(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号2の成熟軽鎖可変領域配列、配列番号3の成熟重鎖可変領域配列、ならびにL234A、L235AおよびG237Aの変異(位置はEU番号付けシステムにより番号付けされる)を有するIgGアイソタイプのヒト重鎖定常領域を含む、単離されたヒト化抗体。
【発明を実施するための形態】
【0051】
定義
「免疫グロブリン」または「抗体」(本明細書では互換的に用いられる)という用語は、例えば、鎖間ジスルフィド結合により安定化される2つの重鎖および2本の軽鎖からなる4つのポリペプチド鎖による基本構造を有し、抗原に特異的に結合する能力を有する、抗原結合タンパク質を指す。重鎖および軽鎖はともに、ドメインへと折りたたまれる。「ドメイン」という用語は、例えば、プリーツシート構造および/または鎖間ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含む(例えば、3〜4本のペプチドループを含む)、重鎖ポリペプチドまたは軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。さらに、本明細書において、ドメインは、「定常」ドメインの場合、各クラスメンバーのドメイン内における配列が比較的変化しないこと、または「可変」ドメインの場合、各クラスメンバーのドメイン内で大きく変化することに基づき、「定常」ドメインまたは「可変」ドメインと称する。軽鎖上における「定常」ドメインは、互換的に、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域、または「CL」ドメインと称する。重鎖上における「定常」ドメインは、互換的に、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域、または「CH」ドメインと称する。重鎖定常領域はまた、一般に、IgGアイソタイプ抗体の場合におけるCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインである、全長定常領域内に存在するドメインを集合的に指すとも理解される。軽鎖上における「可変」ドメインは、互換的に、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域、または「VL」ドメインと称する。重鎖上における「可変」ドメインは、互換的に、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域、または「CH」ドメインと称する。
【0052】
「領域」という用語は、抗体鎖の一部または部分を指し、本明細書で定義される定常ドメインまたは可変ドメインのほか、前記ドメインのより個別の一部または部分を含む。例えば、軽鎖可変ドメインまたは領域は、本明細書で定義される通り、「フレームワーク領域」または「FR」内に散在する「相補性決定領域」または「CDR」を含む。
【0053】
抗体または免疫グロブリンへの言及は、完全抗体およびそれらの結合断片を含む。断片は、抗原に対する特異的な結合についてそれらが由来する完全抗体に匹敵することが典型的である。断片としては、個別の重鎖および軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、およびFvが挙げられる。個別鎖としては、NANOBODIES(商標)(すなわち、ラクダまたはラマに由来し、場合によってヒト化される、抗体重鎖の単離VH断片)が挙げられる。単離VH断片はまた、ヒト抗体など、他の供給源からも得ることができる。断片は、組換えDNA法によるか、または完全免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により作製される。「抗体」という用語はまた、他のタンパク質との融合タンパク質に化学的にコンジュゲートされるか、または同融合タンパク質として発現される、1つまたは複数の免疫グロブリン鎖も含む。「抗体」という用語はまた、二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体または二官能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する、人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む各種の方法により作製することができる(例えば、SongsivilaiおよびLachmann、Clin.Exp.Immunol.、第79巻、315〜321ページ(1990);Kostelnyら、J.Immunol.、第148巻、1547〜1553ページ(1992)を参照されたい)。
【0054】
抗体の「特異的結合」とは、該抗体が、抗原または好ましいエピトープに対する感知可能な親和性を示し、好ましくは、有意な交差反応性を示さないことを意味する。感知可能であるかまたは好ましい結合は、少なくとも10
6、10
7、10
8、10
9M
−1、または10
10M
−1の親和性を有する結合を含む。10
7M
−1を超える親和性、好ましくは10
8M
−1を超える親和性がより好ましい。本明細書に記載のこれらの中間値もまた本発明の範囲内にあることを意図し、好ましい結合親和性は、親和性の範囲、例えば、10
6〜10
10M
−1、好ましくは、10
7〜10
10M
−1、より好ましくは、10
8〜10
10M
−1として示すことができる。「有意な交差反応性を示さない」抗体とは、望ましくない実体(例えば、望ましくないタンパク質性実体)に感知可能な形では結合しない抗体である。例えば、Aβに特異的に結合する抗体は、Aβには感知可能な形で結合するが、Aβでないタンパク質またはペプチド(例えば、プラーク中に含まれる、Aβでないタンパク質またはペプチド)と有意には反応しない。好ましいエピトープに対して特異的な抗体は、例えば、同じタンパク質またはペプチド上における隔てたエピトープと有意には交差反応しない。特異的結合は、このような結合を決定するための、当技術分野で認められた任意の手段により決定することができる。特異的結合は、スカチャード解析および/または競合結合アッセイにより決定されることが好ましい。
【0055】
「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」という用語は、少なくとも1つのヒト化免疫グロブリン鎖または抗体鎖(すなわち、少なくとも1つのヒト化軽鎖または重鎖)を含む免疫グロブリンまたは抗体を指す。「ヒト化免疫グロブリン鎖」または「ヒト化抗体鎖」(すなわち、「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」または「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)という用語は、ヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体に実質的に由来する可変フレームワーク領域(また、可変領域フレームワークとしても知られる)と、非ヒト免疫グロブリンまたは非ヒト抗体(例えば、げっ歯類、また場合によって、マウス)に実質的に由来する相補性決定領域(CDR)(例えば、少なくとも1つのCDR、好ましくは2つのCDR、より好ましくは3つのCDR)とを含む可変領域を有し、定常領域(例えば、軽鎖の場合、少なくとも1つの定常領域またはその部分、また、重鎖の場合、好ましくは3つの定常領域)をさらに含む、免疫グロブリン鎖または抗体鎖(すなわち、それぞれ軽鎖または重鎖)を指す。「ヒト化可変領域」(例えば、「ヒト化軽鎖可変領域」または「ヒト化重鎖可変領域」)という用語は、ヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体に実質的に由来する可変フレームワーク領域(また、可変領域フレームワークとしても知られる)と、非ヒト免疫グロブリンまたは非ヒト抗体に実質的に由来する相補性決定領域(CDR)とを含む可変領域を指す。
【0056】
「ヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体に実質的に由来する」または「実質的にヒトの」という表現は、比較を目的としてヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体のアミノ配列にアライメントした場合、該領域が、ヒトフレームワーク領域配列またはヒト定常領域配列と、少なくとも80〜90%(例えば、少なくとも90%)、好ましくは90〜95%、より好ましくは95〜99%の同一性(すなわち、局所的な配列同一性)を共有し、例えば、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換、戻し変異などを可能とすることを意味する。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換、戻し変異などの導入は、ヒト化抗体またはヒト化抗体鎖の「最適化」と称することが多い。「非ヒト免疫グロブリンまたは非ヒト抗体に実質的に由来する」または「実質的に非ヒトの」という表現は、非ヒト生物、例えば、非ヒト哺乳類の配列と少なくとも80〜95%、好ましくは90〜95%、より好ましくは96%、97%、98%、または99%同一の免疫グロブリン配列または抗体配列を有することを意味する。
【0057】
したがって、ヒト化免疫グロブリンもしくはヒト化抗体、またはヒト化免疫グロブリン鎖もしくはヒト化抗体鎖のすべての領域または残基は、おそらくはCDRを除いて、1つまたは複数の天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する領域または残基と実質的に同一である。「対応する領域」または「対応する残基」という用語は、比較を目的として第1および第2の配列を最適アライメントする場合、第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列上の領域または残基と同じ(すなわち、同等な)位置を占める、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列上の領域または残基を指す。
【0058】
「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」という用語は、上記で定義したキメラ免疫グロブリンまたはキメラ抗体を含むことを意図しない。ヒト化免疫グロブリンまたはヒト化抗体は、それらの構築においてはキメラである(すなわち、複数の動物種に由来するタンパク質領域を含む)が、本明細書で定義した通り、キメラ免疫グロブリンまたはキメラ抗体には見出されないさらなる特徴(すなわち、ドナーのCDR残基とアクセプターのフレームワーク残基とを含む可変領域)を含む。
【0059】
「キメラ免疫グロブリン」またはキメラ抗体という用語は、その可変領域が第1の動物種に由来し、その定常領域が第2の動物種に由来する、免疫グロブリンまたは抗体を指す。キメラ免疫グロブリンまたはキメラ抗体は、異なる動物種に帰属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから、例えば、遺伝子操作により構築することができる。
【0060】
「抗原」とは、抗体が特異的に結合する実体(例えば、タンパク質性実体またはペプチド)である。
【0061】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体(またはこれらの抗原結合断片)が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸またはタンパク質の3次元的な折りたたみにより隣接する不連続アミノ酸のいずれからも形成されうる。連続アミノ酸から形成されるエピトープが、変性溶剤への曝露時において保持されることが典型的であるのに対し、3次元的な折りたたみにより形成されるエピトープは、変性溶剤による処理時において失われることが典型的である。エピトープは、固有の空間的立体構造内において、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸を含むことが典型的である。エピトープの空間的立体構造を決定する方法としては、例えば、x線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、「Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology」、第66巻、G.E.Morris編(1996)を参照されたい。
【0062】
同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が標的抗原に対する別の抗体の結合を遮断する能力を示す、単純なイムノアッセイ、すなわち、競合的結合アッセイにおいて同定することができる。競合的結合は、調べる免疫グロブリンが、Aβなど、共通の抗原に対する基準抗体の特異的な結合を阻害するアッセイにおいて決定される。例えば:固相直接型または間接型のラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接型または間接型の酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahliら、Methods in Enzymology、第9巻、242ページ(1983)を参照されたい);固相直接型ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirklandら、J.Immunol.、第137巻、3614ページ(1986)を参照されたい);固相直接型標識アッセイ、固相直接型標識サンドイッチアッセイ(例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Press社(1988)を参照されたい);I−125標識を用いる固相直接型標識RIA(例えば、Morelら、Mol.Immunol.、第25巻、第1号、7ページ(1988)を参照されたい);固相直接型ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheungら、Virology、第176巻、546ページ(1990));および直接型標識RIA(例えば、Moldenhauerら、Scand.J.Imrnunol、第32巻、77ページ(1990))など、多くの種類の競合的結合アッセイが知られている。このようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原またはこれらのいずれかを保有する細胞、非標識被験免疫グロブリン、および標識基準免疫グロブリンの使用を含むことが典型的である。競合的阻害は、被験免疫グロブリンの存在下において、固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、被験免疫グロブリンは、過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは、共通抗原に対する基準抗体の特異的な結合を、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%またはそれ以上阻害する。
【0063】
エピトープはまた、免疫細胞、例えば、B細胞および/またはT細胞によっても認識される。細胞によるエピトープの認識は、
3H−チミジン取込みによるか、サイトカイン分泌によるか、抗体分泌によるか、または抗原依存性傷害作用(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ)により決定される、抗原依存性増殖を測定するin vitroアッセイにより決定することができる。
【0064】
例示的なエピトープまたは抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内で見出すことができるが、APPのAβペプチド内で見出すことが好ましい。例えば、APP
695、APP
751、およびAPP
770など、複数のAPPアイソフォームが存在する。APP内のアミノ酸には、APP
770アイソフォームの配列による番号が割り当てられている(例えば、GenBank受託番号P05067を参照されたい)。Aβペプチドの配列およびAPP前駆体に対するこれらの関係は、Hardyら、TINS、第20巻、151〜158ページ(1997)に記載の
図1により説明されている。例えば、Aβ42は、配列:
【化1】
を有する。
【0065】
文脈から別段に明らかでない限り、Aβへの言及はまた、上記配列の天然の対立遺伝子変異体、特に、北極変異、E693G、APP 770番号付けなど、遺伝疾患と関連する変異体も含む。Aβ41、Aβ40、およびAβ39は、C末端からの、それぞれ、Ala、Ala−Ile、およびAla−Ile−Valの脱落によりAβ42とは異なる。Aβ43は、C末端におけるスレオニン残基の存在によりAβ42とは異なる。本明細書で説明される好ましいエピトープまたは抗原決定基はAβペプチドのN末端内に位置し、Aβのアミノ酸1〜11内にある残基を含み、好ましくは、Aβ42の残基1〜10、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、または3〜7に由来する。さらなる好ましいエピトープまたは抗原決定基は、Aβの残基2〜4、5、6、7、もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8、もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9、もしくは10を含む。他の好ましいエピトープは、下記で説明される中央領域またはC末端領域内において生じる。
【0066】
AβのN末端エピトープとは、残基1〜11を有するエピトープを意味する。C末端領域内のエピトープとは、残基29〜43内のエピトープを意味し、中央領域内のエピトープとは、残基12〜28を有するエピトープを意味する。
【0067】
「可溶性」Aβまたは「解離」Aβとは、非凝集Aβポリペプチドまたは分散Aβポリペプチドを指す。
【0068】
「不溶性」Aβとは、凝集Aβポリペプチド、例えば、非共有結合により一体にまとまったAβを指す。Aβ(例えば、Aβ42)は、該ペプチドのC末端(APPの膜貫通ドメインの一部)における疎水性残基の存在により、少なくとも部分的に凝集すると考えられる。可溶性Aβを調製する1つの方法は、凍結乾燥したペプチドを、超音波処理により純粋DMSO中で溶解させることである。結果として得られる溶液を遠心分離して、不溶性粒子を取り出す。
【0069】
「Fc領域」という用語は、IgG抗体のC末端領域、特に、前記IgG抗体の(1つまたは複数の)重鎖のC末端領域を指す。IgG重鎖Fc領域の境界部は若干変化しうるが、Fc領域は、(1つまたは複数の)IgG重鎖のほぼアミノ酸残基Cys226〜カルボキシル末端の範囲にわたるものとして定義することが典型的である。
【0070】
「エフェクター機能」という用語は、抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域内に存在する活性を指し、例えば、エフェクター細胞活性、溶解、補体媒介活性、抗体クリアランス、および抗体半減期など、抗体の複数の免疫機能を制御しうる補体および/またはFc受容体などのエフェクター分子に結合する抗体の能力を含む活性を含む。エフェクター機能はまた、ヒンジ領域内の変異による影響を受けることがある。
【0071】
「エフェクター分子」という用語は、補体タンパク質またはFc受容体を含む、抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合することが可能な分子を指す。
【0072】
「エフェクター細胞」という用語は、典型的には、リンパ球、例えば、抗原提示細胞およびT細胞を含むがこれらに限定されないエフェクター細胞表面上に発現されるFc受容体を介して、抗体(例えば、IgG抗体)のFc部分に結合することが可能な細胞を指す。
【0073】
別段に言明しない限り、「Kabat番号付け」という用語は、参照により本明細書に組み込まれる、Kabatら(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、公衆衛生局、米国立衛生研究所、Bethesda,Md.(1991))における残基の番号付けとして定義される。
【0074】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体としては、FcγRIサブクラス、FcγRIIサブクラス、およびFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられるがこれらに限定されず、これらの受容体の対立遺伝子変異体、またオルタナティブスプライシング形態も挙げられる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol、第9巻、457〜92ページ(1991);Capelら、Immunomethods、第4巻、25〜34ページ(1994);およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.、第126巻、330〜41ページ(1995)において総説されている。
【0075】
「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与されると、抗原に対する免疫反応を上昇させ、かつ/またはその方向を変化させるが、単独で投与されると、抗原に対する免疫反応を発生させない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球の動員、B細胞および/またはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を含む複数の機構により、免疫反応を上昇させる。
【0076】
曲線下面積(AUC)とは、時間に対する血漿中薬剤濃度プロットにおける曲線下面積である。個々の患者の場合、曲線下面積は、該患者に基づく曲線下面積を表す。患者集団の場合、曲線下面積は、該集団内における異なる患者に対する、同等な時間間隔にわたる曲線下の平均面積を表す。
【0077】
個々の患者における平均血清濃度とは、ある時間経過にわたる抗体(または活性作用物質に対して誘導された抗体)の平均濃度を表す。患者集団における平均血清濃度とは、同等の時間経過にわたる、個々の患者の平均血清濃度の平均を表す。
【0078】
個々の患者における最大血清濃度とは、治療経過時における抗体(または活性作用物質に対して誘導された抗体)の最大濃度を表す。個体集団における最大血清濃度とは、集団内の個体間における抗体または誘導された抗体の最大濃度の平均を表す。
【0079】
縮約のため、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者を指すのに「ApoE4保有者」という用語を用いることがあり、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者を指すのに「ApoE4非保有者(noncarrier)」、「ApoE4非保有者(non-carrier)」、または「非ApoE4保有者」という用語を用いることがある。
【0080】
発明の詳細な説明
I.全般
本発明は、患者に施されるレジメが、該患者のApoE遺伝子型に依存する、アルツハイマー病および類似の疾患に対する免疫療法を提供する。該方法は、部分的に、(1)特定の免疫療法レジメにより、ApoE4対立遺伝子(E4)を有する患者においては、E4対立遺伝子を欠く患者におけるよりも、血管原性浮腫(VE)のより高い発生率がもたらされ、2個のE4対立遺伝子を有する患者においてはさらに高頻度であるという観察、および/または(2)ApoE4非保有患者と比較したApoE4保有患者、または6回未満の投与を受ける患者と比較した、少なくとも6回の投与を受ける患者における有効性の差についての初期の観察に基づく。結果はまた、血管原性浮腫の症例頻度が、投与頻度および用量とともに上昇することも示す。
【0081】
本発明の実施は機構の理解に依存するものではないが、血管原性浮腫のApoE4遺伝子型との関連はAβ沈着物のより多量の沈着から生じ、このため、抗体が該沈着物に結合するときの、より高度の除去反応の誘導から生じうると仮定される。アミロイド沈着物の除去は、複数の機構のいずれかまたはすべてにより、血管原性浮腫をもたらしうる。血管壁からのアミロイド(血管アミロイド)の除去により、血管の漏えいが引き起こされることがあり、血管周囲腔内のアミロイドの増大により、間質液の排出が遅くなることがあり、かつ/または血管内区画から脳実質へのアミロイド流の増大により、浸透圧勾配がもたらされることがある。血管原性浮腫効果は通常、無症候性かつ可逆性であり、さらなる治療を妨げるものではないが、それでもなお、血管原性浮腫発生の危険性を軽減するように治療レジメを調整することが望ましい。
【0082】
本発明は、こうして、患者のApoE状態に応じて、例えば、食作用反応を調整するように、免疫療法レジメを変化させる方法を提供する。食作用反応はアミロイド沈着物の除去において有用であるが、該反応を場合よって制御して、血管原性浮腫を回避することができる。一般に、血管原性浮腫に最も感受性である、2個のE4対立遺伝子を有する患者には、0個のE4対立遺伝子を有する患者と同じ作用物質をより低い用量もしくはより低い頻度で投与するか、または食作用反応を誘導する傾向がより低い異なる作用物質を投与するか、または、例えば、皮下投与など、代替的な投与方式により該作用物質を投与する。1個のE4対立遺伝子を有する患者は、0または2個のE4対立遺伝子を有する患者と同様に治療することもでき、用量および/または投与頻度が、0または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者に投与される場合の中間となるように治療をカスタマイズすることもできる。
【0083】
II.APOE
ヒトApoEは、UniProtKB/Swiss−Protの登録受託番号P02649を有する。E2変異体、E3変異体、およびE4変異体は、Genomics、第3巻、373〜379ページ(1988);J.Biol.Chem.、第259巻、5495〜5499ページ(1984);およびProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、第82巻、3445〜3449ページ(1985)で説明されている。E4形態の遅発性アルツハイマー病との関連は、例えば、Corder、Science、第261巻、921〜3ページ(1993);Farrer、JAMA、第278巻、1349〜56ページ(1997);およびSaunders、Neurology、第43巻、1467〜72ページ(1993)により報告されている。任意の個体に存在する対立遺伝子形態は、直接的な配列決定、GeneChip(登録商標)アレイなどの使用、対立遺伝子特異的なプローブ、単一塩基伸長法、対立遺伝子特異的な伸長など、従来の多くの技法により決定することができる。対立遺伝子形態はまた、異なる対立遺伝子発現産物に特異的な抗体を用いるELISAにより、タンパク質レベルで決定することができる。遺伝子解析および免疫学的解析用のキットが市販されている(例えば、Innogenetics社製;Graceful Earth社製)。対立遺伝子形態の決定は通常、in vitro、すなわち、採取されて患者には戻されない試料上でなされる。
【0084】
III.ApoEに応じて異なる治療またはモニタリングの戦略
A.異なる治療レジメ
アルツハイマー病および他の疾患に対する免疫療法のための一部の免疫療法レジメは、一部の患者の脳内における血管原性浮腫(VE)と関連している。一般に、VEの発生率は、患者のApoE4非保有者におけるよりもApoE4保有者においてより高く、特定の免疫療法レジメにおける特定の作用物質のより高用量が投与される患者においてより高い。VEは、磁気共鳴造影(MRI)において、大脳の異常および大脳回腫脹を伴う液体減衰反転回復(FLAIR)シークエンスにおける高シグナル強度として観察されている。VEは、一般に、免疫療法剤の1回目または2回目の投与後に観察されるが、3回目または4回目の投与後にも観察されている。MRIで発見された大半のVE患者は、無症状である。VEは、症状が異種性であり、特定の患者におけるMRI所見も経時的に変化しうる。大脳回腫脹、また、ある程度までFLAIRにおいて見られるより大規模な磁気共鳴(MR)変化により、VEは、正常な老齢患者およびアルツハイマー病患者のいずれのFLAIRにおいても見られる、通常観察される白質の変化から差別化される(Hentschelら、2005;de Leeuwら、2001)。
【0085】
血管原性浮腫(VE)は、血清の高分子タンパク質(例えば、アルブミン)に対する、脳内毛細血管内皮細胞の透過性上昇による細胞外液量の増大によって特徴付けられる。VEは、脳内毛細血管の透過性上昇の結果でありうる。それが存在する場合、VE患者において観察される臨床症状にはばらつきがあり、現在のところ、大半は軽度の性格である。定期的に行われるMRIにおいて観察されるVE症例のうち、大半の患者は無症状である。VEの有症性症例と関連する臨床観察としては、精神状態の変化(例えば、錯乱、傾眠、失見当、および幻覚の増大)、嘔吐、頭痛、歩行困難、視覚障害、疲労、易興奮性、運動失調、食欲減退、および下痢が挙げられている。
【0086】
上記にまとめた通り、本発明は、患者が有するE4対立遺伝子が0、1、または2個のいずれであるかに応じて異なる治療レジメを提供する。こうして、治療される個体集団において、0個のE4対立遺伝子を有する個体を、2個の対立遺伝子を有する個体と異なる形で治療することが可能である。1個のE4対立遺伝子を有する個体は、0または2個のE4対立遺伝子を有する個体とは異なる形(中間的な形)で治療することもでき、後続する任意のレジメにおいて、0または2個のE4対立遺伝子を有する個体とともに群別することもできる。したがって、1個のE4対立遺伝子を有する個体は、0個の対立遺伝子を有する個体と異なる形で治療することができ、かつ/または2個のApoE4対立遺伝子を有する個体は、1個のApoE4対立遺伝子を有する個体とは異なる形で治療することができる。一部の免疫療法剤による進行中の実験により、5mg/kgを超える用量ではVEがより起こりやすいことが示唆されている(PCT/US07/09499を参照されたい)。
【0087】
一部の方法では、ApoE4状態が、異なる患者において異なる治療レジメを決定する唯一の遺伝子マーカーである。他の方法において、異なる治療レジメは、アルツハイマー病に対する感受性または抵抗性と関連する他の遺伝子マーカーと組み合わせたApoE4に基づくことがある。
【0088】
治療される個体の集団が、場合によって、十分な患者総数と、ApoE4対立遺伝子数の異なる十分な部分集団数とを有することで、異なるレジメの無作為的な割り当てに関して、異なる治療レジメと異なるApoE4対立遺伝子との間の関連を、少なくとも95%の統計学的信頼性を伴う形で見ることができる。例えば、治療される集団は、そのうちの10〜70%、また、より典型的には30〜50%が少なくとも1個のApoE4対立遺伝子を有する、少なくとも100、500、または1000例の個体からなることが可能である。治療される集団はまた(すなわち、場合によって)、特定の製造元により製造される特定の薬剤により治療される総集団として認識されうる。
【0089】
以下でより詳細に論じられる通り、一部の方法において、0個のApoE4対立遺伝子を有する個体には、例えば、認知測定値(例えば、ADAS−cog、NTB、DAD、MMSE、CDR−SB、NPI)、バイオマーカー(例えば、CSFタウ)、および脳容量(例えば、BBSI、VBSI)のほか、例えば、望ましい安全性、薬物動態、および薬力学などの他のパラメータなど、1つまたは複数の臨床評価項目から評価される有効性を達成するように設計されるレジメにおいて、作用物質を投与する。一部の方法において、1または2個のE4対立遺伝子は、0個のE4対立遺伝子を有する個体と同じ作用物質を、用量および/または頻度を低下させて投与される。このような方法の目標は、ある期間にわたる平均血清濃度を低下させて(曲線下面積を減少させて)該作用物質を送達すること、および/または該最大ピーク濃度を低下させることである。これは、例えば、用量を低下させて同じ頻度で投与するか、または頻度を低下させて同じ用量で投与するか、または用量および頻度を低下させて投与することにより達成することができる。用量を低下させるが頻度は一定に保つ場合、用量は通常、10〜90%、しばしば、約30〜75または40〜60%に低下させる。頻度を低下させるが用量は一定に保つ場合、頻度は、1/2〜1/5倍に低下させることが典型的である。頻度は、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者に施されるレジメから投与何回分か、または投与を2回連続で省くことだけで低下させることもある。このような投与は、例えば、患者が血管原性浮腫に罹っている期間において省くことができる。
【0090】
