(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1〜20マイクロメートルの範囲の繊維径を有する複数種類の繊維を含む摩擦材料であって、前記繊維がセラミックまたは鉱物繊維と、強度を加えるための補強繊維とを含み、前記補強繊維が300を超えるカナダ標準ろ水度にフィブリル化されており、前記補強繊維が、前記摩擦材料の30重量%以下で存在しているアラミド繊維と、前記摩擦材料の2〜20重量%の範囲の量で存在するホモアクリル繊維を含むアラミド繊維代替品と、を含む、摩擦材料を備えた製品。
1〜20マイクロメートルの範囲の繊維径を有する複数種類の繊維を含む摩擦材料であって、前記繊維は、セラミックまたは鉱物繊維と、強度を加えるための補強繊維とを含み、前記補強繊維が300を超えかつ650未満のカナダ標準ろ水度にフィブリル化されており、
複数種類の炭素繊維をさらに含み、
前記補強繊維が、ホモアクリル繊維及びアラミド繊維を含み、
前記アラミド繊維が、前記摩擦材料の10〜30重量%で存在し、
前記ホモアクリル繊維が、前記摩擦材料の2〜10重量%で存在し、
鉱物繊維をさらに含み、
前記鉱物繊維が、前記摩擦材料の5〜30重量%で存在し、
前記炭素繊維が、前記摩擦材料の5〜20重量%で存在し、かつ150GPaを超える引張弾性率を有する、
摩擦材料を備えた製品。
【発明を実施するための形態】
【0006】
実施形態の下記の説明は、本質的に単に例示的なものであり、決して本発明、その用途、または使用法を限定するものではない。
【0007】
本発明の一実施形態は、約1から約20マイクロメートルの範囲の繊維径を有する複数種類の繊維を含む摩擦材料を備えた製品を含むことができ、これら繊維はセラミックまたは鉱物繊維と、強度を加えるための補強繊維とを含み、これら補強繊維はカナダ標準ろ水度が300を超える状態にフィブリル化される。
【0008】
繊維質基材の一次層用の配合の一例は、約10から約30重量%のフィブリル化の低いアラミド繊維、約2から約10重量%のホモアクリル繊維、約10から約35重量%の活性炭粒子、約5から約20重量%の綿繊維、約2から約20重量%の炭素繊維、および約10から約35重量%の充填剤を含む。
【0009】
アラミド繊維およびアラミド繊維代替物
具体的には本明細書中で述べる他の繊維と組み合わせた場合、仮にあるとしても摩擦材料の著しい性能低下なしに摩擦材料の相対的に高価なアラミド繊維の少なくともかなりの部分を、相対的に安価なポリマー繊維によって置き換えることができることを発見した。一実施形態ではこのアラミド繊維代替物はホモポリマーを含む。一実施形態ではこのホモポリマーはホモアクリルポリマーを含む。一実施形態ではこのホモポリマーは、単独のアクリロニトリルから誘導される。本発明の一実施形態では摩擦材料は、その摩擦材料の25重量%未満で存在するアラミド繊維を含み、アラミド繊維代替物は、その繊維材料の18重量%から20重量%の範囲の量で存在する。この摩擦材料は、下記の例示的実施形態の中で述べるものを含めて追加の成分を含むことができる。
【0010】
本発明の様々な実施形態において繊維質基材中でフィブリル化の低いアラミド繊維、ホモアクリル繊維、および炭素繊維を使用することは、摩擦材料の高温に耐える能力を向上させる。フィブリル化の低いアラミド繊維およびホモアクリル繊維は、一般にコア繊維に付着するフィブリルを少なくする。フィブリル化の低い繊維を使用することは、より多孔質構造を有する摩擦材料を可能にする。すなわち典型的なフィブリル化繊維を使用する場合よりも大きな細孔が存在する。多孔質構造は、一般にはその孔径および液体透過率によって決まる。幾つかの実施形態では繊維質基材を、平均サイズが約2.0から約25ミクロンの径の範囲の細孔と画定する。幾つかの実施形態では平均細孔径は、径が約2.5から約8ミクロンの範囲にあり、その摩擦材料は少なくとも約50%、また幾つかの実施形態では少なくとも約60%以上、また幾つかの実施形態では約85%まで(85%を含む)の容易に入手できる気泡を有していた。
【0011】
また、幾つかの実施形態ではアラミド繊維およびホモアクリル繊維は、約0.5から約10mmの長さと、約300を超えるカナダ標準ろ水度(CSF)とを有することが望ましい。また幾つかの実施形態では、CSFが約450から約550の、約530以上の、また他の幾つかの実施形態では約580〜650のフィブリル化の低いアラミド繊維およびホモアクリル繊維を使用することが望ましい。これとは対照的にアラミドパルプまたはホモアクリルパルプなどのフィブリル化の高い繊維は、約285〜290のろ水度(CSF)を有する。
