【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「LED照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光デバイスは、前記透光性部材の中に前記発光素子から出射された光の波長を変換する波長変換材料を略均一に含んでいる波長変換部材で、前記発光素子の全周囲を覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光デバイス。
【背景技術】
【0002】
発光デバイス、特に全方位出射型発光デバイスでは、その発光効率を向上させることが肝要である。発光デバイスの発光効率向上策としては、発光層で発光する際の内部量子効率の向上と同様、発光した光を外部に取り出す際の光取出し効率の向上も重要である。
【0003】
かかる問題に対処した従来技術として、特許文献1の発光デバイスがある。
特許文献1に開示された発光デバイスを
図27に図示する。
特許文献1に記載された発光デバイス800は、表面、裏面の両面から光を出射する発光素子810をボンディングワイヤ840によりリードフレーム830に接続し、発光素子810を懸垂状に設置する。そして、透明封止樹脂850により、一体的に結合された発光素子810とボンディングワイヤ840とリードフレーム830の一部とを覆い360°で発光できる発光デバイス800を構成し、発光素子810から放射された光に対する遮蔽物を極力排除して、光取出し効率の向上を図っている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発光デバイス800では、リードフレーム830の一部が透明封止樹脂850内に存在して光路を遮断している。そのため、リードフレーム830が発光素子810からの光の一部を吸収して損失となったり、リードフレーム830で反射した光が発光素子810に再入射して、発光素子810内で吸収され損失となったりするおそれがある。したがって、特許文献1の発光デバイス800も光取出し効率という観点からは不十分であるという問題がある。
【0005】
また、特許文献1と同様に、全方位出射型を採用して光取出し効率の改善を図った発光デバイスとして、特許文献2の発光デバイスがある。
【0006】
特許文献2に記載された発光デバイスを
図28に図示する。
特許文献2に記載された発光デバイス900は、表面、裏面の両面から光を出射する発光素子910を透明基板920上に実装し、それらをリード端子930、ボンディングワイヤ940、942とともに略球形の透明封止樹脂950に埋設して、光を全周方向に放射させることにより、光取出し効率の向上を図っている。
【0007】
特許文献2の発光デバイス900では、透明封止樹脂950を球形状とすることにより、透明封止樹脂950の中央に埋設された発光素子910から出射した光の光軸と、透明封止樹脂950とその周囲の空気層との界面が互いに垂直に近い状態で均質化され、光取り出し効率が向上するという効果がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載された発光デバイス900も、上述の特許文献1と同様、リード端子930の一部が透明封止樹脂950内に存在して光路を遮断している。そのため、リード端子930が発光素子910からの光の一部を吸収して損失となったり、リード端子930で反射した光が発光素子910に再入射して、発光素子910内で吸収され損失となったりするおそれがある。したがって、特許文献2の発光デバイス900も特許文献1同様、光取出し効率という観点からは不十分であるという問題がある。
【0009】
上述した特許文献1あるいは特許文献2の発光デバイスに共通する問題点は、透明封止樹脂内にフレームあるいは端子が存在するため、それらが発光素子からの光を遮ったり、
光路を変更したりすることにより損失が発生し、その分光の取出し効率の低下をまねいているという点である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態における発光デバイスの平面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態における発光デバイスを基板に実装したときの断面図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態の第一の変形例における発光デバイスの断面図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態の第一の変形例における発光デバイスの平面図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態の第二の変形例における発光デバイスの断面図である。
【
