(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本装置の光学系及び制御系の概略構成図である。なお、以下の光学系は、図示無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント用移動機構により、被検者眼Eに対して三次元的に移動されてもよい。また、手持ちタイプ(ハンディタイプ)であってもよい。
【0011】
測定光学系10は、眼Eの瞳孔中心部を介して眼Eの眼底Efにスポット状の測定指標を投影する投影光学系10aと、眼底Efから反射された眼底反射光を瞳孔周辺部を介してリング状に取り出し、二次元撮像素子にリング状の眼底反射像を撮像させる受光光学系10bと、から構成される。
【0012】
投影光学系10aは、測定光学系10の光軸L1上に配置された,測定光源11,リレーレンズ12,ホールミラー13,及び対物レンズ14を含む。光源11は、正視眼の眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。また、ホールミラー13の開口は、眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。
【0013】
受光光学系10bは、投影光学系10aの対物レンズ14,ホールミラー13が共用され、ホールミラー13の反射方向の光軸L1上に配置された,リレーレンズ16及び全反射ミラー17と、全反射ミラー17の反射方向の光軸L1上に配置された受光絞り18,コリメータレンズ19,リングレンズ20,及びエリアCCD等からなる二次元撮像素子22を含む。受光絞り18及び撮像素子22は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成され、眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。撮像素子22からの出力は、メモリ75を介して制御部70に入力される。
【0014】
なお、測定光学系10は上記のものに限らず、瞳孔周辺部から眼底Efにリング状の測定指標を投影し、瞳孔中心部から眼底反射光を取り出し、二次元撮像素子にリング状の眼底反射像を受光させる構成等、周知のものが使用できる。
【0015】
なお、測定光学系10は上記のものに限らず、被検者眼眼底に向けて測定光を投光する投光光学系と,測定光による眼底反射光を二次元受光素子によって二次元パターン像として受光する受光光学系と,を有する測定光学系であればよい。例えば、眼屈折力測定光学系は、シャックハルトマンセンサーを備えた構成であってもよい。
【0016】
対物レンズ14とホールミラー13との間には、固視標呈示光学系30からの固視標光束を眼Eに導き、被検眼Eの前眼部からの反射光を観察光学系50に導くダイクロイックミラー29が配置されている。ダイクロイックミラー29は、測定光学系10に用いられる測定光束の波長を透過する。
【0017】
固視標呈示光学系30は、被検者眼を固視させるための固視光源を有する固視光学系である。固視標呈示光学系30は、固視標呈示用可視光源31,固視標を持つ固視標板32,投光レンズ33,ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、を含む。光源31及び固視標板32は、光軸L2方向に移動されることにより、被検眼Eの雲霧を行う。
【0018】
眼Eの前眼部の前方には、眼Eの角膜Ecにリング指標を投影するための近赤外光を発するリング指標投影光学系45と、眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影することにより被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系46が観察光軸に対して左右対称に配置されている。なお、リング投影光学系45は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。また、角膜形状測定用の指標としても利用できる。
【0019】
