特許第5745909号(P5745909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745909
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ周縁加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   B24B9/14 A
   B24B9/14 H
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-76896(P2011-76896)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-210667(P2012-210667A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】夏目 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−149170(JP,A)
【文献】 特開2000−254847(JP,A)
【文献】 特開2001−047348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、
前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、
前記レンズ形状検知手段の検知結果に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの光学中心位置を推定し、推定した光学中心位置と、前記レイアウトデータ及び前記左右選択情報を基に求めた光学中心位置と、を比較することによって前記レンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工装置。
【請求項2】
眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、
前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、
玉型に基づいた加工済みレンズをさらにサイズ調整するための二度摺り加工モードに移行するモード移行手段と、
前記二度摺り加工モード移行時に、前記レンズチャック軸に保持されたレンズについての前記レンズ形状検知手段の検知結果及び左右の選択情報に基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工装置。
【請求項3】
眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、
前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、
前記レンズ形状検知手段の検知結果に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの光学中心位置を推定し、推定した光学中心位置の偏心情報及び前記左右選択情報に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ周縁加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ周縁加工装置は、レンズチャック軸に眼鏡レンズを挟持し、玉型に基づき、レンズを回転しながら砥石等の周縁加工具によってレンズの周縁を加工する。玉型は左及び右で異なり、また、玉型に対するレンズの光学中心位置は左及び右で異なる。このため、作業者は、装置に入力したレンズ加工条件の左右の設定(選択)に対して、レンズの左右を取り間違えること無く、レンズをチャック軸に保持させる必要がある。レンズの左右を取り間違えたままレンズの周縁加工が実行されると、レンズが使用できなくなる。レンズの左右の取り間違えを軽減する技術として、下記の特許文献1、2に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−105151号公報
【特許文献2】特開2008−137106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献の技術を使用すれば、レンズの左右の取り間違いの問題は軽減されるが、さらに改良が望まれる。
【0005】