図7】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図8】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図9】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図10】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図11】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図12】
図1の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図13】
図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【
図14】
図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【
図15】
図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【
図16】
図1の発光デバイスの製造工程の別法を示す説明図の一部である。
【
図17】本発明の第二の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【
図18】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図19】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図20】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図21】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図22】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図23】
図17の発光デバイスの製造工程を示す説明図の一部である。
【
図24】本発明の第三の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【
図25】本発明の第四の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【
図26】本発明の第五の実施形態における発光デバイスの断面図である。
【
図27】従来の発光デバイスの構成を示す図である。
【
図28】他の従来の発光デバイスの構成を示す図である。
【
図29】従来の蛍光体含有透明封止樹脂を備えた発光デバイスの光路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明を適用した発光デバイスの実施形態を説明する。
以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。従って、それらの名称および機能も同じであるので、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
また、以下の図面においては、各部構成の寸法比率は説明に応じて適宜誇張して描かれており、必ずしも実際の寸法比率を示すものではない。
【0026】
(第一の実施形態)
図1、
図2を用いて本発明の第一の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス100は、発光素子110、接続線としてのボンディングワイヤ120、透光性部材としての透明封止樹脂130から構成される。
【0027】
発光素子110は表面および裏面の両面から出射するタイプの発光ダイオード(LED)であり、例えば、サファイア等の透明基板上にN型層、発光層、P型層をこの順に積層したものを用いることができる。発光素子110の表面上の正極、負極の電極にボンディングワイヤ120が接続され、発光素子110とボンディングワイヤ120の一部を球形状の透明封止樹脂130で覆っている。発光素子110、透明封止樹脂130の大きさは特に限定されるものではないが、一例として、発光素子110の縦×横×厚さを0.3mm×0.3mm×200μm、透明封止樹脂130の直径を1.5mm程度とすることができる。
【0028】
透明封止樹脂130としては、透光性のあるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などを用いることができる。
また、ボンディングワイヤ120としては、20〜30μmφ程度のAuワイヤ、Alワイヤ等の一般的な材料を用いることができる。あるいは、発光素子110に流れる電流条件によっては、Auリボン等を用いてもよい。その際、ボンディングワイヤあるいはリボンの太さないし幅は、発光素子110からの光を極力遮らないように、必要最低限のサイズとすることが肝要である。
【0029】
上述のようにして構成した発光デバイス100は、両ボンディングワイヤ120に所定の電源を接続することにより、発光デバイス100の360°全方向に光を出射する全方向出射型発光デバイスとなる。LEDは側面からも発光するからである。
【0030】