観察光学系(撮像光学系)50は、固視標呈示光学系30の対物レンズ14、ダイクロイックミラー29が共用され、ハーフミラー35、撮像レンズ51、及び二次元撮像素子52を備える。撮像素子52は、被検眼前眼部と略共役な位置に配置された撮像面を持ち、撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これにより、被検眼Eの前眼部像は二次元撮像素子52により撮像され、モニタ7上に表示される。なお、この観察光学系50は被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によりアライメント指標像の位置が検出される。
【0020】
演算制御部70(以下、制御部70)には、撮像素子52、メモリ75、モニタ7、検者によって各種入力操作を行うための操作部90、測定結果、徹照像等を専門のロール用紙に印字出力する小型のプリンタ(例えば、小型のサーマルプリンタ)91が接続されている。なお、印刷用紙の幅は、約58mm程度である。制御部70は、装置全体の制御を行うと共に、眼屈折値の算出や角膜形状の算出等を行う。なお、メモリ75には、撮像素子22に撮像されたリング像を解析することにより眼屈折力を測定する第1モードと、観察光学系50により瞳孔内画像である徹照像を含む撮像画像を撮像する第2モードの演算プログラム等を記憶できる。
【0021】
<第1モード>
以上のような構成を備える装置の測定動作について説明する。まず、被検者の顔を図示なき顔支持ユニットに固定させ、固視標32を固視するよう指示した後、被検眼に対するアライメントを行う。
【0022】
制御部70は、測定開始信号の入力に基づき光源11を点灯させる。光源11から出射された測定光は、リレーレンズ12から対物レンズ14までを介して眼底Efに投影され、眼底Ef上で回転するスポット状の点光源像を形成する。
【0023】
眼底Ef上に形成された点光源像の光は、反射・散乱されて被検眼Eを射出し、対物レンズ14によって集光され、ダイクロイックミラー29から全反射ミラー17までを介して受光絞り18の開口上で再び集光され、コリメータレンズ19にて略平行光束(正視眼の場合)とされ、リングレンズ20によってリング状光束として取り出され、リング像として撮像素子22に受光される。
【0024】
このとき、はじめに眼屈折力の予備測定が行われ、予備測定の結果に基づいて光源31及び固視標板32が光軸L2方向に移動されることにより、被検眼Eに対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。
【0025】
図2は、測定の際に撮像素子22に撮像されたリング像である。撮像素子22からの出力信号は、メモリ75に画像データ(測定画像)として記憶される。その後、制御部70は、メモリ75に記憶された測定画像に基づいて各経線方向にリング像の位置を特定(検出)する。この場合、制御部70は、エッジ検出によりリング像の位置を特定する。なお、リング像の位置の特定は、輝度信号の波形を所定の閾値にて切断し、その切断位置での波形の中間点や、輝度信号の波形のピーク、輝度信号の重心位置などによって求めてもよい。次に、制御部70は、特定されたリング像の像位置に基づいて、最小二乗法等を用いて楕円に近似する。そして、制御部70は、近似した楕円の形状から各経線方向の屈折誤差を求め、これに基づいて被検眼の眼屈折値、S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)の各値を演算し、測定結果をモニタ7に表示する。
【0026】
また、測定光による眼底反射光を受光し、その受光結果に基づいて被検者眼透光体の混濁の有無を判定する。例えば、制御部70は、眼底反射光を二次元受光素子によって二次元パターン像として受光する受光光学系を有する測定光学系の場合、測定光による眼底反射光を受光素子により受光し、受光素子に受光された二次元パターン像に基づいて被検者眼透光体の混濁の有無を判定する。そして、判定結果に応じて第2モードへの切り換えを行う。
【0027】
以下に、混濁の判定及び制御動作について説明していく。まず、制御部70は、リング像の中心座標を基準に、360度方向に1度ずつ順に各経線方向のエッジを検出する。
図3は、撮像素子22に撮像されたリング像(左図)とそのリング像の中心からラインL1方向に輝度検出を行い、エッジ検出をするために取得した輝度分布(右図)について説明する図である。
図3(a)は被検眼に混濁のない場合のリング像と輝度分布である。
