特許第5745847号(P5745847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745847ジスルフィド/チオール単位を含むアゾキノリニウム化合物、それを含有する組成物、ケラチン繊維を染色する方法、および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745847
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ジスルフィド/チオール単位を含むアゾキノリニウム化合物、それを含有する組成物、ケラチン繊維を染色する方法、および装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 44/12 20060101AFI20150618BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20150618BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20150618BHJP
   C09B 67/42 20060101ALI20150618BHJP
   D06P 1/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C09B44/12CSP
   A61K8/49
   A61Q5/10
   C09B67/42 A
   D06P1/08
【請求項の数】14
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2010-523529(P2010-523529)
(86)(22)【出願日】2008年9月8日
(65)【公表番号】特表2010-539250(P2010-539250A)
(43)【公表日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】EP2008061885
(87)【国際公開番号】WO2009034059
(87)【国際公開日】20090319
【審査請求日】2011年8月10日
(31)【優先権主張番号】0757480
(32)【優先日】2007年9月11日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】60/960,190
(32)【優先日】2007年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ドブルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・グレーヴス
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−111626(JP,A)
【文献】 特開2006−169529(JP,A)
【文献】 特開2006−169528(JP,A)
【文献】 特表2007−532513(JP,A)
【文献】 特公昭43−008949(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 44/12
A61K 8/49
A61Q 5/10
C09B 67/42
D06P 1/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(II)の染料
【化1】
ならびにまた有機酸または鉱酸を有するそれらの付加塩、ならびにそれらの溶媒和物、水和物、互変異性体、ならびに光学および幾何異性体
[式(I)および(II)中、
> Lは、1個もしくは複数の二価基またはこれらの組合せで任意選択で中断されている、任意選択で置換されているC1〜C20の二価の炭化水素をベースとする鎖を表し、2個の二価基またはこれらの組合せは、C1〜C6の二価の炭化水素をベースとする鎖によって分離されていることが理解され、前記二価基は、
i)-N(R)-;-N+(R)(R0)-、An-;-O-;-S-;-C(O)- [Rは、水素、C1〜C4アルキル、C2〜C6(ポリ)ヒドロキシアルキル、アルコキシ(C1〜C6)アルキル、アリール、アリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ(C1〜C6)アルキル、アミノ(C1〜C4)アルキル(そのアミンは、同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されている)、(C1〜C6)アルキルカルボニルおよび(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノから選択される基を表し、R0、Rを表す]、
ii)カチオン性複素環またはカチオン性ヘテロアリールHet+、An- (An-は、アニオン性対イオンまたはアニオン性対イオンの混合物を表し、Het+は、5〜10員を含む飽和もしくは不飽和のカチオン性複素環、または5〜10員を含むカチオン性ヘテロアリールを表す)、
iii)5〜10員を含む非カチオン性複素環、ならびに
iv)任意選択で置換されている(ヘテロ)アリール
から選択され、
Lは、ジアゾ、ヒドラジノ、アミノオキシ、ニトロ、ニトロソまたはペルオキシド基を含まず、
> R1およびR4は、互いに独立に、
・ C1〜C4アルキル基、
・ ヒドロキシル基、
・ C1〜C4アルコキシ基、
・ C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、
・ アルコキシカルボニル基(RaO-C(O)-) (式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、
・ アルキルカルボニルオキシ基(RaC(O)-O-) (式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、
・ 少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているアミノ基 (2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一であるかまたは異なる他のヘテロ原子を任意選択で含む、置換されているまたは置換されていない5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)、
・ アルキルカルボニルアミノ基(RaC(O)-NR'a-) (式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表し、R'aは、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ (ジ)(アルキル)アミノカルボニル基((Ra)2N-C(O)) (式中、Ra基は、互いに独立に、同一または異なっていてもよく、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ ウレイド基((Ra)2N-CO-NRb-) (式中、RaおよびRb基は、互いに独立に、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ グアニジニウム基((Ra)2N-C(=NH2+)-NRb-) (式中、RaおよびRb基は、互いに独立に、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ ハロゲン原子、
を表し、
・ あるいはそうでなければ、2個の隣接したR4基は、それらが結合している炭素原子と共に、ヒドロキシル、C1〜C4アルキル、ヒドロキシカルボニル(HO(O)C-)、アルコキシカルボニル(RaO(O)C-) (式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、(アルキル)スルホニルアミノ(RaS(O)2NRb) (式中、Raは、C1〜C4アルキルを表し、Rbは、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、C1〜C4アルコキシ、少なくとも1個のヒドロキシルまたはメチルカルボニルアミノ基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているアミノ (2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一であるかまたは異なる他のヘテロ原子を任意選択で含む5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)から選択される同一または異なっていてもよい1個または複数の基で任意選択で置換されている縮合芳香族6員環を形成することができ、
> R2およびR3は、互いに独立に、
・ 水素原子、
・ 任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基、
・ 任意選択で置換されているアリール基、
・ 任意選択で置換されているヘテロアリール基、
・ 任意選択で置換されているアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ 任意選択で置換されているヘテロアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ シクロアルキル(C1〜C6)アルキル基、
・ ヘテロシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基
を表し、
・ あるいはそうでなければ、R3およびそれを担持している窒素原子、ならびにR4およびそれを担持している炭素原子一緒になって、5員、6員または7員の複素環を任意選択で形成することができ、アゾ基に結合しているこの複素環および芳香環は、次いで縮合され、複素環は、飽和または不飽和でよく、ヘテロ原子で任意選択で中断されており、
・ あるいはそうでなければ、式(I)のR2およびR3は、それらを担持している窒素原子と一緒になって、5員、6員または7員の複素環を形成し、
> R5は、炭素原子によって四級化窒素原子に直接結合しており、
・ 任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基、
・ 任意選択で置換されているアリール基、
・ 任意選択で置換されているヘテロアリール基、
・ 任意選択で置換されているアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ 任意選択で置換されているヘテロアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ シクロアルキル(C1〜C6)アルキル基、
・ ヘテロシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基
を表し、
> Yは、
i)水素原子、
ii)アルカリ金属、
iii)アルカリ土類金属、
iv)アンモニウム基:N+RαRβRγRδもしくはホスホニウム基:P+RαRβRγRδ (同一もしくは異なっていてもよいRα、Rβ、RγおよびRδは、水素原子もしくは(C1〜C4)アルキル基を表す)、または
v)以下の基から選択されるチオール官能基保護基を表し、
・ (C1-C4)アルキルカルボニル、
・ (C1-C4)アルキルチオカルボニル、
・ (C1-C4)アルコキシカルボニル、
・ (C1-C4)アルコキシチオカルボニル、
・ (C1-C4)アルキルチオチオカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノチオカルボニル、
・ アリールカルボニル、
・ アリールオキシカルボニル、
・ アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、
・ (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
・ カルボキシル、
・ SO3-M+(M+は、アルカリ金属を表し、あるいはそうでなければ、M+は存在せずSO3式(I)または(II)のアニオン性対イオンAnである)、
・ 任意選択で置換されているアリール、
・ 任意選択で置換されているヘテロアリール、
・ 任意選択でカチオン性の任意選択で置換されているヘテロシクロアルキル、
・ 下記の基:
【化2】
(式中、同一または異なっていてもよいR'c、R'd、R'e、R'f、R'gおよびR'hは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、あるいはそうでなければ、2個の基R'gおよびR'h、ならびに/あるいはR'eおよびR'fは、オキソまたはチオキソ基を形成し、あるいはそうでなければ、R'gおよびR'eは一緒になって、シクロアルキルを形成し、vは、1以上3以下の整数を表し、An'''-は、対イオンを表す)、
・ -C(NR'cR'd)=N+R'eR'fAn'''- (同一または異なっていてもよいR'c、R'd、R'eおよびR'fは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、An'''-は、上記定義の通りである)、
・ -C(NR'cR'd)=NR'e (R'c、R'dおよびR'eは、上記定義の通りである)、
・ 任意選択で置換されている(ジ)アリール(C1〜C4)アルキル、
・ 任意選択で置換されている(ジ)ヘテロアリール(C1〜C4)アルキル、
・ CR1R2R3 [同一または異なっていてもよいR1、R2およびR3は、ハロゲン原子あるいは
- (C1〜C4)アルキル、
- (C1〜C4)アルコキシ、
- 任意選択で置換されているアリール、
- 任意選択で置換されているヘテロアリール)
から選択される基を表す]、ならびに
・ 任意選択で置換されているアルコキシアルキル
> Anは、アニオン性対イオンを表し、
> mは、0以上6以下の整数を表し、
> nは、0以上4以下の整数を表し、
> xは、1または2を表し、
> yは、0または1を表し、
以下であると理解される:
- xが1である場合、yは1であり、xが2である場合、yは0であり、
- 式(I)および(II)の化合物の電気的中性は、同一であっても同一でなくてもよい1つまたは複数の化粧用として許容されるアニオン性対イオンAnによって保証されている]。
【請求項2】
xおよびyが1であり、Yが水素原子またはアルカリ金属を表す、請求項1に記載の式(I)または(II)の染料。
【請求項3】
xおよびyが1であり、Yが請求項1に規定されたチオール官能基保護基を表す、請求項1に記載の式(I)または(II)の染料。
【請求項4】
x=2およびy=0である、請求項1に記載の式(I)または(II)の染料。
【請求項5】
下記の式(Ia)〜(If)および(IIa)、(IIb):
【化3A】
【化3B】
【化3C】
[式中、式、R1、R2、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、請求項1から4に記載の通りである]
のいずれか1つに属する、請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料。
【請求項6】
下記の化学構造(1)から(50):
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【表1F】
【表1G】
【表1H】
【表1I】
[式中、同一または異なっていてもよいAnは、対イオンを表す]
の、請求項1から5のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料。
【請求項7】
適切な化粧用媒体中に、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料を含む、染料組成物。
【請求項8】
適切な化粧用媒体中に、
・ 少なくとも1種の請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料と、
・ 少なくとも1種の還元剤と
を含む、請求項7に記載の染料組成物。
【請求項9】
式(I)または(II)の染料が、組成物の全重量に対して0.001重量%〜50重量%の量で存在する、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
ケラチン材料の染色方法であって、少なくとも1種の請求項7から9のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料を含む適切な染料組成物が前記材料に塗布される方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料の塗布の前または後に、還元剤を塗布する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、酸化剤を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
