特許第5745839号(P5745839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745839低VOCおよび低HAP生成能のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物、それを含有する防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物、それらを用いる環境に優しい金属コーティング方法、ならびに生じるコートされた金属
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745839
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】低VOCおよび低HAP生成能のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物、それを含有する防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物、それらを用いる環境に優しい金属コーティング方法、ならびに生じるコートされた金属
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/26 20060101AFI20150618BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20150618BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150618BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C08G77/26
   C09D183/04
   C09D7/12
   C09D5/08
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-506244(P2010-506244)
(86)(22)【出願日】2008年4月23日
(65)【公表番号】特表2010-525144(P2010-525144A)
(43)【公表日】2010年7月22日
(86)【国際出願番号】US2008005234
(87)【国際公開番号】WO2008133907
(87)【国際公開日】20081106
【審査請求日】2011年4月22日
(31)【優先権主張番号】11/789,258
(32)【優先日】2007年4月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】スー,シウ−チン,エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャラマン,スレシュ,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ボロヴィク,アレキサンダー,エス
(72)【発明者】
【氏名】ガイアー,ケンダル,エル
(72)【発明者】
【氏名】ポール,エリック,アール
【審査官】 福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−214297(JP,A)
【文献】 特開平02−047371(JP,A)
【文献】 特開2002−194674(JP,A)
【文献】 特開2000−044687(JP,A)
【文献】 米国特許第05997954(US,A)
【文献】 米国特許第06103848(US,A)
【文献】 特表平11−511748(JP,A)
【文献】 特開2007−046171(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/100469(WO,A1)
【文献】 特開平04−093303(JP,A)
【文献】 特開平04−045111(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/008077(WO,A1)
【文献】 特表2010−524683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物であって:
(i)炭素原子へと結合する少なくとも一つのヒドロキシル基と、ケイ素−炭素結合を介してケイ素原子へと共有結合する少なくとも一つのカルバモイル基と、ならびに
(ii)少なくとも二つのシリルオキシ結合を有する少なくとも一つの二価の酸素含有基と、
を有し、
式(1):
【化11】

〔式中:
、RおよびRの各々が独立して二価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、−RSiX基、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、もしくは−RSiX基であり;
の各々は独立して、二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、RO−、−R、もしくは(HO)h−1O−であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し、式中それぞれのRは独立して水素もしくはヒドロカルビル基であり、そしてそれぞれのRは独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、[−OR(OH)i−2O−]0.5であり、ここでRの各々は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して、−OR10(OH)j−2O−であり、ここでR10は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;そして
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhが整数であり、ここでaが0から2であり、bが0から3であり、cが0もしくは1であり、dが1から4であり、eが0から20であり、fが1から4であり、gが1から100であり、hが2から3であり、iが2から3であり、そしてjが2から3であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1であるという条件である〕
である、
ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項2】
、RおよびRの各々が独立して12個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して水素、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々が水素であり;
の各々が独立して、たとえば12個までの炭素原子の二価のアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり;
の各々が独立して、RO−もしくは(HO)h−1O−であり、式中、Rが1から3個の炭素原子のアルキル基であり、そしてそれぞれのRが、15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が、[−OR(OH)i−2O−]0.5であり、ここでRが独立して15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が、−OR10(OH)j−2O−であり、ここでR10が独立して15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhが整数であり、ここでaは0から2であり、bは0から3であり、cは0もしくは1であり、dは1から4であり、eは0から20であり、fは1から2であり、gは2から8であり、hは2であり、iは2であり、そしてjは2であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1である、請求項1に記載のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項3】
それぞれのアルキル基が独立してメチル、エチル、プロピルもしくはイソブチルであり、
それぞれのアルケニル基が独立してビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンもしくはエチリデンノルボルネニルであり、
それぞれのアリール基が独立してフェニルもしくはナフタレニルであり、
それぞれのアラルキル基が独立してベンジルもしくはフェネチルであり、
それぞれのアレニル基が独立してトリルもしくはキシリルであり、
それぞれのアルキレン基が独立してメチレン、エチレン、プロピレンもしくはイソブチレンであり、
それぞれのアルケニレン基が独立してエテニレン、プロペニレン、メタリレン、エチリデニレンノルボルナン、エチリデンノルボルニレン、エチリデニレンノルボルネンもしくはエチリデンノルボルネニレンであり、
それぞれのアリール基が独立してフェニレンもしくはナフタレニレンであり、
それぞれのアラルキレン基が独立してフェネチレンもしくあフェニルメチレンであり、そして
それぞれのアレニレン基が独立してトリレンもしくはキシレンである、
請求項2に記載のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項4】
少なくとも一つのそれらのオリゴマーを含む、請求項1に記載のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項5】
[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[2−(3−ヒドロキシ−2−メチル−プロポキシ)−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン2−イル)−プロピル]−{[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピルアミノ]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2,3−ジヒドロキシ−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[4−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−ブチル]−[3−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−プロピルエステル;{3−[2−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシプロピルエステル;{3−[ビス−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−3−ヒドロキシプロポキシ−シラニル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−プロピルエステル;{3−[{3−[[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニル]−プロピル}カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;および{[エチル−{3−[エチル−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニル]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項1に記載のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項6】
それが完全な加水分解をするとき、加水分解していない化合物の総重量に基づいて、0から10重量パーセントを超えない揮発性有機化合物と0から1重量パーセントを超えない有害大気汚染物質とを生成する、請求項1に記載のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物。
【請求項7】
少なくとも一つのヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の水溶液を含有するコーティング剤組成物であって、
ここで前記ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が、
式(1):
【化11B】