【0012】
「カナダ標準ろ水度」(T227 om−85)は、繊維のフィブリル化の程度をその繊維のろ水度の測定値として表すことができることを意味する。CSF試験は、水1L中に懸濁させた繊維3gの懸濁液を排出することができる速度の任意の測定値を与える経験的手順である。したがって、フィブリル化の低い繊維およびホモアクリル繊維は、フィブリル化の高い繊維よりも摩擦材料からの流体のろ水度または排出速度が高い。約430〜650(また幾つかの実施形態では好ましくは約580〜640、または好ましくは約620〜640)の範囲のCSFを有する繊維を含む摩擦材料は、すぐれた摩擦性能を実現し、かつ通常のフィブリル化の高い繊維を含有する摩擦材料よりも良好な材料特性を有する。この高いカナダろ水度に加えて、長い繊維長は、高強度、高い気孔度、および良好な耐水性を可能にする。フィブリル化の低い繊維(約530〜約650のCSF)は、特に良好な長期耐久性および安定した摩擦係数を有する。
【0013】
基材がより大きい平均細孔径および流体透過度を有する場合、摩擦材料は、その摩擦材料の多孔質構造全体にわたっての自動変速機の流体のより良好な流れのために、恐らくより低温で、すなわち変速機中の熱の発生がより少ない状態で動作する。動力伝達装置の作動中にその流体は徐々に分解し、特に高温では「油堆積物」を形成する傾向がある。これらの「油堆積物」は細孔の大きさを小さくする。したがって摩擦材料が最初により大きな細孔で出発する場合は、その摩擦材料の有効寿命の間ずっとより多くの通気孔が残存し続ける。
【0014】
本発明の一実施形態は、2.0重量%の綿繊維(例えば、COTTON 528)、16.5重量%のアラミド繊維(例えば、TWARON 1092)、10.0重量%のホモアクリルポリマー(例えば、フロリダ州ペースのスターリング・ファイバース(Sterling Fibers,Pace,FL)から入手したCFF 511−2 Sterling Fiber−250csf)、17.5重量%の鉱物繊維(例えば、LAPINUS RB280−ROUXL 1000)、5.0重量%の炭素繊維(例えば、ASBURY AGM94 cfo125)、27.0重量%の珪藻シリカ(例えば、CELITE 358)、および22.0重量%の黒鉛粒子(例えば、GRAPHITE 402)を含む。任意選択で他の添加物を含むこともできる。
【0015】
幾つかの実施形態では摩擦材料は、約10から約30重量%のフィブリル化アラミド繊維、約2から約20重量%のアラミド繊維代替物、例えばフィブリル化ホモアクリル繊維、約10から約30重量%のシリカ充填剤、約10から約20重量%の黒鉛、および約5から約20重量%の直径が小さい石油ピッチ系炭素繊維を含む繊維質基材を含むことができる。
【0016】
例えば、布材料、織布、および/または不織布材料などを含む非アスベスト基材を含めて様々な基材が本発明の摩擦材料に役立つ。好適な基材は、例えば繊維および充填剤を含む。この繊維は、有機繊維、無機繊維、および炭素繊維であることができる。この有機繊維は、フィブリル化および/または非フィブリル化アラミド繊維などのアラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、綿/セルロース繊維などであることができる。この充填剤は、例えばシリカ、珪藻土、黒鉛、アルミナ、カシュー粉などであることができる。他の実施形態では基材は、織布、不織布、および紙材を含むことができる。
【0017】
幾つかの実施形態では摩擦材料は、その中に複数個の空隙または気孔を有する基材を含む。この基材中の空隙の大きさは、約0.5μmから約20μmの範囲に及ぶことができる。
【0018】
幾つかの実施形態では基材は、好ましくは約50から約60%の空隙率を有し、その結果、その基材は「多孔質」織布と比べて「高密度」とみなされる。幾つかの実施形態では基材は、繊維質基材などの任意の適切な材料であることができる。摩擦材料は、基材中の空隙を少なくとも部分的に満たす樹脂材料をさらに含む。この樹脂材料は、基材の厚さ全体にわたってほぼ均一に分散される。
【0019】