第1の区画が、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料を含む染料組成物を含有し、第2の区画が、還元剤を含有する、多区画装置。
【請求項14】
ケラチン繊維を染色するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)または(II)の染料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を染色するためのチオール/ジスルフィドアゾキノリニウム化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトケラチン繊維を、直接染料を含有する染料組成物で染色することは公知の手法である。これらの化合物は、繊維に対して親和性を有する、着色されたまたは着色する分子である。例えば、ニトロベンゼンタイプの直接染料、アントラキノン染料、ニトロピリジン染料、またはアゾ、キサンテン、アクリジン、アジンもしくはトリアリールメタンタイプの染料を使用することは公知の手法である。
【0003】
これらの染料は通常、繊維上に同時に淡色化効果を得ることが望ましい場合、任意選択で酸化剤の存在下で繊維に塗布する。放置時間が経過すれば、繊維をすすぎ、任意選択で洗浄し、乾燥させる。
【0004】
直接染料がケラチン繊維に結合する相互作用の性質、ならびに繊維の表面および/または芯からの直接染料の脱離は、直接染料の弱い染色力、ならびに洗浄および発汗に対する直接染料の比較的乏しい耐性の原因であるため、直接染料の使用によってもたらされる着色は一時的または半永久的な着色である。
【0005】
直接着色の堅牢度を高めるために、ジスルフィド染料を使用することは公知の手法である。例えば、文献WO2006/136617は、ケラチン繊維上に栗色/茶色の色合いを有するいくつかのジスルフィド染料の混合物を記載している。しかし、いくつかのジスルフィド染料は、選択性、取り込み、安定性、または時間の経過と共に色の変化をもたらす悪天候、シャンプー作業、光もしくは汗などの外からの攻撃(attack)に対する耐性に関して特に不十分な性能水準を有する。色の変化は、シャンプーおよび/または光への曝露後に起こるときに、特に都合の悪い問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/136617
【特許文献2】WO03/029359
【特許文献3】US5708151
【特許文献4】WO04039771
【特許文献5】EP1386916
【特許文献6】US4579949
【特許文献7】FR2876576
【特許文献8】仏国特許FR2692572
【特許文献9】WO95/15144
【特許文献10】WO95/01772
【特許文献11】EP714954
【特許文献12】FR2822696
【特許文献13】FR2825702
【特許文献14】FR2825625
【特許文献15】FR2822698
【特許文献16】FR2822693
【特許文献17】FR2822694
【特許文献18】FR2829926
【特許文献19】FR2807650
【特許文献20】WO02/078660
【特許文献21】WO02/100834
【特許文献22】WO02/100369
【特許文献23】FR2844269
【特許文献24】FR2586913
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons ed.、NY、1981、193〜217頁
【非特許文献2】「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、第5章
【非特許文献3】Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、J.March、第4版、John Wiley & Sons、1992
【非特許文献4】T.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」
【非特許文献5】「Color Chemistry」、H Zollinger、第3版、Wiley VCH、166〜169頁
【非特許文献6】J.Org.Chem.1985、50(26)、5716〜5719頁
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.1970、92(24)、7224〜7225頁
【非特許文献8】Tetrahedron、2004、60(51)、11911〜11922頁
【非特許文献9】J.Org.Chem.1990、55(9)、2580〜2586頁
【非特許文献10】J.Chem.Soc、Chem.Comm.1981、15、741〜742頁
【非特許文献11】Tet.Lett.2005、46(36)、6097〜6099頁
【非特許文献12】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、2004、14(21)、5347〜5350頁
【非特許文献13】Chem.Berichte、1983、116(1)、323〜347頁
【非特許文献14】Tetrahedron、1985、41(15)、3063〜3069頁
【非特許文献15】J.Am.Chem.Soc.1987、109(25)、7648〜7653頁
【非特許文献16】J.Org.Chem.1995、60(8)、2638〜2639頁
【非特許文献17】Sulfur Lett.2000、24(3)、137〜145頁
【非特許文献18】Synth.Comm.2005、35(23)、3021〜3026頁
【非特許文献19】Synthesis、1986、5、382〜383頁
【非特許文献20】Liebigs Annalen der Chemie、1987、1、77〜79頁
【非特許文献21】Bull.Chem.Soc.Jap.1977、50(6)、1510〜1512頁
【非特許文献22】J.Org.Chem.1979、44(4)、638〜639頁
【非特許文献23】J.Hetero.Chem21(2)、501〜3頁、1984
【非特許文献24】「Thiols and organic Sulfides」、「Thiocyanates and Isothiocyanates, Organic」、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Wiley-VCH、Weinheim、2005
【非特許文献25】T.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」
【非特許文献26】「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons ed.、NY、1981
【非特許文献27】「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005
【非特許文献28】Colour Index International、第3版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、既存の直接染料の欠点を有さないジスルフィドまたはチオール染料を提供することである。特に、本発明の目的の1つは、外からの有害作用に対して耐性があり、時間の経過と共に色が変化しない自然の色合いを得ることを可能にする染料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によって達成される。本発明の対象は、適切な化粧用媒体中に、少なくとも1種の下記の式(I)または(II)
【0010】
【化1】
【0011】
のジスルフィドまたはチオールアゾキノリニウム染料、ならびにまた有機酸または鉱酸を有するその付加塩、ならびにその溶媒和物、水和物、互変異性体、ならびに光学および幾何異性体を含む染料組成物を、ケラチン材料に塗布することを含む、ケラチン材料、特に毛髪などのヒトケラチン材料の染色方法であり、
式(I)および(II)中、
Lは、1個もしくは複数の二価基またはこれらの組合せで任意選択で中断されている、任意選択で置換されているC1〜C20、特にC1〜C10の二価の炭化水素をベースとする鎖を表し、2個の二価基またはこれらの組合せは、C1〜C6の二価の炭化水素をベースとする鎖、特にアルキレンによって分離されていることが理解され、前記二価基は、
i)-N(R)-;-N+(R)(R0)-、An-;-O-、-S-、-C(O)-(Rは、C1〜C4アルキル、C2〜C6(ポリ)ヒドロキシアルキル、アルコキシ(C1〜C6)アルキル、アリール(フェニルなど)、アリール(C1〜C6)アルキル(ベンジルなど)、(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ(C1〜C6)アルキル、アミノ(C1〜C4)アルキル(そのアミンは、同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されている)、(C1〜C6)アルキルカルボニルおよび(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノから選択される基を表し、R0は、水素原子またはRを表す)、
ii)カチオン性複素環またはカチオン性ヘテロアリールHet+、An-(An-は、上記で定義した通りであり、Het+は、5〜10員を含む飽和もしくは不飽和のカチオン性複素環、または5〜10員を含むカチオン性ヘテロアリール(イミダゾリウム、ピペラジニウム、ベンゾイミダゾリウムまたはピラゾリウムなど)を表す)、
iii)5〜10員を含む非カチオン性複素環(ピペラジニルなど)、ならびに
iv)任意選択で置換されている(ヘテロ)アリール(任意選択で置換されている1,3,5-トリアジンなど)
から選択され、
Lは、ジアゾ、ヒドラジノ、アミノオキシ、ニトロ、ニトロソまたはペルオキシド基を含まず、
> R1およびR4は、互いに独立に、
・ C1〜C4アルキル基、
・ ヒドロキシル基、
・ C1〜C4アルコキシ基、
・ C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、
・ アルコキシカルボニル基(RaO-C(O)-)(式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、
・ アルキルカルボニルオキシ基(RaC(O)-O-)(式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、
・ 少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているアミノ基(2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一であるかまたは異なる他のヘテロ原子、例えば酸素を任意選択で担持している置換されているまたは置換されていない5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)、
・ アルキルカルボニルアミノ基(RaC(O)-NR'a-)(式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表し、R'aは、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ (ジ)(アルキル)アミノカルボニル基((Ra)2N-C(O))(式中、Ra基は、互いに独立に、同一または異なっていてもよく、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ ウレイド基((Ra)2N-CO-NRb-)(式中、RaおよびRb基は、互いに独立に、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ グアニジニウム基((Ra)2N-C(=NH2+)-NRb-)(式中、RaおよびRb基は、互いに独立に、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、
・ ハロゲン原子、好ましくは塩素、フッ素または臭素
を表し、
・ あるいはそうでなければ、2個の隣接したR4基は、それらが結合している炭素原子と共に、ヒドロキシル、C1〜C4アルキル、ヒドロキシカルボニル(HO(O)C-)、アルコキシカルボニル(RaO(O)C-)(式中、Raは、C1〜C4アルキル基を表す)、(アルキル)スルホニルアミノ(RaS(O)2NRb)(式中、Raは、C1〜C4アルキルを表し、Rbは、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)、C1〜C4アルコキシ、少なくとも1個のヒドロキシルまたはメチルカルボニルアミノ基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているアミノ(2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一であるかまたは異なる他のヘテロ原子、例えば酸素を任意選択で担持している5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)から選択される同一または異なっていてもよい1個または複数の基で任意選択で置換されている縮合芳香族6員環を形成することができ、
> R2およびR3は、互いに独立に、
・ 水素原子、
・ メチルなどの任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基、
・ フェニルなどの任意選択で置換されているアリール基、
・ ピリジルなどの任意選択で置換されているヘテロアリール基、
・ ベンジルなどの任意選択で置換されているアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ ピリジニルメチルなどの任意選択で置換されているヘテロアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ シクロヘキシルメチルなどのシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基、
・ ピペリジニルメチルなどのヘテロシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基
を表し、
・ あるいはそうでなければ、R3は、それを担持している窒素原子と、およびR4は、それを担持している炭素原子と一緒になって、5員、6員または7員の複素環を任意選択で形成することができ、アゾ基に結合しているこの複素環および芳香環は、次いで縮合され、複素環は、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジンまたはモルホリンなど、飽和または不飽和でよく、ヘテロ原子で任意選択で中断されており、
・ あるいはそうでなければ、2個の近接したR2基は、nが2である場合、それらを担持している炭素原子と一緒になって、ベンゾ基を形成し、
・ あるいはそうでなければ、式(I)のR2およびR3は、それらを担持している窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジンまたはモルホリンなどの5員、6員または7員の複素環を形成し、
> R5は、炭素原子によって四級化窒素原子に直接結合しており、
・ メチルなどの任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基、
・ フェニルなどの任意選択で置換されているアリール基、
・ ピリジルなどの任意選択で置換されているヘテロアリール基、
・ ベンジルなどの任意選択で置換されているアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ ピリジニルメチルなどの任意選択で置換されているヘテロアリール(C1〜C6)アルキル基、
・ シクロヘキシルメチルなどのシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基、
・ ピペリジニルメチルなどのヘテロシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基
を表し、
> Yは、i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:N+RαRβRγRδもしくはホスホニウム基:P+RαRβRγRδ(同一もしくは異なっていてもよいRα、Rβ、RγおよびRδは、水素原子もしくは(C1〜C4)アルキル基を表す)、またはv)チオール官能基保護基を表し、
> Anは、アニオン性対イオンを表し、
> mは、0以上6以下の整数を表し、
> nは、0以上4以下の整数を表し、
> xは、1または2を表し、