〔式中:
、RおよびRの各々が独立して二価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、−RSiX基、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、もしくは−RSiX基であり;
の各々は独立して、二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、RO−、−R、もしくは(HO)h−1O−であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し、式中それぞれのRは独立して水素もしくはヒドロカルビル基であり、そしてそれぞれのRは独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、[−OR(OH)i−2O−]0.5であり、ここでRの各々は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して、−OR10(OH)j−2O−であり、ここでR10は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;そして
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhが整数であり、ここでaが0から2であり、bが0から3であり、cが0もしくは1であり、dが1から4であり、eが0から20であり、fが1から4であり、gが1から100であり、hが2から3であり、iが2から3であり、そしてjが2から3であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1であるという条件である〕
で表される、
コーティング剤組成物。
【請求項8】
少なくとも一つのヒドロキシル官能性有機ケイ素化合物の水溶液を含有するコーティング剤組成物であって、
前記ヒドロキシル官能性有機ケイ素化合物が、[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[2−(3−ヒドロキシ−2−メチル−プロポキシ)−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン2−イル)−プロピル]−{[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピルアミノ]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2,3−ジヒドロキシ−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[4−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−ブチル]−[3−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−プロピルエステル;{3−[2−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシプロピルエステル;{3−[ビス−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−3−ヒドロキシプロポキシ−シラニル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−プロピルエステル;{3−[{3−[[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニル]−プロピル}カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;および{[エチル−{3−[エチル−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニル]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステルからなる群より選択される、
コーティング剤組成物。
【請求項9】
コーティング剤組成物が界面活性剤、共溶媒、pH調整剤および硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一つの追加の成分をさらに含有する、請求項7および8のいずれか一項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項10】
前記追加の成分のすべてを含有するコーティング剤組成物が、組成物の重量の、0から10重量パーセントを超えない揮発性有機化合物と、0から1重量パーセントを超えない有害大気汚染物質を含む、請求項9に記載のコーティング剤組成物。
【請求項11】
金属の露出した表面の少なくも一部分のコーティングのための方法であって:
a)少なくとも一つの部分的にもしくは完全に加水分解されたヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物であって:
i)炭素原子へと結合する少なくとも一つのヒドロキシル基と、ケイ素−炭素結合を介してケイ素原子へと共有結合する少なくとも一つのカルバモイル基と、ならびに
ii)少なくとも二つのシリルオキシ結合を有する少なくとも一つの二価の酸素含有基と、
を有する化合物の水溶液を含有する、硬化性コーティング剤組成物を前記表面に塗布するステップと、ならびに
b)金属表面の該硬化性コーティング組成物を硬化してその上に防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティングを提供するステップと、
を含有し、
ここで前記ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が、
式(1):
【化12】

〔式中:
、RおよびRの各々が独立して二価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、−RSiX基、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々が独立して水素、ヒドロカルビル基、もしくは−RSiX基であり;
の各々は独立して、二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、RO−、−R、もしくは(HO)h−1O−であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し、式中それぞれのRは独立して水素もしくはヒドロカルビル基であり、そしてそれぞれのRは独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々が独立して、[−OR(OH)i−2O−]0.5であり、ここでRの各々は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して、−OR10(OH)j−2O−であり、ここでR10は独立して二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;そして
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhが整数であり、ここでaが0から2であり、bが0から3であり、cが0もしくは1であり、dが1から4であり、eが0から20であり、fが1から4であり、gが1から100であり、hが2から3であり、iが2から3であり、そしてjが2から3であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1であるという条件である〕
で表される、
方法。
【請求項12】
、RおよびRの各々が独立して12個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が独立して水素、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々が水素であり;
の各々が独立して、たとえば12個までの炭素原子の二価のアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり;
の各々が独立して、RO−もしくは(HO)h−1O−であり、式中、Rが1から3個の炭素原子のアルキル基であり、そしてそれぞれのRが、15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が、[−OR(OH)i−2O−]0.5であり、ここでRが独立して15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々が、−OR10(OH)j−2O−であり、ここでR10が独立して15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhが整数であり、ここでaは0から2であり、bは0から3であり、cは0もしくは1であり、dは1から4であり、eは0から20であり、fは1から2であり、gは2から8であり、hは2であり、iは2であり、そしてjは2であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が少なくとも一つのそれらのオリゴマーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が、[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[2−(3−ヒドロキシ−2−メチル−プロポキシ)−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン2−イル)−プロピル]−{[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピルアミノ]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2,3−ジヒドロキシ−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[4−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−ブチル]−[3−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−プロピルエステル;{3−[2−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシプロピルエステル;{3−[ビス−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−3−ヒドロキシプロポキシ−シラニル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−プロピルエステル;{3−[{3−[[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニル]−プロピル}カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;および{[エチル−{3−[エチル−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニル]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が完全な加水分解をするとき、加水分解していない化合物の総重量に基づいて、0から10重量パーセントを超えない揮発性有機化合物と0から1重量パーセントを超えない有害大気汚染物質とを生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング剤組成物が、界面活性剤、共溶媒、pH調整剤および硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一つの追加の成分をさらに含有する、請求項11、12および13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属が銅、銀、真ちゅう、チタン、チタン合金、金、スズ、ニッケル、クロム、タンタル、表面冷延鋼板、亜鉛めっきされたスチール、溶融亜鉛めっきスチール、プライムスチール、アルミニウム、例えば亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金などのうちの少なくとも一つでコートされたスチール、ならびに鉄である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化した防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤がその上にさらなるコーティングを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記さらなるコーティング剤が塗料である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項11および18のいずれか一項に記載の方法によって生じるコーティングされた金属製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物、それから作製される防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物、およびそれらの金属への塗布方法、ならびに有機ケイ素化合物に基づく防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤を有する金属に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの金属はある種の腐食、特に大気中腐食に対して影響を受けやすく、さまざまな種類の錆を形成する結果となる。