図3(b)、
図3(c)は、被検眼に混濁がある場合で、混濁によりリング像に欠けやぼけが生じた場合のリング像と輝度分布である。
【0028】
図3(a)のように眼Eに混濁がない場合、欠けやぼけのないリング像(左図)が結像される。そして、ラインL1方向の輝度分布(右図)を取得した場合、高い輝度値が得られる。そして、各経線方向における輝度分布について、全体的に高い輝度値が得られる。また、輝度分布のピーク値に対する半値幅Wが狭くなる。各経線方向においても、全体的に半値幅Wが狭い状態となる。
【0029】
白内障等の病変により眼Eに混濁がある場合、そのリング像には、欠けやぼけが生じる。例えば、
図3(b)に示すように、欠けが生じたリング像(左図)が結像される。そして、ラインL1方向の輝度分布(右図)を取得した場合、輝度値がほとんど上昇しない。したがって、各経線方向における輝度分布について、欠けが生じている領域は、輝度値の上昇がほとんど検出されない。
【0030】
また、
図3(c)に示すように、ぼけが生じたリング像(左図)が結像される。ぼけが生じている場合、ラインL1方向の輝度分布(右図)を取得した際、混濁がないときより低い輝度値が得られる。したがって、各経線方向における輝度分布について、ぼけが生じている領域は、混濁がないときより低い輝度値が得られる。また、半値幅Wが広くなる。したがって、各経線方向について、ぼけが生じている領域は、半値幅Wが広い状態となる。
【0031】
なお、リング像のある領域に欠けが生じる理由は、測定光束が被検眼を通過する際に、白内障の重度の混濁によって光束がほとんどけられてしまい、撮像素子22に光束が集光しないからである。
【0032】
また、リング像にぼけが生じる理由は、測定光束が被検眼を通過する際に、白内障の混濁等によって光束が散乱されてしまい、撮像素子22に結像する際にリング像が広がって結像してしまうからである。
【0033】
これらの特性を利用して、以下の判定では、強度の混濁がある場合のピーク値と混濁がない場合のピーク値とが判別できるように閾値S1が設定され、各輝度分布のピーク値が閾値S1を上回るか否かにより経線方向の混濁の有無が制御部70によって判定される。また、混濁がある場合の半値幅と混濁がない場合の半値幅とが判別できるように閾値S2が設定され、各輝度分布のピーク値が閾値S1を上回るか否かにより経線方向の混濁の有無が制御部70によって判定される。さらに、各経線方向における混濁の有無に基づいて被検眼全体の混濁が制御部70によって判定される。
【0034】
<第2モード>
以上のようにして、混濁ありと判定された場合、制御部70は、観察光学系50により徹照像を観察するための第2モード(徹照像観察モード)への切換信号を発する。
【0035】
なお、モード切換スイッチを設け、制御部70は、徹照像を観察したほうがよいとする表示をモニタ7に表示し、検者にモード切り換えの誘導を促す。そして、第2モードに移行するための所定のモード切換スイッチが選択されると、制御部70は、第1モードから第2モードへとモード切り換えを行う構成としてもよい。
【0036】
より具体的に説明する。モード切換信号が発せられると、制御部70は、リング指標投影光学系45の光源及び作動距離指標投影光学系46の光源を消灯させ、測定光源11を点灯させる。このとき、制御部70は、モード切換信号に基づいて測定光源11の光量を変化させる。また、撮像素子52のゲイン変化させる(後述する)。なお、本実施例の場合、測定光源11は、眼底照明光源を兼ねているが、別途、徹照像撮影用の光源を設けてもよい。
【0037】
光源11より光束が出射され、眼底に投光される。そして、眼底反射光は眼Eの水晶体内を照明した後に、瞳孔から出射される。瞳孔より出射された眼底反射光は、ハーフミラー35により反射され、徹照像(瞳孔内画像)が含まれる撮像画像として撮像素子52により撮像され、モニタ7上に表示される。これにより、白内障や混濁のある部位Kにおいては、暗い影が確認される(
図4参照)。
【0038】
なお、徹照像を撮像する場合、被検眼の角膜頂点と観察光学系50の観察光軸がずれるように装置本体を眼Eに対して相対移動させ、徹照像を撮像するとよりよい。例えば、制御部70は、第2モードに設定された場合、角膜頂点と観察光軸がずれるように図無き駆動手段を制御し、撮像素子52にて徹照像を撮像する。
