(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746002
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】吸入麻酔薬用の容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/00 20060101AFI20150618BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20150618BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20150618BHJP
A61K 31/02 20060101ALI20150618BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
A61J1/00 Z
A61J1/00 311
A61J1/00 315Z
A61K9/72
A61K31/02
A61P23/00
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-249097(P2011-249097)
(22)【出願日】2011年11月14日
(62)【分割の表示】特願2002-526441(P2002-526441)の分割
【原出願日】2001年9月13日
(65)【公開番号】特開2012-30119(P2012-30119A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2011年11月14日
(31)【優先権主張番号】60/233,302
(32)【優先日】2000年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ブイ. ルドジンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ エイ. レサー
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第99/034762(WO,A1)
【文献】
特表2000−510159(JP,A)
【文献】
特開平01−283225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00− 1/05
A61K 9/72
A61K 31/02
A61P 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム容器内に含まれるハロゲン化吸入麻酔薬を含む、医薬製品であって、該アルミニウム容器の内側にはライニングが施されておらず、該ハロゲン化吸入麻酔薬が、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロタンから選択される、医薬製品。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬製品であって、前記ハロゲン化吸入麻酔薬を充填するか、または該ハロゲン化吸入麻酔薬を前記容器から取り出すための開口部および該開口部用のクロージャをさらに含む、医薬製品。
【請求項3】
前記容器がボトル形状である、請求項1又は2に記載の医薬製品。
【請求項4】
前記クロージャがキャップを含む、請求項2に記載の医薬製品。
【請求項5】
前記クロージャが、前記ハロゲン化吸入麻酔薬の流れを調節するためのバルブアセンブリを含む、請求項2又は4に記載の医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状吸入麻酔薬用の容器に関し、より詳細には、ハロゲン化吸入麻酔薬を保存するのに適したアルミニウム容器に関する。
【0002】
本発明のような容器を使用して、液状麻酔薬を保存し、そしてそれを、患者に薬剤を投与するためのデバイスに分配する。これらのデバイスは、「気化器」として当該分野で公知であり、このデバイスは、容器と連結しており、この容器の開口部を通して液状麻酔薬を受容し、この麻酔薬を気化させ、それを酸素および必要に応じて他の気体と混合し、そしてこのガス状混合物を患者に提供する。
【背景技術】
【0003】
吸入麻酔薬は、伝統的に、ガラス容器に保存されていた。しかしながら、これらの容器は、特定の欠点を有する。ガラスは、破損するのを避けるために、慎重に取り扱う必要があり、破損が起こった場合、製品を失いかつ損傷を受け得る。さらに、吸入麻酔薬は、ガラスの成分と反応し、特定の分解生成物を生じ得ることが理論づけられている。米国特許第5,990,176号(特許文献1)を参照のこと。
【0004】
多数の特許が、吸入麻酔薬(特に、セボフルラン)用のプラスチック容器の使用を教示している。例えば、米国特許第4,250,334号(特許文献2)は、セボフルランを保持するための容器用に、「Kel−F」プラスチックの使用を教示している。「Kel−F」は、クロロトリフルオロエチレンに対する商品名であることが理解される。米国特許第5,679,576号(特許文献3)は、セボフルランを保持するための、PTFE、すなわちポリテトラフルオロエチレンで内側を被覆された(lined with)容器の使用を教示している。米国特許第5,505,236号(特許文献4)は、吸入麻酔薬を含むプラスチック容器の使用を教示している。吸入麻酔薬として具体的に名前を挙げてはいないが、’236特許において示されるシステムの商業的な実施形態は、麻酔薬であるセボフルランと共に使用されていると思われる。セボフルランを保持するためのプラスチック容器を教示するこれらの特許の存在にもかかわらず、セボフルランを保持するための容器用に、特定の型のプラスチックの使用を教示するさらなる多数の特許が、近年発行されている。例えば、米国特許第6,074,668号(特許文献5)(ポリエチレンナフタレート)、同第6,083,514号(特許文献6)(ポリメチルペンテン)および同第6,162,443号(特許文献7)(ポリプロピレン、ポリエチレンおよびイオノマー(ionomeric)樹脂)を参照のこと。本発明は、セボフルランを保持するための、代替の型の容器(アルミニウム)を示す。