他の方法において、1または2個のE4対立遺伝子を有する個体には、0個のE4対立遺伝子を有する個体と比べて、用量は低下させ、頻度は上昇させて該作用物質を投与する。例えば、用量は半減させ、頻度は倍増させることができる。このような方法において、ある期間にわたる2つの部分集団に対して送達される総薬剤量(すなわち、曲線下面積)は実験誤差内において同じでありうるが、最大血漿濃度は2個のE4対立遺伝子を有する個体においてより低くなる。例えば、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者において、抗体の最大血清濃度は14μg/ml未満であることが好ましく、0個の対立遺伝子を有する患者の場合、抗体の最大血清濃度は、28μg/ml未満であることが好ましい。
【0091】
他の方法において、治療は、ApoE4状態に応じて、疾患進行に関する異なる段階において投与される。このような方法では、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2個のApoE4対立遺伝子を有する患者、または0個のApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1個のApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または1個のApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2個のApoE4対立遺伝子を有する患者において、治療がより早期に施される。疾患の進行は、例えば、MMSEスケールにより測定することができ、このスケールにおいては、27〜20のスコアが正常と考えられ、20〜26のスコアが軽度のアルツハイマー病と考えられる。こうして、例えば、治療開始時点における非ApoE4保有者の平均MMSEスコアは、ApoE4保有者(1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者)よりも高いことがある。場合によって、ApoE4保有者の治療は、臨床症状が明らかとなる前に、予防的に開始することができる。このような患者は、ApoE4状態について集団をスクリーニングすることにより同定することができる。患者がアルツハイマー病発生の危険性が高くなる特定の年齢(例えば、55、60、または65歳)に達すると、このような状態の検出時またはそれ以降、治療を開始することができる。機構の理解はこのような方法の実施に必要とされないが、ApoE4対立遺伝子は神経損傷の修復能を低下させ、かつ/またはこのような患者においてはAβの沈着がより多量となるので、ApoE4保有者の早期治療は有益でありうると考えられる。
【0092】
一部の方法において、治療は、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者、および1個のApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者において、異なる経路により投与される。例えば、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者において、治療は静脈内で投与することができ、1または2個の対立遺伝子を有する患者においては皮下で投与することができる。ApoE4保有患者と比べて、このような非ApoE4保有患者においては、用量を上昇させ、かつ/または投与頻度を低下させることが典型的である。
【0093】
一部の方法において、治療に対する肯定的反応(すなわち、認知低下の阻害または脳容量の減少の阻害)の進行は、ApoE4非保有者よりもApoE4保有者においてより長い時間がかかる。より長い時間は、このような患者における神経修復能の低下および/もしくはアミロイド蓄積の増大、ならびに/またはより低い効力の治療レジメの使用を反映しうる。このような方法では、効果の欠如のために治療を停止する前に、少なくとも1年間、また、場合によって、少なくとも2、3、または4年間にわたり治療を施すことができる。一部の方法において、治療は、3カ月ごとに少なくとも6回にわたり投与される。
【0094】
注意した通り、作用物質は、ApoE4保有者における使用を禁忌する表示とともに供給される場合がある。このような作用物質は、非ApoE4保有者だけに本発明の作用物質(すなわち、Aβに結合する抗体またはこのような抗体を誘導する作用物質)を投与する治療の方法において用いることができる。このような方法において、ApoE4保有者は、Aβに結合する抗体またはこのような抗体を誘導する作用物質を投与されないが、メマンチンなど、他の治療を受け得る。
【0095】
ApoE4に応じて用量および/または投与頻度を低下させる方法は、アミロイド沈着物に対する除去反応を開始する作用物質に最も有用である。一般に、このような作用物質は、Aβ1〜11内のエピトープに結合し、Fc領域を有する抗体であるか、またはこのような抗体を誘導するAβの断片(すなわち、Aβ1〜11内のエピトープを含有する)に結合する抗体である。Aβの中央領域またはC末端領域内のエピトープに結合する抗体は通常、アミロイド沈着物ではなく、Aβの可溶形態に優位に結合し、こうして、アミロイド沈着物、特に稠密なものまたは血管性の沈着物に対する除去反応を、それが存在する場合でも、わずかしか開始しない。
【0096】
投与に適する用量範囲および頻度の例を以下に記載する。異なるE4状態を有する患者に応じて異なる用量および/または投与頻度は、このような用量範囲および頻度のうちから選択することができる。例えば、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者には、13週間ごとに、静脈内注入により0.1〜1mg/kgの用量の抗体を投与することができ、0個のE4対立遺伝子を有する患者には、13週間ごとに、1〜2mg/kgの用量の抗体を投与することができる。場合によって、2個のE4対立遺伝子を有する患者には13週間ごとに、0.15〜0.5mg/kgの用量を投与し、1個のE4対立遺伝子を有する患者には0.15〜1mg/kg(例えば、0.5〜1mg/kg)の用量を投与し、0個のE4対立遺伝子を有する患者には、0.15〜2mg/kg(例えば、1〜2mg/kg)の用量を投与する。好ましいレジメにおいて、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者には、Aβの残基1〜11内のエピトープに結合する0.5mg/kgの用量の抗体(例えば、バピネオズマブ)を投与し、0個のE4対立遺伝子を有する患者には2mg/kgの用量を投与する。該用量は、血管原性浮腫が発生するまで(それが発生する場合)は、3カ月ごとの間隔で静脈内投与される。血管原性浮腫が発生した後は、次回の投与を省き、以後、患者は、0.15mg/kgのより低い用量での3カ月ごとの投与スケジュールに戻る。血管原性浮腫が再発する場合は、治療を終結させることができる。0個のE4対立遺伝子を有する患者には0.5〜2mg/kgの用量を投与するが、0個のE4対立遺伝子を有する個々の患者には、場合によって、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、および2.0mg/kgの用量を投与する。
【0097】
別の例として述べると、2個のE4対立遺伝子を有する患者には、1回目の用量0.5mg/kgおよび後続の用量1mg/kgを投与する。代替的に、2個のE4対立遺伝子を有する患者には、1回目の用量0.5mg/kg、2および3回目の用量1mg/kg、ならびに後続の用量2.0mg/kgを投与する。
【0098】
別の例として述べると、0個のE4対立遺伝子を有する患者には、0.015〜0.2mg/kgの用量の抗体を、毎週1回皮下投与することができ、2個のE4対立遺伝子を有する患者には、同じ用量を隔週で投与することができる。投与の量または頻度または経路を変化させることにより、上記のいずれかと同等のレジメを考案して、同じ曲線下面積(すなわち、時間について積分された平均用量)の抗体を血清に送達することができる。
【0099】
一部の方法において、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者には、ある期間にわたり、0個のE4対立遺伝子を有する患者よりも低い抗体の平均血清濃度を達成するように作用物質を投与する。より低い平均血清濃度は、少なくとも1または3カ月間、また通常3カ月〜1年間、または無期限にわたり維持される。このような患者すべての平均血清濃度は抗体2〜7μg/ml血清の範囲内にあり、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者に対する濃度が、0個のE4対立遺伝子を有する患者に対する濃度よりも低いことが好ましい。例えば、0個のE4対立遺伝子を有する患者には、抗体4.5〜7μg/mlの範囲にある抗体の平均血清濃度を達成するように投与することができ、1または2個のE4対立遺伝子を有する患者には、抗体2〜4.5μg/mlの範囲にある平均血清濃度を達成するように作用物質を投与することができる。
【0100】
このような方法において、2、1、または0個のE4対立遺伝子の存在により定義される、任意の部分集団内の個体には通常、同じレジメを投与する。しかし、該レジメはまた、部分集団内の個体に応じてカスタマイズすることもできる。この場合、作用物質または該作用物質により誘導される抗体の平均用量、および/または頻度、および/または平均血清濃度、および/または最大濃度は、0個のE4対立遺伝子を有する個体の場合よりも、2個のE4対立遺伝子を有する個体の部分集団において低い。
【0101】
一部の方法では、2個のE4対立遺伝子を有する個体に対し、0個のE4対立遺伝子を有する個体に対する場合とは異なる作用物質を投与する。該異なる作用物質は通常、アミロイド沈着物(すなわち、既存の沈着物)に対する除去反応を誘導するそれらの能力において異なる。このような能力は、例えば、US6,750,324により説明されるex vivoの除去アッセイにおいて調べることができる。略述すると、抗体およびミクログリア細胞を、アルツハイマー病患者またはトランスジェニックマウスモデルに由来するアミロイド沈着物とともにインキュベートし、Aβに対する標識抗体を用いて除去反応をモニタリングする。活性作用物質の除去能は、該活性作用物質により誘導される血清を該アッセイ用の抗体供給源として用いても同様に調べることができる。不活性作用物質および活性作用物質両方の除去能はまた、US6,750,324でも説明される通り、トランスジェニックマウスモデルにおいても評価することができ、MRIモニタリングによりヒト患者においても評価することができる。場合によって、除去反応は、凝縮したアミロイド沈着物と拡散したアミロイド沈着物とを識別するアッセイにおいて測定される。一部の抗体の除去能の差は、凝縮したアミロイド沈着物に対する除去能に関して比較がなされる場合においてより明らかであるか、または該場合に限り明らかである。場合によって、除去反応は、変異以外は同一なアイソタイプ適合抗体と比べた、変異抗体による血管アミロイド除去の低下から評価される。血管アミロイド除去は、変異抗体と、変異を伴わない以外は同一なアイソタイプ適合抗体とにより治療された、動物モデル集団またはヒト患者集団の間における統計学的な有意差により評価することができる。
【0102】
除去反応を測定するアッセイに加えて、またはこれに対して代替的に、本発明の方法での使用に適する一部の抗体は、C1qおよび/または(1つまたは複数の)Fcγ受容体に対する結合の低下により認識することができる。C1qおよび/またはFcγ受容体に結合する能力は、下記でより詳細に論じられる通り、重鎖のヒンジ領域近傍における変異により低下する場合がある。能力の低下は、例えば、変異抗体と、該変異抗体内に存在する(1つまたは複数の)変異を欠く以外は同一なアイソタイプ適合抗体(すなわち、野生型のヒト定常領域に由来する残基を有する(例えば、バピネオズマブ対AAB−003))とを比較することによるか、または異なるアイソタイプを有する以外は同一の抗体(例えば、ヒトIgG1対ヒトIgG4)を比較することにより決定することができる。
【0103】
C1qおよび/または(1つまたは複数の)Fcγ受容体に結合する能力を低下させた一部の抗体は、アイソタイプ適合対照と比べて微小出血を低下させるが、認知低下の阻害および/またはアミロイド沈着物の除去における少なくとも一部の活性を保持する。一部の抗体において、アミロイド除去能の低下は、主に、血管アミロイドおよび/または凝縮したアミロイド沈着物に対する除去能の低下と関連し、拡散したアミロイド沈着物とは関連しない。このような抗体は、特に、ApoE4保有者において用いる場合に、強力に改善された有効性:副作用プロファイルをもたらす。
【0104】
C1qおよび/またはFcγ受容体に対する結合を低下させた抗体は、上記で説明した差別的な治療法において用いることができる。例えば、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者には、C1qおよび/またはFcγ受容体に対する結合を低下させた抗体を投与することができ、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者には、(1つまたは複数の)変異を伴わない以外は同一の抗体を投与することができる。代替的に、ApoE4対立遺伝子の数に関わりなく、C1qおよび/またはFcγ受容体に対する結合を低下させた抗体を患者に投与することができる。
【0105】
定常領域が変異して、C1qおよび/またはFcγ受容体に対する結合を低下させた抗体は、変異を伴わない以外は同一の抗体よりも高用量で投与されることがある。一部のこのような抗体の場合、用量を上方に調整して、副作用を軽減しながらも、同等の治療効果を達成することができる。
【0106】
除去能は、抗体(または、能動投与用の断片により誘導される抗体)のエピトープ特異性によるとともに、該抗体のエフェクター機能の存在およびその種類によっても、特に、Fcγ受容体に結合するFc領域が存在する場合はその能力によっても影響される。アミロイド沈着物の除去は有用な作用機構の1つではあるが、沈着物を除去する能力を欠く作用物質も、可溶性Aβおよび/またはAβの可溶性オリゴマー形態に対する結合など、他の機構によって有用でありうる。他の可能な機構の中でも、このような結合は、このような分子種の毒性を軽減し、かつ/またはそれらの凝集による沈着物の形成を阻害することが可能である。
【0107】
このような除去反応を誘導する傾向を有する作用物質としては、Aβの残基1〜11、また、特に1〜7内のエピトープに結合する抗体、特に、Fcγ受容体と最も強力に相互作用する、ヒトIgG1アイソタイプを有する抗体が挙げられる。残基1〜11、また、特に1〜7内のエピトープを含有するAβの断片は、除去反応の誘導において同様に有効である。場合によって、除去反応を誘発する作用物質は、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者に対する使用を禁忌する表示とともに供給される場合がある。除去反応を誘導する傾向がより低いか、または同傾向をまったく有さない作用物質としては、Aβに対するヒトIgG1以外のアイソタイプを有する抗体、Fc領域を欠く抗体(例えば、Fab断片、Fv断片、またはナノボディ)、または遺伝子操作によりFc領域が変異してFcγ受容体との相互作用を低下させた抗体が挙げられる。このような作用物質としてはまた、Aβの残基1〜11以外の領域内のエピトープに特異的に結合する抗体(すなわち、上記で説明した中央部エピトープまたはC末端エピトープ)、およびアミロイド沈着物に結合することなく、Aβの可溶形態またはオリゴマー形態に特異的に結合する抗体も挙げられる。このような作用物質としてはまた、Aβの残基1〜11内のエピトープを欠くAβ断片も挙げられる。このような方法において、2個のE4対立遺伝子を有する個体には、0個の対立遺伝子を有する個体よりも、食作用性の除去反応を誘導する傾向が低い作用物質を投与する。例えば、0個のE4対立遺伝子を有する個体には、Aβの残基1〜11内のエピトープに結合し、ヒトIgG1アイソタイプを有する抗体を投与することができ、2個のE4対立遺伝子を有する個体には、Fab断片であるか、またはヒトIgG1以外のアイソタイプを有するか、またはFcγ受容体に対する結合を低下させるように操作されたFc領域を有することを除いて同じ抗体を投与することができる。2個のE4対立遺伝子を有する個体に投与される作用物質はまた、Aβの中央部エピトープまたはC末端エピトープに対する抗体でもありえ、中央領域またはC末端領域に由来する(すなわち、Aβ1〜11内に由来するエピトープを欠く)Aβ断片でもありうる。
【0108】
一部の方法において、2個のE4対立遺伝子を有する患者には、1回または複数回の初期投与に、中央領域またはC末端領域内のエピトープを有する抗体を投与し、後続の投与に、N末端領域内のエピトープを有する抗体を投与する。このような抗体は、ヒト化266抗体、ヒト化2H6抗体、脱グリコシル化されたヒト化2H6抗体、またはRN1219でありうる。このような抗体はまた、Aβ28〜40またはAβ33〜40内のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体でもありうる。初期投与は、1、2、または3回の投与からなることが好ましい。0個の対立遺伝子を有する患者には、N末端領域内のエピトープを有する抗体を投与することができる。
【0109】
そのE4状態に応じて異なる患者に施される異なるレジメは、無期限に持続できる。しかし、このようなことは通常必要でない。E4対立遺伝子と関連する血管原性浮腫の副作用は通常、仮に発生する場合は、3回目の投与までに発生することが分かっている。こうして、患者が約2〜3回の治療を受けると、1または2個のApoE4対立遺伝子を有し、血管原性浮腫を発生させていない患者は、おそらくそれを発生させることがなく、以後、所望の場合は、0個のE4対立遺伝子を有する患者と同じレジメにより治療することができる。同様に、1または2個のApoE4対立遺伝子を有し、示差的な本治療レジメにもかかわらず血管原性浮腫を発生させる患者は通常、この状態を消散させ、以後、所望の場合は、0個のE4対立遺伝子を有する患者と同じ形態で治療することができる。場合によって、血管原性浮腫からの回復後は、該用量を非保有者に用いられる用量まで漸増させる。
【0110】
血管原性浮腫は、自然消散することが典型的である。しかし、所望の場合、コルチコステロイドの投与により、消散を促進することができる。
【0111】
上記の任意のレジメまたはこれらの組合せと一貫して、ApoE4状態に応じて示差的な治療手順を示す表示を伴う形で、作用物質を包装することができる。
【0112】
B.異なるモニタリングレジメ
代替的に、または加えて、本発明は、そのE4状態に応じて異なる、患者のモニタリングレジメを提供する。血管原性浮腫は、間質腔への血漿の漏出に由来する脳容量の増大である。溢出すると、体液は、血管外、大半は脳の白質内に保持される。血管原性浮腫は、脳内造影、特に、MRI、陽電子放射断層撮影(PET造影)、またはFLAIR(Fluid−Attenuated Inversion Recovery)シークエンス造影によりモニタリングすることができる(例えば、Pediatric Neurology、第20巻、第3号、241〜243ページ;AJNR、第26巻、825〜830ページ;NEJM、第334巻、第8号、494〜500ページ;Pediatr Nephrol、第18巻、1161〜1166ページ;Internal Medicine Journal、第35巻、83〜90ページ;JNNP、第68巻、790〜791ページ;AJNR、第23巻、1038〜1048ページ;Pak J Med Sci、第21巻、第2号、149〜154ページ;およびAJNR、第21巻、1199〜1209ページを参照されたい)。血管原性浮腫は、白質内における高シグナル強度を伴う。観察される血管原性浮腫は、無症状であることが多いが、また、頭痛、悪心、嘔吐、錯乱、発作、視覚障害、精神機能の変化、運動失調、前頭症状、頭頂症状、昏迷、および限局性神経兆候も伴うことがある。
【0113】
本方法によれば、2個のE4対立遺伝子を有する患者は、0個のE4対立遺伝子を有する患者よりも、脳内造影を受ける頻度が高いことがある。例えば、2コピーのE4を有する患者が治療の開始前および以後3カ月ごとに造影されうるのに対し、0個のE4対立遺伝子を有する患者は、治療の開始前および以後毎年または隔年で造影されうる。代替的に、0個のE4対立遺伝子を有する患者においては、脳内造影をすべて省くこともできる。1個のE4対立遺伝子を有する患者には、0個のE4対立遺伝子を有する患者と2個のE4対立遺伝子を有する患者との中間の頻度で造影することもでき、0個のE4対立遺伝子を有する患者または2個のE4対立遺伝子を有する患者とともに群別することもできる。したがって、1個のE4対立遺伝子を有する患者に対しては、0個のE4対立遺伝子を有する患者とは異なる形で(例えば、より高い頻度で)モニタリングすることができ、2個のE4対立遺伝子を有する患者に対しては、1個のE4対立遺伝子を有する患者とは異なる形で(例えば、より高い頻度で)モニタリングすることができる。
【0114】
血管原性浮腫を発生させる患者において、モニタリングは、血管原性浮腫の期間において、また、症状が消散した後約1年間にわたって継続することができる。以後、神経学的所見が見られなければ、モニタリングの実施は、場合によって、6カ月ごとまたは毎年とすることができる。
【0115】
上記の任意のレジメまたはこれらの組合せと一貫する、ApoE4状態に応じて示差的な治療手順を示す表示を伴う形で、作用物質を包装することができる。
【0116】
C.普遍的な治療レジメまたはモニタリングレジメ
ApoE4の保有者とApoE4非保有者とは、上記で説明した治療に対して異なる反応を有しうるが、ApoE4保有者において安全かつ有効な一部の治療レジメはまた、必ずしも最適ではないが、非ApoE4保有者においても安全かつ有効であり、患者のApoE状態と関わりなく、いずれの種類の患者においても用いることができる。このような一部のレジメにおいて、作用物質は、AβのN末端エピトープに結合し、Fcγ受容体および/またはC1qに対する結合を低下させる(1つまたは複数の)変異をその定常領域内において有する抗体である。AAB−003は、このような抗体の例である。他のレジメにおいて、投与されるかまたは誘導される抗体の用量、および/または頻度、および/または最大血清濃度、および/または平均血清濃度を、PCT/US2007/009499において説明され、以下においてさらに要約される限度内に制約することで、血管原性浮腫の危険性を軽減する。
【0117】
IV.作用物質
A.抗体
アルツハイマー病の免疫療法において用いられる、Aβに対する各種の抗体が、特許および医学文献において説明されており、その一部は臨床試験中である(例えば、US6,750,324を参照されたい)。このような抗体は、上記で説明したN末端エピトープ、中央部(mid(すなわち、central))エピトープ、またはC末端エピトープに特異的に結合しうる。一部の抗体は、N末端特異的である(すなわち、そのような抗体はAPPに結合することなく、AβのN末端に特異的に結合する)。上記で説明した通り、Aβ42の残基1〜10、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、もしくは3〜7内にあるか、またはAβの残基2〜4、5、6、7、もしくは8内にあるか、またはAβの残基3〜5、6、7、8、もしくは9内にあるか、またはAβ42の残基4〜7、8、9、もしくは10内のエピトープに結合する抗体を用いることができる。一部の抗体は、C末端特異的である(すなわち、APPに結合することなく、AβのC末端に特異的に結合する)。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルでありうる。ポリクローナル血清は、APPの全長に沿って、複数のエピトープに特異的に結合する抗体の混合集団を含有することが典型的である。しかし、ポリクローナル血清は、Aβの他のセグメントに特異的に結合することなく、特定のAβセグメント(Aβ1〜11など)に特異的でありうる。好ましい抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(ベニヤ化抗体を含む)(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第86巻、10029〜10033ページ(1989);およびWO90/07861;US5,693,762;US5,693,761;US5,585,089;US5,530,101;およびWinter、US5,225,539を参照されたい)、またはヒト抗体(Lonbergら、WO93/12227(1993);US5,877,397;US5,874,299;US5,814,318;US5,789,650;US5,770,429;US5,661,016;US5,633,425;US5,625,126;US5,569,825;US5,545,806;Nature、第148巻、1547〜1553ページ(1994)、Nature Biotechnology、第14巻、826ページ(1996);Kucherlapati、WO91/10741(1991);EP1481008;Bleck、Bioprocessing Journal、第1巻(2005年9月/10月);US2004132066;US2005008625;WO04/072266;WO05/065348;WO05/069970;およびWO06/055778)である。
【0118】
3D6抗体、10D5、およびこれらの変異体が、用いうる抗体の例である。いずれも、US20030165496、US20040087777、WO02/46237、ならびにWO04/080419、WO02/088306、およびWO02/088307において説明されている。10D5抗体はまた、US20050142131においても説明されている。さらなる3D6抗体は、US20060198851およびPCT/US05/45614において説明されている。3D6は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基1〜5に位置するN末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)である。これに対して、10D5は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基3〜6に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。3D6モノクローナル抗体を生成する細胞株(RB96 3D6.32.2.4)は、ブダペスト条約の条項下において、2003年4月8日付けでAmerican Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VA 20108,USAに寄託され、受託番号PTA−5130がこれに割り当てられた。10D5モノクローナル抗体を生成する細胞株(RB44 10D5.19.21)は、ブダペスト条約の条項下において、2003年4月8日付けでATCCに寄託され、受託番号PTA−5129がこれに割り当てられた。
【0119】
バピネオズマブ(世界保健機関により命名された国際一般名)とは、配列番号2と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する軽鎖と、配列番号3と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する重鎖とを含むヒト化3D6抗体を意味する(WHOによりバピネオズマブと命名された抗体の重鎖および軽鎖の定常領域は、それぞれ、ヒトIgG1およびヒトκ鎖である)。可変領域および定常領域を含むヒト化軽鎖は、以下で配列番号48と称し、可変領域および定常領域を含むヒト化重鎖は、配列番号66または67(配列番号66は、配列番号67と比べて、追加のC末端リシンを有する)と称する。
【化2】
【0120】
配列番号4と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する軽鎖と、配列番号5と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する重鎖とを含むヒト化3D6抗体の第2のバージョンを以下に示す。
【化3】
【0121】
配列番号6と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号7と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化3D6抗体の第3のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、US7,318,923として公表され、2005年4月28日付で公開された、US2005/0090648A1において説明されている。
【化4-1】
【化4-2】
【0122】
配列番号8と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する軽鎖と、配列番号9と称するアミノ酸配列を有する成熟可変領域を有する重鎖とを含むヒト化10D5抗体のバージョンを以下に示す。
【化5】
【0123】
12A11またはそのキメラ形態もしくはヒト化形態もしくはナノボディは、好ましい抗体である。12A11抗体またはその変異体は、それらのすべてが、すべての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS20050118651、US20060198851、WO04/108895、およびWO06/066089において説明されている。
【0124】
12A11は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基3〜7に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。12A11モノクローナル抗体を生成する細胞株は、2005年12月12日付けでATCC(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209)に寄託され、ATCC受託番号PTA−7271がこれに割り当てられた。
【0125】
ヒト化12A11抗体の好ましいバージョンは、配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号11と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むバージョン1である。ヒト化12A11のバージョン1は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化6】
【0126】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号12(バージョン2)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第2のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化7】
【0127】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号13(バージョン2.1)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第3のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化8】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号14(バージョン3)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第4のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、WO02/088306において説明されている。
【化9】
【0128】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号15(バージョン4.1)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第5のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化10】
【0129】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号16(バージョン4.2)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第6のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化11】
【0130】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号17(バージョン4.3)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第7のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化12】
