(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、X線CT装置を、生体情報検出装置と併用する場合、静電気による影響は
より深刻なものとなる。
【0008】
そもそも、X線はその特性として照射対象に帯電する静電気を除去する性質がある。
【0009】
そのため、寝台、検査台等被検体を載置する場所や被検体そのものが静電気を帯びてい
る場合に、X線照射と同時にX線の照射範囲内の静電気が除電される現象が起こり得る。
【0010】
図7はX線照射による生体情報検出装置への影響を説明する図である。
【0011】
本説明では生体情報検出装置として、被検体Pに電極152を取り付ける心電計151
を使用する。
【0012】
当該電極が取り付けられた範囲内においてX線を照射する場合は、当該被検体Pもしくは
電極152に、急激な電位の変化が生じる。
【0013】
このとき、心電計151はかかる急激な電位変化の影響を受け、誤動作、誤信号の取り
込み、生体情報等の誤認識を起こすことがある。
【0014】
特に、
図7に示すように電極152がX線照射範囲の境目にある場合は、X線照射時の電
極の電位差が激しくなるため、かかる現象は生じ易い。
【0015】
また、心電計151が、当該電極152を例えば粘着テープなどで貼り付け被検体Pに
固定する方式を用いている装置の場合において、貼り付け位置の微調整のために一度貼り
付けた後に再度張りつける等する場合は、当該電極への抵抗が増し、微弱な静電気であっ
ても静電気の影響による生体情報取得の不具合が生じることがある。
【0016】
さらに、生体情報を取得し、この情報を含む信号に同期してX線照射を行う方法を用い
る場合は、かかる信号の誤認識により投影データ全体が不正確なものとなる可能性がある
。
【0017】
この場合、再度のX線CT装置でのX線照射が必要となり、被検体Pに対し無用の被爆を強
いる結果となる。
【0018】
また、検出器の多列化が進んだことで、従来のシングルスライスによるX線CT装置と比
較しX線を広範囲に照射する場合が増えているため、よりX線による静電気除去に伴う電位
変化が大きくなり、上記問題が生じ易くなっている。
【0019】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、被検体及
び被検体を載置する天板の除電を行い、X線照射時の静電気による影響を抑制することが
可能なX線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記問題を解決するために、実施形態のX線CT装置は、
被検体にX線を照射するX線管と、前記被検体を透過した前記X線を検出する検出器と、前記被検体の生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記被検体を載置する天板を備える寝台と、前記天板に設置された患者固定具と、を備え、前記患者固定具の頭部周辺部は、導電性を有する素材により形成され、前記患者固定具の頭部周辺部は、電位の基準点に接地されていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において
は、ほぼ同一な機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は
必要な場合にのみ行う。
【0023】
図1は、実施の形態に係るX線CT装置100の構成を示すブロック図である。
【0024】
このX線CT装置100は、被検体Pが載置される寝台110と、X線を発生させ被検体P
にX線を照射するX線発生部120と、被検体Pを透過したX線の検出により投影データを
生成する投影データ生成部130と、これらX線発生部120及び投影データ生成部13
0を備える架台140と、被検体Pの所定器官の生体情報を検出する生体情報検出装置1
50と、架台140の投影データ生成部130により生成された投影データから画像デー
タを生成する画像データ生成部160と、を備えている。
【0025】
また、X線CT装置100は、画像データ生成部160で生成された画像データを表示す
る表示部170を備えている。
【0026】
さらに、X線CT装置100は、種々のコマンドの入力等を行なう操作部180と、寝台
110、架台140、画像データ生成部160を統括して制御するシステム制御部190
とを備えている。
【0027】
寝台110は、被検体Pが載置される天板111と、天板111を長手方向及び上下方
向へ駆動する天板駆動部112と、天板111を囲う寝台縁部114とを有し、また、寝
台110は詳細を後述する除電手段を備えている。
【0028】
天板駆動部112は、X線照射の際に、被検体Pが載置された天板111をX線照射位置
へ移動する。
【0029】
X線発生部120は、X線を発生させるX線管122と、システム制御部190から供給
されるX線照射条件に基づいて電圧を発生させ、X線を照射する高電圧発生器123とを
備えている。
【0030】
X線管122は、被検体Pを中心とし回転しながらX線を照射する。
【0031】
なお、X線の照射は、生体情報検出装置150から取得される生体情報データと同期し
て行ってもよい。
【0032】
投影データ生成部130は、X線を検出するX線検出器131と、X線検出器131で検
出された検出信号を収集して投影データを生成するデータ収集部132と、データ収集部
132で生成された投影データを画像データ生成部160へ出力するための送受信部を有