> yは、0または1を表し、
以下であると理解される、
- xが1である場合、yは1であり、xが2である場合、yは0であり、
- 式(I)および(II)の化合物の電気的中性は、同一であっても同一でなくてもよい1つまたは複数の化粧用として許容されるアニオン性対イオンAnによって保証されている。
【0012】
本発明の他の対象は、化粧用媒体中に、少なくとも1種の上記定義のような式(I)または(II)のジスルフィドまたはチオールアゾキノリニウム染料と、任意選択で還元剤とを含む、毛髪などのケラチン繊維を染色するための染料組成物である。
【0013】
本発明の対象はまた、1つの区画中に、上記定義のような本発明による組成物、第2の区画中に、還元剤、および任意選択で、第3の区画中に、酸化剤を含む、毛髪などのケラチン繊維を染色するための多区画装置である。
【0014】
本発明の他の対象は、上記定義のような式(I)および(II)のジスルフィドまたはチオールアゾキノリニウム化合物に関する。
【0015】
本発明による染色方法は、シャンプー作業、太陽光または発汗などの通常の有害作用、および毛髪トリートメントに関して持続性のある態様で、ケラチン繊維にダメージを与えることなくケラチン繊維の染料を可能にする。
【0016】
この方法はまた、強力、非選択的、均質および彩色的な態様でケラチン繊維の染料を可能にする。異なる色の他の染料との混合物を使用することによって、この方法はまた、時間の経過と共に何らの著しい色の変化が観察されることなしに、茶色および黒色などの自然の色合いでケラチン繊維を染料することを可能にする。
【0017】
さらに、本発明による新規な染料は、より良好な化学的安定性を有する。これらの染料は、特に塩基性化した水および有機溶媒を含有する従来の化粧用配合物中で、従来技術の染料よりもより可溶性および安定的である。例えば、C1〜C4低級アルカノール(エタノールおよびイソプロパノールなど)、ポリオールおよびポリオールエーテル(2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど)、ならびにまた芳香族アルコール(ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールなど)、ならびにこれらの混合物について言及することができる。
【0018】
本発明の目的のために、他に明記しない限り、
- 「アルキル基」は、直鎖状または分岐状のC1〜C16、好ましくはC1〜C6炭化水素をベースとする基であり、
- 「アルキル基」または基の「アルキル」部分は、それが、基
・ ヒドロキシル、
・ C1〜C4アルコキシ、
・ C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、
・ アミノ(少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されているアミノ)(前記アルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても異ならなくてもよい少なくとも1個の他のヘテロ原子を任意選択で含む5員または6員の複素環を形成することが可能である)
から選択される少なくとも1個の置換基を含むとき、「置換されている」と称され、
- 「アリール」もしくは「ヘテロアリール基」、基の「アリール」もしくは「ヘテロアリール」部分、または「アリーレン」もしくは「ヘテロアリーレン」部分は、それが、炭素原子によって担持されている
・ C1〜C16、好ましくはC1〜C8アルキル基(基ヒドロキシル、C1〜C2アルコキシ、C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、アシルアミノ、少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい2個のC1〜C4アルキル基で置換されているアミノから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されており、または2個の基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一でありまたは異なる他のヘテロ原子を任意選択で含む5員または7員、好ましくは5員または6員の複素環を形成することが可能である)、
・ 塩素、フッ素または臭素などのハロゲン原子、
・ ヒドロキシル基、
・ C1〜C2アルコキシ基、
・ C1〜C4アルキルチオ、
・ C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、
・ アミノ基(少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一もしくは異なっていてもよい1個もしくは2個のC1〜C4アルキル基で置換されているアミノ基、または2個の任意選択で置換されているC1〜C2アルキル基で置換されているアミノ基)、
・ アシルアミノ基(-NR-C(O)R')(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基であり、R'基は、C1〜C2アルキル基である)、カルバモイル基(R2N-C(O)-)(式中、同一または異なっていてもよいR基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表す)、アルキルスルホニルアミノ基(R'S(O)2-NR-)(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表し、R'基は、C1〜C4アルキル基またはフェニル基を表す)、アミノスルホニル基(R2N-S(O)2-)(式中、同一または異なっていてもよいR基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表す)
から選択される少なくとも1個の置換基を含む場合、「置換されている」と称され、
- アリール(C1〜C6)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル、シクロアルキル(C1〜C6)アルキルまたはヘテロシクロアルキル(C1〜C6)アルキル基が置換されていると称される場合、それは、置換されているアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分であり、
- 非芳香族基の環式または複素環式部分は、それが、炭素原子によって担持されている基
・ ヒドロキシル、
・ C1〜C4アルコキシ、C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、
・ C1〜C4アルキルチオ、
・ アルキルカルボニルアミノ(RC(O)-NR'-)(式中、R'基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基であり、R基は、C1〜C2アルキル基、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい2個のC1〜C4アルキル基で置換されているアミノ基であり、前記アルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と異なっても異ならなくてもよい少なくとも1個の他のヘテロ原子を任意選択で含む5員または6員の複素環を形成することが可能である)
から選択される少なくとも1個の置換基を含む場合、置換されていると称され、
- 環が最大数の置換基を担持していないとき、置換されていない位置(複数可)は、水素原子を担持しており、
- 「アリール」基は、6〜22個の炭素原子を含有する縮合または非縮合の単環式または多環式の炭素をベースとする基を表し、その少なくとも1個の環は芳香族であり、好ましくは、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニルまたはテトラヒドロナフチルであり、
- 「ヘテロアリール基」は、5〜22員、ならびに窒素、酸素、硫黄およびセレン原子から選択される1〜6個のヘテロ原子を含む任意選択でカチオン性の縮合または非縮合の単環式または多環式基を表し、その少なくとも1個の環は芳香族であり、好ましくは、ヘテロアリール基は、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ-ビストリアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾピリダジニル、ベンゾキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリジニル、テトラゾリル、ジヒドロ-チアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、ナフトイミダゾリル、ナフトオキサゾリル、ナフトピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾロピリジル、フェナジニル、フェノオキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリリル、ピラゾイルトリアジル、ピリジル、ピリジノイミダゾリル、ピロリル、キノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾイルイミダゾリル、チオピリリル、トリアゾリル、キサンチリルおよびそのアンモニウム塩から選択され、
- 「環式」または「シクロアルキル基」は、1つまたは複数の不飽和を含んでもよい、5〜22個の炭素原子を含有する縮合または非縮合の単環式または多環式の非芳香族シクロアルキル基であり、特に、環式基は、シクロヘキシルであり、
- 「複素環基または複素環」は、5〜22員を含有し、窒素、酸素および硫黄原子から選択される1〜6個のヘテロ原子を含む、縮合または非縮合の単環式または多環式の非芳香族基であり、
- 「アルキレン基」は、任意選択で置換されているアルキル基の置換基と同じ置換基またはカルボキシル基で任意選択で置換されている、C1〜C20直鎖状または分岐状の二価の炭化水素をベースとする鎖であり、特に、アルキレン鎖は、メチレン、エチレンまたはプロピレンなど置換されておらず、
- 「アルケニレン基」は、共役してもよく共役していなくてもよい1〜3つの不飽和を含み、アルキレン基のそれらと同じ基で任意選択で置換されている、C2〜C20直鎖状または分岐状の二価の炭化水素をベースとする鎖であり、
- 「アリーレン」または「ヘテロアリーレン基」は、上記定義のようなアリールまたはヘテロアリール基であり、それは二価、すなわちアリールまたはヘテロアリール基の2つの部分が分子中でリンカーアームを形成し、
- 「有機酸または鉱酸塩」は、より詳細には、i)塩酸HCl、ii)臭化水素酸HBr、iii)硫酸H2SO4、iv)メチルスルホン酸およびエチルスルホン酸などのアルキルスルホン酸Alk-S(O)2OH、v)ベンゼンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸Ar-S(O)2OH、vi)クエン酸、vii)コハク酸、viii)酒石酸、ix)乳酸、x)メトキシスルフィン酸およびエトキシスルフィン酸などのアルコキシスルフィン酸Alk-O-S(O)OH、xi)トルエンオキシスルフィン酸およびフェノキシスルフィン酸などのアリールオキシスルフィン酸、xii)リン酸H3PO4、xiii)酢酸CH3C(O)OH、xiv)トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H、ならびにxv)テトラフルオロホウ酸HBF4に由来する塩から選択され、
- 「アニオン性対イオン」は、染料のカチオン電荷と関連するアニオンまたはアニオン基であり、より詳細には、アニオン性対イオンは、i)塩化物または臭化物などのハロゲン化物、ii)硝酸塩、iii)スルホン酸塩、その中でも、C1〜C6アルキルスルホン酸塩:Alk-S(O)2O-(メチルスルホン酸塩またはメシル酸塩およびエチルスルホン酸塩など)、iv)アリールスルホン酸塩:Ar-S(O)2O-(ベンゼンスルホン酸塩およびトルエンスルホン酸塩またはトシル酸塩など)、v)クエン酸塩、vi)コハク酸塩、vii)酒石酸塩、viii)乳酸塩、ix)アルキル硫酸塩:Alk-O-S(O)O-(メチル硫酸塩およびエチル硫酸塩など)、x)アリール硫酸塩:Ar-O-S(O)O-(ベンゼン硫酸塩およびトルエン硫酸塩など)、xi)アルコキシ硫酸塩:Alk-O-S(O)2O-(メトキシ硫酸塩およびエトキシ硫酸塩など)、xii)アリールオキシ硫酸塩:Ar-O-S(O)2O-、xiii)リン酸塩、xiv)酢酸塩、xv)トリフレート、xvi)ホウ酸塩(テトラフルオロホウ酸塩など)、ならびにxvii)シュウ酸塩から選択され、
- 「溶媒和物」は、水和物、およびまた直鎖状または分岐状C2〜C4アルコール(エタノール、イソプロパノールまたはn-プロパノールなど)との関連を表す。
【0019】
式(I)および(II)の本発明の化合物は、xおよびyが1である場合、Yの性質および媒体のpHによって、共有結合の-S-Y形態またはイオンの-S-Y+形態であってよいSY官能基を含有する。
【0020】
上記で示したように、本発明の第1の対象は、上記の式(I)および(II)に相当する化合物を含む。
【0021】
特定の実施形態は、式(I)および(II)(1であるxおよびyを有し、Yは、水素原子またはアルカリ金属を表す)のチオール染料に関する。好都合には、Yは、水素原子を表す。
【0022】
本発明の他の特定の実施形態では、上記の式(I)および(II)において、Yは、例えば、書籍「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons ed.、NY、1981、193〜217頁;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、第5章において記載されているものなどの当業者には公知の保護基である。
【0023】
特に、Yがチオール官能基保護基を表す場合、Yは、下記の基から選択される。
・ (C1-C4)アルキルカルボニル、
・ (C1-C4)アルキルチオカルボニル、
・ (C1-C4)アルコキシカルボニル、
・ (C1-C4)アルコキシチオカルボニル、
・ (C1-C4)アルキルチオチオカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノチオカルボニル、
・ アリールカルボニル、例えばフェニルカルボニル、
・ アリールオキシカルボニル、
・ アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル、
・ (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、例えばジメチルアミノカルボニル、
・ (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル、
・ カルボキシル、
・ SO3-;M+(M+は、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属を表し、あるいはそうでなければ、式(I)または(II)のAnまたはAn'-であり、M+は存在しない)、
・ 任意選択で置換されているアリール(フェニル、ジベンゾスベリルまたは1,3,5-シクロヘプタトリエニルなど)、
・ 特に、下記の1〜4個のヘテロ原子を含むカチオン性または非カチオン性ヘテロアリール基を含めた任意選択で置換されているヘテロアリール
i)フラニルまたはフリル、ピロリルまたはピリル、チオフェニルまたはチエニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリウム、イソオキサゾリル、イソオキサゾリウム、チアゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリル、イソチアゾリウム、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリウム、1,2,3-トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-オキサゾリル、1,2,4-オキサゾリウム、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリウム、ピリリウム、チオピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、テトラジニル、テトラジニウム、アゼピン、アゼピニウム、オキサゼピニル、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、イミダゾリルまたはイミダゾリウムなどの5員、6員または7員の単環式基、