幾つかの実施形態では基材は、摩擦材料に望ましい多孔質構造を与えるように、フィブリル化の低い繊維と炭素繊維とをその繊維質基材中で使用する繊維質基材を含む。この繊維の幾何学的配置は、高い耐熱性を与えるだけでなく、離層抵抗と、スキールまたは雑音抵抗とを与える。また幾つかの実施形態では炭素繊維および炭素粒子の存在は、耐熱性を増し、安定した摩擦係数を維持し、かつスキール抵抗を増す点でその繊維質基材に役立つ。繊維質基材中の比較的少量の綿繊維は、摩擦材料のクラッチ「すり合わせ(break−in)」特性を改良するために含ませることができる。
【0020】
本発明の様々な実施形態において摩擦材料用に使用される繊維は、150GPaを超える、約200から約300GPa、または約250から約300GPaの範囲にある引張弾性率を有する。摩擦材料の特別な成分に関する更なる詳細については下記に示す。
【0021】
摩擦材料はまた、下記の追加の成分を含むことができる。
【0022】
炭素系繊維
本発明の一実施形態では摩擦材料は、炭素系繊維、例えば非溶媒和状態においてそのピッチの融点よりも少なくとも40℃低い流体温度を有する溶媒和ピッチを含む石油ピッチ系炭素繊維を含むことができる。石油ピッチ系炭素繊維は、溶融することなく炭化温度まで加熱することができる。
【0023】
他の実施形態では、繊維質基材上に第二層として石油ピッチ系炭素繊維を使用することができ、繊維質基材はさらにその繊維質基材中に石油ピッチ系炭素繊維を含む。
【0024】
さらに別の実施形態では石油ピッチ系炭素繊維は、その繊維質基材中に石油ピッチ系炭素繊維を含まない繊維質基材の外面の二次層または最上層として使用される。石油ピッチ系炭素繊維を有する摩擦材料は、起動(break away)摩擦係数を高め、こうして摩擦材料の保持能力を増大させる。
【0025】
幾つかの実施形態では石油ピッチ系炭素繊維は、例えば綿およびセルロース充填剤を含む安価な多孔質材料上に最上層または二次層として使用することができる。これらの小径繊維は、例えば約15から約20重量%の範囲で一般的な配合中に存在することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では炭素繊維は、非溶媒和状態においてそのピッチの融点よりも少なくとも約400℃低く、多くの場合200℃以上の流体温度を有する溶媒和等方性ピッチから製造される。この溶媒和等方性ピッチから製造される繊維は、それら繊維を溶融することなく炭化温度まで加熱することができるような望ましい改良された安定化特性を有する。さらに炭素繊維中に存在する中間相は、その炭素繊維の形成に伴うせん断力によってあまり引き延ばされない。さらに石油ピッチ系炭素繊維は、約5から約40重量%の溶媒を有することができ、そのピッチ繊維は繊維から溶媒を除去すると非可溶性になる。
【0027】
この石油ピッチ系炭素繊維は、300℃を超える、好ましくは350℃を超える軟化点を有することができ、その結果、繊維紡糸温度を超える温度で繊維を安定化工程にかけることができる。
【0028】
用語「ピッチ」とは、一般には天然アスファルト石油ピッチの生産における副産物と、ナフサ分解産業において副産物として得られる重油と、石炭から得られる高炭素含量のピッチとを指す。石油ピッチとは、一般には石油留出物または残留物の触媒および/または熱的分解から得られる残留炭素質物質を指す。溶媒和ピッチは、一般にそのピッチ中に溶媒を約5から約40重量%の間で含有し、溶媒と結合していない場合はピッチ成分の融点よりも低い流体温度を有する。一般にその流体温度は約40℃より低い。溶媒和ピッチの流体温度は、その溶媒和ピッチを、融点を超える温度から毎分1℃で冷却したとき6000ポアズの粘度を示す温度であると当業界においては一般に規定されている。溶媒含量とは、溶媒の真空分離による減量によって求められる値を指す。本発明の一実施形態では本質的に炭素からなるこの繊維が、摩擦材料の約10から約20重量%で存在する。一実施形態ではこの炭素系繊維は、黒鉛を含む繊維である。
【0029】
鉱物系繊維
本発明の一実施形態では摩擦材料は、鉱物繊維を含むことができる。鉱物繊維は、比較的小さな直径を有することができる。これら鉱物繊維は、岩石、鉱滓、ガラス、または他の鉱物溶融液などのガラス質溶融液から製造することができる。溶融液は、一般には所望の分析組成を与えるように岩石または鉱物をブレンドすることによって形成される。多くの場合、その鉱物組成は、少なくとも32%のSiO
2、30%未満のAl