そのような錆は金属の質に大いに影響を与える可能性がある。表面上の錆は金属表面から取り除くことが出来るが、その除去のためのプロセスは、時間を浪費し、費用がかかり、そして金属の品位に負の影響を持つ傾向にある。コーティング剤が金属表面に塗布される際、金属の腐食は、コーティング剤と金属表面との間の不十分で効果的でない接着という結果をもたらす。コーティング剤とコーティング剤が塗布された金属表面との間の接着の減少は、同様に、金属の腐食を導く。
【0003】
金属合金、金属積層、金属複合材などを含む多くの種類の金属は、製造および建築において広く用いられている。ある種の金属、特に鉄および鋼鉄のような鉄類は、しばしば貯蔵および輸送の間に錆を発生する。錆(「貯蔵染み(Storage stain)」とも呼ばれる)は、金属の表面の、金属もしくは金属上の金属コーティングと反応する箇所において凝結する湿気によって典型的に引き起こされる。錆は審美的に魅力的でなく、後につづく加工操作を受ける金属の能力をしばしば損ねる。このように、任意の後に続く加工操作を行う前に、錆を金属表面から取り除き、錆が再び形成されることを防ぐために金属表面を処理する必要性がしばしばある。輸送や貯蔵の間での錆の形成を妨げるだけでなく、金属が後に続く加工操作を受けたあとでも錆の形成までも防ぐ、さまざまな方法が今日では用いられる。
【0004】
その貯蔵、輸送および使用中における金属上の錆の防御は、その表面にクロム酸塩の一種のような薄膜を塗布することによって達成され得ることは公知である。クロム酸塩のコーティングは錆の形成に対する耐性を提供する一方、クロムは非常に毒性が高く、環境的に望ましくない。さらに、クロム層はその上に塗布される任意の後に続く層の接着を必ずしも向上するとは限らない。
【0005】
貯蔵、輸送および使用中に金属が錆びる事は、加水分解性シランの水溶液を金属表面に塗布し、その後そのシランを硬化し、耐久性のある付着せいの保護コーティングを提供することによって予防もしくは阻止する事ができる。そのようなコーティングは、しかしながら、シランの加水分解中にlつもしくはそれ以上の揮発性有機化合物(VOC)および/もしくは有害大気汚染物質(HAP)を生成する可能性がある。VOCおよびHAPは環境的に望ましくなく、行政機関はVOCおよびHAP物質の量を制限することを意図して規制を実施してきている。これらの規制はしばしば高価な空気正常装置の購入、導入および維持を求める。VOCおよびHAPへの暴露はまた、それらの毒性および可燃性のせいで労働者の健康および安全性にとって有害となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、クロムを用いなく、そしてVOCもしくはHAPを実質的にまったく生成しないか、もしくはたかがかほんの少ししか生成しない一方、処理された金属の望ましい防食性のおよび接着性能をなおも授けるコーティング剤組成物および金属の保護的処理のためのコーティング方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
金属に対する著しく向上した防食性および/もしくは接着促進性能が、この下に記載されるヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物に基づくコーティング剤組成物によって提供され得ることを発見した。
【0008】
本発明によると:
(i)炭素原子へと結合する少なくとも一つのヒドロキシル基と、ケイ素−炭素結合を介してケイ素原子へと共有結合する少なくとも一つのカルバモイル基と、ならびに
(ii)少なくとも二つのシリルオキシ結合を有する少なくとも一つの二価の酸素含有基と、
を有するヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物が提供される。
【0009】
さらに本発明によると:
a)少なくとも一つの部分的にもしくは実質的に完全に加水分解されたヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物であって:
i)炭素原子へと結合する少なくとも一つのヒドロキシル基と、ケイ素−炭素結合を介してケイ素原子へと共有結合する少なくとも一つのカルバモイル基と、ならびに
ii)少なくとも二つのシリルオキシ結合を有する少なくとも一つの二価の酸素含有基と、
を有する化合物の水溶液を含有する、硬化性コーティング剤組成物を前記表面に塗布するステップと、ならびに
b)金属表面の該硬化性コーティング組成物を硬化してその上に防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティングを提供するステップと、
を含有する、金属の露出した表面の少なくも一部分のコーティングのための方法が提供される。
【0010】
ここで用いられるとき、用語「VOC」は揮発性有機化合物、特にASTM D86−96によって測定される、216℃と等しいかもしくはそれより低い大気圧での沸点を有する有機化合物を指す。産物からのVOC放出は、カリフォルニア州大気資源局の消費者製品からの揮発性有機化合物排出抑制のための規制、最終規正法、8.5節、消費者製品のような政府の規制の対象であり、そしてこれからもそうあり続ける。
【0011】
用語「HAP」は有害大気汚染物質、特に米国環境保護庁のHAPのリスト上の物質を指す。産物からのHAPの排出は、有害大気汚染物質国家排出基準、雑多なコーティング製造、40CFR、パート63のような政府の規制の対象であり、そしてこれからもそうあり続ける。
【0012】
本発明のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物へと適用される「低いVOC産生能」という表現は、それの実質的に完全な加水分解の時に、実質的にまったく加水分解していない化合物の総重量に基づいて0から10より大きくない重量パーセントのVOCを生成する化合物の能力のようなものを指す。本発明のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物へと適用される「低いHAP産生能」という表現は、それの実質的に完全な加水分解の時に、実質的にまったく加水分解していない化合物の総重量に基づいて0から1より大きくない重量パーセントのHAPを生成する化合物の能力のようなものを指す。
【0013】
ここで用いられるとき、用語「硬化」は、それにより、本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の部分的におよび/もしくは実質的に完全に加水分解されたヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素成分が、新規に塗布されたコーティング剤組成物のゾル化ステージから結果的に不溶性の硬化したコーティング剤層となるゲル化ステージへと進む、進展する化学変化を指す。
【化1】
基とそれら自身とが縮合(もしくは、重縮合とも呼ばれるかも知れない)し、オルガノポリシロキサンの特徴である
【化2】
結合を生成することによってもたらされるこの化学変化は、コーティング剤組成物からの水の除去を含む。用語「硬化」は、部分的もしくは不完全な硬化、および実質的に完全な硬化を含む。硬化をもたらす縮合は周囲温度条件下において起こり熱および/もしくは真空の適用によって加速される。
【0014】
実施例以外においてもしくは他に指定がある場合以外において、明細書および請求項において述べられる、物質の量、反応条件、時間、定量化される性質などを表すすべての数字は、すべての場合において単語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0015】
ここで言及される任意の数範囲は、その範囲内のすべてのサブ範囲(sub−ranges)を含むことが意図されていることは理解されたい。
【0016】
構造的に、組成的に、および/もしくは機能的に関連する化合物の群に属するとして明細書に明確にもしくは暗に開示されるか、ならびに/または請求項に列挙される、任意の化合物、物質、材料は、群の個々の典型例、およびそれらの組み合わせを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物
本発明の一実施態様において、
ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は一般式(1)
【化3】

によって表され、
式中:
、RおよびRの各々は独立して二価のヒドロカルビレン基、たとえば12個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレンもしくはアラルキレン基であり、任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
の各々は独立して水素、例えば8個の炭素原子までのアルキル、アルケニル、アレニル、アリールもしくはアラルキル基のようなヒドロカルビル基、−RSiX基、もしくは−C(=O)OR(OH)基であり;
の各々は独立して水素、例えば8個の炭素原子までのアルキル、アルケニル、アレニル、アリールもしくはアラルキル基のようなヒドロカルビル基、もしくは−RSiX基であり;
の各々は独立して、たとえば12個までの炭素原子の二価のアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基のような二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり;
の各々は独立して、−Cl、−Br、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、RN−、−R、もしくは(HO)h−1O−であり、式中それぞれのRは独立して水素または例えば18個の炭素原子までのアルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキル基のようなヒドロカルビル基であり任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し、そしてそれぞれのRは独立して、例えば15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基のような二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
二つのケイ素原子の間の架橋構造を形成するZの各々は独立して、[−OR(OH)i−2O−]0.5もしくは[−O−]0.5であり、ここでRの各々は独立して例えば15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基のような二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
ケイ素原子と環状構造を形成するZの各々は独立して、[−OR10(OH)j−2O−]0.5であり、ここでR10は独立して例えば15個の炭素原子までのアルキレン、アルケニレン、アレニレン、アリーレンもしくはアラルキレン基のような二価もしくは多価のヒドロカルビレン基であり任意選択で一つもしくはそれ以上のエーテル性酸素原子を含有し;
