(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745904
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】電気機械変換器のためのステータ集合体、電気機械変換器、及び風車
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20150618BHJP
F03D 9/00 20060101ALI20150618BHJP
H02K 5/167 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
H02K5/00 A
F03D9/00 B
H02K5/167 B
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-68547(P2011-68547)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2011-205888(P2011-205888A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年2月3日
(31)【優先権主張番号】10157744.3
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク スティースデール
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/117631(WO,A1)
【文献】
特開平04−075456(JP,A)
【文献】
特開2004−080958(JP,A)
【文献】
特開2008−043055(JP,A)
【文献】
特開平02−155452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
F03D 9/00
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車のための発電機を含む電気機械変換器のためのステータ集合体において、
ベース構造体(111)と、
コイルホルダ(109)と、
コイルホルダに取り付けられたコイル(115)と、
ベース構造体をコイルホルダに互いに対して柔軟に結合する柔軟部材(113)と、
前記コイルホルダ(109)に取り付けられた別のコイル(117)と、
付加的なコイル(131)と、別の付加的なコイル(131)とが取り付けられている付加的なコイルホルダ(107)と、
コイルホルダ(109)と付加的なコイルホルダ(107)とを互いに対して柔軟に結合するコイルホルダ結合柔軟部材(137)とが設けられていることを特徴とする、電気機械変換器のためのステータ集合体。
【請求項2】
前記柔軟部材が、第1の方向(101)でのベース構造体に対するコイルホルダの移動を許容するように構成されている、請求項1記載のステータ集合体。
【請求項3】
前記柔軟部材が、第1の方向と異なる第2の方向(114)でのベース構造体に対するコイルホルダの移動を許容するように構成されている、請求項1又は2記載のステータ集合体。
【請求項4】
前記柔軟部材が、ばねを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のステータ集合体。
【請求項5】
風車のための発電機を含む電気機械変換器において、
請求項1から4までのいずれか1項記載のステータ集合体(103)と、
軸線方向(101)を中心にしてベース構造体に対して回転可能なロータ集合体(105)とが設けられていることを特徴とする、電気機械変換器。
【請求項6】
前記ロータ集合体が、磁石として働く磁石エレメント(123)を有しており、該磁石エレメントが、コイル(115)と向き合ってロータ集合体に取り付けられている、請求項5記載の電気機械変換器。
【請求項7】
前記コイルが、軸線方向でみて磁石エレメントから離間させられている、請求項5又は6記載の電気機械変換器。
【請求項8】
ロータ集合体(405)に配置されたロータ摺動面(441,446)と、
コイルホルダ(409)に配置されたコイルホルダ摺動面(443,447)とが設けられており、
ロータ摺動面とコイルホルダ摺動面とが、ロータ集合体が回転する際に、コイルと磁石エレメントとの間の間隙(427)の寸法(d)が維持されるように、互いに対して摺動するようになっている、請求項5から7までのいずれか1項記載の電気機械変換器。
【請求項9】
ロータ集合体が、軸線方向に延びた突出部(440,445)を有しており、ロータ摺動面が、前記突出部の端部に配置されている、請求項5から8までのいずれか1項記載の電気機械変換器。
【請求項10】
前記ロータ摺動面が、軸線方向に対して垂直な半径方向(414)でみて磁石エレメントから離間させられている、請求項8又は9記載の電気機械変換器。