2O
3、および少なくとも10%のCaOを含む酸化物としての分析組成を有する。
【0030】
本発明の一実施形態では鉱物繊維には、5から10マイクロメートルの範囲の繊維径を有するラピナス(Lapinus)からの人工鉱物繊維が含まれる。この鉱物繊維は、より大きな細孔を有する摩擦材料を生産するために使用することができ、下記の測定値によって示されるように良好な材料特性を実証する。
【0032】
一般に小径鉱物繊維は、本発明の一実施形態による摩擦材料中で使用することができ、下記の特性を有することができる。
【0034】
別の実施形態において使用されたラピナス・ファイバース(Lapinus Fibers)から入手した人工鉱物繊維は、湿式製紙工程用(ガスケット用途)に設計された良好な水分散を得るための界面活性剤で処理され、繊維径<10μm、長さ650±150μmの特性を有した。
【0035】
本発明の別の実施形態において使用されたラピナス・ファイバース(Lapinus Fibers)から入手した別の人工鉱物繊維は、ブレーキ用途用に設計された、フェノール樹脂との良好な接着を得るためのシランカップリング剤で処理され、容易な混合(延伸のない)のために短い繊維長を有し、繊維径<10μm、長さ230±50μmの特性を有した。
【0036】
この小径鉱物繊維の繊維径は、様々な実施形態において5から10マイクロメートル、または約5マイクロメートルから7マイクロメートルの範囲であることができる。この小径繊維の引張弾性率は、複数の選択的実施形態において200から300GPaまたは250から300GPaの範囲であることができる。一実施形態では鉱物繊維は、摩擦材料の約5から約30重量%で存在することができる。
【0037】
一実施形態では鉱物繊維は、SiO
2を38重量%〜43重量%で、Al
2O
3を18重量%〜23重量%で、CaO+MgOを23重量%〜28重量%で、FeOを4.5重量%〜8重量%で、K
2O+Na
2Oを4.5重量%で、また他の成分を6重量%まで含むことができる。別の実施形態では鉱物繊維は、SiO
2を34〜52重量%で、Al
2O
3を5〜15重量%で、CaOを20〜43重量%で、MgOを4〜14重量%で、Na
2Oを0〜1重量%で、K
2Oを0〜2重量%で、TiO
2を0〜1重量%で、FeO
2を0〜2重量%で、また他の成分を0から7重量%で含むことができる。
【0038】
他の繊維
好ましい他の繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、セラミック繊維、およびシリカ繊維であるが、他の無機繊維を採用することもできる。本発明の様々な実施形態で使用される他の有用な無機フィラメントには、ガラス繊維、例えば石英、アルミノケイ酸マグネシウム(magnesia alumuniosilicate)、非アルカリ性アルミノホウケイ酸塩、ホウケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、石灰−アルミノケイ酸ナトリウム(soda lim−aluminosilicate)、ケイ酸鉛、非アルカリ性ボロアルミナ鉛(lead boroalumina)、非アルカリ性ボロアルミナバリウム(barium boroalumina)、非アルカリ性ボロアルミナ亜鉛(zinc boroalumina)、非アルカリ性アルミノケイ酸鉄、ホウ酸カドミウムなどから形成される繊維、ならびにアルミナ繊維などを挙げることができる。幾つかの実施形態ではその他の繊維は、20マイクロメートルを超える繊維径を有することができる。
【0039】
一実施形態ではこれら小径繊維は、繊維質基材の外面に摩擦材料として存在することができる。摩擦材料は、一般には対向する摩擦面と係合した状態で使用される。したがって繊維質基材は、摩擦材料が対向する摩擦面と係合している間、その対向する摩擦面と接している。繊維はまた、その対向する摩擦面中にも存在することができる。湿式摩擦材料もまた、小径繊維がその複数の層のいずれかの中に存在している複数枚の繊維質基材を含むことができる。
【0040】
幾つかの実施形態では繊維材料に高い摩擦係数を与えるために綿繊維が繊維質基材に加えられる。幾つかの実施形態では繊維質基材に綿を約5から約20%、また幾つかの実施形態では約10%加えることもまた可能である。
【0041】
添加物