ii)インドリル、インドリニウム、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリウム、ジヒドロベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリウム、ピリドイミダゾリル、ピリド-イミダゾリウムまたはチエノシクロヘプタジエニルなどの8〜11員の二環式基(これらの単環式または二環式基は、(C1〜C4)アルキル、例えば、メチル、またはポリハロ(C1〜C4)アルキル、例えば、トリフルオロ-メチルなどの1個または複数の基で任意選択で置換されている)、
・ 任意選択でカチオン性の任意選択で置換されているヘテロシクロアルキル(ヘテロシクロアルキル基は、特に、ジ/テトラヒドロフラニル、ジ/テトラヒドロチオフェニル、ジ/テトラヒドロピロリル、ジ/テトラヒドロピラニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロチオピラニル、ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラメチルピペリジニル、モルホリニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロアゼピニル、ジ/テトラヒドロピリミジニルなどの、酸素、硫黄および窒素から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む飽和または部分飽和の5員、6員または7員の単環式基を表し、これらの基は、(C1〜C4)アルキル、オキソまたはチオキソなどの1個または複数の基で任意選択で置換されており、あるいは複素環は、下記の基
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、同一または異なっていてもよいR'c、R'd、R'e、R'f、R'gおよびR'hは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、あるいはそうでなければ、2個の基R'gおよびR'h、ならびに/あるいはR'eおよびR'fは、オキソまたはチオキソ基を形成し、あるいはそうでなければ、R'gおよびR'eは一緒になって、シクロアルキルを形成し、vは、1以上3以下の整数を表し、好ましくは、R'c〜R'hは、水素原子を表し、An'''-は、対イオンを表す)を表す)、
・ -C(NR'cR'd)=N+R'eR'f;An'''-(同一または異なっていてもよいR'c、R'd、R'eおよびR'fは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、好ましくは、R'c〜R'fは、水素原子を表し、An'''-は、対イオンを表す)、
・ -C(NR'cR'd)=NR'e(R'c、R'dおよびR'eは、上記定義の通りである)、
・ 任意選択で置換されている(ジ)アリール(C1〜C4)アルキル(9-アントラセニルメチル、フェニルメチルまたはジフェニルメチルなど、特に(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシ、例えば、メトキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、および(ジ)(C1〜C4)(アルキル)アミノ、例えば、ジメチルアミノから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されている)、
・ 任意選択で置換されている(ジ)ヘテロアリール(C1〜C4)アルキル(ヘテロアリール基は、特に、基ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジル、ピリジルN-オキシド(4-ピリジルN-オキシドもしくは2-ピリジルN-オキシドなど)、ピリリウム、ピリジニウムまたはトリアジニルなど(アルキル、特にメチルなどの1個または複数の基で任意選択で置換されている)の、5員または6員、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、カチオン性または非カチオン性の単環式であり、好都合には、(ジ)ヘテロアリール(C1〜C4)アルキルは、(ジ)ヘテロアリールメチルまたは(ジ)ヘテロアリールエチルである)、
・ CR1R2R3(同一または異なっていてもよいR1、R2およびR3は、ハロゲン原子あるいは
- (C1〜C4)アルキル、
- (C1〜C4)アルコキシ、
- 任意選択で置換されているアリール(フェニルなど、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシまたはヒドロキシルなどの1個または複数の基で任意選択で置換されている)、
- 任意選択で置換されているヘテロアリール(チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラニルまたはピリジルなど、(C1〜C4)アルキル基で任意選択で置換されている)、
- P(Z1)R'1R'2R'3(同一または異なっていてもよいR'1およびR'2は、ヒドロキシル、(C1〜C4)アルコキシまたはアルキル基を表し、R'3は、ヒドロキシルまたは(C1〜C4)アルコキシ基を表し、Z1は、酸素または硫黄原子を表す)
から選択される基を表す)、
・ 立体障害のある環式基、ならびに
・ 任意選択で置換されているアルコキシアルキル(メトキシメチル(MOM)、エトキシエチル(EOM)およびイソブトキシメチルなど)。
【0026】
本発明の好ましい変形形態によれば、Yは、
- 水素原子、
- C1〜C4アルキルカルボニル基、好ましくはアセチル、
- 1個または複数のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているイミダゾリウム基、
- -C(NR'cR'd)=NR'e基(式中、R'c、R'dおよびR'eは、上記定義の通りであり、好ましくは基-C(=NH)NH2である)、
- C1〜C4アルコキシカルボニル基、好ましくは基-CO2Et、
- アルキルピリジニウム基、好ましくはメチルピリジニウム基、特に2-メチルピリジニウム
を表す。
【0027】
R1およびR4基は、互いに独立に、より詳細には、
- C1〜C4アルキル基、
- 塩素、フッ素または臭素などのハロゲン原子、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C2アルコキシ基、
- C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基、
- アミノ基、
- 少なくとも1個のヒドロキシルまたはC1〜C4ジアルキルアミノ基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C4アルキル基で置換されているアミノ基(2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素、酸素または硫黄原子から選択される他のヘテロ原子を任意選択で担持している任意選択で置換されている飽和または不飽和の5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)、
- アルキルカルボニルアミノ基(RC(O)-NR'-)(式中、R基はC1〜C4アルキル基を表し、R'基は水素またはC1〜C4アルキル基を表す)、
- カルバモイル基(R2N-C(O)-)(式中、同一または異なっていてもよいR基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表す)、
- アルキルスルホニルアミノ基(R'S(O)2-NR-)(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表し、R'基は、C1〜C4アルキル基を表す)、
- アミノスルホニル基(R2N-S(O)2-)(式中、同一または異なっていてもよいR基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表す)、
- ウレイド基(R2N-C(O)-NR'-)(式中、同一または異なっていてもよいRおよびR'基は、互いに独立に、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表す)
を表す。
【0028】
より詳細には、R1およびR4基は、互いに独立に、
- C1〜C2アルキル基、
- アミノ基、
- 少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C3アルキル基で置換されているアミノ基(2個のアルキル基は、それらが結合している窒素原子と共に、窒素と同一であるかまたは異なる他のヘテロ原子を任意選択で担持している任意選択で置換されている飽和または不飽和の5員または6員の複素環を任意選択で形成することが可能である)、
- アルキルカルボニルアミノ基(RC(O)-NR')(式中、R基は、C1〜C2アルキル基を表し、R'基は、水素またはC1〜C4アルキル基を表す)、
- カルバモイル基(R2N-C(O)-)(式中、同一または異なっていてもよいR基は、水素原子、または少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持しているC1〜C4アルキル基を表す)、
- スルホニルアミノ基、
- ヒドロキシル基、
- C1〜C2アルコキシ基、
- 塩素原子
を表す。
【0029】
さらにより詳細には、R1およびR4基は、互いに独立に、
- C1〜C2アルキル基、
- C1〜C2アルコキシ基、
- ヒドロキシル基、
- 少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C3アルキル基で置換されているアミノ基、
- アルキルカルボニルアミノ基(RC(O)-NR')(式中、R基は、C1〜C2アルキル基を表し、R'基は、水素を表す)
を表す。
【0030】
本発明の好ましい変形形態によれば、R1およびR4基は、互いに独立に、
- メチルまたはエチル基、
- アミノ、ジメチルアミノまたはビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基、
- ヒドロキシル基、
- アセチルアミノ基
を表す。
【0031】
R1基の位置に関しては、mが1であり、アゾ基が4位にある場合、R1基は好ましくは2位にある。mが2以上である場合、アゾ基は好ましくは4位にあり、R1基は2位、5位、6位および7位にある。mが1であり、アゾ基が2位にある場合、R1基は好ましくは4位にある。mが2以上である場合、アゾ基は2位にあり、R1基は好ましくは3位、4位、5位、6位および8位にある。
【0032】
R4の位置に関しては、mが1である場合、R4基がR3基と環を形成する場合(この場合は、R4基はアゾ基に対してメタ位にある)以外は、R4基は好ましくはアゾ基に対してオルト位にある。
【0033】
nが2である場合、R4基は両方とも好ましくはアゾ基に対してオルト位にあり、または2個の基の1つはアゾ基に対してオルト位にあり、他方はアゾ基に対してメタ位にある。メタ位にあるこのR4基は、優先的に他のR4基に対してオルト位またはパラ位にあってもよい。
【0034】
特に、mは0であり、またはそうでなければ、mは1であり、R1は、(C1〜C4)アルキル基を表す。
【0035】
特に、nは0であり、またはそうでなければ、mは2であり、R1は、メチルまたはメトキシ基を表す。
【0036】
本発明の第2の好ましい変形形態によれば、隣接する炭素原子によって担持されている2個のR4基は、各々が結合している炭素原子と一緒になって、ベンゾなどの任意選択の芳香族縮合環を形成することができる(好ましくは、メチル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ピロリジン基、またはスルホニルアミノ基で任意選択で置換されている)。
【0037】
R2およびR3基は、互いに独立に、特に、
- 水素原子、
- 任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基
を表し、
- 式(I)のR2およびR3は、それらを担持している窒素原子と一緒になって、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジンまたはモルホリンなどの5員、6員または7員の複素環を形成する。
【0038】
より詳細には、R2およびR3基は、互いに独立に、
- 水素原子、
- 基
i)ヒドロキシル、
ii)少なくとも1個の基
・ ヒドロキシル、
・ C1〜C2アルコキシ基、
・ アミノ基、
・ 少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C3アルキル基で置換されているアミノ基
を任意選択で担持している同一または異なっていてもよい2個のC1〜C2アルキル基で置換されているアミノ
から選択される1個または複数の基で任意選択で置換されているC1〜C4アルキル基
を表す。
【0039】
本発明の好ましい変形形態によれば、R2およびR3基は、互いに独立に、
- 水素原子、またはメチル、エチル、2-ヒドロキシエチルもしくは2-ヒドロキシプロピル基を表す。
【0040】
本発明の第2の好ましい変形形態によれば、式(I)の化合物について、R2およびR3基は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員を含む飽和環(ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンまたはモルホリン環など)を形成することができる。
【0041】
好ましくは、R2およびR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジン環を形成する。
【0042】
R5基に関しては、それは、特にC1〜C6アルキル基、C2〜C6モノヒドロキシアルキル基、C2〜C6ポリヒドロキシアルキル基、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル基、任意選択で置換されているアリールアルキル基(ベンジルなど)、C2〜C6アミドアルキル基、C2〜C6アミノアルキル基(アミンは、同一または異なっていてもよい2個の任意選択で置換されているC1〜C4アルキル基で置換されている)を表す。さらに、R1基は、窒素原子に直接結合している原子は炭素原子であるような基である。
【0043】
好ましくは、R5は、C1〜C4アルキル基、C2〜C4モノヒドロキシアルキル基、C2〜C4ポリヒドロキシアルキル基、(C1〜C4)アルコキシ(C2〜C4)アルキル基、ベンジル基、C1〜C4アミノアルキル基、またはC1〜C4アミノアルキル基(アミンは、2個のC1〜C2の同一のアルキル基で置換されている)を表す。
【0044】
好ましくは、R5は、メチルもしくはエチル基または2-ヒドロキシエチル基を表す。
【0045】
本発明の特定の実施形態によれば、リンカーアームLは、発色団をジスルフィドまたはチオールと連結する鎖である。
【0046】
本発明の他の特定の態様は、非カチオン性リンカーアームLを有する式(I)または(I')の染料に関する。この変形形態によれば、非カチオン性二価リンカーアームLは、
- 任意選択で置換されており、任意選択で縮合している3〜7員を含む芳香族または非芳香族、飽和または不飽和の(複素)環で任意選択で中断されている、任意選択で置換されているC1〜C20、好ましくはC1〜C10アルキル基(前記アルキル基は、1個もしくは複数のヘテロ原子、または少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素を含む基(-C(O)-など)、またはこれらの組合せで任意選択で中断されている)
を表す。
【0047】
Lは、より詳細には、
- アルキレン基-CnH2n-(式中、nは、整数1〜20、好ましくは1〜10、よりさらに好ましくは1〜6である)、
- -CpH2P-C(O)-NR-CSH2S-基(式中、同一または異なっていてもよいpおよびsは、1以上6以下の整数を表し、Rは、水素原子またはC1〜C4アルキル基を表し、好ましくはp=1〜4、s=1〜4およびR=Hである)、
- -(ヘテロ)アリーレン-J-(C1〜C6)アルキレン-基(Jは、-O-、-S-、-N(R)-、-C(O)-N(R)-および-N(R)-C(O)-から選択される二価の基を表し、Rは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基を表し、好ましくはアルキレンは、C1〜C4である)
を表す。
【0048】
(ヘテロ)アリーレン基は、任意選択で置換されている。アルキレン部分は、酸素および窒素、好ましくは窒素原子から選択される1個または複数のヘテロ原子で任意選択で中断されている。
【0049】
(ヘテロ)アリーレン基は、例えば、フェニレンまたはナフチレン、フェナントリレン、トリアジニレン、ピリミジニレン、ピリジニレン、ピリダジニレンまたはキノキサリニレンである。