かかる発光デバイス100とすることにより、発光素子の表面、裏面のいずれか1面から光を出射する場合に比べて光の取り出し効率を向上させることができる。発光素子110内に、損失の原因となる、光路を折り返すための反射部分、すなわち1面から光を出射させる場合に、光出射面に対し発光層と反対側に設ける反射ミラー等が存在しないからである。
【0031】
さらに、本発明による発光デバイス100は、従来透明封止樹脂130内に配されていたフレームあるいは端子を透明封止樹脂130内から排除した。そして、透明封止樹脂130内には必要最低限の発光素子接続線としてのボンディングワイヤ120のみを配することにより、光取出し効率の低下を防ぐことを可能としている。これは、透明封止樹脂内に光の遮蔽物が存在した場合、その遮蔽物における光の吸収あるいは反射が、比較的大きな光取出し効率の低下をまねいているという本発明者らが見出した知見に基づいている。
【0032】
また、本実施形態では、透明封止樹脂130を球形状とすることにより、透明封止樹脂130の中央に配された発光素子110から出射した光の光軸と、透明封止樹脂130とその周囲の空気層との界面が互いに垂直に近い状態で均質化され、光取り出し効率がより向上するという効果もある。
【0033】
上記のように構成した発光デバイス100を、基板140に実装した場合の断面図を
図3に図示する。発光デバイス100は、照明等の用途に応じて、透明封止樹脂130の外部へと導出されたボンディングワイヤ120を、基板140の配線層142に超音波熱圧着等一般的なボンディング方法で接続することにより実装することができる。
基板140としては、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、SiC等のセラミック基板、金属基板等を用いることができる。基板140の表面は、発光素子110より基板140に向けて出射された光を前方(発光素子110の方向)に反射すべく、全面を反射性に形成してもよい。
【0034】
本実施形態では、基板140をガラスエポキシ基板とし、ガラスエポキシ基板上に絶縁層160を設け、その上に配線層142を設けている。
基板140の表面を反射性にするためには、例えば、白色顔料を含有した樹脂を塗布して絶縁層160を形成すればよい。また、配線層142も反射率を高くすべく、銅配線にNiメッキ、その上にAgメッキを施したものを好適に用いることができる。
【0035】
上述のように、本発明では、発光デバイス100を、発光素子110と、発光素子110を埋設する透明封止樹脂130と、一端が発光素子110に接続され、他端が透明封止樹脂130の外部へと引き出された1対のボンディングワイヤ120とで構成することにより、透明封止樹脂130内部に存在する、発光素子110から出射された光の光路を遮る要因となる物を最大限排除した。
【0036】
すなわち、本発明では、透明封止樹脂130内には、発光素子110以外の構成としてボンディングワイヤ120のみを配し、かつ、そのボンディングワイヤ120をそのまま透明封止樹脂130外へと引き出して、基板等へ直接実装可能な構成としている。このような本発明の構成によれば、透明封止樹脂130の内外において、発光デバイスから出射した光に対する影響が無視し得る程度であるボンディングワイヤ120のみが存在することになり、しかもそのボンディングワイヤ120を必要最低限の太さとすることにより、全方位出射型発光デバイスにおいて、光取出し効率の低下を極限まで防ぐという効果を奏することができる。
【0037】
(第一の実施形態の第一の変形例)
図4、
図5を用いて本発明の第一の実施形態の第一の変形例を説明する。本変形例に係る発光デバイス200は、透明封止樹脂230の形状を球形状から四角柱形状とした点が第一の実施形態と異なる。それ以外の構成は第一の実施形態と同様であり、各構成は同様の機能を有する。
【0038】
本変形例によっても、透明封止樹脂230内に、必要最低限の構成である発光素子接続線としてのボンディングワイヤ120のみが配されることになり、光取出し効率の低下を極限まで防ぐという第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。本変形例で例示するように、透明封止樹脂230の形状は、発光デバイス200の配光等を考慮して任意に選択することが可能である。
【0039】
(第一の実施形態の第二の変形例)
図6を用いて本発明の第一の実施形態の第二の変形例を説明する。本変形例に係る発光デバイス250は、発光素子110をサブマウント260にフリップチップ実装し、サブ
マウント260の背面に接続線としてのボンディングワイヤ120を接続し、ボンディングワイヤ120の一部を除き全体を透明封止樹脂130で覆って構成している。
【0040】
サブマウント260は、透光性を有するシリカガラス等で形成し、その表面、裏面および側面に、サブマウント260の表面および裏面を接続する配線層をAuスパッタ等で形成している(図示せず)。
【0041】