【請求項11】
コイルホルダ摺動面が、半径方向(414)でみてコイルから離間させられている、請求項8から10までのいずれか1項記載の電気機械変換器。
【請求項12】
前記ロータ摺動面及びコイルホルダ摺動面の少なくともいずれかが、柔軟な材料(448)を含んでいる、請求項8から11までのいずれか1項記載の電気機械変換器。
【請求項13】
発電機としての請求項5から12までのいずれか1項記載の電気機械変換器を含む風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換器のためのステータ集合体、ステータを利用する電気機械変換器、及び発電機としての電気機械変換器を利用する風車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械変換器は、電気エネルギを機械エネルギに又は機械エネルギを電気エネルギに変換する機械、例えば電気モータ又は発電機である。例えば、電気モータは電気エネルギを機械エネルギに変換するが、発電機は機械エネルギを電気エネルギに変換する。しかしながら、両形式の電気機械変換器は、エネルギ変換を行うために、導体に関連して磁界を使用する。特に、磁界によって発生された変化する磁束は、導体の複数の箇所の間に電圧を誘発してよく、電気エネルギに相当する電流を生ぜしめる。
【0003】
電気機械変換器は、ステータ集合体と、ロータ集合体とを有していてよい。ステータ集合体は、電気機械変換器の定置部分であるのに対し、ロータ集合体は、ステータ集合体に対して移動する、特にステータ集合体に対して回転する、電気機械変換器の1つ又は複数の部分に相当してよい。従って、ロータ集合体は、ステータ集合体に含まれた1つ又は2つ以上のコイルに対して回転する、永久磁石等の磁石を含んでいてよい。
【0004】
ロータ集合体の回転軸線に対する磁界の主要部分の方向が異なる、多数の異なる形式の発電機が存在する。いわゆる半径方向磁束発電機において、磁界の主要部分の磁界線は、ロータ集合体に回転軸線の方向に相当する軸線方向に対して垂直な半径方向に向けられている。これに対して、いわゆる軸方向磁束発電機においては、磁界の主要部分の磁界線は、軸方向に対して少なくともほぼ平行になっている。磁界線のこの方向を得るために、ロータ集合体に含まれた磁石は適切に配置されなければならない。特に、2つの磁極を接続する接続線は、少なくともほぼ軸方向に対して平行に向けられていてよい。
【0005】
磁石の向きに応じて、ステータ集合体に含まれたコイルも、コイルを通過する磁束が最大化されるように適切に配置されなければならない。特に、ロータ集合体の磁石とステータ集合体のコイルとの間には、小さな間隙が形成されていてよい。
【0006】
軸方向磁束発電機の利点は、磁束がロータ集合体の軸方向に沿って向けられているということである。このことは、従来のコギングの問題を実質的に排除又は低減することになる。
【0007】
ステータ集合体のコイルを通過するそれぞれの磁石のために軸方向磁束が均一であるであるように、ロータ集合体の磁石とステータ集合体のコイルとの間の間隙を一定に保つことが重要である。発電機の効率を最大化するために、空隙の寸法は、数ミリメートルのように極めて小さくてよい。しかしながら、ステータ集合体に対するロータ集合体の位置ずれ及び/又は移動又は偏りが、交替する軸方向磁束を生じ、発電機の構成部材の損傷を生じる恐れさえある。大きな直径を有する発電機の場合、この問題はより一層深刻になる恐れがある。というのは、ロータ集合体の回転軸線の僅かなずれが、直径と同じ大きさの半径方向外側部分の移動又は偏りを生じ、これにより、これらの移動又は偏りの大きさが許容できなくなるか、又はステータ集合体の構成部材とともにロータ集合体の構成部材が振動することにつながる場合がある。
【0008】
国際公開第2009/071843号は、回転する磁石と定置のコイルとの間の間隙に充填材料が加えられた、軸流電気回転機械を開示している。
【0009】
しかしながら、従来の発電機は、依然として、効率及び耐久性の観点から不都合があることが分かった。電気機械変換器において使用された場合に、特に効率及び耐久性の観点から変換器の作動を改良する、電気機械変換器のためのステータ集合体が必要とされている。さらに、ステータ集合体に対するロータ集合体の位置ずれ及び/又は偏りから生じる、従来技術に見られる問題を少なくとも部分的に排除する、電気機械変換器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/071843号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ステータ集合体に対するロータ集合体の位置ずれ及び/又は偏りから生じる問題を排除することによって、電気機械変換器の効率及び耐久性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によれば、電気機械変換器、特に風車のための発電機のためのステータ集合体が提供され、ステータ集合体は、ベース構造体と、コイルホルダと、コイルホルダに取り付けられたコイルと、ベース構造体をコイルホルダに互いに対して柔軟に結合する柔軟部材とを有している。