(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745905
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】浮体係留装置
(51)【国際特許分類】
B63B 21/20 20060101AFI20150618BHJP
B63B 21/29 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
B63B21/20 Z
B63B21/20 A
B63B21/29
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-69601(P2011-69601)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201297(P2012-201297A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】304010178
【氏名又は名称】土井鉄工有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】土井 健生
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−158571(JP,A)
【文献】
実開平02−033298(JP,U)
【文献】
実開昭61−101090(JP,U)
【文献】
特開平04−300376(JP,A)
【文献】
実開昭61−090893(JP,U)
【文献】
特開平06−184968(JP,A)
【文献】
実開平04−131690(JP,U)
【文献】
実開昭57−117295(JP,U)
【文献】
実開昭51−144543(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/20
B63B 21/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面高さが変動する場所に設置される浮体(2)を係留する装置であって、一端がシャックル(6a)とスイベルジョイント(6b)を含む連結具(6)によって前記浮体(2)に接続される係留索(8)と、一端が前記係留索(8)の他端に、自己の他端が水底のアンカー(4)にそれぞれ接続される金属製の係留鎖(9)とから成る係留具(5)を有し、
前記係留索(8)が、ワイヤロープと繊維を組み合わせ、外周を樹脂の保護被覆(8f
)で覆った複合ロープ(8a)で形成され、その係留索(8)の長さが、浮体設置点の水
面が予測される範囲で最大に低下したときの水深(d)よりも短く設定された浮体係留装
置。
【請求項2】
前記係留索(8)の前記浮体(2)に対する接続部と前記係留鎖(9)に対する接続部
にスイベルジョイント(6b,10b)を介在した請求項1に記載の浮体係留装置。
【請求項3】
前記係留索(8)として、ワイヤロープ(8a)の外周にグリス層(8b)、樹脂のテ
ープ巻き層(8c)、クロス巻きつけ層(8d)、セキ糸巻回層(8e)、樹脂の保護被
覆(8f)を順に設けたロープを用いた請求項1又は2に記載の浮体係留装置。
【請求項4】
コンクリート沈錘(4a)を前記アンカー(4)として用いた請求項1〜3のいずれか
に記載の浮体係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浮体(水面に浮く構造物)の係留装置、詳しくは、工夫された構造によって係留の安定性、信頼性を高めた係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海上や湖沼などに設置される気象観測用ブイ、標識ブイ、船舶係留用ブイなどの浮揚構造物(以下では浮体と言う)を設置域に引き留める係留装置が、下記特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に開示された係留装置は、浮体を係留鎖(チェーン)で海底の沈錘(シンカー)につなぐものである。係留鎖と浮体との間には連結用チェーンが介在され、その連結用チェーンの上端が浮体に設けられた係留プレートに接続され、下端はスイベルジョイントを介して係留鎖に接続される。