【0050】
この変形形態によれば、Lは、-トリアジニレン(C1〜C10)アルキレン基(トリアジニレン基は任意選択で置換されている)を表す。よりさらに好ましくは、Lは、基
【0051】
【化3】
【0052】
を表し、
式中、
Xaは、ハロゲン原子、またはヒドロキシル、アミノおよび(ジ)(C1〜C4)アルキルアミノ基から選択される基を表し、そのアルキル基(複数可)は、1個または複数のヒドロキシル基で任意選択で置換されており、
Xbは、水素原子、または1個もしくは複数のヒドロキシル基で任意選択で置換されている(C1〜C4)アルキル基を表し、
Rは、水素原子または(C1〜C4)アルキル基、特に水素原子を表し、
qは、1または2と等しい。
【0053】
本発明の他の特定の態様は、カチオン性リンカーアームLを有する式(I)または(I')の染料に関する。この変形形態によれば、カチオン性二価リンカーアームLは、
・ 少なくとも1個のカチオン電荷を担持しており、3〜7員を含み同一もしくは異なっていてもよい1つもしくは複数の芳香族もしくは非芳香族、飽和もしくは不飽和の(複素)環で任意選択で置換されており、かつ/あるいは任意選択で中断されており、かつ/あるいは1個もしくは複数のヘテロ原子、または少なくとも1個のヘテロ原子を含む基、またはこれらの組合せ、例えば、酸素、窒素、-C(O)-基または-S(O)2-基またはこれらの組合せで任意選択で中断されているC2〜C20アルキル基を表す。リンカーアームLは、アゾ、ニトロ、ニトロソまたはペルオキソ結合を含まない。リンカーアームLは少なくとも1個のカチオン電荷を担持していることが理解される。この変形形態によれば、カチオン性リンカーアームLは好都合には、
1- 下記の式(a)および(b)に相当する少なくとも1個の基によって中断されており、
【0054】
【表1】
【0055】
式中、
・ R11は、互いに独立に、
○ 直鎖状または分岐状C1〜C8アルキル基、
○ C2〜C6(ポリ)ヒドロキシアルキル基、
○ (C1〜C6)アルコキシ(C2〜C6)アルキル基、
○ フェニルなどの任意選択で置換されているアリール基、
○ ベンジルなどの任意選択で置換されているアリールアルキル基、
○ C2〜C6アミノカルボニルアルキル基、
○ C2〜C6アミノアルキル基(アミンは、同一または異なっていてもよい1個または2個のC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されている)
を表し、
・ 2個のR11基は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和または不飽和の任意選択で置換されている5員、6員または7員環を形成してもよく、
・ 同一または異なっていてもよいR12は、
○ 臭素、塩素またはフッ素から選択されるハロゲン原子、
○ C1〜C6アルキル基、
○ C2〜C6(ポリ)ヒドロキシアルキル基、
○ C1〜C6アルコキシ基、
○ C1〜C4(ジ)アルキルアミノ基、
○ ヒドロキシカルボニル基、
○ C1〜C6アルキルカルボニル基、
○ 任意選択で置換されているベンジル基、
○ メチル、ヒドロキシル、アミノおよびメトキシ基から選択される1個または複数の基で任意選択で置換されているフェニル基
を表し、
・ An-は、アニオン性対イオンまたはアニオン性対イオンの混合物を表し、
・ zは、整数1〜3であり(z<3である場合、置換されていない炭素原子は、水素原子を担持している)、
2- 酸素、窒素および-C(O)-基から選択される、1個または複数のヘテロ原子、または少なくとも1個のヘテロ原子もしくはこれらの組合せを含む基で任意選択で中断されており、
3- かつ、基ヒドロキシル、C1〜C2アルコキシ、C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、少なくとも1個のヒドロキシル基を任意選択で担持している1個または複数の直鎖状または分岐状C1〜C2アルキル基で置換されているアミノから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されている、C2〜C20アルキル基を表す。
【0056】
式(a)の特定の実施形態によれば、R11は、別々に、C1〜C6アルキル基、C2〜C4(ポリ)ヒドロキシアルキル基、(C1〜C6)アルコキシ(C2〜C4)アルキル基およびジメチルアミノ(C2〜C6)アルキル基から好ましくは選択される。さらにより詳細には、R11基は、別々に、メチル、エチル、または2-ヒドロキシエチル基を表す。
【0057】
式(b)の特定の実施形態によれば、R12は、塩素およびフッ素から選択されるハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C1〜C4モノヒドロキシアルキル基、C1〜C4アルコキシ基、ヒドロキシカルボニル基、(C1〜C6)アルキルチオ基、または(C1〜C4)アルキル基で二置換されているアミノ基を表す。
【0058】
式(b)のさらにより特定の実施形態では、R12は、塩素原子、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、メトキシ、ヒドロキシカルボニルまたはジメチルアミノを表す。
【0059】
式(b)の別のさらにより特定の実施形態では、zは、0と等しい。
【0060】
リンカーアームLがカチオン性である場合、Lは、好都合には式(a)または(b)の少なくとも1個の基(式中、R11および/またはR12基は、互いに独立に、直鎖状または分岐状C1〜C4アルキル基を表し、An-は、アニオン性対イオンまたは混合物である)で中断されているC2〜C10アルキル基を表す。よりさらに好ましくは、Lは、式(a)の基(式中、2個のR11基は同一であり、メチルなどのC1〜C4アルキル基を表す)で中断されているC2〜C10アルキレン基である。
【0061】
リンカーアームLとして、WO03/029359において記載されているトリアジン、US5708151において言及されているアルキレン、およびUS5708151において言及されている-アルキレンアリーレンアルキレン-についてまた言及することができる。
【0062】
特定の実施形態は、式(I)または(II)(式中、x=2およびy=0である)のジスルフィド染料に関する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、より詳細には、下記の式に相当し、
【0064】
【化4A】
【0065】
【化4B】
【0066】
【化4C】
【0067】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記で定義されている。
【0068】
式(I)または(II)、または(Ia)〜(If)、(IIa)および(IIb)の染料の例示として、下記の染料について言及することができ、
【0069】
【表2A】
【0070】
【表2B】
【0071】
【表2C】
【0072】
【表2D】
【0073】
【表2E】
【0074】
【表2F】
【0075】
【表2G】
【0076】
【表2H】
【0077】
【表2I】
【0078】
式中、Anは、同一または異なっていてもよいが、対イオンを表す。
【0079】
これらの化合物は、書籍Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、J.March、第4版、John Wiley & Sons、1992、T.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」または「Color Chemistry」、H Zollinger、第3版、Wiley VCHにおいて記載されている同様の調製方法を使用して得ることができる。
【0080】
第1の実施形態によれば、本発明において使用される式(I)の化合物の合成方法は、下記のステップを実施するステップを含んでもよく、
【0081】
【化5】
【0082】
式中、R1、R2、R3、R4、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0083】
この方法によれば、アミノキノリン(a)のジアゾ化の第1のステップは、当業者には公知の方法で行われる。それらは、Color Chemistry、H Zollinger、第3版、Wiley VCH、166〜169頁において記載されている参照から得ることができる。
【0084】
したがって、前記アミンは、リン酸および亜硝酸tert-ブチルの存在下に置かれる。この反応は通常、0〜12のpHで-20℃〜30℃、好ましくは-10℃〜20℃の温度で行われる。
【0085】
通常通り、反応は、適切な溶媒(その中でも、水、アルコール、特に、4個までの炭素原子を含有する脂肪族アルコール、有機酸、例えば、10個までの炭素原子を含有するカルボン酸もしくはスルホン酸、および/または塩酸もしくは硫酸タイプの鉱酸について言及することができる)の存在下で行われる。
【0086】
反応が起こると、得られた生成物のアニリンタイプの化合物(b)とのカップリングが行われる。
【0087】
この反応は通常、溶媒(先のステップの溶媒でもよい)の存在下で行われる。
【0088】
温度は通常通り、好ましくは0〜8のpHで-15℃〜30℃、好ましくは-10℃〜20℃である。
【0089】
生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0090】
次いで最終ステップにおいて、このように得られた生成物を、当業者には公知の方法で二量体化する。したがって、前記このように得られた生成物は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トルエン、1,3-ジメチル-2-オキソヘキサヒドロピリミジン(DMPU)またはN-メチルピロリドンなどの非プロトン性の無極性または極性溶媒の存在下で、ジスルフィド単位(c)を有する二重アルキル化剤の存在下に置かれる。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜140℃である。
【0091】
ジスルフィド単位(c)を有する二重アルキル化剤は、文献において記載されている方法によって調製することができ、当業者には公知である。
- ジスルフィドジオールの合成:例えば、J.Org.Chem.1985、50(26)、5716〜5719頁;J.Am.Chem.Soc.1970、92(24)、7224〜7225頁;Tetrahedron、2004、60(51)、11911〜11922頁;J.Org.Chem.1990、55(9)、2580〜2586頁;J.Chem.Soc、Chem.Comm.1981、15、741〜742頁;Tet.Lett.2005、46(36)、6097〜6099頁を参照されたい。
- ジスルフィド単位(c)を有する二重アルキル化剤の合成:例示として、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、2004、14(21)、5347〜5350頁;WO04039771;Chem.Berichte、1983、116(1)、323〜347頁;Tetrahedron、1985、41(15)、3063〜3069頁;J.Am.Chem.Soc.1987、109(25)、7648〜7653頁;J.Org.Chem.1995、60(8)、2638〜2639頁;Sulfur Lett.2000、24(3)、137〜145頁を参照されたい。
【0092】
第2の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0093】
【化6】
【0094】
式中、R1、R2、R3、R4、L、An、mおよびnは上記定義の通りである。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0095】
この方法によれば、キノリン化合物(d)のアルキル化の第1のステップは、当業者には公知の方法で行われる。このようなステップを行うための条件は、先に要約してある。
【0096】
反応が起こると、アリールヒドラジンタイプの化合物(f)による得られた生成物の求核置換が行われる。この反応は通常、溶媒(先のステップの溶媒でもよい)の存在下で行われる。
【0097】
温度は通常通り、好ましくは4〜9のpHで-15℃〜60℃、好ましくは0℃〜40℃である。
【0098】
生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0099】
反応が起こると、キノリニウムヒドラジン誘導体は、酸化剤の添加によって、または空気の単純な添加によって酸化される。この反応は通常、溶媒(先のステップの溶媒でもよい)の存在下で行われる。温度は通常通り、好ましくは4〜9のpHで-15℃〜60℃、好ましくは0℃〜40℃である。生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0100】
第3の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0101】
【化7】
【0102】
式中、R1、R2、R3、R4、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0103】
この方法によれば、非カチオン性アゾキノリン化合物の四級化の第1のステップは、極性または無極性、プロトン性または非プロトン性溶媒(ジクロロメタン、トルエン、酢酸エチルまたは水など)の存在下で、自発的またはアルカリ性pHにて、通常の方法で、保護されたチオール化合物(g)によって行われる。この四級化ステップは、当業者には公知である。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。
【0104】
反応が起こると、チオール基の脱保護、その後のチオールの酸化が行われる。このようなステップを行うための条件は、下記で要約してある。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。
【0105】
この方法によって、第1のステップの間に、保護されたチオール単位(x=y=1である)を含む本発明による染料を、チオール脱保護ステップの間に、チオール単位(x=y=1であり、Yは、水素原子を表す)またはチオラート単位(Yは、金属、アンモニウムまたはホスホニウムを表す)を含む染料を、最後にジスルフィド染料(x=2およびy=0である)を得ることが可能となる。
【0106】
第4の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0107】
【化8】
【0108】
式中、R1、R2、R3、R4、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0109】
この方法によれば、非カチオン性アゾキノリニウム化合物の四級化の第1のステップは、プロトン性または非プロトン性、極性または無極性溶媒(ジクロロメタン、トルエン、酢酸エチルまたは水など)の存在下で、自発的またはアルカリ性pHにて、化合物Lg-CH2-L-CH2-Lg(h)によって通常の方法で行われる。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0110】
この四級化ステップは当業者には公知である。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。四級化に続いて、YSH反応剤による求核置換が起こる。
【0111】
反応が起こると、得られた生成物の求核置換は、Y-SHタイプ(Yは上記定義の通りである)の化合物によって行われる。この反応は通常、プロトン性または非プロトン性、極性または無極性溶媒(ジクロロメタン、トルエン、酢酸エチル、水またはアルコールなど)の存在下で行われる。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0112】
温度は通常通り、好ましくは7〜9のpHで-15℃〜60℃、好ましくは0℃〜50℃である。
【0113】
生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0114】
反応が起こると、チオール基の脱保護、次いでチオールの酸化が行われる。このようなステップを行うための条件は、下記で要約してある。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。
【0115】
この方法によってまた、第1のステップの間に、保護されたチオール単位(x=y=1である)を含む本発明による染料を、チオール脱保護ステップの間に、チオール単位(x=y=1であり、Yは、水素原子を表す)またはチオラート単位(Yは、金属、アンモニウムまたはホスホニウムを表す)を含む染料を、最後にジスルフィド染料(x=2およびy=0である)を得ることが可能となる。
