(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記表面処理する工程の後、さらに分散装置を使用して、100℃〜150℃にて、得られた分散物に対してせん断による分散処理をすることを特徴とする請求項1記載の油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法。
前記脂肪族アミン類が、炭素数が8〜20である一級アミン類から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3記載の油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷(新聞印刷も含む)等で利用される油性印刷用インキ組成物の多くはペースト状であり、その粘度や流動性を調整することを目的として体質顔料が加えられている(例えば、非特許文献1を参照。)。
体質顔料を油性印刷用インキ組成物に含有させる手段としては、パウダー状の体質顔料をロールミルなどで分散処理して体質顔料のベースインキを製造し、油性印刷用インキ組成物に加える方法等がある(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、パウダー状の体質顔料は強固な凝集体を形成しているため、上記の手段で微細粒子になるまで分散処理するには、大量のエネルギーと長い時間を必要とする。また、パウダー状の体質顔料が飛散して作業環境が悪化する等の問題を有している。また酸性やアルカリ性の湿し水を利用すると、カオリン顔料がインキ中から分離し、インキの性能が著しく損なわれ、印刷物の汚れにつながる問題がある。
【0003】
硫黄官能性シラン又はビニル官能性シランにより含水カオリンクレーを表面処理してなるシラン処理クレー製品であって、該シラン処理クレーは天然もしくは合成ゴム等に使用されるシラン処理クレー製品であることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
また、アルキル基等の炭化水素基を有するハロゲン化シランを水性媒体と混合し、これをカオリン等の無機酸化物のスラリーと混合することにより該無機酸化物上に疎水性被膜を形成することにより、該無機酸化物の分散性を向上させる方法は知られている(特許文献3)。
さらに、カオリンの粒径分布を調整することによって迅速分散性カオリンを得る方法が知られている(特許文献4)。
しかしながら、これらの処理されたカオリン等は、油性のインキの通常の製造工程におけるカオリンの分散性を向上させるものではないばかりか、天然もしくは合成ゴムに配合することや、油性インキにカオリンを分散させることに特有の分散性に関する問題を解決するものではないか、あるいは粒径分布のみで分散性を解決することを目的としており、その分散性の程度やインキとして使用した際の印刷性の向上効果は不十分であった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
まず、本発明で使用できるカオリン顔料としては、通常、精製方法によって湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリンと呼ばれるものがあるが、そのいずれも使用でき、これらのカオリンは本発明の方法にて使用される前に公知の表面処理がされていても良い。 但し、表面処理のなかでも、カオリン表面に皮膜を形成するような表面処理の場合には、その皮膜の存在によって本発明中の表面処理剤をカオリン表面に作用させても、該表面処理剤による皮膜の形成が不十分となり本発明の方法による効果を発揮させることがより困難になる可能性がある。
この点を考慮すると、表面処理により何らかの皮膜、たとえば他の化合物による表面皮膜が表面に形成されたカオリンよりも表面処理による被覆が形成されていないカオリンがより好ましい。但し、皮膜が形成されない表面処理、例えば洗浄、研磨等をされたものであれば、すでに表面処理されたカオリンであっても本発明におけるカオリン顔料して採用できる。
【0011】
次に、本発明においてカオリン顔料の表面を処理する表面処理剤としては、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、アミノ基を有するシランカップリング剤が利用できる。これらは、単独で使用することもでき、また2種以上を併用することもできる。
本発明で使用できる脂肪族アミンとしては、アミノ基を有する炭素水素鎖が直鎖状のもの、分枝を有するもの、二重結合を有するもの、脂肪環を有するものなど幅広いアミンを指す。このような脂肪族アミン類としては、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンのように炭素数が8以上のものが使用されるが、特に入手の面から炭素数が8〜20の一級のアミンが好ましく使用される。
次に、本発明で使用できる脂肪族アミン類の塩としては、これらの脂肪族アミンの塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩をはじめ、クエン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩等のカルボン酸塩など広く使用が可能であるが、入手の容易性等から、酢酸塩が好適に使用される。
次に、本発明で使用できるアミノ基を有するシランカップリング剤とは、アルコキシ基やハロゲン等の加水分解性の基が珪素原子に結合しており、さらに珪素原子には炭化水素基が結合すると共に、該炭素水素基が直鎖状のもの、分枝を有するもの、二重結合を有するもの、脂肪環を有するものなどであり、この炭化水素基がアミノ基を有する化合物である。このようなシランカップリング剤類としては、特に入手の容易性等から、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが使用される。
【0012】
上記表面処理剤の使用量は、通常、表面処理される前のカオリン100質量部に対して0.5〜10質量部、より好ましくは、1.0〜7.5質量部、更に好ましくは1.5〜4.0質量部である。上記表面処理剤の添加量が0.5質量部未満では、油性印刷用カオリン分散物としたときに、良好なカオリンの分散物が得られない可能性が高く、一方10質量部よりも多い場合は、最終的なオフセット印刷用インキ組成物としたときに、インキが印刷機のロールに過剰に付着して、印刷中の汚れにつながるおそれがある。
【0013】
