(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロワーカップの底壁に、前記燃料ポンプの吸入口を露出可能な開口部を形成すると共に、この開口部の周囲に前記排出口を形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
前記ロワーカップの底壁、および周壁の接続部分に接触するように前記排出口を形成し、この排出口を形成するための金型の入れ子のスライド方向に沿って前記燃料案内溝を形成したことを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車や四輪車の車両用の燃料供給装置として、燃料タンク内に燃料ポンプを配設し、燃料タンク内の燃料に燃料供給装置を浸漬する、所謂インタンク式が採用される。このインタンク式の燃料供給装置としては、燃料タンクの上壁に取り付けられる構造のものと、燃料タンクの下壁に取り付けられる構造のものとがある。
【0003】
図7は、従来の燃料供給装置の一例を示す縦断面図である。
同図に示すように、燃料供給装置100は、燃料タンク101の上壁101aに取り付けられる構造のものである。燃料供給装置100は、燃料タンク101の上壁101aに形成された開口部102を閉塞する蓋体としての本体部103と、この本体部103の下部に係合するポンプホルダ104とを有している。そして、これら本体部103とポンプホルダ104とにより、燃料タンク101内で燃料ポンプ105を支持するようになっている。すなわち、ポンプホルダ104は、燃料ポンプ105の下部を内包可能な有底筒状に形成されており、燃料ポンプ105を下側から支持するようになっている。
【0004】
燃料ポンプ105は、燃料タンク101の底壁側に燃料を汲み上げて不図示の内燃機関(エンジン)へと圧送するポンプ部107が設けられている一方、このポンプ部107の上部に、ポンプ部107を駆動するモータ部108が設けられている。また、ポンプ部107の下方には、燃料吸入口109を介してサクションフィルタ110が設けられている。
【0005】
ここで、本体部103やポンプホルダ104は、材料コストの低減化、燃料供給装置100の軽量化を図るために樹脂により形成される場合がある。このような場合、ポンプホルダ104の強度を、燃料ポンプ105を十分支持可能な程度に設定する必要がある。このため、ポンプホルダ104の底部の一部に、内面側に向かって突出する凸部106を形成し、この凸部106上に燃料ポンプ105を載置するようにしている。このように構成することで、ポンプホルダ104の底部のうち、凸部106が形成されている箇所が厚肉化され、ポンプホルダ104の剛性を高めることができる(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、さらなる材料コストの低減化、燃料供給装置100の軽量化が求められている。このため、燃料ポンプ105のポンプ部107のケースを樹脂に変更することが考えられている。このような場合、ポンプ部107のケースの強度が低下してしまうので、このケースを上述の従来技術のように、凸部106により支持しようとするとケースが変形する虞がある。
そこで、
図8に示すように、ポンプ部107のケースのうち、比較的強度が高い周縁部のみを支持するように、ポンプホルダ104の底部の内周縁部のみ内側に突出するように肉厚部111を形成することが考えられる。このような構成とすることで、樹脂化されたポンプ部107のケースの変形を防止しつつ、材料コストの低減化、燃料供給装置100の軽量化を図ることが可能になる。
【0008】
しかしながら、
図8に示すように、ポンプホルダ104の内周縁部のみ内側に突出するように肉厚部111を形成すると、燃料ポンプ105の外周面側において、肉厚部111とポンプ部107との間にクリアランスが形成されなくなる。このクリアランスが形成されないと、燃料ポンプ105の外面を伝う燃料が、ポンプホルダ104の外部に排出されにくくなってしまう。