また、前記連結用チェーンと係留鎖の接続部を可撓性のある筒で覆って保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−264885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の係留装置は、浮体を一連の係留鎖などを介して海底や湖底のアンカー(沈錘など)に接続している。接続には、スイベルなどの連結具が使用されている。ところが、浮体を係留鎖で海底、湖底のアンカーにつなぐ係留装置は、潮流などによる大きな力が浮体に働いたときに、係留鎖が重いこともあって接続部が大きなダメージを受ける。なお、浮体設置点の水深が深くなるほど係留鎖の長さは長くなり、係留鎖の重量による影響が顕著になって接続部の受けるダメージが大きくなる。
【0006】
そのダメージの蓄積により接続部が破損することが考えられ、浮体の安定係留に関する信頼性が万全でなかった。
【0007】
また、係留鎖が重い分、浮体の浮力を大きくする必要があり、浮体の小型化の面でも改善の余地が残されていた。
【0008】
なお、特許文献1は、係留鎖に代えて係留索を使用することも述べているが、金属のワイヤロープは、腐食しやすく、藻や牡蠣殻なども付着しやすい。また、金属であるため重量が大きくて係留鎖同様、接続部にダメージを与える。
【0009】
特許文献1は、係留索として合繊ロープも提案しているが、水面高さが変動する場所、例えば、干満差の大きい海や、貯水量の変動によって水面が変位するダム湖、貯水湖などに設置される浮体の係留に合繊ロープを使用することはなされていない。
【0010】
合繊ロープは、水底や水底の岩などに擦られると金属で形成された係留鎖や金属製の係留索(ワイヤロープ)に比べて断線し易いからである。
【0011】
なお、特許文献1については、浮体側の接続部に、波、風による浮体の揺動に起因した接続部の損傷を防止する策が施されているが、同文献の対策は、揺動で屈曲する部位の摩擦による摩耗を抑制するものであって、潮流や係留要素の重みの影響で接続部に働く引っ張り力から接続部を保護できるものではない。
【0012】
この発明は、水面に設置される浮体係留装置を改善の対象にして、その装置の係留の安定性、信頼性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明においては、水面高さが変動する場所に設置され
る浮体の係留装置を以下の通りに構成した。すなわち、一端が
シャックルとスイベルジョイントを含む連結具によって浮体に接続される係留索と、一端が前記係留索の他端に、自己の他端が水底のアンカーにそれぞれ接続される金属製の係留鎖とから成る係留具を有し、
前記係留索が、ワイヤロープと繊維を組み合わせ、外周を樹脂の保護被覆で覆った複合
ロープで形成され、その係留索の長さが、浮体設置点の水面が予測される範囲で最大に低
下したときの水深よりも短く設定されたものにした。
【0014】
ここで言う「アンカー」は、沈錘や水底に設置されたアンカー杭など指す。
【0015】
浮体設置点の水面高さの変化の予測は、過去の水面変位のデータや気象庁などが提供している潮位表、ダム湖や貯水湖での最低水面高さの維持目標値などを参考にして行う。
【0016】
なお、この発明の係留装置に採用する係留具の係留索は、樹脂の保護被覆によって防水された構造を有するので、耐食性に優れる反面、ねじれ難い索になるので、その係留索の浮体に対する接続部と係留鎖に対する接続部に、それぞれスイベルジョイントを介在して浮体と係留索、係留索と係留鎖の相対回転が許容されるようにしておくのが好ましい。
【0017】
このほか、前記アンカーは、水底に設置されるアンカー杭よりも、コンクリート沈錘が設置し易くて好ましい。そのコンクリート沈錘は、係留具を接続して船上から海や湖などに投入するだけでよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の浮体係留装置は、上側部分が、ワイヤロープと繊維、樹脂の組み合わされた複合ロープの係留索からなる係留具を用いて浮体と水底のアンカーをつなぐので、係留具として一連の金属製の鎖や一連のワイヤロープのみを使用する係留装置に比べて係留具が軽量化され、これにより、潮流などによる力が浮体に働いたときに係留具の接続部に加わるダメージが軽減される。
【0019】