本変形例によっても、透明封止樹脂130内に、必要最低限の構成である発光素子接続線としてのボンディングワイヤ120のみが配されることになり、光取出し効率の低下を極限まで防ぐという第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本変形例では、発光素子110がより扱い易くなるという効果がある。
ここで、本発明による発光デバイスの製造方法について説明する。
【0042】
[発光デバイス100の製造方法1]
図1に示す発光デバイス100の製造工程を
図7ないし
図12を用いて説明する。
まず、
図7に図示するように、素子把持部532およびワイヤ把持部534を備えたジグ530の、素子把持部532で発光素子110を固定する。
【0043】
つぎに、
図8に図示するように、発光素子110の電極にボンディングワイヤ120を接続し、ボンディングワイヤ120の他端をワイヤ把持部534で固定する。この時のワイヤの形状は、発光デバイス100の最終形態として必要な長さを確保すべくループを大きくとる。
【0044】
つぎに、
図9に図示するように、素子把持部532の固定を解除するとワイヤの弾性で発光素子110は押し上げられる。
【0045】
つぎに、
図10に図示するように、発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下する。この滴下の過程において、透明封止樹脂130は表面張力により発光素子110を中心とした球形状となる。
【0046】
つぎに、
図11に図示するように、ワイヤ把持部534の固定を解除し、ボンディングワイヤ120を開放する。
以上の製造工程により、
図12に図示するごとく、発光デバイス100を得ることができる。
【0047】
[発光デバイス100の製造方法2]
図1に示す発光デバイス100の製造工程の別法を
図13ないし
図16を用いて説明する。
まず、
図13に図示するように、ワイヤ把持部542を備えたジグ540とステージ520を準備する。そして、ステージ520に発光素子110を吸引固定もしくは、樹脂、粘着テープ等で仮固定して、ジグ540と位置合わせする。
【0048】
つぎに、
図14に図示するように、発光素子110の電極にボンディングワイヤ120を接続し、ボンディングワイヤ120の他端をワイヤ把持部542で固定する。
つぎに、
図15に図示するように、ステージ520による吸着を解除して、あるいはステージ520と発光素子110との間の樹脂あるいは粘着テープを剥離してステージ520を取り除く。
【0049】
つぎに、
図16に図示するように、発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下すると、透明封止樹脂130は表面張力により発光素子110を中心とした球形状と
なる。
【0050】
つぎに、
図11と同様に、ワイヤ把持部542の固定を解除し、ボンディングワイヤ120を開放する。
以上の製造工程により、
図12に図示するごとく、発光デバイス100を得ることができる。
【0051】
(第二の実施形態)
図17を用いて本発明の第二の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス600は、発光素子110をボンディングワイヤ620により接続端子としてのリードフレーム610に接続している。そして、ボンディングワイヤ620の一部は透明封止樹脂130で封止するが、リードフレーム610は封止しない点に本発明の特徴がある。リードフレーム610が透明封止樹脂130内に存在すると、その部分における光の吸収あるいは反射が光の取出し効率低下の要因となるからである。
リードフレーム610の材料としては、例えばCuコアにAuコートしたものを用いることができる。
【0052】
以上のように、リードフレームを用いた発光デバイスにおいては、従来リードフレームの一部を透明封止樹脂内に封止していたが、本発明では、このリードフレームもあえて透明封止樹脂の外部に配した。そして、発光素子とリードフレームとの間を、発光デバイスから出射した光に対する影響が無視し得る程度である接続線としてのボンディングワイヤで接続している。
【0053】
したがって、本実施形態によっても、透明封止樹脂130内に、必要最低限の構成である発光素子接続線としてのボンディングワイヤ620のみが配されることになり、光取出し効率の低下を極限まで防ぐという第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。
さらに、本実施形態では、発光デバイス600の実装構造がより強固になるという効果がある。
【0054】
[発光デバイス600の製造方法]
ここで、
図17に示す発光デバイス600の製造工程を
図18ないし
図23を用いて説明する。
【0055】
まず、
図18に図示するように、ステージ520に発光素子110を吸引固定もしくは、樹脂、粘着テープ等で仮固定して、リードフレーム610と位置合わせする。
つぎに、
図19に図示すように、ボンディングワイヤ620で発光素子110の電極とリードフレーム610とを接続する。
【0056】
つぎに、