【0039】
これは、徹照像を撮像しようとすると、徹照像の中央部に測定光源11による角膜輝点が映るために、角膜輝点で混濁が隠れてしまい、検者は、徹照像を観察しづらくなる。また、検者は、混濁部と角膜輝点を間違えてしまう可能性がある。そこで、角膜頂点と撮像光軸をずらすことにより、角膜輝点の輝度は小さくなり、検者は、徹照像が観察しやすくなり、誤認の可能性も低くなる。
【0040】
また、制御部70からの切換信号に基づいて、第2モードに切り換えが行われた場合、眼底照明光源の光量及び撮像素子のゲインの少なくとも一方を制御する。例えば、制御部70は、第2モードへの切換信号が出力されると、眼底照明光源の光量を徹照像撮影に必要な光量に増大させる。この徹照像撮影用の光量レベルは、例えば、通常の眼屈折力測定用の光量よりも増大させた光量である。また、撮像素子のゲインを眼屈折力測定のゲインよりもあげる。これにより、眼屈折力測定時に必要な光量では、輝度値が悪くて見過ごされていた混濁部分を、より明確に観察できる。
【0041】
なお、本実施例においては、眼底照明光源の光量及び撮像素子のゲインの両方を変化させる構成としたがこれに限るものではない。例えば、どちらか一方を変化させる構成でもよい。
【0042】
また、制御部70からの切換信号に基づいて第2モードに切り換えが行われた場合、制御部70は、固視標呈示光学系30の可視光源(固視光源)31の出射光量を眼屈折力測定時の光量よりも所定量減光させる。照明光量を減光させることにより、瞳孔が開いた状態となるため、縮瞳していない状態での撮影となる。そのため、より広い領域の徹照像撮影をすることが可能となり、白内障が水晶体周辺部にある場合等の被検眼においても、その白内障を良好に観察することが可能となる。
【0043】
なお、上記記載においては、照明光量を所定量減光させる構成としたがこれに限るものではない。例えば、固視標呈示用可視光源31を消灯してもよい。可視光源31の光量レベルを検者が変更できるような構成であってもよい。
【0044】
<徹照像の印刷>
そして、操作部90の所定のスイッチが操作されると、観察光学系50により撮像された徹照像を含む撮像画像がメモリ75に記憶される。また、このような撮像画像は、モニタ70やプリンタ91等に出力される。なお、本発明においては、所定のスイッチにより画像の取得が行われるものとしたが、自動的に撮影が行われる構成としてもよい。
【0045】
ここで、プリンタ91等に出力する際に、制御部70は、メモリ75に記憶された撮像画像から徹照像を含む所定範囲の画像を抽出する。制御部70は、撮像画像に基づいて瞳孔によるエッジを検出し、瞳孔部分に対応する画像領域を抽出する。そして、制御部70は、瞳孔の外縁部を含む画像領域を抽出し、抽出された画像を用紙に印刷する。このとき、抽出された画像における瞳孔の外縁部が用紙上の印刷可能範囲に収まるように印刷を行う。また、撮像画像の徹照像がプリント用紙内に収まる且つ徹照像の中心が用紙中心と重なるように位置合わせをする処理を行う。
【0046】
以下に徹照像を出力する際の処理方法について
図5のフローチャートを用いて説明していく。徹照像の撮影が行われ、操作部90に設けられた印刷スイッチが操作されると、出力信号が制御部70に転送され、制御部70は、取得した撮像画像の画像処理を行う。
【0047】
初めに、制御部70は、取得された撮像画像より徹照像の中心座標の検出を行う。制御部70は、撮像画像のX方向(横方向)の中心位置及びY方向(縦方向)の中心位置の走査を行い、輝度分布の取得を行う。
図6は、取得した撮像画像と徹照像の画像中心をラインX方向、ラインY方向に輝度検出を行い取得した輝度分布を示している。
【0048】
そして、X方向の輝度分布によって、徹照像は光量が異なるため、徹照像のエッジ検出をすることができ、さらに徹照像エッジ検出からその中央の位置、すなわち横方向の徹照像中央の座標を得ることができる。また、同様にY方向の輝度分布によって、徹照像は光量が異なるため、徹照像のエッジ検出をすることができ、さらに徹照像エッジ検出からその中央の位置、すなわち縦方向の瞳孔中央の座標を得ることができる。従って、この両者から、徹照像の中心座標を得ることができる。
【0049】
以上のようにして中心座標が検出されると。次いで、中心座標の位置に基づいて、プリンタ91の用紙に印刷する領域を抽出する。