下付文字a、b、c、d、e、f、gおよびhは整数であり、ここでaは0から2であり、bは0から3であり、cは0もしくは1であり、dは1から4であり、eは0から20であり、fは1から4であり、gは1から100であり、hは2から3であり、iは2から3であり、そしてjは2から3であり、ただし、cが1のとき、a+bは1であり;そしてbが0であるとき、gは1でかつcは1である。
【0018】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と関連してここで用いられるとき、「アルキル」は、直鎖の、分岐の、および環状のアルキル基を含み;「アルケニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖の、分岐の、および環状のアルケニル基であって、ここで置換がもしあるならば、位置が炭素炭素二重結合においてもしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを含み;「アリール」は、そこから一つの水素原子が取り除かれた任意の芳香族炭化水素を含み;「アラルキル」は、その中で一つもしくはそれ以上の水素原子が同じ数の類似のおよび/もしくは異なった(ここで定義されるような)アリール置換基によって置換されている、上述のアルキル基の任意のものを含み;「アレニル」は、一つもしくはそれ以上の水素原子が、同じ数の類似のおよび/もしくは異なった(ここで定義されたような)アルキル置換基によって置換されている、上述のアリール基の任意のものを含み;「アルキレン」は直鎖の、分岐の、および環状のアルキレン基を含み;「アルケニレン」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖の、分岐の、および環状のアルケニレン基であって、ここで置換がもしあるならば、その位置が炭素炭素二重結合においてもしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを含み;「アリーレン」は、そこから二つもしくはそれ以上の水素原子が取り除かれた任意の芳香族炭化水素を含み;「アラルキレン」は、その中で一つもしくはそれ以上の水素原子が同じ数の類似のおよび/もしくは異なった(ここで定義されるような)アリール置換基によって置換されている、上述のアルキレン基の任意のものを含み;「アレニレン」は、一つもしくはそれ以上の水素原子が、同じ数の類似のおよび/もしくは異なった(ここで定義されたような)アルキル置換基によって置換されている、上述のアリーレン基の任意のものを含み;「ヒドロカルビル」は、一つの水素原子が除去されて一価の基を形成する任意の炭化水素を含み;そして、「ヒドロカルビレン」は、少なくとも二つの水素原子が除去されて二価のもしくは多価の基を形成する任意の炭化水素を含む。
【0019】
アルキルの具体例はメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルを含む。アルケニルの具体例は、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノボルネン、およびエチリデンノルボルネニルを含む。アリールの具体例は、フェニル、およびナフタレニルを含む。アラルキルの具体例は、ベンジルおよびフェネチルを含む。アレニルの具体例は、トリルおよびキシリルを含む。アルキレンの具体例は、メチレン、エチレン、プロピレンおよびイソブチレンを含む。アルケニレンの具体例は、エテニレン、プロペニレン、メタリレン、エチリデニレンノボルナン、エチリデンノボルニレン、エチリデニレンノボルネンおよびエチリデンノボルネニレンを含む。アリールの具体例は、フェニレンおよびナフタレニレンを含む。アラルキレンの具体例は、フェネチレンおよびフェニルメチレンを含む。アレニレンの具体例は、トリレンおよびキシリレンを含む。
【0020】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と関連してここで用いられるとき、「環状アルキル」および「環状アルケニル」は、二環式構造、三環式構造およびより高次の環状構造、ならびにアルキル基および/もしくはアルケニル基でさらに置換された上述の環状構造を含む。これらの構造の代表的な例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシル、およびシクロドデカトリエニルを含む。
【0021】
に関してここで用いられるとき、記号(−O−)0.5、および[−OR(OH)i−2O−]0.5は、それぞれ、シロキサン結合の半分、および架橋ジアルコキシ基の半分を参照する。この記号は、ケイ素原子に関連して使われ、そしてこの記号はそれぞれ、酸素原子の半分、すなわち、特定のケイ素原子への半分の結合、またはジアルコキシ基の半分、すなわち、特定のケイ素原子への半分の結合を意味すると捉えられる。酸素原子またはジアルコキシ基の残りの半分、およびケイ素への結合の残りの半分は、記載されている全体の分子構造において他のどこかに存在すると理解される。したがって、(−O−)0.5シロキサン基、および[−OR(OH)i−2O−]0.5ジアルコキシ基は、二つのケイ素原子が分子間で、または分子内で、のどちらで存在しても、これら二つの別々のケイ素原子を一緒に保持する化学結合を仲介する。[−OR(OH)i−2O−]0.5の場合、もしヒドロカルビレン基Rが非対称であれば、[−OR(OH)i−2O−]0.5のどちらか一方の端は、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の構造を完成するために必要な二つのケイ素原子のどちらか一方に結合されてよい。
【0022】
に関してここで用いられるとき、記号[−OR10(OH)i−2O−]0.5は、架橋ジアルコキシ基の半分を参照する。この記号は、ケイ素原子に関連して使われ、そしてこの記号は、ジアルコキシ基の半分、すなわち、シリルオキシ結合(Si−O)を形成する特定のケイ素原子への半分の結合とジアルコキシ基の残りの半分およびそれの同じケイ素原子への結合とが、ケイ素原子を含有する環状構造を形成することを意味すると捉えられる。
【0023】
本発明の他の実施態様において、加水分解性ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は一つもしくはそれ以上の、gが1より大きい式(1)のオリゴマーを含有できる。ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物のオリゴマーは、(−)NC(=O)OR(OH)および/もしくは(−)NC(=O)OR(OH)基のヒドロキシルと、別のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物のシリル基との分子間エステル交換からも生じ得る。
【0024】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の加水分解、そして一つのヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の加水分解産物(シラノール)とここに記載されるもののうちの任意の他のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の加水分解との分子間縮合からも生じ得る。
【0025】
加水分解は、水が、例えば
【化4】
のような加水分解性シリル基と反応するときに起こり、基の中の加水分解性部分をHO−と置換してシラノール基
【化5】
を提供する。縮合は、シリルオキシ基
【化6】
がアルコキシもしくはヒドロキシ基を置換してシロキサン基
【化7】
を提供するときに起こる。加水分解の度合いは計算式(I):
加水分解のパーセント=[100%][1−(A/(A+B+C))] (I)
〔式中、Aは加水分解性シリル基の数であり;Bはシラノール基の数であり;Cはケイ素原子に結合するシリロキシ基の数である〕を用いて計算できる。
【0026】
AおよびB、およびCの数値は、ヒドロキシル含有加水分解性シランのスペクトルを得ることとデータを解釈することを含む29Si核磁気共鳴法(NMR)によって測定され得る。この手順に従うと、ヒドロキシル含有加水分解性シランもしくはそれの水溶液はロッキング目的で添加されるアセトン−dを含有するキャピラリーチューブを伴う10 mmのNMRチューブへと配置される。29SiNMRのために、化学シフトはテトラメチルシランを外部基準とする。29Si原子のために、逆ゲート付デカップリングパルス系列は、パルス幅45度で用いられた。スキャン間では360秒の遅延が用いられた。磁場強度7.05Tで操作する29SiNMRのために、1.4秒の測定時間であった。29Si原子のための59.6MHzは、11627Hzの掃引幅と32Kのサイズとに相互に関連する。スペクトルデータは2Hzのラインバンドを用いて加工された。29SiNMRのデータは48時間収集された。シランの加水分解は、例えばメトキシ基のようなアルコキシ基がヒドロキシル基によって置換されシラノール基を生じることによる約1ppmの化学シフトの増加を観測することによって、モニターされる。加水分解したシランの縮合は、
【化8】
によって置換されるすべてのシリルオキシ基に対する約10ppmの化学シフトにおける減少として観測される。例えば、メトキシからエトキシのように、アルコキシ基はサイズが大きくなるので、化学シフトの差異は増大し、実験的に測定できる。
【0027】
ここでの一実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物および/もしくは部分的にもしくは実質的に完全に加水分解されたヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の水溶液は、式(1)のモノマー、すなわち、gが1である化合物、式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と部分的なもしくは実質的に完全な加水分解によって得られるオリゴマーとのエステル交換、そして、任意選択での後に続く部分的な式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と式(2):
【化9】
〔式中、R、R、R、R、R、R、dは上述の意味を有し;Xの各々は独立して、−Cl、−Br、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、RN−;そしてXおよびXは独立してXもしくはR−の上述の意味のうちの一つを有する〕
のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物との縮合とによって得られるオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一つの要素を含み得る。
【0028】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の部分的な加水分解は加水分解の度合いが1から94モルパーセントのX、[−OR(OH)i−2O−]0.5、および[−OR10(OH)j−2O−]0.5基のヒドロキシル基での置換を生じることを指し、式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の実質的に完全な加水分解は加水分解の度合いが95から100モルパーセントのX、[−OR(OH)i−2O−]0.5、および[−OR10(OH)j−2O−]0.5基のヒドロキシル基での置換を生じることを指す。式(2)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の部分的な加水分解は加水分解の度合いが1から94モルパーセントのX、X、およびX基のヒドロキシル基での置換を生じることを指し、式(2)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の実質的に完全な加水分解は加水分解の度合いが95から100モルパーセントのX、X、およびX基のヒドロキシル基での置換を生じることを指す。
【0029】
O−Si基がシラノール縮合の重合化反応を停止させ、ヒドロキシル含有加水分解性シランから誘導されるより低い平均分子量オリゴマー組成物を維持するため、部分的に加水分解したヒドロキシル含有加水分解性シランは水溶液中でより良い安定性を有する。より低い分子量のオリゴマー成分は、より均一に金属の基材上へと吸着し、結果としてより良い接着をもたらす。