【0116】
他の実施形態によれば、本発明によるジスルフィド/チオール染料は、アゾ染料(フェニルのオルト位またはパラ位に、核脱離基(例えばハロゲンまたはアルコキシ)を担持しているキノリニウム単位を含む)のフェニルなどの芳香核上でのアミンHNR2R3(i)の求核置換によって得ることができ、
【0117】
【化9】
【0118】
式中、R1、R2、R3、R4、L、Y、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0119】
この反応は、極性溶媒、好ましくはアルコールなどのプロトン性極性溶媒中で当業者には公知の方法で行われる。核脱離基を担持している前駆体は、上記の方法の第1のステップによって容易に得ることができる。
【0120】
この方法が、アミノキノリンのジアゾ化、それに続くカップリングの手段を取る場合、選択される発色剤は、フェノールでよく、これは当業者には公知の条件によって続いてアルキル化することができ、
【0121】
【化10】
【0122】
式中、R1、R4、L、Y、An、mおよびnは、上記定義の通りである。Lgは、クロリド、ブロミド、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す。
【0123】
第1の実施形態によれば、本発明において使用される式(II)の化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0124】
【化11】
【0125】
式中、R1、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0126】
この方法によれば、アミノキノリンのジアゾ化の第1のステップは、当業者には公知の方法で行われる。このようなステップを行うための条件は、上記で要約してある。
【0127】
反応が起こると、得られた生成物のジスルフィドタイプの化合物(k)とのカップリングが行われる。
【0128】
この反応は通常、溶媒(先のステップの溶媒でもよい)の存在下で行われる。
【0129】
温度は通常通り、好ましくは0〜8のpHで-15℃〜30℃、好ましくは-10℃〜20℃である。
【0130】
生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0131】
次いで、このように得られた生成物は、通常の方法で四級化される(例えば、Synth.Comm.2005、35(23)、3021〜3026頁;EP1386916;Synthesis、1986、5、382〜383頁;Liebigs Annalen der Chemie、1987、1、77〜79頁;Bull.Chem.Soc.Jap.1977、50(6)、1510〜1512頁;J.Org.Chem.1979、44(4)、638〜639頁を参照されたい)。例えば、得られた生成物を、プロトン性または非プロトン性の極性または無極性溶媒(ジクロロメタン、トルエン、酢酸エチルまたは水など)の存在下で、自発的またはアルカリ性pHにて、硫酸アルキル(硫酸ジメチル、硫酸ジエチルもしくは硫酸ジプロピルなど)、またはハロゲン化アルキルまたはアルキルハロゲン化アリール(ヨードメタン、ヨードエタン、2-ブロモエタノールまたは臭化ベンジルなど)と接触させることができる。得られた生成物をまた、塩基の存在下で、炭酸ジメチルまたは炭酸ジエチルなどの炭酸ジアルキルと接触させることができる。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。
【0132】
第2の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0133】
【化12】
【0134】
式中、R1、R3、R4、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0135】
この方法によれば、アミノキノリンのジアゾ化の第1のステップは、当業者には公知の方法で行われる。
【0136】
反応が起こると、得られた生成物の保護されたチオールタイプの化合物(m)によるカップリングが行われる。
【0137】
反応が起こると、チオール基の脱保護、次いでチオールの酸化が行われる。温度は通常、10℃〜180℃、好ましくは20℃〜100℃である。
【0138】
次いで、このように得られた生成物は、通常の方法で四級化される。
【0139】
この方法の全てのステップを行うための条件は、先に要約してある。この合成の各ステップで、中間体およびしたがって最終生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができる。
【0140】
第3の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0141】
【化13】
【0142】
式中、R1、R3、R4、R5、L、Y、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0143】
この方法によれば、アゾ化合物は、ニトロソ化合物(n)と芳香族アミン(m)とを反応させることによって調製される。この方法は、当業者には公知であり、J.Hetero.Chem21(2)、501〜3頁、1984において記載されている。合成の他のステップを行うための条件は、先に要約してある。
【0144】
この合成の変形形態は、ジスルフィド化合物の使用であり、
【0145】
【化14】
【0146】
式中、R1、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0147】
この第3の合成の変形形態は、ヒドロキシルアミン化合物の使用である。この方法は、当業者には公知であり、またJ.Hetero.Chem21(2)、501〜3頁、1984において記載されており、
【0148】
【化15】
【0149】
式中、R1、R3、R4、L、Y、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0150】
他の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0151】
【化16】
【0152】
式中、R1、R3、R4、R5、L、Lg、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0153】
他の実施形態によれば、本発明において使用される化合物の合成方法は、下記のステップを行うステップを含んでもよく、
【0154】
【化17】
【0155】
式中、R1、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記定義の通りであり、Nucは、求核基を表し、Eは、求電子基を表し、Σは、求電子試薬上の求核試薬の攻撃後に生じる結合であり、基L'-Σ-L'の組合せは、上記定義のようなリンカーLによって含有されている。
【0156】
例示として、生じることができる共有結合Σを、求電子試薬の求核試薬との縮合に基づいて下記の表において一覧表示する。
【0157】
【表3】
【0158】
非限定的な適応として、カルボキサミド基を含有するリンカーを有する染料は、求核性アミノ基を含有するアゾ化合物と2個のハロゲン化アシル基を含有する化合物(r)とを反応させることによって合成され、
【0159】
【化18】
【0160】
式中、R1、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0161】
この反応は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、極性溶媒、好ましくはアルコール中で当業者には公知の方法で行われる。最終生成物は、当業者には公知の技術(沈殿、蒸発など)によって単離することができ、前駆体は、上記の方法の第1のステップによって容易に得ることができる。
【0162】
他の実施形態によれば、本発明によるジスルフィド/チオール染料は、アゾ染料(オルト位またはパラ位に、核脱離基(例えばハロゲンまたはアルキルオキシ)を担持しているキノリニウム単位を含む)上の、反応剤H-NR3-L-S-Y(s)またはH-NR3-L-S-S-L-NR3-H(t)(例えば、システアミンまたはシステイン)との芳香族求核置換によって得ることができ、
【0163】
【化19】
【0164】
式中、R1、R3、R4、R5、L、Y、An、mおよびnは、上記定義の通りである。
【0165】
この反応は、極性溶媒、好ましくはアルコール中で当業者には公知の方法で行われる。核脱離基を担持している前駆体は、上記の方法の第1のステップによって容易に得ることができる。この方法が、アミノキノリンのジアゾ化、それに続くカップリングの手段を取る場合、選択される発色剤はフェノールでよく、これは当業者には公知の条件によって続いてメチル化することができる。
【0166】
式(I-Y)(mおよびnは1である)の保護されたチオール染料は、2つの段階で合成することができる。第1の段階は、当業者には公知の方法、例えば「Thiols and Organic Sulfides」、「Thiocyanates and Isothiocyanates, Organic」、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Wiley-VCH、Weinheim、2005による保護されていないチオール染料(I-H)を調製するステップを含む。さらに、第2の段階は、式(I-Y)の保護されたチオール染料を得るために、当業者には公知の従来の方法によってチオール官能基を保護するステップを含む。例示として、チオール染料の-SHチオール官能基を保護するために、書籍「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons ed.、NY、1981、193〜217頁;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005、第5章の方法を使用することができる。この方法は、i)(I-S)などのジスルフィド官能基-S-S-を担持している2発色団の複素環式染料を還元することによって式(I-H)のチオール染料を生じさせるステップと、ii)式(I-Y)の保護されたチオール染料を得るために、(I-H)の前記チオール官能基を、従来の方法によって反応剤(u)Y'Rで保護するステップとを含む方法によって例示することができる。チオール化合物(I-H)はまた、式(I-Met)のチオラート染料を得るために、アルカリ金属またはアルカリ土類金属Met*によってメタル化することができ、
【0167】
【化20】
【0168】
式中、R1、R3、R4、R5、L、An、mおよびnは、上記定義の通りであり、Y'は、チオール官能基保護基を表し、Met*は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウムまたはカリウムを表し、金属がアルカリ土類金属である場合、チオラート官能基-S-を有する2発色団は、1金属2+と結合できることが理解され、Rは、核脱離基、例えば、メシレート、トシレート、トリフレートまたはハロゲン化物を表す。
【0169】
他の可能性によれば、上記の書籍において記載されている手順の1つによって調製された、上記定義のような保護基Y'で保護されている保護されたチオール化合物(v)(前記保護されたチオール化合物は、少なくとも1つの求核性官能基を含む)は、十分な(好ましくは等モル)量の発色団(w)(共有結合Σを形成するために求電子性官能基を含む)と反応することができ、式(I'-Y)の染料の調製については下記を参照されたい
【0170】
【化21】
【0171】
(式中、R1〜R4、m、n、Nuc、E、ΣおよびY'は、上記定義の通りであり、L'は、任意選択で置換されており、かつ/または任意選択で中断されている、(ヘテロ)芳香族または非(ヘテロ)芳香族、環状または非環状、直鎖状または分岐状、飽和または不飽和のC1〜C20、好ましくはC2〜C10炭化水素をベースとする鎖(少なくとも1個のヘテロ原子、または少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素もしくは窒素を含む基で任意選択で終結している)を表し、n'は、1以上6以下の整数を表す)。
【0172】
この方法の変形形態は、求電子性アクリレート官能基(-OCO-C=C-)を有する発色団を使用することであり、その上でΣ結合を生じるであろう付加反応が行われる。
【0173】
チオール反応剤(x):Y'-SH(上記定義のようなY'基を含み、その求核性SH官能基は、発色団によって担持されているハロゲン原子に対してα-位にあるL基の炭素原子上で反応することができ、そのケトン官能基は、式(I-Y)の保護されたチオール染料を得るために、上記のように前もって任意選択で保護されている)をまた使用してもよく、
【0174】
【化22】
【0175】
式中、R1〜R4、L、Y'、n、mおよび(I-Y)は、上記定義の通りであり、Halは、臭素、ヨウ素または塩素などの核脱離ハロゲン原子を表す。
【0176】
より詳細には、核脱離基は、イソチオウロニウムを生じさせるためにチオ尿素基(S=C(NRR)NRR)で置換されていてもよく(例えば、チオ尿素基が、イミダゾリウム基でS-保護されている染料(I''-Y)を得るためにチオイミダゾリニウム(y)である場合)、
【0177】
【化23】
【0178】
式中、R1〜R5、L、n、m、HalおよびAn-は、上記定義の通りである。
【0179】
他の可能性によると、特定の保護されたチオール染料(I'-Y)は、保護されたチオール化合物を、従来の方法(例えば、カルボジイミドまたは塩化チオニルとの反応)によって活性化される2個のカルボン酸官能基を担持している化合物と反応させることによって得ることができる。このように得られた生成物(z)は、続いて発色団と反応し、そのケトン官能基は、上記で見られるように前もって任意選択で保護されており、例えば第一級もしくは第二級アミンタイプまたは脂肪族アルコールタイプの求核性官能基を担持しており、
【0180】
【化24】
【0181】
式中、R1〜R5、L'、n、m、n'、E、Nuおよび(I'-Y)は、上記定義の通りである。
【0182】
合成の変形形態は、先の経路を第1の経路と合わせること、すなわち求核基にジスルフィド求二電子反応剤(a')を与える2当量の染料を使用することであり、縮合後に、ジスルフィド2発色団生成物(I'-S)を得ることが可能であり、チオール染料(I'-H)を形成するために、後者は還元を受けることが可能であり、それはさらには保護されたチオール染料(I''-Y)を形成するために保護するか、またはメタル化染料(I'''金属)を得るためにアルカリ金属によってメタル化することができ、
【0183】
【化25】
【0184】
式中、R1〜R5、L'、n、m、n'、E、Nuおよび(I'-Y)は、上記定義の通りである。
【0185】
他の可能性によると、式(I'''-Y)の保護されたチオール染料は、発色団上にY'基で保護されているチオール基および核脱離基Lg(例えば、メシレート、トシレート、トリフレートまたはハロゲン化物)を含む化合物(b')と反応させることによって得ることができ、
【0186】
【化26】
【0187】
式中、R1〜R4、L、Y、n、m、およびLgは、上記定義の通りである。
【0188】
上記の方法のために使用される作業条件についてのさらなる詳細については、書籍Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、J.March、第4版、John Wiley & Sons、1992またはT.W.Greene「Protective Groups in Organic Synthesis」を参照してもよい。
【0189】
形成されたチオール染料は、従来の保護基を使用した-SHチオールの保護によって、-SY'保護されたチオール染料に変換することができる。チオール染料は、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、J.March、第4版、John Wiley & Sons、NY、1992において記載されているものなど当業者には公知の従来の方法をまた使用することによってメタル化される。
【0190】
保護されたチオール染料は、書籍「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons ed.、NY、1981;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005において記載されているものなど従来の経路によって脱保護することができる。
【0191】
出発反応物は市販であるか、または当業者には公知の従来の方法によって利用可能である。例示として、文献US4579949について言及することができる。
【0192】
