は、これらの電極が血液試料230によって十分に覆われていたということ、即ち、第2作用電極214及び参照電極210の双方が十分に覆われ、そのため同様の反応を示した、十分に充填された試験ストリップであるということを示唆する。
【0042】
反対に、第2作用電極214に関する第2時間周期の間の第2電流と、第1電極ペア(第1作用電極212及び参照電極210)に関する第1時間周期の間の第1電流測定値との間に、一致性が乏しかった場合は、この不一致の原因はおそらくは、第1時間周期の間の、通常は等価の2つの電極からの不等な反応であろうと考えられ、これらの電極が不十分に充填されていたことを示唆する。
【0043】
このように、好適な第1電圧(例えば、約0ボルト)を第1時間周期の間、第1作用電極212及び参照電極210に印加し、第1電圧以外の第2電圧を第2時間周期の間印加すると同時に、第2作用電極214及び参照電極210によって発生した第2電流を測定し、この測定された第2電流を、ストリップの3つの電極上に付着した生理学的試料に関して推定された第2電流と比較することによって、出願者らは、第4の電極を必要とすることなく、3つの電極の十分な試料の充填を検出することが可能になった。
【0044】
図6を参照として、前述の計測器102及び試験ストリップ200の実施形態を使用する、試験ストリップに適用される流体試料の体積の十分性を判定するための方法300を、ここで説明する。代表的な工程310では、計測器102及び試験ストリップ200が準備される。計測器102は、時間周期tの間の、少なくとも1つの第1試験電圧V、及びt後、tまでの、少なくとも1つの第2試験電圧Vを試験ストリップに印加(図7)するため、また第1作用電極212を通って流れる第1電流Iw1測定@t1(第1時間周期tの間)、及び第2作用電極214を通って流れる第2電流Iw2測定@tT(第2時間周期tの間)を測定するために使用可能な電子回路機構を含む。代表的な工程320では、流体試料を試験ストリップ200に適用した後、例えば約0ミリボルトの第1試験電圧Vを、tから第1時間周期tの間、第1作用電極212と、第2作用電極214と、参照電極210との間に印加する。第1時間周期tは、典型的には、約0秒〜約4秒であり、より典型的には、約3秒である。
【0045】
図8Aは、図7の第1試験電圧V及び第2試験電圧Vを試験ストリップ200の第1作用電極に印加した際に測定される電流過度A1(即ち、時間の関数としての、ナノアンペア単位で測定された電流応答)の時間対電流の代表的なグラフである。図8Aはまた、第2作用電極に関する電流過度A2を示す。代表的な工程330では、第1時間周期tの終了時、又は終了時近くに、第1作用電極212と参照電極210との間の第1試験電流Iw1測定@t1を測定する(また、通常は計測器に記録される)。代表的な工程340では、第1時間周期tの後、第2試験電圧Vを、時間tから総試験時間tの間、第2作用電極214と参照電極210との間に印加する。
【0046】
時間tにおいて、第2作用電極214及び参照電極210からの第2試験電流Iw2測定@tTを、第2試験電圧Vの終了時又は終了時近くに測定する(また、通常は計測器に記録される)。第2作用電極214と参照電極210との間に印加される第2試験電圧Vは、一般に約+100ミリボルト〜約+600ミリボルトであってよい。第2作用電極212がカーボンインクであり、伝達体がフェリシアニドである一実施形態では、第2試験電圧Vは、約+400ミリボルトである。伝達体と電極材料の他の組合せでは、異なる試験電圧が必要とされる場合がある。第2試験電圧Vの持続時間は、一般に約2秒〜6秒であってよく、典型的には約5秒である。典型的には、時間tは、時間tに対して計測される。実際には、第2試験電流Iw2測定@tTは、短い間隔を置いて得られた一連の測定値、例えば、tから開始する0.01秒の間隔を置いて得られた5つの測定値の平均である。
【0047】
代表的な工程360では、既知の第1試験電流Iw1既知@t1及び既知の第2電流Iw2既知−tTが、計測器102に保存された較正データから決定される。較正曲線は、例えば図8Cにおけるように、良好な充填データを有する試料からの、tでの既知の第2試験電流Iw2既知@tTの関数としての既知の第1試験電流Iw1既知@t1をグラフ化することによって、製作所にて作成し得る。
【0048】
図8Cは、第1時間周期tの終了時での各第1電流Iw1既知@t1に対して、第2時間周期tの終了時での対応する第2電流Iw2既知@tTが、十分な充填体積を有する試料に関するこれら2つの電流値の間で、様々な領域についてクラスター化して存在することを示す。これら第1電流及び第2電流により、図8Cに示す相関線Cが、既知の許容可能な試料充填のデータから作成され得る。
【0049】