【0050】
制御部70は、徹照像の中心座標を中心とする四角形領域に対応する領域をプリンタ91での印刷領域として抽出する。四角形領域は、中心座標に対して上下左右に等距離離れた位置を一辺とする領域を示している。本実施例において、一辺の設定基準は、プリンタ91による用紙上での印刷可能範囲に収まる範囲(例えば、400ピクセル)としている。例えば、印刷可能範囲が、400×400ピクセルの領域の場合、抽出領域の1辺が400ピクセルであれば、印刷可能な領域にちょうど収まる。
【0051】
制御部70は、徹照像を含んだ四角形領域の抽出が終了すると、プリンタ91に出力を開始する出力信号を出す。プリンタ91は、出力信号を受信すると、抽出した画像データの印刷を開始する。
【0052】
このとき、制御部70は、抽出された画像における瞳孔中心が用紙上の所定の位置に配置されるように印刷を行う。例えば、印刷用紙の水平方向の中心部に徹照像の中心が来るように位置設定を行い、印刷をする。
【0053】
以上のように、徹照像を抽出して印刷することにより、縮小処理をして出力しなくても、印刷用紙上に、徹照像が切れてしまうことなく出力することが可能となる。そのため、徹照像の混濁が判別しやすい大きさで観察することができるようになる。
【0054】
また、徹照像の中心を検出し、徹照像中心座標に基づいて、画像の抽出を行っているため、観察光学系50の観察光軸と角膜輝点がずらされた場合であっても、徹照像が常時、中心に位置するように出力されることになり、徹照像が切れて印刷されることがなくなる。そのため、徹照像全体を良好に観察することが可能となる(
図7参照)。
【0055】
なお、上記構成においては、画像の抽出処理を行い、抽出した領域を印刷する構成としたがこれに限るものではない。例えば、検者によって、抽出領域を印刷するか、撮像画像全体を印刷するか任意に選択できる構成としてもよい。
【0056】
なお、本実施例において、制御部70は、印刷用紙の水平方向の中心部に徹照像の中心が来るように位置設定を行い、印刷をおこなったがこれに限るものではない。例えば、用紙上の印刷可能範囲と、抽出された画像の各辺とが略一致するように印刷を行えばよい。すなわち、徹照像が印刷用紙の印刷可能領域内に抽出領域が収まるようにして、印刷する。
【0057】
なお、本実施例においては、プリンタ91での印刷時に徹照像の中心部を印刷用紙の中心に印刷する構成としたが、制御部70は、抽出された画像を画面上に表示し、抽出された画像における瞳孔の外縁部が用紙上の印刷可能範囲に収まるように表示してもよい。この場合、制御部70は、徹照像撮影後、モニタ7に徹照像を表示する際に、モニタ7の中心に徹照像の中心を移動させる。例えば、角膜輝点を徹照像の中心からずらす場合に、装置を撮影光軸からわずかに移動させ、撮影を行う。この場合、撮影される徹照像は、光軸からずれているために、モニタ7の中心からずれて表示される。このとき、徹照像の中心を検出し、徹照像をモニタ7の中心に移動させることで、徹照像を拡大して観察しても、画像がモニタ7から切れてしまう可能性が低くなる。
【0058】
また、瞳孔が非常に大きい眼Eの場合、徹照像領域が当初の抽出領域より広くなり、徹照像全体が印字されない可能性がある。そこで、制御部70は、前眼部画像に基づいて眼Eの瞳孔径を画像処理により算出する。そして、制御部70は、算出された瞳孔径が、所定の瞳孔径を上回るような場合、画像抽出領域を大きくし、抽出された領域が印刷可能範囲に収まるように縮小して印刷するようにしてもよい。この場合、所定の瞳孔径は、徹照像領域が所定の抽出領域より広い眼Eを判別するために設定される。
【0059】
また、モニタ7の徹照像の表示方法は、検者によって任意に設定できる構成としてもよく、例えば、撮像画像全体を表示するか、抽出領域のみを表示するか設定することができ、また、拡大縮小等の画像処理を行い表示できる構成としてもよい。
【0060】
なお、本実施例においては、リング像の判定結果に基づいて、第2モードへのモード切り換えを行ったがこれに限るものではない。例えば、眼屈折力を測定していると同時に取得されている徹照像に基づいて、判定を行い、モード切り換えを行うような構成としてもかまわない。なお、眼屈折力測定時の徹照像は、光源1の光量が低く設定されるため観察像には不向きだが、ある程度混濁の有無の判別は可能である。したがって、例えば、瞳孔内において遮光領域(光量レベルが低い部分)の面積を画像処理により算出し、算出された面積が許容範囲内か否かにより混濁の有無が判定される。
