特許第5745879号(P5745879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745879
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20150618BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   F02M37/10 C
   F02M37/00 301L
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-24025(P2011-24025)
(22)【出願日】2011年2月7日
(65)【公開番号】特開2012-163043(P2012-163043A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳
(72)【発明者】
【氏名】下川 真輝
(72)【発明者】
【氏名】堀底 伸一郎
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−014074(JP,A)
【文献】 特開2003−293881(JP,A)
【文献】 特開2009−127607(JP,A)
【文献】 特開2010−116793(JP,A)
【文献】 特開2006−200545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に配置され、前記燃料タンク内の燃料を汲み上げて内燃機関へと圧送する燃料ポンプと、
前記燃料タンクの壁面に取り付けられ、前記燃料ポンプを内包する筒状のアッパーカップを有するホルダ部と、
前記アッパーカップの下端の開口縁に形成されている係合片にスナップフィット固定され、前記燃料ポンプを支持するロワーカップとを備え、
前記ロワーカップの軸方向の長さを、前記アッパーカップの軸方向の長さよりも長く設定し、前記アッパーカップに、前記燃料ポンプが配置された前記ロワーカップを取り付けた状態で、前記ロワーカップの下部に、重心が位置するように設定され、
前記ロワーカップの上部には、前記ロワーカップの開口縁から軸方向に沿って切り欠くように複数の脆弱部が形成されており、
前記アッパーカップの開口縁全体には、前記ロワーカップの上部と嵌合すると共に、前記脆弱部を覆う嵌合部が形成されていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記アッパーカップの周壁の内面に、軸方向に沿うように形成されたリブを周方向に複数配置し、
前記ロワーカップの周壁における前記リブに対応する部位に、前記凹部を形成したことを特徴とする請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記アッパーカップの嵌合部に、前記ロワーカップの嵌合部を内嵌し、
前記ロワーカップの脆弱部と、前記燃料ポンプの前記脆弱部に対応する部位との間に、クリアランスを形成したことを特徴とする請求項1または請求項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料タンクから内燃機関に燃料を供給するための車両用の燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車や四輪車の車両用の燃料供給装置として、燃料タンク内に燃料ポンプを配設し、燃料タンク内の燃料に燃料供給装置を浸漬する、所謂インタンク式が採用される。このインタンク式の燃料供給装置の中には、燃料タンクの上壁に取り付けられる構造のものがある。
このものは、燃料タンクの上壁に形成された開口部に取り付けられ、この開口部を閉塞する蓋体としての役割を有するホルダ部(フランジ部)を備えている。そして、このホルダ部に一体成形されている筒状の部材に、燃料ポンプを内蔵する有底筒状のポンプケースがスナップフィット固定されている。ポンプケースの下部には、燃料ポンプの吸入口に連通するポンプフィルタが設けられており、このポンプフィルタを介して燃料ポンプの内部に燃料が汲み上げられる。そして、燃料は、供給管を通ってエンジンへと圧送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−200545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術にあっては、燃料タンク内に貯留されている燃料を、最後まで効率よく汲み上げることができるようにするために、燃料タンクの底部にポンプフィルタ、および吸入口を配置するする必要がある。このため、燃料タンクの深さに応じてポンプケースの軸方向の長さが長くなる場合がある。