測定第1電流と図8Cの既知の第2電流との間の相関から、推定電流Iw2推定@tTを、測定第1電流Iw1測定@t1(工程330より)が図8Cの線Cに沿ってどの位置にあるかを位置決めし、測定第1電流Iw1測定@t1のそのような値が、図8Cのx−軸に沿ってどの位置で、推定第2電流に対応するかをプロットすることにより決定することができる。このプロセスはまた、ルックアップテーブルによって達成することも可能であることを留意されたい。この推定電流は、Iw2推定@tTと称され、第2時間周期tにおける測定第2電流Iw2測定@tTと比較して、1対1の対応からの許容不可能な偏差が存在するか否かを判定する。図8Dから、推定第2電流と測定第2電流との間の十分な相関(L1)が、許容可能な充填を示す好適な標準偏差(L2及びL3)と共に確立され得ることが認められる。
【0050】
つまり、tにおける測定第1電流を既知の良好な充填のデータ(図8C)と関連させて使用することにより、(試験ストリップの所定のバッチに関して)第2時間周期tにおける推定第2電流が予測される。時間tにおける(図8Cから導かれるような)推定第2電流を、次に図8Dで、tにおいて測定した実際の第2電流と比較して、測定した実際の第2電流が、推定第2電流と実質的に等しいか、又は許容可能なパーセント偏差内であるか否かを判定する。
【0051】
代表的な工程380では、測定されたIw2測定@tTと推定第2電流Iw2推定@tTとの差異が許容限界を超える場合に、エラー状態が表示される。一実施形態では、第2時間周期の間の測定第2電流と、第2時間周期の間の推定第2電流との差異は、約+/−40パーセント以下であり得る。
【実施例】
【0052】
実施例1:図2及び図3に示す試験ストリップを使用した体積の十分性の決定
図2及び図3に示す試験ストリップを、約60mg/dL〜約500mg/dLの範囲のグルコース濃度と約30%〜約55%の範囲のヘマトクリット値とを有する154個の全血液試料で試験した。これら試料のそれぞれに関して、約0ミリボルトの第1電圧を試験ストリップに印加した約3秒後に、第1作用電極における第1時間周期の間の電流を測定した。第1時間周期後の第2時間周期の間の約400ミリボルトの(第1電圧以外の値の)第2電圧を試験ストリップに印加した約5秒後に、第2作用電極における第2時間周期の間の電流もまた測定した。総数154個の試料の中の30個については、不十分な試料を試験ストリップに適用した。
【0053】
図9A及び図9Bは、規準計器で判定した参照グルコース濃度の関数としての、試験グルコース濃度の一致/エラーのグリッドを示す。一致/エラーのグリッドの分析は、血糖監視デバイスの臨床上の精度を査定する方法を提供する。そのような分析のエラーグリッドは、参照値に対するデバイスの応答を、臨床上の精度の5つの領域、即ち、領域A〜Eのうちの1つへと分類する。領域Aは、臨床上正確な結果であることを示し、領域Bは、臨床上正確ではないが患者の健康に対してもたらされるリスクは最小限であるという結果を示し、領域C〜Eは、患者の健康に対して潜在的なリスクの増加をもたらす臨床上不正確な結果と判定する(Parkes,Joan L.らの、A New Consensus Error Grid to Evaluate the Clinical Significance of Inaccuracies in the Measurement of Blood Glucose,Diabetes Care,Vol.23 No.8,1143〜1147[2000]を参照)。仕様は、様々なエラーグリッド領域内に収まる結果の百分率に基づいて展開し得る。現行の実施例では、少なくとも95%のデータが領域A及び領域B内にあることが望ましい。図9Aは、試料によって完全に充填されたストリップ及び試料によって部分的に充填されたストリップからの試験結果を含むデータを示す。図9Bは、部分的に充填されたストリップを除外した結果によるデータを示す。全てのデータ、及び部分的に充填されたストリップを除外したデータに関して、各領域内に収まるデータの百分率の要約を下記の表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1のデータは、部分的に充填されたストリップからのデータを除外した場合に、領域A内のデータポイントの百分率が増加することを示す。
【0056】
結論として、本明細書で記載し、説明したシステム及び方法は、充填検出用電極を備えずとも、体積の十分性を判定するために使用可能である。
【0057】
本発明を特定の変形例及び説明図に関して述べたが、当業者には本発明が上述された変形例又は図に限定されないことが認識されるであろう。更に上述の方法並びに工程が特定の順序で起こる特定の事象を示している場合、当業者には特定の工程の順序が変更可能であり、そうした変更は本発明の変形例に従うものである点が認識されよう。更にこうした工程の内のあるものは、上述のように順次行われるが、場合に応じて同時に行われてもよい。したがって、本発明の開示の精神及び均等物の範囲内にある本発明の変形の範囲で、本特許請求がこうした変形例をも包含することは意図するところである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B