【0131】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号18(バージョン4.4)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第8のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化13】
【0132】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号19(バージョン5.1)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第9のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化14】
【0133】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号20(バージョン5.2)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第10のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化15】
【0134】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号21(バージョン5.3)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第11のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化16】
【0135】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号22(バージョン5.4)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第12のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化17】
【0136】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号23(バージョン5.5)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第13のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化18】
【0137】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号24(バージョン5.6)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第14のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化19】
【0138】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号25(バージョン6.1)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第15のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化20】
【0139】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号26(バージョン6.2)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第16のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化21】
【0140】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号27(バージョン6.3)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第17のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化22】
【0141】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号28(バージョン6.4)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第18のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化23】
【0142】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号29(バージョン7)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第19のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化24】
【0143】
配列番号10と称するアミノ酸配列を有する軽鎖と、配列番号30(バージョン8)と称するアミノ酸配列を有する重鎖とを含むヒト化12A11抗体の第20のバージョンは、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2005年6月2日付で公開された、US20050118651A1において説明されている。
【化25】
【0144】
他の例示的な抗体は、US20040082762A1およびWO03/077858において説明される12B4抗体またはその変異体を含む。12B4は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基3〜7に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。12B4の軽鎖(配列番号31)および重鎖(配列番号32)は、以下の可変領域(シグナル配列を含まない)を有する。
【化26】
【0145】
他の例示的な抗体は、US20060165682およびWO06/06604において説明される6C6抗体またはその変異体である。6C6は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基3〜7に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。抗体6C6を生成する細胞株は、ブダペスト条約の条項下において、2005年11月1日付けでATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−7200がこれに割り当てられた。
【0146】
他の例示的な抗体は、US20060257396において説明される2H3抗体およびその変異体である。2H3は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基2〜7に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。抗体2H3を生成する細胞株は、ブダペスト条約の条項下において、2005年12月13日付けでATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−7267がこれに割り当てられた。
【0147】
他の例示的な抗体は、US20060257396において説明される3A3およびその変異体を含む。3A3は、ヒトβ−アミロイドペプチド、特に、残基3〜7に位置するN末端エピトープに特異的に結合するmAbである。抗体3A3を生成する細胞株は、ブダペスト条約の条項下において、2005年12月13日付けでATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−7269がこれに割り当てられた。
【0148】
他の例示的な抗体は、2B1、1C2、または9G8である。抗体2B1、1C2、および9G8を生成する細胞株は、ブダペスト条約の条項下において、2005年11月1日付けでATCCに寄託され、それぞれ、ATCC受託番号PTA−7202、PTA−7199、およびPTA−7201がこれらに割り当てられた。
【0149】
別の例示的な抗体は、ヒト化266抗体またはその変異体である。該266抗体は、Aβの残基13〜28にあるエピトープに結合する。該266抗体を生成する細胞株は、ブダペスト条約の条項下において、2004年6月20日付けでATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6123がこれに割り当てられた。266抗体のヒト化形態は、US20040265308、US20040241164、WO03/016467、およびUS7,195,761において説明されている。該266抗体の軽鎖(配列番号33)および重鎖(配列番号34)は、以下の可変領域配列(シグナル配列を含まない)を有する。
【化27】
[配列中、位置2におけるXaaはValまたはIleであり、位置7におけるXaaはSerまたはThrであり、位置14におけるXaaはThrまたはSerであり、位置15におけるXaaはLeuまたはProであり、位置30におけるXaaはIleまたはValであり、位置50におけるXaaはArg、Gln、またはLysであり、位置88におけるXaaはValまたはLeuであり、位置105におけるXaaはGlnまたはGlyであり、位置108におけるXaaはLysまたはArgであり、位置109におけるXaaはValまたはLeuである]、および
【化28】
[配列中、位置1におけるXaaはGluまたはGlnであり、位置7におけるXaaはSerまたはLeuであり、位置46におけるXaaはGlu、Val、Asp、またはSerであり、位置63におけるXaaはThr、またはSerであり、位置75におけるXaaはAla、Ser、Val、または、Thrであり、位置76におけるXaaはLysまたはArgであり、位置89におけるXaaはGluまたはAspであり、位置107におけるXaaはLeuまたはThrである。]
【0150】
例示的なヒト化266抗体は、以下の軽鎖配列(配列番号35)および重鎖配列(配列番号36)(シグナル配列を含まない)を含む。
【化29-1】
【化29-2】
【0151】
抗体はまた、Aβ15〜24内のエピトープに特異的に結合する、15C11またはそのヒト化形態(US20060165682を参照されたい)でもありうる。
【0152】
抗体はまた、20C2のヒト化形態またはその変異体でもありうる。このような抗体は、例えば、US2007081998において説明されている。20C2の線状コアエピトープは、Aβ1〜42のアミノ酸残基3〜8に対応し、Aβの残基17〜42内に由来するエレメントに依存する立体構造エピトープを伴う。ヒト化20C2抗体(バージョン1)の軽鎖(配列番号37)および重鎖(配列番号38)は、以下の可変領域配列(シグナル配列を含まない)を有する。
【化30】
【0153】
さらなるヒト化20C2抗体(バージョン2)は、配列番号37の軽鎖可変領域配列と、配列番号39の重鎖可変領域配列(シグナル配列を含まない)とを含む。
【化31】
【0154】
本発明により用いうる別の抗体は、C705またはその変異体であり、WO05/028511において説明される通り、これは、Aβペプチドのアミノ酸7〜12を含むエピトープに結合する。C705抗体は、配列番号40の軽鎖可変領域配列と、配列番号41の重鎖可変領域とを含み、シグナル配列には下線を付す。
【化32】
【0155】
本発明により用いうる別の抗体は、C706またはその変異体であり、WO05/028511において説明される通り、これは、Aβペプチドのアミノ酸6〜11を含むエピトープに結合する。C706抗体は、配列番号42の軽鎖可変領域配列と、配列番号43の重鎖可変領域配列とを含む。シグナル配列には下線を付す。
【化33】
【0156】
本発明により用いうる他の抗体は、ヒト化2286抗体およびその変異体を含む。US20070160616において説明される通り、これらの抗体は、Aβペプチドのアミノ酸28〜40を含むエピトープを認識する。ヒト化2286抗体(バージョン1)は、配列番号44の軽鎖可変領域と、配列番号45の重鎖可変領域とを含む(シグナル配列を含まない)。
【化34】
【化35】
【0157】
ヒト化2286の別のバージョンは、配列番号44の軽鎖可変領域と、配列番号46の重鎖可変領域(シグナル配列を含まない)とを含む。
【化36】
【0158】
本発明により用いうる別の抗体は、それぞれ、US7,318,923および同7,320,790において開示される、ヒト化3D6の第4のバージョンおよびヒト化10D5の第2のバージョンである。上記で説明した通り、これらの抗体は、AβペプチドのN末端に結合する。ヒト化3D6(バージョン4)は、配列番号71の軽鎖可変領域配列と、配列番号72の重鎖可変領域配列とを含む。
【化37】
【0159】
ヒト化10D5抗体(バージョン2)は、配列番号73の軽鎖可変領域配列と、配列番号74の重鎖可変領域配列とを含む。
【化38】
【0160】
別の例示的な抗体は、WO07/113172において開示される、ヒト化2E7である。該2E7抗体は、Aβペプチドの残基1〜12に結合するが、該ペプチドの残基2〜13またはより長い変異体には結合しない。ヒト化2E7抗体(バージョン1)は、配列番号75の軽鎖可変領域配列と、配列番号76の重鎖可変領域配列とを含む。
【化39】
【0161】
ヒト化2E7抗体の第2のバージョンは、配列番号75の軽鎖可変領域と、配列番号77の重鎖可変領域配列とを含む(例えば、WO07/113172を参照されたい)。
【化40】
【0162】
ヒト化2E7抗体(バージョン3)は、配列番号75の軽鎖可変領域配列と、配列番号78の重鎖可変領域配列とを含む(例えば、WO07/113172を参照されたい)。
【化41】
【0163】
本発明により用いうるさらなる抗体は、WO06/036291において説明される通り、ヒト化9TL抗体(ATCC受託番号PTA−6124およびPTA−6125)を含む。シグナル配列なしの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、それぞれ、配列番号79および配列番号80として示す。
【化42】
【0164】
本発明により、6G抗体のヒト化バージョンもまた用いることができる。シグナル配列なしの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、それぞれ、配列番号81および82として示す。
【化43】
【0165】
本発明により用いうるさらなる抗体は、WO06/081171において説明される通り、2.1抗体のヒト化バージョンである。これらの抗体は、マウス2.1抗体のCDRと、ヒトVKII A19/JK4軽鎖可変フレームワーク領域に由来する置換残基とに依拠する。置換に用いられる重鎖可変フレームワーク領域は、おおよそVH2−70に基づく。例示的なヒト化2.1抗体は、それぞれ、配列番号83および配列番号84として示される、シグナル配列なしの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【化44】
【0166】
本発明により用いうる他の抗体としては、CW1181抗体およびCW1185抗体が挙げられる。これらの抗体は、WO03/070760およびUS20050196399において説明される通り、Aβペプチドの2つの領域に特異的に結合する。第1の領域は、AEFRHDSGY(配列番号85)またはその断片(例えば、AEFRHD(配列番号86)またはEFRHDSG(配列番号87)、EFRHD(配列番号88))を含み、第2の領域は、アミノ酸配列YEVHHQKLVFFAEDVG(配列番号89)またはその断片(例えば、VFFA(配列番号90)またはQKLFFAEDV(配列番号91))を含む。
【0167】
本発明により用いうるさらなる抗体は、NAB61モノクローナル抗体である。WO07/062088において開示される通り、NAB61は、Aβ1〜11に結合するが、全長APPまたはC99には結合しない。同様に、本発明により、82E1モノクローナル抗体を用いることができる。US20080025988において開示される通り、82E1は、AβペプチドのN末端に結合するが、全長APPには結合しない。
【0168】
本発明の他の抗体は、抗ADDL抗体である。このような抗体は、Aβの単量体またはアミロイド原線維には結合することなく、ADDLに特異的に結合する能力のために作製および選択されている。例えば、WO04/031400を参照されたい。
【0169】
用いうる他の抗体としては、以下が挙げられる:(i)抗体触媒ABP 102(Abiogen Pharma社製、Abzyme);(ii)ACI−01 Ab7 C2(AC Immune Genentech社製);(iii)AZD−3102(AstraZeneca社/Dyax社製);(iv)IVIg(Baxter Bioscience社製、Gammagard S/D Immune Globulin Intravenous(ヒト));(v)BAN 2401(BioArctic Neuroscience AB社/エーザイ株式会社製);(vi)R1450(Hoffman−La Roche社/MorphoSys社製);(vii)LY2062430(Eli Lilly社製);(viii)h3D6(Eli Lilly社製);(ix)ACU−5A5(Merck社/Acumen社製のα ADDL mAb)、α−アミロイドスフェロイド(ASPD)抗体(田辺三菱製薬株式会社製);(xi)AN1792患者のPBMCに由来する抗体(Neurimmune Therapeutics AG社製);(xii)BC05(武田薬品工業株式会社製);(xiii)CEN701〜CEN706抗体(Centocor社/Johnson & Johnson社製);および(xiv)PF−04360365(RN−1219(h2286)とも呼ばれる、Pfizer社/Rinat Neurosciences社製)。本発明の方法のいずれによっても、これらの各抗体を用いることができる。
【0170】
例えば、US6,387,674およびWO99/06536において説明される通り、ABP 102抗体は、凝集したAβを切断する。ACI−01 Ab7 C2抗体は、残基10〜20の間におけるAβペプチドに結合し、US20070166311において説明されている。IVIg Gammagard SD Immune Globulin抗体は、例えば、Baxter.comにおけるBaxter Bioscience社のウェブサイト上で説明されている。BAN 2401抗体は、Aβプロトフィブリルに結合するヒト化抗体であり、例えば、WO05/123775において説明されている。ヒトR−1450 HuCAL抗体は、266/3D6二重エピトープを有する。ヒト化LY2062430抗体(IgG)は、残基16〜23の間におけるAβペプチドに結合し、例えば、米国特許第7,195,761号において説明されている。ヒト化h3D6抗体は、残基1〜5においてAβペプチドに結合し、例えば、米国特許第7,318,923号において説明されている。BC05抗体は、Asami−Odakaら(2005)、Neurodegenerative Diseases、第2巻、36〜43ページにより説明される通り、C末端のAβエピトープに結合する。CEN701〜CEN706抗体は、例えば、WO05/028511において説明されている。ヒト化PF−04360365抗体は、残基28〜40の間においてAβペプチドに結合し、例えば、WO04/032868において説明されている。
【0171】
本明細書で説明される抗体または抗体断片のいずれも、例えば、US20040038304、US20070020685、US200601660184、US20060134098、US20050255552、US20050130266、US2004025363、US20040038317、US20030157579、およびUS7,335,478において開示される標準的な方法を用いて設計または調製することが可能である。
【0172】
異なるアイソタイプまたは変異アイソタイプにより、上記で説明した抗体のいずれかを作製し、異なるFcγ受容体に対する結合の程度を制御することができる。Fc領域(例えば、Fab断片)を欠く抗体は、Fcγ受容体に対する結合を欠く。アイソタイプの選択はまた、Fcγ受容体に対する結合にも影響する。FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIの3種のFcγ受容体に対する各種のヒトIgGアイソタイプ各々の親和性が決定されている(RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.、第9巻、457ページ(1991)を参照されたい)。FcγRIは、単量体形態におけるIgGに結合する高親和性の受容体であり、後の2種は、多量体形態に限るIgGに結合する低親和性の受容体である。一般に、IgG1およびIgG3はともに3種の受容体すべてに対してかなりの結合活性を有し、IgG4はFcγRIに対して、また、IgG2はIIa
LRと呼ばれるFcγRIIの1種だけに対してかなりの結合活性を有する(Parrenら、J.Immunol.、第148巻、695ページ(1992)を参照されたい)。したがって、望ましくは、ヒトアイソタイプIgG1は通常Fcγ受容体に対するより強い結合のために選択され、IgG2は通常より弱い結合のために選択される。
【0173】
すべてのアイソタイプにおけるヒンジ結合領域内の部位上におけるか、これに隣接するか、またはこれに近接する変異(例えば、残基234、235、236、および/または237を別の残基により置換すること)は、Fcγ受容体、特に、FcγRI受容体に対する親和性を低下させる(例えば、US6,624,821を参照されたい)。場合によって、位置234、236、および/または237は、アラニンにより置換され、位置235はグルタミンにより置換される(例えば、US5,624,821を参照されたい)。位置236は、ヒトIgG2アイソタイプにおいて欠失している。ヒトIgG2の位置234、235、および237のための例示的なアミノ酸セグメントは、Ala Ala Gly、Val Ala Ala、Ala Ala Ala、Val Glu Ala、およびAla Glu Alaである。ヒトアイソタイプIgG1に好ましい変異の組合せは、L234A、L235A、およびG237Aである。特に好ましい抗体は、ヒトアイソタイプIgGおよびFc領域のこれら3種の変異を有するバピネオズマブである。Fcγ受容体に対する結合を低下させる他の置換は、E233P変異(特に、マウスIgG1における)およびD265A(特に、マウスIgG2aにおける)である。Fcおよび/またはC1qの結合を低下させる変異および変異の組合せの他の例は、実施例において説明される(E318A/K320A/R322A(特に、マウスIgG1における)、L235A/E318A/K320A/K322A(特に、マウスIgG2aにおける))。同様に、ヒトIgG4における残基241(Ser)を、例えば、プロリンにより置換することで、Fcの結合を破壊することができる。
【0174】
定常領域にさらなる変異を作製して、エフェクター活性を調節することができる。例えば、A330S、P331S、またはその両方におけるIgG2a定常領域に変異を作製することができる。IgG4の場合、G236を欠失させたE233P、F234V、およびL235A、またはこれらの任意の組合せにおいて変異を作製することができる。IgG4はまた、以下の変異、S228PおよびL235Eの一方または両方も有しうる。破壊された定常領域配列の使用によるエフェクター機能の調節については、例えば、WO06/118,959およびWO06/036291においてさらに説明されている。
【0175】
ヒトIgGの定常領域にさらなる変異を作製して、エフェクター活性を調節することができる(例えば、WO06/03291を参照されたい)。これら変異としては、以下の置換が挙げられる:ヒトIgG1に対する(i)A327G、A330S、P331S;(ii)E233P、L234V、L235A、G236欠失;(iii)E233P、L234V、L235A;(iv)E233P、L234V、L235A、G236欠失、A327G、A330S、P331S;および(v)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、P331S。
【0176】
FcRに対する抗体の親和性は、重鎖定常領域の特定の残基を変異させることにより変化させることができる。例えば、ヒトIgG1のグリコシル化部位の破壊は、該抗体のFcRに対する結合を低下させ、これにより該抗体のエフェクター機能を低下させることが可能である(例えば、WO06/036291を参照されたい)。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸であるトリペプチド配列NXS、NXT、およびNXCは、N残基のグリコシル化のための酵素的認識部位である。特に、IgGのCH2領域におけるトリペプチドアミノ酸のいずれかの破壊は、その部位におけるグリコシル化を阻止する。例えば、ヒトIgG1のN297の変異は、グリコシル化を阻止し、該抗体に対するFcRの結合を低下させる。
【0177】
複数の例示的なヒト化3D6抗体およびそれらの構成部分の配列を以下に示す。ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプ変異およびアイソアロタイプ変異を示す、すなわち、該定常領域は、異なる個体の1つまたは複数の多型位置において異なりうる。アイソアロタイプは、アイソアロタイプを認識する血清が、1つまたは複数の他のアイソタイプの非多型領域に結合する点において、アロタイプとは異なる。3D6(AAB−001)の以下に示すIgG1定常領域のアロタイプは、位置356におけるGluおよび位置358におけるMetを有するG1mzである。以下に示すκ定常領域のアロタイプはKm3であり、これは、位置153におけるAlaおよび位置191におけるValを有する。異なるアロタイプKm(1)は、それぞれ、位置153および191においてValおよびLeuを有する。アロタイプ変異体は、J Immunogen、第3巻、357〜362ページ(1976)およびLoghem,Monogr Allergy、第19巻、40〜51ページ(1986)により総説されている。説明される定常領域の他のアロタイプ変異体およびアイソアロタイプ変異体が含まれる。また、天然のアロタイプ内の多型位置を占める残基の任意の順列を有する定常領域も含まれる。他の重鎖IgG1アロタイプの例としては、G1m(f)、G1m(a)、およびG1m(x)が挙げられる。G1m(f)は、それが位置214におけるLysの代わりにArgを有する点で、G1m(z)と異なる。G1m(a)は、位置355〜358において、アミノ酸Arg、Asp、Glu、Leuを有する。
【0178】
ヒト化3D6全長軽鎖(シグナル配列に下線を付す)(バピネオズマブおよびAAB−003)
【化45】
【0179】
ヒト化3D6全長軽鎖:シグナル配列を含まない(バピネオズマブおよびAAB−003)
【化46】
【0180】
ヒト化3D6軽鎖コード配列をコードするDNA(シグナル配列に下線を付す)(バピネオズマブおよびAAB−003)
【化47】
【0181】
ヒト重鎖定常領域:IgG1アイソタイプ、L234A/G237A
【化48】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化49】
【0182】
シグナル配列(下線を付す)を含むヒト化3D6全長重鎖(IgG1アイソタイプ、L234A/G237A)
【化50】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化51】
【0183】
シグナル配列を含まないヒト化3D6全長重鎖(IgG1アイソタイプ、L234A/G237A)
【化52】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化53】
【0184】
ヒト重鎖定常領域:IgG4アイソタイプ、S241P(kabat番号付け);S228P(EU番号付け)
【化54】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化55】
【0185】
ヒト化3D6全長重鎖(IgG4アイソタイプ、S241P):シグナル配列(下線を付す)を含む
【化56】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化57】
【0186】
ヒト化3D6重鎖:シグナル配列を含まない(IgG4アイソタイプ、S241P)
【化58】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化59】
【0187】
ヒト重鎖定常領域:IgG1アイソタイプ(AAB−003)、L234A/L235A/G237A
【化60】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化61】
【0188】
シグナル配列を含むヒト化3D6全長重鎖(IgG1アイソタイプ、L234A/L235A/G237A):AAB−003
【化62】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化63】
【0189】
ヒト化3D6全長重鎖:シグナル配列を含まない(IgG1アイソタイプ、L234A/L235A/G237A):AAB−003
【化64】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化65】
【0190】
シグナル配列(下線を付す)を含むヒト化3D6重鎖コード領域をコードするDNA(IgG1アイソタイプ、L234A/L235A/G237A):AAB−003
【化66-1】
【化66-2】
【0191】
バピネオズマブの全長重鎖(シグナル配列を含まない、IgG1アイソタイプ、Fc変異なし)
【化67】
以下に示す通り、C末端のK残基はなしでもよい。
【化68】
【0192】
一部の抗体において、ヒトIgG重鎖定常領域の位置234、235、および237は、それぞれAAA、それぞれLLA、それぞれLAG、それぞれALG、それぞれAAG、それぞれALA、またはそれぞれLAAでありうる。上記で示した通り、AAB−003は、バピネオズマブのL234A、L235A、およびG237A変異体(すなわち、アラニン(A)が変異アミノ酸であるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を除き、バピネオズマブと同一のアミノ酸配列を有する)。バピネオズマブと同様、AAB−003は、全長ヒトカッパ軽鎖定常領域および全長ヒトIgG1重鎖定常領域を有する(バピネオズマブまたはAAB−003において、C末端のリシン残基は細胞内において切断されることがあり、最終産物から欠落することがある)。
【0193】
AAB−003における3種の変異は、補体結合領域ではなく、ヒンジ領域に近接するが、AAB−003は、バピネオズマブと比べて、Fcγ受容体およびC1qの両方に対する結合を低下させる。こうして、AAB−003抗体は、食作用および補体カスケードの両方を誘導する能力を低下させる。さらに、AAB−003は、AAB−003において存在する3種よりも少ない変異を有する以外は同一の抗体(例えば、残基234および237における置換を有する抗体)よりも、ヒトFcγRIIに対して低度の結合を示し、これは、AAB−003のFc領域における3種の変異すべてがエフェクター機能の低下に寄与することを示す。(1つまたは複数の)Fcγ受容体および/またはC1qとの相互作用を低下させる重鎖定常領域の変異により、有用な活性を除去することなく、マウスモデルにおける微小出血を軽減することができる。マウスにおける微小出血は、ヒトにおいて生じる血管原性浮腫に寄与しうる1つの因子である。このような変異を保有する抗体は、認知低下を阻害する能力のほか、アミロイド沈着物を除去する能力も保持する。
【0194】
同様に、重鎖定常領域の変異もまた、例えば、ヒト化12A11抗体および12B4抗体について上記で説明した可変領域配列と組み合わせることができる。以下の表は、上記で説明した抗体についての、重鎖可変領域と、(1つまたは複数の)変異を有する重鎖定常領域との例示的な組合せを示す。特定の抗体、例えば、12A11について表中で示される重鎖は、軽鎖定常領域(例えば、以下のヒトカッパ軽鎖定常領域またはそのアロタイプもしくはアイソアロタイプ)に連結された、該抗体について上記で説明した軽鎖可変領域のいずれかと対合させることができる。
【化69】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0195】
定常領域内におけるアミノ酸は、ヒト抗体EUとのアライメントにより番号付けされている(Cunninghamら、J.Biol.Chem.、第9巻、3161ページ(1970)を参照されたい)。すなわち、抗体の重鎖および軽鎖を、アミノ酸配列の同一性を最大化するように、EUの重鎖および軽鎖とアライメントし、該抗体内の各アミノ酸には、EU中の対応するアミノ酸と同じ番号を割り当てる。EU番号付けシステムは、慣行となっている(全般に、Kabatら、「Sequences of Protein of Immunological Interest」、米国保健福祉省、NIH刊行物第91−3242号(1991)を参照されたい)。