このような場合、燃料供給装置の重心が下がり、車両走行時の振動や揺れに伴ってポンプケースにかかる横方向の負荷が大きくなり、さらにはスナップフィット部にかかる負荷が大きくなる。このため、筒状の部材からポンプケースが外れてしまう虞があるという課題がある。
【0005】
ここで、スナップフィット部による固定力を高めるために、筒状の部材とポンプケースとを嵌合させたうえで、筒状の部材とポンプケースとをスナップフィット固定させ、スナップフィット部にかかる負荷を低減することが考えられる。しかしながら、このような場合、スナップフィット部による固定力を高めることができるものの、車両走行時の振動や揺れに伴ってポンプケースにかかる負荷がホルダ部に伝達されてしまい、ホルダ部の燃料タンクに対するシール性を損なう虞があるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、従来と比較してスナップフィット固定力を高めつつ、ホルダ部の燃料タンクに対するシール性を十分確保することができる燃料供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、燃料タンク内に配置され、前記燃料タンク内の燃料を汲み上げて内燃機関へと圧送する燃料ポンプと、前記燃料タンクの壁面に取り付けられ、前記燃料ポンプを内包する筒状のアッパーカップを有するホルダ部と、前記アッパーカップの下端の開口縁に形成されている係合片にスナップフィット固定され、前記燃料ポンプを支持するロワーカップとを備え、前記ロワーカップの軸方向の長さを、前記アッパーカップの軸方向の長さよりも長く設定し、前記アッパーカップに、前記燃料ポンプが配置された前記ロワーカップを取り付けた状態で、前記ロワーカップの下部に、重心が位置するように設定され、前記ロワーカップの上部には、前記ロワーカップの開口縁から軸方向に沿って切り欠くように複数の脆弱部が形成されており、前記アッパーカップの開口縁全体には、前記ロワーカップの上部と嵌合すると共に、前記脆弱部を覆う嵌合部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、スナップフィット固定力を従来と比較して高めることができる。
これに加え、嵌合部に脆弱部を形成することにより、ロワーカップにかかる負荷により、嵌合部を容易に変形させることができる。このため、ロワーカップにかかる負荷がホルダ部に伝達されてしまうことを低減できる。よって、燃料タンクに対するホルダ部のシール性を、十分確保することが可能になる。
また、嵌合部を形成することにより、アッパーカップとロワーカップとの間のシール性を高めることもできる。さらに、簡素な構造で脆弱部を形成することができる。そして、ロワーカップの軸方向の長さがアッパーカップの軸方向の長さよりも長く、ロワーカップの下部に燃料供給装置の重心が位置するような場合であっても、従来と比較してスナップフィット固定力を高めつつ、ホルダ部の燃料タンクに対するシール性を十分確保することができる。
【0013】
請求項に記載した発明は、前記アッパーカップの周壁の内面に、軸方向に沿うように形成されたリブを周方向に複数配置し、前記ロワーカップの周壁における前記リブに対応する部位に、前記凹部を形成したことを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、ホルダ部の剛性を高めることができ、ホルダ部の燃料タンクに対するシール性を十分確保することができる。また、アッパーカップとロワーカップとの嵌合部において、アッパーカップの周壁に形成されているリブとの干渉を避けるように、ロワーカップとの周壁に凹部が形成されることになるので、アッパーカップとロワーカップとのスナップフィット固定を確実に維持することができる。
【0015】
請求項に記載した発明は、前記アッパーカップの嵌合部に、前記ロワーカップの嵌合部を内嵌し、前記ロワーカップの脆弱部と、前記燃料ポンプの前記脆弱部に対応する部位との間に、クリアランスを形成したことを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、ロワーカップに形成されている脆弱部を径方向内側に向かって容易に撓ませることができる。このため、ロワーカップにかかる負荷がホルダ部に伝達されてしまうことをより確実に低減できる。
【発明の効果】
【0019】
スナップフィット固定力を従来と比較して高めることができる。