このため、燃料を有効活用できなくなってしまうという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、材料コストの低減化、装置の軽量化を図りつつ、燃料を有効活用することができる燃料供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、燃料タンク内に配置され、前記燃料タンク内の燃料を汲み上げて内燃機関へと圧送する燃料ポンプと、前記燃料タンクの壁面に取り付けられ、前記燃料ポンプを内包するアッパーカップを有するホルダ部と、前記アッパーカップに取り付けられ、前記燃料ポンプを下側から支持する有底筒状で樹脂製のロワーカップとを備え、前記ロワーカップの底壁と周壁との接続部に、前記燃料ポンプの下端周縁部が載置される台座部を形成し、前記ロワーカップの底壁に、前記ロワーカップ内の燃料を外部に排出可能な排出口を形成し、前記ロワーカップの周壁の内面に、鉛直方向に沿う燃料案内溝を形成し、この燃料案内溝が、前記台座部を介して前記排出口と連通するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、ロワーカップの台座部で燃料ポンプの下端周縁部が支持され、燃料ポンプのケースを樹脂で形成した場合であっても、このケースの変形を防止することができる。これに加え、ロワーカップの周壁の内面に、燃料案内溝が形成されており、この燃料案内溝が台座部を介して排出口に連通されているので、台座部と燃料ポンプとの間にクリアランスが形成されていなくても燃料ポンプの外面を伝う燃料が効率よくロワーカップの外部に排出される。このため、燃料を有効活用することが可能になる。
【0012】
請求項2に記載した発明は、前記ロワーカップの底壁に、前記燃料ポンプの吸入口を露出可能な開口部を形成すると共に、この開口部の周囲に前記排出口を形成したことを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、燃料ポンプの外面を伝う燃料が燃料ポンプの吸入口の近傍に排出される。吸入口の近傍に燃料が排出される分、この燃料をさらに効率よく燃料ポンプによって汲み上げることができる。
【0014】
請求項3に記載した発明は、前記ロワーカップの底壁、および周壁の接続部分に接触するように前記排出口を形成し、この排出口を形成するための金型の入れ子のスライド方向に沿って前記燃料案内溝を形成したことを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、排出口を形成する金型の入れ子を利用して排出口と燃料案内溝とを同時に形成することができる。このため、金型の構造を簡素化することができ、製造コストを低減することが可能になる。
【0016】
請求項4に記載した発明は、前記吸入口に取り付けられ、前記燃料ポンプに吸入される前記燃料タンク内の燃料を濾過するサクションフィルタを備え、前記サクションフィルタに、前記吸入口に装着可能な接続部を前記燃料ポンプ側に向けて突設し、前記接続部に第1係合部を設けると共に、前記ロワーカップの底壁に、前記吸入口に前記接続部を装着させた状態で前記第1係合部に係合可能な第2係合部を設け、この第2係合部と前記排出口とを、
前記排出口を形成するための金型の入れ子のスライド方向に沿って対向配置したことを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、第2係合部と排出口とを1つの入れ子を利用して形成することができる。このため、第2係合部、および排出口を別々の入れ子を用いて形成する必要がなく、第2係合部を容易に形成することが可能になる。よって、さらに製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロワーカップの台座部で燃料ポンプの下端周縁部が支持され、燃料ポンプのケースを樹脂で形成した場合であっても、このケースの変形を防止することができる。これに加え、ロワーカップの周壁の内面に、燃料案内溝が形成されており、この燃料案内溝が台座部を介して排出口に連通されているので、台座部と燃料ポンプとの間にクリアランスが形成されていなくても燃料ポンプの外面を伝う燃料が効率よくロワーカップの外部に排出される。このため、燃料を有効活用することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(燃料供給装置)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃料供給装置の斜視図、