【0030】
縮合の度合いは上述の29Si核磁気共鳴法(NMR)によって計算式(II):
縮合パーセント=[100%][C/(A+B+C)] (II)
〔式中、Aは加水分解性シリル基の数であり、Bはシラノール基の数であり、そしてCはアルコキシもしくはヒドロキシ基を置換したシリルオキシ基の数である〕
を用いて測定され得る。
【0031】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、式(2)の加水分解性ヒドロキシル官能性カルバモイルシランの一つもしくはそれ以上と式(3):
HOR(OH)i−1 (3)
〔式中、Rおよびiは上述の意味を有する〕
のポリオールおよび/もしくは式(4):
HOR10(OH)j−1 (4)
〔式中、R10およびjは上述の意味を有する〕
のポリオールとのエステル交換によって作製され得る。
【0032】
エステル交換は周囲より低い温度、周囲温度もしくは高い温度で、減圧、周囲圧もしくは高圧下において、そして溶媒および/もしくは触媒の存在下または非存在下で実施される。このように、たとえば、エステル交換反応は、0から150℃まで、好ましくは25℃から100℃まで、そしてさらに好ましくは60℃から80℃までの温度で、13.3Pa(0.1mmHg)から266.6kPA(2000mmHg)までの絶対圧で実施できる。他の実施態様において、エステル交換温度は、30℃から90℃までの範囲であってよく、133.3Pa(1mmHg)から10.67kPA(80mmHg)までの絶対圧を維持する。例えばモノアルコールもしくはカルボン酸のような低沸点のXH、XHおよびXH副産物が生成するため、それらを蒸留により反応混合物から除去できる。それら副産物を除去することはエステル交換反応を完了へと進めるのを助け、VOCおよびHAPが本質的に含まれない産物を提供する。エステル交換反応は、たとえば任意選択で5.0より低いpKを有する強プロトン酸、5.0より低いpKを有する強塩基、およびスズ、鉄、チタンおよび/もしくは他の金属の錯体のような遷移金属錯体のような好適なエステル交換触媒を用いて触媒され得る。これらおよび他の好適な触媒は、例えば、参照によりその総ての内容をここに編入する、M. G. Voronkov、V. P. MileshkevichおよびYu. A. Yuzhelevskii著、「The Siloxane Bond, Physical Properties and Chemical Transformations」、Consultants Bureau, a division of Plenum Publishing Company, New York (1978)、の第5章に開示される。酸、塩基もしくは金属の触媒は、ヒドロキシル官能性カルバモイルシランおよびポリオール反応物の全混合重量に基づいて、10ppmから2重量パーセントまで、好ましくは20ppmから1000ppmまで、そしてより好ましくは100ppmから500ppmまでの濃度で使用できる。
【0033】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の部分的なもしくは実質的に完全な加水分解、ならびに任意選択での部分的な縮合に由来するオリゴマーは、水を式(2)のヒドロキシル官能性カルバモイルシランへと添加することによって得ることができる。ヒドロキシル官能性カルバモイルシランと反応する水の量は、ヒドロキシル官能性カルバモイルシランと水との全混合重量に基づいて0.1から99.9の、好ましくは1から50の、より好ましくは5から25の、そしてもっとも好ましくは10から20の重量パーセントの範囲であり得る。式(2)のヒドロキシル官能性カルバモイルシランの部分縮合物に由来するオリゴマーはカルボン酸とそれらヒドロキシル官能性カルバモイルシランへと添加することによって得られる。ギ酸のようなカルボン酸の量は、実質的にまったく加水分解していないヒドロキシル官能性カルバモイルシランと酸反応物との全混合重量に基づいて、0.1から40重量パーセント、そしてより好ましくは5から10重量パーセントの範囲であり得る。加水分解および部分的な縮合は、0から150℃、好ましくは25℃から100℃、そしてより好ましくは60℃から80℃の範囲の温度で、13.3Pa(0.1mmHg)から266.6kPA(2000mmHg)までの絶対圧を維持しつつ実施される。他の実施態様において、温度は30℃から90℃の範囲であり得、133.3Paから10.67kPa(1から80mmHg)の範囲の絶対圧力が維持される。低沸点のXH、XHおよびXH加水分解副産物が産生されるので、それらは加水分解反応溶媒よりたとえば蒸留によって除去され得る。
【0034】
本発明の有機ケイ素化合物の加水分解および後に続く部分的な縮合は、例えば上述のと同一の触媒の任意のものをそのような触媒のために示された量で用いて任意選択で触媒できる。
【0035】
式(1)のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は水もしくはカルボン酸と反応でき、化合物の部分的なもしくは実質的に完全な加水分解を生じ、それによって、X基が少なくとも一つのヒドロキシル(HO−)を含みおよび/もしくはZ基が少なくとも一つの[−O−]0.5基を含む別のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物を提供することは理解されよう。
【0036】
ここでの他の実施態様において、それぞれのX、X、XおよびX基は独立して、アルキルオキシ、アシルオキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアリールオキシ、アシルオキシアルキルオキシ、アシルオキシアリールオキシもしくはアリールオキシのような同じかもしくは異なる加水分解性基である。そのような基の具体例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、1−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロポキシなどである。それぞれのX、XおよびXは独立して、アルキルもしくはアリールのような同じかもしくは異なる非加水分解性基である。そのような基の具体例はメチル、エチル、フェニルなどである。
【0037】
ここでの他の具体的な実施態様において、それぞれのR、R、R、R、R、およびR10基は独立して、1から12個の、好ましくは2から8個の、そしてより好ましくは3から6個の炭素原子を有する、直鎖の、分岐のもしくは環状のアルキレン基である。R、R、R、R、R、およびR10基の代表例は、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、イソペンチレン、ヘキシレン、イソヘキシレンなどである。
【0038】
ここでのさらに他の実施態様において、それぞれのRは水素もしくは1から4個の炭素原子のアルキル基であり;それぞれのR、R、R、R、R、およびR10は1から12個の、好ましくは2から8個の、そしてより好ましくは3から6個の炭素原子の直鎖のアルキレン基であり;それぞれのRは独立して水素、1から4個の炭素原子の直鎖アルキル基、もしくは−C(=O)OR(OH)であり、ここでそれぞれのRは2か6個の炭素原子のアルキレンであり;それぞれのRは独立して水素もしくは1から4個の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そして、fは1もしくは2である。
【0039】
ここでのヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の他の実施態様において、Xは(HO)h−1O−もしくはRO−であり、ここでRは1から3個の炭素原子のアルキル基であり;Zは[−OR(OH)i−2O−]0.5であり;Zは[−OR10(OH)j−2O−]0.5であり;Rは水素もしくは−C(=O)OR(OH)であり;Rは水素であり;R、R、RおよびR10は上述の意味を有し;そしてfは1もしくは2であり;gは2から8であり;hは2であり;iは2であり;およびjは2である。
【0040】
ここでのヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素化合物のさらに他の実施態様において、Xは(HO)h−1O−もしくはRO−であり、ここでRは1から3個の炭素原子のアルキル基であり;Zは[−O−]0.5であり;Zは[−OR10(OH)j−2O−]0.5であり;RはHもしくは−C(=O)OR(OH)であり;Rは水素であり;R、R、RおよびR10は上述の意味を有し;そしてbは1から2であり;fは1もしくは2であり;gは2から8であり;hは2であり;iは2であり;およびjはである。
【0041】
本発明の具体的な一実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、それのシリル基とそれの炭素へと結合するヒドロキシル基との間で分子内エステル交換を、または、それのシリル基と、他の同じかもしくは異なるヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の炭素と結合するヒドロキシル基との間で分子間エステル交換を行うであろう。そのようなエステル交換はここに記載されるようなオリゴマーの形成を導き、本発明のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の分子量および粘度の増大を生じる。しかしながら、もし後者が加水分解するなら、それらのオリゴマーはより小さい分子に分解し、それを含む溶媒におけるより低い粘度とより高い可溶性とを示す。
【0042】
ここでの具体的な一実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル化合物は、少なくとも一つのヒドロキシル基と少なくとも一つのカルバモイル基とを含有するシランであり、前記シランはアミノアルコキシシラン、アミノ−ビス(アルコキシシラン)ジアミノアルコキシシラン、およびトリアミノアルコキシシランのようなシランの誘導体である。そのようなシランの具体例の一部は、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシ−エトキシ)シラン、アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−2−(ビニルベンジルアミノ)−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベータ−(アミノ エチル)−ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、ガンマ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキソキシ)シラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、3,3’−アミノビス(プロピルトリエトキシシラン)、および3−アミノプロピルメチルジエトキシシランである。
【0043】
式(2)のヒドロキシル官能性シランを作製するためのプロセスは、ここでの参照によりそのすべての内容を組み入れる米国特許5,587,502に開示されるように既知である。
【0044】
ここでのヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の具体例は、[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[2−(3−ヒドロキシ−2−メチル−プロポキシ)−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2−エトキシ−5−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン2−イル)−プロピル]−{[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピルアミノ]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)−プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−イル)−プロピル]−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;({(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシカルボニル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)プロピル]−アミノ}−メチル)−[3−(2,4,4,6−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸2,3−ジヒドロキシ−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エチルエトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)プロピル]−{[[3−(2,4−ジメチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシカルボニル)−アミノ]−メチル}カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピルエステル;[4−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−ブチル]−[3−(2−エトキシ−4−メチル−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル)−プロピル]−カルバミン酸3−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−プロピルエステル;{3−[2−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシプロピルエステル;{3−[ビス−(3−{2−[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−[1,3,2]ジオキサシリナン−2−イルオキシ}−プロポキシ)−3−ヒドロキシプロポキシ−シラニル]−プロピル}−カルバミン酸3−ヒドロキシ−プロピルエステル;{3−[{3−[[3−(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−プロピル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−メチル−シラニル]−プロピル}カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{[エチル−{3−[エチル−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニルオキシ]−プロポキシ}−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−シラニル]−メチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−1,1,3,3−テトラヒドロキシ−ジシロキサニルメチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;{3−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサニルメチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステル;および{4,6−ビス−[(2−ヒドロキシ−エトキシカルボニルアミノ)−メチル]−2,4,6−トリメチル−[1,3,5,2,4,6]トリオキサトリシリナン−2−イルメチル}−カルバミン酸2−ヒドロキシ−エチルエステルである。
【0045】
本発明のヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、上述のようなヒドロキシ官能性カルバモイルシランの少なくとも一つとヒドロキシル基を欠いたシランの少なくとも一つとの混合物の、部分的なおよび/もしくは実質的に完全な加水分解とそれに続く任意選択の部分的な縮合によって得られる。そのようなヒドロキシル基を欠いたシランの例は、ビニルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、硫黄含有アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、ハロアルキルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン、アルカリールアルコキシシラン、アラルキルアルコキシシラン、アクリロイルおよびメタクリロイルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、ならびにアミノアルコキシシランを含む。前述のおよび類似した種類の具体的なシランは、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、1,1,1−トリフルオロエチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、2−フェニルエチルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ブテニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、1,2−ビス−(トリメトキシシリル)エタン、1,6−ビス−(トリアルコキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス−(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,2−ビス−(トリエトキシシリル)エチレン、1,4−ビス−(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、そして1,2−ビス−(トリメトキシシリルプロピル)アミン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシ−エトキシ)シラン、アミノイソブチルトリメトキシシラン、アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、ビニルプロピルトリメトキシシラン、N−2−(ビニルベンジルアミノ)−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベータ−(アミノ エチル)−ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、ガンマ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メルカプトプロピルシラン、アミノアルコキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキソキシ)シラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、3,3’−アミノビス(プロピルトリエトキシシラン)、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジブチルアスパラギン酸塩、および3−アミノプロピルメチルジエトキシシランである。
【0046】
B. 防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物
本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物に存在するヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素組成物は、式(1)のモノマーの、式(2)のモノマーから誘導されるオリゴマーの、または式(2)のモノマーから誘導される部分的にもしくは完全に加水分解されたオリゴマーの、量および/もしくはタイプ、水もしくはカルボン酸の量、ならびに界面活性剤、触媒、共溶媒などのような加水分解反応溶媒の任意の追加的な成分の量および/もしくはタイプに大きく依存して変化し得る。
【0047】
ここでのコーティング剤組成物中のヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の量は、表面張力、安定性およびその有機ケイ素成分の加水分解の所望のレベルに依存して極めて広い制限にわたって変化し得る。有機ケイ素組成物の好適な量は、防食性のおよび/もしくは接着促進の組成物の総重量に基づいて、0.01から50、好ましくは0.1から30、そしてより好ましくは0.5から16重量パーセントで変化し得る。ヒドロキシル官能性加水分解性シランとヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の前述のものよりも高い濃度は、厚い(防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティングの正方形領域当たりの重量の厚さを参照する)防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティングをもたらすとここでは理解されよう。そのようなコーティング剤組成物は製造するのにより高いコストがかかり、もろくなり得、そしてそれゆえかなり実際的ではない。加えて、厚いコーティングはまた、それらが塗布される金属のマイクロラフネス(micro−roughness)を減じ、金属の表面積を減じ、そして、接着促進コーティング剤とそれへとさらに塗布される任意のものとの間のより少ない相互作用を導く。ここでの一実施態様において、本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は、0.01から5、好ましくは0.05から2、そしてより好ましくは0.1から1マイクロメートルの乾燥厚さを有し得る。
【0048】
ここでの一実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、水性溶媒において、選択した水性組成物と完全に混和性でさえあるまでの、比較的高い可溶性を有する。いくつかの有利な可溶性は、リットル当たり600g(g/l)まで、好ましくは400g/lまで、そしてより好ましくは300g/lまでを含む。ここでの他の具体的な実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物は、熱力学的に好ましい縮合プロセスに関わらず長期間の安定性を有するように作製され得る。さらに他の具体的な実施態様において、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物のオリゴマーは、上述の高い可溶性のレベルの一つを示す。
【0049】
ヒドロキシル含有加水分解性シランの水溶液は部分的にもしくは実質的に完全に加水分解され得、そして生じる加水分解産物は続いて部分的に縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)の生成を介してオリゴマーを生成できる。これらの部分的に縮合した産物は、一般的に水への可溶性がより低い。縮合の度合いが大きくなり過ぎるとき、オリゴマーもしくはその相当大きい部分は不溶性になり、それ自体は本発明の金属コーティング方法への使用に適さない。
【0050】
有用な水性コーティング剤溶媒は一般的に、0から95、好ましくは1から80、そしてより好ましくは2から50パーセントの、ヒドロキシル含有加水分解性シラン組成物の縮合レベルを有する。
【0051】
防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は、水道水、好ましくはイオン交換水、そしてより好ましくは蒸留水を含む任意の産業的に好適な源からの水を用いて作製できる。水の量は、ヒドロキシ官能性カルバモイル有機ケイ素もしくはヒドロキシル官能性カルバモイルシランの量および/もしくはタイプ、上述のものより誘導されるオリゴマーの量および/もしくはタイプ、ならびに上述の界面活性剤、触媒、共溶媒および有機酸のような任意の追加的な成分の量および/もしくはタイプに大きく依存して変化し得る。防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物中の水の量は、表面張力、pH、安定性およびそのなかのヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の加水分解の所望のレベルに依存して変化し得る。水の好適な量は、こー天狗剤組成物の総重量に基づいて、50から99.9、好ましくは75から99、そしてより好ましくは85から98重量パーセントを含む。