【0005】
さらに、特定のプラスチックから製造された、吸入麻酔薬用の容器が提案されている。WO99/34762(特許文献8)、米国特許第6,074,668号(特許文献5)および同第6,162,443号(特許文献7)、および米国特許出願公開番号2001/0000729(特許文献9)を参照のこと。プラスチック容器は、ガラス容器よりも破損しにくいようであるが、プラスチック容器はなお、通常使用する条件下で破損しやすい。さらに、多くのプラスチックは、蒸気透過性の傾向があり、時間をかけて、吸入麻酔薬を容器から逃がし、周囲の蒸気を容器に入れる可能性があり、混入が起こり得る。また、プラスチック容器は、吸入麻酔薬を含む容器のプロセシングおよび処理の間に必要とされ得る上昇した温度に曝されたときに、変形しやすい。さらに、吸入麻酔薬は、強い有機溶媒特性を有し、この特性は、代表的に、プラスチック材料を溶解し、そして/またはプラスチック材料と反応して、吸入麻酔薬中にある程度の不純物をもたらす。
セボフルラン用の容器はまた、ステンレス鋼からも製造されている。例えば、米国特許第5,990,176号(特許文献10)は、セボフルランを保持するための、ガラス、プラスチックまたはステンレス鋼から製造された容器を記載している。金属容器は、種々の型の医薬製品、ならびに食品および飲料用に使用されている。米国特許第6,008,273号(特許文献11)は、食品容器または飲料容器として使用するための金属容器の内側をコーティングするためのエポキシ樹脂を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,990,176号明細書
【特許文献2】米国特許第4,250,334号明細書
【特許文献3】米国特許第5,679,576号明細書
【特許文献4】米国特許第5,505,236号明細書
【特許文献5】米国特許第6,074,668号明細書
【特許文献6】米国特許第6,083,514号明細書
【特許文献7】米国特許第6,162,443号明細書
【特許文献8】国際公開第99/34762号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2001/0000729号明細書
【特許文献10】米国特許第5,990,176号明細書
【特許文献11】米国特許第6,008,273号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、アルミニウム容器内に保存されるハロゲン化吸入麻酔薬を含む医薬製品を提供することによって、従来技術の欠点を克服する。アルミニウム容器は、構造完全性特性、不活性特性、および防湿特性(これらの特性は、このような吸入麻酔薬の保存および取り扱いに非常に適している)を提供することが見出されている。さらに、アルミニウムは重量が軽く、熱変形に対して耐性であり、容易に再利用され、そして光誘発分解から吸入麻酔薬を保護する。
【0008】
さらなる実施形態において、この容器は、ハロゲン化吸入麻酔薬を充填または取り出すための開口部、およびこの開口部用のクロージャを備える。このクロージャは、好ましくはライニングを有し、これは、クロージャがアルミニウム容器の望ましい特性を保持するのに役立つ。あるいは、このクロージャは、麻酔薬の流れを調節するためのバルブアセンブリを備え得る。このクロージャはまた、容器内に保存された(housed)特定の吸入麻酔薬用に特に設定され、かつこれらの麻酔薬に特有である指標部品(indexing element)も備え得、この部品は、麻酔薬がその麻酔薬のために設計された気化器によってのみ投与されることを確実にするのに役立つ。
【0009】
アルミニウム容器はまた、さらなる不活性化のためのライニングを備え得る。代表的に、この容器はボトル形状である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
ハロゲン化吸入麻酔薬は周知であり、市販されている。これらとしては、以下が挙げられる:セボフルラン(フルオロメチル−2,2,2−トリフルオロ/1/(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2−ジフルオロメチル(difluromethyl)1,2,2,2−テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、メトキシフルラン(2,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロエチルメチルエーテル)およびハロタン(2−ブロモ−2−クロロ−1,1,1−トリフルオロエタン)(これら全ては、周囲条件において液体である)。
【0011】
本発明における使用に適したアルミニウム容器は、市販されている。代表的に、これらは、吸入麻酔薬が入れられて現在市販されているガラス容器のサイズおよび形状で製造される。市販されている容器は、ボトル形状であり、すなわち、これらはネック部を備え、それらの口(開口部)はクロージャで密閉され得る。
【0012】
本発明のアルミニウム容器は、内側が被覆されていても被覆されていなくてもよい。従来技術は、ガラス容器内に存在する酸化アルミニウムが、吸入麻酔薬の分解を導き得ることを仮定するが、このような分解の問題は、本発明において生じないことが見出されている。しかしながら、いくつかの場合において、アルミニウム容器に不活性ライニングを提供して、容器の製造中および容器のネック部にネジ山を形成する間の、アルミニウムの小片または小さな粒子の形成または放出を防ぐことが望ましくあり得る。安全性の観点からの問題ではないが、これらの小片は、液状麻酔薬中に現れ得、表面的または視覚的な観点から、満足を与えない。従って、ボトル製造プロセスの間の粒子または小片の形成を防ぐことが望ましい。