図2は、燃料供給装置の縦断面図である。
なお、以下の説明においては、燃料タンク2に燃料供給装置1を取り付けた状態で、鉛直方向上側(
図1、
図2における上側)を単に上側、鉛直方向下側(
図1、
図2における下側)を単に下側などと表現して説明する。
【0021】
図1、
図2に示すように、燃料供給装置1は、例えば、自動車や自動二輪車などの燃料タンク2内に燃料に浸漬されて配置され、燃料タンク2内の燃料を汲み上げて不図示の内燃機関に圧送するものである。
燃料供給装置1は、燃料ポンプ3と、および燃料タンク2の上壁2aに固定され燃料ポンプ3を支持するホルダ部4と、燃料ポンプ3の吸入側、つまり燃料ポンプ3の下側に配設されたサクションフィルタ28とを備えている。
【0022】
(燃料ポンプ)
燃料ポンプ3は、サクションフィルタ28側に配設されたポンプ部Pとポンプ部P上に取り付けられたモータ部Mとを有している。
モータ部Mとしては、例えば、ブラシ(不図示)付きの直流モータ30aが使用される。
モータ部Mの径方向中央には出力軸30bが配置されており、モータ部Mの上側と、ポンプ部Pの下側とにより回動自在に枢支されている。
【0023】
モータ部Mの上部には、アウトレットカバー8が設けられている。アウトレットカバー8には、吐出ポート8aが形成されている。吐出ポート8aは、燃料ポンプ3によって汲み上げられた燃料が吐出される部位である。吐出ポート8aには、燃料の逆流を防止するためのチェックバルブ74が設けられている。また、アウトレットカバー8の下部外周には、後述のハウジングケース91をカシメるための段差部8bが形成されている。
【0024】
ポンプ部Pは、インペラ81を有する非容積型のポンプが用いられており、インペラ81と、インペラ81の全体を覆うように形成されたポンプケース82とにより構成されている。
インペラ81は、樹脂からなる略円板状に形成された部材であって、モータ部Mの出力軸30bに相対回転不能に連結されている。インペラ81の上面および下面には、外周側に複数の羽根部(不図示)が形成されている。これら複数の羽根部の間は、インペラ81の肉厚方向に貫通形成されている。また、インペラ81には、肉厚方向に貫通する燃料流路孔(不図示)が形成されており、直流モータ30aの駆動によりインペラ81が回転すると、燃料が不図示の燃料流路孔を通ってインペラ81の下側から上側に向かって圧送されるようになっている。
【0025】
インペラ81の全体を覆うポンプケース82は、ロワーケース83とアッパーケース84と、これらロワーケース83、およびアッパーケース84に挟持されるミドルケース85とにより構成されている。
ロワーケース83は、インペラ81の下部を覆うように略円板状に形成されている。ロワーケース83のインペラ81側の面には、軸方向平面視略C字状の溝部(不図示)が形成されている。この溝部の径方向外側の一端には、ロワーケース83の肉厚方向に貫通する燃料流路孔(不図示)が形成されている。また、ロワーケース83の下部には吸入管7が設けられている。
【0026】
この吸入管7は、ロワーケース83に形成されている不図示の燃料流路孔に連通しており、これによって吸入管7からポンプ部P内に燃料が汲み上げられるようになっている。吸入管7は、インペラ81に形成されているC字上の溝部(不図示)の一端に対応する部位に形成された不図示の燃料流路孔に連通するように形成されているので、ロワーケース83の外周部寄りに配置された状態になっている。
また、ロワーケース83の下部外周には、ゴム製の角リング92が装着可能な段差部83aが形成されている。
【0027】
アッパーケース84は、インペラ81の上部を覆うように略円板状に形成されている。アッパーケース84には、肉厚方向に貫通する不図示の燃料流路孔が形成されており、ここからモータ部M内にインペラ81から圧送された燃料が流出するようになっている。
ミドルケース85は、インペラ81の外周部を取り囲むように略リング状に形成されている。
これらロワーケース83、アッパーケース84およびミドルケース85は、いずれも耐油性を有する樹脂からなり、例えば金型を用いたインジェクション成型等により形成される。
【0028】