【0061】
なお、本実施例において、徹照像とともに徹照像の大きさを推測できるスケール等を表示してもよい。徹照像とともにスケールを表示する場合、画像の拡大/縮小が行われた際には、制御部70は、変更された倍率に応じてスケールの大きさ又はスケールの寸法値を変更させる。
【0062】
なお、本実施例において、モードが切り換わった際に、その旨をモニタ7に表示するような構成としてもよい。
【0063】
なお、本実施例において、モード切り換えが行われた場合に、1つのスイッチの機能がモードに応じて切り換わるような構成としてもよい。例えば、第1モードでは、測定開始のスイッチであったものが、第2モードに切り換わると、撮影開始のスイッチへと切り換わる。
【0064】
なお、上記説明においては、被検眼の検査を行うための検査手段として、眼屈折力測定装置を例にとって説明したが、これに限るものではない。すなわち、眼底に測定光束を投光し、その反射光を受光して被検眼の検査を行う検査光学系を備える眼科装置において、眼底反射光により瞳孔内を照明することにより、瞳孔内画像(いわゆる徹照像)を撮像できる構成を備えるものであれば、本発明の適用が可能である。例えば、光干渉光学系により眼軸長を測定する眼軸長測定装置が考えられる。
【0065】
干渉光学系は、例えば、低コヒーレント光を出射する光源と、光源から出射された光を分割するビームスプリッタと、分割された光の一方を眼底に向けて投光する投光光学系、眼底で反射された一方の光と他方の光を合成することで発生する干渉光(測定光)を受光素子に導く受光光学系、一方の光と他方の光の光路差を調整するために光軸方向に移動可能に配置された光学部材と、を有する。そして、干渉光学系に接続された制御部は、受光素子から出力される干渉信号に基づいて眼軸長を測定する。詳しい構成については、例えば、特表2002−531205号公報に記載されている
制御部は、例えば、眼軸長を測定する間に取得された干渉信号のS/N比(SNR:Signal to Noise ratio)に基づいて混濁の有無を判定する。S/N比は、受光素子から出力される干渉信号に対するノイズ(雑音)の比である。S/N比は、数値が大きいほど雑音が少なく高品質の信号が得られることを示す。制御部は、S/N比が所定値より小さい場合、眼軸長を測定するための第1モードから徹照像を観察するための第2モードへの切換信号を発する。
【0066】
<印刷方法>
プリンタの印刷において、瞳孔部を除く部位については、黒色に印刷されるため、印刷が完了するまでに時間がかかる。制御部70は、観察光学系50により撮像された撮像画像の輝度値を上昇させた印刷用画像を取得し、プリンタ91を制御して印刷用画像を印刷する。画像データの輝度値を調整した後に印刷すると、印刷時間を短縮できるため、スムーズに撮影を完了できる。このため、撮影画像の輝度値調整を行い、黒色に印刷する領域を減少させることによって、印刷時にかかる時間を短縮させる。
【0067】
プリンタ91として、サーマルプリンタを用いた場合を例に挙げて説明する。サーマルプリンタは、印字用紙としての感熱用紙を黒色化させる印字ヘッドを有し、印刷用紙上の縦方向と横方向に関して印字ヘッドを移動させ印字動作を行う。
【0068】
サーマルプリンタの一種である感熱式プリンタは、専用紙(感熱紙)に熱した印字ヘッドを当てて印刷するものである。印刷用紙に画像を印刷するには、制御部70は、印字ヘッドに電流を印加し、印字ヘッドを発熱させる。制御部70は、熱した印字ヘッドを専用紙(感熱紙)に当てて感熱紙を黒色に変色させる。制御部70は、一定の領域内の画素数を増減させてドットパターンを形成することによって色の濃淡を表現する。一定の領域内において、変色させる際の画素数及び画素位置が調整され、複数の画素にて所定のパターンが形成される。
【0069】
例えば、ドットパターンは、256階調を表現するために、256階調の階調毎に設定される。例えば、モニタ7上で100階調の場合は、感熱紙上で8×8(64)画素の領域の内、24画素が黒色に変色される。モニタ7上で200階調の場合は、感熱紙上で8×8(64)画素の領域の内、48画素が黒色に変色される。