例えば、水深50mの海域に設置される浮体を、1m当りの重量が19.7Kgのφ30mmのスタッドチェーンのみで係留すると考えた場合、接続部の荷重負担は極めて大きいものになる。この発明で使用する複合ロープの係留索は、そのφ30mmのスタッドチェーンとの対比で1m当りの重みを1/3〜1/4に軽減することができ、水深が深くなるほど軽量化による接続部保護の効果が大きく発揮される。
【0020】
また、係留索は、外周が樹脂の保護被覆に覆われたものにしたので、裸のワイヤロープに比べて腐食し難い。保護被覆の表面が平滑なために藻や牡蠣殻などが付着し難く、付着が起こったときの除去も簡単である。
【0021】
さらに、複合ロープで形成される係留索の長さを、浮体設置点の水面が予測される範囲で最大に低下したときの水深よりも短くしたので、その係留索が水底に着底して岩などと擦すれあったり、岩などに引っかかったりすることが殆どなくなる。
【0022】
上述したように、繊維と樹脂の併用された係留索を用いることで係留具を軽量化することができるが、その係留索は裸のワイヤロープと違って、水底に着底すると岩などによって傷つけられ、それが断線の原因になることが考えられる。この発明は、その問題を、係留索の長さを適切に設定し、水底に置かれる部分は係留鎖とすることで回避している。
【0023】
以上の相互作用により、この発明の係留装置は、係留の安定性と信頼性が高まり、係留具が切れて浮体が流出するトラブルが減少する。
【0024】
なお、渇水期の貯水湖などでは、最低水面高さが維持目標値を下回って係留索の一部が水底に着底することも考えられるが、それは一時的な現象と考えてよい。従って、係留具の係留索が頻繁に水底に接する構造に比べると、係留索が水底や水底の岩などと擦れあって損傷、切断する懸念は小さい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明の浮体係留装置の一例を使用状態にして示す図
【
図2】
図1の浮体係留装置の係留具の浮体に対する接続部を拡大して示す図
【
図3】係留具の一部を構成する係留索の一例を示す部分破断側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の浮体係留装置の実施の形態を、添付図面の
図1〜
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、この発明の浮体係留装置1は、水面に設置する浮体2と、水底(海底や湖底など)3に設置するアンカー4と、浮体2をアンカー4に接続する係留具5と、係留具5と浮体2との間に設ける連結具6と、係留具5をアンカー4に接続する連結具7を組み合わせて構成されている。
【0027】
浮体2は、標識ブイを例示したが、海面などの気象観測用ブイ、小型の船舶係留用ブイ、浮き桟橋、水上設置の機材を載せるフロートなど、種々のものが考えられる。
【0028】
アンカー4は、図示のコンクリート沈錘4aのほかに、水底3に打ち込まれるアンカー杭なども採用できる。
【0029】
係留具5は、一端が連結具6によって浮体2に接続される係留索8と、一端が係留索8の他端に、自己の他端が連結具7によってアンカー4にそれぞれ接続される係留鎖9と、係留索8の他端と係留鎖9の一端をつなぐ連結具10を組み合わせて構成されている。
係留索8の両端はアイ加工が施されて輪になっており、その輪の後述するシャックルが掛けられる。係留索8の両端のアイ加工部は、輪になった補強金具の溝の中に納めて保護すると好ましく、例示の係留索8の両端は、その補強金具による補強を行ったものにしている。
【0030】
連結具6は、シャックル6aとスイベルジョイント6bを組み合わせたものが用いられている。シャックル6aは3個ある。そのうちの2個は互いに連結されて片方が浮体2の下部に設けられた係留プレート2aに、他の1個がスイベルジョイント6bにそれぞれ着脱自在に連結される。また、もう1個のシャックル6aは、スイベルジョイント6bと係留索8を連結するのに利用されている。
【0031】
連結具7は、単体のシャックルであり、これを介して係留鎖9がアンカー4に接続される。なお、例示の係留装置に使用したシャックルは、連結用のピンとして鍛造成形した楕円ピンを用い、その楕円ピンの先端の雄ねじにナットを螺合させ、そのナットの抜け止めピンを楕円ピン先端側のピン孔に通してピン孔貫通部を楕円ピンの外周に巻き付けたものにしている。好ましいシャックルであるが、これに限定されるものではない。