次に、水性媒体としては、通常水が使用される。使用する水としては、特に限定されず、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。なお、本発明の効果を阻害させない範囲内で、水に水混和性溶剤や水溶性添加剤等を加えてもよい。
【0014】
次に、本発明で使用できる油性印刷用ワニスとしては、バインダー樹脂と油状液体を含有するものを使用する。
上記バインダー樹脂としては、オフセット印刷用インキ組成物に使用されているロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、フェノールを含有しないポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂等を使用することが出来る。
油性印刷用ワニス中の上記バインダー樹脂の使用量は、通常20〜60質量%の範囲が適当である。
【0015】
上記油状液体成分としては、植物油成分、鉱物油成分等が使用できる。
鉱物油性分としては、水と相溶しない、沸点180℃以上、好ましくは200℃以上のものを挙げることができる。具体的には、従来からオフセット印刷用インキ溶剤として使用されている、n−パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤、α−オレフィン系溶剤等の石油系溶剤、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリット等が例示できる。
植物油成分としては、植物油及び植物油由来の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。前記植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等のオフセット印刷に適した乾性油又は半乾性油が例示できる。
前記植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記の乾性油又は半乾性油由来の脂肪酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。かかる脂肪酸モノアルキルエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノアルキルエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数が1〜10のものが好ましく、そのようなアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル基等のアルキル基が例示できる。
これらの油状液体成分は、単独で使用してもよく、また植物油及び植物油由来の脂肪酸エステル化合物、鉱物油成分なら2種以上を併用することもでき、上記油性印刷用ワニスにおいて、植物油成分と鉱物油成分は、植物油成分を単独で用いてもよく、鉱物油成分を単独で用いてもよく、植物油成分と鉱物油性分とを併用してもよい。
さらに必要に応じて、油性印刷用ワニスには、ゲル化剤、ドライヤー(乾燥剤)、乾燥遅延剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0016】
<油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法>
次に、本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法について説明する。
本発明は、カオリン100質量部に対して、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、およびアミノ基を有するシランカップリング剤の群から選択される少なくとも1種の表面処理剤0.5〜10.0質量部の割合で表面処理して得られる処理カオリンと、水性媒体とを混合してなるカオリン−水性媒体混合物に、さらに油性印刷用ワニスを加えてフラッシングし、次いで排出した水を除去することを特徴とする油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法である。
本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法において、「フラッシング」とは、カオリン顔料と油性印刷用ワニスを混合、撹拌して、カオリン顔料を水相から油性相に転相させる工程をいう。
カオリン顔料を表面改質剤で表面処理するために使用する装置は、混合、攪拌等に使用される装置をはじめとして特に限定されないが、ディスパー又はフラッシャー(ニーダー)のいずれかを用いるのが好ましい。
また、フラッシングに使用する装置も特に限定されないが、例えばフラッシャー(ニーダー)又は脱水する機構を有する撹拌装置等が利用できる。
【0017】
本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物の製造方法において、フラッシングに次いで、組成物中の水の含有量が、好ましくは2質量%以下となるまで水の除去を行った後、さらに必要に応じて練肉する工程を経る。
「必要に応じて」とは、当該分散物を印刷用インキ組成物に使用するためには、分散しているカオリン顔料の粒子径が10μm以下であることが必要なので、粒子径が10μmよりも大きい場合に上記練肉工程が必要になるという意味である。練肉するための装置としては、特に限定されないが、例えば三本ロールミル又はビーズミル等が利用できる。この工程において、カオリン顔料の粒子径が10μm以下となるまで練肉する。なお、粒子径は、例えばグラインドゲージ等によって測定することができる。
【0018】
より具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば以下のような2ないし3段階の工程による製造方法を挙げることができる。
まず、カオリンを上記表面処理剤で処理する方法としては、水性媒体の存在下で行うことが好ましい。例えば、前記カオリン100質量部、水性媒体25〜400質量部、油性印刷用カオリン分散物の製造効率等の面から考えると25〜150質量部、および、表面処理剤0.5〜10質量部を混合した状態で、ディスパー又はフラッシャー(ニーダー)により20〜100℃の温度で約5〜120分間撹拌する方法などが利用できる。この方法により、表面処理剤がカオリン、表面に反応や吸着などの作用をしてカオリンの表面処理が行われると共に、カオリン−水性媒体混合物を得ることができる。
なお、上記の材料を混合する順序として、カオリンが湿式カオリンで十分に湿潤している状態の場合は、撹拌槽内にそれぞれの材料を任意の順序で加えても良いが、カオリンが焼成カオリンや乾式カオリンの場合は、まず、撹拌槽内に水性媒体を仕込み、その後、カオリンと表面処理剤については任意の順序で加える方法が好ましい。