また、レンズの左右の取り間違いは、未加工レンズを玉型に基づいて周縁加工する場合に発生する他、加工済みレンズのサイズを小さくするためのサイズ調整加工を行う、いわゆる「二度摺り加工(リタッチ加工)」の場合に発生しやすい。
【0006】
本件発明は、レンズの周縁加工に際して、レンズの左右の取り間違いを軽減できる眼鏡レンズ加工周縁装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、前記レンズ形状検知手段の検知結果に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの光学中心位置を推定し、推定した光学中心位置と、前記レイアウトデータ及び前記左右選択情報を基に求めた光学中心位置と、を比較することによって前記レンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
(2) 眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、玉型に基づいた加工済みレンズをさらにサイズ調整するための二度摺り加工モードに移行するモード移行手段と、前記二度摺り加工モード移行時に、前記レンズチャック軸に保持されたレンズについての前記レンズ形状検知手段の検知結果及び左右の選択情報に基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
(3) 眼鏡レンズを保持するレンズチャック軸と、玉型データ及び玉型に対するレンズの光学中心のレイアウトデータを入力するデータ入力手段と、レンズチャック軸に保持させるレンズが右か左かの選択信号を入力する左右選択手段と、を備え、左右選択情報及び入力されたデータに基づいてレンズチャック軸に保持されたレンズの周縁を周縁加工具によって加工する眼鏡レンズ周縁加工装置において、前記レンズチャック軸に保持されたレンズの外径及び屈折面形状の少なくとも一方を検知するレンズ形状検知手段と、前記レンズ形状検知手段の検知結果に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの光学中心位置を推定し、推定した光学中心位置の偏心情報及び前記左右選択情報に基づいて前記レンズチャック軸に保持されたレンズの左右の間違いの有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンズの周縁加工に際して、レンズの左右の取り間違いを軽減でき、使用不可のレンズの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、眼鏡レンズ周縁加工装置の概略構成図である。
【0010】
加工装置1のベース170上には、一対のレンズチャック軸102L,102Rを回転可能に保持するキャリッジ101が搭載されている。チャック軸102L,102Rに挟持された眼鏡レンズLEの周縁は、スピンドル(加工具回転軸)161aに同軸に取り付けられた加工具としての砥石群168の各砥石に圧接されて加工される。砥石群168は、粗砥石162と、ヤゲン形成用のV溝及び平加工面を持つ仕上げ砥石164と、を含む。これらにより、加工具回転ユニットが構成される。加工具としては、カッターが使用されても良い。
【0011】
レンズチャック軸102Rは、キャリッジ101の右腕101Rに取り付けられたモータ110によりレンズチャック軸102L側に移動される。また、レンズチャック軸102R,102Lは、左腕101Lに取り付けられたモータ120により、ギヤ等の回転伝達機構を介して同期して回転される。モータ120の回転軸には、レンズチャック軸102R,102Lの回転角を検知するエンコーダ121が取り付けられている。なお、エンコーダ121により、加工時にレンズチャック軸102R,102Lに加わる負荷トルクを検知できる。これらによりレンズ回転ユニットが構成される。
【0012】