ステータ集合体は、軸方向磁束電気機械変換器又は半径方向磁束電気機械変換器のために使用されるように適応されていてよい。ベース構造体は、フレーム又はケーシングを含んでよく、ステータ集合体全体のための支持構造体又はホルダとして機能してよい。コイルホルダは、コイルが載置及び/又は支持されるような形状を有するコイル支持構造体を含んでよい。特に、コイル支持構造体は、シリンダ形状等の軸状の形状、又は立方体形状等を成していてよく、その上にコイルが取り付けられてよい。
【0013】
コイルはワイヤから形成されていてよく、このワイヤは、コアとしての、銅等の導電性材料を含み、さらに導電性材料の上に被覆された絶縁層を含む。コイルは、ワイヤの1回又は2回以上の巻回によって形成されていてよく、コイルを形成する巻回されたワイヤは、リング状若しくは環状であってよく、リング状のコイルの内面は、コイル支持構造体の外面に滑らかに嵌り合っている。コイルは、例えば接着剤又はその他の固定手段を用いることによってコイルホルダに固定されていてよい。
【0014】
柔軟部材は、この柔軟部材の第1の領域においてベース構造体に固定されていてよく、第1の領域から離間していてよい柔軟部材の第2の領域においてコイルホルダに固定されていてよい。コイルホルダは、柔軟部材を用いたベース構造体への柔軟な結合により、ベース構造体に対して移動することができてよい。ベース構造体に対するコイルホルダの可能な移動若しくは変位の大きさは、柔軟部材の第1の領域と柔軟部材の第2の領域との間の距離に依存してよい。柔軟部材は、変形可能であってよい柔軟な材料を含んでよい。特に、柔軟部材は、一方向での範囲若しくは寸法が100%、70%、50%、10%だけ変化させられるような程度に変形可能であってよい。特に、柔軟性の程度は、特定の望まれる用途に応じて異なってよい。
【0015】
実施形態によれば、柔軟部材は、さらに、弾性材料を含んでよいか、又はある程度の弾性を有するように成形されていてよい。この実施形態において、ベース構造体に対するコイルホルダの偏りは復元力を生じてよく、この復元力は、柔軟部材によって発生され、偏りが生じる前の元の位置へ位置を回復させるようにコイルホルダに加わる。さらに、実施形態によれば、柔軟部材は、減衰特性を有してよいか、又は振動を減衰するための減衰材料を含んでいてよい。別の実施形態では、柔軟部材は、弾性材料を含んでいなくてもよいし、弾性を有さなくてもよい。
【0016】
ステータ集合体は、実施形態によれば、電気機械変換器において使用されてよく、この電気機械変換器においては、電気機械変換器のロータ集合体の偏りから生ずる問題は、ロータ集合体、特にロータ集合体に含まれた磁石の偏りに応答して、コイルホルダ、ひいてはコイルが偏りを受けることができることにより、低減されてよい。
【0017】
実施形態によれば、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して第1の方向に移動できるように構成されている。特に、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して第1の方向でのみ移動できるように構成されていてよい。例えば、軸方向磁束発電機において使用される場合、コイルホルダがベース構造体に対して軸方向に、特に軸方向でのみ移動できるように構成された柔軟部材を提供することが有利である。軸方向磁束発電機において、特にロータ集合体の偏りは、主に軸方向で生じることがあり、この偏りは、有利には、ロータ集合体の軸方向偏りに応答した、コイルホルダ、ひいてはコイルの対応する偏りによって相殺されることになる。これにより、ステータ集合体のコイルとロータ集合体の磁石との間の間隙は、作動中、少なくともほぼ一定に保たれることになり、これにより、発電機の性能及び効率を高める。
【0018】
実施形態によれば、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して第1の方向とは異なる第2の方向に移動できるように構成されている。特に、第2の方向は第1の方向に対して垂直であってよい。実施形態によれば、ステータ集合体は半径方向磁束発電機において使用されてよく、この場合、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して、発電機のロータ集合体の軸方向に対して垂直な半径方向に移動できるように構成されていてよい。別の実施形態によれば、ステータ集合体は、軸方向磁束発電機において使用されてよく、この場合、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して、発電機のロータ集合体の軸方向に対して垂直な半径方向で移動できるように構成されていてよく、これにより、ステータが半径方向でのロータ集合体の偏りに応答する機会を提供する。