【0196】
重鎖のアミノ酸残基318、320、および322の少なくとも1つを、異なる側鎖を有する残基へと変異させることにより、補体成分C1qに対する抗体の親和性を変化させることができる。抗体に対するC1qの特異的結合を変化させる、例えば、低下させるか、または除去するのに適する他の変化は、残基318(Glu)、320(Lys)、および322(Lys)のいずれか1つのAlaへの変化を含む。指定された3つの残基のいずれか1つを、その側鎖上において不適切な官能基を有する残基で置換することにより、C1qの結合活性を除去することができる。C1qの結合を除去するのに、イオン性残基をAlaだけで置換する必要はない。C1qの結合を除去するには、該3つの残基のいずれか1つの位置に、Gly、Ile、Leu、またはValなど、他のアルキル置換非イオン性残基、またはPhe、Tyr、Trp、およびProなどの芳香族非極性残基を用いることも可能である。加えて、C1qの結合活性を除去するには、残基320および322の位置にSer、Thr、Cys、およびMetなどの極性非イオン性残基を用いることも可能であるが、残基318の位置ではない。極性残基による318(Glu)残基の置換は、C1qの結合活性を改変しうるが、これを除去することはできない。Alaによる残基297(Asn)の置換は、結果として溶解活性の除去をもたらすが、C1qに対する親和性の低下はわずかであるに過ぎない(約1/3に弱化される)。この変化は、グリコシル化部位および補体活性化に必要とされる炭水化物の存在を破壊する。この部位における他の任意の置換もまた、グリコシル化部位を破壊する。
【0197】
ヒトIgG1の定常領域に対するC1qの結合に影響しうるさらなる変異は、例えば、WO06/036291において説明される変異を含む。この場合、以下の置換:D270A、K322A、P329A、およびP311Sの少なくとも1つを作製して、C1qの結合を低下させることができる。残基297、318、および320における変異を含むこれらの変異の各々は、個別または組合せで作製することができる。
【0198】
(1つまたは複数の)Fcγ受容体および/またはC1qに対する結合を低下させる重鎖定常領域の変異を有する抗体は、本発明の方法のいずれにおいても用いることができる。好ましくは、このような抗体は、該変異を欠く以外は同一の抗体と比べて、少なくとも1つのFcγ受容体および/またはC1qに対する結合を少なくとも50%低下させる。
【0199】
B.Aβ断片
今日では、科学文献および特許文献において、Aβの多数の断片が、能動的免疫療法剤として説明されている(例えば、US6,750,324、US20040213800;US20070134762を参照されたい)。一般に、Aβの残基1〜11内のエピトープを含む断片が、Fcγ受容体に結合する抗体を誘導し、アミロイド沈着物に対する除去反応を誘導するのに対し、Aβの残基1〜11内のエピトープを欠く断片は、プラークではなくてAβの可溶形態に優先的または排他的に結合する抗体を誘導し、アミロイド沈着物に対する除去反応を誘導した場合でもわずかであるに過ぎない。
【0200】
アミロイド沈着物に結合し、除去反応を誘導する抗体を誘導するのに好ましい断片は、Aβの残基1〜3に始まり、Aβの残基7〜11に終わる、N末端断片である。例示的なN末端断片は、Aβ1〜5、同1〜6、同1〜7、同1〜10、同3〜7、同1〜3、および同1〜4を含み、同1〜7が特に好ましい。例示的な断片のクラスは、同1〜3(両端を含む)の間の残基に始まり、同7〜11(両端を含む)の間の残基に終わる断片を含む。
【0201】
アミロイド沈着物に対する除去反応を僅かであっても誘導する、可溶性Aβに対する抗体を誘導するのに好ましい断片としては、Aβ15〜21、Aβ16〜22、Aβ17〜23、Aβ18〜24、Aβ19〜25、Aβ15〜22、Aβ16〜23、Aβ17〜24、Aβ18〜25、Aβ15〜23、Aβ16〜24、Aβ17〜25、Aβ18〜26、Aβ15〜24、Aβ16〜25、およびAβ15〜25が挙げられる。Aβ16〜23は、Aβの残基16〜23を含み、Aβの他の残基を欠く、特に好ましい断片である。また、5〜10、また好ましくは、7〜10の連続アミノ酸によるAβ42または43のC末端断片も好ましい。Aβ40または39の類似のC末端断片もまた用いることができる。これらの断片は、末端特異的抗体を含む抗体反応を発生させうる。断片は、Aβに対してT細胞を誘導するT細胞エピトープを欠くことが好ましい。一般に、T細胞エピトープは、10を超える連続アミノ酸である。したがって、Aβの好ましい断片は、5〜10、または好ましくは、7〜10のサイズの連続アミノ酸、すなわち、T細胞反応を発生させずに抗体反応を発生させるのに十分な長さである。T細胞エピトープは、断片の免疫原性活性に必要とされず、患者の部分集団内において望ましくない炎症反応を引き起こしうるので、これらのエピトープの不在が好ましい。
【0202】
本発明の方法において用いうる、Aβに対する抗体を誘導する作用物質としてはまた、以下が挙げられる:(i)ACI−24(AC Immune社製);(ii)Affitope AD02および同AD02(Affiris GmbH社製);(iii)Arctic Immunotherapeutic KLVFFAGDV(配列番号92)(BioArctic Neuroscience社/エーザイ株式会社製);(iv)Aβ1〜15−K−K−Aβ1〜15(Brigham & Women’s病院製);(v)β−Vax(商標)およびRecall−Vax(商標)(Intellect Neurosciences社製);(vi)K6−Aβ1〜30(Intellect Neurosciences社/NYU社製);(vii)V−950(Merck社製);(viii)CAD106(Novartis社/Cytos社製);(ix)Aβ DCtag(商標)ナノ粒子アジュバント(Prana Biotechnology社/PRIMABioMed社製);(x)PX106(2Aβ1〜11−PADREとも呼ばれる、Pharmexa社/Lundbeck社製);(xi)T細胞エピトープにコンジュゲートしたAβ4〜10(トロント大学製);ならびに(xii)p3102およびp3075(United Biomedical社製)を含む。
【0203】
ACI−24は、リポソーム二重層内に挿入されたAβ1〜15−K−K−16Cパルミチン酸による、Aβ1〜15リポソーム構築物である。これらの化合物は、US2004/0242845、WO05/081872、US2007/0281006、およびUS2006/0073158において説明されている。Affitope AD01および同AD02は、WO06/005707において説明される通り、AβのN末端に由来するミモトープである。Arctic Immunotherapeuticは、US20020162129およびUS20070248606において説明される通り、E692GのAβ22に由来する。Aβ1〜15−K−K−Aβ1〜15は、WO05/012330およびWO02/0123553において説明される通り、2つの連結されたN末端Aβ断片を表す。β−Vax(商標)、Recall−Vax(商標)、およびK6−Aβ1〜30は、WO01/42306において説明される通り、T細胞エピトープに連結されたAβ断片である。V−950は、WO06/121656において説明される通り、少なくとも1つのスペーサーおよび分枝した多価多重抗原ペプチドを有する多価線状ペプチドに連結された、8マーのAβペプチドである。CAD106は、WO04/016282において説明される通り、N末端Aβペプチドに連結されたQβ担体(RNA VLP)である。Aβ DCtag(商標)ナノ粒子アジュバントは、例えば、WO02/00245において説明されている。PX106は、US7,135,181において説明される通り、「汎DRエピトープペプチド」(PADRE)と呼ばれるT細胞エピトープに連結されたAβ1〜11ペプチドである。p3102およびp3075は、US20030068325、US20040247612、US6,906,169、およびWO02/096350において説明される通り、スペーサーを介してT細胞エピトープに連結されたAβ1〜14ペプチドである。
【0204】
断片は通常、天然のAβペプチドであるが、1つの位置、2つの位置、5つの位置、10の位置、またはさらにすべての位置において、非天然アミノ酸またはNもしくはC末端アミノ酸の改変を含みうる。例えば、Aβの位置1および/または7における天然のアスパラギン酸残基は、イソアスパラギン酸で置換することができる。非天然アミノ酸の例は、D置換アミノ酸、α置換アミノ酸、α−二重置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、オメガ−N−メチルアルギニン、β−アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ−アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、およびイソアスパラギン酸である。本発明の一部の治療剤は、all−Dペプチド、例えば、all−D Aβまたはall−D Aβ断片および、all−Dペプチド類似体である。断片は、非治療対照またはプラセボ対照と比較されたトランスジェニック動物モデルにおける予防的または治療的な有効性についてスクリーニングすることができる。
【0205】
断片は、担体分子にコンジュゲートさせることが典型的であり、これによりT細胞エピトープがもたらされ、また、これにより、該担体にコンジュゲートした該断片に対する免疫反応が促進される。単一の作用物質を単一の担体に連結することもでき、作用物質の複数のコピーを担体の複数のコピーに連結し、これらを互いに連結することもでき、作用物質の複数のコピーを担体の単一のコピーに連結することもでき、作用物質の単一のコピーを担体の複数のコピーに連結することもでき、または異なる担体に連結することもできる。適切な担体としては、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、または、ジフテリア(例えば、CRM197)、大腸菌(E.coli)、コレラ菌、もしくはピロリ菌(H.pylori)など、他の病原菌に由来するトキソイド、あるいは弱毒化された毒素誘導体が挙げられる。T細胞エピトープもまた、適切な担体分子である。一部のコンジュゲートは、本発明の作用物質を、免疫刺激性ポリマー分子(例えば、トリパルミトイル−S−グリセリンシステイン(Pam
3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)、またはグルカン(β1→2ポリマー)、サイトカイン(例えば、IL−1、IL−1αおよびβペプチド、IL−2、γ−INF、IL−10、GM−CSF)およびケモカイン(例えば、MIP1−αおよびβ、ならびにRANTES))に連結することにより形成することができる。O’Mahony、WO97/17613およびWO97/17614において説明される通り、免疫原性作用物質はまた、組織を隔てた輸送を増強するペプチドに連結することもできる。免疫原は、スペーサーのアミノ酸(例えば、gly−gly)を伴うかまたは伴わない担体に連結することができる。
【0206】
さらなる担体としては、ウイルス様粒子が挙げられる。偽ウイルスまたはウイルス由来粒子とも呼ばれるウイルス様粒子(VLP)は、in vivoにおける規定の球対称のVLPへと自己組織化することが可能な、ウイルスのカプシドタンパク質および/またはエンベロープタンパク質の複数のコピーからなるサブユニット構造を示す(Powilleitら(2007)、PLoS ONE、第2巻、第5号、e415ページ)。これらの粒子は、抗原送達系として有用であることが分かっている。VLPは、それらの粒子的性格および高分子量により、大量に作製し、容易に精製することができる。VLPは、アジュバントのさらなる適用なしに免疫反応を誘導する(Ulrichら(1996)、Intervirology、第39巻、126〜132ページ)。VLP抗原送達系として有用な例示的キメラ粒子としては、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、酵母レトロトランスポゾンTy、酵母トティウイルスL−A、パルボウイルス、インフルエンザウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、アデノ随伴ウイルス、ブルータングウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、およびRNAファージウイルスに基づく粒子のほか、各種レトロウイルスおよびレンチウイルスに基づく粒子が挙げられる。総説としては、Lechnerら(2002)、Intervirology、第45巻、212〜217ページを参照されたい。
【0207】
B型肝炎ウイルスのコアタンパク質(HBcAg)は、外来抗原を運搬するのに用いられる一般的なVLPである(Koletzkiら(1997)、J Gen Vir、第78巻、2049〜2053ページを参照されたい)。略述すると、HBcAgは、外来のタンパク質セグメントを増幅して提示するVLPを構築するコアとして用いることができる。該方法は、C末端短縮HBcAgと、終始コドンを含有する外来タンパク質配列との間にリンカー配列を有する構築物を用いる。短縮HBcAg/外来タンパク質のキメラ体は、大腸菌抑制菌株内における発現のためのオパールTGA−Trp変異に基づく機構による読み取りを用いて発現させる。Koletzkiらにより説明される方法は、VLPへの長い外来タンパク質配列の組込みを可能とし、これにより、多種多様の抗原をVLPにより運搬させることができる。
【0208】
抗原担体系として、HIVウイルスGagタンパク質を用いることができる(Griffithsら(1993)、J Virol.、第67巻、第6号、3191〜3198ページを参照されたい)。Griffithsは、HIVエンベロープの主要な中和決定基である、HIVのV3ループを用いた。in vivoでハイブリッドGag粒子へと構築されたGag:V3融合タンパク質は、ウイルス由来粒子(VDP)と命名された。VDPは、体液性反応および細胞性反応の両方を誘導する。V3ループは、CTLエピトープを含有するので、Gag:V3による免疫感作は、VLPのV3タンパク質部分に対するCTL反応を誘導する。
【0209】
ハイブリッドのHIV:Ty VLPもまた、用いることができる(Adamsら(1987)、Nature、第329巻、第3号、68〜70ページを参照されたい)。HIV:Ty VLPは、酵母のトランスポゾンであるTyのp1タンパク質を用いる。p1の初めの381アミノ酸で、VLPの形成には十分である。HIV:Ty融合タンパク質は、in vivoにおけるVLPへの構築のほか、VLPにより運搬されるHIV抗原に対する免疫反応の誘導も可能である。Ty p1タンパク質を用いるVLPはまた、ウシパピローマウイルスのE1遺伝子およびE2遺伝子の産物であるα2−インターフェロンと、インフルエンザヘマグルチニンの部分とによる全体に融合されたp1も含有しうる。これらのTy融合体の各々によりVLPが形成され、これらは、非Ty VLP成分に対する抗血清の生成を誘導することが可能であった。
【0210】
VLPはまた、酵母トティウイルスL−Aの変異体からも設計することができる(Powilleitら(2007)、PLOS One、第2巻、第5号、e415ページを参照されたい)。L−AウイルスのPol遺伝子は、特異的な免疫反応を誘導するのに適切な抗原により置換することができ、これにより、酵母VLPが有効な抗原担体であることが示される。
【0211】
組換えの非複製パルボウイルス様粒子もまた、抗原担体として用いることができる(Sedlikら(1997)、PNAS、第94巻、7503〜7508ページ)。これらの粒子は、抗原が細胞質ゾル内に運搬され、クラスI拘束性免疫経路に入り、これにより、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介反応を刺激することを可能とする。Sedlikは、パルボウイルスのVP2カプシドタンパク質を含有し、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)に由来する残基118〜132が該VP2カプシドタンパク質内に挿入された、PPV:VLPを特に用いた。LCMVを含有するPPV:VLPは、LCMVに対する免疫反応を誘導し、あらかじめ免疫感作されたマウスにおいて、致死性のウイルス曝露量に対する免疫学的防御を誘発した。
【0212】
VLPはまた、ウイルス複製に不可欠の遺伝子であるインフルエンザNS2遺伝子を欠く、複製不能のインフルエンザウイルスも含みうる(Watanabeら(1996)、J Virol.、第76巻、第2号、767〜773ページ)。これらのVLPは、哺乳類細胞に感染し、外来タンパク質の発現を可能とする。
【0213】
ノーウォークウイルス(NV)ベースのVLPもまた、免疫原送達用の媒体として用いることができる(Ballら(1999)、Gastroenterology、第117巻、40〜48ページ)。NVゲノムは、3つのオープンリーディングフレーム(ORF 1〜3)を有する。ORF 2および3による組換えバキュロウイルスの発現は、高収率の組換えノーウォーク(rNV)VLPの自己組織化を可能とする。
【0214】
一部のコンジュゲートは、本発明の作用物質を、少なくとも1つのT細胞エピトープに連結することにより形成することができる。無差別のT細胞エピトープもあり、普遍的なT細胞エピトープもある。無差別のT細胞エピトープは、各種のHLA型を示す多種多様な対象におけるT細胞免疫の誘導を増強することが可能である。無差別のT細胞エピトープとは対照的に、普遍のT細胞エピトープは、異なるHLA−DR対立遺伝子によりコードされる各種のHLA分子を示す対象の大きな比率、例えば、少なくとも75%におけるT細胞免疫の誘導を増強することが可能である。
【0215】
破傷風トキソイド(例えば、P2エピトープおよびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、百日咳トキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、性器クラミジア(Chlamydia trachomatis)主要外膜タンパク質、ジフテリアトキソイド、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)スポロゾイト周囲タンパク質T、熱帯マラリア原虫CS抗原、マンソン住血吸虫トリオースリン酸イソメラーゼ、大腸菌TraTタンパク質、およびインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)など、多数の天然T細胞エピトープが存在する。本発明の免疫原性ペプチドはまた、Sinigaglia F.ら、Nature、第336巻、778〜780ページ(1988);Chicz R.M.ら、J.Exp.Med.、第178巻、27〜47ページ(1993);Hammer J.ら、Cell、第74巻、197〜203ページ(1993);Falk K.ら、Immunogenetics、第39巻、230〜242ページ(1994);WO98/23635;およびSouthwood S.ら、J.Immunology、第160巻、3363〜3373ページ(1998)において説明されるT細胞エピトープにもコンジュゲートさせることができる。
【0216】
担体としてはまた、ウイルス様粒子も挙げられる(US20040141984を参照されたい)。
【0217】
断片は、薬学的に許容されるアジュバントとともに投与されることが多い。アジュバントは、該ペプチドが単独で用いられた状況と比べて、誘導される抗体の力価および/または誘導される抗体の結合親和性を上昇させる。Aβの免疫原性断片と組み合わせて各種のアジュバントを用いて、免疫反応を誘発することができる。好ましいアジュバントとしては、反応の質的な形態に影響する、免疫原における立体構造変化を引き起こすことなく、免疫原に対する内因性反応を増大させる。好ましいアジュバントは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、3 De−O−アシル化モノホスホリル脂質A(MPL(商標))(GB2220211を参照されたい(現在、Corixa社の一部である、モンタナ州、ハミルトン、RIBI ImmunoChem Research社製))が挙げられる。Stimulon(商標)QS−21は、南米で見出されたキラヤ・サポナリア・モリーナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から単離された、トリテルペングリコシドまたはサポニンである(Kensilら、「Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach」、(Powell & Newman編、ニューヨーク州、Plenum Press社、1995);US5,057,540を参照されたい)(現在、ニューヨーク州、ニューヨーク、Antigenics社である、マサチューセッツ州、フラミンガム、Aquila BioPharmaceuticals社製)。他のアジュバントは、場合によって、モノホスホリル脂質A(Stouteら、N.Engl.J.Med.、第336巻、86〜91ページ(1997)を参照されたい)、プルロニックポリマー、および死滅させたマイコバクテリアなどの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油エマルジョン(スクアレンまたはラッカセイ油など)である。別のアジュバントは、CpG(WO 98/40100)である。アジュバントは、活性作用物質を有する治療組成物の成分として投与することもでき、治療剤の投与前、投与と同時、または投与後において、別個に投与することもできる。
【0218】
アジュバントの好ましいクラスは、水酸化アラム、リン酸アラム、硫酸アラムなどのアルミニウム塩(アラム)である。このようなアジュバントは、MPLまたは3−DMP、QS−21など、他の特定の免疫刺激剤、ポリグルタミン酸またはポリリシンなど、他の特定の多量体アミノ酸または単量体アミノ酸を伴っても伴わなくても用いることができる。別のクラスのアジュバントは、水中油エマルジョン製剤である。このようなアジュバントは、ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP)セラミドTM)や、他の細菌細胞壁成分など、他の特定の免疫刺激剤を伴っても伴わなくても用いることができる。水中油エマルジョンとしては、(a)110Y型マイクロ流体化装置(マサチューセッツ州、ニュートン、Microfluidics社製)などのマイクロ流体化装置を用いてサブミクロン粒子に調合された、5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5%スパン85(場合によって様々な量のMTP−PEを含有する)を含有するMF59(WO90/14837);(b)サブミクロンエマルジョンにマイクロ流体化されるか、またはボルテックスされてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成する、10%スクアレン、0.4% Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPSAFを含有するSAF;ならびに(c)2%スクアレンと、0.2% Tween 80と、モノホスホリル脂質A(MPL)、ジミコール酸トレハロース(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CSW(Detox(商標))からなる群から選択される1種または複数種の細菌細胞壁成分とを含有するRibi(商標)アジュバントシステム(RAS)(モンタナ州、ハミルトン、Ribi ImmunoChem社製)が挙げられる。
【0219】
好ましいアジュバントの別のクラスは、Stimulon(商標)(マサチューセッツ州、フラミンガム、Aquila社製、QS−21)などのサポニンアジュバント、またはISCOM(免疫刺激複合体)およびISCOMATRIXなど、これらから作製された粒子である。他のアジュバントとしては、RC−529、GM−CSF、ならびに完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)が挙げられる。他のアジュバントは、インターロイキン(例えば、IL−1αペプチドおよび同βペプチド、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12、IL13、ならびにIL−15)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン、MIP1αおよびβならびにRANTESなどのケモカインを含む。アジュバントの別のクラスは、その各々が、糖残基内において、免疫調節物質またはアジュバントとしてのアミノ酸により置換される、N−グリコシルアミド、N−グリコシル尿素、およびN−グリコシルカルバメートを含む糖脂質類似体である(US4,855,283を参照されたい)。熱ショックタンパク質、例えば、HSP70およびHSP90もまた、アジュバントとして用いることができる。
【0220】
アジュバントは、単一の組成物として免疫原とともに投与することもでき、免疫原の投与前、投与と同時、または投与後において投与することもできる。免疫原およびアジュバントは、同じバイアルに包装して供給することもでき、個別のバイアルに包装して使用前に混合することもできる。免疫原およびアジュバントは、意図される治療適用を示す表示とともに包装されることが典型的である。免疫原およびアジュバントが個別に包装される場合、該包装は、使用前の混合についての指示書を含むことが典型的である。アジュバントおよび/または担体の選択は、アジュバントを含有する免疫原性製剤の安定性、投与経路、投与量スケジュール、ワクチン接種される種に対するアジュバントの有効性に依存し、ヒトの場合、薬学的に許容されるアジュバントは、関連規制機関によりヒトへの投与について承認されているか、または承認可能なアジュバントである。例えば、完全フロイントアジュバントは、ヒトへの投与に適さない。アラム、MPL、およびQS−21が好ましい。場合によって、2種以上の異なるアジュバントを同時に用いることができる。好ましい組合せとしては、MPLを伴うアラム、QS−21を伴うアラム、QS−21を伴うMPL、GM−CSFを伴うMPLまたはRC−529、ならびにアラム、QS−21、およびMPLの組合せが挙げられる。また、不完全フロイントアジュバントも、場合によって、アラム、QS−21、およびMPL、ならびにこれらのすべての組合せとの組合せで用いることができる(Changら、Advanced Drug Delivery Reviews、第32巻、173〜186ページ(1998))。
【0221】
V.治療に適する患者
本レジメは、脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる任意の疾患の治療に有用である。アルツハイマー病のほか、このような疾患としては、ダウン症、パーキンソン病、軽度認知障害、および血管性アミロイド疾患が挙げられる。治療に適する患者には、疾患の危険性を示すが症状は示さない個体のほか、現在症状を示す患者も含まれる。アルツハイマー病の場合、十分に長生きしているならば、事実上任意の個体が、アルツハイマー病に罹患する危険性を示す。したがって、本方法は、対象患者の危険性についての評価に対する必要なしに、一般的な集団に対して予防的に実施することができる。本方法はまた、アルツハイマー病について知られる遺伝学的危険性を有する個体にも有用でありうる。このような個体としては、この疾患に罹患した親族を有する個体、および遺伝子マーカーまたは生化学マーカーの解析によりその危険性が決定されている個体が挙げられる。アルツハイマー病に対する危険性についての遺伝子マーカーには、APP遺伝子における変異、特に、それぞれ、ハーディー変異およびスウェーデン変異と称する、位置717ならびに位置670および671における変異が含まれる(Hardy、前出を参照されたい)。他の危険性についてのマーカーは、プレセニリン遺伝子であるPS1およびPS2の変異、ならびにApoE4の変異、ADの家族歴、高コレステロール血症、またはアテローム性動脈硬化である。現在アルツハイマー病に罹患する個体は、特徴的な認知症のほか、上記で説明した危険因子の存在からも認識されうる。加えて、ADを有する個体を同定するための多数の診断検査が利用可能である。これらには、CSFタウレベルおよびAβ42レベルの測定が含まれる。タウレベルの上昇およびAβ42レベルの低下は、ADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹患する個体はまた、実施例の節で論じるADRDA基準によっても診断されうる。
【0222】
無症状患者の場合、治療は、任意の年齢(例えば、10、20、30歳)で開始することができる。しかし、通常は、患者が40、50、60、または70歳に達するまでは治療を開始する必要がない。治療は、ある期間にわたる複数回の投与を伴うことが典型的である。ある期間にわたり抗体レベルをアッセイすることにより、治療をモニタリングすることができる。反応を低下する場合は、追加免疫投与が適応である。潜在的なダウン症患者の場合、母体に治療剤を投与することにより出産前に治療を開始することもでき、出産後すぐに治療を開始することもできる。
【0223】
治療に適切な患者としては、50〜87歳の患者、軽度〜中等度のアルツハイマー病に罹患する患者、14〜26のMMSEスコアを有する患者、神経伝達障害ならびに脳卒中およびアルツハイマー病関連障害(NINCDS−ADRDA)基準に基づき、アルツハイマー病の疑いがあると診断される患者、および/または4以下のRosen改変Hachinski虚血スコアを有する患者が挙げられる。アルツハイマー病の診断と一致するMRIスキャン、すなわち、他の疾患、例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、クモ膜嚢胞、腫瘍などに起因しうる他の異常がMRIにおいて存在しないMRIスキャンを有する患者もまた治療に適する。
【0224】
VI.治療レジメ
予防的適用の場合、作用物質または該作用物質を含有する医薬組成物もしくは薬剤は、アルツハイマー病に対して感受性であるかまたはそれ以外のアルツハイマー病の危険性を示す患者に対して、該疾患の生化学的、組織学的、および/もしくは行動学的症状、該疾患の発生の間に存在するその合併症および中間的な病理学的表現型を含む、該疾患の危険性を除去するかもしくは低下させるか、該疾患の重症度を軽減するか、または該疾患の発症を遅延させるのに十分な量で投与される。治療的適用の場合、組成物または薬剤は、このような疾患を疑われるか、または既にこれに罹患する患者に対して、該疾患の発生の際のその合併症および中間的な病理学的表現型を含む、該疾患の症状(生化学的、組織学的、および/または行動学的)を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。
【0225】
上記で説明された状態の処置のための本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、投与される他の薬剤、および処置が予防的であるかまたは治療的であるかを含む、多数の異なる因子に応じて異なる。
【0226】
場合によって、抗体は、患者において投与された抗体の平均血清濃度0.1〜60、0.4〜20、または1〜15μg/mlを達成するように投与される。これらの範囲は、マウスおよびヒトにおいて示された有効濃度を一括するもので、測定における誤差および個々の患者のばらつきの幅を許容する。該血清濃度は、投与される抗体量、投与頻度、投与経路、および抗体の半減期に基づき、実際の測定により決定することができ、または標準的な薬物動態ソフト(例えば、WinNonline Version 4.0.1(米国、ケアリー、Pharsight社製))により予測することもできる。
【0227】
血清中における平均抗体濃度は、場合によって、1〜10、1〜5、または2〜4μg/mlの範囲内にある。また、潜在的な副作用、特に、血管性浮腫の発生に対して治療的有益性を最大化するために、患者において抗体約28μg/ml血清未満の最大血清抗体濃度を維持することも選択できる。好ましい最大血清濃度は、抗体約4〜28μg/ml血清の範囲内にある。患者における抗体約28μg/ml血清未満の最大血清抗体濃度と、抗体約7μg/ml血清未満の平均抗体血清濃度との組合せが、特に有益である。場合によって、該平均濃度は、抗体約2〜7μg/ml血清の範囲内にある。
【0228】
抗体投与後における血漿中のAβ濃度は、おおよそ抗体血清濃度の変化と並行して変化する。言い換えれば、血漿Aβ濃度は抗体の投与後において最も高く、次いで、投与間において抗体濃度が低下するにつれて低下する。抗体投与の用量およびレジメを変化させて、血漿中における所望のAβレベルを得ることができる。このような方法において、抗体の平均血漿濃度は、少なくとも、450pg/mlであるか、または、例えば、600〜30000pg/mlまたは700〜2000pg/mlまたは800〜1000pg/mlの範囲内でありうる。