ここで、モータ部Mおよびポンプ部Pは、ハウジングケース91により覆われている。ハウジングケース91は、鉄等からなる略円筒状の部材であり、例えばシームレス管を切断することにより形成される。ハウジングケース91の上側端部は、カシメ部91aとして構成されている。このカシメ部91aが、アウトレットカバー8の段差部8bにカシメられ、アウトレットカバー8がモータ部Mと一体化される。
【0029】
一方、ハウジングケース91の下側端部には、鍔部86が径方向内側に向かって屈曲延出されている。鍔部86の内周縁の直径は、ロワーケース83に形成されている段差部83aの外周よりもやや大きくなるように設定されている。そして、段差部83aの底面とハウジングケース91の鍔部86とにより、角リング92を若干押し潰して挟持した状態になっている。これにより、ハウジングケース91とポンプ部Pとの間のシール性が確保される。
【0030】
(ホルダ部)
上述のように構成された燃料ポンプ3を支持するホルダ部4は、燃料タンク2の上壁2aに固定されるフランジユニット9と、フランジユニット9の燃料タンク2の内側に設けられ燃料ポンプ3を内包するアッパーカップ10と、このアッパーカップ10に取り付けられ、燃料ポンプ3の下部を覆いつつ、燃料ポンプ3を支持する有底筒状のロワーカップ20とにより構成されている。
フランジユニット9は、樹脂製の略円板状のユニット本体11を有している。ユニット本体11は、燃料タンク2の上壁2aに形成された開口部に外側(上側)から挿入され、上壁に取り付けられている。したがって、フランジユニット9の上面は、燃料タンク2の外部に露出した状態になる。
【0031】
フランジユニット9には、燃料ポンプ3の吐出ポート8aと連通する燃料取り出し管12が設けられている。すなわち、燃料は吐出ポート8aから燃料取り出し管12を介して内燃機関へと圧送される。また、フランジユニット9には、燃料取出し管12に連通するプレッシャレギュレータ76が設けられており、内燃機関へと圧送される燃料に対して所定の燃圧を確保できるようになっている。
【0032】
さらに、フランジユニット9の上面には、コネクタ9aが設けられている。このコネクタ9aには、外部電源に接続された外部コネクタが嵌着されるようになっている。また、コネクタ9aは、燃料ポンプ3のモータ部Mと電気的に接続されるようになっており、これによってモータ部Mが駆動する。さらに、ユニット本体11の内面側には、中央の大部分に凹部13が形成されており、ここにアッパーカップ10が固定されている。
【0033】
アッパーカップ10は、樹脂などによって燃料ポンプ3の外周面を覆うように形成された筒状のカップ本体14を有しており、カップ本体14の下端に形成された開口部14a側から燃料ポンプ3を挿入することができるようになっている。カップ本体14の周壁14bは、フランジユニット9から燃料ポンプ3の軸方向略中央に至るまで延出している。
【0034】
また、カップ本体14には、開口部14aの周縁から軸方向下方に向かって延出する係合片17が4箇所周方向に等間隔で形成されている。この係合片17は、先端が拡径する方向に向かって弾性変形可能に形成されている。そして、ロワーカップ20に係合片17がスナップフィットすることで、ロワーカップ20の軸方向、および周方向の位置決めが行われる。
係合片17は、燃料ポンプ3のポンプ部Pよりもやや下方まで延出している。そして、係合片17には、後述のロワーカップ20に形成されている係合凸部18に係合する係合孔19が形成されている。
【0035】
(ロワーカップ)
図3は、ロワーカップを下側からみた斜視図、
図4は、ロワーカップを上側からみた斜視図、
図5は、
図2のA部拡大図である。
図1〜
図5に示すように、燃料ポンプ3の吸入側に配設されたロワーカップ20は、略有底筒状に形成されたものである。ロワーカップ20の周壁20aは、内径が燃料ポンプ3を嵌合可能、かつ外径がアッパーカップ10(カップ本体14)の周壁14bの内径よりもやや小さくなる程度に設定されている。
【0036】
ロワーカップ20の周壁20aには、アッパーカップ10に形成された係合片17の係合孔19に対応する位置に、この係合孔19に係合可能な係合凸部18が形成されている。係合凸部18にアッパーカップ10の係合片17がスナップフィットすることによって、アッパーカップ10、およびロワーカップ20が一体化される。そして、これらアッパーカップ10とロワーカップ20とによって、燃料ポンプ3を支持することができるようになっている。