図20に図示するように、ステージ520による吸着を解除して、あるいはステージ520と発光素子110との間の樹脂あるいは粘着テープを剥離してステージ520を取り除く。
【0057】
つぎに、
図21に図示するように、発光素子110の周囲に透明封止樹脂130を数回滴下すると、透明封止樹脂130は表面張力により発光素子110を中心とした球形状となる。
以上の製造工程により、
図17に図示する発光デバイス600を得ることができる。
【0058】
ここで、透明封止樹脂130を球形状に形成する別法について説明する。
図22に別法の一例を図示する。
図22に図示する方法では、まず半球形状の透光性樹脂630をジグ660で固定し、
その透光性樹脂630上に透明ダイボンドペースト640等で発光素子110をダイボンディングする。そして、発光素子110とリードフレーム610とをボンディングワイヤ620で接続する。しかる後に、発光素子110および透光性樹脂630上に、透明封止樹脂130を数回滴下して半球形状とし、発光デバイス600を得ることができる。
【0059】
図23に透明封止樹脂130を球形状に形成する別法の他の例を図示する。
図23に図示する方法では、それぞれ半球形状の凹部を有する金型650の組を準備し、それらの金型を組み合わせて、リードフレーム610にボンディングワイヤ620で接続された発光素子110を取り囲む球形状の空間を形成する。その空間に透明封止樹脂130を注入することにより、発光素子110が球形状の透明封止樹脂130に取り囲まれた発光デバイス600を得ることができる。
【0060】
(第三の実施形態)
図24を用いて本発明の第三の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス700は、第二の実施形態においてリードフレームの形状を変えたものであり、リードフレーム710の端面を加工して、カーブ712を設けている。その他の構成については第二の実施形態と同様であり、各構成は同様の機能を有する。
【0061】
第二の実施形態では、リードフレーム610を封止しないように構成して、リードフレーム610における光の吸収あるいは反射によって光の取出し効率が低下するのを抑制するようにしていた。
【0062】
上記のように、リードフレーム610を透明封止樹脂130内から排除することにより、本発明の目的は達成することができるのであるが、本実施形態では、わずかながら存在する透明封止樹脂130外のリードフレーム610における反射の影響をも抑制し、光の取出し効率をさらに向上させるようにしている。
【0063】
上記目的を達成するため、本実施形態では、
図24に図示するように、透明封止樹脂130の外部に引き出されたボンディングワイヤ620に接続される側のリードフレーム710の端面を加工して、カーブ712を設けている。リードフレーム710の端面をこのように加工することにより、発光素子110から、リードフレーム710の発光素子110と対峙する端面に向けて出射し、その端面で反射する光の光路を透明封止樹脂130に戻らないように変更する。
【0064】
リードフレーム710の端面の加工はカーブに限らず傾斜であってもよい。要は、リードフレーム710の端面が、発光素子110から出射する光の光軸に対して垂直とならないようにされていれば、本発明の目的を達成することができる。
【0065】
上記の構成によって、透明封止樹脂130外のリードフレーム710の端面で反射した光が透明封止樹脂130内、あるいは発光素子110内で吸収され、損失となって、光の取出し効率が低下するのを抑制することができる。
【0066】
(第四の実施形態)
図25を用いて本発明の第四の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス300は、
図1に図示する第一の実施形態の発光デバイス100において、透明封止樹脂130に蛍光体粒子310を略均一に含有させて構成している。その他の構成については第一の実施形態と同様であり、各構成は同様の機能を有する。
【0067】
発光デバイスにおいては、発光素子から出射した光を蛍光体により波長変換し、白色光等のさまざまな色を得るということが一般的に行われている。このような発光デバイスに
おいては、発光素子を埋設する透明封止樹脂に蛍光体を一様に含有させることにより、発光素子の周囲に配された蛍光体が、発光素子から出射された光の一部を吸収して他の色の光を発光し波長変換する。発光デバイスは、波長変換された光と発光素子から直接出射された光との混合等により所望の色を放射する。
【0068】
本実施形態は、本発明をこのような波長変換型発光デバイスに適用したものである。
発光素子110、蛍光体粒子310の材料等は特に限定されないが、一例として、発光素子110を波長450nm程度(青色)のInGaN等の窒化物系化合物半導体とし、蛍光体粒子310を青色光を吸収して黄色光を発光するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体とし、発光デバイス300の発光色を疑似白色とすることができる。