本発明の他の対象は、少なくとも1種の式(I)または(II)のジスルフィド、チオール、または保護されたチオール染料を含有する組成物である。少なくとも1種の式(I)の染料の存在に加えて、本発明の組成物はまた、還元剤を含有し得る。
【0193】
この還元剤は、チオール(例えば、システイン、ホモシステイン)、チオ乳酸、これらのチオールの塩、ホスフィン、ビスルフィット、スルフィット、チオグリコール酸、およびまたそのエステル、特にモノチオグリコール酸グリセロール、およびチオグリセロールから選択し得る。この還元剤はまた水素化ホウ素およびその誘導体、例えば、水素化ホウ素の塩、シアノ水素化ホウ素の塩、トリアセトキシ水素化ホウ素の塩またはトリメトキシ水素化ホウ素の塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第四級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム)塩;カテコールボランから選択し得る。
【0194】
本発明において使用することのできる染料組成物は一般に、組成物の全重量に対して0.001%〜50%の量の式(I)または式(II)の染料を含有する。好ましくは、この量は、組成物の全重量に対して0.005重量%〜20重量%、よりさらに好ましくは0.01重量%〜5重量%である。
【0195】
本発明による組成物は、文献WO2006/136617およびFR2876576において記載されているように、少なくとも1種のさらなるジスルフィドまたはチオール染料を任意選択で含んでもよい。
【0196】
非限定的例として、毛髪への組成物の塗布、すすぎおよび乾燥後に得られる色が、十分に強力、安定的で美的な被覆(適切な場合には、赤褐色、玉虫色、マホガニー色、無光沢、赤色、暗紫色の色合いを有する自然色、茶色)を得ることを可能にするのような比率で、560〜630nmの最大吸収を示す本発明による式(I)または(II)の染料を、一般式(III)の染料(赤色のアゾジスルフィド染料)および/または一般式(IV)の染料(黄色のヒドラゾンジスルフィド染料)と好都合には合わせる。
【0197】
赤色のアゾジスルフィド染料は、特に下記の一般式(III)、
【0198】
【化27】
【0199】
ならびにまた有機酸または鉱酸を有するその付加塩、ならびにその溶媒和物、水和物、互変異性体および幾何異性体であり、
式(III)中、
- R''は、互いに独立に、水素原子またはNR''''C(O)R'''''基を表し、
- R'、R'''、R''''およびR'''''は、互いに独立に、水素原子、または任意選択で置換されている(C1〜C14)アルキル、任意選択で置換されている(C5〜C10)シクロアルキル、任意選択で置換されている(C2〜C14)アルキレニル、任意選択で置換されている(C5〜C10)アリール(C1〜C10)アルキル、任意選択で置換されている(C1〜C10)アルキル(C5〜C10)アリール、および任意選択で置換されている(C5〜C10)アリールから選択される基を表し、
Lxは、互いに独立に、1個もしくは複数の二価基またはこれらの組合せで任意選択で中断されている、任意選択で置換されているC1〜C20、特にC1〜C10の二価の炭化水素をベースとする鎖を表し、2個の二価基またはこれらの組合せは、C2〜C6の二価の炭化水素をベースとする鎖、特にアルキレンで中断されていることが理解され、前記二価基は、-N(R)-、-O-、-S-および-C(O)-から選択され、Rは、水素原子、またはC1〜C4アルキル、C2〜C6(ポリ)ヒドロキシアルキル、アルコキシ(C1〜C6)アルキル、アリール(フェニルなど)、アリール(C1〜C6)アルキル(ベンジルなど)、(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ(C1〜C6)アルキル、アミノ(C1〜C4)アルキル(そのアミンは、同一または異なっていてもよい1個または複数のC1〜C4アルキル基で置換されている)、(C1〜C6)アルキルカルボニルおよび(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノから選択される基を表す。
【0200】
「黄色の」ヒドラゾンジスルフィド染料は、特に下記の一般式(IV)、
【0201】
【化28】
【0202】
ならびにまた有機酸または鉱酸を有するその付加塩、ならびにその溶媒和物、水和物、互変異性体および幾何異性体であり、
式(IV)中、
- RxおよびRyは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン、または1個もしくは複数のヘテロ原子で任意選択で中断されている任意選択で置換されているC1〜C16アルキル、および任意選択で置換されているフェニルから選択される基を表し、
- Rzは、互いに独立に、水素原子またはNR''''C(O)R'''''基(R''''およびR'''''は上記定義の通りである)を表し、
- Lxは、上記定義の通りである。
【0203】
存在する場合、組成物中のさらなるジスルフィド/チオール染料(複数可)の含量は一般に、組成物の重量に対して0.001重量%〜20重量%、好ましくは組成物の重量に対して0.01重量%〜10重量%の範囲である。
【0204】
本発明による組成物は、式(I)および/または(II)の化合物とは異なる少なくとも1種のさらなる直接染料を任意選択で含んでもよい。
【0205】
非限定的例として、ニトロベンゼン染料、アゾ、アゾメチン、メチン、テトラアザペンタメチン、アントラキノン、ナフトキノン、ベンゾキノン、フェノチアジン、インジゴイド、キサンテン、フェナントリジンまたはフタロシアニン染料、トリアリールメタン由来のもの、および天然染料(単独または混合物として)について言及することができる。
【0206】
それは、例えば、下記の赤色またはオレンジ色のニトロベンゼン染料から選択してもよい。
- 1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-N-(γ-ヒドロキシプロピル)アミノベンゼン、
- N-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-4-アミノベンゼン、
- 1-アミノ-3-メチル-4-N-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-6-ニトロベンゼン、
- 1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-N-(β-ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、
- 1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、
- 1-アミノ-2-ニトロ-4-メチルアミノベンゼン、
- N-(β-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラ-フェニレンジアミン、
- 1-アミノ-2-ニトロ-4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-5-クロロ-ベンゼン、
- 2-ニトロ-4-アミノジフェニルアミン、
- 1-アミノ-3-ニトロ-6-ヒドロキシベンゼン、
- 1-(β-アミノエチル)アミノ-2-ニトロ-4-(β-ヒドロキシ-エチルオキシ)ベンゼン、
- 1-(β,γ-ジヒドロキシプロピル)オキシ-3-ニトロ-4-(β-ヒドロキシ-エチル)アミノベンゼン、
- 1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-アミノベンゼン、
- 1-ヒドロキシ-2-アミノ-4,6-ジニトロベンゼン、
- 1-メトキシ-3-ニトロ-4-(β-ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、
- 2-ニトロ-4'-ヒドロキシジフェニルアミン、
- 1-アミノ-2-ニトロ-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼン。
【0207】
さらなる直接染料はまた、黄色および黄緑色のニトロベンゼン直接染料から選択し得る。例えば、
- 1-β-ヒドロキシエチルオキシ-3-メチルアミノ-4-ニトロベンゼン、
- 1-メチルアミノ-2-ニトロ-5-(β,γ-ジヒドロキシプロピル)-オキシベンゼン、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-メトキシ-4-ニトロベンゼン、
- 1-(β-アミノエチル)アミノ-2-ニトロ-5-メトキシベンゼン、
- 1,3-ジ(β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-ニトロ-6-クロロ-ベンゼン、
- 1-アミノ-2-ニトロ-6-メチルベンゼン、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシ-4-ニトロベンゼン、
- N-(β-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-4-トリフルオロメチルアニリン、
- 4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロベンゼンスルホン酸、
- 4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸、
- 4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロクロロベンゼン、
- 4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロメチルベンゼン、
- 4-(β,γ-ジヒドロキシプロピル)アミノ-3-ニトロトリフルオロメチルベンゼン、
- 1-(β-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、
- 1,3-ジアミノ-4-ニトロベンゼン、
- 1-ヒドロキシ-2-アミノ-5-ニトロベンゼン、
- 1-アミノ-2-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ-5-ニトロベンゼン、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロベンズアミド
から選択される化合物について言及することができる。
【0208】
青色または紫色のニトロベンゼン直接染料、例えば、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 1-(γ-ヒドロキシプロピル)アミノ-4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-(N-メチル-N-β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 1-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-(N-エチル-N-β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 1-(β,γ-ジヒドロキシプロピル)アミノ-4-(N-エチル-N-β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、
- 下記の式の2-ニトロ-パラ-フェニレンジアミン
【0209】
【化29】
【0210】
(式中、
- Rbは、C1〜C4アルキル基、またはβ-ヒドロキシエチル、β-ヒドロキシプロピルまたはγ-ヒドロキシプロピル基を表し、
- 同一または異なっていてもよいRaおよびRcは、β-ヒドロキシエチル、β-ヒドロキシプロピル、γ-ヒドロキシプロピル、またはβ,γ-ジヒドロキシプロピル基を表し、基Rb、RcおよびRaの少なくとも1つは、γ-ヒドロキシプロピル基を表し、Rbがγ-ヒドロキシプロピル基である場合、RbおよびRcが同時にβ-ヒドロキシエチル基を表すことは不可能である(仏国特許FR2692572において記載されているものなど))についてまた言及することができる。
【0211】
本発明によって使用することができるアゾ直接染料の中で、特許出願WO95/15144、WO95/01772、EP714954、FR2822696、FR2825702、FR2825625、FR2822698、FR2822693、FR2822694、FR2829926、FR2807650、WO02/078660、WO02/100834、WO02/100369およびFR2844269において記載されているカチオン性アゾ染料について言及することができる。
【0212】
これらの化合物の中で、下記の染料について最も特に言及することができる。
- 1,3-ジメチル-2-[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]-1H-イミダゾリウムクロリド,
- 1,3-ジメチル-2-[(4-アミノフェニル)アゾ]-1H-イミダゾリウムクロリド,
- 1-メチル-4-[(メチルフェニルヒドラゾノ)メチル]-ピリジニウムメチルサルフェート。
【0213】
アゾ直接染料の中で、Colour Index International、第3版において記載されている下記の染料
- ディスパースレッド17
- アシッドイエロー9
- アシッドブラック1
- ベーシックレッド22
- ベーシックレッド76
- ベーシックイエロー57
- ベーシックブラウン16
- アシッドイエロー36
- アシッドオレンジ7
- アシッドレッド33
- アシッドレッド35
- ベーシックブラウン17
- アシッドイエロー23
- アシッドオレンジ24
- ディスパースブラック9
についてまた言及することができる。
【0214】
1-(4'-アミノジフェニルアゾ)-2-メチル-4-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノベンゼンおよび4-ヒドロキシ-3-(2-メトキシフェニルアゾ)-1-ナフタレンスルホン酸についてまた言及することができる。
【0215】
キノン直接染料の中で、下記の染料
- ディスパースレッド15
- ソルベントバイオレット13
- アシッドバイオレット43
- ディスパースバイオレット1
- ディスパースバイオレット4
- ディスパースブルー1
- ディスパースバイオレット8
- ディスパースブルー3
- ディスパースレッド11
- アシッドブルー62
- ディスパースブルー7
- ベーシックブルー22
- ディスパースバイオレット15
- ベーシックブルー99
およびまた下記の化合物
- 1-N-メチルモルホリニウムプロピルアミノ-4-ヒドロキシアントラキノン
- 1-アミノプロピルアミノ-4-メチルアミノアントラキノン
- 1-アミノプロピルアミノアントラキノン
- 5-β-ヒドロキシエチル-1,4-ジアミノアントラキノン
- 2-アミノエチルアミノアントラキノン
- 1,4-ビス(β,γ-ジヒドロキシプロピルアミノ)アントラキノン
について言及することができる。
【0216】
アジン染料の中で、下記の化合物
- ベーシックブルー17
- ベーシックレッド2
について言及することができる。
【0217】
本発明により使用することのできるトリアリールメタン染料の中で、下記の化合物
- ベーシックグリーン1
- アシッドブルー9
- ベーシックバイオレット3
- ベーシックバイオレット14
- ベーシックブルー7
- アシッドバイオレット49
- ベーシックブルー26
- アシッドブルー7
について言及することができる。
【0218】
本発明により使用することのできるインドアミン染料の中で、下記の化合物
- 2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-[ビス(β-4'-ヒドロキシエチル)-アミノ]アニリノ-1,4-ベンゾキノン
- 2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-(2'-メトキシ-4'-アミノ)-アニリノ-1,4-ベンゾキノン
- 3-N-(2'-クロロ-4'-ヒドロキシ)フェニルアセチルアミノ-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノンイミン
- 3-N-(3'-クロロ-4'-メチルアミノ)フェニルウレイド-6-メチル-1,4-ベンゾキノンイミン
- 3-[4'-N-(エチルカルバミルメチル)アミノ]フェニルウレイド-6-メチル-1,4-ベンゾキノンイミン
について言及することができる。
【0219】
さらなる直接染料はまた、天然直接染料でよい。
【0220】