【0019】
実施形態によれば、柔軟部材は、コイルホルダがベース構造体に対して第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向、特に第1の方向に対して垂直に移動できるように構成されていてよい。これにより、異なる方向でのロータ集合体又はロータ集合体の部分の可能な偏りは、コイルホルダ、ひいては1つ又は複数のコイルの対応する偏りによって相殺されることになり、特に作動中にコイルと磁石との間の間隙の寸法を維持する。
【0020】
実施形態によれば、柔軟部材は、ばねを含む。特に、ばねは、柔軟部材にフレキシビリティを提供するらせん状に巻成された金属から形成されていてよい。別の実施形態によれば、柔軟部材は、フレキシビリティ、すなわち変形の可能性を有し、かつ他方ではある程度の弾性を有する、すなわち初期形状からの変形の際に復元力を生ぜしめる、ゴム等を含んでいてよい。
【0021】
実施形態によれば、ステータ集合体は、さらに、コイルホルダに取り付けられた別のコイルを含む。特に、別のコイルはコイルから離間させられていてよい。コイルと別のコイルとの間の距離は、これらの間に、発電機のローラ集合体に含まれた1つ又は2つ以上の磁石を配置することを許容してよい。従って、磁石は、コイル及び別のコイルと向き合っていてよい。別の実施形態によれば、ロータ集合体の磁石は、コイルホルダの両側に配置されていてよく、これにより、コイル及び別のコイルは、ロータ集合体の2つの磁石の間に配置されている。ステータ集合体が軸方向磁束発電機において使用される場合、別のコイルは、コイルから、ロータ集合体の軸方向でみて離間させられていてよい。コイルホルダに取り付けられた別のコイルを提供することは、ステータ集合体の構成を単純化し、コストをも低減することになる。さらに、ステータ集合体を使用する電気機械変換器の効率が高められることになる。
【0022】
実施形態によれば、ステータ集合体は、さらに、付加的なコイル及び別の付加的なコイルが取り付けられた付加的なコイルホルダと、コイルホルダと付加的なコイルホルダとを互いに対して柔軟に結合するコイルホルダ結合柔軟部材とを有している。これにより、コイル及び別のコイルが取り付けられたコイルホルダと、付加的なコイル及び別の付加的なコイルが取り付けられた付加的なコイルホルダとの積層された配列が提供されることになり、この配列は、有利には、変換器において使用され、変換器の能力を高めることになる。特に、このような変換器、特に軸方向磁束発電機は、ステータ集合体に対して1つの回転軸線を中心にして回転する1つのロータ集合体を有していてよい。従って、電気機械変換器の構成が単純化されることになる。
【0023】
本発明の上記実施形態はステータ集合体に関連して説明された。しかしながら、ステータ集合体の特徴は、実施形態に従って以下で説明される変換器、特に発電機に適用されてもよい。
【0024】
実施形態によれば、電気機械変換器、特に風車のための発電機が提供され、電気機械変換器は、上記実施形態によるステータ集合体と、軸線方向を中心にしてベース構造体に対して回転可能なロータ集合体とを有している。この構成の利点は、ステータ集合体の上記実施形態の説明の文脈に示されている。
【0025】
実施形態によれば、ロータ集合体は、磁石として機能する磁石エレメントを有しており、磁石エレメントはコイルと向き合ってロータに取り付けられている。磁石エレメントは、電磁石及び/又は永久磁石を含むか、又は電磁石と永久磁石との組合せであってよい。特に、軸線方向に対して少なくともほぼ平行に向けられた磁極を通って延びる磁力線を有する1つ又は2つ以上の永久磁石は、軸方向磁束発電機において使用されてよい。これにより、特に、磁石エレメントの複数の対は、共通の支持構造体に取り付けられていてよく、磁石の対は、ステータ集合体のコイルの対の間に配置されているか、又はステータ集合体の2つのコイルの2つの反対側に位置した外側に配置されていてよい。
【0026】
実施形態によれば、コイルは、磁石エレメントから軸線方向に離間させられている。これにより、半径方向磁束発電機においてみられる従来のコギングの問題を実質的に排除又は少なくとも低減する軸方向磁束発電機が提供されることになる。特に、ステータ集合体は、軸線方向でのロータ集合体のあらゆる偏りに追従し、これにより、磁石エレメントと対応するコイルとの間の一定の間隙寸法を維持する。ステータ集合体、ひいてはコイルがロータ集合体のあらゆる偏りに追従することは、ベース構造体をコイルホルダに互いに対して柔軟に結合する柔軟部材によるものであってよい。特に、柔軟部材は、主に軸線方向でのステータ集合体のための移動又は変位の十分な自由度を許容することになる。別の実施形態では、柔軟部材は、別の方向又は複数の他の方向、例えば半径方向への、コイルホルダ、ひいてはコイルの移動を許容してよい。