【0069】
本実施形態で例示するように、本発明は、波長変換型発光デバイスに適用した場合においても、蛍光体粒子310を含有する透明封止樹脂130内に、必要最低限の構成である発光素子接続線としてのボンディングワイヤ120のみが配されることになり、光取出し効率の低下を極限まで防ぐという第一の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0070】
(第五の実施形態)
図26を用いて本発明の第五の実施形態を説明する。本実施形態に係る発光デバイス400は、波長変換部材としての蛍光体層410を発光素子110の全周囲に設け、さらにその全周囲を透明封止樹脂130で覆って構成している。
本実施形態は、第四の実施形態において、さらに光取出し効率の向上を企図したものである。
【0071】
蛍光体層410としては、例えば蛍光体粒子を含有させた透明封止樹脂を用いることができる。蛍光体粒子を分散させる透明封止樹脂は、透明封止樹脂130と同じものであることが好ましい。
【0072】
発光素子110、蛍光体層410の材料等は特に限定されないが、一例として、第四の実施形態における例示と同様とすることができる。
本実施形態では、蛍光体層410の形状を、球形状の透明封止樹脂130と略同心の球形状としている。しかしながら、これに限定されず、発光素子110の面に沿って一様の厚さとすることもできる。
【0073】
本実施形態の発光デバイス400は、発光素子110にボンディングワイヤ120をボンディングした後、蛍光体粒子310を含有させた透明封止樹脂を滴下して球形状に固化させ蛍光体層410を形成し、ついで透明封止樹脂130で球形状に封止して得ることができる。
【0074】
上記のように構成された発光デバイス400によれば、つぎのような効果を得ることができる。
すなわち、
図25に図示する第四の実施形態のように、発光素子の周囲に配された透明封止樹脂に蛍光体粒子を一様に含有させた場合には、透明封止樹脂とその周囲の空気層との界面近傍まで蛍光体粒子が存在するため、透明封止樹脂とその周囲の空気層との界面近辺まで蛍光体粒子による散乱が発生する。散乱する方向がさまざまであることに起因して、透明封止樹脂から空気層へ入射する場合の臨界角以上となる光線の割合が多くなり、透明封止樹脂と空気層との界面で全反射する光が増える。全反射した光は、全反射を繰り返すうちに発光デバイス内で吸収され、結果的に光取出し効率の低下をまねくおそれがあった。
【0075】
図29は上述の問題を発光素子から出射された光線の光路により説明した図である。
図29においては、発光デバイス970内の発光素子972より出射された光が、透明封止樹脂974に略均一に含有された蛍光体粒子976によって反射され、さらに透明封止樹脂974と空気層との界面で全反射する様子を黒矢印で示している。点線の矢印は、蛍光体粒子976がない場合の光線の光路を示す。
特に球形状の透明封止樹脂を用いる場合には、発光素子972より出射した光が透明封止樹脂974と空気層の界面に対して等方的に略垂直に入射することにより、全反射を抑えて光の損失を低減するという特性を生かし切れなくなるおそれがある。
【0076】
かかる問題に対し、本実施形態においては、発光素子110を覆い、発光素子110から出射された光の波長を変換する蛍光体層410を、発光素子110と透明封止樹脂130との間に設けたことで、透明封止樹脂130と空気層との界面に対して、蛍光体層410で波長変換された光束を点光源に近い状態とすることが可能となる。
【0077】
すなわち、発光素子110より出射した光は蛍光体層410の内部で散乱するものの、蛍光体層410が従来より薄く形成されているため光路を曲げられる頻度が減少する。蛍光体層410から出射した光は、その後透明封止樹脂130内を遮られることなく直進する。したがって、発光素子110は、透明封止樹脂130の外形に対して点光源に近い状態となる。
【0078】
そのため、透明封止樹脂130から空気層へと入射する光線において臨界角以下の光線が増え、透明封止樹脂130と空気層との界面での全反射が低減される。その結果、波長変換タイプの発光デバイスにおいて、さらなる光取出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0079】
なお、本発明の発光デバイスは、上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例が可能である。
すなわち、上記各実施形態のそれぞれで開示された内容は、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【0080】
また、上記各実施形態においては、球形状と四角柱形状の透明封止樹脂を例示して説明したが、回転楕円体その他任意の形状の透明封止樹脂について本発明の適用が可能である。
さらに、上記各実施形態では、透明基板上に半導体層を積層した表裏面発光型の発光素子を例示して説明したが、薄膜LED等他の形態の発光素子にも本発明を適用することが可能である。