【0037】
また、ロワーカップ20の周壁20aには、底壁20b側に、径方向外側に突出する支持プレート21が一体成形されている。この支持プレート21の先端には、ゲージ取り付け板22が軸方向に沿うように一体成形されている。このゲージ取り付け板22には、センダゲージ23が設けられている。センダゲージ23は、燃料タンク2内の燃料の残量、すなわち、液面位置を検出する液面計であって、ボックス状に形成されたゲージ本体24と、このゲージ本体24に対して回動自在に設けられた揺動アーム34と、揺動アーム34の先端に設けられ液面に浮遊可能なフロート35とを備えている。
【0038】
図4、
図5に詳示するように、ロワーカップ20の周壁20aと底壁20bとの接続部には、内面側に台座部65が全周に亘って一体成形されている。台座部65の内径は、燃料ポンプ3のハウジングケース91に形成されている鍔部86の内径よりもやや大きくなる程度に設定されている。これにより、台座部65上に確実に燃料ポンプ3の鍔部86が載置された状態で、ロワーカップ20に燃料ポンプ3が支持される。
【0039】
また、
図1〜
図4に示すように、ロワーカップ20の底壁20bには、支持プレート21側に脱気孔27が貫通形成されている。この脱気孔27は、燃料ポンプ3内で発生したベーパを排出するためのものである。脱気孔27の周囲には、脱気孔27から排出されるベーパの排出方向を規制するカバー27aが一体成形されている。
【0040】
さらに、ロワーカップ20の底壁20bには、燃料ポンプ3の吸入管7に対応する部位、つまり、底壁20bの外周部寄りに、肉厚方向に貫通する開口部26が形成されている。この開口部26は、吸入管7を挿通可能な大きさに形成されており、ここから吸入管7が軸方向下方に向かって突出している。この突出している吸入管7の根元には、この吸入管7と、後述のサクションフィルタ28に設けられている接続管38との間のシール性を確保するためのOリング25が装着されている。
【0041】
また、ロワーカップ20の底壁20bには、一対の係合部51,51が開口部26を中心にして点対称位置に突設されている。すなわち、開口部26が底壁20bの外周部寄りに形成されているので、一対の係合部51,51は、外周部に沿うように形成された状態になっている。これら係合部51,51は、ロワーカップ20とサクションフィルタ28とを係合するための固定手段として用いられるものであって、開口部26を中心にして点対称となるように突設されている。
より具体的には、係合部51は、ロワーカップ20の底壁20bから立ち上がり形成された支持部52と、支持部52の先端に一体成形され、吸入管7とは反対側に向かって延出する抜け止め壁53とで構成されている。抜け止め壁53は、軸方向平面視で略扇状に形成されている。
【0042】
ここで、底壁20bには、抜け止め壁53の真下部分(投影部分)に対応する位置に開口部57が形成されている。この開口部57は、抜け止め壁53の底壁20b側の面、および支持部52の吸入管7とは反対側の面を形成する金型の入れ子121(
図4参照)の型抜き用開口部として機能していると共に、ロワーカップ20の内部に滞留する燃料をロワーカップ20の外部に排出するための排出口として機能している(詳細は後述する)。
【0043】
また、一対の係合部51,51が底壁20bの外周部に沿うような形で突設されていることから、抜け止め壁53の真下部分に形成されている開口部57も底壁20bの外周部に沿うように形成されている。このため、開口部57は、この一側がロワーカップ20の周壁20aと底壁20bとの接続部に形成されている台座部65の一部を切り欠くように形成されている。
【0044】
さらに、周壁20aには、開口部57に対応する箇所に、それぞれ燃料案内溝66が鉛直方向全体に亘って形成されている。すなわち、燃料案内溝66は、台座部65を介して開口部57に連通するように形成されている。この燃料案内溝66は、ロワーカップ20の内部に滞留する燃料を排出口として機能する開口部57に導くためのものである。開口部57から排出された燃料は、サクションフィルタ28を介して再び燃料ポンプ3によって汲み上げられる。
【0045】
(サクションフィルタ)
図6は、サクションフィルタの斜視図である。
図1、
図2、