様々な種類の摩擦改質粒子が摩擦材料において役立つ場合がある。有用な摩擦改質粒子にはシリカ粒子が挙げられる。他の実施形態は、樹脂粉末、例えばフェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびこれらの混合物などの摩擦改質粒子を有することができる。さらに他の実施形態には、部分的および/または完全に炭化した炭素粉末および/または粒子、これらの混合物、ならびにこのような摩擦改質粒子の混合物を挙げることができる。本明細書中で述べる幾つかの実施形態においては、珪藻土、セライト(Celite)(登録商標)、セラトム(Celatom)(登録商標)、および/または二酸化ケイ素などのシリカ粒子が役立つ場合がある。シリカ粒子は、基材と強く接着する安価な無機材料である。シリカ粒子は、摩擦材料に高い摩擦係数を与える。シリカ粒子はまた、基材に滑らかな摩擦面を与え、かついかなる「シャダー(shudder)」もできるだけ少なくするように摩擦材料に良好な「シフト感(shift feel)」と摩擦特性を与えることができる。
【0042】
一実施形態では繊維/充填剤比は、0.8/1から1.4/1の範囲である。特定の実施形態では繊維/充填剤比は、1.09/1である。
【0043】
一般に湿式摩擦材料は、基材表面に付着させた摩擦改質粒子を含む。好ましくはそれら粒子は合成黒鉛である。無機充填剤もまた使用することができる。無機充填剤は様々であり、一般には珪藻土、クレー、ウォラストナイト、シリカ、炭酸塩など、バーミキュライト、雲母、シリカ酸化物(silica oxides)、鉄酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物など、シリカ窒化物、鉄窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物など、およびシリカ炭化物、鉄炭化物、アルミニウム炭化物、チタン炭化物などである。これら粒子は、少なくとも4.5のモース硬さを有することができる。
【0044】
バインダーおよび含浸剤
様々な樹脂を本発明の実施形態において使用することができる。樹脂には、フェノール樹脂またはフェノール系樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態ではこの含浸剤は、摩擦材料100重量部当たり約45から65重量部を構成することができる。一実施形態ではフェノール系樹脂は、その樹脂ブレンド物中に、エポキシ、ブタジエン、シリコーン、桐油、ベンゼン、カシューナッツオイルなどの他の変性成分を含む。フェノール変性樹脂中でフェノール樹脂は、一般にはその樹脂ブレンド物(存在する任意の溶剤を除く)の約50重量%以上で存在することができる。しかしながら、幾つかの実施形態において摩擦材料は、その混合物が、シリコーン−フェノール混合物(溶媒および他の加工助剤を除く)の重量を基準にしてシリコーン樹脂を約5から約80重量%、また或る目的では約15から約55重量%、また幾つかの実施形態では約15から約25重量%含有する樹脂ブレンド物を含む場合に改良されることが分っている。
【0045】
本発明の別の実施形態は、約5から約25重量%、また約10から約15重量%のエポキシ化合物を、その残余(溶媒および他の加工助剤を除く)のフェノール樹脂と共に含有するエポキシ変性フェノール樹脂を含むことができる。このエポキシ変性フェノール樹脂化合物は、摩擦材料にフェノール樹脂単独よりも高い耐熱性を与えることができる。
【0046】
他の実施形態ではバインダーは、フェノールまたは変性フェノール樹脂、シリコーンまたは変性シリコーン樹脂、あるいはフェノールまたは変性フェノール樹脂とシリコーンまたは変性シリコーン樹脂とのブレンド物であることができる。一実施形態ではバインダーは、エポキシ変性フェノール樹脂である。この湿式摩擦材料は、例えばクラッチフェーシングまたはブレーキライニングとして使用することができるがこれらには限定されない。一実施形態では湿式摩擦材料は、10から70重量%の繊維、10から70重量%の無機充填剤、および20から60重量%のバインダーを含む。
【0047】