【0027】
実施形態によれば、電気機械変換器はさらに、ロータ集合体に配置されたロータ摺動面と、コイルホルダに配置されたコイルホルダ摺動面とを有しており、ロータ摺動面とコイルホルダ摺動面とは、ロータが回転する際に、コイルと磁石エレメントとの間の間隙の寸法が維持されるように互いに対して摺動する。特に、間隙の寸法は、電気機械変換器の作動中、すなわちベースに対してロータ集合体が回転する際に維持されることになる。特に、ロータ摺動面とコイルホルダ摺動面とは、少なくとも時々互いに接触してよい案内面に相当し、ロータ集合体の偏りが、ロータ摺動面を介してコイルホルダ摺動面に力を加え、これにより、コイルホルダはロータ集合体の偏りに応答して偏らされることになる。特に、ロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面は、互いに対して滑りやすくする皮膜を有していてよく、かつ/又はロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面に提供された潤滑材を有していてよい。さらに、ロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面は、柔軟な材料及び/又は弾性材料を含んでよい。特に、向き合った磁石及びコイルのそれぞれの対に対して、1つ又は2つ以上のロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面が設けられていてよい。特に、ロータ摺動面はコイルホルダ摺動面と向き合って配置されていてよい。この構成により、コイルと磁石エレメントとの間の間隙の寸法は、有利には、作動中、一定に保たれることになり、これにより、電気機械変換器の効率を高める。
【0028】
実施形態によれば、電気機械変換器のロータ集合体は、軸方向に延びた突出部を有しており、ロータ摺動面は突出部の端部に配置されている。特に、コイルホルダと付加的なコイルホルダとは相俟ってU字形のヨークを形成していてよく、このヨークは、U字形構造の内面に取り付けられたコイル及び別のコイルを有しており、コイルと別のコイルとは互いに向き合って配置されるようになっている。さらに、実施形態によれば、突出部の端部におけるローラ摺動面は、U字形構造の内面の一方と向き合っていてよく、軸方向に延びた別の突出部の端部に配置された別のロータ摺動面は、ステータ集合体のU字形構造の別の内面に向き合っていてよい。別の実施形態では、突出部の端部に配置されたロータ摺動面は、外側に面した1つ又は2つ以上のコイルを収容していてよいステータ集合体の外面と向き合っていてよい。
【0029】
実施形態によれば、ロータ摺動面は、軸方向に対して垂直な半径方向でみて磁石エレメントから離間させられている。これにより、ロータ摺動面は、磁石エレメントと向き合っているコイルとは接触しないが、コイルから離間させられたステータ集合体の表面と時々接触することになる。これにより、ロータ集合体の偏りに応答して磁石エレメントはステータ集合体を案内することに寄与しないので、作動中に磁石エレメントが損傷されないことが保証されることになる。
【0030】
実施形態によれば、コイルホルダ摺動面は、半径方向でみてコイルから離間させられている。これにより、ロータ集合体の偏りに応答してコイルがステータ集合体を案内することに寄与しないので、作動中にコイルが損傷されることが回避されることになる。これにより、電気機械変換器の耐久性が高められることになる。
【0031】
実施形態によれば、電気機械変換器のロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面は、柔軟な材料を含む。柔軟な材料は、ゴム、又は発泡プラスチック又は注型可能なプラスチック等の充填材料を含んでよい。これにより、摺動及び案内特性は所望のように適応させられてよい。さらに、ロータ摺動面及び/又はコイルホルダ摺動面に潤滑材が提供されてよい。
【0032】
実施形態によれば、上記実施形態のうちの1つによる電気機械変換器を有する風車が提供される。これにより、電気機械変換器は発電機として使用されてよく、ロータ集合体は、1つ又は2つ以上の風車翼を有していてよい風車のプロペラに機械的に結合されている。
【0033】
発明の実施形態は、様々な異なる主体に関連して説明されていることに注意すべきである。特に、幾つかの実施形態は方法形式の請求項に関連して説明されているのに対して、他の実施形態は装置形式の請求項に関連して説明されている。しかしながら、当業者は、上記及び下記の説明から、そうでないことが断られない限り、一方の形式の主体に属する特徴のあらゆる組合せに加え、異なる主体に関係する特徴のあらゆる組合せ、特に、方法形式の請求項の特徴と装置形式の請求項の特徴とのあらゆる組合せがこの文書によって開示されていると考えられることを推測するであろう。