キャリッジ101は、X軸方向(チャック軸の軸方向)に延びるシャフト103,104に沿って移動可能な支基140に搭載され、モータ145の駆動によりX軸方向に移動される。モータ145の回転軸には、キャリッジ101(チャック軸102R,102L)のX軸方向の移動位置を検知するエンコーダ146が取り付けられている。これらによりX軸移動ユニットが構成される。また、支基140には、Y軸方向(チャック軸102L、102Rと砥石スピンドル161aとの軸間距離が変動される方向)に延びるシャフト156,157が固定されている。キャリッジ101はシャフト156,157に沿ってY軸方向に移動可能に支基140に搭載されている。支基140にはY軸移動用モータ150が固定されている。モータ150の回転はY軸方向に延びるボールネジ155に伝達され、ボールネジ155の回転によりキャリッジ101はY軸方向に移動される。モータ150の回転軸には、レンズチャック軸のY軸方向の移動位置を検知するエンコーダ158が取り付けられている。これらにより、Y軸移動ユニット(軸間距離変動ユニット)が構成される。
【0013】
図1において、キャリッジ101の上方の左右には、第1のレンズ形状検知ユニット(レンズ屈折面形状検知ユニット)としてのレンズコバ位置検知ユニット300F,300Rが設けられている。図2はレンズ前屈折面のコバ位置(玉型上のレンズ前屈折面側のコバ位置)を検知する検知ユニット300Fの概略構成図である。
【0014】
ベース170上に固定されたブロック300aに支基301Fが固定されている。支基301Fには、スライドベース310Fを介して測定子アーム304FがX軸方向にスライド可能に保持されている。測定子アーム304Fの先端部にL型のハンド305Fが固定され、ハンド305Fの先端に測定子306Fが固定されている。測定子306Fは、レンズLEの前屈折面に接触される。スライドベース310Fの下端部にはラック311Fが固定されている。ラック311Fは、支基301F側に固定されたエンコーダ313Fのピニオン312Fと噛み合っている。また、モータ316Fの回転は、ギヤ315F及び314F等の回転伝達機構を介してラック311Fに伝えられ、スライドベース310FがX軸方向に移動される。モータ316Fの駆動により、退避位置に置かれた測定子306FがレンズLE側に移動されると共に、測定子306FをレンズLEに押し当てる測定圧が掛けられる。レンズLEの前屈折面位置の検知時には、玉型に基づいてレンズLEが回転されながらレンズチャック軸102L,102RがY軸方向に移動され、エンコーダ313Fによりレンズ前屈折面のX軸方向のコバ位置(玉型のレンズ前屈折面コバ位置)がレンズ全周に亘って検知される。このコバ位置検知は、好ましくは、玉型の測定軌跡に加えて、玉型より所定量外側(例えば、1mm外側)の測定軌跡で行われる。この2つの測定軌跡によるコバ位置検知により、玉型のコバ位置におけるレンズ屈折面の傾斜が求められる。
【0015】
レンズ後屈折面のコバ位置検知ユニット300Rの構成は、検知ユニット300Fと左右対称であるので、図2に図示した検知ユニット300Fの各構成要素に付した符号末尾の「F」を「R」に付け替え、その説明は省略する。
【0016】
図1において、レンズチャック軸102R側の上側の後方に、第2のレンズ形状検知ユニットとしてのレンズ外径検知ユニット500が配置されている。図3は、レンズ外径検知ユニット500の概略構成図である。
【0017】
アーム501の一端にレンズLEのエッジ(周縁)に接触される円柱状の測定子520が固定され、アーム501の他端に回転軸502が固定されている。円柱部521aが、レンズLEの周縁に接触される。測定子520の中心軸520a及び回転軸502の中心軸502aは、レンズチャック軸102L,102R(X軸方向)に平行な位置関係に配置されている。回転軸502は中心軸502aを中心に回転可能に保持部503に保持されている。保持部503は図1のブロック300aに固定されている。回転軸502は、ギヤ505及びピニオンギヤ512を介してモータ510により回転される。モータ510の回転軸に検知器としてのエンコーダ511が取り付けられている。エンコーダ511によって、中心軸502aを中心にした測定子520の回転量が検知され、検知された回転量からレンズLEの外径が検知される。
【0018】
レンズLEの外径の測定時には、図4のように、レンズチャック軸102L,102Rが所定の測定位置(回転軸502を中心にして回転される測定子520の中心軸520aの移動軌跡530上)に移動される。モータ510によってアーム501が加工装置1のX軸及びY軸に直交する方向(Z軸方向)に回転されることにより、退避位置に置かれていた測定子520がレンズLE側に移動され、測定子520の円柱部521aがレンズLEのエッジ(周縁)に接触される。また、モータ510によって測定子520に所定の測定圧が掛けられる。レンズLEが所定の微小角度ステップ毎で回転され、このときの測定子520の移動がエンコーダ511によって検知されることにより、チャック中心(加工中心、回転中心)を基準にしたレンズLEの外径サイズが計測される。