図6に示すように、サクションフィルタ28は、濾材36と、濾材36の外周縁に形成された溶着部37とで構成されている。濾材36は、袋状に形成された不織布であって、溶着部37は、袋状に形成された濾材36の外周縁を溶着し形成されたものである。
【0046】
サクションフィルタ28には、燃料ポンプ3の吸入管7に対応する箇所に、接続管38が設けられている。接続管38は、濾材36と燃料ポンプ3の吸入管7とを連通させると共に、ロワーカップ20にサクションフィルタ28を固定するためのものである。
接続管38は樹脂で形成されたものであって、この接続管38の一端は濾材36に開口されている。これにより、燃料タンク2内の燃料が濾材36を介して接続管38内に流れ込み、この接続管38内に流れ込んだ燃料が燃料ポンプ3に汲み上げられる。
【0047】
さらに、接続管38の他端は、溶着部37から燃料ポンプ3側(
図6における上側)に向かって突出している。接続管38の他端、つまり、接続管38のうち溶着部37から突出している突出部38aの内径は、吸入管7に外嵌可能な大きさに設定されている。突出部38aの内周面には、段差により縮径された縮径部41が一体成形されている。そして、この縮径部41の段差面41aとロワーカップ20の底壁20bとの間に、Oリング25(
図3参照)が介在するようになっている。
【0048】
突出部38aの外周面には、軸方向中央よりもやや他端(
図6における上端)側に、弾性変形可能な一対の係合爪42,42が突出部38aの軸線を中心にして点対称となるように設けられている。係合爪42は、縦断面略四角形状に形成され、かつ横断面略L字状に形成されており、ロワーカップ20の底壁20bに形成されている係合部51に係合可能になっている。すなわち、ロワーカップ20の各係合部51,51と接続管38の係合爪42,42との干渉を避けるように、吸入管7に接続管38を外嵌した後、この接続管38を係合爪42の先端側に向かって軸線周りに回転させると、係合部51の抜け止め壁53と底壁20bとの間に係合爪42が挿入されるようになっている。
【0049】
係合部51の抜け止め壁53は、この抜け止め壁53と底壁20bとの間に係合爪42が挿入された状態で、係合爪42の抜け方向を規制する役割を有している。また、係合爪42には、先端側に突起45が形成されている。この突起45は、係合部51に係合された係合爪42の回転方向の抜けを規制する役割を有している。
また、突出部38aの他端(先端)側の外周縁には、凸部46が一体成形されている一方、ロワーカップ20の底壁20bには、突出部38a、および凸部47を受け入れ可能な溝48が形成されている。これにより、サクションフィルタ28の誤組みが防止されるようになっている。
【0050】
(ロワーカップの製造方法)
次に、ロワーカップ20の製造方法について説明する。
ロワーカップ20は、不図示の金型を用いたインジェクション成型等により形成されるが、金型を構成するコアとキャビティ(何れも不図示)の離型方向は、ロワーカップ20の軸方向に設定される。ロワーカップ20が有底筒状に形成されているからである。
そして、
図4に示すように、抜け止め壁53の底壁20b側の面、および支持部52の吸入管7とは反対側の面を形成する金型の入れ子121もコアとキャビティの移動に応じて軸方向にスライド移動する(
図4における矢印Y1参照)。
【0051】
ここで、入れ子121のスライド移動によって、抜け止め壁53の真下部分に位置する開口部57が形成される。すなわち、抜け止め壁53を有する係合部51と開口部57は、互いに入れ子121のスライド方向に沿って対向配置されていることになる。
また、開口部57は、この一側がロワーカップ20の周壁20aと底壁20bとの接続部に形成されている台座部65の一部を切り欠くように形成されており、さらに、周壁20aには、開口部57に対応する箇所に、それぞれ燃料案内溝66が鉛直方向全体に亘って形成されている。すなわち、燃料案内溝66は、入れ子121のスライド方向に沿って形成された状態になっている。このため、入れ子121のスライド移動によって燃料案内溝66も同時に形成される。
【0052】
(燃料供給装置の動作)
続いて、
図2、
図4に基づいて燃料供給装置1の動作について説明する。