【0013】
適切なライニング材料は、吸入麻酔薬中で有意な溶解性を示さない材料、すなわち、吸入麻酔薬を使用不可能にしない材料である。これらのライニング材料としては、ラッカーおよびエナメルが挙げられ、好ましくは、エポキシフェノール樹脂を含む。市販されているライニング材料の例としては、HOBA Industrie−Chemie GmbH,Bodelshausen,Germanyからの、型番号7407Pおよび7940HL/Fが挙げられる。7407Pは、8〜14ミクロンの厚みを有する、アルミニウム容器に適した高可撓性ライナーであり、約30部/重量の固体含有量、20℃で約90秒DIN4mmの送達粘度、約0.99g/mlの密度を有するエポキシフェノール樹脂に基づく。このライナーの厚みは、特定の用途について小さくなり得る。
【0014】
本発明の容器は、ハロゲン化吸入麻酔薬を充填または取り出すための開口部、およびこの開口部用のクロージャを有する。このクロージャは、容器の特徴を損なわないように選択されるべきであり、すなわち、構造完全性特性、不活性特性および防湿特性を与えなければならない。このクロージャは、代表的にキャップ、例えば、市販されているガラス容器において使用されるキャップである。このキャップは、ネジ留め式、スナップ式、または吸入麻酔薬を分配するために使用される市販の気化器に取り付けるために、より綿密に設計されたものであり得る。このクロージャは、アルミニウムまたは他の材料、またはポリマー材料から製造され得る。上述のラッカーまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で内側を被覆されたクロージャが、特に好ましい。このようなライニングの1つは、「Plytrax 100」という名称で市販されており、ポリエチレン発泡体バッキングで上塗りされたPTFEを有し、Norton Performance Plastics Corporation,150 Day Road,Wayne NJ 07470−4699、Saint−Gobain Performance Plasticsの子会社から入手可能である。
【0015】
あるいは、このクロージャは、バルブアセンブリを備え得る。本明細書中で使用される場合、「バルブアセンブリ」は、麻酔薬の流れを調節するために、少なくとも1個のバルブを備えるクロージャを意味する。このようなクロージャは、当該分野で周知である。米国特許第5,505,236号および同第5,617,906号を参照のこと。これらのバルブアセンブリは、容器からの麻酔薬の損失を最小化するために、この容器の開口部を閉じるように、そして、気化器に麻酔薬を送達するために、気化器との相互作用によってこの開口部を開くように、交互に働く。キャップと同様に、バルブアセンブリは、容器にネジ留めまたはスナップ留めされ得る。
【0016】
さらに、これらのクロージャは、容器が、対応する指標部品を有する気化器とのみ連結するのを可能にする指標部品を備え得る。これは、麻酔薬が、その麻酔薬のために設計された気化器を通ってのみ投与されるのを確実にするために有用である。
【0017】
好ましい実施形態において、容器はボトル形状であり、そのネック部(開口部)は、キャップまたはバルブアセンブリで密閉されている。このネック部は、キャップまたはバルブアセンブリのネジ留めを可能にするようにネジ山付けされ得る。このバルブアセンブリは、指標部品を備え得、この部品は、容器に保存される特定の吸入麻酔薬に特有かつ特異的な構成を有する。この指標部品は、特定の吸入麻酔薬を保存する容器が、その吸入麻酔薬のために設計された気化器とのみ連結するのを確実にするのに役立つ。この容器のサイズおよび形状を変化させて、特定の型の吸入麻酔薬を示し、そして気化器内での異なる型の麻酔薬の過った混合を回避し得る。アルミニウムの種々の合金が容器用に使用され得、そして、それらはさらに、本発明の範囲内に含まれる。この容器は、最終薬物製品を保持するために、ボトルサイズの容器であってもよく、多量の薬物形態または最終蒸留を待つ粗製造形態の吸入麻酔薬を運送、混合または保持する間に使用するために、より大きなタンクまたはドラム缶サイズであってもよい。また、アルミニウムは、別の型の容器(例えば、プラスチック容器またはスチール容器)の内側の被覆層または内層の形態であり得る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項1)アルミニウム容器内に含まれるハロゲン化吸入麻酔薬を含む、医薬製品。
(項2)上記項1に記載の医薬製品であって、前記ハロゲン化吸入麻酔薬が、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロタンからなる群より選択される、医薬製品。
(項3)前記アルミニウム容器の内側に不活性ライニングが施されている、上記項1または2に記載の医薬製品。
(項4)前記不活性ライニングがラッカーまたはエナメルを含む、上記項3に記載の医薬製品。
(項5)上記項1または2に記載の医薬製品であって、前記ハロゲン化吸入麻酔薬を充填するか、または該ハロゲン化吸入麻酔薬を前記容器から取り出すための開口部および該開口部用のクロージャをさらに含む、医薬製品
(項6)前記容器がボトル形状である、上記項1に記載の医薬製品。
(項7)前記クロージャがキャップを含む、上記項5に記載の医薬製品。
(項8)前記クロージャが、前記ハロゲン化吸入麻酔薬の流れを調節するためのバルブアセンブリを含む、上記項5に記載の医薬製品。