【0229】
抗体の好ましい用量範囲は、宿主体重当たり約0.01〜5 mg/kgであり、より通常の場合は、同0.1〜3mg/kgまたは0.15〜2mg/kgまたは0.15〜1.5mg/kgである。対象には、このような用量を、毎日、隔日、毎週、隔週、毎月、3カ月ごと、または経験的な解析により決定される他の任意のスケジュールにより投与することができる。例示的な治療は、ある長さの期間、例えば、少なくとも6カ月間にわたる複数回の投与を伴う。さらに例示的な治療レジメは、2週間ごとに1回、または毎月1回、または3〜6カ月ごとに1回の投与を伴う。
【0230】
静脈内投与の場合、3カ月ごとに静脈内投与される0.1mg/kg〜2mg/kg、また好ましくは、0.5mg/kgまたは1.5mg/kgの用量が適する。毎月の静脈内投与に好ましい抗体用量は、抗体0.1〜1.0mg/kg、または好ましくは、抗体0.5〜1.0mg/kgの範囲で投与される。
【0231】
より高頻度な投与、例えば、毎週〜毎月の投与の場合、皮下投与が好ましい。皮下投与は投与が容易であり、静脈内投与と比べて、最大血清濃度を低下させることができる。皮下投与に用いられる用量は通常、0.01〜0.6mg/kgまたは0.01〜0.35mg/kg、好ましくは、0.05〜0.25mg/kgの範囲内にある。毎週または隔週投与の場合、用量は、0.015〜0.2mg/kg、または0.05〜0.15mg/kg範囲内にあることが好ましい。毎週投与の場合、用量は、0.05〜0.07mg/kg、例えば、約0.06mg/kgであることが好ましい。隔週投与の場合、用量は、0.1〜0.15mg/kgであることが好ましい。毎月投与の場合、用量は、0.1〜0.3mg/kgまたは約0.2mg/kgであることが好ましい。毎月投与は、太陽月または太陰月(すなわち、4週間ごと)による投与を含む。他の場合と同じく、本明細書での適用においても、整数へと概数化されることが典型的である典型的な患者体重(例えば、70または75kg)を乗じることにより、mg/kg単位で表される用量を絶対量による用量へと変換することができる。他のレジメは、例えば、PCT/US2007/009499により説明されている。上記で論じた通り、用量および頻度は、患者のApoE状態に基づくこれらの指針内で変化させることができる。
【0232】
能動投与のための作用物質量は、ヒト投与の場合、患者当たり1〜500μg、また、より通常の場合、注射1回当たり5〜100μgで変化する。注射1回当たりの例示的な用量は、ヒトに対する各回の注射ごとに、3、10、30、または90μgである。免疫原量はまた、免疫原の全体量に対する、免疫原中における免疫原エピトープ量の比にも依存する。免疫原の各免疫感作には、10
−3〜10
−5マイクロモルの免疫原性エピトープを用いることが典型的である。注射の回数は、毎日1回〜毎年1回〜10年ごとに1回と大きく変化しうる。ある用量の免疫原が投与される任意の所定日において、該用量は、アジュバントも投与される場合、1μg/患者を超え、通常10μg/患者を超え、アジュバント不在下の場合、10μg/患者を超え、通常100μg/患者を超える。典型的なレジメンは、免疫感作と、その後における6週間間隔などの時間間隔における追加免疫注射とからなる。別のレジメンは、免疫感作と、1、2、および12カ月後における追加免疫投与とからなる。別のレジメンは、生涯にわたる2カ月ごとの注射を伴う。代替的に、追加免疫注射は、免疫反応のモニタリングによる適応に応じて、不定期に実施することができる。活性作用物質により誘導される抗体が、受動投与における場合と同様、0.1〜60、0.4〜20、または1〜15もしくは2〜7μg/mlの範囲内の平均血清濃度を有するように、用量および頻度を変化させることができる。用量および頻度は、上記で論じた通り、患者のApoE状態に基づくこれらの指針内で変化させることができる。
【0233】
VII.保有者の状態に応じる例示的なレジメ
本発明は、アルツハイマー病(例えば、軽度または中等度)を有する非保有患者を治療する方法であって、AβのN末端エピトープに特異的に結合する有効な抗体のレジメがこのような患者に施される方法を提供する。抗体は、例えば、Aβの残基1〜11、1〜7、1〜5、または3〜7内のエピトープに結合しうる。場合によって、抗体は、バピネオズマブである。抗体の用量は、静脈内注入により投与される約0.15mg/kg〜2mg/kgの範囲内でありうる。場合によって、用量は約0.5mg/kg〜約1mg/kgである。用量は、例えば、8〜16週間ごと、1〜14週間ごと、または13週間ごとに投与されうる。
【0234】
本発明はまた、軽度または中等度のアルツハイマー病を有すると診断された非保有患者における認知低下を軽減する方法も提供する。該方法は、AβのN末端エピトープに特異的に結合する有効な抗体のレジメを、このような患者に施すステップを伴う。抗体は、例えば、Aβの残基1〜11、1〜7、1〜5、または3〜7内のエピトープに結合しうる。場合によって、抗体は、バピネオズマブである。抗体の用量は、静脈内注入により投与される約0.15mg/kg〜2mg/kgの範囲内でありうる。場合によって、用量は約0.5mg/kg〜約1mg/kgである。用量は、例えば、8〜16週間ごと、1〜14週間ごと、または13週間ごとに投与されうる。認知低下は、治療される患者と、これもまた非保有状態にあり、軽度または中等度のアルツハイマー病を有する対照患者集団(例えば、臨床試験における対照集団)内における認知低下とを比較することによって測定することができる。認知能力は、ADAS−COG、NTB、MMSE、またはCDR−SBなどのスケールにより測定することができる。上記で説明した通り、患者におけるこのようなスケール(ある時間経過にわたるポイント)の変化率を、対照患者集団における平均低下と比較することができる。
【0235】
本発明はまた、軽度または中等度のアルツハイマー病を有すると診断された非保有患者における脳容量の減少を軽減する方法も提供する。該方法は、AβのN末端エピトープに特異的に結合する有効な抗体のレジメを、このような患者に施すステップを伴う。抗体は、例えば、Aβの残基1〜11、1〜7、1〜5、または3〜7内のエピトープに結合しうる。場合によって、抗体は、バピネオズマブである。抗体の用量は、静脈内注入により投与される約0.15mg/kg〜2mg/kgの範囲内でありうる。場合によって、用量は約0.5mg/kg〜約1mg/kgである。用量は、例えば、8〜16週間ごと、1〜14週間ごと、または13週間ごとに投与されうる。脳容量は、MRIにより測定することができる。患者における脳容量の変化は、これもまた非保有状態にあり、軽度または中等度のアルツハイマー病を有する対照患者集団(例えば、臨床試験における対照集団)内における脳容量の平均減少と比較することができる。
【0236】
本発明は、アルツハイマー病(例えば、軽度または中等度)を有する非保有患者を治療する方法であって、AβのN末端エピトープに特異的に結合する抗体のレジメがこのような患者に施される方法を提供する。該レジメは、約0.1μg/ml〜約60μg/ml、場合によって、0.4〜20または1〜5μg/mlの範囲にある平均抗体血清濃度を維持するのに有効である。加えて、または代替的に、該レジメは、600〜3000pg/ml、700〜2000pg/ml、または800〜100pg/mlの平均Aβ血漿濃度を維持するように投与される。場合によって、このような方法における抗体は、バピネオズマブである。
【0237】
本発明はまた、ApoE4保有者であり、アルツハイマー病を有する患者を治療する方法であって、投与される抗体が、C1qおよび/または(1つまたは複数の)Fcγ受容体に対する結合を低下させる定常領域変異を有する方法も提供する。場合によって、該抗体は、AβのN末端領域内のエピトープに結合する抗体である。場合によって、該抗体は、AAB−003である。場合によって、患者は、例えば、血管原性浮腫についてMRIにより3カ月ごとにモニタリングされる。血管原性浮腫が発生する場合、該頻度または用量を低下させるかまたは除外することができる。血管原性浮腫は、場合によって、コルチコステロイドによって治療することもできる。血管原性浮腫の消散後、治療の投与を再開することができる。場合によって、用量は、経時的に上昇させることができる。
【0238】
本発明はまた、ApoE4状態に関わりなく、おそらくアルツハイマー病を有すると診断された患者を治療する方法も提供する。このような方法では、AβのN末端領域に特異的に結合する有効なレジメの抗体が投与される。抗体は、変異を有さない以外は同一の抗体と比べて、C1qおよび/またはFcγ受容体に対する結合を低下させる定常領域変異を有する。場合によって、抗体は、AβのN末端領域内のエピトープに結合する抗体である。場合によって、抗体は、AAB−003である。場合によって、患者は、血管原性浮腫についてMRIにより、例えば、3カ月ごとにモニタリングされる。血管原性浮腫が発生する場合、該頻度または用量を低下させるかまたは除外することができる。血管原性浮腫は、場合によって、コルチコステロイドによって治療することもできる。血管原性浮腫の消散後、治療の投与を再開することができる。場合によって、用量は、血管原性浮腫の消散後、経時的に上昇させることができる。
【0239】
本発明は、アルツハイマー病を有するApoE4保有患者を治療する方法であって、該疾患を有する患者に、AβのN末端エピトープに特異的に結合する抗体を皮下投与するステップを含む方法を提供する。場合によって、抗体は0.01〜0.6mg/kgの用量および毎週〜毎月の頻度で投与される。場合によって、抗体は0.05〜0.5mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は0.05〜0.25mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週〜隔週0.015〜0.2mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週〜隔週0.05〜0.15mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週0.05〜0.07mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週0.06mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は隔週0.1〜0.15mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎月0.1〜0.3mg/kgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎月0.2mg/kgの用量で投与される。
【0240】
本発明はまた、アルツハイマー病を有するApoE4保有患者を治療する方法であって、該疾患を有する患者に、AβのN末端断片に特異的に結合する抗体を皮下投与するステップを含み、該抗体が1〜40mgの用量および毎週〜毎月の頻度で投与される方法を提供する。場合によって、抗体は5〜25mgの用量で投与される。場合によって、抗体は2.5〜15mgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週〜隔週1〜12mgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週〜隔週2.5〜10mgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週2.5〜5mgの用量で投与される。場合によって、抗体は毎週4〜5mgの用量で投与される。場合によって、抗体は隔週7〜10mgの用量で投与される。
【0241】
VIII.医薬組成物
本発明の作用物質は、活性治療剤および薬学的に許容される他の各種の成分を含む、医薬組成物として投与されることが多い。「Remington’s Pharmaceutical Science」(第15版、ペンシルベニア州、イーストン、Mack Publishing社(1980))を参照されたい。好ましい形態は、投与および治療的適用の意図される方式に依存する。該組成物はまた、所望の製剤に応じて、動物またはヒトへの投与のための医薬組成物を調合するのに一般に用いられる媒体として規定される、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤も含みうる。希釈剤は、該組合せの生物学的活性を損なわないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩液、リンゲル液、デキストロース液、およびハンクス液である。加えて、医薬組成物または医薬製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性、非免疫原性の安定剤なども含みうる。
【0242】
医薬組成物としてはまた、タンパク質などの大型でゆっくりと代謝される高分子、キトサンなどの多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(ラテックス官能化セファロース(商標)、アガロース、セルロースなど)、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(油滴またはリポソームなど)も挙げることができる。加えて、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)としても機能しうる。
【0243】
作用物質は、非経口投与されることが典型的である。抗体は通常、静脈内投与または皮下投与される。能動的免疫反応を誘導する作用物質は通常、皮下投与または筋肉内投与される。非経口投与の場合、本発明の作用物質は、水油、生理食塩液、グリセロール、またはエタノールなど、無菌の液体でありうる医薬担体を伴う、生理学的に許容される希釈剤中における該物質の溶液または懸濁液による注射用投与物として投与することができる。加えて、保湿剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質が、組成物中に存在しうる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物または合成起源の成分、例えば、ラッカセイ油、大豆油、および鉱油である。一般に、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、特に注射用液に好ましい液体担体である。抗体は、デポ注射またはインプラント調製物の形態で投与することができ、これは、有効成分の持続放出を可能とする形で調合しうる。
【0244】
一部の好ましい製剤は、US20060193850において説明されている。好ましい製剤は、約5.5〜約6.5のpHを有し、i.約1mg/ml〜約30mg/mlの濃度の、少なくとも1種のAβ抗体;ii.約4%w/vの濃度のマンニトールまたは約150mMの濃度のNaCl;iii.約5mM〜約10mMのヒスチジンまたはサクシネート;およびiv.10mMのメチオニンを含む。場合によって、製剤はまた、約0.001%w/v〜約0.01%w/vの濃度のポリソルベート80も含む。場合によって、製剤は、約6.0〜約6.5のpHを有し、約10mg/mlのAβ抗体、約10mMのヒスチジン、および約4%w/vのマンニトール、ならびに約0.005%w/vのポリソルベート80を有する。場合によって、製剤は、約6.0〜約6.2のpHを有し、約20mg/mlのAβ抗体、約10mMのヒスチジン、および約4%w/vのマンニトール、ならびに約0.005%w/vのポリソルベート80を有する。場合によって、製剤は、約6.0〜約6.2のpHを有し、約30mg/mlのAβ抗体、約10mMのヒスチジン、および約4%w/vのマンニトール、ならびに約0.005%w/vのポリソルベート80を有する。
【0245】
組成物は、溶液または懸濁液としての注射剤として調製されることが典型的であり、注射前における液体媒体中における溶解または懸濁に適する固体形態もまた調製することができる。調製物はまた、上記で論じた通り、アジュバント効果を増強するためのポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマーなどのリポソームまたはマイクロ粒子内に乳化することもでき、封入することもできる(Langer、Science、第249巻、1527ページ(1990);およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews、第28巻、97ページ(1997)を参照されたい)。本発明の作用物質は、デポ注射またはインプラント調製物の形態で投与することができ、これは、有効成分の持続またはパルス放出を可能とする形で調合しうる。
【0246】
投与の他の方式に適するさらなる製剤としては、経口製剤、鼻腔内製剤、および肺内製剤、座剤、および経皮適用が挙げられる。座剤の場合、結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み、このような座剤は、約0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で有効成分を含有する混合物から処方できる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどの賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤、または粉末の形態をとり、10%〜95%の有効成分、好ましくは25%〜70%の有効成分を含有する。
【0247】
IX.キットおよびラベル
本発明は、AβのN末端エピトープに結合する抗体を含有するキットを提供する。抗体は、バイアル内における凍結乾燥形態または溶液形態、場合によって、単回投与形態で提供されることが典型的である。バイアル内の抗体は、無菌であり、GMP条件下で製造されることが典型的である。キットはまた、希釈剤、シリンジ、注射針、静脈内点滴器、または皮下点滴器なども含みうる。キットは、指示書(例えば、添付文書またはラベル)を含有することが典型的である。一部のキットにおいて、指示書は、抗体がApoE4保有者に供給されるべきものか、もしくはApoE4非保有者に供給されるべきものか、またはその両者に供給できるのかを指定する。指示書はまた、抗体が、ApoE4保有者に供給されるべきでないことも指定しうる。一部のキットにおいて、指示書は、ApoE検査のための情報または供給源も提供しうる。
【0248】
一部のキットにおいて、指示書は、抗体を投与することにより達成しうる結果を指定する。その結果は、認知低下の阻害を含みうる。指示書はまた、比較を目的として、対照患者における認知低下の測定値(典型的には、このような患者集団に由来する平均値)も含みうる。認知低下は、例えば、ADAS−COG、NTB、MMSE、またはCDR−SBによって測定することができる。同様に、指示書は、脳容量または脳室容量の減少の阻害について言及しうる。指示書はまた、対照患者における脳容量または脳室容量の減少についての測定値(典型的には、比較を目的とするこのような患者集団に由来する平均値)も含みうる。
【0249】
一部のキットにおいて、指示書は、血管原性浮腫を含む潜在的な副作用を指定する。指示書はまた、3カ月間隔、6カ月間隔、または1年間隔でMRIを実施するなどのモニタリングレジメも指定しうる。指示書は、上記で論じた通り、ApoE4非保有者およびApoE4保有者に応じて異なるモニタリングレジメを指定しうる。指示書はまた、血管原性浮腫の発生および/または消散、ならびに血管原性浮腫についての治療測定値に基づき、コルチコステロイドなどの投与スケジュールの変更も指定しうる。
【0250】
キットはまた、以前の脳外傷、CVA、脳腫瘍、多発性ラクナ梗塞、静脈血栓性疾患、抗血栓治療(ヘパリン/クマジン)、または心室細動など、治療が禁忌される患者についての指示書も含む。キットはまた、投与経路(例えば、皮下投与)、用量、または投与頻度についての指示書も提供しうる。
【0251】
X.変異IgG1定常領域を有する抗体
本発明は、位置234、235、および237(EU番号付け)におけるアミノ酸が各々アラニンであるヒトIgG1定常領域、およびこのような定常領域を含有する単離抗体または融合タンパク質を提供する。このような抗体としては、上記で説明した通り、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体が挙げられる。このような抗体の例としては、実施例で説明するような、Aβに対する抗体、ルイスY抗原に対する抗体、および5T4腫瘍抗原を含む。融合タンパク質は、定常領域に連結された受容体(例えば、TNF−アルファ受容体)の細胞外ドメインを含む。抗体の定常領域にポリペプチドを融合またはコンジュゲートさせる方法は、例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,095号、同第5,112,946;EP0307434;EP0367166;EP0394827により説明されている。
【0252】
これらの変異を組み込む抗体または融合タンパク質は、薬物動態および製造の容易さを含むIgG1アイソタイプの利点を与えうるだけでなく、これらの変異を欠く以外は同一の抗体と比べて、エフェクター機能を低下させるかまたは除去することができる。エフェクター機能は、1つまたは複数のFcγ受容体に対する結合、C1Qに対する結合、抗体依存性細胞傷害作用、および/または抗体依存性補体活性において損なわれることが典型的である。一部の抗体の場合、これらの活性すべてが低下するかまたは除去される。上記の3つの変異を有する抗体と、該変異を有さない以外は同一の対照抗体との間で、該活性における実験誤差を超えて検出可能な差が存在しない場合、活性は除去されたと考えられる。
【0253】
典型的には、変異定常領域は、CH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。しかし、CH1ドメインは、特に、融合タンパク質において、合成リンカーで置換されることがある。一部の定常領域は、C末端リシン残基を潜在的な例外として、全長IgG1定常領域を含有する。変異定常領域の例示的な配列は、配列番号62および63により提供される。これらの配列は、同62が同63には存在しないC末端リシンを含有する点で異なる。
【0254】
配列62および63は、ヒトIgG1のG1mzアロタイプを表す。アロタイプの他の例は、上記に記載されている。アロタイプとは、多型位置において異なる個体間で異なる、ヒトIgG1定常領域における天然多型変異である。G1mzアロタイプは、位置356におけるGluおよび位置358におけるMetを有する。
【0255】
配列番号62および63の他のアロタイプ変異体も含まれる。また、位置234、235、および237においてアラニン残基を有するヒトIgG1定常領域、天然アロタイプにおける多型位置を占める残基の任意の順列もまた含まれる。
【0256】
位置234、235、および237においてアラニンを有する変異IgG1定常領域は、天然のヒトIgG1定常領域と比べて、さらなる変異を存在させうる。さらなる変異が存在しうる例として、US7,365,168において説明される通り、位置234、235、および237におけるアラニン変異を、位置428および/または250における変異と組み合わせることができる。位置428および250における変異は、結果として、半減期の延長をもたらしうる。位置234、235、および237における変異と組み合わせうるさらなる変異は、Aβに結合する抗体と関連して、第IV節Aで説明した。このような一部の定常領域は、さらなる変異を存在させない。このような一部の定常領域は、Fcγ受容体および/または補体の結合に影響するIgG1定常領域またはその近傍領域(例えば、EU番号付けによる残基230〜240および325〜325)において、さらなる変異を存在させない。細胞内プロセッシングによるC末端リシン残基の削除は、変異とは考えられない。同様に、アロタイプ間で異なる多型部位を占める天然アミノ酸も、変異アミノ酸ではなく、天然アミノ酸と考えられる。
【0257】
XI.実験モデル、アッセイ、および診断
A.動物モデル
このようなモデルとしては、例えば、Gamesら、前出により説明される、APPの717(APP770番号付け)変異を有するマウス、およびMcConlogueら、US5,612,486;およびHsiaoら、Science、第274巻、99ページ(1996);Staufenbielら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第94巻、13287〜13292ページ(1997);Sturchler−Pierratら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第94巻、13287〜13292ページ(1997);Borcheltら、Neuron、第19巻、939〜945ページ(1997);Richardsら、J.Neurosci.、第23巻、8989〜9003ページ、2003;Cheng、Nat Med.、第10巻、第11号、1190〜2ページ、2004;Hwangら、Exp Neurol.、2004年3月などにより説明される、APPの670/671(APP770番号付け)スウェーデン変異を有するマウスが挙げられる。トランスジェニック動物に含めるのに適するAPP変異は、Ile、Phe、Gly、Tyr、Leu、Ala、Pro、Trp、Met、Ser、Thr、Asn、またはGlnに対応するコドンへの、野生型Val717(APP770番号付け)コドンの変換を含む。Val717に好ましい置換は、Pheである。別の適切な変異は、北極変異E693G(APP770番号付け)である。アミロイド前駆体タンパク質およびプレセニリントランス遺伝子の両方を有するPSAPPマウスは、Takeuchiら、American Journal of Pathology、2000、第157巻、331〜339ページにより説明されている。アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリントランス遺伝子、およびタウトランス遺伝子を有する三重トランスジェニックマウスは、LaFerla(2003)、Neuron、第39巻、409〜421ページにより説明されている。別の有用なトランスジェニックマウスは、APPトランス遺伝子およびTGF−βトランス遺伝子の両方を有する。トランス遺伝子内の配列をコードするタンパク質は、ニューロン発現に適する1つまたは複数の調節エレメントと作動性に連結される。このようなエレメントとしては、PDGF、プリオンタンパク質、およびThy−1プロモーターが挙げられる。別の有用なトランスジェニックマウスは、スウェーデン変異および717変異の両方を有するAPPトランス遺伝子を有する。別の有用なトランスジェニックマウスは、北極変異(E693G)を有するAPPトランス遺伝子を有する。
【0258】
B.アミロイド関連病態を検出するアッセイ
恐怖条件付け状況学習(contextual fear conditioning assay)アッセイ:恐怖条件付け状況学習(CFC)とは、大半の動物、例えば、哺乳類において、極めて信頼性が高く、迅速に得られる一般的な学習形態である。被験動物は、その嫌悪経験との関連付けのため、以前は中間的であった刺激および/または環境を恐れるようになる(例えば、Fanselow、Anim.Learn.Behav.、第18巻、264〜270ページ(1990);Wehnerら、Nature Genet.、第17巻、331〜334ページ(1997);Caldaroneら、Nature Genet.、第17巻、335〜337ページ(1997)を参照されたい)。
【0259】
恐怖条件付け状況学習(は、例えば、神経変性疾患もしくは神経変性障害、Aβに関連する疾患もしくは障害、アミロイド原性疾患もしくはアミロイド原性障害などの疾患もしくは障害、認知機能に影響する好ましくない遺伝子変化(例えば、遺伝子変異、遺伝子破壊、または望ましくない遺伝子型)の存在、および/または認知能力に対する作用物質、例えば、Aβコンジュゲート剤の有効性の結果としての認知機能または認知機能不全を判定するのにとりわけ有用である。したがって、CFCアッセイは、認知疾患または認知障害、また、特に、脳の1つまたは複数の領域、例えば、海馬、鉤状回、帯状回皮質、前頭前皮質、鼻周囲皮質、感覚皮質、および側頭葉内側部に影響する疾患または障害を予防または治療するための作用物質の治療効果を個別に調べ、かつ/または検証する方法を提供する(US2008145373を参照されたい)。
【0260】
C.抗体のエフェクター機能を判定する食作用アッセイ
ex vivoアッセイにおいて、アミロイド沈着物の除去について抗体をスクリーニングすることができる。アルツハイマー病を有する患者または特徴的なアルツハイマー病態を有する動物モデルの脳に由来する組織試料を、in vitroの培地中において、ミクログリア細胞など、Fcγ受容体を保有する食細胞、および被験抗体と接触させる。食細胞は、BV−2、C8−B4、またはTHP−1などの初代培養物または初代細胞株でありうる。反応が進行する前のベースライン値から始め、また、反応時における1種または複数種の試験値など、一連の測定を、反応混合物中におけるアミロイド沈着物量について行う。抗原は、例えば、Aβまたはアミロイドプラークの他の成分に対して蛍光標識された抗体を伴う染色により検出することができる。アミロイド沈着物の反応時におけるベースラインと比べた低下は、被験抗体が除去活性を有することを示す。
【0261】
一般に、アイソタイプ対照を添加して、適切なFc−Fcγ受容体間相互作用が観察されることを確認する。さらなる対照は、非特異的抗体および/食細胞上におけるFγc受容体に対して既知の親和性を有する抗体の使用を含む。このようなアッセイは、ヒトまたは非ヒトの組織および食細胞、ならびにヒト抗体、非ヒト抗体、またはヒト化抗体により実行することができる。
【0262】
ex vivoの食作用アッセイに変化を加えることで、特定の抗体とFcγ受容体との間における相互作用の検出をなお可能としながらも、Aβ含有組織が不要となる。この場合、アッセイは、抗体でコーティングされた固体マトリックスに依拠する。固体マトリックスは、一般に、食細胞により貪食されうる形態、例えば、サイズがナノメートル〜数ミクロンのオーダーであるビーズまたは粒子である。該粒子が追跡されうるように、検出可能部分、例えば、フルオロフォアに固体マトリックスをコンジュゲートさせることができる。この種の食作用アッセイ用のキットおよび材料は、例えば、Bechman Coulter社(カリフォルニア州、フラートン)およびMolecular Probes社(オレゴン州、ユージーン)から市販されている。このようなアッセイの例は、実施例の節で記載される。
【0263】
D.補体結合アッセイ
抗体のエフェクター機能はまた、補体、特に、C1qポリペプチドと相互作用する抗体の能力を検出することによっても決定することができる(例えば、Mansouriら(1999)、Infect.Immun.、第67巻、1461ページを参照されたい)。Aβ特異的抗体の場合、固体マトリックス(例えば、マルチウェルプレート)をAβでコーティングし、抗体に曝露し、標識されたC1qに曝露することができる。代替的に、C1qをマトリックスに結合させ、標識された抗体を添加することもできる。代替的に、抗体をマトリックスに結合させ、C1qに曝露した後、C1qを検出することもできる。このようなin vitroにおける結合アッセイは当技術分野において一般的であり、必要に応じて改変および最適化を行うことがある。
【0264】
E.診断法
認知機能評価ツール:認知症患者の認知機能および精神機能を定量化する多数のツールが存在する。これらには、NTB、DAD、ADAS、MMSE、CDR−SOB、NINCDS−ADRDA基準、およびRMHI(Rosenにより改変されたHachinskiによる虚血)スコアが挙げられる。これらのツールは、当技術分野で一般に知られている。
【0265】
NTB(神経心理検査バッテリー)は、記憶機能および実行機能について十分に許容された9つの検査からなる。該検査バッテリーは、最近のEMEA指針において許容されている。患者は、一般に、以下の記憶検査:Weschsler記憶スケール視覚性対連合課題、Weschsler記憶スケール言語性対連合課題、およびReyによる聴覚言語学習検査において定期的に評価される。実行機能検査は、Weschsler記憶スケール数唱課題、言語流暢性検査、および分類呼称検査を含む。この検査は、軽度のAD患者における変化、およびアミロイド低下剤の臨床効果に対して高感度である。
【0266】
DAD(認知症能力障害評価)検査は、アルツハイマー病を有する患者の機能的な能力障害を測定するために開発され、検証された(Gelinasら(1999)Am J Occup Ther、第53巻、471〜81ページ)。介護者は、先行する2週間において試みられた、日常生活の器具による活動および基本的活動の両方を患者が実行する能力についての質問に答える。次いで、試みられたDAD活動のうちで、成功裏に完了した活動の比率を決定し、百分率として報告する。