【0019】
レンズ外径検知ユニット500は、上記のようにアーム501の回転機構で構成される他、加工装置1のX軸及びY軸に直交する方向に直線移動される機構であっても良い。また、レンズコバ位置検知ユニット300F(又は300R)を、レンズ外径検知ユニットとして兼用することもできる。この場合、測定子306Fをレンズ前屈折面に当接した状態で、測定子306Fをレンズ外径側に移動するように、レンズチャック軸102L,102RをY軸方向に移動させる。測定子306FがレンズLEの屈折面から外れると、エンコーダ313Fの検出値が急峻に変化するので、このときのY軸方向の移動距離からレンズLEの外径を検知することができる。
【0020】
図5は、眼鏡レンズ加工装置の制御ブロック図である。制御ユニット50は、装置全体の統括・制御を行い、また、各種測定データ及び入力データに基づいて演算処理を行う。装置1の各モータ、レンズコバ位置検知ユニット300F、300R、レンズ外径検知ユニット500は、制御ユニット50に接続されている。また、制御ユニット50には、加工条件のデータ入力用のタッチパネル機能を持つディスプレイ60、各種のスイッチを持つスイッチ部70、メモリ51、眼鏡枠形状測定装置2等が接続されている。スイッチ部70には、レンズLEの加工をスタートさせるスイッチが設けられている。
【0021】
眼鏡枠形状測定装置2の測定により得られた眼鏡フレームのレンズ枠(リム)の玉型データは、スイッチ部70のスイッチが操作されることにより、加工装置1に入力され、メモリ51に記憶される。眼鏡枠形状測定装置2からは、右レンズ枠及び左レンズ枠のそれぞれの玉型データが入力されるか、又は左右の一方の玉型データが入力される。左右の一方の玉型データが入力された場合には、制御ユニット50は、入力された玉型データの左右を反転することにより、もう片方の玉型データを求める。
【0022】
図5には、加工条件を設定するためにディスプレイ60に表示される設定画面の例が示されている。画面の左上に被加工レンズの左右が何れであるかを選択(設定)するスイッチ61が表示されている。スイッチ61がタッチされる毎に、スイッチ61の表示の「R」と「L」とが切換えられ、レンズの左右が何れであるかが選択される。
【0023】
また、ディスプレイ60には、メモリ51から呼び出された玉型データに基づく玉型図形FTが表示される。ディスプレイ60の各スイッチ(キー)が操作されることにより、左玉型の幾何中心FCに対する左レンズの光学中心OCのレイアウトデータが入力され、また、右玉型の幾何中心FCに対する右レンズの光学中心OCのレイアウトデータが入力される。左右のレンズ枠の幾何中心間距離(FPD値)は、入力欄62aに入力される。装用者の瞳孔間距離(PD値)は、入力欄62bに入力される。右玉型の幾何中心FCに対する右光学中心OCの高さは、入力欄62cRに入力される。左玉型の幾何中心FCに対する左光学中心OCの高さは、入力欄62cLに入力される。各入力欄の数値は、入力欄がタッチされることにより表示されるテンキーによって入力できる。
【0024】
また、スイッチ63a、63b、63c、63dにより、レンズの材質、フレームの種類、加工モード(ヤゲン加工モード、平加工モード)、面取り加工の有無等の加工条件を設定できる。
【0025】
また、レンズLEの加工に先立ち、操作者は、レンズLEのレンズ前屈折面に固定治具であるカップCuを周知の軸打器を使用して固定する。このとき、レンズLEの光学中心OCにカップを固定する光心モードと、玉型の幾何中心FCに固定する枠心モードと、がある。ディスプレイ60の画面右下のスイッチ65により、レンズチャック軸102L,102Rのチャック中心(加工中心)を光心モードと枠心モードの何れにするかを選択できる。また、画面には、加工済みレンズの外径サイズを小さくするためのサイズ調整加工である「二度摺り加工」を設定するスイッチ66が設けられている。
【0026】
次に、レンズ周縁加工の基本的な加工動作を説明する。レンズLEがレンズチャック軸102L,102Rに保持された後、スイッチ部70のスタートスイッチが押されると、制御ユニット50によりレンズ外径検知ユニット500が作動され、レンズチャック軸を中心にしたレンズLEの外径が検知される。レンズLEの外径が得られることにより、玉型に対してレンズLEの外径が不足しているか否かが確認される。レンズLEの外径が不足している場合には、ディスプレイ60に警告が表示される。