まず、燃料ポンプ3のモータ部Mを駆動させると、出力軸30bが回転し、これに相対回転不能に連結されているインペラ81が回転する。インペラ81が回転すると、燃料タンク2内の燃料がサクションフィルタ28を介して濾過された状態で吸入管7から吸入される。そして、ポンプ部P内で燃料が昇圧され、不図示の燃料流路孔を介してモータ部M内に燃料が吐出される。
【0053】
モータ部M内に吐出された燃料は、モータ部M内を通過して吐出ポート8aに流れ込む。そして、チェックバルブ74を通過して燃料取り出し管12へと流れ込む。このとき、燃圧が所定値以内である場合、燃料取り出し管12を通って不図示の内燃機関へと燃料が搬送される。一方、燃圧が所定値よりも高い場合、プレッシャレギュレータ76を介してフランジユニット9の内面側から燃料が排出される。
【0054】
このとき、フランジユニット9の内面側から排出された燃料は、燃料ポンプ3の外面を伝って下方に向かって垂れ落ちる。ここで、ロワーカップ20の周壁20aは、内径が燃料ポンプ3を嵌合可能な程度に形成されているので、燃料ポンプ3のガタツキを抑えることができるものの、燃料ポンプ3の外面を伝う燃料が下方へと垂れ落ちにくくなっている。しかしながら、ロワーカップ20の周壁20aには、燃料案内溝66が鉛直方向全体に亘って形成されているので、燃料案内溝66を通って燃料が下方に向かってスムーズに垂れ落ちる。
【0055】
さらに、燃料ポンプ3は、ロワーカップ20の台座部65に載置された状態になっており、台座部65と燃料ポンプ3との間にクリアランスが形成されていない状態になっているが、燃料案内溝66が開口部57に連通されているので、この開口部57を介して燃料がロワーカップ20の外部へと排出される。
ここで、開口部57は、吸入管7が挿通されている開口部26を挟んで両側に形成されている。すなわち、吸入管7の近傍に開口部57が形成された状態になっている。このため、開口部57から排出された燃料は、サクションフィルタ28を介して速やかに吸入管7から汲み上げられる。
【0056】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、吸入管7の近傍の開口部57を、燃料ポンプ3の外面を伝う燃料の排出口として機能させることにより、燃料ポンプ3によって燃料を効率よく汲み上げることができる。
また、ロワーカップ20に形成された台座部65に燃料ポンプ3を載置することにより、ポンプケース82の下端周縁部がロワーカップ20に支持された状態になる。このため、ポンプケース82の中央部分を支持する場合と比較してポンプケース82の変形を防止することができる。よって、燃料ポンプ3の効率低下を防止できる。
さらに、燃料ポンプ3はハウジングケース91に覆われており、このハウジングケース91の鍔部86を介し、ロワーカップ20に燃料ポンプ3が支持された状態になっている。このため、より確実にポンプケース82の変形を防止できる。
【0057】
これに加え、ロワーカップ20の周壁20aの内面に、燃料案内溝66が形成されており、この燃料案内溝66が台座部65を介して開口部57に連通されているので、台座部65と燃料ポンプ3との間にクリアランスが形成されていなくても燃料ポンプ3の外面を伝う燃料が効率よくロワーカップ20の外部に排出される。このため、燃料を確実に有効活用することが可能になる。
【0058】
また、開口部57は、この一側がロワーカップ20の周壁20aと底壁20bとの接続部に形成されている台座部65の一部を切り欠くように形成されており、さらに、周壁20aには、開口部57に対応する箇所に、それぞれ燃料案内溝66が入れ子121のスライド方向に沿って形成されている。このため、入れ子121を利用して開口部57と燃料案内溝66とを同時に形成することができる。さらに、ロワーカップ20とサクションフィルタ28とを係合するための係合部51も容易に形成することができ、より製造コストを低減することが可能になる。
【0059】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ポンプ部Pは、インペラ81が回転すると、吸入管7から燃料を吸入して燃料を昇圧する構成になっている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ポンプ部Pとして、例えば、遠心ポンプ、渦巻きポンプなどの名称で知られる周知の種々のポンプ構造を採用することが可能である。