【0267】
ADAS−Cogとは、アルツハイマー病評価スケールの認知部分を指す(Rosenら(1984)、Am J Psychiatry、第141巻、1356〜64ページを参照されたい)。該検査は、記憶、言語、実行、注意、および他の認知能力における障害を測定する11の作業からなる。
【0268】
NINCDS−ADRDA(神経伝達障害ならびに脳卒中およびアルツハイマー病関連障害の評価)は、アルツハイマー病において損なわれる8つの基準:記憶、言語、知覚スキル、注意、構成能力、方向付け、問題解決、および機能的能力を測定する(McKhannら(1984)、Neurology、第34巻、939〜44ページ)。
【0269】
MMSE(ミニメンタルステート検査)、CDR−SOB(臨床認知症評価法)、およびRMHI(Rosenにより改変されたHachinskiによる虚血)スコアもまた、当技術分野で知られている(例えば、Folsteinら(1975)、J Psych Res、第12巻、189〜198ページ;Morris(1993)、Neurology、第43巻、2412〜2414ページ;およびRosenら(1980)、Ann Neurol.、第17巻、486〜488ページを参照されたい)。
【0270】
バイオマーカー:ヒトにおけるアルツハイマー病の症状についてのバイオマーカーは、MRIによる容量測定、血液およびCSF中のタンパク質レベル、ならびにPET(陽電子放出トポグラフィー)を用いて測定することができる。例えば、抗体−Aβ間の結合を裏付けるバイオマーカーは、CSFおよび血漿中におけるAβ40およびAβ42、また、例えば、PETによるアミロイドプラーク造影を含む。疾患による変異を指し示すバイオマーカーとしては、脳形状(MRI)、CSFタウレベル、およびリン酸化タウレベル、ならびに、ここでもまた、アミロイドプラーク造影が挙げられる。
【実施例1】
【0272】
第1相試験
アルツハイマー病(軽度〜中等度)の疑いがあると診断された111名の患者は、多重漸増用量試験(MAD)において、0.15〜2.0mg/kgの範囲の用量でヒト化抗体であるバピネオズマブを投与された。抗体は、投与レジメが完了するまで、13週ごとに静脈内注射により投与された。また、患者は、ApoE4状態に対して分類された。表2は、試験における11名の患者がMRIによって検出された血管原性浮腫を経験したことを示す。また、表2は、これらの患者の数名が経験した症状を示す;他の患者では、血管原性浮腫の症状はなかった。表3は、投与に関係ない遺伝子型によって層状になった血管原性浮腫のリスクを示す。リスクは、E4対立遺伝子を欠損している患者でたった2%であるが、2つのE4対立遺伝子を有する患者では35%である。表4は、最大の投与群(2mg/kg)のみにおける血管原性浮腫のリスクを示す。2つのE4対立遺伝子を有する患者に対する血管原性浮腫のリスクは60%であり、1つの対立遺伝子を有する患者に対するリスクは35%である。
【0273】
表5は、異なる用量での血管原性浮腫のリスクを示す。血管原性浮腫のリスクは、0.15〜0.5mg/mlの用量に対してすべての遺伝子型について非常に低いが、1mg/kgの用量で2つのE4対立遺伝子を有する患者に対して、および2mg/kgの用量で1つのE4対立遺伝子を有する患者に対して有意となり始める。これらのデータは、血管原性浮腫のリスクがApoE遺伝子型および用量および患者に依存することを指示する。
【0274】
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【表4】
【表5】
【実施例2】
【0275】
第2相試験
無作為に選ばれた二重盲検のプラセボ対照の多重漸増用量試験は、317名のスクリーニングされた患者の初期集団から無作為に選ばれた234名の患者の集団に行われた。患者はApoE4保有状態について評価され、保有者(同型および異型)および非保有者は同じ処置を受けた。試験対象患者基準は、AD疑の診断;50〜85歳の高齢;MMSEスコア16〜28;Rosen改変Hachinski虚血スコア≦4;有能な世話人とともに家または地域社会で暮らすこと;ADの診断と一致したMRI;容量分析のための十分な質のMRIスキャン;非排他的条件の処置のための薬剤の安定した用量;スクリーニング前の120日間のAchEIおよび/またはメマンチンの安定した用量であった。主な排他的な基準は、主要な精神障害(例えば、大うつ病性障害)の現在の兆候;患者の状態の悪化をもたらす可能性がある現在の全身病;臨床的に重要な自己免疫疾患または免疫系の障害の病歴または痕跡;下記のいずれかの病歴:臨床的に明らかな発作、臨床的に重要な頸動脈または椎骨脳底の狭窄/プラーク、発作(seizure)、過去5年以内の癌、過去2年以内のアルコール/薬物依存症、過去2年以内の心筋梗塞、認知力に影響を及ぼす可能性がある重大な神経学的疾患(AD以外)のいずれかの病歴であった。本発明のキットおよびそれらの付随するラベルまたは添付文書は、上記排他的基準のいずれか、およびそのいずれかのサブコンビネーションを満たす患者について排除することを示してもよい。
【0276】
4つの投与レベル(0.15、0.5、1.0および2.0mg/kg)、ならびにプラセボを使用した。124名の患者はバピネオズマブを受け、110名の患者はプラセボを受けた。これらの患者のうち、それぞれ122名および107名は有効性について分析された。バピネオズマブは、100mgのバピネオズマブ(20mg/mL)、10mMヒスチジン、10mMメチイオニン、4%マンニトール、0.005%ポリソルベート−80(植物由来)、pH6.0を含む5mlのバイアル中の滅菌水溶液として供給された。プラセボは、バピネオズマブ以外は同じ条件を含む一致しているバイアルで供給された。試験薬剤は、通常の生理食塩水に希釈され、約1時間かけて、100mlの静脈(IV)注射液として投与された。
【0277】
処置期間は、18カ月間、6回の静脈注射で13週間の間隔を空けた。MRIスキャンを含む安全性の追跡調査の来院は、各投与後の6週間行われた。処置期間後、患者は、非盲検継続における継続的処置のための1年の安全性追跡調査でモニタリングされた。試験の主目的は、軽度〜中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの安全性と寛容性を評価することであった。この試験の第1の評価項目は、(アルツハイマー病評価尺度−認知副尺度(ADAS−Cog)、認知症の障害評価尺度(ADA)、ならびに安全性および寛容性)であった。ADAS−Cog12は、ADAS−Cog11と比較した、10項目の単語リストの遅延再生を含むさらなる試験を含む。この試験の第2の目的は、軽度〜中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの有効性を評価することであった。他の評価項目は、神経心理テストバッテリー(NTB)、神経精神医学的インベントリー(NPI)、臨床認知症評価ボックス合計(CDR−SB)、MRI脳容量測定、およびCSF測定であった。
【0278】
全集団、投与群によって分類した集団、および保有状態によって分類した集団の概要を以下の表に示す。
【表6】
【表7】
【表8】
【0279】
ADAS−COGおよびDAD尺度に基づく認知低下の線形モデルを用いた種々の用量集団とプラセボの比較は、用量集団または組み合わせ用量集団群のいずれについても統計的な有意性に到達しなかった。
【0280】
(a)有効性が決定されたすべての患者に基づいて、および(b)全6回の投与(「完了者」)を受けた患者であって、様々な理由で脱落した患者を含まない患者だけに基づいて、直線的な低下を仮定しない統計モデルを用いてデータを再分析した。非直線的モデルはより正確であると考えられ、これは、認知能力が時間につれて必ずしも直線的には減少しないためである。
【0281】
有効性が決定されたすべての患者(ApoE4保有者と非保有者の組合せ)の非直線的な減少モデルを用いた結果を
図1に示す。MITT(修正包括解析)分析は、直線性を仮定しない繰り返しの測定モデルを用いて行われた。X軸上のバーは、プラセボと比較して、好ましい結果(すなわち、減少の阻害)を表す。統計有意差は得られなかったが、ADAS−cogおよびNTB尺度を用いて、組み合わせ投与集団について傾向が観察された(0.1≧p≧0.05)。
【0282】
完了者集団(ApoE4保有者と非保有者の組合せ)についての結果を
図2に示す。完了者は、全6回に注射および78週での有効性評価を受けた患者として定義された。軸上のバーは、プラセボと比較して改善を指す。統計有意差は、ADAS−cogおよびDAD測定のための組み合わせ用量群について得られ、陽性傾向(0.1≧p≧0.05)は、NTB測定について見出された。
【0283】
別々の分析が、非線形モデルを用いたApoE4保有者および非保有者、ならびに(a)有効性が測定されたすべての処置された患者および(b)完了者について行われた。
【0284】
図3は、有効性が測定されたすべてのApoE4保有患者に関する結果を示す。統計有意差は、認知尺度のいずれについても見出されなかった。また、MITT分析は、直線性を仮定しない繰り返しの測定モデルを用いた。
図4は、上記で定義されるように、ApoE4保有完了者に関する分析を示す。また、統計有意差は、いずれの尺度(ADAS−cog、DAD、NTB、およびCDR−SB)によっても見出されなかった。しかしながら、好ましい方向変化(軸上のバー)は、特にADAS−cogおよびDAD測定について見出された。
【0285】
図5および
図6は、有効性が測定されたすべてのApoE4非保有患者についての結果を示す。統計有意差は、組み合わせ投与集団に対するADAS−cog、NTB、CDR−SBおよびMMSE測定について得られた。軸上のバーは、プラセボと比較した改善を指す。
図9は、これらのパラメータ(ADAS−cog、上段左、DAD、上段右、NTB、下段左、CDR−SB、下段右)の時間経過分析を示す。処置された患者についての認知能力の減少は、ADAS−cog、NTBおよびCDR−SB尺度のすべての時間点でプラセボの減少より少なかった。
図7および8は、上記で定義されるように、ApoE4非保有完了者についての分析を示す。統計有意差は、ADAS−cog、NTB、CDR−SBおよびMMSE測定についても観察された。また、軸上のバーはプラセボと比較した改善を指す。
【0286】
MRIは、試験中、各注射後の6週間、患者当たり最大7回行われた。脳の変化は、脳容量、心室容量、脳境界シフト積分、および心室境界シフト積分によって評価された。脳容量変化の測定としての境界シフト積分(BSI)は、登録された反復三次元磁気共鳴スキャンから導いた。BSIは、直接的にはボクセル強度から、所定の脳構造の境界が移動した全容量、したがって、容量変化を決定する。心室シフト積分は、心室空間変化の類似した測定である。これらのパラメータの両方は、アルツハイマー病が進行するにつれて増加する。したがって、プラセボと比較して、これらのパラメータ増加の阻害は、処置の陽性の(すなわち、所望の)効果を示す。
【0287】
処置された集団の全体(保有者および非保有者)では、78週間にわたって、脳境界シフト積分によって測定された脳容量にも、心室境界シフト積分によって測定された心室容量にも、プラセボ集団と比較した変化の有意差は見出されなかった。
【0288】
処置された非ApoE4保有者集団では、脳容量の減少は、非ApoE4プラセボ集団よりも有意に低かった(平均−10.7cc;95%CI:−18.0〜−3.4;p=0.004)。また、プラセボと比較した心室容量の増加は減少したが、その変化は統計上の有意差に至らなかった。ApoE4プラセボ集団と比較した脳容量の変化には有意な変化がなかった。しかしながら、心室容量は、プラセボと比較して有意に増加した(平均2.5cc;95%CI:0.1〜5.1;p=0.037)。
【0289】
全集団、ApoE4保有者集団、およびApoE4非保有者集団のBBSIの変化を
図10〜12に示す。
図12(ApoE4非保有者)は、処置された患者とプラセボに対する線の間の統計上有意な分離を示す。脳体積の変化は、すべての測定された時間点でプラセボと比較して、処置された集団において減少した。
図10(ApoE4保有者および非保有者との組合せ)は、処置された患者とプラセボ患者に対する線の分離を示すが、結果は統計上の有意差に至らなかった。
図11(ApoE4保有者)は、処置された患者とプラセボ患者に対する線が実質的に重ね合わせられることを示す。分析には、明確となるように時間とともに繰り返される測定モデルを使用し、APOE4保有状態に調整した。ベースラインは、全脳容量およびMMSE層であった。
【0290】
傾向は、試験中の52週間で、プラセボ処置された集団と比較して、バピネオズマブ処置された患者集団において、CSFリン酸化タウ(phospho−tau)の減少について観察された(
図13)。リン酸化タウは、アルツハイマー病の関連したバイオマーカーである。すべての処置された患者と対照の間で、タウのCSFレベルとAβ42の間には有意差は見出されなかった。この図は、ANCOVA分析に基づき、ベースライン値について調整されている。1名の脱落者が、0.15mg/kgプラセボ投与集団において排除された。
【0291】
処置は、一般に安全であり、十分に容認された。血管原性浮腫(VE)が、バピネオズマブ処置された患者においてだけ起こった。非保有者(2)よりもApoE4保有者(10)においてより頻繁にVEが起こり、用量の増加とともにより頻繁に起こった。2.0、1.0、0.5、および0.15mg/kgの用量で、それぞれ8、3、0、および1エピソードであった。第1または第2の投与後にすべてのVEエピソードが起こった。VEの大部分のエピソードは、MRIによってだけ検出され、臨床的症状は検出されなかった。VEエピソードは数週間から数カ月で消散した。1名の患者では、VEはステロイドで処置された。VEを除いて、および0.15mg/kg集団(他の集団よりも進行した疾患である患者を含む)を除いて、重大な悪影響は、処置群とプラセボ群の間で類似していた。悪影響は、一般に、軽度〜中等度であり、一時的であり、試験薬物とは無関係であると考えられ、患者の相対的に小さな比率で起こり、投与に関連しているようでもなかった。
【0292】
バピネオズマブの血清濃度、およびAβの血漿濃度は、
図14に示されるように、異なる投与集団に対して処置された患者において経時的に測定された。血清バピネオズマブについてのCmaxは、0.15mg/kg〜2.0mg/kgの異なる用量集団において約3.5〜50μg/mlの範囲であった。Aβの平均血漿濃度のプロファイルは、バピネオズマブによって投与を増加し、バピネオズマブの濃度が減少するにつれて減少する血漿Aβの濃度を用いた平均血清バピネオズマブのプロファイルを反映する。血漿Aβの濃度は、約500〜3000pg/mlの範囲であった。異なる投与集団の間のAβの血漿濃度の変化は、投与間の変化よりも少ない変化を示した。例えば、0.15mg/kgから2mg/kgに用量を増加させることは、約2の因数によって血漿Aβを増加させる。
【0293】
バピネオズマブの第1の注射後のPKパラメータは、以下の表9に要約される。
【0294】
【表9】
他に指定がなければN=6;
*n=5
‡第2回の注射のトラフ値;すべての値は、第1回の注射のトラフについての定量化の限界以下である
省略形:Cavg - 13週間の平均濃度;Cmin - 最小濃度(「トラフ」);Tmax - 最大濃度の時間;AUCinf-無限に外挿した濃度対時間曲線下の面積;CLss/F - 定常状態での血管外クリアランスの比率(CLss)およびバイオアベイラビリティーの範囲(F);Vz/F - 定常状態での分布の見かけ容量の比率(Vz)およびF;t1/2 - 排出(または末端)半減期、日数
【0295】
結論
1.この試験は、ApoE4保有者および非保有者が免疫療法に異なって反応するという証拠を示す。
2.この試験は、血管原性浮腫がApoE4保有者においてより頻繁に、およびより高い用量で起こるという証拠を示す。
3.この試験は、バピネオズマブを少なくとも6回の投与を受けた非ApoE4保有者および患者(ApoE4保有者および非保有者)における有効性の統計的に有意な証拠を示す。
4.この試験は、ある測定によって、全集団(ApoE4保有者および非保有者)およびApoE4保有者集団における傾向または好ましい方向変化の証拠を示す。統計上の有意差は、より大きな集団でも示される可能性がある。上記で論じたこれらの患者における代替の治療レジメは、上記で論じた有効性を改善する可能性が高い。
5.この試験は、処置が一般に安全であり、十分に寛容されるという証拠を示す。
【実施例3】
【0296】
アルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの皮下投与の臨床試験
皮下注射は、一般に投与が容易であり、精神的機能および協調が低下した患者、または非協力者に投与する介護人に配慮することができる。また、家で行うことも容易であり、患者への動揺が少なく、および費用もかからない。最終的に、皮下投与は、通常、静脈注射よりも、患者の系において組成物のより低いピーク濃度(Cmax)をもたらす。ピークの減少は血管原性浮腫の可能性を減少させ得る。
【0297】
これらの理由のため、臨床試験は、バピネオズマブの皮下投与について設計された。初期試験の第1の検査項目は、安全性と生物学的利用能である。これらが皮下投与に対して確立されると、上述した認知試験は、有効性を決定するために施行されることになる。
【0298】
初期のレジメでは、バピネオズマブは、24カ月間、13週ごとに、全9回の投与で患者に皮下投与される。すべての患者は、0.5mg/kgの用量を受ける。患者をスクリーニングし、例えば、抗体の血中濃度、心機能、および血管原性浮腫について、上記の実施例において記載されるように周期的にモニタリングされる。
【実施例4】
【0299】
特異的なマウスおよびヒト抗体の設計
アイソタイプが異なっているヒト化3D6抗体およびマウス3D6抗体の改変体および/または定常領域変異体が構築され、アミロイド沈着物の除去、認知機能および微小出血に対するエフェクター機能の減少の効果を試験した。Aβタンパク質に対する抗体で処置されたマウスは、同様の処置を受けているヒト患者において観察された血管原性浮腫に関連し得る1つの因子である脳血管の微小出血の兆候をしばしば示す。
【0300】
ヒトIgG1、IgG2、およびIgG4と、マウスIgG1およびIgG2aのCH2ドメインとのアライメントを
図15に示す。このアライメントは、FcRおよびC1q結合に関与する残基を強調する。C1q結合モチーフは、種およびアイソタイプにわたって保存されている。FcR結合モチーフは、ヒトIgG1、IgG4、およびマウスIgG2aにおいて保存されている。
【0301】
以下の表は、重鎖のCH2領域になされた特定の改変を開示する。番号を付したアミノ酸は、EUシステムによる。フォーマットは、野生型の残基、位置、変異残基である。
【0302】
【表10】
【0303】
3D6誘導抗体のエピトープ結合領域は同一であり、Aβ結合の動態は同程度である。表11は、表10に列挙された3D6誘導抗体に結合するFc受容体の動態を開示する。これらの値は次のように得られた。
【0304】
ヒト化3D6誘導抗体について、以下のアッセイ条件を用いた。Biacore 3000、およびペンタ−His(配列番号93)抗体(Qiagen、カタログ#34660)をコーティングしたCM5チップは、ヒトFcγRI、FcγRII、およびFcγIII(R&D Systems、カタログ#1257−Fc、1330−CD、1597−Fc)のHisを付したドメインを組み合わせて使用された。各受容体は、ペンタ−His(配列番号93)抗体によって、センサーチップの1つのフローセルに個別に捕捉された。試験されるべき抗体の溶液を注入して、捕捉された受容体への会合速度および解離速度の測定を可能にした。測定が完了後、受容体および実験抗体は、pH2.5の緩衝液の注入によって除去された。次に、フローセルは、次のサイクルのために準備された。各サイクルは二重で測定され、同条件(例えば、濃度、流速、およびタイミング)が各試料について使用された。
【0305】
表11の値によって示されるように、バピネオズマブ(未改変Fc領域)は、相対的に高い親和性でヒトFcγR受容体のすべてに結合した。FcγRIに対するK
Dはnmの範囲であり、FcγRIIおよびIIIに対するK
Dはμmの範囲であった。後者の2つに関して、センサーグラムは典型的なファーストオン、ファーストオフの動態を示した。IgG4アイソタイプは、期待されたように、FcγRIに同様に結合したが、FcγRIIIには結合しなかった。2つのIgG1誘導体であるHu 3D6 2mおよび3mは、FcγRIまたはFcγRIIIのいずれかに検出可能な結合を示さなかった。
【0306】
マウス3D6誘導抗体について、同様の方法を用いて、マウスFcγRI、II、およびIIIへの結合を測定した。FcγRIおよびIIIは、活性化している受容体であるが、FcγRIIは、一般に阻害性であると考えられる。試験された抗体は、3D6 IgG2a、3D6 IgG1、およびIgG1変異体、3D6 1m、3mおよび4mであった。結果は、3D6 IgG2a結合の相対的割合として表された。表11に示されるように、3D6 IgG2aは、検出可能なFcγRI結合能を有する唯一の抗体であった。3D6 IgG1および3D6 3m IgG1は、類似のFcγRIIおよびIII結合プロファイルを有していた。
【0307】
【表11-1】
【表11-2】
*定常状態でのIgG2a対照の結合量と比較した結合量(RU)として定義される
**mFcγRIおよびmFcγRIIIは活性化している受容体であり、mFcγRIIは阻害性受容体である。別の強力な活性化受容体であるmFcγRIVは市販されていない。
***定常状態での結合は達成されなかった。動態フィッティングによりナノモル範囲でK
Dが推定された。
【0308】
上記の結果は、Hu 3D6 3m(AAB−003)抗体が試験された3つのうちで最も減少したFcγ受容体結合を有することを示す。試験された抗体のうち、3D6 1m IgG1マウス変異抗体は、FcγR結合が正常の10%近くまで減少したという点においてAAB−003に最も類似していた。
【実施例5】
【0309】
3D6誘導抗体のマウス試験
試験設計
1年齢のPDAPPマウスは、対照または表10に記載される3D6誘導抗体を用いて6カ月の処置パラダイムに晒された。負の対照は、無関係な非アミロイドエピトープに対するマウスIgG2a抗体であった。マウスは、3mg/kgの指示された抗体を毎週、IP注射された。
【0310】
血清抗体濃度は、ELISAによって試験の過程全体で検査された。レベルはすべての群において同等であった。6カ月後、マウスを屠殺し、灌流させた。脳切片および組織は、既知の方法(Jonhson−Woodら、(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、第94巻、1550〜55ページ)に従って調製された。
【0311】
アミロイド蓄積は、トランジェニックマウスの皮質および海馬において測定された。表12Aおよび12Bの結果は、アミロイド面積の減少の割合として指示される(p値は、IgG2a対照抗体と比較した有意差を指す)。
【表12】
【0312】
上記結果は、3D6抗体(IgG2a、IgG1および変異体)のすべてが、負の対照と比較して、アミロイド蓄積を有意に減少させたことを示す。試験された抗体間の差は統計的に有意でなかった。
【0313】
次に、3D6誘導抗体の効果は、血管アミロイド評価に対して試験された。表13は、指示された血管アミロイド評価を有するマウスの数、および4以上の評価を有する動物の割合を示す(p値は3D6 IgG2a抗体と比較した有意差を示す)。
【表13】
【0314】
上記データは、正の対照である3D6 IgG2aが、無関係なIgG2a抗体と比較して、血管アミロイドを有意に減少させたことを示す。また、3D6 IgG2aを用いた減少は、3D6 IgG1、3D6 1m IgG1および3D6 3m IgG1を用いた減少と比較して、統計的に有意であった。3D6 IgG1、3D6 1m IgG1および3D6 3m IgG1、ならびに対照IgG2aの間の差は、統計的に有意ではなかった。
【0315】
3D6抗体の誘導体がマウスにおいて微小出血をもたらすかどうかを決定するために、出血レベル、微小出血のマーカーが、3mg/kgの抗体で処理されたマウスの脳切片で調べられた。染色は、2%塩酸中の2%フェロシアン化カリウム、次に1%のニュートラルレッド溶液の対比染色によって行われた。表14は、指示されたレベルのヘモジデリン染色を有するマウスの割合と絶対数を指示する。結果は、アミロイドプラークの除去に効果的であることが上記で示されている3D6 1m IgG1(FcγR)および3D6 3m IgG1(C1q)が、3D6 IgG2aと比較して、微小出血レベルを減少させることを示す。3D6 IgG1、3D6 1m IgG1および3D6 3m IgG1間の差は、有意差に到達しなかったが、3D6 1m IgG1と3D6 IgG1間の差は傾向を示した。(p値は3D6 IgG2a抗体と比較した有意差を示す)。
【表14】
【実施例6】
【0316】
食作用アッセイ
材料および方法
ex vivoのプラーク食作用アッセイ:PDAPPマウス由来の凍結脳切片は、3D6 IgG1、および表10に記載されるエフェクター機能変異体(3D6 1m(FcγR1)および3D6 3m(C1q)、ともにマウスIgG1アイソタイプ)とともにプレインキュベートされた。3D6 IgG2aは、正の対照として使用され、無関係なIgG1およびIgG2a抗体はアイソタイプ対照として使用された。切片は、マウス小神経膠細胞の添加前30分間、0.3または3μg/mlの抗体により5%CO
2、37℃で処理された。共培養物は翌日抽出された。残りのAβは、ELISA(捕捉については266抗体、レポーターについては3D6−B)によって測定され、Aβクリアランスを評価した。
【0317】
マウスIgG2a誘導体の食作用を試験した。これらの実験は以下を含む:3D6 IgG2a(正の対照);非特異的なIgG2a(負の対照);3D6 1m(FcγR1、IgG2aアイソタイプ);および3D6 4m(FcγR1/C1q)抗体。条件は、上記された条件と類似していた。
【0318】
非プラーク食作用は、ヒト化3D6(Hu 3D6 IgG1)、および表10に記載されるエフェクター変異体(Hu 3D6 2m IgG1、Hu 3D6 3m IgG1、およびHu 3D6 1m IgG4)についてさらに決定された。負の対照は、無関係なヒトIgG1抗体であった。アッセイおよび検出条件は、その他には同一であった。
【0319】
in vitroのアッセイ:蛍光でコンジュゲートされたビーズ食作用のマウス抗体アッセイについて、10μMのFluoroSphere粒子(5×106)は、1mg/mlのマウスF(ab’2)、3D6 IgG2a、3D6 IgG1、または3D6 FcγR変異体とともに、2時間室温で回転しながらオプソニン化された。2時間後、ビーズを1mlのPBSで3回洗浄し、未結合のIgGを除去した。オプソニン化された粒子は、マウス3D6 Ig2a(3D62a)実験のためマウス小神経膠細胞に添加された(1:10)。ビーズを細胞とともに90分間、37℃でインキュベートした。次に、未結合の粒子をPBSで洗浄した。細胞は、DiffQuickを用いて、各染色について30秒で染色し、食作用は光学顕微鏡によって視覚化された。このアッセイについての対照は、オプソニン化されていないビーズ(未標識)(非特異的な飲み込みを検出するため)、およびヒトFc断片(3D62a+FC)(FcγR1をブロックするため)を用いた前処理であった。
【0320】
ヒト化抗体アッセイについて、条件および検出は同一であった。しかしながら、抗体は以下の通りであった:抗体なし(未標識;負の対照)、無関係なヒトIgG1(ヒトIgG1;正の対照)、Hu 3D6 IgG1、Hu 3D6 2m IgG1、Hu 3D6 3m IgG1、およびHu 3D6 1m IgG4。食作用細胞はヒトTHP−1細胞(PMAで分化された)であった。
【0321】
結果
ex vivoのプラーク食作用アッセイ:マウス3D6 IgG1抗体およびそのエフェクター変異体(3D6 1m(FcγR1)と3D6 3m(C1q))をアッセイし、アミロイドクリアランスを促進するそれらの能力を評価した(
図16を参照されたい)。3D6 IgG2a抗体は、3D6 IgG1、3D6 1m(FcγR1)および3D6 3m(C1q)よりも強固なクリアランスを刺激した。3D6 IgG1、3D6 1m(FcγR1)および3D6 3m(C1q)による食作用の刺激は、負の対照よりも大きかった。3D6 IgG1のFcドメインに対する変異体は、ex vivoのクリアランスアッセイにおいてクリアランスを刺激する能力を有意に弱めるようには見えない。
【0322】
IgG2a 3D6誘導体について、変異体は、野生型3D6 IgG2aと同等であり、無関係なIgG2アイソタイプに合致した対照よりも高い程度でクリアランスを刺激した(
図17を参照されたい)。このようにして、いずれの変異体もAβ食作用を完全に阻害しなかった。
【0323】
ヒト化抗体アッセイでは、Hu 3D6 IgG1のエフェクター領域に対する変異は、負の対照と比較して有意な除去活性を保持していた。Hu 3D6 IgG1は、ex vivoのAβプラーククリアランスアッセイにおいてクリアランスを刺激し、エフェクター領域変異体は適度に低下した機能を有していた。Hu 3D6 IgG4は、Hu 3D6 IgG1と同程度まで食作用を誘導し、3D6のIgG4ヒンジ領域に対する変異は、そのエフェクター機能を変化するように見えなかった(
図18を参照されたい)。
【0324】
in vitroのビーズ食作用アッセイ:ex vivoの結果がAβクリアランスに特異的であるかどうか、および3D6 IgG1におけるFc変異がそのエフェクター機能を変更させるかどうかを決定するために、非特異的なFc媒介のビーズ食作用アッセイを行った。マウスの抗体ビーズ食作用アッセイでは、3D6 IgG2aアイソタイプ抗体は、3D6 IgG1よりも効果的な食作用を媒介した(
図19を参照されたい)。3D6 IgG1におけるFc変異は、正の対照の3D6 IgG2aと比較して、食作用を刺激する能力を有意に減少させなかった。これは、3D6 IgG1におけるFc変異が食作用の減少に適度に効果的であったことを示す。
【0325】
ヒト化抗体アッセイでは、ex vivoのプラーク食作用アッセイで見られたFc変異の効果は、Fc媒介のビーズ食作用に関して確認された。また、ヒト化3D6のFc部分の変異は、蛍光ビーズの食作用を媒介する能力を減少させ、2mと3m変異体の間に有意な差がなかった。また、理論的には効果のないIgG4アイソタイプは、IgG1アイソタイプと同程度まで除去を媒介した(
図20を参照されたい)。3D6のIgG4ヒンジ領域に対する変異は、そのエフェクター機能を変化させるように見えない。
【実施例7】
【0326】
ヒト化3D6誘導体のC1q結合能
ヒト3D6誘導体は、C1qに結合し、補体反応を誘導する能力について試験された。標準的なC1q希釈系列プロトコールは、以下に記載されるように従った。同様のプロトコールは、例えば、Idusogieら、(2000)、J.Immunol.、第164巻、4178〜4184ページに報告されている。
【0327】
精製されたAβはELISAプレートにコーティングされ、
図21に指示される濃度の、以下のヒト化3D6抗体の1つに晒された:Hu 3D6 2m(IgG1)、Hu 3D6 3m(IgG1)、Hu 3D6 1m(IgG4)、および未修飾のHu 3D6(IgG1)。ELISAプレートを洗浄し、次にPBS中の0.02%カゼイン溶液で3〜24時間、ゆっくり撹拌しながらブロックした。ブロッキング溶液を除去し、さらなる洗浄の工程を有した。
【0328】
次に、精製されたヒトC1q(191391、MP Biomedicals)は、2×希釈系列を開始する2μg C1q/mlアッセイ緩衝液とともに、ELISAプレートに添加された。C1qは、撹拌しながら2時間結合させた。別の洗浄工程後、1:200で使用された100μl/ウェルの抗C1q抗体(Rb抗ヒトC1q FITCコンジュゲート、カタログ#F010DBS(dbiosys.com))を添加して、1時間撹拌した。結果は、抗C1q抗体を含まないブランクと比較された。
【0329】
図21に示されるように、ヒト化3D6誘導抗体は、C1qと有意に相互作用しなかった。これは、Fc領域に変異がないバピネオズマブとは対照的である。
【0330】
誘導抗体は、表面にAβを発現しているHEK293細胞の補体媒介の溶解を誘導する能力について試験された。標準的な
51Cr放出アッセイは、Phillipsら、(2000)、Cancer Res.、第60巻、6977〜84ページ;Aprileら、(1981)、Clin.Exp.Immunol.、第46巻、565〜76ページに報告されるように使用された。
【0331】
標的細胞は、表面上で3D6(DAEFR(配列番号94))によって検出されるAβエピトープとの融合タンパク質を発現するHEK293細胞(ATCC、CRL−1573)であった。Aβを含む配列は、pDisplayベクター(Invitrogen)に挿入された。pDisplayベクターは、HAタグを取り除き、その代わりにリーダー配列後のAβ含有ペプチドで開始するように変更された。HEK293の安定なプールが、ADCCアッセイへと移された。