【0070】
感熱紙上に印刷した場合の色をより濃くする(黒色化する)場合には、一定の領域内におけて、黒く変色させる画素数を多くし、黒色を表現するドットパターンを形成する。また、感熱紙上に印刷した場合の色をより薄くする(白色化する)場合には、一定の領域内におけて、黒く変色させる画素数を少なくし、白色を表現するドットパターンを形成する。すなわち、白色を表現する場合には、画素を変色させる必要はない。以上のようにして、色の淡濃の調整が行われる。
【0071】
このように、モニタ7上でより濃い黒色であった領域を感熱紙上で表現する場合には、一定の領域内において黒色に変色される画素数を多くする必要があるため、印刷に時間がかかる。
【0072】
以下、輝度値調整を行うことによって、印刷の時間を短縮する手段について説明する。例えば、印刷用紙に徹照像の中心座標を中心とする四角形領域に対応する領域を抽出して、印刷する場合を例に挙げて説明する。
【0073】
制御部70は、徹照像を含んだ四角形領域の抽出が終了すると、抽出した画像データをプリンタ91に出力するための出力信号を出す。出力信号が出力されると、制御部70は、画像データの輝度値調整を行う。
【0074】
制御部70は、撮像画像を生成する画素の輝度値を用いて、撮像画像を、瞳孔外縁部より内側の第1画像領域P1と瞳孔外縁部より外側の第2画像領域P2とに区別し、第1画像領域P1を含み、第2画像領域P2の輝度値を上昇させた印刷用画像を画像処理により取得する(
図9参照)。
【0075】
本実施形態においては、撮影画像の各輝度値と所定の閾値とを比較して、第1画像領域P1と第2画像領域P2を区別する。初めに、制御部70は、取得された画像データより徹照像の輝度分布の検出を行う。制御部70は、撮像画像のX方向(横方向)の走査を行い、輝度分布の取得を行う。もちろん、Y方向(縦方向)の走査を行って輝度分布の取得を行ってもよい。
図8は、抽出した画像データをラインX方向に走査し、取得した走査線SLの輝度分布を示している。
【0076】
輝度分布を取得した後、制御部70は、走査線SLの領域において、輝度値調整を行うか否かの判定を行う。判定は、例えば、走査線SLの画素毎又は所定の画素範囲毎に輝度値が所定の閾値Bよりも高いか否かを判定することによって行われる。
【0077】
被検眼の虹彩部分は、眼底反射光を遮光するため、暗い像となって撮像素子に撮像される。白内障等による混濁部分においては、眼底反射光が混濁部分を透過する際に、混濁によって眼底反射光が散乱される。眼底反射光は減光され、瞳孔内における他の領域よりも暗い像となって撮像素子に撮像される。瞳孔内部の混濁部分は、瞳孔内部の混濁のない領域と比較すると輝度値が低く、瞳孔部以外の領域と比較すると輝度値が高くなる。
【0078】
所定の閾値Bは、例えば、白内障等による混濁がある場合の輝度値より小さく、瞳孔部より外側領域の輝度値より大きくなるように設定される。このように閾値Bを設定することによって、白内障等によって混濁により生じた影が、瞳孔部でない領域として誤判定されず、瞳孔部以外の領域が分類される。
【0079】
なお、上記のように閾値を設定することによって、瞳孔部による輝度値の立ち上がり部分は、輝度分布上のおいて、瞳孔内部の輝度値よりも低くなるため、瞳孔内部よりも濃く印刷される。これによって、輝度値調整後に印刷した場合においても、瞳孔部の外縁部が印刷される。なお、閾値Sは、予め、模型眼等を用いて、実験やシミュレーションを行うことによって算出される。
【0080】
制御部70は、走査線SLの各画素の輝度値が所定の閾値Bよりも高いか否かを判定する。制御部70は、画素の輝度値が所定の閾値Bよりも高いと判定された場合、輝度値調整を行わない。また、制御部70は、画素の輝度値が所定の閾値Bよりも低いと判定された場合、輝度値調整を行う。
【0081】
本実施形態において、モニタ7上で表示される画像は、明るさのデータを256階調にて表示されている。そして、輝度値の調整は、256階調内における階調(輝度値)を変更することによって行われる。輝度値は0〜255の間でパラメータの設定され、255のパラメータに近いほど色が淡くなり、0のパラメータに近いほど濃くなる。
【0082】