【0019】
次に、得られたカオリン−水性媒体混合物に上記油性印刷用ワニス(上記バインダー樹脂を植物油成分及び/又は鉱物油成分に溶解させたもの)を加え、フラッシャー(ニーダー)又は脱水する機構を有する撹拌装置でフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が2質量%以下になるまで水の除去を行う。この段階でカオリンの粒子径が10μmを超えている場合は、さらに油性印刷用ワニスや油状液体を加え、ビーズミルや三本ロールミルでカオリン顔料の粒子径が10μm以下になるまで練肉する。なお、上記の通り、練肉工程はカオリン顔料の粒子径を印刷用インキ組成物に使用可能な10μm以下にすることが目的であるので、フラッシング工程を経た段階でカオリン顔料の粒子径が10μm以下であれば、この練肉工程は必ずしも必要でない。また、上記水の含有量は、カールフィッシャー水分計等によって測定することができる。
【0020】
上記方法によって得られた油性印刷用カオリン顔料分散物は、さらにその後、分散装置を使用した分散処理を施しても良い。このような処理を施すことによって、当該カオリン顔料分散物を使用した印刷用インキ組成物の汚れ適性を向上することが出来る。詳細な理由は明らかではないが、分散処理を施すことによって、カオリン顔料表面への樹脂成分の吸着が促進され、乳化適性に悪影響を及ぼすカオリン顔料表面の未コーティング部分の面積が減少するためと考えられる。このような処理は、特に上記練肉工程を経ていない場合に有効である。
このように、カオリン顔料表面への樹脂成分の吸着が促進される理由は、未処理のカオリンに対する樹脂成分の親和性よりも、本発明の方法により処理されたカオリンの表面は表面処理剤に由来するアルキル基等が結合することにより、その後の樹脂に対する親和性が高くなることが挙げられる。
その結果印刷インキを使用する際において、カオリン顔料が印刷インキから分離されることがないために、耐水性や印刷適性が向上する。
この分散処理工程で使用する分散装置は、得られた油性印刷用カオリン顔料分散物に対して、せん断力を与えることのできる装置であれば何でも良く、例えば、ビーズミル、三本ロールミル、ハイシェアミキサーのような一般的な分散装置の他、ディスパー等のような撹拌装置を使用することもできる。
分散処理工程においては、100〜150℃、好ましくは110〜140℃の温度において、20分〜2時間、好ましくは40分〜1時間30分の間攪拌混合を行う。
【0021】
なお、油性印刷用ワニスには、必要に応じて、適量のゲル化剤(バインダー樹脂に対して15質量%以下程度)を使用し、バインダー樹脂を架橋させることができる。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が例示できる。
【0022】
<油性印刷用カオリン顔料分散物>
上記の製造法によって、本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物を得ることができる。本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物は、カオリン顔料が油性印刷用ワニス中に十分に分散されており、後述するオフセット印刷用インキ組成物に添加することにより、印刷汚れがなく、網点のシャープな印刷物を得ることができる点で有利なものである。
【0023】
<オフセット印刷用インキ組成物>
本発明の油性印刷用カオリン顔料分散物は、オフセット印刷用インキ組成物の流動性や水幅調整のために、オフセット印刷用インキ組成物中にカオリン顔料の量が30質量%以下となるように添加される。特に限定されないが、オフセット印刷用インキ組成物は、オフセット印刷用インキベース、油状液体、及び、上記油性印刷用カオリン顔料分散体を混合することにより得ることができる。
このような、上記油性印刷用カオリン顔料分散物が添加されたオフセット印刷用インキ組成物も本発明に包含される。本発明のオフセット印刷インキ組成物は印刷適性に優れており、表面処理していないカオリン顔料を使用したオフセット印刷インキ組成物に対して、当該オフセット印刷インキ組成物は、強い酸性・アルカリ性湿し水存在下において長時間の耐水性を有するため、印刷中にカオリンがインキ中から流出することなく、印刷物の汚れを防止することができる点で有利である。
【0024】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0025】
<油性印刷用ワニス>
コンデンサー、温度計、及び撹拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー(株)製OR−357、分子量78,000、酸価15.0)41質量部、大豆油58質量部を仕込み、230℃に昇温した後、同温度で60分間撹拌して油性印刷用ワニスを得た。
【0026】
<オフセット印刷用インキベース>
油性印刷用ワニス52質量部に、アルキッド樹脂3質量部、紅顔料(ブリリアントカーミン6B)を25質量%含有するプレスケーキ(住化カラー(株)製)の108質量部、酸化防止剤2質量部及び大豆油16質量部を加え、フラッシャー(ニーダー)でフラッシングし、フラッシングして得られる組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで脱水し、オフセット印刷用インキベースを得た。
【0027】
<油性印刷用カオリン分散物、オフセット印刷用インキ組成物>
<実施例1>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、オレイルアミン2.0質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリンの表面処理を行った。次いで上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行い、油性印刷用カオリン顔料分散物1を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物1の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は1回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物1を得た。
【0028】