これに加え、嵌合部に脆弱部を形成することにより、ロワーカップにかかる負荷により、嵌合部を容易に変形させることができる。このため、ロワーカップにかかる負荷がホルダ部に伝達されてしまうことを低減できる。よって、燃料タンクに対するホルダ部のシール性を、十分確保することが可能になる。
また、嵌合部を形成することにより、アッパーカップとロワーカップとの間のシール性を高めることもできる。さらに、簡素な構造で脆弱部を形成することができる。そして、ロワーカップの軸方向の長さがアッパーカップの軸方向の長さよりも長く、ロワーカップの下部に燃料供給装置の重心が位置するような場合であっても、従来と比較してスナップフィット固定力を高めつつ、ホルダ部の燃料タンクに対するシール性を十分確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における燃料供給装置の側面図である。
図2】本発明の実施形態における燃料供給装置の分解斜視図である。
図3図1のA−A線に沿う断面図である。
図4】本発明の実施形態におけるホルダ部を下側からみた斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるロワーカップ内に燃料ポンプを収納した状態の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(燃料供給装置)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃料供給装置の側面図、図2は、燃料供給装置の分解斜視図、図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。
なお、以下の説明においては、燃料タンク2に燃料供給装置1を取り付けた状態で、鉛直方向上側(図1図2における上側)を単に上側、鉛直方向下側(図1図2における下側)を単に下側などと表現して説明する。
【0022】
図1図2に示すように、燃料供給装置1は、例えば、自動車や自動二輪車などの燃料タンク2内に燃料に浸漬されて配置され、燃料タンク2内の燃料を汲み上げて不図示の内燃機関に圧送するものである。
燃料供給装置1は、燃料ポンプ3と、および燃料タンク2の上壁2aに固定され燃料ポンプ3を支持するホルダ部4と、燃料ポンプ3の吸入側、つまり燃料ポンプ3の下側に配設されたサクションフィルタ28とを備えている。
【0023】
(燃料ポンプ)
燃料ポンプ3は、サクションフィルタ28側に配設されたポンプ部Pとポンプ部P上に取り付けられたモータ部Mとを有している。ポンプ部Pには、例えば、インペラを有する非容積型の再生式ポンプが用いられ、モータ部Mによって駆動するようになっている。モータ部Mには、例えば、ブラシ付きの直流モータが使用されている。
ポンプ部Pの下部には吸入管7が設けられ、ここにサクションフィルタ28が取り付けられるようになっている。また、モータ部Mの上部には吐出ポート8が設けられており、ここからモータ部M内を通った燃料が燃料ポンプ3の外側へと圧送される。
【0024】
(ホルダ部)
図4は、ホルダ部を下側からみた斜視図である。
図2図4に詳示するように、燃料ポンプ3を支持するホルダ部4は、燃料タンク2の上壁2aに固定されるフランジユニット9と、フランジユニット9の燃料タンク2の内側に設けられ燃料ポンプ3を内包するアッパーカップ10とにより構成され、このアッパーカップ10に、燃料ポンプ3の下部を覆いつつ、燃料ポンプ3を支持する有底筒状のロワーカップ20がスナップフィット固定されている。
【0025】
フランジユニット9は、樹脂製の略円板状のユニット本体11を有している。ユニット本体11は、燃料タンク2の上壁2aに形成された開口部に外側(上側)から挿入され、上壁に取り付けられている。したがって、フランジユニット9の上面は、燃料タンク2の外部に露出した状態になる。
【0026】
フランジユニット9には、燃料ポンプ3の吐出ポート8と連通する燃料取り出し管12が設けられている。すなわち、燃料は吐出ポート8から燃料取り出し管12を介して内燃機関へと圧送される。また、フランジユニット9には、燃料取出し管12に連通するプレッシャレギュレータ76が設けられており、内燃機関へと圧送される燃料に対して所定の燃圧を確保できるようになっている。
【0027】
さらに、フランジユニット9の上面には、コネクタ9aが設けられている。このコネクタ9aには、外部電源に接続された外部コネクタが嵌着されるようになっている。また、コネクタ9aは、燃料ポンプ3のモータ部Mと電気的に接続されるようになっており、これによってモータ部Mが駆動する。さらに、ユニット本体11の内面側には、中央の大部分に凹部13が形成されており、ここにアッパーカップ10が固定されている。