【0052】
本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物に組み入れることの出来る界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル脂肪酸塩、アルキルスルファートエステル塩、アルキルベンゼンスルホナート、アルキルホスファート、アルキルアリルスルファートエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルホスファートエステル、第4級アンモニウム塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ジ(長鎖アルキル)ジメチルアンモニウム塩、エトキシ化ノニルフェノール、ポリビニルアルコールを含む。好適な界面活性剤の具体例は、Dow Chemical Companyによって製造されるTriton X−100およびMomentive Performance Materialsによって製造されるSilwet L−77(後者の場合、界面活性剤は中性pHで存在して提供される)を含む。用いられる界面活性剤の量は、ヒドロキシ官能性カルバモイルオルガノシラン化合物の量および/またはタイプ、水の量および/もしくはタイプ、そして触媒、共溶媒および有機酸のような、用いられる追加的な成分の量および/もしくはタイプに大きく依存して変化し得る。界面活性剤の量は、表面張力、pH、安定性、およびコーティング剤組成物のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素成分の加水分解の所望のレベルに依存して変化し得る。界面活性剤の好適な量は、存在するとき、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の総重量に基づいて、0.0001から5、好ましくは0.001から2、そしてより好ましくは0.02から0.1重量パーセントである。
【0053】
本発明のコーティング剤組成物中のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の安定性はしばしば、そこへの一つもしくはそれ以上の有機共溶媒の添加によって増強される。好適な有機共溶媒はブチルアルコールのようなアルコール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなグリコール、エーテル、エステルなどを含む。有機共溶媒は好ましくは非VOC、非HAPのそれであり、例えば3−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロパン−1−オールもしくは3−[2−(2−ブトキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−プロパン−1−オールのようなアルコール、メチルエチルケトンのようなケトン、ヘキシレングリコールもしくは2−メチル−1,3−ブタンジオールのようなグリコール、酢酸3−[2−(2−ブトキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−プロピルエステルのようなエステルなどである。これらおよび他の共溶媒の量は、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の量および/もしくはタイプ、水の量および/もしくはタイプ、ならびに、組成物中に存在する可能性のある任意の追加の成分の量および/もしくはタイプに大きく依存して変化し得る。共溶媒の量はまた、表面張力、pH、安定性およびコーティング剤組成物のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素の加水分解の所望のレベルに依存して変化し得る。一般的に、共溶媒の量は、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の総重量に基づいて、0.1から50、好ましくは0.5から30、より好ましくは1から20重量パーセントで変化し得る。
【0054】
ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素がある程度加水分解するとき、たとえばヘキシレングリコールもしくは2−メチル−1,3−プロパンジオールのようなグリコールのような非VOC、非HAPの加水分解性副産物の中程度の量が産生され、事実上、上述のような共溶媒として機能する。そのような加水分解で産生される共溶媒は、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の総重量に基づいて、たとえば0.1から50、好ましくは0.1から20、そしてより好ましくは0.2から6重量パーセントの広く変化する濃度でコーティング剤組成物中に存在し得る。
【0055】
コーティング剤組成物のpHは、その部分的におよび/もしくは実質的に完全に加水分解されたヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の縮合速度を最小化し、それによって、コーティング剤組成物の貯蔵安定性を最大化するために、有利にも維持されている。本発明のコーティング剤組成物の貯蔵安定性はその有機ケイ素化合物の実質的に溶液中に残存する能力、もしくは換言すると、述べられる期間および温度にわたって、任意の大きい度合いの沈殿に抵抗する能力を指す。防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物のpHレベルを制御することは、貯蔵安定性の良好なレベル、たとえば、周囲温度において、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも5ヶ月、そしてもっとも好ましくは少なくとも6ヶ月を提供するのを助けることができる。安定性のそのようなレベルは一般的にコーティング剤組成物のpHを、たとえば2から9、好ましくは3から8、より好ましくは3から7、そしてもっとも好ましくは3.5から6に調整することによって達成され得る。pHの所望のレベルはたとえば、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の総重量に基づいて、0.001から2、好ましくは0.001から1、そしてもっとも好ましくは0.01から0.2重量パーセントの好適なレベルにおける、例えば有機酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、リン酸などの添加によって達成され得る。
【0056】
本発明の他の具体的な実施態様において、上述のもしくは同類の有機酸は、上述のpH範囲の任意のものにあるコーティング剤組成物中のヒドロキシル官能性有機ケイ素化合物の加水分解を助けるのに用いられ得る。ヒドロキシル官能性有機ケイ素化合物上の加水分解性基の加水分解は、pH値が3.5から6にあるとき、かなりより容易に起こる。
【0057】
ここでの防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の硬化を促進するための縮合を推進するために触媒を用いる事が出来る。好適な縮合触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレアート、ジラウリルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズ−ビス(4−メチルアミノベンゾエート)、ジブチルスズジラウリルメルカプチドおよびジブチルスズ−ビス(6−メチルアミノカプロエート)などのスズ触媒を含む。縮合触媒は、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤の貯蔵安定性を減ずる可能性もある。好ましくは潜在性の触媒が用いられる。潜在性の触媒は貯蔵の間は不活性であり、そして熱、放射線照射もしくは硬化プロセスにおける蒸発によって活性化される。例は、たとえば、アンモニアもしくはアミン、ならびに低蒸気圧のカルボン酸のような大気圧で2666〜101.3kPa(20〜760 mmHg)の蒸気圧のような、またはたとえば、フタル酸のような133.3Pa(1mmHg)より低い蒸気圧のような、気体のもしくは高蒸気圧の有機塩基からの塩を含む。縮合触媒の量はたとえば、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物の総重量に基づいて、0.001から1、好ましくは0.001から0.5、そしてより好ましくは0.001から0.2重量パーセントの広い範囲であり得る。
【0058】
C. 金属コーティング手順およびその結果生じるコーティングされた金属
本発明によって作製される防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物を塗布する方法は、任意選択で一つもしくはそれ以上の上述のような界面活性剤、触媒、共溶媒および有機酸を任意選択で含有する水溶液としての組成物のコーティング剤を金属表面へと塗布するステップと、その後に金属表面上のコーティング剤を硬化するステップと、そして所望なら硬化した防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤へと、塗料もしくは他のコーティング剤組成物を塗布するステップとを含む。
【0059】
コーティングされる金属はシート状、棒状、ロッド状、ワイア状、ホイル状などで提供され得る。金属具体例は、銅、銀、真ちゅう、チタン、チタン合金、金、スズ、ニッケル、クロム、タンタル、表面冷延鋼板、亜鉛めっきされたスチール、溶融亜鉛めっきスチール、プライムスチール(prime steel)、アルミニウム、例えば亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金などのうちの少なくとも一つでコートされたスチール、ならびに鉄を含む。
【0060】
ここでの防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は、選択された金属表面に対して、ロールコーティング、特にリバースロールコーティング、浸漬コーティング、フラッドコーティング(flood coating)、スプレーおよびドローダウン(drawdown coating)法などの任意の既知でかつ通常の手順によって塗布され得る。
【0061】
防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は水相の除去により硬化される。硬化プロセスは、15から150℃の、好ましくは20℃から50℃の、そしてより好ましくは25℃から30℃の範囲の温度において、13.3から266.6kPa(0.1から2000mmHg)の範囲の絶対圧力を維持しつつ実施される。熱は、対流式オーブンのようなオーブン、またはヒートランプを用いて提供され得る。温度は20℃から50度の範囲であり得、133.3Paから10.67kPa(1から80mmHg)の状態の絶対圧力が維持される。詳細には0.1から25メートル/時、そしてより有利には1から15メートル/時の速度を有する気体の気流を、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤を含有する金属基材表面上に通すことは、水の蒸発そしてそれゆえの硬化を促進するのに用いる事が出来る。
【0062】
新規に塗布されたコーティング剤組成物のシラン成分の硬化は一つのシラン分子のシラノールと他のシラン分子のシラノールとの反応を含み、水の生成を伴う。硬化したコーティング剤の縮合パーセントは、たとえば30から100、好ましくは60から99、そしてより好ましくは65から95パーセントであり得る。
【0063】