するデータ伝送部133と、を備えている。
【0033】
X線検出器131は、多数のX線検出素子を有し、X線管122に対向して配置される。
【0034】
そして、X線検出器131は、X線管122からの照射により被検体Pを透過したX線を
検出して電気信号に変換し、変換した信号を増幅してデータ収集部132に出力する。
【0035】
データ収集部132は、アナログ/デジタル変換回路等を有する電子回路基板を備え、
X線検出器131の外周に配置される。
【0036】
そして、X線検出器131から出力される信号をデジタル信号に変換し、その変換した
デジタル信号を回転フレーム142の所定の角度回転毎に収集してビュー単位の投影デー
タを生成する。
【0037】
データ伝送部133は、例えば光通信手段により送受信するための送信部及び受信部を
有し、送信部が回転フレーム142に配置され、受信部が支持台144に配置されている
。
【0038】
そして、送信部がデータ収集部132からのX線投影データを受信部に伝送し、受信部
が送信部から伝送された投影データを画像データ生成部160に出力する。
【0039】
架台140は、寝台110の近傍に配置され、寝台110の天板移動により被検体Pが
送り込まれる円筒状の開口部141と、X線発生部120及び投影データ生成部130と
、X線管122、高電圧発生器123、X線検出器131、データ収集部132、及びデー
タ伝送部133の送信部を支持する回転フレーム142と、回転フレーム142を回転駆
動する回転駆動部143と、回転フレーム142を回転可能に支持する支持台144とを
備えている。 生体情報検出装置150は、被検体Pが発する信号を読み取るセンサと、
センサにより検出された信号を増幅し、デジタル信号に変換する信号処理部を有する。
【0040】
センサは、例えば電極を用い、天板111に載置された被検体Pに複数取り付け、被検
体Pの信号を得る。
【0041】
そして、被検体Pから得られた信号は、信号処理部にて増幅・変換され、生体情報デー
タとして画像データ生成部160に出力される。
【0042】
なお、生体情報検出装置150としては、例えば、心拍動の時間変化を記録し、心電デ
ータを出力する心電計や、呼吸の時間変化を記録し、呼吸データを出力する呼吸センサを
用いることができる。
【0043】
画像データ生成部160は、架台140のデータ伝送部133から出力される投影デー
タ及び生体情報検出装置150から出力される生体情報データを保存する記憶部161と
、この記憶部161に保存された複数ビューの投影データに基づき画像データを生成する
再構成部162を備える。
【0044】
記憶部161は、X線照射の開始とともに、生体情報検出装置150が刻々と出力する
生体情報データを、例えばビュー単位で投影データと関連付け、時系列的に保存する。
【0045】
また、画像データ生成部160は、生成した画像データを表示部170に出力する。
【0046】
表示部170はCRTや液晶パネル等を備え、画像データ生成部160から出力された
画像データを表示する。
【0047】
また、表示部170は、操作部180からの入力により画像データ上に設定された関心
領域を表示する。
【0048】
操作部180は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力
デバイスや表示パネル、さらには各種スイッチなどを備えたインターラクティブなインタ
ーフェースであり、被検体Pを識別するIDや氏名等の被検体P情報の入力を行う。
【0049】
システム制御部190は、CPUと記憶回路を備え、操作部180からの入力情報を一
旦記憶した後、これらの入力情報に基づいて、投影データの生成、画像データの生成と表
示等に関する制御などシステム全体の制御を行う。
【0050】
次に、本願発明の寝台110に設けられた除電手段について説明する。
【0051】
(実施例1)
図2は実施の形態に係る実施例1を説明する図である。
【0052】
寝台110上に設置された天板111は、X線を遮断せず、かつ導電性を有する素材に
よって形成されている。
【0053】
当該天板111は、天板111にX線を遮断しない素材を用いることにより、X線照射時
に被検体Pを透過するX線照射量が低減されることを防止し、X線が低減されることによる
検出器によるX線量検知誤差を抑えることができる。
【0054】
加えて、当該天板111は、天板111に導電性を有する素材を用い、当該導電性を有
する天板111を、例えば検査室の床等、電位の基準点に接地することで、除電効果を有
することができる。
【0055】
そのため、X線照射環境に影響を与えることなく、かつ除電効果を有することができる
。
【0056】
X線を遮断せず、かつ導電性を有する素材としては、天板を構成する素材としてすでに
一般的に使用されているカーボン等が挙げられる。
【0057】
被検体Pは、X線管122によるX線照射が行われる直前に、天板111上に載置される
。
【0058】
そのため、被検体PはX線の照射がなされる前に必ず除電効果のある天板111に触れる
こととなる。
【0059】
よって、かかる本実施例の構成により、当該天板111は、天板111、及び被検体P
が天板111上に載置される以前に被検体Pが帯びていた静電気を除電することができる
。
【0060】
なお、本実施例の構成においては、天板111及び被検体Pの除電を、天板111をカ
ーボン等により形成すること及び基準点に接地することにより達成している。