【0028】
アッパーカップ10は、樹脂などによって燃料ポンプ3の外周面を覆うように形成された筒状のカップ本体14を有しており、カップ本体14の下端に形成された開口部14a側から燃料ポンプ3を挿入することができるようになっている。カップ本体14の周壁14bは、フランジユニット9から燃料ポンプ3の上部付近に至るまで延出している。
カップ本体14の周壁14bには、内面側に軸方向全体に亘って8つのリブ14cが周方向に等間隔に形成されている。これらリブ14cは、アッパーカップ10の剛性を高めると共に、アッパーカップ10に対する燃料ポンプ3の位置決めを行うためのものである。
【0029】
また、カップ本体14には、開口部14aの周縁から軸方向下方に向かって延出する係合片17が4箇所周方向に等間隔で形成されている。ここで、8つのリブ14cは、係合片17の周方向中央、および周方向に隣接する係合片17の間の略中央に、それぞれ配置された状態になっている。
係合片17は、先端が拡径する方向に向かって弾性変形可能に形成されている。そして、ロワーカップ20に係合片17がスナップフィットすることで、ロワーカップ20の軸方向、および周方向の位置決めが行われる。係合片17は、燃料ポンプ3のポンプ部Pの軸方向略中央に至るまで延出している。そして、係合片17には、後述のロワーカップ20に形成されている係合凸部18に係合する係合孔19が形成されている。
【0030】
(ロワーカップ)
図5は、ロワーカップ内に燃料ポンプを収納した状態の一部拡大斜視図である。
図1図3、および図5に示すように、燃料ポンプ3の吸入側に配設されたロワーカップ20は、略有底筒状に形成されたものである。ロワーカップ20の周壁20aは、内径が燃料ポンプ3を嵌合可能、かつ外径がアッパーカップ10(カップ本体14)の周壁14bの内径よりもやや小さくなる程度に設定されている。そして、ロワーカップ20の周壁20aにおける上部には、アッパーカップ10の周壁14bに内嵌する嵌合部20cが形成されている。
一方、アッパーカップ10の周壁14bにおける下部は、ロワーカップ20の周壁20aに外嵌する嵌合部14dとなる(図1図4のハッチ部参照)。
【0031】
ロワーカップ20内に燃料ポンプ3を収納した状態では、この燃料ポンプ3と嵌合部20cとの間にクリアンラスKが形成されるようになっている。
また、ロワーカップ20の嵌合部20cには、アッパーカップ10に形成されているリブ14cに対応する箇所に、凹部29が形成されている。すなわち、各凹部29は、ロワーカップ20の周壁20aの開口縁から軸方向に沿って切り欠くように形成されている。そして、アッパーカップ10にロワーカップ20を取り付けた状態で、凹部29全体がアッパーカップ10の周壁14b、つまり、嵌合部14dに覆われた状態となるようになっている(図1参照)。
【0032】
凹部29は、アッパーカップ10の嵌合部14d、およびロワーカップ20の嵌合部20cにおいて、アッパーカップ10のリブ14cとロワーカップ20との干渉を回避する役割を有していると共に、ロワーカップ20の嵌合部20cの剛性を弱めるための脆弱部30としての役割を有している。脆弱部30としての作用についての詳細は、後述する。
【0033】
また、ロワーカップ20の周壁20aには、アッパーカップ10に形成された係合片17の係合孔19に対応する位置に、この係合孔19に係合可能な係合凸部18が形成されている。係合凸部18にアッパーカップ10の係合片17がスナップフィットすることによって、アッパーカップ10、およびロワーカップ20が一体化される。そして、これらアッパーカップ10とロワーカップ20とによって、燃料ポンプ3が支持される。
【0034】
さらに、ロワーカップ20の周壁20aには、底壁20b側に、径方向外側に突出する支持プレート21が一体成形されている。この支持プレート21の先端には、ゲージ取り付け板22が軸方向に沿うように一体成形されている。このゲージ取り付け板22には、不図示のセンダゲージが設けられる。センダゲージは、燃料タンク2内の燃料の残量、すなわち、液面位置を検出する液面計である。
【0035】
また、ロワーカップ20の底壁20bには、燃料ポンプ3の吸入管7に対応する部位に、不図示の開口部が形成されており、この開口部に挿通されるように吸入管7が軸方向下方に向かって突出する。底壁20bの吸入管7が挿通される開口部の周囲には、吸入管7と後述のサクションフィルタ28に設けられている接続管38とを接続するための係合部51が一体成形されている。