【0027】
レンズLEの外径検知が終了すると、続いて、制御ユニット50によりレンズコバ位置検知ユニット300F,300Rが駆動され、玉型のコバ位置におけるレンズLEの前屈折面及び後屈折面の形状が検知される。検知された前屈折面及び後屈折面の形状から、玉型のコバ位置におけるレンズ厚が求められる。ヤゲン加工モードが設定されている場合には、レンズの前屈折面及び後屈折面のコバ位置検知情報に基づき、ヤゲン頂点の配置の軌跡であるヤゲン軌跡が所定の演算により求められる。
【0028】
レンズLEのコバ位置検知が終了すると、入力された玉型に基づいて粗加工軌跡が演算され、粗加工軌跡に従ってレンズLEの周縁が粗砥石162により加工される。粗加工軌跡は玉型に仕上げ代を付加して演算される。制御ユニット50は、粗加工軌跡に基づき、レンズチャック軸102L,102Rの回転角とレンズチャック軸102L,102RのY軸方向の移動との粗加工制御データを得て、粗砥石162によってレンズLEの周縁を粗加工する。続いて、制御ユニット50は、仕上げ軌跡(ヤゲン軌跡)に基づき、レンズチャック軸102L,102Rの回転角とレンズチャック軸102L,102RのY軸方向の移動との仕上げ制御データを得て、仕上げ砥石164によってレンズLEの周縁を仕上げ加工する。
【0029】
次に、スイッチ61により設定されたレンズの左右選択に対して、レンズチャック軸102L,102Rに保持されたレンズLEの左右に間違いが無いかを確認する左右確認動作を説明する。この左右確認には、レンズ外径検知ユニット500による検知結果を利用する方法と、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rによる検知結果を利用する方法と、がある。
【0030】
初めに、レンズ外径検知ユニット500による検知結果を利用し、レンズLEが未加工の生地レンズであり、枠心モード(玉型の幾何中心FCがチャック中心にされるモード)が設定されている場合を説明する。
【0031】
前述のように、スタートスイッチの信号入力により、レンズ外径検知ユニット500が作動され、レンズチャック軸を中心にしたレンズLEの外径が検知される。制御ユニット50は、レンズ外径検知ユニット500による検知結果と、ディスプレイ60にて入力されたレイアウトデータ(チャック中心とレンズLEの光学中心OCとの位置関係データ)と、スイッチ61により設定されたレンズLEの左右選択データと、に基づいてレンズチャック軸102L,102Rに保持されたレンズLEの左右に間違いが無いか(レンズLEが左レンズか右レンズか)を確認する。
【0032】
図6は、レンズ外径の検知結果を利用した左右確認の説明図であり、スイッチ61によって右レンズが選択され、メモリ51から右レンズ用の玉型が呼び出された場合である。図6において、玉型FTRは、右レンズが選択されることによって右レンズ用に設定されたものであり、FCRは玉型FTRの幾何中心である。幾何中心FCRは、枠心モードではレンズチャック軸のチャック中心となる。図6において、OCRは、右レンズ用のレイアウトデータの入力によって決定されたレンズLEの光学中心位置を示す。円CERは、レンズチャック軸に右レンズが正しく保持された場合に、レンズ外径検知ユニット500により検知されたレンズ外径軌跡の例である。Orは円CERの幾何中心を示し、未加工の生地レンズの場合には、Orは右レンズLEの光学中心位置であると推定される。
【0033】
制御ユニット50は、レイアウトデータによる光学中心位置OCRと光学中心位置Orと、を比較し、偏位量を得る。左右確認のためには、水平方向(図6のx方向)について、偏心量Δxrを得れば良い。この偏心量Δxrが所定の許容値S(例えば、1mm)を超えておらず、位置OCRと位置Orとが略一致していれば、レンズチャック軸に保持されたレンズLEはスイッチ61による設定通りに右レンズであると確認(判定)される。レンズLEの左右確認で間違いが無ければ、粗砥石162及び仕上げ砥石164によるレンズ周縁の加工が行われる。レンズLEの左右の確認結果を操作者に知らせるように、その確認結果をディスプレイ60に表示する構成としても良い。
【0034】