【0034】
本発明の上記に定義された態様及びその他の態様は、以下に説明される実施形態の例から明らかであり、実施形態の例に関連して説明される。発明は以下に実施形態の例に関連してより詳細に説明されるが、これらの実施形態の例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態による電気機械変換器の部分を概略的に示す断面図である。
【
図2】別の実施形態による電気機械変換器の部分を概略的に示す断面図である。
【
図3】さらに別の実施形態による電気機械変換器の部分を概略的に示す断面図である。
【
図4】さらに別の実施形態による電気機械変換器の部分を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明する。図面では、構造及び/又は機能において同じである構成部材若しくは構成要素は同じ参照符号によって示されている。
【0037】
図面における表示は概略的である。複数の異なる図面において、同じ若しくは同一の構成要素は、同一の参照符号で示されているか、又はこれに相当する参照符号であって最初の数字だけが異なるものによって示されている。
【0038】
図1は、回転軸線101を含む平面における断面を表した断面図において発電機100の部分を概略的に示している。発電機100は、ステータ集合体103とロータ集合体105とを有している。
【0039】
ステータ集合体103は、U字形の横断面を有するコイルホルダ107と、同じくU字形の横断面を有するコイルホルダ109とを有している。言い換えれば、コイルホルダ107及び109は2つのヨークに相当していてよい。
【0040】
ステータ集合体はさらに、ベース構造体111を有している。コイルホルダ109は、ベース構造体をコイルホルダに互いに対して柔軟に結合する柔軟な部材若しくは柔軟部材113によってベース構造体111に結合されている。例示した実施形態では、柔軟部材は、柔軟性及び弾性を提供するばね113として実施されている。従って、コイルホルダ109は、少なくとも回転軸線101に対して平行な方向にベース構造体111に対して移動してよいが、回転軸線101の方向に対して垂直な方向、又は回転軸線101の方向に対して少なくとも横方向にも移動してよい。
【0041】
コイルホルダ109には、コイル115が、U字形のコイルホルダの第1の内面に取り付けられており、別のコイル117が、U字形のコイルホルダの別の内面に取り付けられている。これにより、2つのコイル115及び117は互いに向き合って配置されている。コイル115及び117は、それぞれ巻成されたワイヤを含んでよい。
【0042】
ベース構造体111に対して回転軸線101を中心にして回転可能な回転軸119は、磁石支持構造体121を有しており、この磁石支持構造体121には第1の磁石123と第2の磁石125とが取り付けられている。これにより、磁石123はコイル115と向き合って配置されており、間隙寸法dを有する間隙127が形成されている。同様に、磁石125と、向き合ったコイル117との間には、間隙129が形成されている。
【0043】
コイルホルダ107は、コイルホルダ109と同様に構成されており、U字形のコイルホルダ107の内面に取り付けられた2つのコイル131を有している。別の磁石支持構造体133は、回転軸119に取り付けられており、半径方向外方へ突出している。磁石支持構造体133の半径方向外側部分において、磁石支持構造体133の互いに反対側の面に2つの磁石135が取り付けられている。これにより、コイル131は磁石135に向き合って配置されている。
【0044】
回転軸線101を中心にして回転軸119が回転する際、磁石123は、半径方向(
図1に鉛直方向に向けられている)と軸方向(
図2に水平方向に向けられている)とに対して垂直な、周方向に移動する。これにより、コイル115を通る磁束が変化することにより、コイル115を形成するワイヤ内の様々な箇所に電圧が誘発される。これにより、回転軸119の回転に関連した機械エネルギは電気エネルギに変換される。
【0045】
ベース構造体111と、コイルホルダ109及びコイルホルダ107とに対する回転軸101の位置ずれにより、ロータ集合体105が回転する際に、コイル115と磁石123との間の間隙の寸法dが変化することがある。これにより、発電機100の効率が低下することになる。
【0046】
従って、実施形態によれば、コイルホルダ109及び107に対するロータ集合体105の偏りに応答して、コイルホルダ109は、柔軟部材113を介したベース構造体111への柔軟な結合により、対応して移動することになる。これにより、間隙の寸法dは一定に保たれることになる。
【0047】