本発明により使用することのできる天然直接染料の中で、ローソン、ユグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシンおよびアピゲニニジンについて言及することができる。これらの天然染料を含有する抽出物または煎出物、および特にヘンナをベースとする抽出物または湿布剤をまた、使用してもよい。
【0221】
存在する場合、組成物中のさらなる直接染料(複数可)の含量は一般に、組成物の重量に対して0.001重量%〜20重量%、好ましくは組成物の重量に対して0.01重量%〜10重量%の範囲である。
【0222】
染料組成物はまた、ケラチン繊維を染色するために通常通り使用される1種もしくは複数の酸化塩基および/または1種もしくは複数の発色剤を含有し得る。
【0223】
酸化塩基の中で、パラ-フェニレンジアミン、ビスフェニルアルキレンジアミン、パラ-アミノフェノール、ビス-p-アミノフェノール、オルト-アミノフェノールおよび複素環塩基、およびその付加塩について言及することができる。
【0224】
これらの発色剤の中で、メタ-フェニレンジアミン、メタ-アミノフェノール、メタ-ジフェノール、ナフタレン発色剤および複素環発色剤、およびその付加塩について特に言及することができる。
【0225】
発色剤(複数可)は一般に、(各々)染料組成物の総重量に対して0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005%〜6%の量で存在する。
【0226】
染料組成物中に存在する酸化塩基(複数可)は一般に、(各々)染料組成物の総重量に対して0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005重量%〜6重量%の量で存在する。
【0227】
一般に、本発明との関連で使用することができる酸化塩基および発色剤の付加塩は特に、酸を有する付加塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩および酢酸塩など)、ならびに塩基を有する付加塩(アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、アンモニア水、アミンまたはアルカノールアミンなど)から選択される。
【0228】
染料担体としても知られている染色のために適切な媒体は、一般に水、または水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物で構成される化粧用媒体である。有機溶媒として、例えば、C1〜C4低級アルカノール(エタノールおよびイソプロパノールなど)、ポリオールおよびポリオールエーテル(2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど)、ならびにまた芳香族アルコール(ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールなど)、ならびにこれらの混合物について言及することができる。
【0229】
存在する場合、溶媒は、好ましくは染料組成物の総重量に対して好ましくは約1重量%〜40重量%、よりさらに好ましくは約5重量%〜30重量%の割合で存在する。
【0230】
染料組成物はまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性もしくは双性イオン性界面活性剤またはそれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性もしくは双性イオンポリマーまたはそれらのブレンド、鉱物性もしくは有機増粘剤、特にアニオン性、カチオン性、非イオン性および両性会合性ポリマー増粘剤、抗酸化剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、芳香剤、緩衝液、分散剤、例えば、改質されたもしくは改質されていない揮発性もしくは不揮発性シリコーン(アミノシリコーンなど)などの品質改良剤、被膜剤、セラミド、保存剤、乳白剤または導電性ポリマーなどの、毛髪を染色するために組成物中に通常通り使用される様々な補助剤を含有し得る。
【0231】
上記の補助剤は一般に、それらの各々について、組成物の重量に対して0.01重量%〜20重量%の量で存在する。
【0232】
当然ながら、本発明による染料組成物と本質的に関連する有利な特性が、想定される添加(複数可)によって損なわれない、または実質的に損なわれないように、当業者は念入りにこれまたはこれらの可能なさらなる化合物(複数可)を選択するであろう。
【0233】
染料組成物のpHは、一般に約3〜14であり、好ましくは約5〜11である。それは、ケラチン繊維の染色において通常使用される酸性化剤または塩基性化剤によって、または代わりに従来の緩衝系によって、所望の値に調節し得る。
【0234】
酸性化剤の中で、例示として、鉱物酸または有機酸(塩酸、オルトリン酸または硫酸など)、カルボン酸(酢酸、酒石酸、クエン酸または乳酸など)、およびスルホン酸について言及することができる。
【0235】
塩基性化剤の中で、例示として、アンモニア水、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン(モノ、ジおよびトリエタノールアミン、ならびにまたそれらの誘導体など)、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、ならびに下記の式(γ)の化合物について言及することができ、
【0236】
【化30】
【0237】
式中、Waは、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン残基であり、同一または異なっていてもよいRa1、Ra2、Ra3およびRa4は、水素原子、またはC1〜C4アルキルまたはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す。
【0238】
染料組成物は、液体、クリームもしくはゲルの形態、またはケラチン繊維、特に毛髪の染色に適切な任意の他の形態などの様々な形態でもよい。
【0239】
特定の実施形態によれば、本発明の方法において、還元剤は、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含有する組成物の塗布の前に、前処理として塗布することができる。
【0240】
この前処理は、上記のような還元剤で短期間、特に0.1秒から30分、好ましくは1分から15分でよい。
【0241】
他の方法によれば、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含む組成物はまた、少なくとも1種の上記定義のような還元剤を含有する。次いで、この組成物を毛髪に塗布する。
【0242】
変形形態によれば、還元剤を、使用時に、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含有する染料組成物に加える。
【0243】
他の方法によれば、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含む組成物はまた、少なくとも1種の上記定義のような還元剤を含有する。次いで、この組成物を毛髪に塗布する。
【0244】
他の変形形態によれば、還元剤は、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含有する組成物の塗布後に処理後塗布する。還元剤による後処置の期間は、上記のような還元剤で短時間、例えば0.1秒から30分、好ましくは1分から15分でよい。特定の実施形態によれば、還元剤は、上記のようなチオールまたは水素化ホウ素タイプの薬剤である。
【0245】
本発明の1つの特定の実施形態は、還元前処理または還元後処置なしで還元剤を含まない式(I)または(II)の染料を毛髪に直接塗布することができる方法に関する。
【0246】
酸化剤による処理を、任意選択で合わせることができる。当分野において従来通りである任意のタイプの酸化剤を使用してもよい。したがって、それは、過酸化水素、尿素ペルオキシド、アルカリ金属臭素酸塩、過ホウ酸塩および過硫酸塩などの過酸塩、ならびにまた酵素(これらの中でも、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼなどの2-電子オキシドレダクターゼおよびラッカーゼなどの4-電子オキシゲナーゼについて言及することができる)から選択し得る。過酸化水素の使用が特に好ましい。酸化剤の放置時間は、0.01〜40分でよい。
【0247】
式(I)または(II)(xおよびyは1である)のチオール染料がチオール官能基保護基Yを含む場合、本発明の方法は、SH官能基をインサイチュで再び得ることを目的とする脱保護ステップを含む。
【0248】
例示として、pHを下記の通りに調節することによって、保護基Yを有する本発明の染料のS-Y官能基を脱保護することが可能である。
【0249】
【表4】
【0250】
脱保護ステップは、毛髪の前処理ステップ、例えば、毛髪の還元前処理の間に行ってもよい。
【0251】
変形形態によれば、脱保護ステップは、後処置または染色と同時に行ってもよい。
【0252】
本発明による染料組成物の塗布は一般に、周囲温度で行われる。しかし、それは20〜180℃の範囲の温度で行ってもよい。
【0253】
本発明の対象はまた、第1の区画が、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含む染料組成物を含有し、第2の区画が、ケラチン材料のジスルフィド官能基を還元することができる還元剤および/または式(I)または(II)のジスルフィド染料を還元することができる還元剤を含有する、多区画染色装置または染色「キット」である。
【0254】
これらの区画の1つはまた、直接染料または酸化染料タイプの1種または複数の他の染料を含有してもよい。
【0255】
本発明はまた、第1の区画が、少なくとも1種の式(I)または(II)の染料を含む染料組成物を含有し、第2の区画が、ケラチン材料のジスルフィド結合を還元することができる還元剤および/または式(I)または(II)のジスルフィド染料を還元することができる還元剤を含有し、第3の区画が、酸化剤を含有する多区画装置に関する。
【0256】
代わりに、染色装置は、少なくとも1種の式(I)または(II)(xおよびyは1である)の保護されたチオール染料を含む染料組成物を含有する第1の区画と、チオールを遊離させるように保護されたチオールを脱保護することができる薬剤を含有する第2の区画と、任意選択で、酸化剤を含む第3の区画とを含有する。
【0257】
上記の装置の各々は、所望の混合物を毛髪に送達するための手段、例えば、特許FR2586913において記載されている装置を備えてもよい。
【0258】
下記の実施例は、本発明を例示する役割を果たすが、実際に限定的ではない。
【実施例1】
【0259】
合成の実施例
(a)4,4'-{ジスルファンジイルビス[エタン-2,1-ジイルイミノ(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-4,2-ジイル)イミノ-4,1-フェニレン(E)ジアゼン-2,1-ジイル]}ビス(1-エチル-キノリニウム)ビス(エチルサルフェート)の合成
【0260】
【化31】
【0261】
合成スキーム
【0262】
【化32】
【0263】
中間体1は、通常の方法で下記のように得る。亜硝酸tert-ブチルの溶液を、4-アミノキノリンのH3PO4溶液に-10℃で撹拌しながら滴下する。1時間後、尿素の溶液、次いでアニリンのH3PO4およびH2O溶液を加える。反応混合物を、0℃にて水酸化ナトリウムによってpH7に戻し、2時間撹拌する。濾過後、固体をクロマトグラフィー(アルミナ)によって精製する。
【0264】
中間体1および化学量論量の硫酸ジエチルを、酢酸エチル中で24時間還流させる。溶媒が蒸発した後、4-[(4-アミノフェニル)ジアゼニル-1-エチルキノリニウム]2-(エチルサルフェート)化合物を、クロマトグラフィー(アルミナ)によって精製する。
【0265】
K2CO3の飽和溶液を加えることによってpHを4〜6に保ち、0〜5℃の温度を保つ間に、4-[(E)-(4-アミノフェニル)ジアゼニル]-1-エチルキノリニウムエチルサルフェート(1g)、水(50ml)およびエタノール(50ml)を含有する溶液を、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(0.46g)、アセトン(25ml)および氷水(50ml)の溶液に加える。添加後、K2CO3の飽和溶液でそのpHを4〜6に維持する間に、反応媒体を周囲温度にゆっくりと戻す。混合物を周囲温度にてpH4〜6で12時間撹拌した後、水(25ml)および無水エタノール(25ml)に可溶化したシステアミン二塩酸塩(280mg)の溶液を、いつも反応媒体のpHを4〜6に維持することに注意しながらAT(18℃)にて前記混合物にゆっくりと加える。混合物を44℃で1時間加熱する。K2CO3の飽和溶液を反応媒体に加えることによってpHを常に4〜6に維持する。周囲温度にゆっくりと冷却した後、混合物をアセトン(1L)に注ぎ、濾過し、紫色の粉末(310mg)を回収するために真空下で乾燥させる。分析によって、化合物1は適合することが示される(LC-MS m/z=465)。
【0266】
(b)1,1'-{ジスルファンジイルビス[エタン-2,1-ジイルイミノ(4-オキソブタン-4,1-ジイル)]}ビス{4-[{4-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ジアゼニル]-キノリニウム}ジクロリドの合成
【0267】
【化33】
【0268】
合成スキーム
【0269】
【化34】
【0270】
ステップ1: N,N'-(ジスルファンジイルジエタン-2,1-ジイル)ビス(4-クロロブタンアミド)の合成
60gのシスタミン塩酸塩を500mLに可溶化し、5℃に冷却する。NaOH水溶液(30%)を加えることによってpHを10に上げる。NaOH水溶液(30%)を添加することによってpHを7超に維持しながら、4-クロロブタノイルクロリド(105g)の無水THF(500mL)溶液を滴下する。添加が完了し、pHが7で安定した後、混合物の混合を3日間続ける。水層を3×500mLのジクロロメタンで抽出し、THF層と合わせ、Na2SO4上で乾燥させる。真空下で乾燥させた後、41gの白色粉末を集める。分析は、想定される構造に基づく。
【0271】
ステップ2: 1,1'-{ジスルファンジイルビス[エタン-2,1-ジイルイミノ(4-オキソブタン-4,1-ジイル)]}ビス{4-[{4-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ジアゼニル]キノリニウム}ジクロリドの合成
0.35gの2,2'-({4-[(キノリン-4-イル)ジアゼニル]-フェニル}-イミノ)ジエタノールおよび0.18gのN,N'-(ジスルファン-ジイルジエタン-2,1-ジイル)ビス(4-クロロブタンアミド)を、2mLのアセトニトリル中に可溶化する。混合物を24時間加熱還流し、冷却し、50mLのアセトン上に注ぐ。このように得られた油をアセトンで数回洗浄する。
【0272】
染色方法-化合物[1]
組成物Aの調製
【0273】
【表5】
【0274】
組成物Bの調製
【0275】
【表6】
【0276】
第1の染色方法
1ステップの塗布
使用時に、組成物A(9ml)およびB(1ml)を混合し、次いで配合物を、90%の白髪がある天然の白髪(NW)の房、およびパーマをかけた白髪(PW)の房に塗布する。放置時間は、周囲温度で20分である。次いで、髪の房をすすぎ、シャンプーし、乾燥させる。
【0277】
第2の染色方法
2ステップの塗布
組成物Aを、90%の白髪がある天然の白髪(NW)の房、およびパーマをかけた白髪(PW)の房に塗布する。放置時間は、周囲温度で10分である。このように処理した髪の房を水ですすぐ。
【0278】
次いで、組成物Bを、毛髪1グラム当たり5gの配合物の浴比でこれら同じ髪の房に塗布する。放置時間は、周囲温度で15分である。次いで、髪の房をすすぎ、シャンプーし、乾燥させる。
【0279】
2つの場合において、NWおよびPWの白髪で強力な着色が得られる。
【0280】
耐光性および耐シャンプー性の研究
上記の2種の染色方法によって事前に3時間の間染色した自然な白髪およびパーマをかけた白髪の房を、Xenotestに曝露することによって耐光性の研究を行った。曝露条件は、90W/m2、60%相対湿度、35℃の曝露チャンバ温度である。
【0281】
上記の2種の染色方法によって処理すると、シャンプー作業、続いて流水によるすすぎ、最後に、空気乾燥を含む5回のシャンプーサイクルによって髪の房をシャンプーする。これらのサイクルを、順々に5回行う。シャンプー作業の間、目に見える流出はなく、シャンプーの泡およびすすぎ水は着色されていない。
【0282】
視覚的に、2つの方法によって得られる着色は、光およびシャンプー作業への曝露に一緒に耐えるように見える。