【0036】
(サクションフィルタ)
図1図3に示すように、サクションフィルタ28は、濾材36と、濾材36の外周縁に形成された溶着部37とで構成されている。濾材36は、袋状に形成された不織布であって、溶着部37は、袋状に形成された濾材36の外周縁を溶着し形成されたものである。
【0037】
サクションフィルタ28には、燃料ポンプ3の吸入管7に対応する箇所に、接続管38が設けられている。接続管38は、濾材36と燃料ポンプ3の吸入管7とを連通させると共に、ロワーカップ20にサクションフィルタ28を固定するためのものである。
接続管38は樹脂で形成されたものであって、この接続管38の一端は濾材36に開口されている。これにより、燃料タンク2内の燃料が濾材36を介して接続管38内に流れ込み、この接続管38内に流れ込んだ燃料が燃料ポンプ3に汲み上げられる。
【0038】
さらに、接続管38の他端は、溶着部37から燃料ポンプ3側(図1図2における上側)に向かって突出している。この接続管38の突出している部位には、ロワーカップ20の係合部51に係合可能な係合爪42が一体成形されている。これら係合部51、および係合爪42により、燃料ポンプ3の吸入管7にサクションフィルタ28の接続管38が接続される。
【0039】
このような構成のもと、燃料供給装置1の軸方向の長さL1(図1参照)は、燃料タンク2の大きさに基づいて設定される。すなわち、燃料タンク2の深さが深い場合の燃料供給装置1の長さL1は、燃料タンク2の深さが浅い場合の燃料供給装置1の長さL1よりも長く設定される。このように、燃料供給装置1の長さL1を調整する場合、ロワーカップ20の周壁20aの軸方向の長さを変更することで対応する。つまり、ホルダ部4は、燃料タンク2の大きさに関わらず、共通部品として使用され、ロワーカップ20を燃料タンク2の形状ごとに用意するようになっている。
【0040】
本実施形態では、ロワーカップ20の軸方向の長さL2は、アッパーカップ10の軸方向の長さL3よりも長く設定される。
また、ロワーカップ20に燃料ポンプ3を収納した状態でアッパーカップ10にロワーカップ20が垂設された状態になるので、燃料供給装置1の重心Jは、ロワーカップ20の下部に設定される。
【0041】
(燃料供給装置の動作)
続いて、燃料供給装置1の動作について説明する。
まず、燃料ポンプ3のモータ部Mを駆動させると、燃料タンク2内の燃料がサクションフィルタ28を介して濾過された状態で吸入管7から吸入され、さらに、ポンプ部P内に汲み上げられる。そして、ポンプ部P内で燃料が昇圧され、モータ部M内に燃料が吐出される。
【0042】
モータ部M内に吐出された燃料は、モータ部M内を通過して吐出ポート8に流れ込み、さらに、燃料取り出し管12へと流れ込む。このとき、燃圧が所定値以内である場合、燃料取り出し管12を通って不図示の内燃機関へと燃料が搬送される。一方、燃圧が所定値よりも高い場合、プレッシャレギュレータ76を介してフランジユニット9の内面側から燃料が排出される。
【0043】
ここで、例えば、燃料供給装置1が設けられている自動車や自動二輪車の走行時の振動や揺れに伴って燃料ポンプ3、およびロワーカップ20に水平方向の荷重がかかると、ロワーカップ20の下部が水平方向に振られる。このとき、アッパーカップ10の嵌合部14dと、ロワーカップ20の嵌合部20cとが嵌合されているので、ロワーカップ20が大きく水平方向に振られることがない。このため、アッパーカップ10に一体成形されている係合片17に、径方向外側に向かって押し広げられる力が作用してしまうことを抑制できる。
【0044】
また、ロワーカップ20の嵌合部20cには、複数の凹部29が形成されており、この凹部29が嵌合部20cの剛性を弱めるための脆弱部30として機能している。すなわち、嵌合部20cに凹部29を形成することにより嵌合部20cの剛性が弱まり、嵌合部20cが弾性変形し易くなる。これに加え、ロワーカップ20内に燃料ポンプ3を収納した状態では、この燃料ポンプ3と嵌合部20cとの間にクリアンラスKが形成されるようになっている(図5参照)。このため、ロワーカップ20に水平方向の荷重がかかるとき、嵌合部20cがさらに弾性変形し易くなる。よって、アッパーカップ10とロワーカップ20とが嵌合されているものの、ロワーカップ20にかかる水平方向の荷重がアッパーカップ10に伝達されて、さらにフランジユニット9に伝達されてしまうことが抑制される。