コイルホルダ107は柔軟部材137を介してコイルホルダ109に結合されており、これにより、コイルホルダ107も、ロータ集合体105、特にロータ集合体105に設けられた磁石135の偏りに応答して、特に軸線方向101で、コイルホルダ109及びベース構造体111に対して移動させられる。
【0048】
図2は、実施形態による発電機200の部分を断面図で概略的に示している。発電機200は、
図1に示された発電機100と同じ多くの構成部材を有するので、対応するエレメントは詳細に説明しない。なぜならば、これらの対応する特徴及びエレメントの説明は、
図1を参照した説明から援用されてよいからである。
図2に示された発電機200と
図1に示された発電機100との相違点は、コイルホルダ209と207とがそれぞれ柔軟部材213によってベース構造体211に結合されていることである。特に、柔軟部材213は、回転軸219の回転軸線201に対して垂直な半径方向214に延びている。これにより、柔軟部材213は、少なくとも半径方向214でベース構造体211に対するコイルホルダ209及び207の移動を許容することになり、この方向での弾性をも提供することになる。
図2に示された実施形態において、柔軟部材213はばねとして実施されているが、ゴム及び/又は発泡材を含む減衰器等の、その他の構成部材によって実施されてもよい。
【0049】
図1に示された発電機100と異なり、
図2に示された発電機200は、隣接するコイルホルダ209及び207を結合する柔軟部材を有していない。これにより、コイルホルダは、互いに独立してベース211に対して偏る又は移動することになる。これは、特に、磁石支持エレメント221及び233が異なる程度の位置ずれを有し、従って、発電機200の作動中に同じ形式で又は同じ大きさに偏らない場合に有利である。特に、ロータ集合体205が回転する際に、磁石支持エレメント221(又は磁石支持エレメント221と同じ軸方向位置に配置された、磁石支持エレメント221から周方向に離間させられた隣接する磁石支持エレメント)は、磁石支持エレメント233(又は磁石支持エレメント223と同じ軸方向位置に配置された、支持エレメント223から周方向に離間させられた隣接する磁石支持エレメント)と異なる大きさだけ偏り、間隙227又は228の寸法をそれぞれ維持するためにコイルホルダ209とコイルホルダ207との異なる対応する偏り又は移動を要求する。
【0050】
別の実施形態において、コイルホルダ209及び207をベース211に結合する柔軟部材213に加えて、コイルホルダ209をコイルホルダ207に互いに対して柔軟に結合する別の柔軟部材が設けられる。これにより、一方のコイルホルダ209又は207の偏り又は移動は、少なくとも部分的に連結された形式で、それぞれの他方のコイルホルダ207又は209の移動を生じることになる。
【0051】
図3は、実施形態による発電機300の部分を断面図で概略的に示している。
図1及び
図2に示された実施形態とは対照的に、発電機300は、
図1に示された実施形態のように2つの磁石123及び125を支持する1つの磁石支持エレメント121のみを有する代わりに、それぞれ1つの磁石323,325を支持する磁石支持エレメント321及び322を有している。
【0052】
別個の磁石支持エレメント321と322との間、つまり磁石323と325との間には、コイルホルダ308が配置されており、このコイルホルダ308の互いに反対側の面には2つのコイル315及び317が取り付けられている。特に、コイルホルダ308は、
図1に示されたコイルホルダ109のようにU字形ではなく、互いに反対側の面に2つのコイルを支持するのに適した軸形状を有していてよい。コイルホルダ308は、軸線方向301と半径方向314との間のそれぞれの2つの異なる方向に延びた柔軟部材313によって、ベース311に対して柔軟に結合されている。これらの柔軟部材313は、軸方向及び半径方向でのベースに対するコイルホルダ308の移動を許容し、同時に弾性を提供する。これにより、磁石323とコイル315との間の間隙327の間隙寸法dは、コイル315に対する磁石323の回転の際に一定に維持されることになる。
【0053】
図4は、実施形態による発電機400の部分の断面を概略的に示している。
図4に示された実施形態400は、
図1、
図2又は
図3に示された実施形態との多くの類似点を有する。特に、コイルホルダ409は、U字形であり、第1の内面においてコイル415を支持し、第1の内面とは反対側の第2の内面にコイル417を支持している。ロータ集合体405は、回転軸線401を中心にして回転可能な、回転軸419を有しており、この回転軸419は、半径方向外方へ延びた磁石支持エレメント421を有している。磁石支持エレメント421は、コイル415と向き合って配置された磁石423を支持しており、さらに、コイル417と向き合って配置された磁石425を支持している。
【0054】