【0332】
標識に関して、10
7個の細胞を2mlのRPMI 10%FCSに懸濁し、250μCiの
51Cr(NEN カタログ#NEZ−030;生理食塩水中の
51クロム酸ナトリウム)を添加した。細胞は、時々撹拌して、1時間、37℃でインキュベートされた。インキュベートの終了時に、10%FCSを含む10mlのRPMIを添加した。細胞を沈降させて、上清を除去することができ、10%FCSを含む10mlのRPMIに再懸濁させた。細胞は、さらに、室温で1.5時間、時々撹拌しながらインキュベートされ、過剰な
51Crを細胞から出させた。標的細胞は10mlのRPMIで3回洗浄し、最終時は10%FCSを含む10ml RPMIであった。細胞を10%FCSを含むRPMIに再懸濁し、10
6細胞/mlの濃度にした。
【0333】
エフェクター細胞をヒト血液から回収した。要約すると、血液をPBSで1:1に希釈し、Ficoll(Sigma Histopaque 1077)上に積層した。カラムを20分間、1200×gで遠心し、20℃でブレーキをかけなかった。界面の細胞を回収し;2〜3容量のPBSで1回洗浄し、10%FCSを含むRPMIで2回洗浄した。NK濃縮物はCD3およびCD56に対する抗体を用いて検出される。
【0334】
エフェクター細胞および標的細胞は、200μlの全容量で25:1(エフェクター:標的)の比率で96ウェルプレートに添加された。以下の対照試料を含んでいた:自然発生の溶解物(標的細胞を含み、エフェクターは含まない)および全溶解物(ウェルを空にする)が含まれた。細胞を5時間37℃でインキュベートした。回収の直前に、100μlの0.1% Triton X−100を全溶解物試料に添加し、
51Crを放出させた。Skatronハーベスター(Molecular Devices)を用いて、フィルターユニット上に反応物を回収し、全
51Crを検出した。
【0335】
溶解%を計算するために、平均cpmおよび標準偏差を各試料について決定した。最大の
51Cr放出%は、以下の式:
(実験−自然発生)×100
(全体−自然発生)
を用いて決定される。
【0336】
C1q結合アッセイの結果と一致して、ヒト化3D6エフェクター機能変異誘導抗体は、Aβを発現しているHEK293細胞の補体溶解の誘導で効果的でなかった(
図22を参照されたい)。
【実施例8】
【0337】
マウス3D6誘導体のC1q結合能を測定するELISAアッセイ
材料および方法
96ウェル蛍光プレートは、100μlのウェルコーティング緩衝液中で1、3、または6μg/mlの種々の抗体を用いて、一晩4℃でコーティングされた。コーティング後、プレートを洗浄し、200μlのカゼインElisaブロックで1時間室温でブロックした。プレートを洗浄し、希釈緩衝液中の100μlの2μg/mlヒトC1qを室温で添加して2時間置いた。2時間後、プレートを洗浄し、FITC標識ウサギ抗C1g(1:1000)を添加して1時間置いた。プレートを2回洗浄し、PBS中で蛍光プレートリーダーの494/517で読み取った。以下のマウス抗体試料を試験した:IgG2a、IgG2b、3D6 IgG2a、IgG1、3D6 IgG1、および3D6 IgG1 C1q変異体。
【0338】
結果
最大レベルのC1q結合は、IgG2aおよび3D6 IgG2aについて観察された(
図23を参照されたい)。IgG1および3D6 IgG1に対するC1q結合は、IgG2aよりも有意に低かった。3D6 IgG1 C1q結合ドメインの変異は、この結合をさらに抑制した。
【実施例9】
【0339】
恐怖条件付け状況学習(CFC)アッセイ
Tg2576トランジェニックマウスおよび野生型同腹子対照は、いずれかの試験前の少なくとも2週間、個別に収容し、食物および水に自由に近づくことができた。アルミニウム側壁およびPLEXIGLAS天井、ドアおよび後ろの壁から構築されたオペラントチャンバー(Med Associates,Inc.)でCFCを行った。各チャンバーは、フットショックを与えることができる床を備えていた。さらに、各チャンバーは、2つの刺激光、1つのハウスライトおよびソレノイドを有していた。照明、フットショック(US)およびソレノイド(CS)はすべて、PC駆動MED−PCソフトウェアによって制御された。チャンバーは、赤い光の存在下、遮音された部屋に置かれた。
【0340】
マウス(n=8〜12/遺伝子型/処置)をトレーニングし、連続2日で試験した。トレーニング期は、マウスをオペラントチャンバーに置き、刺激光とハウス光の両方をあて、2分間調べることを可能にした。2分の最後にフットショック(US;1.5mAmp)を2秒間与えた。この手順を繰り返し、2回目のフットショックの30秒後にマウスをチャンバーから取り出し、それらの元のケージに戻した。
【0341】
トレーニングの20時間後、動物は以前にトレーニングされたチャンバーに戻された。次に、動物がショック(「状況」)を受けた同じ環境における硬直挙動は、5分間、10秒binで時間サンプリング(30サンプリング点)を用いて記録された。硬直は、呼吸に必要とされる動き以外の動きの欠如として定義された。5分の終了時に、文脈テストマウスをそれらの元のケージに戻した。
【0342】
およそ20週齢の野生型マウスおよびTg2576トランジェニックマウスは、CFCのトレーニング期の24時間前に腹腔内注射によって単回用量の処置抗体を投与された。処置抗体は以下の通りであった:(i)非特異的IgG1抗体;(ii)Hu 3D6 3m(FcγR)(AAB−003とも呼ばれる);および(iii)バピネオズマブ(AAB−001とも呼ばれる)。
【0343】
図24は結果を示す。対照処理された野生型マウスは約40%の硬直を示し、対照的に、対照処理されたトランジェニックマウスは、状況記憶に重大な欠損を示した。30mg/kgで投与された場合、Hu 3D6 3m抗体は、野生型レベルまで認知機能を回復した。さらに、エフェクター機能変異体は、親の抗体であるバピネオズマブと同様の、状況記憶に対する効果を有していた。
【0344】
状況記憶に対するHu 3D6 3m抗体の効果が経時的に観察された。
図25は、30mg/kgのHu 3D6 3m抗体による処置が、投与の少なくとも5日後で野生型レベルの認知を与えたことを示す。
【0345】
要約すると、上記の実施例は、Hu 3D6 3mは、バピネオズマブと同様の認知改善をもたらすことを示す。これは、誘導抗体がFc受容体もしくはC1qに有意には結合しないか、または食作用もしくはADCC活性を誘導しないという事実に関わらないということである。
【実施例10】
【0346】
3D6 4m(FcγR/C1q)IgG2aおよびHu 3D6 3m IgG1(AAB−003)を用いたマウス試験
試験設計
1年齢のPDAPPマウスは、対照;3D6 4m(FcγR/C1q)IgG2a;またはHu 3D6 3m IgG1を用いた6カ月処理パラダイムに晒される(表10を参照されたい)。負の対照は、無関係な非アミロイドエピトープに対するマウスIgG2a抗体およびヒトIgG1抗体を含む。正の対照は、3D6 IgG2aおよびHu 3D6 IgG1を含む。マウスを投与集団に分け、3、30、または300mg/kgの指示された抗体を用いて、週に1回の間隔でIP注射された。実験条件は、実施例5に記載される通りである。
【0347】
6カ月後、マウスを屠殺し、脳組織を上記されるように回収した。組織は、皮質と海馬のAbおよびアミロイド蓄積、血管アミロイド、ならびに微小出血について調べられる。
【実施例11】
【0348】
Hu 3D6 3m IgG1(AAB−003)を用いたカニクイザル試験
試験設計
カニクイザルは、Hu 3D6 3m IgG1(AAB−003)で処置される。負の対照は、無関係な非アミロイドエピトープに対するヒトIgG1抗体を含む。正の対照は、Hu 3D6 IgG1(バピネオズマブ)を含む。サルを投与集団に分け、15、50、または150mg/kgの指示された抗体のいずれかを受ける。各集団は、さらに、IVおよびSC投与群に分けられる。
【0349】
サルは、13週間週に1回投与され、2カ月の観察期間がある。試験の終了時に、サルを屠殺し、脳組織を回収する。組織は、皮質と海馬のAβおよびアミロイド蓄積、血管アミロイド、ならびに微小出血について調べられる。
【実施例12】
【0350】
Hu 3D6 3m(AAB−003)抗体のヒトにおける単回漸増用量(SAD)試験
ApoE4保有者および非保有者を含む軽度〜中等度のアルツハイマー病患者は、AAB−003抗体を用いた静脈内(IV)または皮下(SC)注射について集団に分けられる。集団は、単回投与を与えられ、12カ月追跡され、独立した安全性モニタリング委員会によって完全にモニタリングされる。
【0351】
本試験の目標は、(血管原性浮腫の兆候が観察されなければ)少なくとも5mg/kgの静脈内バピネオズマブに同等である曝露を増加させることである。バピネオズマブのこの用量で、VEが10名の患者のうち3名に観察された。
【0352】
SC集団は、少なくとも2つの皮下投与レベルを含む。これらの患者は、抗体のバイオアベイラビリティーおよびその直線性について観察される。
【0353】
すべての患者は、実施例1に記載されるようにスクリーニングされ(例えば、ApoE状態について)、モニタリングされる。すべての集団に対して、安全性のモニタリングはMRIモニタリングを含む。MRIの結果は、上記の実施例に記載されるバピネオズマブ試験の結果と比較される。有効性は、認知測定基準(例えば、NTB、DAD、ADAS−Cog);血漿Aβレベル;アミロイド、タウ、およびリン酸化タウのCSFレベル;ならびにアミロイド造影によって測定される。
【0354】
ある特定のバイオマーカーは、試験中各患者において追跡される。抗体によって結合するAβを支持するバイオマーカーとしては、CSFおよび血漿中のAβ40およびAβ42、ならびに、例えばPETによるアミロイドプラークの造影が挙げられる。疾患の変化を示すバイオマーカーとしては、MRI、CSFタウおよびリン酸化タウレベル、ならびに、さらにアミロイドプラーク造影が挙げられる。
【実施例13】
【0355】
Tg2576および野生型マウスのHu 3D6 3m(AAB−003)の薬物動態プロファイル
Tg2576トランスジェニックマウスおよび野生型対照は、皮下的(SC)または腹腔内(IP)にAAB−003で投与され、抗体の生物学的利用能を決定した。プロファイルは、治療抗体に典型的であった。
【0356】
AAB−003はゆっくりと排出され、T
1/2は66〜160時間であった。低容量分布(71〜96)、および良好な曝露であった(AUCによって測定される)。
【0357】
野生型とトランスジェニックマウス間のいくつかの相違は明確であった。例えば、野生型マウスは、より高いAUCおよびT
1/2を有していた。トランスジェニックマウスは、僅かに高いレベルの抗AAB−003抗体を有していた。
【実施例14】
【0358】
カニクイザルにおけるHu 3D6 3m(AAB−003)の薬物動態プロファイル
10mg/kg Hu 3D6 3mまたはバピネオズマブは、カニクイザルに静脈内(IV)投与され(3匹の動物/抗体処置)、薬物動態プロファイルを比較し、エフェクター機能変異がいずれかの効果を有するかどうかを決定した。結果は、2つの抗体の間で同程度であり、一般に治療抗体に典型的であった。低いクリアランス(0.16±0.06ml/hr/kg)、低容量の分布(約62ml/kg)、および長期の排出半減期(309±226時間)であった。試験された3匹の動物のうち1匹はAAB−003に対する抗体について陽性であった。
【0359】
同抗体用量が皮下(SC)に投与された。バイオアベイラビリティーは良好であり、およそ69%であり、半減期は21〜445時間の範囲であった。試験された3匹の動物のうち2匹はAAB−003に対する抗体について陽性であった。
【実施例15】
【0360】
抗ルイスY抗体のエフェクター機能に対するFc変異の効果
異なる抗原特異性を有する抗体のエフェクター機能に対する、ヒトIgG1の低ヒンジ領域における変異の効果を決定するために、本発明者らは、ルイスY(LeY)抗原に対する抗体を設計した。LeYは、乳癌、膵臓癌、結腸癌、卵巣癌、胃癌、および肺癌を含む上皮性癌に主に発現される、2型血液群に関連したジフコリス化されたオリゴ糖である。LeYは、神経外胚葉起源または中胚葉起源の腫瘍に発現するようには見えない。
【0361】
抗LeY Ab02抗体は、3つの重鎖定常領域:(i)野生型ヒトIgG1;(ii)野生型ヒトIgG4;および(iii)2つのエフェクター領域の変異であるL234AとG237Aを有するヒトIgG1(配列番号50および51を参照されたい)の1つを用いて生成された。IgG4は他のシステムにおいてエフェクター機能を低下させたことが示された。
【0362】
ADCC(抗体依存性補体細胞傷害)アッセイについて、LeYを過剰発現しているN87ヒト胃腺癌細胞を標的細胞として使用し、新たに単離したヒトPBMCをエフェクター細胞として使用した。エフェクター細胞および標的細胞を96ウェルプレートに50:1の比率で播種した。抗体は、培地、エフェクターおよび標的細胞対照、ならびに抗体対照を用いて、種々の濃度(0.1、1および10μg/ml)において三連で適用された。抗ルイスY Ab02バージョンのADCC活性を
図26に示す。
【0363】
CDC(補体依存性細胞傷害)アッセイについて、LeY陽性腫瘍細胞(A431 LeY)は、種々の抗体量(0.1、1および10μg/ml)で96ウェルプレートに播種された。希釈されたヒト補体(1:100)を各ウェルに添加した。培地、細胞単独、ならびに抗体および補体対照を用いて、100μl/mlの最終容量で三連で試験を行った。37℃で4時間のインキュベーション後、プレートを取り出し、22℃で平衡に維持した。
【0364】
同容量のCytoTox−One(商標)を各ウェルに添加し、10分間、22℃でインキュベートした。正の対照として(三連にて)2μlの溶解緩衝液/ウェルを添加し、対照ウェルにおける最大LDH(乳酸脱水素酵素)放出を得た。酵素反応は、50μlの停止溶液の添加によって停止させた。得られた蛍光は、560nmの励起波長および590nmの発光波長を用いて記録された。補体に関係した細胞溶解%は、全LDH放出%として計算された(
図27)。
【0365】
IgG1におけるL234AおよびG237A変異にも関わらず、変異抗体は、野生型IgG1と比較して、ルイスYを発現する腫瘍細胞に対するADCCおよびCDCの両方を媒介する抗体の能力を十分に保持していた。
【実施例16】
【0366】
抗5T4抗体のエフェクター機能に対するFc変異の効果
異なる抗原特異性を有する抗体のエフェクター機能に対する、ヒトIgG1におけるFc変異の効果をさらに調べるために、本発明者らは、腫瘍胎児タンパク質5T4に対する抗体を設計した。5T4は、種々の癌腫の細胞膜上に提示される腫瘍関連タンパク質であり、抗腫瘍ワクチン開発および抗体指向性治療に関する有望な標的である。
【0367】
抗5T4抗体は、重鎖定常領域における変異の異なる組合せを用いて生成された。使用された重鎖は以下の通りである:(i)野生型ヒトIgG1、(ii)野生型ヒトIgG4、(iii)ヒトIgG1、L234AおよびL235A、(iv)ヒトIgG1、L234AおよびG237A、(v)ヒトIgG1、L235AおよびG237A;ならびに(vi)3つのエフェクター領域変異、L234A、L235A、およびG237Aを有するヒトIgG1(配列番号62および63を参照されたい)。
【0368】
ヒト乳癌腫細胞株MDAMB435は、5T4抗原で安定にトランスフェクトされ、ADCCおよびCDCアッセイについて使用された。抗5T4抗体のADCCアッセイは実施例15に記載される通りであり、エフェクター細胞として、新鮮に単離されたヒトPBMCを使用し、エフェクター:標的細胞比を50:1にした。MDAMB435−Neoをトランスフェクトされた細胞は、負の対照として使用された。ADCC活性の結果(抗体濃度10μg/mlで最大の特異的細胞傷害性)を表15に要約される。
【表15】
【0369】
補体誘導の細胞傷害性に対するFc変異の効果を評価するために、ヒト乳癌腫MDAMB435−5T4細胞は、実施例15に記載されるように、希釈されたヒト補体とともにインキュベートされた。CDCアッセイの結果を表16に示す。
【表16】
【0370】
試験された組合せ(L234A/L235;L234A/G237A;L235A/G237A)のいずれかにおけるヒトIgG1の低ヒンジ領域の2つ変異の誘導のみが、ADCCおよびCDC活性を部分的に減少させ、L235A/G237Aは、より高い残りのエフェクター機能能力を示した。しかしながら、IgG1の低ヒンジ領域の3つの変異(L234A/L235A/G237A)を有する抗5T4抗体は、ADCCおよびCDC活性を完全に止めたことを示した。
【0371】
結論
本実施例は、異なる抗原特異性を有するFc領域変異抗体の多数の比較を与える。実施例6は、L234AおよびG237A(二重変異)、またはL234、L235A、およびG237A(三重変異)のいずれかでIgG1 Fc変異を有するAβ特異的抗体を用いたADCCアッセイを記載する。二重変異および三重変異はともに、機能を有意に減少させた(
図22を参照されたい)。実施例15は、L234AおよびG237AのIgG1変異を有するLeY特異的抗体を用いたADCCおよびCDCアッセイを記載する。この場合、変異抗体はエフェクター機能を保持していた(
図26および27を参照されたい)。最後に実施例16は、5T4特異的抗体のIgG1 Fc変異を比較する。二重変異(L234A/L235;L234A/G237A;L235A/G237A)の各々は、三重変異(L234A/L235A/G237A)よりも高いエフェクター活性を保持していた(表15および表16を参照されたい)。しかしながら、L234A/L235二重変異のエフェクター活性は、三重変異のエフェクター活性と同レベル近くまで減少した。
【0372】
上記結果は、ヒンジ領域変異の効果が、細胞表面上の標的抗原密度を含む複数の要因に依存し得ることを示す。しかしながら、データは、3つの位置のすべての破壊がエフェクター活性を排除するには必要であることを指示する。
【0373】
上記実施例は、例証するものに過ぎず、本発明を定義するものではない;他の変更は、当業者に容易に明らかとなる。本発明の範囲は、本明細書に由来するいずれかの(1つまたは複数の)特許の請求項によって包含される。したがって、本発明の範囲は、上記記載に準拠しないで決定されるべきであるが、代わりに、均等の十分な範囲に沿って発行される請求項に準拠して決定されるべきである。本出願に引用されたすべての刊行物、参考文献、受託番号、および特許文献は、各々、個々の刊行物または特許文献がそのように単独で示されているのと同程度で、すべての目的のために参照によりその全体が組み込まれている。
上記の開示によって提供される本願発明の具体例として、以下の発明が挙げられる。
[1] アルツハイマー病を治療する方法であって、0個のApoE4対立遺伝子およびアルツハイマー病を有する患者(「ApoE4非保有患者」)に、AβのN末端エピトープに特異的に結合する抗体の有効なレジメを施すステップを含む方法。
[2] 抗体が、Aβの残基1〜7、Aβの残基1〜5、またはAβの残基3〜7内のエピトープに特異的に結合する、[1]に記載の方法。
[3] 約0.15mg/kg〜約2mg/kgの範囲内の抗体用量が静脈内注入により投与される、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 用量が、4〜16週間、10〜14週間、または13週間ごとに投与される、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 用量が約0.5mg/kg〜約2mg/kgである、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 抗体がバピネオズマブである、[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 血管原性浮腫についてモニタリングするステップをさらに含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 患者にコルチコステロイドを投与して、モニタリングにより検出される血管原性浮腫を治療するステップを含む、[8]に記載の方法。
[10] アルツハイマー病を治療する方法であって、ApoE4非保有患者に、AβのN末端領域を特異的に認識する抗体を、前記抗体の平均血清濃度を約0.1μg/ml〜約60μg/mlの範囲内で維持するのに有効なレジメにおいて投与するステップを含む方法。
[11] 患者における抗体の最大血清濃度が、抗体約28μg/ml血清未満である、[10]に記載の方法。
[12] 最大血清濃度が、抗体約4〜28μg/ml血清の範囲内にある、[10]に記載の方法。
[13] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[10]に記載の方法。
[14] 抗体がバピネオズマブである、[10]に記載の方法。
[15] アルツハイマー病を治療する方法であって、ApoE4非保有患者に、AβのN末端領域を特異的に認識する抗体を、少なくとも450pg/mlの平均血漿Aβ濃度を達成するのに有効なレジメにおいて投与するステップを含む方法。
[16] 平均血漿Aβ濃度が約600pg/ml〜約3000pg/mlの範囲にある、[15]に記載の方法。
[17] アルツハイマー病を治療する方法であって、ApoE4非保有患者に、AβのN末端領域を特異的に認識する抗体を、少なくとも450pg/mlの平均血漿Aβ濃度を達成するのに有効なレジメにおいて投与するステップを含む方法。
[18] 平均血漿Aβ濃度が約600pg/ml〜約3000pg/mlの範囲にある、[17]に記載の方法。
[19] 0個のApoE4対立遺伝子を有する患者(「ApoE4非保有患者」)における認知低下を軽減する方法であって、
前記患者に、AβのN末端エピトープに特異的に結合する抗体を、前記抗体が投与されない対照患者と比べて前記患者の認知低下を軽減するのに有効なレジメにおいて投与するステップを含み、
前記ApoE4非保有患者および対照患者が軽度〜中等度のアルツハイマー病を有すると診断されており、
前記認知低下がADAS−COG、NTB、MMSE、またはCDR−SBにより測定される方法。
[20] 抗体が、約0.15mg/kg〜約2mg/kgの範囲内の用量で静脈内注入により投与される、[19]に記載の方法。
[21] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、
重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[19]または[20]に記載の方法。
[22] 抗体がバピネオズマブである、[19]または[20]に記載の方法。
[23] 0個のApoE4対立遺伝子を有する患者(「ApoE4非保有患者」)における脳容量の減少を軽減する方法であって、
前記ApoE4非保有患者に、AβのN末端エピトープに特異的に結合する抗体を、前記抗体が投与されない対照患者と比べて前記ApoE4非保有患者の脳容量の減少を軽減するのに有効なレジメにおいて投与するステップを含み、
前記ApoE4非保有患者および対照患者が軽度〜中等度のアルツハイマー病を有すると診断されている方法。
[24] 抗体が、約0.15mg/kg〜約2mg/kgの範囲内の用量で静脈内注入により投与される、[23]に記載の方法。
[25] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[23]または[24]に記載の方法。
[26] 抗体がバピネオズマブである、[23]または[24]に記載の方法。
[27] 脳容量の減少がMRIにより測定される、[23]に記載の方法。
[28] アルツハイマー病を治療する方法であって、前記疾患および1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に、AβのN末端エピトープに結合する有効な抗体のレジメを皮下投与にて施すステップを含む方法。
[29] 血管原性浮腫についてモニタリングするステップをさらに含む、[28]に記載の方法。
[30] 抗体が0.01〜0.6mg/kgの用量および毎週〜毎月の頻度で投与される、[28]に記載の方法。
[31] 抗体が0.05〜0.5mg/kgの用量で投与される、[28]に記載の方法。
[32] 抗体が1〜40mgの用量および毎週〜毎月の頻度で投与される、[28]に記載の方法。
[33] 血管原性浮腫についてモニタリングするステップをさらに含む、[28]から[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34] アルツハイマー病を治療する方法であって、
前記疾患および1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者に、AβのN末端エピトープに結合する有効な抗体のレジメを施すステップと、
前記患者にコルチコステロイドを投与して、前記抗体の投与から生じる血管原性浮腫を治療するステップと
を含む方法。
[35] 血管原性浮腫について患者をモニタリングするステップをさらに含む、[34]に記載の方法。
[36] 抗体投与の用量または頻度が、血管原性浮腫以前の用量または頻度と比べて、血管原性浮腫の間に低下または削減される、[34]に記載の方法。
[37] 抗体投与の用量または頻度が、血管原性浮腫以前またはその間の用量または頻度と比べて、血管原性浮腫の消散後において上昇する、[34]に記載の方法。
[38] 脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられるアミロイド原性疾患の患者集団を治療するか、または同集団における予防を実施する方法であって、
ApoEのどの対立遺伝子形態が患者において存在するかに応じて、集団内の異なる患者に対して異なるレジメを施すステップを含み、前記レジメの少なくとも1つが、Aβに対する抗体を患者に投与するステップを含む方法。
[39] 第1のレジメがAβに対する抗体を患者に投与するステップを含み、第2のレジメがAβに対する抗体またはAβに対する抗体を誘導する作用物質を欠き、第1のレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に施され、第2のレジメが1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に施される、[38]に記載の方法。
[40] 異なるレジメが、その各々がAβに対する抗体を投与するステップを含む第1および第2のレジメを含み、第2のレジメが第1のレジメと
(i)抗体の用量を低下させること、
(ii)抗体の投与頻度を低下させること、
(iii)アミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する抗体の能力を低下させること、
(iv)抗体の平均血清濃度を低下させること、
(v)抗体の最大血清濃度を低下させること、
(vi)疾患進行と比べて治療の開始時点がより早期であること
の少なくとも1つにおいて異なり、
これにより、
(a)第2のレジメが2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1のレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与されること、
(b)第2のレジメが1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1のレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与されること、および/または
(c)第2のレジメが2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1のレジメが1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与されること
の少なくとも1つが生じるように、第1および第2のレジメを施す、[38]に記載の方法。
[41] 第1のレジメがAβに対する第1の抗体を投与するステップを含み、第2のレジメがAβに対する第2の抗体を投与するステップを含み、第2の抗体が、第1の抗体と比べて、Fcγ受容体および/またはC1qに対する結合が低下し、第1の抗体が0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第2の抗体が1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与される、[38]または[40]に記載の方法。
[42] 第2の抗体が、Fcγ受容体および/またはC1qに対する結合を低下させる1つまたは複数の変異を定常領域において有し、前記変異が第1の抗体には存在しない、[41]に記載の方法。
[43] 前記1つまたは複数の変異が、位置234、235、236、および237(EU番号付け)からなる群から選択される、重鎖定常領域における(1つまたは複数の)位置にある、[42]に記載の方法。
[44] 前記1つまたは複数の変異が、位置234、235、および237における変異である、[43]に記載の方法。
[45] 前記1つまたは複数の変異がL234A、L235A、およびG237Aである、[44]に記載の方法。
[46] 定常領域のアイソタイプがヒトIgG1である、[42]から[45]のいずれか一項に記載の方法。
[47] 定常領域のアイソタイプがヒトIgG4である、[42]から[45]のいずれか一項に記載の方法。
[48] 第1の抗体がバピネオズマブであり、第2の抗体がバピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[41]に記載の方法。
[49] 第1のレジメがAβに対する第1の抗体を投与するステップを含み、第2のレジメがA
βに対する第2の抗体を投与するステップを含み、第1の抗体がヒトIgG1アイソタイ
プであり、第2の抗体がヒトIgG4アイソタイプであり、第1の抗体が0コピーのAp
oE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第2の抗体が1または2コピーのApoE4
対立遺伝子を有する患者に投与される、[38]または[40]に記載の方法。
[50] 疾患がアルツハイマー病である、[38]または[40]に記載の方法。
[51] ApoEのどの対立遺伝子が患者において存在するかを決定するステップをさらに含む、[38]または[40]に記載の方法。
[52] 異なるレジメが、投与される抗体の用量において異なる、[38]または[40]に記載の方法。
[53] 異なるレジメが、投与される抗体の頻度において異なる、[38]または[40]に記載の方法。
[54] 異なるレジメが、投与される抗体の種類において異なる、[38]または[40]に記載の方法。
[55] (a)1個のApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2個のApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または(b)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または(c)1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者において、抗体の用量、および/または抗体の投与頻度、および/またはアミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する抗体の能力を低下させる、[38]または[40]に記載の方法。
[56] ApoE4対立遺伝子の0個のApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者において、作用物質の用量、および/または作用物質の投与頻度、および/またはアミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する作用物質の能力を低下させる、[38]または[40]に記載の方法。
[57] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には、Aβの残基1〜11内に特異的に結合する抗体の0.15〜1mg/kgの用量を投与し、0個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には、同抗体の0.5〜2mg/kgの用量を投与する、[38]または[40]に記載の方法。
[58] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者に対し、血管原性浮腫が発生し消散するまでは、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者よりも低用量の作用物質を投与し、以後は同じ用量の作用物質を投与する、[38]または[40]に記載の方法。