一方、図6において、円CELは、レンズチャック軸に誤って左レンズが保持された場合に、レンズ外径検知ユニット500により検知されたレンズ外径軌跡の例である。Olは円CERの幾何中心を示し、左レンズの光学中心位置であると推定される。制御ユニット50は、レイアウトデータによる光学中心位置OCRと光学中心位置Olとを比較し、水平方向の偏位量Δxlを求める。偏心量Δxlが所定の許容値Sを超えている場合には、レンズチャック軸に保持されたレンズLEが左レンズであり、スイッチ61による右レンズの設定に対して間違っていると確認(判定)される。そして、レンズLEの左右が間違っている旨の警告がディスプレイ60に表示され、操作者にレンズLEの左右の間違いが報知される。また、その後のレンズ周縁の加工動作が停止される。ディスプレイ60は、レンズの左右の間違いを警告する警告器として使用される。警告器としては、ディスプレイ60の他、警告音を発するブザーが設けられていても良い。
【0035】
操作者は、ディスプレイ60による警告又は装置の加工動作の停止により、レンズチャック軸に保持させたレンズの左右が間違っていることに気づくことができ、誤りを正すことができる。これにより、左右が間違ったままレンズの周縁が加工されてしまうことを防止でき、使用不可となるレンズの発生を抑えることができる。
【0036】
なお、上記はスイッチ61によって右レンズが選択され場合であるが、左レンズが選択された場合には左右が反転されるだけで、基本的に同様な方法によって左右確認が行われる。
【0037】
上記ではレンズ外径の検知結果を利用してレンズLEの光学中心位置Or(Ol)を求めたが、これはレンズコバ位置検知ユニット300F,300R(レンズ屈折面形状測定ユニット)を利用することもできる。以下、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rを利用した方法を説明する。
【0038】
図7は、レンズの屈折面形状から光学中心を求める場合の説明図である。制御ユニット50は、検知ユニット300Fによる玉型のレンズ前屈折面コバ位置Lpfの検知結果に基づき、レンズ前屈折面のカーブ球面及びそのカーブ球面の中心位置Sfoを所定の演算により求める。例えば、レンズ全周のレンズ前屈折面コバ位置Lpfの中から任意の4点を選び、この4点が球面上に位置するときの球面の半径Sfを求めることにより、その球面の中心位置Sfoを求めることができる。別の方法としては、次のようにして求めることができる。玉型の微小な動径角毎に、玉型のレンズ前屈折面コバ位置Lpfと、それより所定量外側のレンズ前屈折面コバ位置と、の2点を通る直線Lf(図示せず)の傾斜角を求め、レンズ全周の多数のコバ位置Lpfにおける直線Lfの傾斜角を基に、数学的にレンズ前屈折面の球面の半径Sfと、その中心位置Sfoを求めることができる。
【0039】
レンズ後屈折面の球面の半径Sf及びその中心位置Sroも、レンズ後屈折面コバ位置Lprの検知結果を基に、同様な演算により求めることができる。レンズLEが乱視レンズの場合には、レンズ後屈折面はトーリック面となるが、トリーク面を平均化した球面として求めることにより、中心位置Sroが求められる。そして、中心位置Sfoと中心位置Sroとを結ぶ直線を求め、この直線とレンズ後屈折面のカーブ球面とが交わる点を光学中心Orとして近似的に推定することがでる。光学中心Orは、レンズチャック軸のチャック中心FCRに対する位置データとして求められる。図7では、中心FCRはレンズチャック軸の軸線X1上に位置する。
【0040】
チャック中心FCRに対する光学中心Orの位置データが求められれば、レンズ外径検知を利用した図6の場合と同様に、ディスプレイ60にて入力されたレイアウトデータと、スイッチ61により設定されたレンズLEの左右選択データと、に基づいてレンズチャック軸102L,102Rに保持されたレンズLEの左右が確認される。
【0041】
なお、未加工レンズの左右の確認においては、図6にて説明したレンズ外径検知ユニット500による検知結果と、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rによる検知結果と、の両方を利用すると、その確認結果の信頼性が向上する。

次に、加工済みレンズのサイズを調整するための二度摺り加工を行う場合の左右確認を説明する。
【0042】