さらに、ロータ集合体450は、磁石支持エレメント421に結合されかつ軸線方向401に延びた突出部440を有している。突出部440の軸線方向端部には、ロータ摺動面441が配置されており、これらのロータ摺動面は、コイルホルダ摺動面443に向き合ってこのコイルホルダ摺動面443の近傍に位置している。これらの面441及び443は、ロータ集合体405が回転軸線401を中心にしてコイルホルダ409に対して回転する時に互いに沿って摺動してよい。これにより、ロータ摺動面441とコイルホルダ摺動面443とは、ロータ集合体405又は磁石支持エレメント421(又は磁石支持エレメント421と同じ軸方向位置に配置された、周方向で隣接する磁石支持エレメント)が、作動中に、U字形のコイルホルダ409の向き合った内面の間における理想的な位置から偏ると、時々互いに接触することがある。この場合、突出部440の面441は、軸線方向に作用する力をコイルホルダ摺動面443に加えることになり、突出部440の偏りに応答して、ひいては磁石支持エレメント421(又は磁石支持エレメント421と同じ軸方向位置に配置された、周方向で隣接する磁石支持エレメント)の偏りに応答して、コイルホルダ409を偏らせる。軸線方向での突出部440の偏り又は移動に応答したコイルホルダ409のこの移動は、柔軟部材413を用いたベースへのコイルホルダ409の柔軟な結合によって可能になっている。
【0055】
半径方向でみて回転軸線401により近い領域において、ロータ集合体405は、磁石支持エレメント421に取り付けられておりかつ軸線方向401に延びた別の突出部445も有している。突出部445の軸線方向外側端部には別のロータ摺動面446が配置されており、この別のロータ摺動面446は、コイルホルダ摺動面447と向き合っておりかつコイルホルダ摺動面447の近傍に位置している。摺動面446及び447は、互いに対して摺動してよく、コイルホルダ409の移動が案内されるように、作動中に時々互いに接触することになる。
【0056】
摺動面441と443との間、及び摺動面446と447との間には、互いに対する向き合った摺動面の摺動を助けるために、潤滑材448が提供されてよい。別の実施形態は、摺動面の間に充填材料を提供してもよい。別の実施形態は、磁石支持エレメント421及び/又はロータ集合体405の移動に応答してコイルホルダ409の移動を案内することをさらに改善するために、より少ない又はより多い向き合った摺動面を提供してもよい。
【0057】
図4に示された発電機400は、さらに、
図1及び
図2に示された実施形態と同様に軸方向に互いから離反させられた、それぞれコイル及び磁石が取り付けられたコイルホルダと磁石支持ホルダとを有していてよい。さらに、軸線方向で離間して配置されたコイルホルダは、
図1に示された実施形態と同様に、(弾性をも提供する実施形態における)柔軟部材によって互いに結合されていてもよいし、結合されていなくてもよい。
【0058】
さらに、
図4に示された実施形態と同様に、
図3に示された発電機300は、コイルホルダ308に又は磁石支持エレメント321及び/又は322に結合された突出部を有していてもよく、これらの突出部は、磁石支持エレメント321,322又はコイルホルダ308の摺動面と向き合って配置された摺動面を提供してよい。
【0059】
さらに、磁石支持エレメントによってコイルホルダのさらなる案内を提供するために、上記実施形態におけるコイルと磁石との間に、柔軟な材料、充填材料又は同様のものが配置されていてよい。
【0060】
「含む」とは、その他の構成要素又はステップを排除せず、単数の記載は複数を排除しない。異なる実施形態に関連して説明された構成要素が組み合わされてもよい。請求項における参照符号は、請求項の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0061】
100 発電機、 101 回転軸線、 103 ステータ集合体、 105 ロータ集合体、 107 コイルホルダ、 109 コイルホルダ、 111 ベース構造体、 113 ばね、 115,117 コイル、 119 回転軸、 121 磁石支持構造体、 123 磁石、 125 磁石、 131 コイル、 133 磁石支持構造体、 135 磁石、 200 発電機、 201 回転軸線、 207,209 コイルホルダ、 211 ベース構造体、 213 柔軟部材、 214 半径方向、 221,223 磁石支持エレメント、 300 発電機、 308 コイルホルダ、 315,317 コイル、 321,322 磁石支持エレメント、 323,325 磁石、 327 間隙、 400 発電機、 409 コイルホルダ、 415,417 コイル、 419 回転軸、 421 磁石支持エレメント、 423 磁石、 425 磁石、 440 突出部、 441,443 摺動面、 445 突出部、 445,446 摺動面、 448 潤滑剤