[59] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者に対し、血管原性浮腫が発生し消散するまでは、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者よりも低頻度の作用物質を投与し、以後は同じ用量の作用物質を投与する、[38]または[40]に記載の方法。
[60] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者に対し、バピネオズマブと比べてアミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する能力を低下させた抗体を投与する、[38]または[40]に記載の方法。
[61] 集団内における患者の少なくとも一部を、血管原性浮腫についてモニタリングするステップをさらに含む、[38]から[60]のいずれか一項に記載の方法。
[62] モニタリングするステップが、MRIによって実施される、[61]に記載の方法。
[63] 0個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者が、MRIによってモニタリングされない、[61]に記載の方法。
[64] 抗体が、Aβの残基1〜11内のエピトープに結合する、[38]または[40]に記載の方法。
[65] 抗体がヒトIgG1アイソタイプを有する、[64]に記載の方法。
[66] 抗体がバピネオズマブである、[65]に記載の方法。
[67] 抗体が、バピネオズマブと比べてアミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する能力が低下している、[38]または[40]に記載の方法。
[68] 抗体が、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[38]または[40]に記載の方法。
[69] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、1〜3回のヒト化266抗体投与に続き、後続のバピネオズマブ投与を受け、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、同じ合計回数の投与を受けるが、すべてバピネオズマブ投与である、[38]または[40]に記載の方法。
[70] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者にはヒト化266抗体を投与し、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者にはバピネオズマブを投与する、[38]または[40]に記載の方法。
[71] 抗体がヒト化266である、[38または[40]に記載の方法。
[72] 患者の脳内におけるアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患の治療または予防についての異なるレジメからの選択における、ApoE4コピー数の測定の使用であって、第1および第2のレジメの少なくとも1つがAβに対する抗体を投与するステップを含む使用。
[73] 異なるレジメが第1および第2のレジメを含み、第1および第2のレジメの各々がAβに対する抗体を投与するステップを含み、第2のレジメが第1のレジメと
(i)抗体の用量を低下させること、
(ii)抗体の投与頻度を低下させること、
(iii)アミロイド沈着物に対する除去反応を誘導する抗体作用物質の能力を低下させること、
(iv)抗体の平均血清濃度を低下させること、
(v)抗体の最大血清濃度を低下させること、
(iv)疾患進行と比べて治療の開始時点がより早期であること、
の少なくとも1つにおいて異なり、
これにより、
(a)第2のレジメが2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1のレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与されること、
(b)第2のレジメが1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1のレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与されること、および/または
(c)第2のレジメが2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与され、第1
のレジメが1コピーのApoE4を有する患者に投与されること
の少なくとも1つが生じる、[72]に記載の使用。
[74] Aβに対する抗体を含む、アルツハイマー病を治療する薬剤の製造におけるApoE4コピー数の測定の使用。
[75] Aβに対する抗体による、脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患に対する治療または予防を受ける患者集団をモニタリングする方法であって、
血管原性浮腫について、集団内の異なる患者において異なるモニタリングレジメを実施するステップを含み、
(a)0コピーのApoE4を有する患者と比べて2コピーのApoE4を有する患者、
(b)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または
(c)1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者
に対するモニタリング頻度がより高い方法。
[76] 疾患がアルツハイマー病である、[75]に記載の方法。
[77] ApoEのどの対立遺伝子形態が集団内の各患者において存在するかを決定するステップをさらに含む、[75]に記載の方法。
[78] モニタリングが脳内造影によるモニタリングである、[77]に記載の方法。
[79] モニタリングがMRIによるモニタリングである、[78]に記載の方法。
[80] 1個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者よりも高頻度でモニタリングされる、[75]に記載の方法。
[81] 2個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、1個のApoE4対立遺伝子を有する患者よりも高頻度でモニタリングされる、[75]に記載の方法。
[82] 1個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者よりも高頻度でモニタリングされる、[75]に記載の方法。
[83] 0個のApoE4対立遺伝子を有する患者が、血管原性浮腫について、MRIによりモニタリングされない、[75]に記載の方法。
[84] Aβに対する抗体を誘導する作用物質による、脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患に対する治療または予防を受ける患者集団をモニタリングする方法であって、
血管原性浮腫について、集団内の異なる患者において異なるモニタリングレジメを実施するステップを含み、
(a)0コピーのApoE4を有する患者と比べて2コピーのApoE4を有する患者、
(b)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または
(c)1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者
に対するモニタリング頻度がより高い方法。
[85] 脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患に対して、患者を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
少なくとも1個のApoE4対立遺伝子を有する患者に、Aβの残基1〜11内のエピトープに対する抗体、またはAβに対するこのような抗体を誘導する作用物質を投与するステップと、
血管原性浮腫について、MRIにより前記患者をモニタリングするステップと
を含む方法。
[86] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[85]に記載の方法。
[87] 抗体がバピネオズマブである、[85]に記載の方法。
[88] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[85]に記載の方法。
[89] 少なくとも1個のApoE4対立遺伝子を有する患者の脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
血管原性浮腫が発生する前に第1のレジメを前記患者に施し、血管原性浮腫が消散した
後で第2のレジメを施すステップを含み、
第1および第2のレジメが各々、Aβに対する抗体を投与するステップを含み、第1の
レジメが、第2のレジメと比べて、
(i)抗体の用量を低下させること、
(ii)抗体の投与頻度を低下させること、
(iii)アミロイド沈着物を除去する抗体の能力を低下させること、
の少なくとも1つにおいて異なる方法。
[90] 少なくとも1個のApoE4対立遺伝子を有する患者の脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
血管原性浮腫が発生する前に第1のレジメを前記患者に施し、血管原性浮腫が消散した後で第2のレジメを施すステップを含み、
第1および第2のレジメが各々、投与時においてAβに対する抗体を誘導する作用物質を患者に投与するステップを含み、第1のレジメが、第2のレジメと比べて、
(i)作用物質の用量を低下させること、
(ii)作用物質の投与頻度を低下させること、
(iii)アミロイド沈着物を除去する作用物質の能力を低下させること
の少なくとも1つにおいて異なる方法。
[91] 疾患がアルツハイマー病である、[89]または[90]に記載の方法。
[92] 患者が、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する、[89]または[90]に記載の方法。
[93] 第1および第2のレジメが各々、Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合する抗体を患者に投与するステップを含み、前記抗体が、血管原性浮腫が発生する前は0.15〜1mg/kgの用量で投与され、血管原性浮腫が消散した後は0.5〜2mg/kgの用量で投与される、[89]に記載の方法。
[94] 抗体がバピネオズマブである、[89]に記載の方法。
[95] 抗体が、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[89]に記載の方法。
[96] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または
67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[89]に記載の方法。
[97] 患者におけるアルツハイマー病を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者に、Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合する抗体を投与するステップを含み、0.15〜1mg/kgの抗体が3カ月ごとに静脈内投与により施されるレジメにおいて、または、同等の平均血清濃度もしくは曲線下面積を発生させる投与頻度および投与経路において、前記抗体を投与する方法。
[98] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[97]に記載の方法。
[99] 抗体がバピネオズマブである、[97]に記載の方法。
[100] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[97]に記載の方法。
[101] 用量が0.5mg/kgである、[97]に記載の方法。
[102] 患者におけるアルツハイマー病を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
0個のApoE4対立遺伝子を有する患者に、Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合する抗体を投与するステップを含み、前記抗体の用量が3カ月ごとに静脈内投与により投与される0.5〜2mg/kgであるか、または投与頻度および投与経路が同等の平均血清濃度または曲線下面積を発生させる方法。
[103] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[102]に記載の方法。
[104] 抗体がバピネオズマブである、[102]に記載の方法。
[105] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[102]に記載の方法。
[106] 患者集団におけるアルツハイマー病を治療するかまたはその予防を実施する方法であって、
Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合する抗体を患者に投与するステップを含み、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団の患者においては0.15〜1mg/kgの用量、また、0個のApoE4対立遺伝子を有する集団の患者においては0.5〜2.5mg/kgの用量で前記抗体を投与し、0個のApoE4対立遺伝子を有する患者においては平均用量がより高量である方法。
[107] 抗体がマウス3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態であり、重鎖定常領域における位置234、235、および237が、それぞれ、Ala、Ala、およびAlaにより占められ、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされる、[106]に記載の方法。
[108] 抗体がバピネオズマブである、[106]に記載の方法。
[109] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[106]に記載の方法。
[110] 用量が、1または2個のApoE4対立遺伝子を有する集団の患者においては0.5mg/kgであり、0個のApoE4対立遺伝子を有する集団の患者においては2mg/kgである、[106]に記載の方法。
[111] 患者の脳内におけるAβ沈着物によって特徴付けられる疾患の予防を実施する方法であって、
有効なレジメの、投与時においてAβに対する抗体である作用物質またはAβに対する抗体を誘導する作用物質を患者に投与するステップを含み、前記患者が少なくとも1個のApoE対立遺伝子を有する方法。
[112] 患者が2個のApoE4対立遺伝子を有する、[111]に記載の方法。
[113] 患者が無症状である、[111]に記載の方法。
[114] 患者が27以上のミニメンタルテストスコアを有する、[111]に記載の方法。
[115] 患者が20〜26のミニメンタルテストスコアを有する、[111]に記載の方法。
[116] 患者が少なくとも60歳である、[111]に記載の方法。
[117] 患者におけるApoE4対立遺伝子数を決定するステップをさらに含む、[111]に記載の方法。
[118] 患者の脳内におけるAβのアミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、
その各々がAβに対する抗体を患者に投与するステップを含む第1のレジメおよび第2のレジメを施すステップと、
血管原性浮腫について患者をモニタリングするステップと
血管原性浮腫が発生しない場合は第1のレジメを維持するステップと、
血管原性浮腫が発生する場合は患者に第2のレジメを投与するステップと
を含み、
第2のレジメが、第1のレジメと比べて、
(i)抗体の用量を低下させること、
(ii)抗体の投与頻度を低下させること、
(iii)Fcγ受容体に結合する能力を低下させた異なる抗体、
(iv)C1qに結合する能力を低下させた異なる抗体、
(v)Aβに対する抗体を投与しないこと
の少なくとも1つにおいて異なり、第2のレジメが、少なくとも血管原性浮腫の持続期間にわたり維持される方法。
[119] 第1のレジメにおける抗体が、Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合する、[118]に記載の方法。
[120] 第1の抗体がバピネオズマブであり、第2の抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、G237A変異体である、[118]に記載の方法。
[121] 患者集団におけるアルツハイマー病を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、
Aβの残基1〜11内のエピトープに特異的に結合し、Fcγ受容体および/またはC1qに対する結合を低下させる変異を定常領域において有する抗体を患者に投与するステップを含み、前記抗体が、患者におけるApoE4対立遺伝子数に関わらず、各患者に同じ用量および/または頻度で投与される方法。
[122] 抗体が、配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、バピネオズマブのL234A、L235A、およびG237A変異体である、[121]に記載の方法。
[123] 血管原性浮腫について患者をモニタリングするステップをさらに含む、[121]に記載の方法。
[124] 患者集団におけるアルツハイマー病を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、
Aβに対する抗体を集団内における一部の患者に投与するステップを含み、0個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には前記抗体を投与し、2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には前記抗体を投与しない方法。
[125] 1個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には抗体を投与しない、[124]に記載の方法。
[126] 患者集団におけるアルツハイマー病を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、
Aβに対する抗体を誘導する作用物質を集団内における一部の患者に投与するステップを含み、0個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には前記作用物質を投与し、2個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には前記作用物質を投与しない方法。
[127] 1個のApoE4対立遺伝子を有する集団内の患者には作用物質を投与しない、[126]に記載の方法。
[128] 患者の脳内におけるAβ沈着物によって特徴付けられる疾患を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、有効なレジメのヒト化抗体を患者に投与するステップを含み、前記ヒト化抗体が、配列番号2の成熟軽鎖可変領域配列と、配列番号3の成熟重鎖可変領域配列と、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有する、IgG1アイソタイプのヒト重鎖定常領域とを含む方法。
[129] 患者が、少なくとも1個のApoE4対立遺伝子を有する、[128]に記載の方法。
[130] 用量が0.15〜1mg/kgである、[128]に記載の方法。
[131] 用量が0.15〜2mg/kgである、[128]に記載の方法。
[132] 血管原性浮腫について、MRIにより患者をモニタリングするステップをさらに含む、[128]に記載の方法。
[133] 集団内における異なる患者に施されるレジメが、患者において存在するApoE4対立遺伝子数には依存しない、患者集団を治療するための、[128]に記載の方法。
[134] 位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有するヒト重鎖定常領域を含む、10D5抗体(ATCC受託番号PTA−5129)のヒト化形態。
[135] 配列番号8または配列番号73の軽鎖可変領域と、配列番号9または配列番号74の重鎖可変領域とを含む、[134]に記載のヒト化抗体。
[136] アイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4、好ましくはヒトIgG1である、[134]または[135]に記載のヒト化抗体。
[137] 位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有するヒト重鎖定常領域を含む、12A11抗体(ATCC受託番号PTA−7271)のヒト化形態。
[138] 配列番号10の軽鎖可変領域と、配列番号11の重鎖可変領域とを含む、[137]に記載のヒト化抗体。
[139] アイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4、好ましくはヒトIgG1である、[137]または[138]に記載のヒト化抗体。
[140] 位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有するヒト重鎖定常領域を含む、3D6抗体(ATCC受託番号PTA−5130)のヒト化形態。
[141] アイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4、好ましくはヒトIgG1である、[140]に記載のヒト化抗体。
[142] 配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含む、[141]に記載のヒト化抗体。
[143] 配列番号48を含むアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖と、配列番号66または67を含むアミノ酸配列を有するヒト化重鎖とを含むヒト化抗体。
[144] シグナル配列をコードする残基1〜57が存在するかまたは存在しないとした場合に配列番号68を含む配列を有する単離核酸。
[145] 配列番号2の成熟軽鎖可変領域配列と、配列番号3の成熟重鎖可変領域配列と、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有する、IgGアイソタイプのヒト重鎖定常領域とを含む、単離ヒト化抗体。
[146] ヒトIgG1アイソタイプを有する、[145]に記載の単離抗体。
[147] 配列番号31の軽鎖可変領域配列と、配列番号32の重鎖可変領域配列と、位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有する、IgGアイソタイプのヒト重鎖定常領域とによって特徴付けられる、12B4抗体の単離ヒト化形態。
[148] ヒトIgG1アイソタイプを有する、[147]に記載の単離抗体。
[149] 位置がEU番号付けシステムにより番号付けされるL234A変異、L235A変異、およびG237A変異を有するヒト重鎖定常領域を含む、266抗体(ATCC受託番号PTA−6123)のヒト化形態。
[150] 配列番号33の軽鎖可変領域と、配列番号34の重鎖可変領域とを含む、[149]に記載のヒト化抗体。
[151] アイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4、好ましくはヒトIgG1である、[149]または[150]に記載のヒト化抗体。
[152] 位置234、235、および237(EU番号付け)におけるアミノ酸が各々アラニンである、アイソタイプIgG1のヒト重鎖定常領域を含む単離抗体。
[153] ヒト重鎖定常領域における位置230〜240または315〜325に由来する他のアミノ酸が、ヒトIgG1定常領域内の前記位置において天然では見出されないアミノ酸によって占められることはない、[152]に記載の抗体。
[154] 位置234、235、および237以外のヒト重鎖定常領域におけるアミノ酸が、ヒトIgG1定常領域内の前記位置において天然では見出されないアミノ酸によって占められることはない、[153]に記載の抗体。
[155] ヒト重鎖定常領域が、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、[152]に記載の抗体。
[156] ヒト重鎖定常領域が、配列番号66もしくは配列番号67、またはこれらの配列のいずれかのアロタイプを含むアミノ酸配列を有する、[152]に記載の抗体。
[157] ヒト重鎖定常領域が、配列番号66もしくは配列番号67を含むアミノ酸配列を有する、[152]に記載の抗体。
[158] 完全ヒト抗体である、[152]に記載の単離抗体。
[159] ヒト化抗体である、[152]に記載の単離抗体。
[160] キメラ抗体である、[152]に記載の単離抗体。
[161] バピネオズマブ投与のレジメを決定する方法であって、医療従事者が、0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与するバピネオズマブのレジメを決定する一助となる指示書を、医療従事者に提供するステップを含む方法。
[162] レジメが、0.5〜2mg/kgの用量でバピネオズマブを投与することを特徴とする、[161]に記載の方法。
[163] レジメが、0.5〜2mg/kgのバピネオズマブを3カ月ごとに静脈内投与により投与するか、または、同等の平均血清濃度もしくは曲線下面積を発生させる投与頻度および投与経路において投与することを特徴とする、[161]に記載の方法。
[164] レジメが、血管原性浮腫について患者をモニタリングするステップをさらに含む、[161]に記載の方法。
[165] モニタリングレジメが、1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者のモニタリングレジメとは異なる、[164]に記載の方法。
[166] バピネオズマブ投与のレジメを決定する方法であって、医療従事者が、1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与するバピネオズマブのレジメを決定する一助となる指示書を、医療従事者に提供するステップを含む方法。
[167] レジメが、0.15〜1mg/kgの用量でバピネオズマブを投与することを特徴とする、[166]に記載の方法。
[168] レジメが、0.15〜1mg/kgのバピネオズマブを3カ月ごとに静脈内投与により投与するか、または、同等の平均血清濃度もしくは曲線下面積を発生させる投与頻度および投与経路において投与することを特徴とする、[166]に記載の方法。
[169] 決定されたレジメが、第1および第2のレジメを含み、血管原性浮腫が発生する前に第1のレジメを前記患者に施し、血管原性浮腫が消散した後で第2のレジメを施し、
第1および第2のレジメが各々、バピネオズマブを投与するステップを含み、第1のレジメが、第2のレジメと比べて、
(i)バピネオズマブの用量を低下させること、
(ii)バピネオズマブの投与頻度を低下させること
の少なくとも1つにおいて異なる、[161]または[166]に記載の方法。
[170] 患者において存在するApoE4対立遺伝子数を決定するステップをさらに含む、[161または[166]に記載の方法。
[171] バピネオズマブを医療従事者に供給するステップをさらに含む、[161]または[166]に記載の方法。
[172] 指示書およびバピネオズマブが組み合わせて供給される、[171]に記載の方法。
[173] レジメが血管原性浮腫について患者をモニタリングするステップをさらに含む、[166]に記載の方法。
[174] モニタリングがMRIにより実施される、[165]および[173]に記載の方法。
[175] モニタリングが脳内造影によるモニタリングである、[165]および[173]に記載の方法。
[176] モニタリングレジメが、0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者のモニタリングレジメとは異なる、[173]に記載の方法。
[177] モニタリングの頻度が、
(a)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、
(b)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または
(c)1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者
に対してより高い、[176]に記載の方法。
[178] バピネオズマブ投与のレジメを決定するキットであって、医療従事者が、0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与するバピネオズマブのレジメを決定する一助となる、医療従事者に対する指示書を含むキット。
[179] 指示書が、0.5〜2mg/kgの用量でバピネオズマブを投与することを特徴とするレジメを指定する、[178]に記載のキット。
[180] 指示書が、0.5〜2mg/kgのバピネオズマブを3カ月ごとに静脈内投与により投与するか、または、同等の平均血清濃度もしくは曲線下面積を発生させる投与頻度および投与経路において投与することを指定する、[178]に記載のキット。
[181] 指示書が、血管原性浮腫について患者をモニタリングすることを指定する、[178]に記載のキット。
[182] モニタリングレジメが、1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者のモニタリングレジメとは異なることを指示書が指定する、[178]に記載のキット。
[183] バピネオズマブ投与のレジメを決定するキットであって、医療従事者が、1または2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者に投与するバピネオズマブのレジメを決定する一助となる、医療従事者に対する指示書を含むキット。
[184] 指示書が、0.15〜1mg/kgの用量でバピネオズマブを投与することを指定する、[183]に記載のキット。
[185] 指示書が、0.15〜1mg/kgの用量でバピネオズマブを3カ月ごとに静脈内投与により投与するか、または、同等の平均血清濃度もしくは曲線下面積を発生させる投与頻度および投与経路において投与することを指定する、[183]に記載のキット。
[186] 決定されたレジメが、第1および第2のレジメを含み、血管原性浮腫が発生する前に第1のレジメを前記患者に施し、血管原性浮腫が消散した後で第2のレジメを施し、
第1および第2のレジメが各々、バピネオズマブを投与するステップを含み、第1のレジメが、第2のレジメと比べて、
(i)バピネオズマブの用量を低下させること、
(ii)バピネオズマブの投与頻度を低下させること
の少なくとも1つにおいて異なることを指示書が指定する、[178]または[183]に記載のキット。
[187] 指示書が、患者において存在するApoE4対立遺伝子数を決定することを指定する、[178]または[183]に記載の方法。
[188] バピネオズマブをさらに含む、[178]または[183]に記載のキット。
[189] 指示書が、血管原性浮腫について患者をモニタリングすることを指定する、[178]に記載のキット。
[190] モニタリングがMRIにより実施されることを指示書が指定する、[21]または[185]に記載のキット。
[191] モニタリングが脳内造影によるモニタリングであることを指示書が指定する、[21]または[185]に記載のキット。
[192] モニタリングレジメが0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者のモニタリングレジメとは異なることを指示書が指定する、[185]に記載のキット。
[193] モニタリングの頻度が、
(a)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、
(b)0コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者、および/または
(c)1コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者と比べて2コピーのApoE4対立遺伝子を有する患者
に対してより高いことを指示書が指定する、[185]に記載のキット。
[194] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者におけるバピネオズマブの安全性を改善する方法であって、1または2個のApoE対立遺伝子を有する患者に対して、0個のApoE対立遺伝子を有する患者に対する場合と比べて低用量のバピネオズマブを投与するよう医師に助言するステップを含む方法。
[195] 1または2個のApoE4対立遺伝子を有する患者におけるバピネオズマブの安全性を改善する方法であって、1または2個のApoE対立遺伝子を有する患者を、0個のApoE対立遺伝子を有する患者よりも高頻度でMRIによりモニタリングするよう医師に助言するステップを含む方法。