本実施形態において、画像の画素の輝度値が所定の閾値Bよりも低いと判定された場合、制御部70は、所定の各領域において、所定の閾値Bより低い領域に対して、輝度値を上昇させることにより、画像を白色化させる。例えば、輝度値のパラメータを255に調整する。これによって、瞳孔部以外の領域においては、輝度値が白色化され、黒色から白色へと変更される。
【0083】
各走査線においても同様にして、輝度分布を取得し、全ての走査線上での輝度値調整を行う。これにより、
図9に示すように、瞳孔部を除く領域Pが黒色(濃い色)から白色(淡い色)へと輝度値の調整が行われる。そして、徹照像画像上において、全ての走査線上での輝度値調整が完了すると、制御部70は、プリンタ91に輝度値調整後の画像データを出力し、印刷を開始する。印刷を開始する際に、制御部70は、256階調にて表現されている画像をドットパターンにて表現するために、画像データの変換を行う。このとき、輝度値調整によって、白色化された領域に関しては、印刷時間を短縮することが可能となる(
図10参照)。
【0084】
以上のように、印刷前に輝度値調整を行うことによって、瞳孔部外等の観察に必要とならない領域の印刷を無くし、印刷時間の短縮をすることが可能となり、撮影をスムーズの行うことができるとともに、検者のストレス等を軽減に繋がる。また、印刷時に印字ヘッドにかかる負担が少なくなるため、故障の確率を低減することが可能となる。
【0085】
なお、印刷の時間を短縮するための方法について、
図7に示すような徹照像の中心座標を中心とする四角形領域に対応する領域を印刷領域として抽出したものを例に挙げて、輝度値調整について説明をしたがこれに限定されない。撮像画像から徹照像を含む所定範囲の画像を抽出したものに本発明は適用可能である。例えば、瞳孔の外縁部より内側の領域を抽出した画像領域でもよい。また、抽出したもの画像でなくても、撮像画像全体を印刷する際にも本発明は適用可能である。
【0086】
なお、本実施形態においては、サーマルプリンタを例に挙げたがこれに限定されない。例えば、インクリボン等を用いて印刷を行うインジェクトプリンタに対しても適用可能である。この場合、輝度値調整によって徹照像の黒色の部分を少なくすることが可能となるため、インクを塗布して黒色を印刷する必要のある領域が少なくなり、印刷時間を短縮できる。また、インクの消費も少なくすることができる。
【0087】
なお、本実施形態には、瞳孔外の画像領域に対して、輝度値調整を行い、印刷時間を短縮する構成としたがこれに限定されない。例えば、さらに、第1画像領域として区別された画像領域の輝度を上昇させるようにしてもよい。この場合、瞳孔内の画像の画素毎に階調のパラメータに対して、一定のパラメータを上げるようにして、瞳孔内の画像を明るくしてもよい。また、パラメータ変更用のテーブルを用いて、所定のパラメータのものをあるパラメータ(例えば、30〜40のものは60、50〜60のものは75等)へ変更するようにしてもよい。このように瞳孔内の画像を明るくすることによって、印刷時間を短縮することが可能となる。もちろん、瞳孔内の画像と瞳孔外の画像の両方の輝度値調整を行うと、印刷時間の短縮に、より効果的である。なお、瞳孔内の画像の輝度値調整においては、白内障等による混濁の影が識別できる程度の輝度値調整を行う必要がある。例えば、予め、実験やシミュレーション等によって、混濁の影がわからなくなるパラメータを算出しておき、そのパラメータ以上とならないように輝度値調整を行う。
【0088】
なお、本実施形態においては、輝度値調整を行い黒色の領域を白色とする構成としたがこれに限定されない。白色化させる構成であればよい。例えば、黒色領域の輝度値を一定量上昇させることによって黒色領域を灰色とする調整を行っても印刷時の時間を短縮することは可能である。制御部70は、第1画像領域P1より第2画像領域P2の輝度の増加量を大きくする。瞳孔部領域と瞳孔部以外の領域が識別できるように、瞳孔部内の領域の色と瞳孔部以外の領域の色のコントラストを調整する必要がある。
【0089】
第1画像領域P1を含み、第2画像領域P2の輝度値を上昇させた印刷用画像を画像処理により取得する方法としては、上記方法に限定されない。例えば、撮像画像における瞳孔エッジを検出することにより第1画像領域P1と第2画像領域P2を区別し、第1画像領域を撮像画像から抽出することにより印刷用画像を取得してもよい。