【0032】
係留索8は、外周が樹脂の保護被覆に覆われた複合ロープで形成されている。その係留索8の一例を
図3に示した。
図3の係留索8は、ワイヤロープ8aの外周に、グリス層8b、樹脂のテープ巻き層8c、合成繊維のクロスを用いたクロス巻きつけ層8d、セキ糸巻回層8eを設け、最外周を樹脂の保護被覆8fで覆った構造になっている。クロス巻きつけ層8dのクロスは、合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維などで形成されるものが好ましい。セキ糸巻回層8eのセキ糸も同様である。合成繊維は、芳香族ポリアミド繊維やポリプロピレン繊維などを好適に利用できる。
【0033】
グリス層8のグリスは、ワイヤロープ8aを構成する素線(スチールフィラメント)間にも含浸されており、ワイヤロープ8aは外部の水から多重に保護される。
【0034】
この複合ロープを使用した係留索8は、切断荷重が同等の金属の鎖に比べてその重量が相当小さく、φ30mmのスタッドチェーンとの対比で、切断荷重が同等の係留索は、その重みを1/3〜1/4に軽減することができる。
【0035】
樹脂の保護被覆8fは、外周が断面円形でしかも表面の平滑な被覆であると、藻や牡蠣殻などが付着し難い。また、藻や牡蠣殻などが仮に付着しても、本出願人が実公昭54−8071で提案しているような装置を使用して船上などから簡単に除去可能である。
【0036】
係留索8の長さは、浮体設置点の水面が予測される範囲で最大に低下したときの水深dよりも短い。
【0037】
浮体設置点の水位の予測は、例えば、係留箇所が海である場合には、気象庁などから提供されている潮位表などを参考にすれば、干潮時、満潮時の水深を知ることができる。満潮から干潮までの水位変化に例えば20%程度の誤差を見込んで干潮時の最低水深を予測すれば(誤差を見込まない場合よりも浅くなると考える)、水面が最大に低下したときにも係留索8が水底に届くことはない。
【0038】
係留索8の長さをこのように設定することで、係留索8の着底が防止されて損傷の原因になる水底での擦れ、引っ掛かりなどが回避される。
【0039】
係留鎖9は、係留に通常利用されるスタッドチェーンである。この係留鎖9は、金属の鎖であるので、水底の岩などと擦れても、摩耗、損傷等が防止される。この係留鎖9は、浮体2に吊り下げられて水底3から立ち上がる部分の長さが極力短くなるもの、或いは、浮体設置点の水面が予測される範囲で最大に低下したときに水底3から立ち上がる部分の長さがゼロになるものが、浮体2に加わる係留具5の重量を最大限に軽減できて好ましい。
【0040】
連結具10は、2個のシャックル10aとスイベルジョイント10bを組み合わせて用いている。片方のシャックル10aは、スイベルジョイント10bを係留索8に連結するのに用いられ、もうひとつのシャックルは、スイベルジョイント10bを係留鎖9に連結するのに用いられている。このように、スイベルジョイントを係留索8の両端に配置することで、浮体2が回転したときに係留索8や係留鎖9に撚りがかかることを防止することができる。
【0041】
以上の通りに構成したこの発明の浮体係留装置1は、係留具5の一部を複合ロープで構成される係留索8で構成したことによって係留具5が従来の浮体係留装置に比べて軽量化され、これにより、潮流などによる力が浮体に働いたときに係留具の接続部に加わるダメージが軽減される。
【0042】
また、係留索の長さを、浮体設置点の水面が予測される範囲で最大に低下したときの水深よりも短くしたことによって係留索が水底に着底することが殆ど無くなり、水底の岩などとの擦すれ、引っかかりによる係留索の損傷、断線も起こり難くなる。これにより、係留の安定性と信頼性が向上し、係留具が切れることによる浮体の流出、漂流のトラブルが減少する。
【符号の説明】
【0043】
1 浮体係留装置
2 浮体
2a 係留プレート
3 水底
4 アンカー
4a コンクリート沈錘
5 係留具
6,7,10 連結具
6a,10a シャックル
6b,10b スイベルジョイント
8 係留索
8a ワイヤロープ
8b グリス層
8c 樹脂のテープ巻き層
8d クロス巻きつけ層
8e セキ糸巻回層
8f 樹脂の保護被覆
9 係留鎖