【0045】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、アッパーカップ10、およびロワーカップ20に、それぞれ互いに嵌合される嵌合部14d,20cを形成することにより、ロワーカップ20に水平方向の荷重がかかった際、係合片17に径方向外側に向かって押し広げられる力が作用することを抑制できる。このため、従来と比較して、アッパーカップ10とロワーカップ20とのスナップフィット力を高めることができる。
【0046】
これに加え、ロワーカップ20の嵌合部20cに脆弱部30として機能する凹部29を形成することにより、ロワーカップ20にかかる水平方向の荷重がアッパーカップ10に伝達される前に、嵌合部20cが容易に弾性変形する。このため、ロワーカップ20にかかる水平方向の荷重がアッパーカップ10を介し、フランジユニット9に伝達されてしまうことを抑制できる。よって、燃料タンク2の上壁2aとフランジユニット9との間に隙間が生じる等のシール性が損なわれず、簡素な構造で燃料タンク2に対するホルダ部4のシール性を十分確保することが可能になる。
【0047】
また、アッパーカップ10、およびロワーカップ20にそれぞれ嵌合部14d,20cを形成することにより、これら嵌合部14d,20cがラビリンスとして機能し、アッパーカップ10とロワーカップ20との間のシール性を高めることができる。
これに加え、ロワーカップ20の嵌合部20cのみに凹部29が形成されているので、この凹部29が外部に露出されない。このため、凹部29を介して内部に燃料が流れ込むことを抑制できる。
【0048】
さらに、アッパーカップ10の周壁14bの内面側に、リブ14cを形成し、このリブ14cを避けるようにロワーカップ20の周壁20aに凹部29を形成している。このため、アッパーカップ10の剛性を高めたり、アッパーカップ10に対する燃料ポンプ3の位置決めを容易にしたりしつつ、アッパーカップ10の周壁14bとロワーカップ20の周壁20aとの干渉を防止できる。この干渉を防止することで、アッパーカップ10とロワーカップ20とのスナップフィット固定を確実に維持することができる。
【0049】
また、本実施形態では、ロワーカップ20の軸方向の長さL2は、アッパーカップ10の軸方向の長さL3よりも長く設定され、燃料供給装置1の重心Jは、ロワーカップ20の下部に設定されるが、このような燃料供給装置1に、アッパーカップ10の嵌合部14dや、ロワーカップ20の嵌合部20c、および凹部29を好適に機能させることができる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ポンプ部Pには、例えば、インペラを有する非容積型の再生式ポンプが用いられている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ポンプ部Pとして、例えば、遠心ポンプ、渦巻きポンプなどの名称で知られる周知の種々のポンプ構造を採用することが可能である。
【0051】
また、上述の実施形態では、ロワーカップ20の嵌合部20cに、周壁20aの開口縁から軸方向に沿って切り欠くように凹部29を形成し、この凹部29を嵌合部20cの脆弱部30として機能させた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロワーカップ20の嵌合部20cの剛性を弱める脆弱部が形成されていればよい。
すなわち、例えば、嵌合部20cに肉厚を薄くした薄肉部を形成し、この薄肉部を凹部29に代わって脆弱部として構成してもよい。また、凹部29の形状も自由に設定することができ、仮に凹部を形成するにしても、開口縁から嵌合部20c以外の部分に至るまで凹部を形成してもよい。
【0052】
さらに、上述の実施形態では、ロワーカップ20の軸方向の長さL2は、アッパーカップ10の軸方向の長さL3よりも長く設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロワーカップ20の軸方向の長さL2は、燃料タンク2の大きさに応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料供給装置
2 燃料タンク
2a 上壁(壁面)
3 燃料ポンプ
4 ホルダ部
10 アッパーカップ
14 カップ本体
14a 開口部(開口縁)
14b 周壁
14c リブ
14d 嵌合部
17 係合片
20 ロワーカップ
20a 周壁
20b 底壁
20c 嵌合部
29 凹部
30 脆弱部
J 重心
K クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5