本発明の他の実施態様において、本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物を硬化したものでコーティングされ、そして続いて追加のコーティング剤、例えば塗料が塗布された金属が提供され、ASTMD1654によって測定されるクリーページの減少によって示される改善された腐食の性質を示す。ここでの二次コーティングとしての使用に特に有用な一つの塗料はSherwin Williamsより入手可能なPermaclad2400のようなポリエステル系塗料である。クリーページの度合いは、用いられる具体的な塗料、暴露時間、下塗りの接着促進のコーティング剤、および当業者に周知の他の要素に大きく依存して変化する。ここでの防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物を硬化したものに対して塗布できる塗料以外の他のコーティング剤は、化粧塗料、船舶用塗料、メンテナンス塗料、建築用塗料などを含む。ゴム、接着剤、封止剤、プラスチックなどならびに金属基材を含む有機ポリマー組成物間の接着を促進するのにここでの防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤を利用できる。
【0064】
コートされるべき金属は任意選択で表面のヒドロキシル基を有する事ができ、これは本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物中のシリル基と反応し、それによってコーティング剤を固定するものとなる。そのような金属の例は上に記載されるようなものを含む。
【0065】
さらに塗布したコーティング剤、たとえば塗料の接着は、下塗りのシラン系層の縮合が60から99、そして好ましくは65から95の範囲にあるとき、向上するであろう。そのような向上した接着は、縮合の完全ではないシラン系コーティング剤へ浸潤し、下塗りの部分的に縮合したコーティング剤へと浸透し膨張させる、さらに塗布したコーティング剤の性能によるものであろう。部分的に縮合したコーティング剤は、残余のヒドロキシル(HO−)および/もしくはアルコキシ(RO−)基のため、いくらかより極性でおよび/もしくはいくらかより低い架橋密度である傾向にある。これらのヒドロキシル基および/もしくはアルコキシ基は、硬化したフィルムの湿潤性および膨張性を向上させる。
【0066】
さらに塗布したコーティング剤は硬化したシラン系コーティング剤へと、たとえばロールコーティング、浸漬コーティング、フラッドコーティング、スプレーおよびドローダウン法などのような任意の既知で従来の方法によって塗布され得る。
【0067】
防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤の硬化は、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と水との反応の副産物であるVOC、もしくは有機溶媒、合体剤、湿潤剤、界面活性剤などの他の揮発性成分を、環境へと放出するかも知れない。VOCの量は一般に、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤のその揮発性成分のいずれも蒸発するより前のすべての成分の総重量に基づいて0から10重量パーセントを超えないまでの範囲であるべきである。防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤の硬化は、ヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物と水との反応の副産物であるHAP、もしくは米国環境保護庁のHAPのリストに列挙される有機溶媒、合体剤、湿潤剤、界面活性剤などの他の成分を、環境へと放出するかも知れない。HAPの量は一般に、防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤のその揮発性成分のいずれも蒸発するより前のべての成分の総重量に基づいて0から1重量パーセントを超えないまでの範囲であるべきである。
【実施例】
【0068】
D. 実施例
実施例1〜4は本発明によるヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物の作製を示し、そして実施例の5および6は本発明の防食性のおよび/もしくは接着促進の組成物を金属表面へと塗布する方法を示す。比較例1は既知のタイプのクロム含有防食性組成物でコートされた金属表面を示す。
【0069】
実施例5および6に用いられる金属は、、ACT Laboratoriesによって供給される15.2センチメートル(cm)×10.16cm×0.08128cmの寸法の磨かれていない、切断冷延鋼板(CRS)パネルの形状で提供される。コーティングされるのに先立ち、テストパネルは、通常の方法によりアルカリ性の洗浄剤で洗浄され、蒸留水でリンスされ、そして窒素ガスで乾燥された。コーティング剤組成物は、極細ドローダウンワイヤロッド(Gradcoからのサイズ#3)によってテストパネルへと直接的に塗布された。コートされたパネルは垂直で乾燥され、過剰のコーティング剤がそれぞれのパネルの底の端より除去された。パネル上のコーティング剤はその後硬化され、硬化されたコーティング剤は1.2ミル(mils)の乾燥厚さで白H67WC55高固体ポリエステル裏地エナメル(Permaclad2400、Sherwin Williams)によってペイントされた。それぞれのパネルは、中性塩スプレーへと250時間曝すことを含むASTM B117の加速腐食試験へと供された。それぞれのパネルの防食性能はASTM D1654によって評価された。
【0070】
実施例5のパネル上のコーティング剤組成物の接着性能は比較例1のクロムシーリングされたリン酸亜鉛浸漬処理の対照テストパネルのそれと比較された。特にこの比較評価は、(金属パネルの)刻印を等間隔の10の区間へと分割することからなる。刻印に沿う等間隔で無いクリーページのため、それらの区間の端においてクリーページが測定された。クリーページは、ミリメートル単位で、最小、最大および平均の刻印からの距離によって報告され、表1において、それぞれ個々のテストパネルに対して示される。
【0071】
実施例5および6のコーティング剤に用いられるヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物を作製するためのヒドロキシル官能性加水分解性カルバモイルシランの構造式は以下の通りである:
【化10】
【0072】
比較例1
ACT Test Panel、Inc.より購入した市販のクロムシーリングされたリン酸亜鉛じゃPermaclad2400によってペイントされた。コートされたパネルの塗料のクリーページは測定され、実施例5および6のコートされたパネルのそれと比較された。クリーページ試験の結果は、ミリメートル単位で、最小、最大および平均の刻印からの距離によって表1において報告される。
【0073】
実施例1
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(20g、0.111モル)をゆっくりと攪拌しながら炭酸プロピレン(11.39g、0.111モル)と混合した。混合物はゆっくりと発熱した。ヒドロキシル官能性加水分解性シランを得るまで攪拌を24時間継続した。2−ヒドロキシルプロピルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩(15g)、メタノール(5g)、および酢酸(0.1g)の混合物へと蒸留水(18g)を攪拌しながら滴下し、かすみがかった溶液を生成した。攪拌を12時間継続し、透明の水混和性の液体(39.37重量%のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物)を生じた。
【0074】
実施例2
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(20g、0.111モル)を炭酸エチレン(9.82g、0.111モル)へと添加した。混合物を攪拌しながらホモジナイズし、そしてその後それは少し発熱した。攪拌を24時間継続し、2−ヒドロキシエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩を得た。2−ヒドロキシルエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩(15g)、メタノール(5g)、および酢酸(0.1g)の混合物へと蒸留水(18g)を攪拌しながら滴下し、かすみがかった溶液を生成した。攪拌を12時間継続し、透明の水混和性の液体(39.37重量%のヒドロキシル官能性カルバモイル有機ケイ素化合物)を生じた。
【0075】
実施例3
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(20g、0.111モル)をゆっくりと攪拌しながら炭酸プロピレン(11.39g、0.111モル)と混合した。混合物はゆっくりと発熱した。2−ヒドロキシルプロピルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩を得るまで攪拌を24時間継続した。2−ヒドロキシルプロピルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩(31.4g、0.111モル)、および硫酸(0.1g)の混合物へと2−メチル−1−3プロパンジオール(38.8g、0.431モル)を攪拌しながら滴下し、その後、50℃、2000Pa(15mmHG)の圧力で4時間加熱した。生じるメタノールを蒸留によって除去した。産物は透明で少し粘性のある液体であった。
【0076】
実施例4
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(20g、0.111モル)をゆっくりと攪拌しながら炭酸エチレン(9.82g、0.111モル)と混合した。混合物はゆっくりと発熱した。2−ヒドロキシエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩を得るまで攪拌を24時間継続した。2−ヒドロキシエチルN−(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバミン酸塩(29.8g、0.111モル)、および硫酸(0.1g)の混合物へとヘキシレングリコール(39.3g、0.333モル)を攪拌しながら滴下し、その後、50℃、2000Pa(15mmHG)の圧力で4時間加熱した。生じるメタノールを蒸留によって除去した。産物は透明で少し粘性のある液体であった。
【0077】
実施例5
2.5重量%の(MeO)Si(CHNHCOOCHCH(Me)OHの部分的な加水分解産物の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は、50mgの非イオン性界面活性剤(Triton X−100)、2.54gの39.37重量%の(MeO)Si(CHNHCOOCHCH(Me)OH水溶液および47.41グラムの蒸留水とを混合することによって作製される。パネルAおよびBはコーティング剤を硬化するために20分間乾燥され、その後Permaclad2400によってペイントされた。
【0078】
刻印に沿う等間隔で無いクリーページのため、それらの区間の端においてクリーページが測定された。クリーページは、ミリメートル単位で、最小、最大および平均の刻印からの距離によって表1において報告された。
【0079】
実施例6
2.5重量%の(MeO)Si(CHNHCOOCHCHOHの部分的な加水分解産物の防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物は、50mgの非イオン性界面活性剤(Triton X−100)、2.54gの39.37重量%の(MeO)Si(CHNHCOOCHCHOH水溶液および47.41グラムの蒸留水とを混合することによって作製される。パネルCおよびDはコーティング剤組成物によってコーティングされ、コーティング剤を硬化するために20分間乾燥され、その後Permaclad2400によってペイントされた。
【0080】
刻印に沿う等間隔で無いクリーページのため、それらの区間の端においてクリーページが測定された。クリーページは、ミリメートル単位で、最小、最大および平均の刻印からの距離によって表1において報告された。
【0081】
【表1】
【0082】
これらのデータが示すように、本発明のクロムを含まない防食性のおよび/もしくは接着促進のコーティング剤組成物(実施例5および6)は、既知のZn−P−Crコーティング剤組成物(比較例1)よりも同等かもしくはそれ以上に優れた性能を示す。
【0083】
上の記述は多くの具体例を含有するが、それら具体例は限定として解釈されるべきでなく、具体的なそれらの実施態様の例示としてのみ解釈されるべきであることは理解されよう。当業者はここに添付される請求項によって定義されるような記述の範囲および精神に包含される多くの他の実施態様を想到するであろう。