<実施例2>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、ラウリルアミン2.0質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行った。その後、ディスパーを使用して、得られた組成物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料分散物2を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物2の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は1回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物2を得た。
【0029】
<実施例3>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、ステアリルアミン酢酸塩2.0質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行った。その後、ディスパーを使用して、得られた組成物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料分散物3を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物3の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は1回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物3を得た。
【0030】
<実施例4>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、オレイルアミン3.5質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行った。その後、ディスパーを使用して、得られた組成物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料分散物4を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物4の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は1回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物4を得た。
【0031】
<実施例5>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、オレイルアミン0.25質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行った。その後、ディスパーを使用して、得られた組成物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料分散物5を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物5の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は2回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物5を得た。
【0032】
<実施例6>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602:信越化学工業社製)2.0質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行った。その後、ディスパーを使用して、得られた組成物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料分散物6を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物6の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は2回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物6を得た。
【0033】
<比較例1>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部に、上記油性印刷用ワニス100質量部を加え、次いで組成物中の水の含有量が2質量%以下になるまで水の除去を行い、油性印刷用カオリン顔料分散物7を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物7の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は30μmより大きかった。その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は3回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物7を得た。
【0034】
<比較例2>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、オレイルアミン0.1質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行い、油性印刷用カオリン顔料分散物8を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物8の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は30μmより大きかった。その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は3回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物8を得た。
【0035】
<比較例3>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、オレイルアミン12質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えてフラッシングし、次いで組成物中の水の含有量が、2質量%以下になるまで水の除去を行い、油性印刷用カオリン顔料分散物9を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物9の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は12.5μmより小さかった。その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は1回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物9を得た。