前述のように左右両方のレンズLEのヤゲン加工が終了後、ディスプレイ60の画面上のスイッチ66が押されると、眼鏡レンズ加工装置の加工モードが二度摺りモードに移行される。図5の画面は、サイズ調整データ等の二度摺りに必要な加工条件データを入力するための二度摺り画面に切換えられる(図示を略す)。また、二度摺り画面では、図5の画面と同様に、レンズチャック軸に取り付けるレンズLEの左右を選択するためのスイッチ61が設けられている。
【0043】
この二度摺りモードにおいても、レンズLEの左右確認にはレンズ外径検知ユニット500を利用する方法と、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rを利用する方法がある。初めに、レンズ外径検知ユニット500を利用する方法を説明する。
【0044】
レンズLEがレンズチャック軸102L,102Rに保持された後、スイッチ7のスタートスイッチが押されると、制御ユニット50によりレンズ外径検知ユニット500が作動される。レンズLEは、選択スイッチ61によって右レンズが選択されているものとする。図8は、レンズ外径検知ユニット500により検知された加工済みレンズの外径軌跡の説明図である。図8において、外径軌跡FTRaは、加工済みレンズが選択スイッチ61により選択された通りに右レンズであった場合の軌跡である。制御ユニット50は、レンズ外径検知ユニット500により得られた軌跡FTRaと二度摺り加工前の周縁加工で使用した右玉型データとを比較し、両者が略一致しているか否かを確認する。右玉型データは、メモリ51に記憶保持されており、選択スイッチ61による右レンズの選択により呼び出される。呼び出された右玉型データと軌跡FTRaとが略一致する場合には、制御ユニット50は、レンズチャック軸に取り付けられた加工済みレンズの左右に間違いが無いと判定し、二度摺り画面により入力されたサイズ調整データ及び右玉型データに基づいてレンズチャック軸102R,102LをXY移動し、仕上げ砥石164により仕上げ加工する。
【0045】
一方、図8における軌跡FTRbは、レンズチャック軸102R,102Lに誤って加工済みの左レンズが取り付けられた場合に、レンズ外径検知ユニット500により検知された軌跡である。制御部70は、軌跡FTRbと右玉型データとを比較し、両者が略一致していない場合は、レンズチャック軸に取り付けられた加工済みレンズの左右が間違っていると判定し、ディスプレイ60の画面に警告を表示する。また、制御ユニット50は、加工動作を停止する。これにより、レンズの左右が間違っていることが作業者に報知される。
【0046】
なお、上記の軌跡FTRa(FTRb)と左右選択情報により決定される右玉型(左玉型)とを比較する方法は、レンズLEの光学中心を保持させる「光心モード」においても適用可能である。
【0047】
次に、二度摺りモードにおいて、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rを利用する方法を説明する。制御ユニット50は、図9のように、メモリ51に記憶されている右玉型FTR及び左玉型FTLのデータを呼び出し、両者を比較する。制御ユニット50は、右玉型FTRと左玉型FTLとで玉型半径の異なる点を抽出し、左右の選択情報に基づき、レンズコバ位置検知ユニット300F(又は300R)の測定子306F(又は306R)を接触させるレンズ屈折面の位置を定める。
【0048】
例えば、右レンズが選択されている場合、制御ユニット50は、左玉型FTLに対して右玉型FTRの玉型半径が最も相違している動径角θpaを求め、右玉型FTRの動径角θpaのコバ位置からやや内側(例えば、0.5mm)の点Paを接触位置として定める。そして、レンズコバ位置検知ユニット300Fを作動させ、点Paの動径角θpa及び動径長(半径)に基づいて測定子306Fをレンズ屈折面に接触させる。レンズチャック軸102L,102Rに右レンズが正しく取付けられていれば、測定子306Fがレンズ屈折面に接触するため、この接触がエンコーダエンコーダ313Fの出力信号から検知される。
【0049】
レンズチャック軸102L,102Rに左レンズが取り付けられていた場合には、測定子306Fがレンズ屈折面に接触せず、レンズが無いことが検知される。測定子306Fがレンズ屈折面に接触したか否かは、エンコーダ313Fの検知から得られる。二度摺り前の右レンズ及び左レンズのコバ位置の検知データはメモリ51に記憶されている。メモリ51に記憶された右レンズの動径角θpaのコバ位置データに対して、検知されたコバ位置が大きく外れていれば、レンズチャック軸に保持されたレンズLEが左レンズであると確認(判定)される。