本発明のさらに他の実施形態では本発明の繊維上に有機シランバインダーを用いることができる。大部分の有機官能性アルコキシシランが、定着剤および表面改質剤などの特定の専門的用途を有する。例えば、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン類、3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン類、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシ−シラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシ−シラン、および3−メタオキシプロピルトリメトキシシランは定着剤として、または表面改質剤として使用される。3−アミノイソブチルトリアルコキシシラン類、3−アミノイソブチルメチルジアルコキシシラン類、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−2−メチルプロピル−アルコキシシラン類、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノ−2−メチルプロピルメチルジアルコキシシラン類などの化合物もまた知られている。
【0048】
別の実施形態では摩擦材料は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂で硬化性バインダーとして作製することができる。このフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドの両方を1:2.8以上、例えば1:5までのモル比で含有する。一般にそのホルムアルデヒドの量は、比率1:3.1から1.5、例えば1:3.4のように化学量論量を超える。過剰のホルムアルデヒドは、フェノールが気体の形で存在し続ける可能性を避ける。アンモニアおよび糖などの他の化合物をフェノール系バインダーの調製において使用することができる。
【0049】
摩擦材料はまた、様々な樹脂系を用いて含浸させることができる。幾つかの実施形態では少なくとも1種類のフェノール樹脂、少なくとも1種類の変性フェノール系樹脂、少なくとも1種類のシリコーン樹脂、少なくとも1種類の変性エポキシ樹脂、および/または上記の組合せを使用することができる。幾つかの他の実施形態では相溶性溶媒中でフェノール樹脂とブレンドまたは混合したシリコーン樹脂が有用である。
【0050】
高圧の油に浸された環境は、5MPaを超える、より好ましくは6MPaを超えることができる。この摩擦改質粒子は、好ましくは少なくとも4.5のモース硬さを有する。一実施形態では小径繊維対充填剤の比は、0.5/1から2.0/1の範囲であることができ、また別の実施形態ではこの比は、0.8/1から1.4/1の範囲に及ぶことができる。繊維質基材はまたバインダーを含む。一実施形態では繊維質基材は、小径繊維を20から60重量%含み、また別の実施形態では繊維質基材は、小径繊維を30から50重量%含む。
【0051】
樹脂混合物は、繊維質基材による樹脂の目標含浸率がシリコーン−フェノール樹脂の合計の約25から約70重量%、他の実施形態では約45から約200重量%、また幾つかの実施形態では約60から少なくとも65重量%の範囲にあるように、所望の量の樹脂と摩擦改質粒子を含むことができる。繊維質基材を樹脂で飽和した後、その樹脂バインダーを硬化し摩擦材料を形成するために、繊維質基材を300〜400℃の間の温度で一定時間(幾つかの実施形態では約2分の1時間)硬化する。摩擦材料の最終厚さは、繊維質基材の最初の厚さに左右される。
【0052】
本発明の一実施形態による摩擦材料は、繊維質基材の上面に摩擦改質粒子の層を含むことができ、その層は摩擦材料に良好なアンチシャッダー特性、高い耐性、高い摩擦係数、高い耐久性、良好な耐摩耗性、およびすり合わせ特性の向上を可能にする。
【0053】
摩擦材料はさらに、基材の第一面、または上面に規則正しい幾何形状の摩擦改質粒子の仕上層、または第二層を備える。基材上に仕上層として摩擦改質材が存在することは、良好な油保持および表面の油流れ特性を含めて摩擦材料に多くの有利な特性を与える。
【0054】
様々な充填剤もまた本発明の繊維質基材の一次層に役立つ。具体的には珪藻土などのシリカ充填剤が有用である。しかしながら他の種類の充填剤が本発明で使用するのに適していること、また充填剤の選択がその摩擦材料の特定の要求条件に左右されることも予想される。
【0055】
本発明の実施形態の上記説明は本質上単なる具体例であり、したがってそれらの変形形態を本発明の趣旨および範囲から逸脱しているとみなすべきではない。