【0061】
また、X線照射時に生体情報検出装置150を用いて生体情報データを得る場合は、当
該天板111により、当該生体情報データに静電気を原因とするノイズが乗ることを防ぐ
ことができ、誤差の少ないデータを得ることができる。
【0062】
加えて、X線照射を生体情報と同期させて行う場合は、上記ノイズを防ぐことにより投
影データ全体の正確性を保つことができる。
【0063】
(実施例2)
実施例1では、天板111表面全体がカーボン等のX線を遮断せず、かつ導電性のある
素材によって形成されているが、実施例2では当該天板111を囲う寝台縁部114が導
電性のある素材によって形成されている。
【0065】
実施例2では、寝台縁部114が、導電性のある素材によって形成されている。
【0066】
X線照射を行う場合、被検体Pは天板111上に自らもしくは医師等により載置される。
【0067】
天板111は所定の高さを有するため、被検体Pが一定以上成長している場合は載置さ
れる際に、天板111を囲う寝台縁部114に接触する可能性が高くなる。
【0068】
無論、当該被検体Pが接触する寝台縁部114の接触部分は、被検体Pの身長、体格によ
り異なるが、寝台縁部114は天板111上に載る際に、もっとも触れる可能性が高い場
所である。
【0069】
そのため、当該実施例2の寝台縁部114は、当該接触部分のみをカーボン等の導電性
がある素材で形成するものである。
【0070】
また、必ず被検体Pが接触するよう所定の幅を設け、当該素材で形成される範囲を決定
してもよい。
【0071】
本実施例2においては、寝台縁部114を必ずしもX線を遮断しない材料で作成する必
要はない。
【0072】
寝台縁部114に照射されるX線は、投影データの生成に影響を与えないためである。
【0073】
なお、当該実施例2も実施例1と同様に検査室の床等、電位の基準点に接地されている
。
【0074】
そのため、除電効果を得ることができる。
【0075】
(実施例3)
図4は実施例3を説明する図である。
【0076】
実施例3では天板111に設置された小児用固定具115の頭部周辺部のみが導電性の
ある素材によって形成されている。
【0077】
乳幼児等、体格の小さい被検体Pを対象としてX線照射を行う場合、通常、かかる被検体
Pは、天板111上に設置された小児用固定具115に載置される。
【0078】
この時、被検体Pは医師等により抱きかかえられて載置されるため、寝台縁部114に
触れる可能性が低くなる。
【0079】
一方、体格の小さい被検体Pが医師等に抱きかかえられ載置される際、頭部を設置位置
の基準として載置する場合が多い。
【0080】
この場合、被検体Pは小児用固定具115の特に頭部周辺部に触れる可能性が高くなる
。
【0081】
そのため、本実施例3では当該頭部周辺部を導電性のある素材にて作成する。
【0082】
なお、当該実施例3の頭部周辺部も他の実施例と同様に検査室の床等、電位の基準点に
接地されており、除電効果を有する。
【0083】
本実施例3の構成は上記実施例1または実施例2の効果に加え、実施例1及び実施例2
と比較し、より天板111形成に用いる、導電性のある素材の使用量を削減することがで
きる。
【0084】
そのため、設計コストの面からも優れた特徴を有す。
【0085】
また、被検体Pが載置された後も触れ続ける頭部周辺部を導電性のある素材によって作
成することにより、例えば被検体Pが載置された後に、被検体P自ら、若しくは医師による
位置あわせなどのために被検体Pが動いた際の摩擦による静電気の発生等の影響を防ぐこ
ともできる。
【0086】
なお、本実施例では上記の実施例1に係る天板111の全体部分、実施例2に係る寝台
縁部114、実施例3に係る小児用固定具115の頭部周辺部のみを例に説明をしたが、
被検体PがX線照射時に触れる部分であればよく、同様の効果を得ることができる。
【0087】
(実施例4)
図5は本実施の形態に係る実施例4を説明する寝台110の側面図であり、
図6は実施
例4を説明する寝台110の平面図である。
【0088】
本実施例では寝台110の天板111上に自己放電が可能な除電マット113を設ける
ことにより、除電を行う点、特徴を有する。
【0089】
本実施例では除電効果のある除電マット113が天板111の内側に配置される。
【0090】
そのため、実施例3と同様、例えば乳幼児等の体格の小さい被検体Pの除電や、天板1
11上に被検体Pが載置された後の摩擦による静電気の影響を防ぐことができる。
【0091】
加えて、天板111、寝台縁部114、小児用固定部115の頭部周辺部を導電性のあ
る素材で作成する必要がなく、より除電手段を設置するための費用を削減することができ
る。
【0092】
自己放電が可能な除電マット113としては、例えば静電気の発生を防止できる素材で
作られたマット、もしくは、微小放電を起こす素材からなるマット等が挙げられる。
【0093】
(その他)
上記実施の形態による除電効果を高めるために、検査着等をカーボン等で作成し、これ
を被検体Pに着せてもよい。
【0094】
これにより、より確実な被検体Pの除電を行うことができる。
【0095】
同様に、実施の形態による除電効果を高めるために、X線照射を行う前に、被検体Pに対
しミストやイオン化された空気等を発射し、除電効果を高めてもよい。
【0096】
さらに、検査開始前に被検体Pに対し、微弱なX線を照射することで被検体Pを除電し、
除電効果を高めてもよい。