【0050】
二度摺りモードにおいて、レンズコバ位置検知ユニット300F,300Rを利用する別の方法を説明する。図10に示すように、玉型が左右対称形状で枠心モードの時には、レンズ外径検知ユニット500を利用する方法では判定精度が劣るので、以下の方法が有効である。この方法は、左右対称な玉型であっても、左レンズと右レンズではコバ位置の厚みが異なることに基づいて、レンズの左右を確認する方法である。
【0051】
制御ユニット50は、左右の選択情報に基づいて選択された方のレンズのコバ位置データをメモリ51から呼び出し、玉型の全周のコバ厚を求める。このコバ厚データに基づいて、レンズコバ位置検知ユニット300F及び300Rのそれぞれの測定子306F及び306Rを接触させる位置を決定する。測定子306F及び306Rを接触させる位置としては、左レンズと右レンズでコバ位置が相違する点であれば1点でも良いが、左レンズと右レンズとでレンズ厚の違いが現れやすい点が好ましい。図10(a)は右レンズが選択された場合である。左レンズと右レンズとでレンズ厚の違いが現れやすい点として、光学中心OCRからの半径が最小となる動径角θb1の点Pb1と、光学中心OCRからの半径が最大となる動径角θb2の点Pb2と、の何れか一方(又は両方)を使用する。光学中心OCRは、レイアウトデータによって定められる位置であり、これは実際のレンズの光学中心と略一致する。点Pb1及び点Pb2は、コバ位置からやや内側(例えば、0.5mm)の点として定められる。例えば、制御ユニット50は、測定子306F及び306Rを点Pb1のレンズ前屈折面及びレンズ後屈折面に接触させ、それぞれの位置を得る。それぞれのコバ位置から点Pb1のレンズ厚が得られる。そして、制御ユニット50は、二度摺り前の未加工レンズの測定時に得られたレンズ前屈折面及びレンズ後屈折面のコバ位置をメモリ51から呼び出し、これと二度摺り加工モードでのコバ厚(点Pb1のコバ厚)と比較し、両者が略一致していれば、レンズLEは右レンズであると判定する。
【0052】
一方、レンズチャック軸に保持されたレンズLEが左レンズの場合には、図10(b)のように、左レンズの光学中心OCLから点Pb1までの距離が右レンズとは異なるため、コバ厚も異なる。したがって、前記の比較でコバ厚の差が所定の許容量を超えているときは、レンズチャック軸に保持されたレンズLEは左レンズであると判定され、ディスプレイ60によって警告される。点Pb2が使用される場合も同様な判定が行われる。点Pb1及び点Pb2の両方を使えば、左右レンズの判定の精度が向上する。
【0053】
以上のような左右確認においては、レンズ外径検知ユニット500とレンズコバ位置検知ユニット300F,300Rの何れか一方を利用することでも良いが、両方を組み合わせて利用すると、より左右確認の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】眼鏡レンズ周縁加工装置の概略構成図である。
図2】レンズコバ位置検知ユニットの概略構成図である。
図3】レンズ外径検知ユニットの概略構成図である。
図4】レンズ外径検知ユニットによるレンズ外径検知の説明図である。
図5】眼鏡レンズ加工装置の制御ブロック図である。
図6】レンズ外径の検知結果を利用した左右確認の説明図である。
図7】レンズ屈折面形状から光学中心を求める場合の説明図である。
図8】レンズ外径検知ユニットにより検知された加工済みレンズの外径軌跡の説明図である。
図9】二度摺りモードにおいて、レンズコバ位置検知ユニットを利用する方法の説明図である。
図10】二度摺りモードにおいて、レンズコバ位置検知ユニットを利用する別の方法の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
50 制御ユニット
51 メモリ
60 ディスプレイ
61 スイッチ
62a,62b,62c 入力欄
66 スイッチ
102L,102R レンズチャック軸
168 砥石群
300F,300R レンズコバ位置検知ユニット
306F,306R 測定子
500 レンズ外径検知ユニット
520 測定子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10