【0036】
<比較例4>
フラッシャー(ニーダー)に、表面処理されていないカオリン顔料を50質量%含有する水性スラリー100質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403:信越化学工業社製)2.0質量部を仕込み、70℃で約60分間撹拌した。次いで、上記油性印刷用ワニス100質量部を加えて、組成物中の水の含有量が2質量%以下になるまで水の除去を行い、油性印刷用カオリン顔料分散物10を製造した。得られた油性印刷用カオリン顔料分散物10の分散性をグラインドゲージにて測定したところ、カオリン顔料の粒子径は30μmより大きかった。その後、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメーターによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ったところ、通し回数は3回であった。これに、上記オフセット印刷用インキベース150質量部を加えて混合撹拌し、適量の大豆油を添加することにより粘度が7.5Pa・sになるように調整し、オフセット印刷用インキ組成物10を得た。
【0037】
[評価]
<油性印刷用カオリン顔料分散物の耐水性>
油性印刷用カオリン顔料分散物1〜10を、リソブレイクテスターを用いて評価した。リソブレイクテスターに5gのカオリン顔料分散物を均一になるように塗り、180rpmの下で30分間湿し水に浸した後、湿し水を蒸発させて残存させた顔料分の質量を測定した。
【0038】
[評価基準]
○:油性印刷用カオリン顔料分散物(カオリン顔料含有率50%)10gに対し、湿し 水150ml中に流出したカオリン顔料重量が0.1g以下のもの
×:油性印刷用カオリン顔料分散物(カオリン顔料含有率50%)10gに対し、湿し 水150ml中に流出したカオリン顔料重量が0.1g以上のもの
<オフセット印刷用インキ組成物の印刷適性>
オフセット印刷用インキ組成物1〜10を下記の条件で印刷し、得られた印刷物の非画線部の汚れ度を確認した。なお、印刷物の非画線部の汚れ度を湿し水の量を変化させて、印刷適性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<印刷条件>
<オフセット印刷用インキ組成物の印刷適性>
実施例1〜6、比較例1〜4のオフセット印刷用インキ組成物の印刷適性(耐汚れ性)は、三菱重工業(株)製、DAIYA 1E型印刷機で実際に印刷して調べた。印刷試験は、湿し水供給ダイヤルを一定にした状態で実施し、印刷紙面に汚れが生じるか否かによって判定した。試験の結果を表1に示す。なお、表中の印刷適性の評価基準については、非画線部全体に占める汚れの部分の面積が10%未満の場合は○、汚れの部分の面積が10%以上30%未満の場合は△、汚れの部分の面積が30%以上の場合は×とした。
印刷試験を実施した際の条件は以下の通りである。印刷機:三菱ダイヤ1−E(三菱重工業(株)製)
(印刷機は、湿し水供給量をダイヤルメモリ0から10でコントロール(ダイヤルメモリには単位がない)できるもので、ダイヤルメモリ0で湿し水がほとんど供給されない状態で、数字が増えるごとに湿し水供給量が増加するものである。)
印刷機: 三菱 DAIYA 1E 型印刷機(湿し水機構:連続給水方式)(三菱重工業(株) 製)
湿し水: サイファ TP-3 (湿し水中濃度 1%)(サカタインクス(株)製)
印刷速度: 4500枚/時
温度/湿度: 25℃/60%
印刷用紙: オーロラコート(日本製紙(株)製)
【0041】
表1によれば、本発明による処理を行った実施例1〜6による油性印刷用カオリン顔料分散物と、未処理のカオリン顔料を用いた比較例1、十分な量の表面処理剤を添加しなかった比較例2のそれぞれの油性印刷用カオリン顔料分散物7,8についてみると、油性印刷用カオリン顔料分散物7はグラインドゲージが30μmを超えかつパス回数が3回であり、油性印刷用カオリン顔料分散物8はパス回数が3回であり、本発明の範囲の量の表面処理剤でカオリン顔料を表面処理した実施例1〜6は、グラインドゲージが12.5未満で、かつパス回数が1又は2回であるから、油性印刷用カオリン顔料分散物7及び8と比較して体質顔料であるカオリン顔料の分散性に優れることがわかった。
【0042】
また、本発明の範囲を超える量の表面処理剤でカオリン顔料を表面処理した、比較例3のオフセット印刷用インキ組成物9を用いて印刷した場合においては、酸性及びアルカリ性湿し水汚れ面積が共に25%で評価は△と、非画線部に印刷汚れが顕著に観察されたのに対して、実施例1〜6のオフセット印刷用インキ組成物1〜6を用いた場合においては、酸性及びアルカリ性湿し水汚れ面積が共に5%で評価は○と、非画線部の印刷汚れ印刷適性に優れていた。このように、脂肪族アミン類、脂肪族アミン塩、又はアミノ基を有するシランカップリング剤からなる適切な量の表面処理剤によってカオリン顔料を表面処理することにより、カオリン顔料の分散性とオフセット印刷用インキ組成物の印刷適性を両立できることがわかった。
また、未処理のカオリン顔料を用いた比較例1、十分な量の表面処理剤を添加しなかった比較例2のそれぞれの油性印刷用カオリン顔料分散物7、8と比べて、本発明の範囲の量の表面処理剤でカオリン顔料を表面処理した実施例1〜6の油性印刷用カオリン顔料分散物は、いずれもリソブレイクテスターによる強酸性湿し水、強アルカリ湿し水に対する耐水性に優れる事が分かった。
【0043】
さらに、本発明による油性印刷用カオリン顔料分散物1〜6に対して、本発明における表面処理剤に代えて3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを採用してなる比較例4の油性印刷用カオリン顔料分散物10は、グラインドゲージ及びパス回数の点においては同程度ではあるが、本発明による油性印刷用カオリン顔料分散物1〜6を使用してなるオフセット印刷インキ用組成物は、比較例4のオフセット印刷インキ用組成物10による耐水性及び印刷適性と比較して明らかに優れている。この結果によれば、本発明においてカオリンの表面処理剤としては、単にカオリン表面を有機化合物にて被覆するのではなく、アミノ基を有する特定の化合物による表面処理による被膜を形成することによって、十分な効果を奏することがわかる。